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脂肪細胞の自家移植による血糖コントロールについて

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Academic year: 2021

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「肥満研究」Vol. 10 No. 2 2004 <トピックス> 伊藤昌史,ほか

トピックス

はじめに

近年の肥満研究の進展にともない, その本体を構成する脂肪細胞がもつ多 様な特性が明らかにされつつある.な かでも,脂肪細胞が種々の生理活性因 子(アディポサイトカイン)を分泌する 内分泌細胞としての機能を有し,生体 機能の調節に積極的に寄与しているこ とが明らかになった1) .一方,われわ れは3T3-L1脂肪細胞を用いた細胞移 植法をマウスにおいて確立し,移植脂 肪細胞が発現した分泌蛋白により個体 の耐糖能が修飾されることを明らかに した2) .これらの事象は,脂肪細胞の 移植により細胞由来の液性因子をsys-temicに供給し得ることを示している. そこでわれわれはこのような脂肪細 胞の特性を応用して新たな疾患治療が 可能になるのではないかと考えた.す なわち,脂肪細胞に治療蛋白の遺伝子 を安定導入しこれを移植することで治 療蛋白を持続的に血中に補充する,と いう治療法である.脂肪細胞は初代培 養の単離が可能であることから,自己 由来の初代培養脂肪細胞を用いれば免 疫拒絶の可能性も回避できる. 本研究ではその候補として,1型糖 尿病に対する基礎インスリン(食事に 依存しない,循環中に常時一定量存在 するレベルのインスリン)の安定供給 を目標に,インスリン遺伝子導入脂肪 細胞を用いた糖尿病モデルマウスの治 療効果を検討した.

1.改変型インスリン発現

初代培養脂肪細胞の作製

脂肪細胞において高活性型インスリ ンを産生させるために,c-peptideの 両端をfurin切断配列に改変し,さら にB鎖10番目のアミノ酸をヒスチジン からアスパラギン酸に置換した改変型 ヒトプレプロインスリンcDNA3) を構 築した( s1s2B10-Ins).この遺伝子を, C57BL/6マウスの皮下脂肪から天井培 養法4) により単離した初代培養脂肪細 胞(PA)にレトロウイルスベクターを用 いて安定導入した(s1s2B10-Ins/PA). ELISA法による検討の結果,この細 胞の培養上清中に成熟型インスリン, およびc-peptideの分泌を認めた.さ ら に こ の 培 養 上 清 で ヒ ト 肝 癌 由 来 HepG2細胞を刺激したところ,イン スリン受容体のチロシンリン酸化の亢 進が認められた.これらの結果から, 改変型インスリン遺伝子を導入した初 代培養脂肪細胞から活性型インスリン が産生されたことが確認された.

2.インスリン発現脂肪細胞

の移植による治療効果

糖尿病マウスは,9週齢のC57BL/6 マウスに170mg/kgのstreptozotocin (STZ)を静脈内投与して作製した.細 胞 移 植 は , マ ト リ ゲ ル に 懸 濁 し た s1s2B10-Ins/PAをマウスの背部皮下 に注入して行った.対照(C群)には, 非遺伝子導入脂肪細胞を同様に移植し た.その結果,移植1週後の絶食時血 糖は,C群の396

±

75.2 mg/dlに対し s1s2B10-Ins/PAの4×106 個移植群(L 群)で181.7

±

31.8mg/dl,8×106 個移植 群(H群)で91.6

±

18.7 mg/dlと移植細 胞 数 に 依 存 し て 有 意 に 低 下 し た (p<0.001).この作用は移植10週にわ たって持続し,この間正常マウスの絶 食時血糖を下回るような絶食時低血糖 は認められなかった.C群で検出限界 以下であった血中インスリンは,L群 で92

±

38pg/ml,H群で157

±

55pg/ml とやはり移植細胞数に依存して上昇し ていた.持続的なインスリン供給によ る血糖低下作用によって,移植10週後 のHbA1c値はH群において有意に改善 された(C群:9.8

±

0.7% vs. 8.4

±

0.5%, p<0.01).また,STZ投与により低下し た体重(C群:16.5

±

0.5g)も,L群で 19.7

±

0.4g(p<0.01),H群で21.7

±

0.5g (p<0.001)と細胞数に依存して有意に 改善された.これらの結果から,単回 の細胞移植により,10週間にわたって 安定な血糖コントロールが達成された ことが明らかになった.

おわりに

マウスモデルにおいて,インスリン を安定発現する初代培養脂肪細胞を移 植することにより長期の血糖コントロ ールに成功した.本法は,臨床におい ては自家移植が可能なこと,細胞の凍

脂肪細胞の自家移植による血糖コントロールについて

千葉大学大学院医学研究院臨床遺伝子応用医学

伊藤 昌史,武城 英明

千葉大学大学院医学研究院細胞治療学

高橋 和男,齋藤  康

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脂肪細胞の自家移植による血糖コントロールについて 結保存により同ロットの頻回移植が可 能なこと,血中濃度を移植細胞数によ り調節できる,などの利点を有し,1 型糖尿病に対する有用な治療法と考え られる.特に,高齢者のように自己注 射が困難な患者に対して,基礎インス リンを長期間供給できる意義は大き い.また他の疾患とペプチド補充療法 についても幅広く応用が可能である. 今後は,外来遺伝子発現の制御機構を 構築するなど,より安全な治療法への 発展が期待される. 文 献

1) Shimomura I, Funahashi T, Taka-hashi M, et al.:Enhanced expres-sion of PAI-1 in visceral fat: possible contributor to vascular disease in obesity. Nat Med 1996, 2:800―803. 2) Shibasaki M, Takahashi K, Itou T, et al.:Alterations of insulin sensi-tivity by the implantation of 3T3-L1 cells in nude mice. A role for TNF-α? Diabetologia 2002, 45:518―526. 3) Groskreutz DJ, Sliwkowski MX, Gorman CM: Genetically engi-neered proinsulin constitutively

processed and secreted as mature, active insulin. J Biol Chem 1994, 269:6241―6245.

4) Sugihara H, Yonemitsu N, Miyabara S, et al.:Primary cultures of uniloc-ular fat cells: Characteristics of growth in vitro and changes in dif-ferentiation properties. Differentia-tion 1986, 31:42―49.

参照

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