リテラシ一、科学的リテラシーは、それぞれ「自らの目標を達成し、自らの知識と可 能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、 熟考する能力 Jr数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、 職業生活、友人や家族や親族との社会生活、建設的で関心を持った思慮、深い市民とし ての生活において確実な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力 J r 自然 界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、 科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力」と定義さ れている。(国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能』ぎょうせい、 2001 年。)
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PISA において示されている学力観(リテラシー)とフィンランドのカリキュラム(1994年版)が示している学力観の類似性については、 PISA2000 の報告書 (J.V邑lijärvi,
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(8) 例えば、 2008年9 月 28 日付 Aml!1Ilehti紙など。
(9) フィンランド教育省ホームページ(最終アクセス日 : 2009年8 月 1 日)
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ドイツの義務教育政策に与えたPISAの影響
大野
亜由未(広島市立大学)
はじめに グローパリゼーションの進展するなか、教育もサービス産業のーっとみなされ、 自由化 ・競争の波にのまれている。それはいまや高等教育段階に留まらず、従来は 国民教育の基本と考えられてきた各国の義務教育政策 ・制度にも影響を与えはじめドイツの義務教育政策に与えた PISA の影響
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ているのではないか。 それを検証することを本課題別セッションの趣旨と捉え、本稿では、 PISA の反 響が最も大きかった国の一つであるドイツを取り上げる。まず①ドイツにおける PISA2000 以降の義務教育の基本的施策を跡づけ、 次いで②PISAがドイツの義務 教育政策・制度に与えた影響のインプリケーションを試みる。 表 ドイツにおける学力向上教育政策の概要2001
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E実施 (PISA園内調査)2001
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(常設文部大臣会議)・ 7 つの優先課題 ①就学前教育におけるドイツ語教育の強化 ②就学前教育と基礎学校の接続の改善 ③読解力及び数学・理科関連の基本的理解力の全般的向上(基礎学校) ④移民の背景を持つ子どもに対する支援 ⑤拘束性のある教育スタンダードと成果の測定 ⑤教員の職業意識の向上 ⑦終日制の学校 ↓ これを受けて連邦および州では次のような取組みを実施している - 複線型教育制度の改編(シュレスピヒ ・ホルシュタイン) ・ 基幹学校の終日化(バイエルン)- 新たな基幹学校:Werkhauptschule の設立(パーデン・ヴュルテンベルク) . 全国カリキュラム統一基準(連邦)と到達度測定(各州) ・ 数州による共通学習指導要領(ベルリン、ブランデンブルク、 メク レン ブjレク ・ フォアポンメルン、 プレーメン) ・ 給食に関する大綱指針(連邦) ・ 教員養成スタンダード(連邦)
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I空き時間」の削減(各州)2
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(連邦教育研究省)共同勧告公表 ・ 「着実な学力向上が看 取できる。しかし、 移民の背景を持つ子どもの成績不振の実態は大きく改 善されたとはいえない」 7 つの優先課題 (2001 年)に加えて 3 つの追加優先課題を設定 -特に前期中等教育段階の成績不振生徒の学力促進に力を入れる ・ 学校種間の移動性の向上、上級学校へのスムーズな移行と確実な修了 . 授業の更なる改善と教員の資質の向上 出典 KMK;7
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SA2000 以降の義務教育諸政策 PISA2000 以降、 ドイツにいわゆる rpISA ショック」が吹き荒れたことはよく知られる(1)。こうした現象や、 ドイツの学力問題および学力向上のための教育政策に
関しては、日本でも早くから分析・研究がなされている (2)。 そこで 2000 年以降の、 ドイツにおける主要な学力向上政策をまとめたのが下表 である。 ここで確認したいのは、これらの教育政策の主眼が、 一つには低成績層の底上げ と、もう一つには、学力の平準化、つまりは全国統一カリキュラム基準とその到達 度の測定に置かれていることである。2
ドイツにおける PISA の影
響
の特質
上述の二点を達成するためには、 ドイツの伝統的学校制度に対時せざるを得ない ことになる。それは、家庭環境が学校での学習成果に与える影響がより高くなると いわれる分岐型教育体系であったり、半日制の学校制度であったりする。 分岐型教育制度にかわる総合制学校の設立や学校の終日化は、従来からSPD (ド イツ社会民主党)の教育政策であった。しかしながら総合制学校は一部の州でしか 実施されず、現在は、従来の 3 分岐の学校種(ギムナジウム、実科学校、基幹学校) に付加された 4 番目の学校種としてわずかに残っているのみである。イギリスのコ ンプリヘンシブスクールが、ある程度社会に浸透しているのと対照的である。学校 の終日化に関しでも、それを推進する SPD政権州でさえ、財源の問題から、その 整備は遅々として進んでこなかった。 ここでPISAが公表された。それまでは政党聞における教育政策の違いであった ものが、「学力向上、低成績層の底上げ」という命題を受け、 同様の課題に取り組 むことになったのである。それが、例えば、上述の分岐型学校制度の見直し、学校 の終日化などである。しかしながら、こうした教育改革動向は全州において共通す るが、具体は州によって多種多様となっていることを断っておかなければならない だろう。例えば、基幹学校と実科学校を統合した新たな学校種を設けている州もあ れば、基幹学校の改革に重点を置いている州もある。 学校の終日化の実態にも若干の説明を加える必要があろう。 これは授業時間数を 増やす、 あるいは学校で給食を提供し午後も授業をするというものではない。あく までも授業は午前中のみで教員も帰宅する。 ドイツの学校の終日化というのは、基 本的には希望者に昼食を提供し、宿題を見て、安全に遊ぶ場所と要員を学校に配置ドイツの義務教育政策に与えた PISA の影響
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するという形態をとる。 日本でいえば、 学童保育にあたるといえよう。こうした放 課後の居場所は、従来は教会が設置運営していた。 現在は、このシステムを学校監 督局が学校内に設置し、良と質を高めることが進められている。 それは外国語学習 やドイツ語学習、 美術、音楽などのプログラムの提供であったり、希望者だけでな く全員に放課後のプログラムを提供する学校であったりする。 なお、こうしたプログラムにおける教師は「学校の教員」ではないのが一般的で ある。 ドイツの教員の勤務規定は週当たりの授業時間数のみであるので、それ以上 の仕事をしたり、 学校に残ったりすることは原則としてない。 そこでプログラムの 教師は「私講師」であり、施設に配置される要員は「社会教育士 (Sozialpädagoge)J
や「社会福祉士 (Sozialal'beitel') J である。 現在のドイツの学校の終日化の実態は このような形態をとっているところが多いが、時間割を工夫して、「学校の教員」 による授業を午後も行うことを試みている学校も出てきている。 分岐型学校制度の見直しゃ、終日制学校は、 ドイツの伝統的学校慣習の中で多種 多様な試みがなされているところといえる。 さて表の ドイツにおける学力向上教育政策の概要にもどると、「移民の背景を持 つ子ども」 という文言が数回みられる。 ドイツ国内で行われた PISA 再調査のデー タ分析によると、低成績層には、移民の背景を持つ子どもの割合が高いことが明ら かになった。 そこで、彼らに対する言語教育の転換が迫られることとなった。 母語 教育重視 ・ 多文化主義的観点から ドイツ語の確実な習得 ・統合主義的観点へとその 重点が移っている。もちろんこれはドイツの移民政策の転換と連関している。 最後に、 ドイツの伝統的学校慣習との対 11痔という点でいえば、教育スタンダード という全国カリキュラム統一基準ができた点も象徴的である。義務教育政策に関し て、従来は各州に全ての権限が委譲されていたが、これで連邦の関与を受け入るこ とにもつながった。おわりに
政党の政策観の遠いでは、改革が進んでこなかったドイツの伝統的学校制度。 そ れが PISAという「学力の国際競争」の場に放たれたとき、どの政党も同じ目標に 向かつて走り出したというのは大変興味深い。ドイツではPISA が政党教育政策の 違いを超えて、学校・学力改革のDl'ivingFOl'ce となったことは確かなようである。 【註】(
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Martens によると、 2001 年から 2008年の問、アメリカの主要 8 大紙におけるPISAに関する論説が 8 本であったのに対し、同期間のドイツの主要新聞では、 l 紙でその数
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(2) 坂野慎二「ドイツにおけるPISAショックと教育政策J 日本ドイツ学会編『ドイツ研究』 NO.37/38、 2004年、 33-43 頁。長島啓記「ドイツにおける ~PISAショック』と改革 への取組」 日本比較教育学会編『比較教育学研究』第 29号、 2003年、 65 一 77 頁。原田 信之「教育スタンダードによるカリキュラム政策の展開 ドイツにおけるPISAショッ クと教育改革J九州情報大学研究論集第 8 巻第1号、 2006年、 51-68 頁。 前原健二 rpISA 以後のドイツにおける学校制度改革の展望」 日本教育制度学会年報『教育制度学研究』 第 12号、 2005 年、 32-46 頁。柳津良明 「ドイツにおける学力問題と学力向上政策」日 本教育行政学会編『日本教育行政学会年報』第 30号、 2004年、 48-63頁。