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平成21 年度ヒートアイランド現象による環境影響等に関する調査業務報告書

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5章 ヒートアイランド対策技術に関する普及啓発

ヒートアイランド対策の効果的な推進を図るため、各対策技術のヒートアイランド対策効果及 び副次的効果を整理するとともに、対策技術の導入時に検討すべき評価指標、対策導入後に実施 するための効果測定方法について検討を行った。また、メーカーや各種工業会などにヒアリング を行い、普及啓発に関する情報収集を行った。 <ヒートアイランド対策技術一覧> 屋上緑化 壁面緑化 高反射率塗料 超親水性光触媒等による水を活用した対策 保水性建材 地中熱を利用した高効率空調 窓用日射遮蔽フィルム 窓用コーティング材 後付複層ガラス なお、対策技術の評価指標(5.2)と効果測定方法(5.3)の取りまとめに当たっては、下記の 専門家によるワーキンググループを設置し、検討を行った。議事要旨については、巻末資料(5 章)「ワーキンググループ議事要旨」として添付した。 <ワーキンググループ専門家名簿>(五十音順、敬称略) 飯島 健太郎(桐蔭横浜大学 工学部 准教授) 清水 亮作((財)日本塗料検査協会 検査部) 藤本 哲夫((財) 建材試験センター 中央試験所環境グループ) <開催日時等> 平成 22 年 2 月 26 日(金)13:00~15:00 (社)環境情報科学センター 2階会議室 また、クールシティパイロット事業における平成 19・20 年度の補助対象事業について、概要お よび現地写真を取りまとめた紹介冊子を作成した。

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5.1 対策技術のヒートアイランド対策効果、副次的効果について

各ヒートアイランド対策技術に関して、ヒートアイランド対策効果および体感温度の改善など の副次的効果について、最新の文献を中心に調査を行った。以下、対策技術ごとに調査結果をま とめた。 1)屋上緑化 表 5-1 および図 5-1 には、実際の屋上緑化庭園で、被覆素材別に測定した表面温度と、表面温 度の測定結果から算出した HIP(ヒートアイランドポテンシャル)を示す。なお、HIP(※)につ いては、屋上全体の値についても見積もっている。屋上を樹木と芝生で緑化した現状は、全く屋 上を緑化していない場合(全面コンクリート)にくらべると9時には HIP が 14℃低減されており、 13 時には HIP が 16.9℃低減されている。また、芝生、ウッドデッキ、樹木で比較すると樹木の効 果が最も高かった。 表 5-1 被覆素材別の表面温度1

(a) HIP 算出結果 (b) HIP 算出のための面積比率 図 5-1 被覆素材別および屋上全体の HIP2 ※ HIP(ヒートアイランドポテンシャル): 街区の全表面からの発熱(顕熱)により、都市の表面(地表面と建物表面)が大気を加温する量の指標。 HIP(℃)=∫(Ts-Ta) ds / A Ts(℃):屋上内の微小面表面温度,Ta(℃):気温,ds(m2):微小面の表面積,A(m2):屋上の水平投影面積 1 橋田祥子,藤崎健一郎,加治屋亮一,酒井孝司:樹木による屋上緑化のヒートアイランドポテンシャル低減効 果に関する研究,日本建築学会大会学術講演梗覧集(東北),pp.883-884,2009 2 橋田祥子,加治屋亮一,酒井孝司,大森宏,藤崎健一郎:樹木による屋上緑化の環境負荷低減効果に関する研 究,環境システム研究論文発表会講演集,pp.67-72,2009 全面樹木 (「現状」は屋上緑化全体での評価を意味する)

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図 5-2 は、屋上緑化の施工前後で表面温度と電力量の違いを測定したものである。夏季の表面 温度は、緑化施工後に大きく低下している。また、電力使用量に関しても緑化施工後に低下して いる。 図 5-2 屋上緑化による消費電力の変化3 図 5-3 には、屋上緑化庭園におけるアスファルト部分と芝生部分、パーゴラ部分で行ったグロ ーブ温度と温冷感の申告試験結果を示す。グローブ温度は、冬季を除き、アスファルトおよび芝 生地点と、パーゴラ地点の間に差が見られる。これはアスファルトや芝生が日なたであったのに 対して、パーゴラには緑陰が創出されていたためであると考えられる。また、温冷感の季節変化 では、アスファルト、芝生地点では日なた面のために温冷感の分布傾向が似ているが、アスファ ルト地点の方がより「暑い」側へ移行している。パーゴラ地点では、冬季以外は「涼しい」側、 冬季は「寒い」側の申告割合が多い。 図 5-3 屋上緑化における、アスファルト・芝生・パーゴラの体感の違い4 3 曽根真理,下田潤一,並河良治:北九州市における屋上緑化事業前後の室内温度、電力消費量の実測調査結果, 土木学会年次学術講演会講演概要集,64(2),VII-076,2009 4 村上大輔,下村孝:緑化された屋上の異なる3地点における温熱環境要素の測定と主観申告実験による快適性 の検討,日本緑化工学会誌,33(1),pp.152-157,2007

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2)壁面緑化 図 5-5 には、壁面緑化における表面温度と、近傍気温の 日推移を測定した結果を示した。表面温度は外気温が最高 気温を記録した 13:30 の時点では、外壁面表面温度は 47.1℃に対して、緑化面表面温度は 29.1℃にとどまり 18℃ の低減効果が認められた。 また緑化パネルの表面温度では、日中は常に実験地近隣 の基準温度よりも低く推移した。 図 5-4 実験区対象外壁面と緑化パネル 資料)桐蔭横浜大学 飯島氏 提供 9月7日表面温度日推移 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0 0:10 2:10 4:10 6:10 8:10 10:10 12:10 14:10 16:10 18:10 20:10 22:10 温度(℃) 外壁(セメント板)面表面 温度 緑化パネル表面温度 実験地近隣基準温度 9月7日近傍気温日温度推移 18.0 20.0 22.0 24.0 26.0 28.0 30.0 32.0 34.0 36.0 38.0 0:10 2:10 4:10 6:10 8:10 10:10 12:10 14:10 16:10 18:10 20:10 22:10 気温(℃) 外壁(セメント板) 面近傍気温 緑化パネル近傍 気温 実験地近隣基準 温度 図 5-5 壁面緑化面における表面温度・近傍気温の日推移 資料)桐蔭横浜大学 飯島氏 提供

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図 5-7 には、緑化パネル(図 5-6)を用いて行なわれた、体感温度の検討結果を示した。図 5-7 に示した表面温度の日推移からは、明け方と午後以降において、白色のコンクリートよりも緑化 面で低くなっていた。また、体感指標である SET*や WBGT では緑化面付近における値が低くなって いた。 図 5-6 緑化パネル写真5 図 5-7 壁面緑化面とコンクリート面における、表面温度、SET*、WBGT の日推移5 5 鈴木弘孝:ヒートアイランドとコンクリート 温熱指標で効果を定量的に確認 壁面緑化による温熱環境改善 効果について,月刊コンクリートテクノ,26(7),pp.66-75,2007

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3)高反射率塗料 仮設の長屋(図 5-8)において、高反射率塗料施工面と非施工面の表面温度を測定した結果を 図 5-9 に示す。実験は戸建て住宅を想定した実験棟の屋根部に、一般塗料と高反射率塗料を部屋 単位で塗り分けて行っている。なお、実験棟は部屋の内床面積 7.7 帖の木造戸建てで、天井およ び壁面には断熱材が施工されているが、実験時には天井部の断熱材を取り外している。図 5-9 よ り、屋根面で最大 27.1℃の温度差異が確認でき、高反射率塗料を施工した部屋での効果が確認で きた。 図 5-8 実験棟写真6 図 5-9 実験棟における表面温度測定結果6 6 田村昌隆,本橋健司:遮熱・高反射率塗料の効果と評価結果について,塗装技術,48(4),pp.100-113,2009

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同様の実験棟で行われた、夏季における空調負荷の測定を図 5-10 に示す。空調機器の温度設定 を 28℃とし、昼夜稼働運転を行った結果(0.5 回/hの第1種機械換気も実施)、一般塗料を施工 した部屋と比較して、高反射率塗料を施工した部屋は冷房電力量で7%の削減となった。 図 5-10 実験棟における空調による消費電力の測定結果7 高反射率塗料を塗布した舗装面上において、内部 発熱体を組み込んだ鋼板製人体モデルを用いて、高 反射率塗料がもたらす人体の体感への影響を検討し た実験における、SET*の算出結果を図 5-11 に示す。 夏季の SET*の日中平均値は一般舗装面上より高反射 率塗料上の方が高く、その差は Case S(想定衣服: 裸体、日射反射率:31%)で約 1.0℃、Case W(白 の衣服、65%)で約 0.3℃、Case B で約 1.3℃(黒 の衣服、10%)であった。つまり、衣服の日射反射 率が高いほど、一般舗装道路と高反射率塗料上の SET*の差が小さくなった。 図 5-11 高反射率塗料の SET*への影響8 7 田村昌隆,本橋健司:遮熱・高反射率塗料の最新動向と評価結果について,塗装と塗料,727,pp.13-20,2009 8 近藤靖史,小笠原岳,有働邦広:高反射化した道路舗装面上における人体温熱感の検討 道路舗装面の高反射 率化によるヒートアイランド緩和(その2),日本建築学会環境系論文集,637,pp.323-330,2009

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一方、高反射率塗料上の方が体感的に快適側であるという研究報告がある。図 5-12 には、日射 反射率 2.9%の一般舗装(図中では排水性舗装と表記)と日射反射率 20.0%の高反射率塗料を塗 布した舗装上(図中では遮熱性舗装と表記)で体感指標としてのグローブ温度の測定を行い、併 せて被験者(20 名)による体感申告試験を実施した結果を示す。高反射率塗料による路面温度上 昇抑制効果は観測されたが、グローブ温度では両者に有意な差は見られていない。申告試験の結 果からは、一般舗装の方が暑いと感じる傾向が見られている。 図 5-12 一般舗装と高反射率塗料施工後舗装における グローブ温度など測定結果と体感申告試験結果9 9 友永拓史,芦刈義孝,濱田敏宏:遮熱性舗装による道路環境の改善効果-歩行者を対象とした体感温度による 検証-,舗装,43(6),pp.31-36,2008

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4)超親水性光触媒等による水を活用した対策 光触媒技術を取り入れたブラインドに散水した場合では、表面温度で約7℃、室内温度で約2℃ 下がる結果が得られている(図 5-13)。 図 5-13 光触媒技術を取り入れたブラインドに散水した場合の 表面温度と室内温度の低下効果 資料)NEDO ホームページ 光触媒技術を施した屋根面に散水を行った場合では、夏季ピーク時において、最高 30%近くの 冷房空調負荷削減効果が得られている(図 5-14)。 図 5-14 光触媒技術を取り入れた屋根面に散水した場合の 屋根材温度と消費電力の低下効果 資料)NEDO ホームページ

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5)保水性建材 図 5-15 には、保水性舗装化された路面温度(路面下1cm における舗装内部温度)の時間変化 を示す。保水性建材における路面温度の低減効果は、降雨時に 9.6℃であった。 図 5-15 保水性建材における路面温度の低下効果10 10 峰岸順一:舗装技術からのヒートアイランド現象緩和への挑戦 東京都が取り組んでいる路面温度の低減舗装, ペトロテック,28(2),pp.94-99,2005

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図 5-16、5-17 には、密粒度アスファルト混合物を使用した標準工区と、保水性舗装を施工した 工区(舗装厚さ5cm および 10cm)における路面温度(路面下5mm における舗装内部温度)と、 測定結果より算出された長波放射量と顕熱輸送量を示した。図 5-16 より、降雨後に晴れた3日目 の最高路面温度は標準工区が 40℃に対して保水性舗装(5cm)が 32℃となっていた。図 5-17 より、 保水性舗装の長波放射量は、24 時間を通じて標準工区よりも少ない傾向を示し、最大では、長波 放射量が最大となる日中のピーク放射量を約 107W/m2抑制している。また、顕熱輸送量も標準工 区よりも保水性舗装で少ない傾向を示し、日照時間の長かった6日目のピーク値では、標準工区 が約 205W/m2に対して保水性5cm が約 79W/m2、保水性 10cm が約 69W/m2であった。なお、上記 の効果は保水性舗装による保水能と舗装表面色(アルベド:約 0.41)の相乗効果によるものである。 図 5-16 路面温度の比較11 図 5-17 長波放射量および顕熱輸送量の比較11 11 吉中保,根本信行:路面温度のヒート抑制を目的とした機能性舗装に関する一検討,土木学会舗装工学論文集, 6,pp.29-38,2001

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6)地中熱を利用した高効率空調 図 5-18 に示したシステムの地中熱を利用した高効率空調において、モデル住宅における CO2 削 減効果などを算出した例を示す。計算は、図 5-19 に示したモデルプランを条件として行った。計 算に用いた COP はフィールド試験により得られた値(図 5-20 右上)である、冷房4、暖房 3.3、 給湯 2.7 を用いている。年間の冷暖房負荷や給湯負荷は図 5-20 左上を入力値とし、CO2 の排出量 原単位は図 5-20 左下の値を入力値としている。計算結果によると、CO2 の排出量を約 29%削減で きる結果が得られている。 図 5-18 空調システム全体図12 図 5-19 計算におけるモデルプラン12 図 5-20 計算条件各値と CO2 排出量計算結果12 12 伊藤康之:ヒートポンプ冷温水システム 1. 住宅用 1.2 地中熱ヒートポンプ給湯・冷暖房システム,冷凍, 84(984),pp.837-841,2009

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図 5-21 に示したモデル住宅(4人住まい、一定の断熱性能、快適な生活を維持する冷暖房・照 明等の設備があること)において、図 5-22 に示した熱源システムを組み込んだ場合のライフサイ クル CO2 を計算した例では、図 5-23 のような結果が得られており、基準住宅に比べて全体で約 25%(年間 20kg-CO2/年・m2)の CO2 削減量となっている。これは住宅のライフサイクル全体に おいて、運用段階の CO2 排出量が多いことが影響している。 図 5-21 モデル住宅概略図13 図 5-22 地中熱利用の熱源システム概略図13 図 5-23 ライフサイクル CO2 算出結果13 13 岩岡重樹,山崎尚,渡辺俊行:地中熱を利用する省エネルギー住宅の LCA,日本建築学会環境系論文集,625, pp.401-408,2008

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7)窓用日射遮蔽フィルム 図 5-24 には、日射遮蔽フィルムの有無によるガラスの日射透過率と表面温度の違いを示した。 フィルムにより日射透過率は減少しているが、表面温度はフィルム無しよりフィルム有りの方が 高くなっている。また、外表面と内表面では内表面の方が高温になっている。 図 5-24 フィルムの有無による日射透過率と表面温度の違い14 図 5-25 には、シミュレーション計算により得られた窓用日射遮蔽フィルムの日射熱取得率と大 阪における冷房負荷低減量の関係を示した。日射熱取得率に比例して、その効果もほぼ線形に減 少している。 図 5-25 日射熱取得率と冷房負荷低減量の関係15 14 龍有二,小島昌一:日射負荷の大きな建築空間に採用された省エネルギー手法の有効性について 自然換気シ ステムと日射遮蔽フィルムの効果,日本建築学会研究報告. 九州支部. 2, 環境系,45,pp.209-212,2006 15 藤本哲夫:ヒートアイランド対策のための建材材料開発の現状,環境技術,38(7),pp.457-463,2009

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8)窓用コーティング材 図 5-26 には、「LESCOM-env」により算出された、日射遮蔽フィルムおよび窓用コーティング材 の年間における冷暖房負荷削減効果の値と、日射遮蔽係数、熱貫流率の関係を示した。年間の冷 暖房負荷削減量は、熱貫流率が低いほど大きくなる。一方、日射遮蔽係数は東京のオフィスと戸 建住宅、大阪の戸建住宅の場合、低くなるにつれて、冷暖房負荷削減量は増加しているが、ある 値を境に増加から減少に転じている。大阪のオフィスでは日射遮蔽係数が低いほど年間の冷暖房 負荷削減量は大きくなる。 図 5-26 日射遮蔽フィルムおよび窓用コーティング材の冷暖房負荷削減効果(年間)16 9)後付複層ガラス 図 5-27 には、ガラス品種の違い(透明単板ガ ラス、透明複層ガラス、Low-E 複層ガラス)によ る室内側表面温度を算出した結果を示す。透明 単板ガラスは熱貫流率が大きく、外界の変動の 影響を受けやすいため、表面温度の日変動と年 変動が他のガラスと比べて大きい。それに対し て、Low-E 複層ガラスは熱貫流率が他のガラスと 比べて小さいため、外界の温度変化を室内側に 伝えにくい。 図 5-27 室内面ガラス表面温度の計算結果(通年)17 16 伊藤大輔,武田仁,足永靖信,藤本哲夫:既存の窓面を対象にした遮熱化技術の光学特性及び熱特性の調査と 空調負荷低減効果に関する数値計算,日本建築学会技術報告集,16(32),pp.185-190,2010 年2月 17 平島重敏,大阿久一輝,井内正夫:ペリメータ空調のシミュレーション<ガラスに関連する温熱環境解析技術 の紹介>,建築設備と配管工事,46(8),pp.22-27,2008 FL3:透明単板ガラス FL3+A12+FL3:透明複層ガラス LU3+A12+FL3:Low-E 複層ガラス

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5.2 対策技術のヒートアイランド対策効果の評価指標について

ヒートアイランド対策技術の適切な普及を推進するためには、対策技術導入時にヒートアイラ ンド対策効果が期待される技術を選定する必要がある。そこで、各対策技術のヒートアイランド 対策効果の評価指標について検討を行った。なお、検討に当たっては、専門家によるワーキング グループを設置した。以下、各対策技術について検討結果を取りまとめた。 1)屋上緑化 屋上緑化のヒートアイランド対策効果は、緑化面の表面温度の上昇が抑制されることで、大気 への熱負荷が抑制されることである。表面温度の低下に伴い、屋上直下の居室への熱貫流が減少 し、空調排熱の削減が期待される。 図 5-28 には、業務建物の屋上直下居室における空調負荷削減効果を検討したシミュレーション 結果を示す。冷房負荷に着目すると、札幌から福岡まで空調負荷は削減される。暖房負荷は、地 域によらず大きな変化は見られない。これは、屋上緑化の場合は、土壌などの植栽基盤によって 屋根面の断熱性能が向上するためである。通年で評価した場合においても、地域によらず空調負 荷削減効果が得られている。 図 5-28 屋上緑化による空調負荷削減効果(LESCOM シミュレーション) 資料)環境省:ヒートアイランド対策ガイドライン 0 100 200 300 400 500 600 札幌 仙台 東京 福岡 合 計 消 費 量 ( M J / ㎡ ・年 ) 業務建物に屋上緑化を施した場合(屋根断熱材25mm) 対策なし 屋上緑化 冷房 暖房

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屋上緑化のヒートアイランド対策効果は、屋上敷地面積に対する、植物の枝葉が作り出す緑陰 の面積の割合(緑被率と呼ぶ)が重要である。これは、植栽基盤上であっても植物がまばらに植 えられているなどして、土壌などの植栽基盤が露出していると、その露出部分の表面温度は高く なるためである。

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また、低木による緑化と芝生による緑化では、ヒートアイランド対策効果に違いがある。これ は低木が緑陰を作り出し、日射の地表面への到達を遮断するのに対して、芝生では土壌に直接日 射が当たる部分が相対的に大きくなるためである。図 5-30 では、地表面温度および下層部(植栽 基盤とコンクリート面の間)の温度ともに、日最高温度は低木の場合に低くなっている。なお、 日最低温度は芝生の方が低くなっている。 図 5-30 低木と芝地のヒートアイランド対策効果の違い18 18 佐原まり子,鈴木貢次郎,濱野周泰:人工地盤における土壌下層部の温度変化に及ぼす植栽形態の影響,日本 緑化工学会誌,32(1),pp.254-257,2006

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緑化が施されていても、不十分な潅水下では、植物の蒸散によるヒートアイランド対策効果は 期待できないばかりでなく、最終的には植物自身も枯死してしまう。そのため、緑化対策におい ては、適切な潅水を実施することが重要である。しかしながら、土壌の含水率という指標では、 必ずしも植物が吸水できるだけの水分が含まれているかを表すことはできない。これは、水分を 保持しようとする力(pF 値)が土壌の組成により異なるためである(図 5-31)。pF 値では土壌中 に植物が吸水できるだけの水分が含まれているかを一律に判断することができる。一般に pF 値が 1.5~3.8 の間に保たれていれば、植物は吸水を行うことができるとされている。また、多肉植物 の多くはCAM型光合成(※1)を行うことが知られているが、その一部は土壌に適切な水分量(例 えば pF 値が 1.5~3.8 程度)が保たれていれば(※2)C3型光合成(※3)を行い、日中に蒸散を行 うことが報告されている19。このように、維持管理と言う側面からは、pF 値による潅水量の管理 が必要であると考えられるが、現場での pF 値の測定は困難であり、現実的ではない。そのため、 今後は土壌成分ごとの pF 値と潅水量に関する情報収集を行うことが課題である。 含水曲線 y = -0.0008x2 + 0.0017x R2 = 0.9328 y = -0.0033x2 + 0.2111x R2 = 0.9091 y = -0.0019x2 + 0.1318x R2 = 0.8651 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 含水率(%) pf 図 5-31 pF-含水率曲線 資料)桐蔭横浜大学 飯島氏 提供 (■I 社人工軽量土壌 A ▲I 社人工軽量土壌 B ◆関東火山灰心土) ※1:CAM型光合成 夜間に CO2 の取り込みを行い、日中に還元する機構の光合成。乾燥環境下で生育する多肉植物などが行う。 ※2:多肉植物の潅水に関して 多肉植物数種は高温多湿に非常に弱い性質があるため、夏季炎天下での潅水は控え、必要に応じて夜間から早朝 に給水する必要がある。 ※3:C3型光合成 光合成における代表的な炭酸固定反応(取り込んだ CO2 を炭素化合物として蓄える反応)であるカルビン回路を 使った光合成。大部分の植物が用いる。 19 飯島健太郎,近藤三雄:メキシコマンネングサの光合成型ならびに生育に及ぼす土壌水分と気温の影響,東京 農業大学農学集報,41(3),pp.156-163,1996

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植物種による表面温度上昇抑制効果、つまり蒸散能力に関する差異も認められる。しかし、植 物の蒸散量は、気孔数や1日の内で蒸散している時間の長さ、周辺の環境要因などが影響してい るため、評価は難しい。また、屋上緑化における植物種は、高反射率塗料の色相と同様に、施主 による希望が反映される。そのため、植物種に関しては固執をしない方がよいと考えられる。 また、植栽基盤である土壌の断熱効果については、土壌の構成や厚さによりその断熱性能は異 なるものの、含水量により土壌の熱伝導率は変化するため、実際の断熱性能を推定することは困 難である。よって、土壌の断熱性能には固執せず、植物の蒸散や土壌からの蒸発が行われるよう に適切な潅水を行い、大気への顕熱量を抑制することが重要である。 2)壁面緑化 壁面緑化のヒートアイランド対策効果は、緑化面の表面温度の上昇が抑制されることで、大気 への熱負荷が軽減されることである。また、壁面の温度上昇が抑制されることで、壁面に接した 居室への熱貫流が減少し、夏季の空調排熱の削減が期待される。 壁面緑化に関しては、緑被率が重要な指標となる。図 5-32 でも、緑の有無による表面温度の違 いが測定されている。また、維持管理の視点からも屋上緑化と同様に、植物の蒸散作用を維持す るために、pF 値といった観点からの潅水量の適正な管理を行うことが重要である。 図 5-32 サーモカメラによる壁面温度 資料)東京都:壁面緑化ガイドライン

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3)高反射率塗料 高反射率塗料のヒートアイランド対策効果は、日射が反射されることで塗布面の表面温度の上 昇が抑制され、大気への熱負荷が抑制されることである。またそれに伴って屋上直下の居室への 熱貫流が減少するため、夏季の空調排熱の削減に繋がる。 製品によって、波長領域ごとの反射率は異なるが、高反射率塗料塗布面の表面温度は全波長領 域の日射反射率で決まるため、評価指標としては、全波長領域の日射反射率が適している(図 5-33)。 図 5-33 日射反射率と表面温度の関係 資料)(財)日本塗料検査協会 清水氏 提供 参照板が50℃になった時点の試料板温度 y = -0.3867x + 78.702 R2 = 0.9981 40 50 60 70 80 90 0 20 40 60 80 100 日射反射率(%) JIS K 5602 試 料 板   上 昇 温 度 (℃ ) 参照板と試験板を同時に太陽光近似光源で照射。 参照板の表面温度が 50℃に上昇した瞬間の試験板温度を測定 参照標準板 試験板 太陽光近似光源と試験の様子

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図 5-34 には、業務建物の屋上直下居室における空調負荷削減効果を検討したシミュレーション 結果を示す。冷房負荷に着目すると、札幌から福岡まで空調負荷は削減されるが、暖房負荷は寒 冷な地域において増加している。通年で評価した場合では、特に温暖な地域において、空調負荷 削減効果が得られており、日射反射率が大きいほど、その効果は高くなっている。 図 5-34 塗料の反射率と空調負荷削減効果(LESCOM シミュレーション) 資料)環境省:ヒートアイランド対策ガイドライン ただし、塗料の色は施主の要望に依存するため、色が決まっている状態、つまり可視領域の日 射反射率が決まっている状態では、実質的に近赤外領域の反射率で評価を行うことになる。図 5-35 には、塗料ごとの分光反射率を示した。同じ黒色の塗料であっても、近赤外領域の反射率は異な っており、その結果、黒色一般塗料の全波長領域の反射率は4%であるのに対して、黒色高反射 率塗料は 36%と高くなっている。 図 5-35 塗料の分光反射率20 20 酒井孝司:パッシブソーラー適応型高機能材料 日射遮蔽機能塗料,太陽エネルギー,pp.31-34,2009 業務建物の屋根面に高反射率塗料を施した場合(屋根断熱材25mm) 0 100 200 300 400 500 600 札幌 仙台 東京 福岡 合 計 消 費 量 ( M J / ㎡ ・年 ) 対策なし(日射反射率0.25) 日射反射率0.50 日射反射率0.86 冷房 暖房 日射反射率 (0.25→0.50) 日射反射率 (0.25→0.86) 札幌 0.2 0.4 仙台 0.4 0.8 東京 0.9 2.0 福岡 2.0 4.8 通年での空調負荷削減率(%)

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高反射率塗料の初期性能は、日射反射率で評価することができる。しかし塗布後には、塗料表 面に劣化や汚れが発生する。一般的に、時間の経過とともに塗料は白色化する傾向にあるため、 劣化により反射率が大きく低下することはないが、ある種の汚れは反射率に大きく影響する。例 えば、砂埃汚れでは可視光の反射率は多少落ちるが、近赤外領域ではあまり変わらない。重交通 路周辺等のカーボンを含むオイルミスト汚れでは、全波長領域の反射率が低下するといった傾向 がある。こういったことから、塗料の汚れにくさも長期的な効果の維持を考えた場合は重要であ る。防汚機能を備えた塗料も市場に出てきているが、これまでの汚れに対する反射率の評価は、 目に見える汚れ、つまり可視領域での評価が一般的であり、近赤外領域の反射率に対する評価は 今度の課題である。 また、塗料の中には熱伝導率が低い製品もあるが、塗料膜の厚さを考えた熱貫流率で評価する と、その影響は無視できる。

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4)保水性建材 保水性建材のヒートアイランド対策効果は、建材中に含まれる水分が蒸発することで、建材自 体の表面温度上昇が抑制されることである。またそれに伴って屋上や壁面に接する居室への熱貫 流が減少するため、夏季の空調排熱の削減に繋がる。 現時点では、性能評価に適切な物性値はなく、インターロッキングブロック協会の規定した方法 により測定する体積含水率が指標となると考えられる。体積含水率と温度上昇にかかる時間の関 係を図5-36に示したが、含水率が高いほど温度上昇に長い時間を要しており、セメント系の建材 を除いて、概ね線形の関係が見られる。このことから、含水率が高いものが必ずしもヒートアイ ランド対策効果が高いとは一概には言えないものの、含水率が効果を検討する上での一つの目安 になると言える。 図5-36 50℃到達時間と体積含水率の関係21 21 藤本哲夫:ヒートアイランド対策のための建築材料開発の現状,環境技術,38(7),pp.457-463,2009

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また、体積含水率の他の指標として空隙率があり、ポーラスコンクリートの空隙率が高いほど、 温度上昇抑制効果が高くなるとの報告もある(図5-37)。しかし、必ずしも空隙率の高い素材の含 水率が多い訳ではなく、細孔分布と併せて評価を行う必要があるが、細孔分布を測定することは 困難である。 図 5-37 空隙率の異なる保水性建材の温度変化22 (P10:空隙率 10%、P20:空隙率 20%、P30W:空隙率 30%,ハイフン以降は試験体厚さ(cm)) 22 寺西浩司,吉永美香:ポーラスコンクリートブロックの温度上昇抑制効果に関する研究,日本建築学会東海支 部研究報告書,46,pp.97-100,2008

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なお、保水性建材の湿潤時の蒸発に関わる性能を、実験により求められる水分浸透率(水分伝 導率を水分拡散率で除した物性値)を用いて計算した報告がある。図 5-38 に、水分浸透率を用い て算出した積算蒸発量と実測値を示す。蒸発開始後、2日までは精度良く実測値の蒸発量の再現 ができている。また、水分移動計算と併せて熱移動計算を行うことで、蒸発に伴う温度低下も求 めることができる。図 5-39 には、積算蒸発量と表面温度の計算値と実測値を示す。蒸発開始後に おいても、表面温度は一定の精度で再現されている。 図 5-38 積算蒸発量の実測値と計算値23 図 5-39 積算蒸発量と表面温度の実測値と計算値23 以上のように、これまでは含水率が保水性建材の評価性能の目安となっていたが、今後は水分 浸透率等の物性値による評価方法の確立が望まれる。 23 北島洋平,崎浩二,西岡真稔,中尾正喜,鍋島美奈子:保水性舗装の実用的水分蒸発モデル作成に関する研究 -その4 差分解法を用いた水分計算-,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.223-224,2009

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5)窓用日射遮蔽フィルム 窓用日射遮蔽フィルムのヒートアイランド対策効果は、窓を通して居室内に進入する日射量を 削減し、夏季の空調排熱の削減に繋がることである。 直接入り込む日射と窓面からの放射の両者を加味した指標に、遮蔽係数があり、遮蔽係数が大 きいほど、居室内への熱エネルギーの侵入が減少し、夏季の空調排熱削減に繋がることが期待さ れる。このことから、評価指標としては遮蔽係数が考えられる。図 5-40 には、業務建物(窓面に 接した居室)における遮蔽係数別の空調負荷削減効果(通年)のシミュレーション計算結果を示 した。遮蔽係数が高い場合に、特に温暖な地域における空調負荷削減率が高くなっている。 図 5-40 窓フィルムの遮蔽係数と空調負荷削減効果(LESCOM シミュレーション) 資料)環境省:ヒートアイランド対策ガイドライン 業務建物の窓面に日射遮蔽フィルムを施した場合 0 100 200 300 400 500 600 札幌 仙台 東京 福岡 合 計 消 費 量 ( M J / ㎡ ・年 ) 対策無し 遮蔽係数 0.70 遮蔽係数 0.28 冷房 暖房 遮蔽係数 0.70 遮蔽係数 0.28 札幌 0.0 -0.4 仙台 0.0 -0.8 東京 1.0 1.5 福岡 2.5 8.9 削減率:%

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5.3 ヒートアイランド対策技術の効果測定方法の検討

ヒートアイランド対策技術の適切な普及を推進するためには、対策技術導入後に適切なヒート アイランド対策効果が得られているかモニタリングする必要がある。そこで、各対策技術につい て、事業者が実施できる適切かつ簡便なヒートアイランド対策効果、CO2 削減効果の測定方法に ついて検討を行った。なお、検討に当たっては、専門家によるワーキンググループを設置した。 以下、各対策技術について検討結果を取りまとめた。 対策技術のヒートアイランド対策効果の効果測定方法については、専門家によるワーキンググ ループを開催し、検討を行った。以下、検討結果を取りまとめた内容を記す。 5.3.1 効果測定方法の検討 検討を行うヒートアイランド対策技術(屋上緑化、壁面緑化、高反射率塗装、窓用日射遮蔽フ ィルム、地中熱を利用した高効率空調)は、建物内へ入り込む日射の熱を抑制するものと、空調 の高効率化でエネルギー消費を削減するものに大別される。図 5-41 には、日射の熱や外気温が建 物被覆を通して空調負荷や最終的な大気への排熱量に至る経路における様々な指標例と、ヒート アイランド対策効果・地球温暖化対策効果との関連性を示した。 図 5-41 ヒートアイランド対策や地球温暖化対策の効果を把握するための指標例 測定に際しては、対策を施工する建物ごとに状況が異なるため、個別に効果の測定手法を検討 する必要があるが、比較的簡便に効果を測定する方法の例を以下に示す。 建物空調 建物被覆 効果把握指標の例 ヒートアイランド対策効果 ヒートアイランド対策効果 地球温暖化対策効果 表面温度 熱収支 空調負荷量 空調COP エネルギー消費量 CO2 排出量 熱貫流量 日射取得量 大気への排熱量 日射量 外気温

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1)屋上緑化 屋上緑化の対策効果は、夏季には土壌表面が緑で覆われることで蒸散効果により表面温度の上 昇が抑制され、かつ屋上に土壌層を形成することで断熱性能が向上し、屋上直下の居室に貫流す る熱が抑制される効果がある。また、冬期にも屋上の土壌層が断熱性能を向上させる効果がある。 ヒートアイランド対策効果を把握するには屋上表面の温度を測定する方法があり、CO2 削減効 果を把握するには居室への熱の改善の程度を熱流量で測定する方法がある。測定は、周辺の構造 物の影響を受けにくい日なたで行う。植栽により木陰が形成されている場合は、日なたと木陰の 両者で測定を行い、面積比率を可能な範囲で把握する。また、やむを得ず周辺の構造物により日 陰になる時間がある場所を測定点とする場合は、測定点が何時に日陰になるのかを把握する。温 度の測定は熱電対で 1 点を測る方法があるが、可能であれば複数地点による、緑化面の平均的な 温度の測定が好ましい。なお、CO2 削減効果を検討する場合、植栽基盤である土壌は含水率によ って熱伝導率が大きく異なるため、可能であれば図 5-42 のBで示した、土壌層と屋上スラブの間 で温度の測定をすることが好ましい。また、ヒートアイランド緩和効果を評価するという観点か らは、外気温の測定を合わせて行うことも有意義であり、厳密な評価を求める場合は、対策面か ら鉛直方向に数点(例えば、表面から 10cm、30cm、50cm、100cm など)の気温測定を行うと良い と考えられる。 測定項目 必須項目選定理由 A:屋上緑化面 温度、熱流量 ヒートアイランド対策効果(対策有) B:屋上スラブ上面(緑化面) 温度、熱流量 - C:居室天井(緑化面) 温度、熱流量 CO2 削減効果(対策有) D:屋上スラブ上面(非緑化面) 温度、熱流量 ヒートアイランド対策効果(対策無) E:居室天井(非緑化面) 温度、熱流量 CO2 削減効果(対策無) ※下線付きの斜体は必須項目 図 5-42 屋上緑化による対策効果の測定例 測定期間は、年度内で考えた場合、夏季(6月)から冬季(2月)を把握し、3月から5月ま では秋の測定結果を準用することで通年の評価が可能になると考える。以下の対策技術について も同様の測定期間が必要となる。効果を確認するためには、屋上直下の居室の熱環境的な状況(室 温や設備機器からの放熱など)が同様な天井で緑化面と非緑化面の違いを測定する必要があるが、 比較が困難な場合には、施工前後の比較や、数値計算による評価方法などの検討を要する。 屋上緑化施工面 屋上緑化非施工面 A B C D E 屋上スラブ 土壌層

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2)壁面緑化 壁面緑化についても同様の考え方で効果を測定する。また、屋上緑化と同様に、可能であれば 緑化面の平均的な温度を非接触型の温度計などを用いて測ることが望ましい。また、ヒートアイ ランド緩和効果を評価するという観点からは、外気温の測定を合わせて行うことも有意義であり、 厳密な評価を求める場合は、対策面から鉛直方向に数点の気温測定を行うと良いと考えられる。 居室の熱環境的な状況が同様な壁面で緑化部と非緑化部の違いを測定する必要があるが、比較 が困難な場合には、施工前後の比較や、数値計算による評価方法などの検討を要する。 測定項目 必須項目選定理由 A:壁面緑化面 温度 ヒートアイランド対策効果(対策有) B:壁面外側(緑化面) 温度、熱流量 ヒートアイランド対策効果(対策有) C:壁面内側(緑化面) 温度、熱流量 CO2 削減効果(対策有) D:壁面外側(非緑化面) 温度、熱流量 ヒートアイランド対策効果(対策無) E:壁面内側(非緑化面) 温度、熱流量 CO2 削減効果(対策無) ※下線付きの斜体は必須項目 図 5-43 壁面緑化による対策効果の測定例 C D E 壁面 B A

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3)高反射率塗装 高反射率塗装の対策効果は、屋上緑化の場合と同様の方法で測定する。ただし、塗料表面は日 射や風、周囲からの放射の影響によって、その温度が短時間で大きく変化するため、表面温度の 瞬時値を数回計測するだけでは、不適切な評価をしてしまう可能性がある。そのため、可能であ れば、塗布施工時に温度計を埋めるなどしてなるべく内部の温度を測定すること、また、測定に ついては短い時間間隔での測定を連続的に行い、長時間で平均化して代表値とすることなどが求 められる。 また、ヒートアイランド緩和効果を評価するという観点からは、外気温の測定を合わせて行う ことも有意義であり、厳密な評価を求める場合は、対策面から鉛直方向に数点の気温測定を行う と良いと考えられる。 屋上直下の居室の熱環境的な状況が同様な天井で塗装面と非塗装面の違いを測定する必要があ るが、比較が困難な場合には、施工前後の比較や、数値計算による評価方法などの検討を要する。 測定項目 必須項目選定理由 A:屋上スラブ上面(塗装面) 温度、熱流量 ヒートアイランド対策効果(対策有) B:居室天井(塗装面) 温度、熱流量 CO2 削減効果(対策有) C:屋上スラブ上面(非塗装面) 温度、熱流量 ヒートアイランド対策効果(対策無) D:居室天井(非塗装面) 温度、熱流量 CO2 削減効果(対策無) ※下線付きの斜体は必須項目 図 5-44 高反射率塗料による対策効果の測定例 高反射塗率装施工面 A B C D 高反射塗率装非施工面 屋上スラブ 高反射率塗装

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4)地中熱を利用した高効率空調 地中熱を利用した高効率空調については、高効率の程度を把握するため、一般の空気熱源ヒー トポンプに対する COP(AFP)の改善の程度から CO2 削減効果を求める。そのため、システム全体 の消費電力と地中熱の利用量(排熱量)を測定する必要がある。ヒートアイランド対策効果につ いては大気中への空調排熱の削減分として、地中への排熱量を効果と考えることができる。 測定項目 必須項目選定理由 A:空調機器(動力 ポンプ等含む) 消費電力 B:熱媒(入口) C:熱媒(出口) 入 口と出 口の 温 度、熱 媒流 量 CO2 削減効果(対象とする機 器のCOP を設定し、測定で求 めるCOP の差から算出) ヒ ー ト ア イ ラ ン ド 対 策 効 果 (地中に排出された熱量) ※下線付きの斜体は必須項目 図 5-45 地中熱を利用した高効率空調による対策効果の測定例 5)窓用日射遮蔽フィルム 窓用日射遮蔽フィルムについては、夏季にはフィルムの施工により室内へ入り込む日射の熱量 の削減効果を測定し、冬期の日射遮蔽によるエネルギー消費の増大影響と合わせて把握する。そ のためには、フィルムの施工の有無が室内側の日射量を削減する程度とフィルム施工によりガラ ス面が吸熱することでガラスが暖まることによる赤外放射熱の影響を測定する。日射計と赤外放 射計を併用した測定ができれば望ましいが、簡易的な計測方法としては図に示したように日射計 と表面温度の測定を組み合わせる方法がある。ヒートアイランド対策効果については、ガラスか ら屋外に放射される赤外放射の影響を測定する。 測定項目 必須項目選定理由 A:ガラス外側(施工面) 温度、日射量 ヒートアイランド影響(対策有) B:ガラス内側(施工面) 温度、日射量 CO2 削減効果(対策有) C:ガラス外側(非施工面) 温度 ヒートアイランド影響(対策無) D:ガラス内側(非施工面) 温度、日射量 CO2 削減効果(対策無) ※下線付きの斜体は必須項目 図 5-46 窓用日射遮蔽フィルムによる対策効果の測定例 B C D ガラス A フィルム 地中 熱交換 or 凝縮器 A B C

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5.3.2 測定結果報告書の作成 1)CO2 削減効果の算出 屋上・壁面緑化、高反射率塗料、窓用日射遮蔽フィルムの CO2 の削減効果については、これま で述べたとおり、表面温度もしくは熱貫流量(窓用日射遮蔽フィルムについては日射量)の測定 を行い、居室内にどれだけの熱エネルギーが侵入したかを計測し、そのデータから CO2 削減効果 を把握する。しかし、実際の空調負荷削減効果や CO2 削減効果を算出するためには、居室内の気 流等に関してさらなる検討を行い、緻密なモデルを構築する必要がある。ここでは、導入事業者 等が比較的簡便に CO2 削減効果を把握できるように、スラブ等における熱伝導という枠組みの中 で考え方を整理する。 CO2 削減効果の評価は通年で実施する必要があるが、季節ごとに評価結果が異なるものについ ては、季節ごとに評価を行うことが望ましい。空調に対する影響が逆転する暖房期間、冷房期間 に分けた評価も有効であると考えられる。 データの記録頻度については、1日の変動を抑えるために最低1時間間隔の記録が必要である と考えられる。しかし、温度変化が大きく瞬時値が変化しやすい高反射率塗料の場合などは、よ り細かい頻度でデータの記録を行い、平均化した値を代表値とすることが好ましい。 以下、屋上緑化を例に CO2 削減効果の算出方法を示す。 まず、屋上直下の居室において天井の熱流量を測定した場合を考える(図 5-47)。熱流量はそ の瞬間に居室に侵入する熱負荷であるため、その値を直接用いる、もしくは空調の稼働時間平均 を取るなどして、CO2 削減効果を算出すればよい。CO2 削減効果の計算は、施工部と未施工部につ いて熱流量の差分を取り、それに空調機器の COP の情報を合わせて、空調消費電力量の削減分を 算出する。その値に CO2 排出原単位を乗じることで、CO2 削減量の算出を行うことができる。 次に、屋上で表面温度を測定した場合を考える(図 5-48)。屋上表面の熱が屋上スラブ中を伝 達して居室内に到達するまでには時間を要するため、天井の熱流量を測定した場合と異なり、測 定値をそのまま用いて空調負荷の計算を行うことは、実際と離れる可能性がある。そこで、表面 温度の空調の稼働時間平均や 24 時間平均などの平均値を代表値と考え、CO2 削減効果を検討する 必要があると考えられる。CO2 削減効果の算出は、屋上の表面温度の代表値と屋上スラブや土壌 層の熱貫流率から熱流量を算出し、空調稼働時間を乗じることで算出する。なお、土壌層は含水 率等によって熱伝達率が異なる場合があるため、土壌層上部での表面温度の測定値を用いた計算 では、実際と離れる可能性がある。そのため、土壌層と屋上スラブの間での温度測定が望ましい。 その場合は、建物の屋上スラブのみの熱伝達を考えればよい。 地中熱を利用した高効率空調の場合には、測定した入口・出口間での温度差と熱媒流量から消 費エネルギーを算出し、その消費エネルギーと空調機器の消費電力からシステムの COP を算出す る。算出した COP とシステム導入前の空調機器の COP の差から、CO2 削減効果を求める。

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1月 2月 屋根面積 100 m2 3月 冷房 2.7 4月 暖房 3 5月 12 h/day 6月 - day/month 7月 8月 0.555 kgCO2/kWh 9月 10月 11月 12月 年間合計 月 8 月 空調 0 (冷房:0、暖房:1) 未施工部 施工部 差分 未施工部 施工部 低下率(%) 冷房 暖房 合計 1 -2 -3 -・ -・ -・ -15 40.0 30.0 10.0 20.0 5.0 75.0 1.5 6.7 0.0 6.7 3.7 ・ -・ -・ -29 -30 -31 -合計 3.7 空調COP 空調運転 時間 -月間CO2削減率 (kgCO2) -CO2削減 量 (kgCO2) 3.7 表面温度(℃) 貫流熱負荷量(W/m2) 空調消費電力削減量(kWh) 3.7 CO2排出源単価 日 空調負荷 削減量(kW) -図 5-47 熱流量を測定した場合の CO2 削減量の計算例

↑CO2 削減効果

↑熱流量測定結果の入力

屋上緑化施工面 屋上緑化非施工面 屋上スラブ 土壌層

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1月 未施工部 施工部 2月 屋根面積 100 m2 土壌 0.62 37 3月 冷房 2.7 トレイ 0.03 46 4月 暖房 3 防水 0.11 0.6 0.6 5月 12 h/day 空気層 6.67 0 6月 - day/month 断熱材 0.04 25 25 7月 コンクリート 1.4 200 200 8月 冷房 26 ℃ 折半 72.7 9月 暖房 22 ℃ ボード 0.17 10月 1 11月 0.555 kgCO2/kWh 1 12月 1 年間合計 1.3 0.4 月 8 月 空調 0 (冷房:0、暖房:1) 未施工部 施工部 差分 未施工部 施工部 低下率(%) 冷房 暖房 合計 1 -2 -3 -・ -・ -・ -15 40.0 30.0 10.0 18.1 1.7 90.7 1.6 7.3 0.0 7.3 4.0 ・ -・ -・ -29 -30 -31 -合計 4.0 -月間CO2削減率 (kgCO2) -空調消費電力削減量(kWh) 熱貫流率(W/m2・K) 空調運転 時間 空調設定 温度 4.0 -表面温度(℃) 貫流熱負荷量(W/m2) 4.0 日 削減量(kW)空調負荷 CO2排出源単価 厚さ(mm) 素材 熱伝導率 (W/m・K) 空調COP CO2削減 量 (kgCO2) -図 5-48 表面温度を測定した場合の CO2 削減量の計算例 屋上緑化施工面 屋上緑化非施工面 屋上スラブ 土壌層

↑CO2 削減効果

↑表面温度測定結果の入力

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2)事業報告書のひな型の作成 対策技術導入後の測定結果の事業報告書としての取りまとめ方について、ひな形の作成を行っ た。測定結果を取りまとめる事業報告書には、対策工事や調査の概要、測定期間や方法、結果に ついて、具体的な内容が記載されている必要がある。また、測定結果については、グラフなどで 測定期間中のデータが確認できる必要がある他、CO2 排出削減量については、結果だけでなく、 算出方法についても明記必要であると考えられる。以下、記載が必要と考えられる各項目につい て、ひな形の作成を行うとともに、要点を整理した。 (1)対策工事概要 対策工事の概要には、ヒートアイランド対策技術の施工が行われた地点や面積などの記載が必 要である。この際、スケールや写真の添付も必要である。 図 5-49 対策工事概要のひな型

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(2)調査概要 調査概要には、測定項目について、図示なども交えながら明示する。図 5-50 には、ひな形を示 したが、一例として赤字で詳細を記入した。このようにどの地点で何を測定するのかを明確に記 載することが必要である。 図 5-50 調査概要のひな型 (3)測定期間 報告書には、測定を行った期間の記載が必要である。複数日での連続的な測定を行った場合は、 開始日、撤収日を明記し、合計の測定日数も併せて記す。

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(4)測定方法 測定方法には、測定に使用した機材の基本性能を記載する。また、データの測定位置について は、図面に図示するなどして明示する。この際、周辺建物等の影響が分かりやすいよう、方位等 の基本情報を記載するほか、周辺建物の状況についても必要に応じて記載する。 また、データの記録頻度についても記載を行う。 図 5-51 測定方法のひな型

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(5)測定結果 測定結果には、まず測定期間中の気象状況に関する記載が必要となる。具体的な項目として、 「気温」や「日射量」、「降水量」など、ヒートアイランド対策効果、CO2 排出量削減効果に影響 を与えうる気象条件について記載を行うものとする。なお、気象状況については、測定地点にお いて観測を行った場合はその結果を記載するほか、最寄りのアメダス等のデータを活用する。 次に、測定を行った表面温度や熱流量の値の経時変化について記載する。この際、経時変化の 傾向や、測定期間中の最高温度、対策面と非対策面での最大温度差などについても言及を行う。 CO2 排出量削減効果については、図に示したひな型に赤字で説明例を示したが、まず計算方法 について明記を行う。また、CO2 排出量削減効果については、空調機器の COP や設定温度、稼働 時間、また CO2 排出源単価などの入力値の影響も大きいため、これらの条件についても明記を行 う。 図 5-52 CO2 排出削減量の計算方法のひな型

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計算した CO2 排出削減量は、測定を行った表面温度や熱流量の値とともに記載する。図 5-53 の ひな型に示したように、表などにすると分かりやすいと考えられる。

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5.4 対策技術の普及啓発について

ヒートアイランド対策技術に関係するメーカーや各種工業会などにヒアリングを実施し、普及 啓発に関する市場やコスト等の情報収集を行った。

以下、各対策技術に関して、ヒアリング結果を基に普及啓発に関する情報を整理する。(表 5-2、 5-3)

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5-2

屋 上 緑 化 壁 面 緑 化 高 反 射 率 塗 料 超 親 水 性 光 触 媒 等 に よ る 水 を 活 用 し た 対 策 コ ス ト 屋 上 緑 化 の イ ニ シ ャ ル コ ス ト は 、 3 万 円 / m 2程 度 。 維 持 管 理 費 は 、 約 1 ,5 0 0 円 / m 2 ( 年 6 回 訪 問 、 1 0 0 m 2の 場 合 。 施 工 場 所 ・ 緑 化 の 形 態 等 に よ り 価 格 は 大 き く 異 な る ) 。 壁 面 緑 化 の イ ニ シ ャ ル コ ス ト は 、 8 ~ 1 0 万 円 / m 2。 維 持 管 理 費 は 、 約 6 ,0 0 0 円 / m 2( 年 6 回 訪 問 の 場 合 。 施 工 場 所 ・緑 化 の 形 態 等 に よ り 価 格 は 大 き く 異 な る ) 。 通 常 の 壁 面 の イ ニ シ ャ ル コ ス ト が 2 ~ 3 万 円 / m 2に 対 し て 、 壁 面 緑 化 は 少 な く と も 1 0 万 円 / m 2。 同 じ タ イ プ ( フ ッ 素 系 、 シ リ コ ン 系 な ど ) の 塗 料 の 場 合 、 一 般 塗 料 の 値 段 を 1 と す る と 、 高 反 射 率 塗 料 が 1 ~ 1 .5 程 度 。 屋 上 や 屋 根 の 塗 布 で は 、 工 事 費 に 占 め る 割 合 は 足 場 な ど の 付 帯 工 事 の 費 用 が 大 き い 。 工 法 自 体 は 一 般 塗 料 と 同 様 で あ る 。 塗 料 の 施 工 費 ( フ ッ 素 系 の 場 合 ) は 、 高 反射 率 塗 料 の 方 が 一 般 塗 料 よ り も 1 ~ 2 割 高 い 。 横 浜 市 水 道 局 の 場 合 、 イ ニ シ ャ ル コ ス ト 1 ,0 0 0万 円 ( そ の 内 R O 水 製 造 シ ス テ ム 関 連 が 4 割 程 度 ) 、 住 宅 向 け の 場 合 、 3 0 0 万 円 程 度 。 ( 光 触 媒 塗 布 の コ ス ト は 2, 0 0 0 ~ 3 ,0 0 0 円 / m 2) R O 水 製 造 シ ス テ ム 関 係 の ラ ン ニ ン グ コ ス ト は 、 4 0 ~ 50 万 円 / 年 ( 1 回 / 2 シ ー ズ ン の フ ィ ル タ ー 交 換 が 必 要 ) で 、 流 水 の 1 次 ろ 過 の フ ィ ル タ ー 代 は 、 数 千 円 / 年 ( 2 ~ 3 回 / 1 シ ー ズ ン の フ ィ ル タ ー 交 換 が 必 要 ) 。 耐 用 年 数 ・ 維 持 管 理 多 様 な 植 物 を 用 い た 庭 園 型 緑 化 は 、 維 持 管 理 が 必 要 と な る 。 個 人 顧 客 は 比 較 的 自 主 的 に 管 理 を 行 う 傾 向 が あ る が 、 法 人 顧 客 は 業 者 委 託 が 多 い ( 4 ~ 6 回 / 年 ) 。 草 花 で は 、 維 持 管 理 コ ス ト は 増 え る た め 、 費 用 対 効 果 の 得 ら れ る 集 客 施 設 な ど で 導 入 さ れ て い る 。 耐 久 性 は 、 基 本 的 に は 一 般 塗 料 と 変 わ ら な い 。 今 後 、 試 験 に よ る 確 認 が 必 要 で あ る が 、 高 日 射 反 射 率 塗 料 を 塗 装 し た 場 合 、 塗 装 さ れ た 素 材 の 温 度 は 日 中 と 夜 間 の 温 度 変 化 の 幅 が 小 さ く な る た め 、 塗 膜 の 劣 化 が 抑 制 さ れ る と 考 え ら れ る 。 耐 久 性 は 、 建 物 屋 上 な ど で 1 5 ~ 2 0 年 ( フ ッ 素 系 の 場 合 ) 、 道 路 に つ い て は 、 検 証 中 で あ る 。 特 別 な 管 理 は 必 要 な い が 、 屋 根 の 場 合 、 汚 れ る と 反 射 率 が 低 下 す る 。 高 圧 水 洗 等 で 洗 浄 し 反 射 率 の 復 元 を 行 う 場 合 が あ る 。 実 証 機 関 に お い て 、 2 年 間 は 性 能 が 落 ち な い こ と は 実 証 さ れ て い る 。 ノ ズ ル 等 の 清 掃 は 適 宜 必 要 に な る 場 合 が あ る 。 ノ ズ ル か ら 水 が き ち ん と 出 な い と 、 水 膜 の 形 成 に 支 障 が 出 る 可 能 性 が あ る た め 。 水 道 水 の 使 用 に よ っ て 、 窓 面 に ス ケ ー ル ( 析 出 物 ) が 発 生 す る 。 ス ケ ー ル が 発 生 す る と 、 見 た 目 が 汚 く な る だ け で は な く 、 窓 面 の 親 水 性 能 も 低 下 す る 。 市 場 2 0 0 7 ~ 0 8 年 以 前 は 新 築 が 主 体 で あ っ た が 、 既 存 ビ ル ( 一 般 的 に 耐 荷 重 60 kg / m 2) へ の 導 入 が 求 め ら れ る よ う に な っ て き た 。 人 の 目 に つ き や す い 場 所 、 例 え ば 比 較 的 屋 上 が 開 け て い る 建 物 に お け る 憩 い の 場 所 や 中 層 階 の 見 下 ろ せ る 場 所 な ど へ の 導 入 が 多 い 。 他 の 高 い 所 ( 周 辺 ビ ル や 観 覧 車 ) か ら 見 え る 屋 上 で は 、 付 加 価 値 が 生 ま れ る 。 ( パ シ フ ィ コ 横 浜 ) 癒 し 効 果 と い う 観 点 か ら は 、 緑 化 対 策 は 病 院 な ど の 施 設 に 向 い て い る 。 こ う い っ た 癒 し の 場 と し て の 効 果 や 人 々 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス ペ ー ス に な る な ど 、 福 利 厚 生 の 一 環 に な る 。 今 後 は 利 用 価 値 の 高 い 屋 上 緑 化 が 求 め ら れ る 。 例 え ば 、 「義 務 化 に よ り 芝 地 化 し た が 、 利 用 者 が い な い た め 庭 園 に し よ う 」 と 言 っ た 屋 上 緑 化 を 改 修 す る と い う 視 点 も あ り 、 実 際 に 需 要 も 出 て き て い る 。 目 隠 し ・ 景 観 配 慮 ・ ア ク セ ン ト な ど 、 環 境 配 慮 物 件 に は 採 用 さ れ て い る 。 景 観 配 慮 か ら 従 来 の ツ タ に よ る 壁 面 緑 化 だ け で は な く 、 集 客 施 設 な ど を 中 心 に 草 花 を 用 い た 壁 面 緑 化 も 増 え て い る 。 近 年 、 塗 料 全 体 の 売 上 げ の 伸 び は 横 ば い で あ る が 、 高 日 射 反 射 率 塗 料 は 2 0 04 年 ( 0 .0 8 % ) か ら 2 0 0 8 年 に は 3 倍 程 度 ( 0 .2 5 % ) の 伸 び を 示 し て い る 。 工 場 建 屋 は 屋 上 や 屋 根 の 規 模 が 大 き く 、 ま た 屋 根 の 断 熱 材 が 薄 い の で 、 体 感 的 に も 分 か る く ら い に 屋 内 の 気 温 低 減 効 果 が 得 ら れ 、 労 働 者 の 暑 熱 対 策 と な っ て い る 。 ま た 、 稼 働 が 日 中 を 中 心 と す る こ と も あ り 、 空 調 負 荷 削 減 効 果 が 確 実 に 現 れ る 。 近 年 は 道 路 へ の 塗 布 が 伸 び て お り 、 都 道 ( 東 京 都 ) の み で 1 年 間 当 た り 、 3 0 万 強 m 2の 施 工 実 績 が あ り 、 舗 装 の 打 換 時 に 実 施 す る 場 合 が 多 い 。 日 射 反 射 率 が 5 % 程 度 の ア ス フ ァ ル ト に 対 す る 施 工 は 、 非 常 に 効 果 的 で あ る 。 官 公 庁 や 設 計 事 務 所 、 民 間 事 業 者 な ど か ら 問 い 合 わ せ が あ る 。 導 入 を 検 討 し て い る 場 合 も あ る が 、 雨 水 の 確 保 が 難 し い こ と が 導 入 の 障 壁 と な っ て い る 。 ま た 、 R O 水 製 造 シ ス テ ム が 必 要 な 場 合 は 、 コ ス ト 面 が 問 題 に な っ て く る 。 超 親 水 性 光 触 媒 等 に よ る 水 を 活 用 し た 対 策 は 、 N S ビ ル で 導 入 事 例 が あ り 、 市 場 に 出 始 め て い る と 考 え ら れ る 。 普 及 ・ 啓 発 シ ャ ワ ー 効 果 や 話 題 性 な ど 、 集 客 効 果 が 期 待 で き 、 目 に つ く 緑 化 は 「 環 境 配 慮 を し て い る 企 業 で あ る 」と い う C S R 面 の メ ッ セ ー ジ に な る 。 屋 上 を 緑 化 し 庭 園 化 に し た こ と で 、 テ ナ ン ト の 福 利 厚 生 面 で 評 価 さ れ 、 テ ナ ン ト ビ ル の 価 値 が 上 が り 、 テ ナ ン ト が 入 る よ う に な っ た 例 が あ る 。 制 度 上 の 問 題 点 と し て 、 導 入 の 義 務 付 け は あ っ て も 、 そ の 後 の 維 持 管 理 に 対 す る チ ェ ッ ク 体 制 が な い こ と が あ る 。 こ れ が 、 緑 化 部 分 の 放 置 ・ 荒 廃 に つ な が っ て い る 。 ま た 、 セ ダ ム 緑 化 で ノ ー メ ン テ ナ ン ス の イ メ ー ジ が つ い て し ま い 、 顧 客 は メ ン テ ナ ン ス の 必 要 性 を 考 え て い な い 場 合 が 多 い こ と も 枯 れ の 原 因 の 一 つ で あ る 。 こ れ か ら は メ ン テ ナ ン ス の 必 要 性 を 理 解 し て も ら う こ と が 重 要 。 既 存 建 物 の 改 修 で は 、 屋 上 の 耐 荷 重 制 限 ( 60 kg / m 2) の た め に 、 芝 や セ ダ ム が 中 心 と な っ て し ま い 、 選 択 肢 は 少 な い 。 低 木 な ど を 植 え る た め に は 3 0 0 kg / m 2程 度 の 荷 重 強 度 で 建 築 物 を 設 計 す る が 、 上 層 階 で そ の 設 計 を す る の は コ ス ト が か か る た め 、 低 層 階 な ど で 実 施 し て い る 。 屋 上 緑 化 は 夏 季 の 冷 房 負 荷 を 減 ら す が 、 通 常 屋 上 ス ラ ブ 下 に は 十 分 な 断 熱 を 施 す こ と が 通 例 で あ る の で 、 緑 化 に よ る 断 熱 効 果 は 限 定 的 で あ る 。 ま た 、 空 調 負 荷 へ の 影 響 は 屋 上 直 下 居 室 に 対 す る も の で あ り 、 建 物 全 体 に 対 す る 影 響 は 小 さ い 。 同 じ 緑 化 を す る の で あ れ ば 、 屋 上 よ り も 、 地 上 面 の 舗 装 部 等 で 行 っ た 方 が 人 の 通 行 な ど に 伴 う 環 境 改 善 効 果 は 大 き い と 思 わ れ る 。 壁 面 緑 化 は 比 較 的 低 い 位 置 で の 実 施 が 多 い 。 歩 道 に 面 し た 壁 で は 、 視 覚 効 果 ・ 歩 行 者 へ の 輻 射 熱 の 軽 減 効 果 が 大 き い だ け で な く 、 メ ン テ ナ ン ス が 容 易 に な っ た り 、 風 の 影 響 が 少 な く な る な ど メ リ ッ ト が 多 い 。 季 節 感 の な い 市 街 地 に お い て 、 緑 化 は 季 節 感 を 提 供 す る こ と が で き る 。 都 市 に お け る 壁 面 の 面 積 自 体 は 屋 上 よ り も 多 い が 、 設 置 や メ ン テ ナ ン ス の 都 合 上 、 壁 面 緑 化 は 2 ~ 3 階 で の 導 入 が 現 実 的 な こ と や 日 当 た り な ど に よ り 導 入 壁 面 が 限 定 さ れ る た め 、 実 施 可 能 面 積 は 屋 上 緑 化 の 1 / 1 0 程 度 で あ る と 考 え ら れ る 。 ま が い も の な ど が 高 反 射 率 塗 料 と し て 出 回 っ て お り 、 市 場 の 健 全 化 が 必 要 と さ れ る 。 グ リ ー ン 購 入 へ の 申 請 が 2 月 に 採 用 さ れ た 。 製 品 J IS の 制 定 に 向 け た 動 き が あ る 。 ( 20 0 9 年 8 月 に 原 案 作 成 委 員 会 設 立 。 2 0 1 1 ~ 1 2 を 目 処 に 公 示 で き れ ば と 考 え て い る ) 今 度 の J IS で は 、 日 射 反 射 率 を 暴 露 2 年 で 80 % 保 持 す る こ と を 条 件 と す る 予 定 で あ る 。 施 主 は 表 面 温 度 の 低 下 よ り も 、 実 利 部 分 で あ る 空 調 コ ス ト 削 減 量 ( 室 温 低 下 ) を 気 に す る 。 し か し 、 実 際 の 効 果 は 空 調 の 利 用 方 法 ( 設 定 温 度 な ど ) な ど に か な り 影 響 さ れ る た め 、 的 確 に 示 す こ と は 難 し い 。 こ の 辺 り が 明 確 に な っ て く る と 普 及 の 後 押 し に な る か も し れ な い 。 雨 水 の 利 用 が 基 本 と な る た め 、 夏 季 に あ る 程 度 の 降 雨 が 見 込 ま れ る 必 要 が あ る 。 雨 水 の み で の シ ス テ ム 構 築 が で き れ ば ベ ス ト だ が 、 現 実 は 雨 水 の 確 保 が 難 し い 。 今 後 実 証 が 必 要 で あ る が 、 通 常 は 水 道 水 で 運 転 し 、 停 止 前 に 雨 水 で フ ラ ッ シ ン グ ( 流 水 に よ る 清 掃 ) を す る シ ス テ ム を 考 え て い る 。 そ れ が 実 現 で き れ ば 、 R O 水 製 造 シ ス テ ム 関 連 の 導 入 コ ス ト が な く な る た め 、 普 及 の 後 押 し に な る と 考 え ら れ る 。 D H C が あ る 地 域 な ど 、 雨 水 利 用 の イ ン フ ラ 整 備 が 整 っ て い る 環 境 で は 、 新 た な 雨 水 貯 留 の 必 要 が な い 上 に 、 R O 水 製 造 シ ス テ ム も 不 要 で あ る た め 、 実 現 性 が 高 い 。 普 及 に 当 た っ て は 、 ゼ ネ コ ン な ど 、 窓 口 と な れ る 事 業 者 が 必 要 不 可 欠 で あ る 。 し か し 、 導 入 に 適 し た 地 域 が 限 ら れ て し ま う ( 降 水 が あ る 、 水 貯 留 タ ン ク を 始 め と し た 設 備 を 置 く ス ペ ー ス が あ る ) た め 、 販 売 事 業 者 は な か な か 出 て こ な い 。

図 5-2 は、屋上緑化の施工前後で表面温度と電力量の違いを測定したものである。夏季の表面 温度は、緑化施工後に大きく低下している。また、電力使用量に関しても緑化施工後に低下して いる。  図 5-2  屋上緑化による消費電力の変化 3 図 5-3 には、屋上緑化庭園におけるアスファルト部分と芝生部分、パーゴラ部分で行ったグロ ーブ温度と温冷感の申告試験結果を示す。グローブ温度は、冬季を除き、アスファルトおよび芝 生地点と、パーゴラ地点の間に差が見られる。これはアスファルトや芝生が日なたであったのに 対して
図 5-7 には、緑化パネル(図 5-6)を用いて行なわれた、体感温度の検討結果を示した。図 5-7 に示した表面温度の日推移からは、明け方と午後以降において、白色のコンクリートよりも緑化 面で低くなっていた。また、体感指標である SET * や WBGT では緑化面付近における値が低くなって いた。  図 5-6  緑化パネル写真 5 図 5-7  壁面緑化面とコンクリート面における、表面温度、SET * 、WBGT の日推移 5
図 5-16、5-17 には、密粒度アスファルト混合物を使用した標準工区と、保水性舗装を施工した 工区(舗装厚さ5cm および 10cm)における路面温度(路面下5mm における舗装内部温度)と、 測定結果より算出された長波放射量と顕熱輸送量を示した。図 5-16 より、降雨後に晴れた3日目 の最高路面温度は標準工区が 40℃に対して保水性舗装(5cm)が 32℃となっていた。図 5-17 より、 保水性舗装の長波放射量は、24 時間を通じて標準工区よりも少ない傾向を示し、最大では、長波 放射量が最大となる
図 5-21 に示したモデル住宅(4人住まい、一定の断熱性能、快適な生活を維持する冷暖房・照 明等の設備があること)において、図 5-22 に示した熱源システムを組み込んだ場合のライフサイ クル CO2 を計算した例では、図 5-23 のような結果が得られており、基準住宅に比べて全体で約 25%(年間 20kg-CO2/年・m 2 )の CO2 削減量となっている。これは住宅のライフサイクル全体に おいて、運用段階の CO2 排出量が多いことが影響している。  図 5-21  モデル住宅概略図 13
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