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東日本大震災における液状化被害と時系列地理空間情報の利活用

Liquefaction Damage of the Great East Japan Earthquake and

Utilization of Time Serial Geographic Information

地理地殻活動研究センター 小荒井 衛・中埜貴元・乙井康成

Geography and Crustal Dynamics Research Center

Mamoru KOARAI, Takayuki NAKANO and Kousei OTOI

関東地方測量部 宇根 寛・川本利一

Kanto Regional Survey Department Hiroshi UNE and Riichi KAWAMOTO

浦安市役所 醍醐恵二

Urayasu City Keiji DAIGO

要 旨 平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震(以 下,「東北地方太平洋沖地震」という.)によって, 関東地方で広範囲にわたり液状化-流動化現象が発 生し,構造物の傾斜や沈下,地表の段差や陥没,波 状変形などの被害が生じた.特に,東京湾岸と利根 川下流域で著しかった.筆者らは茨城県や千葉県の 液状化現象が発生した場所で被災状況を把握し,土 地の成り立ちが把握できる時系列地理空間情報を活 用して,液状化被害の著しい地域の地形条件につい て整理した.主に活用した時系列地理情報等は,迅 速測図,旧版地形図,過去の空中写真,土地条件図, 治水地形分類図である.液状化を起こしやすい地形 は旧河道や水部を埋め立てたような場所であり,土 地の成り立ちを理解することがその土地の液状化に 対する脆弱性を知るのに役立ち,それには旧版地形 図や過去の空中写真などが有効であることを紹介す る.また,東京湾岸で甚大な液状化被害が発生した 浦安市について,液状化に伴う沈下量を面的に把握 するために,簡易水準測量を実施して得られた相対 的な沈下量を地震前後の航空レーザ測量結果の差分 図と比較した結果も紹介する. 1.はじめに 東北地方太平洋沖地震(M9.0)は,津波で多くの 人命や家屋等を喪失させた甚大な災害をもたらした だけでなく,関東地方の広大な範囲で液状化現象を 発生させ,家屋や公共施設,ライフライン等にも甚 大な被害を生じさせた. 国土交通省関東地方整備局が(社)地盤工学会に 委託した調査の報告書(関東地方整備局・地盤工学 会,2011)では,関東地方一円の液状化による被害 状況について総括的にとりまとめられている.その 報告書によると,関東地方の極めて広い範囲で液状 化現象が発生し,特に,東京湾岸部,利根川下流域 で集中して発生していた.その他には,川崎・横浜 方面,那珂川や久慈川方面,利根川中流,鬼怒川・ 小貝川流域,古利根川流域に散在している.一方, 九十九里平野や内房の袖ケ浦や木更津方面は,1987 年の千葉県東方沖地震では随所で液状化を起こした が,今回の地震では液状化の情報が極めて少なく, 実際にも液状化をほとんど起こしていない.今回の 地震で広範囲に液状化が発生したのは,関東地方の 広い範囲で震度6弱や5強などの強い揺れを記録し たことや,揺れが長時間にわたって継続したことな どが,その理由として考えられる. 本稿では,関東地方の液状化被害の実態と,液状 化を起こしやすい地形条件,並びにそれを把握する ために利用可能な時系列地理空間情報について紹介 する. 2.土地の履歴を知るのに活用可能な地理空間情報 液状化が生じるためには,強い地震動の他に,地 層が水を多く含んでいること,ゆるく堆積した砂で あることなどの条件が必要である.これらの条件が そろった液状化が発生する可能性の高い場所は,地 下水位の高い砂地盤で,例えば,埋立地,干拓地, 旧河道,砂丘・砂州間低地などがあげられる. 液状化の発生しやすい土地かどうかを知るには, その土地の成り立ち(履歴)を知ることが重要であ る.国土地理院では,これまでに整備してきた地形 図や空中写真等の時系列の地理空間情報をアーカイ ブ化し,一般へ提供している.これらの時系列地理 空間情報から土地の成り立ちを知り,液状化を起こ しやすい地域を予め把握しておくことが可能である. 2.1 旧版地形図 明治時代中期以降,国土地理院の前身の陸地測量 部時代から5万分1地形図などが全国整備されてき た.これらの旧版地形図は,国土地理院本院や各地 方測量部で閲覧が,本院と関東地方測量部で謄本交 付ができ,誰でも情報の入手は可能である.地形図 の図歴については,国土地理院のホームページから 検索が可能である.

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2.2 過去の空中写真 1940 年代後半に米軍が全国を 1/40,000 の写真縮 尺で撮影しており,国土地理院は主に 1960 年代以降 に 全 国 を 撮 影 し て い る . な お , 縮 尺 の 大 き な (1/10,000 程度)カラー空中写真は 1970 年代後半 以降に撮影されている.国土地理院のホームページ にある国土変遷アーカイブで検索・閲覧が可能であ る. 2.3 迅速測図 第一軍管地方二万分1迅速測図原図(以下,「迅速 測図」という.)は,明治 13 年~19 年にかけて参謀 本部が作成した地図である.関東平野のほぼ全域と 房総・三浦半島をカバーしている.フランス式の彩 色を施した図式に特徴があり,当時の景観を把握し やすい.迅速測図については,復刻版が日本地図セ ンターから地区ごとに販売されている.また,(独) 農業環境技術研究所ホームページの「歴史的農業環 境閲覧システム」で閲覧可能である.このシステム では,迅速測図をシームレスで基盤地図情報と重ね て表示することもでき,土地の変遷を把握するのに 有効である. 2.4 主題図(土地条件図・治水地形分類図) 土地の履歴を知るには,その土地の地形発達が読 み解ける地形分類の情報も有効である.そのような 情報を含んだ主題図情報として,土地条件図,治水 地形分類図がある.液状化を起こしやすい地形とし ては,旧河道のほか,干拓地,盛土地,埋立地など の人工地形も重要である.これらの主題図の整備地 域は限定されるが,整備範囲や図の凡例,図の閲覧 等は,国土地理院のホームページから得ることが出 来る. 3.液状化被害と土地の履歴との関連 本章では,液状化被害の現況調査を行った箇所の うち,時系列地理空間情報を活用して土地の履歴と の関連性が明確であった代表的な箇所について紹介 する.紹介する箇所の位置図は図-1に示す. 3.1 千葉県我孫子市布佐 千葉県我孫子市の JR 布佐駅周辺で液状化現象が 認められた.液状化の被害が顕著な箇所は限定的で あり,布佐から都の境界付近から,布佐酉町の北部 にかけての地域である(図-2の赤い破線楕円部分 がおおよその位置).噴砂や,電柱・ブロック塀・家 屋の傾動・沈下,地波現象(道路の波打ち)などの 液状化被害が生じていた(写真-1).なお,この地 域は,1987 年千葉県東方沖地震では液状化被害の報 告はない.顕著な液状化現象は限定した範囲で出現 しているので,そこの土地の変遷を見てみる.治水 地形分類図を見ると,被害の大きかった場所は旧河 道の沼を埋め立てた土地であることがわかる(図- 3の水色横縞模様部分).1947 年撮影の米軍空中写 真(USA-M675-1)を見ると北東-南西方向に延びる 細長い水部が存在している(図-4).今回の地震で 液状化が激しかった県道沿いの帯状の箇所が,その 細長い水部の箇所に一致している.1962 年撮影の空 中写真(MKT62-1 C11-17)では,その水部に該当す る箇所が埋め立てられ住宅地となっている(図-5). 図-1 調査結果報告箇所位置図

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2.2 過去の空中写真 1940 年代後半に米軍が全国を 1/40,000 の写真縮 尺で撮影しており,国土地理院は主に 1960 年代以降 に 全 国 を 撮 影 し て い る . な お , 縮 尺 の 大 き な (1/10,000 程度)カラー空中写真は 1970 年代後半 以降に撮影されている.国土地理院のホームページ にある国土変遷アーカイブで検索・閲覧が可能であ る. 2.3 迅速測図 第一軍管地方二万分1迅速測図原図(以下,「迅速 測図」という.)は,明治 13 年~19 年にかけて参謀 本部が作成した地図である.関東平野のほぼ全域と 房総・三浦半島をカバーしている.フランス式の彩 色を施した図式に特徴があり,当時の景観を把握し やすい.迅速測図については,復刻版が日本地図セ ンターから地区ごとに販売されている.また,(独) 農業環境技術研究所ホームページの「歴史的農業環 境閲覧システム」で閲覧可能である.このシステム では,迅速測図をシームレスで基盤地図情報と重ね て表示することもでき,土地の変遷を把握するのに 有効である. 2.4 主題図(土地条件図・治水地形分類図) 土地の履歴を知るには,その土地の地形発達が読 み解ける地形分類の情報も有効である.そのような 情報を含んだ主題図情報として,土地条件図,治水 地形分類図がある.液状化を起こしやすい地形とし ては,旧河道のほか,干拓地,盛土地,埋立地など の人工地形も重要である.これらの主題図の整備地 域は限定されるが,整備範囲や図の凡例,図の閲覧 等は,国土地理院のホームページから得ることが出 来る. 3.液状化被害と土地の履歴との関連 本章では,液状化被害の現況調査を行った箇所の うち,時系列地理空間情報を活用して土地の履歴と の関連性が明確であった代表的な箇所について紹介 する.紹介する箇所の位置図は図-1に示す. 3.1 千葉県我孫子市布佐 千葉県我孫子市の JR 布佐駅周辺で液状化現象が 認められた.液状化の被害が顕著な箇所は限定的で あり,布佐から都の境界付近から,布佐酉町の北部 にかけての地域である(図-2の赤い破線楕円部分 がおおよその位置).噴砂や,電柱・ブロック塀・家 屋の傾動・沈下,地波現象(道路の波打ち)などの 液状化被害が生じていた(写真-1).なお,この地 域は,1987 年千葉県東方沖地震では液状化被害の報 告はない.顕著な液状化現象は限定した範囲で出現 しているので,そこの土地の変遷を見てみる.治水 地形分類図を見ると,被害の大きかった場所は旧河 道の沼を埋め立てた土地であることがわかる(図- 3の水色横縞模様部分).1947 年撮影の米軍空中写 真(USA-M675-1)を見ると北東-南西方向に延びる 細長い水部が存在している(図-4).今回の地震で 液状化が激しかった県道沿いの帯状の箇所が,その 細長い水部の箇所に一致している.1962 年撮影の空 中写真(MKT62-1 C11-17)では,その水部に該当す る箇所が埋め立てられ住宅地となっている(図-5). 図-1 調査結果報告箇所位置図 図-2 我孫子市布佐地区の液状化被害集中地域(背景は電子国土Webシステムを使用) 写真-1 我孫子市布佐地区の現地写真 図-3 我孫子市布佐地区の治水地形分類図

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図-4 米軍1947年撮影空中写真 (USA-M675-1) 図-5 国土地理院1962年撮影空中写真(MKT62-1 C11-17) 我孫子市は 2010 年に「あびこ防災マップ」を作成 し,市民に配布している.この中には液状化危険度 マップも含まれている.図-2に示された液状化被 害が著しかった範囲は,液状化危険度マップでは大 部分が液状化の危険度がほとんどないとされている. 液状化危険度マップの作成にあたっては、内閣府の 「地震ハザードマップ作成技術資料」に従い,5万 分の1土地分類基本調査の地形分類図を用いて 50 mメッシュの微地形区分データを作成し,メッシュ 毎に液状化危険度の評価を行っている.地形分類図 では該当箇所は盛土地となっており,水部の埋め立 てという情報が入っておらず,空中写真や旧版地図 などの資料を活用して把握することのできる土地の 履歴の情報が反映できていなかった.また,メッシ ュ毎に平均化された微地形区分をもとに危険度の評 価を行ったため,仮に小面積の脆弱な地形の情報を 取得しても,それを反映できない可能性もある.以 上のことが,液状化の危険度を十分に評価できなか った一因と考えられる. 図-6 千葉県神崎町の神崎西方の液状化被害状況(背景は電子国土 Web システムを使用)

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図-4 米軍1947年撮影空中写真 (USA-M675-1) 図-5 国土地理院1962年撮影空中写真(MKT62-1 C11-17) 我孫子市は 2010 年に「あびこ防災マップ」を作成 し,市民に配布している.この中には液状化危険度 マップも含まれている.図-2に示された液状化被 害が著しかった範囲は,液状化危険度マップでは大 部分が液状化の危険度がほとんどないとされている. 液状化危険度マップの作成にあたっては、内閣府の 「地震ハザードマップ作成技術資料」に従い,5万 分の1土地分類基本調査の地形分類図を用いて 50 mメッシュの微地形区分データを作成し,メッシュ 毎に液状化危険度の評価を行っている.地形分類図 では該当箇所は盛土地となっており,水部の埋め立 てという情報が入っておらず,空中写真や旧版地図 などの資料を活用して把握することのできる土地の 履歴の情報が反映できていなかった.また,メッシ ュ毎に平均化された微地形区分をもとに危険度の評 価を行ったため,仮に小面積の脆弱な地形の情報を 取得しても,それを反映できない可能性もある.以 上のことが,液状化の危険度を十分に評価できなか った一因と考えられる. 図-6 千葉県神崎町の神崎西方の液状化被害状況(背景は電子国土 Web システムを使用) 3.2 千葉県神崎町(松崎から神崎神宿にかけて) 千葉県神崎町の松崎から神崎神宿にかけては,利 根川の旧河道を埋めた土地であり,土地条件図では 埋土地となっている(図-8).1987 年の千葉県東 方沖地震の際にも液状化が発生したが,今回の地震 でも液状化が発生している. 旧河道の埋土地では,地盤沈下等の影響か湿った 環境になっており,調査時点(6月)では田植えは 行われていなかった.大量の噴砂があり,噴砂の痕 跡等が残されていた(図-6のA).旧河道の北の縁 に沿った「天の川公園」では川底からの噴砂により 河川の中心部が砂で埋まっていた(図-6のB).公 園の駐車場では激しい亀裂やうねりが存在し,トイ レなどの構造物は 50cm 以上も抜け上がっていた(図 -6のC). この箇所は,明治 10 年代の迅速測図原図では,利 根川の本流となっている(図-7).その後の河川改 修で閉鎖された水部として残されたが,1947 年撮影 の米軍写真(USA-R391-23)では,旧河道が封鎖され 水部が干上がっていく過程がわかる(図-9).現在 は土地区画整理により周辺の水田と同じ高さとなり, 畦の形も整形されているので,現地で旧河道の存在 を認識するのは困難である.2005 年撮影のカラー空 中写真(CKT-2005-3X C10-22)では,色調の違いか ら旧河道の縁を判読することは可能である(図-10). 図-7 千葉県神崎町付近の迅速測図と基盤地図情報 の重ね合わせ 図-9 米軍 1947 年撮影空中写真(USA-R391-23) 図-8 千葉県神崎町付近の土地条件図 (土地条件図「佐原」の一部) 図-10 国土地理院2005年撮影空中写真 (CKT-2005-3X C10-22) 埋土地 当時の利根川 現在の利根川

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3.3 茨城県稲敷市結佐,千葉県香取市石納 茨城県稲敷市結佐,千葉県香取市石納にかけては, 利根川の旧河道を埋めた土地である.1987 年の千葉 県東方沖地震の際にも液状化が発生したが,今回の 地震でも液状化が発生している(図-11). 稲敷市の上結佐地区と六角地区の北側(図-11 の A)では,液状化による住宅の傾動や沈下,道路の 波打ちなどが認められた.水田や畑には噴砂した痕 跡があり,水田を埋土した住宅では盛土部分が崩落 して割れ目が入り,宅地ごと傾動している住宅があ った.また,全体が大きく沈下して,道路や住宅ご と水没している箇所もあった.この地区は,昭和 20 年代の2万5千分1地形図を見ると,沼が存在して いることがわかる(図-12). 香取市の野間谷原地区・石納地区と稲敷市の中新 田地区の間(図-11 のB~B’にかけて)では,水 田で広域的に噴砂している地域が多く,調査時点 (2011 年6月)で田植えをしている水田はほとんど 無い状況であった.そこに立地しているマンション では,20cm 弱ほどの抜け上がりが観察された.一方 で,少なくとも明治時代からの陸地である香取市野 間谷原地区・石納地区(図-11 のC),稲敷市中新 田地区(図-11 のD)では,液状化(噴砂等)は確 認できなかった. この地域は,迅速測図を見ると明治 10 年代には利 根川の河道であった(図-13).その後,利根川の河 道付け替えがなされたが,この場所は今も千葉県と 茨城県の県境となっている.昭和 20 年代の2万5千 分1地形図を見ると(図-12),利根川本流ではない が,水部としてまだ残されている.このような利根 川の旧河道や昔の沼地だった地域で,液状化が発生 している. 図-11 稲敷市結佐,香取市石納地区の主な液状化の様子(背景図は電子国土Webシステムを使用)

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3.3 茨城県稲敷市結佐,千葉県香取市石納 茨城県稲敷市結佐,千葉県香取市石納にかけては, 利根川の旧河道を埋めた土地である.1987 年の千葉 県東方沖地震の際にも液状化が発生したが,今回の 地震でも液状化が発生している(図-11). 稲敷市の上結佐地区と六角地区の北側(図-11 の A)では,液状化による住宅の傾動や沈下,道路の 波打ちなどが認められた.水田や畑には噴砂した痕 跡があり,水田を埋土した住宅では盛土部分が崩落 して割れ目が入り,宅地ごと傾動している住宅があ った.また,全体が大きく沈下して,道路や住宅ご と水没している箇所もあった.この地区は,昭和 20 年代の2万5千分1地形図を見ると,沼が存在して いることがわかる(図-12). 香取市の野間谷原地区・石納地区と稲敷市の中新 田地区の間(図-11 のB~B’にかけて)では,水 田で広域的に噴砂している地域が多く,調査時点 (2011 年6月)で田植えをしている水田はほとんど 無い状況であった.そこに立地しているマンション では,20cm 弱ほどの抜け上がりが観察された.一方 で,少なくとも明治時代からの陸地である香取市野 間谷原地区・石納地区(図-11 のC),稲敷市中新 田地区(図-11 のD)では,液状化(噴砂等)は確 認できなかった. この地域は,迅速測図を見ると明治 10 年代には利 根川の河道であった(図-13).その後,利根川の河 道付け替えがなされたが,この場所は今も千葉県と 茨城県の県境となっている.昭和 20 年代の2万5千 分1地形図を見ると(図-12),利根川本流ではない が,水部としてまだ残されている.このような利根 川の旧河道や昔の沼地だった地域で,液状化が発生 している. 図-11 稲敷市結佐,香取市石納地区の主な液状化の様子(背景図は電子国土Webシステムを使用) 図-12 昭和20年代の2万5千分1地形図と液状化地域 (「佐原」(21年刊行),「麻生」(29年刊行)) 図-13 稲敷市結佐,香取市石納地区の迅速測図 に基盤地図情報を重ね合わせ 3.4 茨城県潮来市日の出 利根川沿岸では茨城県潮来市で甚大な液状化被害 が発生したが,特に日の出地区での被害が顕著であ った.液状化被害の代表的なものを図-14 に示す. 現地調査時点で主要道路の修復はある程度行われて いたが,電柱の傾きなどは手つかずで残されていた (A地点).日の出中学校では,校舎や体育館が 25cm 程度抜け上がっていた(B地点).全体として,北部 よりは南部の方が液状化被害の程度が大きい傾向に あり,C地域やD地域では道路の側溝が側方流動に よって圧縮されてしまい,側溝の蓋が変形して傾い てしまっていた.また,電柱の傾動もより大きい状 況である.場所によっては,干拓中に設置されてい た杭が抜け上がっているところもあり,周囲の家屋 も不等沈下により傾いていた(E地点). この地域は迅速測図(図-15)を見ると外浪逆浦 の入江である内浪逆浦を干拓した土地であることが わかる.そのため,液状化による顕著な被害が発生 したものと考えられる. 図-14 潮来市日の出地区の主な液状化の様子(背景は電子国土Webシステムを使用) 現在の利根川 当時の利根川

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図-15 潮来市日の出地区の迅速測図に基盤地図情報を 重ね合わせ 3.5 下妻市鬼怒 下妻市鬼怒地区には,周囲より標高が低い箇所が 蛇行した帯状に続いており,旧河道であることは明 瞭な地形が存在する.土地条件図でも旧河道に地形 分類されている(図-16). 旧河道は地形図上では水田となっている.最新の 空中写真(図-20)からは少なくとも 2008 年までは 耕作地として利用されていたことは確実である.現 状では旧河道自体が水没したような状況になってお り(写真-2),地盤沈下とそれによる相対的な地下 水位の上昇が推定される.また,周辺の道路には激 しい亀裂や地波現象(液状化により道路が波打つ現 象)が発生しており(写真-3),通行止めの措置が なされている.旧河道内の新興住宅地でも液状化が 発生していた.不等沈下による亀裂や外構等の低下 などが認められ,建物自体にも傾きや歪み等が認め られるものもあった.新興住宅地の周辺部の旧河道 内の住宅では,埋土の大きな沈下や擁壁の崩れなど により家屋が基礎から歪んでしまい,大きな破損が 生じた例もある(写真-4). 図-16 下妻市鬼怒周辺の土地条件図 破線は旧河道 写真-2 旧河道内の様子.全体に沈下して浸水 写真-3 道路上の亀裂や地波現象 写真-4 盛土が南西側に傾き、家屋も傾いている

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図-15 潮来市日の出地区の迅速測図に基盤地図情報を 重ね合わせ 3.5 下妻市鬼怒 下妻市鬼怒地区には,周囲より標高が低い箇所が 蛇行した帯状に続いており,旧河道であることは明 瞭な地形が存在する.土地条件図でも旧河道に地形 分類されている(図-16). 旧河道は地形図上では水田となっている.最新の 空中写真(図-20)からは少なくとも 2008 年までは 耕作地として利用されていたことは確実である.現 状では旧河道自体が水没したような状況になってお り(写真-2),地盤沈下とそれによる相対的な地下 水位の上昇が推定される.また,周辺の道路には激 しい亀裂や地波現象(液状化により道路が波打つ現 象)が発生しており(写真-3),通行止めの措置が なされている.旧河道内の新興住宅地でも液状化が 発生していた.不等沈下による亀裂や外構等の低下 などが認められ,建物自体にも傾きや歪み等が認め られるものもあった.新興住宅地の周辺部の旧河道 内の住宅では,埋土の大きな沈下や擁壁の崩れなど により家屋が基礎から歪んでしまい,大きな破損が 生じた例もある(写真-4). 図-16 下妻市鬼怒周辺の土地条件図 破線は旧河道 写真-2 旧河道内の様子.全体に沈下して浸水 写真-3 道路上の亀裂や地波現象 写真-4 盛土が南西側に傾き、家屋も傾いている この箇所は,明治 10 年代の迅速測図原図では,鬼 怒川の蛇行した本流となっている(図-17).その後 の河川改修で閉鎖された水部として残され(昭和9 年修正の5万分1地形図「水海道」(図-18)では, 新河道を工事中であることがわかる),1947 年撮影 の米軍空中写真(USA-R388-61)では旧河道が水田に なっていることが確認できる(図-19).1975 年撮 影の空中写真では,旧河道内の水田を一部埋め立て て開発が始まった様子がうかがえる.2005 年撮影の 空中写真では,新興住宅地で戸建て住宅が建設され はじめており,2008 年撮影の空中写真(CKT2008-2 C2-36)では,住宅の建築がより進められている様子 がうかがえる(図-20). 3.6 常総市吉野 吉野地区では小貝川の旧河道が三日月湖になって おり,そこが吉野公園と呼ばれる釣堀公園となって いる.2011 年 11 月現在旧河道の攻撃斜面側のみ公 園として開放しているが,対岸のポイントバーの箇 所は地震による地盤変状が著しく,立ち入り禁止の 措置をしている.そのため,東北地方太平洋沖地震 での被災状況をそのまま残しており,液状化被害の 実態を知るうえで貴重な場所である.吉野公園の現 地調査は,11 月に常総市職員の立会のもと行った. 吉野公園の被害状況を図-21 にまとめた. ポイントバー全体が旧河道側にはらみ出しており, 河川方向に沿って開口幅 40~50cm,深さ 40~70cm 程度の亀裂が多数存在する(図-21 のA).その亀 図-17 下妻市鬼怒地区の迅速測図 図-18 昭和9年修正5万分1地形図「水海道」 図-19 米軍 1947 年撮影空中写真( USA-R388-61) 図-20 国土地理院 2008 年撮影空中写真 (CKT2008-2 C3-36)

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裂に直交する方向にも開口亀裂が走っている.側方 流動によりレストハウスの基礎が高さ方向で約 70 ㎝低くなってしまい,大きく傾いて全壊していた(図 -21 のB).東屋も大きく傾いてしまい,開口幅 40 ㎝,深さ 80 ㎝位の亀裂が周辺に生じていた(図-21 のC).また,公園の背後には大きな水域があり蓮田 の痕跡が残されていたが,旧河道との間に設置され ていた水門が破壊され,完全に陥没して直接旧河道 とつながっていた(図-21 のD). 国土変遷アーカイブを見ると,1948 年撮影の空中 写真ではまだ小貝川の本川となっているが(図-22), 1961 年撮影の空中写真では小貝川の河道が短縮化 図-21 吉野公園の被害状況(背景は電子国土 Web シ ステム) 図-22 米軍 1948 年撮影空中写真(USA-R793-18) され,三日月湖になっている(図-23).明治 10 年 代の迅速測図を見ると,小貝川の河道の位置が米軍 写真の位置とは違っていることがわかる.自然によ る河道位置の変遷がそれなりにあったことが伺える. 明治初期の河道の位置が,現在の蓮田跡の池沼部に あたっているようである. 3.7 千葉市美浜区(検見川浜~稲毛海岸) 千葉県環境研究センター(2011a)では,千葉市美 浜区の JR 検見川浜駅~稲毛海岸駅にかけて液状化 調査を実施している.その結果を見ると,噴砂が海 岸線と直交する帯状の範囲に集中している.同様の 傾向は 1987 年千葉県東方沖地震でも確認されてお り,Koarai and Nakayama(1996)は,埋め立て前の 空中写真との重ね合わせやボーリングデータとの重 ね合わせを行い,沖積層の埋積谷や澪(浅い湖や遠 浅の海岸の水底に水の流れによってできる溝,また は,港口などで海底を掘って船を通りやすくした水 路)が影響していると考察した. 今 回 の 噴 砂 の 分 布 と 埋 め 立 て 前 の 空 中 写 真 (MKT617-C6-1~2)を重ね合わせた(図-24).黄色 の線で囲われた範囲が噴砂の集中帯で,写真上の赤 い点は噴砂集中帯以外の噴砂地点である.この図を 見ると,澪と噴砂地点には何らかの関係が有ること が示唆される.今後の詳細な検討が必要であるが, 検見川浜から稲毛海岸にかけての今回の地震での噴 砂の集中帯の出現は,千葉県東方沖と同じ原因によ ると考えられる. 4.千葉県浦安市の液状化による面的沈下状況 4.1 新浦安駅周辺での簡易水準測量結果 東京湾岸では浦安市での被害が甚大であったため, 浦安市の一部液状化発生箇所における地盤沈下量を 測量し,液状化現象の程度について分析を行った. 2011 年8月 10 日と 12 日に,JR 京葉線の新浦安駅 近傍の内陸から海岸方面にかけての直線上で簡易水 準測量を実施した.この方向には既存の水準路線が 図-23 国土地理院 1961 年撮影空中写真 (MKT-61-3 C23-24) A D C B A

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裂に直交する方向にも開口亀裂が走っている.側方 流動によりレストハウスの基礎が高さ方向で約 70 ㎝低くなってしまい,大きく傾いて全壊していた(図 -21 のB).東屋も大きく傾いてしまい,開口幅 40 ㎝,深さ 80 ㎝位の亀裂が周辺に生じていた(図-21 のC).また,公園の背後には大きな水域があり蓮田 の痕跡が残されていたが,旧河道との間に設置され ていた水門が破壊され,完全に陥没して直接旧河道 とつながっていた(図-21 のD). 国土変遷アーカイブを見ると,1948 年撮影の空中 写真ではまだ小貝川の本川となっているが(図-22), 1961 年撮影の空中写真では小貝川の河道が短縮化 図-21 吉野公園の被害状況(背景は電子国土 Web シ ステム) 図-22 米軍 1948 年撮影空中写真(USA-R793-18) され,三日月湖になっている(図-23).明治 10 年 代の迅速測図を見ると,小貝川の河道の位置が米軍 写真の位置とは違っていることがわかる.自然によ る河道位置の変遷がそれなりにあったことが伺える. 明治初期の河道の位置が,現在の蓮田跡の池沼部に あたっているようである. 3.7 千葉市美浜区(検見川浜~稲毛海岸) 千葉県環境研究センター(2011a)では,千葉市美 浜区の JR 検見川浜駅~稲毛海岸駅にかけて液状化 調査を実施している.その結果を見ると,噴砂が海 岸線と直交する帯状の範囲に集中している.同様の 傾向は 1987 年千葉県東方沖地震でも確認されてお り,Koarai and Nakayama(1996)は,埋め立て前の 空中写真との重ね合わせやボーリングデータとの重 ね合わせを行い,沖積層の埋積谷や澪(浅い湖や遠 浅の海岸の水底に水の流れによってできる溝,また は,港口などで海底を掘って船を通りやすくした水 路)が影響していると考察した. 今 回 の 噴 砂 の 分 布 と 埋 め 立 て 前 の 空 中 写 真 (MKT617-C6-1~2)を重ね合わせた(図-24).黄色 の線で囲われた範囲が噴砂の集中帯で,写真上の赤 い点は噴砂集中帯以外の噴砂地点である.この図を 見ると,澪と噴砂地点には何らかの関係が有ること が示唆される.今後の詳細な検討が必要であるが, 検見川浜から稲毛海岸にかけての今回の地震での噴 砂の集中帯の出現は,千葉県東方沖と同じ原因によ ると考えられる. 4.千葉県浦安市の液状化による面的沈下状況 4.1 新浦安駅周辺での簡易水準測量結果 東京湾岸では浦安市での被害が甚大であったため, 浦安市の一部液状化発生箇所における地盤沈下量を 測量し,液状化現象の程度について分析を行った. 2011 年8月 10 日と 12 日に,JR 京葉線の新浦安駅 近傍の内陸から海岸方面にかけての直線上で簡易水 準測量を実施した.この方向には既存の水準路線が 図-23 国土地理院 1961 年撮影空中写真 (MKT-61-3 C23-24) A D C B A 図-24 千葉市美浜区における噴砂の分布と埋め立て前の空中写真(MKT61-3 C6-1~2)との重ね合わせ 噴砂の分布は千葉県環境研究センター(2011a)による ないため,街区基準点を用いて水準測量を実施した. 地震前(2006 年 11,12 月)の街区基準点の観測成果 と比較した.改定された地震後の水準点成果はまだ 公表されていないため,液状化の観察されていない 最も陸側の観測点Aの変動量をゼロと仮定して, 2006 年からの変化量を算出した.その結果と液状化 発生箇所の把握結果との比較を行った. 調査結果を図-25 に示す.液状化が認められなか った昭和 39 年以前の陸地では,沈下は観測されなか った.液状化発生箇所にあっても,数㎝の沈下量の ところもあれば,数十㎝の沈下量のところもあり, 沈下の程度にバラツキがみられた.昭和 40~46 年の 埋立地では沈下量が3~7cm 程度であるのに対し, 昭和 47~53 年の埋立地では点Iを除いて 10cm 以上 の沈下量であり,海側の最近の埋立地で大きく沈下 し,古い埋立地ほど沈下が小さい傾向がみられた. なお,点Lより海側には街区基準点が設置されてい ないため,それよりも海側の沈下量については,水 準測量の手法では求めることができない. 点H付近では千葉県が定期的に水準測量を行って おり,2004 年から 2009 年までの5年間で4cm 程度 の地盤沈下が観測されている.図-22 の沈下量は, 地震時の液状化によるものだけではなく,地震前の 圧密沈下によるものも含んでいると考えられる. 4.2 航空レーザ測量の差分と水準測量との対比 浦安市(2011)では,東北地方太平洋沖地震によ 図-25 浦安市における沈下量の測量結果 る液状化に伴う面的な地盤変動状況を把握するため に,航空レーザ計測を実施している.被災前の 2006 年 12 月に取得していた航空レーザーデータと被災 後の 2011 年4月に取得した航空レーザーデータを 比較し,地盤変動状況に応じて色分けした標高差分 図を作成して,ホームページで公開している.なお, この差分はデジタル地形モデル(DTM)の差分である. 航空レーザの差分データと簡易水準測量による変 化量を重ね合わせたものを図-26 に示す.この結果

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は今回の震災の影響だけでなく経年的な地盤変動も 含んでいると考えられるが,全体的に地盤が沈下し ている傾向にあり,東京湾岸道路より南側の沈降量 が大きい.東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動(千 葉県の東京湾岸で約4cm 程度の沈降と考えられる) や5年で約4cm の圧密沈下,並びに航空レーザ測量 の垂直方向の精度が約 15cm 程度であることを考慮 すると,航空レーザの差分図では 30cm 以上の低下が 有意なものと考えられる.よって、以下の議論では 差分で 30cm 以上の低下(図-26 で青色以上の低下) のみを有意と判断して議論する. 黄色や赤色で表示されているのは地震後に高さが 増加した箇所であるが,一定以上の面積で認められ るのは四角い形状をしているものが多く,造成工事 等に伴う人工的な地形の変化と予想される.東京湾 岸道路沿いでも高さの増加が認められる箇所がある が,その周辺では樹林帯が存在していることから, 人工的なものか DEM の作成を行う際に部分的にフィ ルタリングが適切に行われなかった可能性が考えら れる. 液状化が認められなかった昭和 39 年以前の陸地 に関しては,航空レーザの差分図では,大半が緑色, 黄色なので,有意な沈下は無かったものと判断して 良い.一部パッチ上に青色以上の沈下を示す箇所が あるが,水準点周辺の現地調査を行った際には,主 なところでは建物工事による掘り下げ等が行われて おり,人工的な影響と判断した. 液状化が認められた昭和 40 年以降の埋立地につ いては,航空レーザ差分図は緑色と青色が混じった 感じになっているが,航空レーザで 30cm 以上の沈下 を有意と考えると,青色の濃さで液状化に伴う地盤 沈下の程度を判断するのが適切と考えられる.この ような視点で見た場合,特に沈降量が大きいのは, 境川の西側(今川,高洲),明海,日の出などであり, 明海や日の出では海側(南東側)の沈降量も大きい. もう少し俯瞰して青色の濃い箇所をみると,図-26 のA-B-C-Dと帯状に続く領域とBから分岐して E-Fと帯状に続く領域で濃い青色が続いており,液 状化に伴う地盤沈下の大きな地域が樹枝状の形で帯 状に連続することがわかる.そのような箇所は,現 地調査を行うと噴砂現象や地盤変状が激しく起こり, 地盤変状に伴う建物の抜け上がりや傾きなども酷い 状況であることが確認できた.例えば図-26 のD地 点では,濃い青色をした領域が狭く(家2軒分程度 の幅で)帯状に連続するが,そこに該当する道路で は変状が激しく,家屋の傾きや塀の亀裂,庭での噴 砂痕などの大きな地盤変状の影響が残されており, 航空レーザの差分による低下量が大きい箇所で,液 状化被害の程度が激しくなっており,地盤沈下量と 被害状況が良く対応していた. 図-26 航空レーザ測量による標高差分図と水準測 量による相対沈下量の重ね合わせ 水準測量で約 45cm と最も大きな沈下量を示した J 地点周辺では特に濃い青色が円上に分布しており, そこの部分がすり鉢状に沈下していることがわかる. 現地調査でもその周辺のマンションで約 40cm の抜 け上がりが数箇所で計測されている.他に5cm 以上 の沈下を示したG地点とそれより海側の街区基準点 でも,その近傍で噴砂等が確認されており,周辺の 構造物に数 cm 程度の抜け上がりが観察された.よっ て,街区基準点の沈下量は周辺の地盤沈下量を適切 に反映しているとみなせる. 街区基準点の沈下量とその近傍9メッシュ(航空 レーザのデータは2メッシュなので6m四方とな る)の航空レーザの差分データの平均値の関係をグ ラフ化したものを図-27 に示す.この関係を見ると, 簡易水準測量による沈下量が大きい箇所で航空レー ザによる差分による低下量が大きいので,両データ の対応は概ね良いと判断できる. ただし,絶対値的な対応は必ずしも良いわけでは ない.水準測量で 10cm 以下の沈下量であった街区基 準点近傍の航空レーザの差分による低下量は約 20 ~30cm である.この航空レーザの差分による低下量 は有意なのか否かは判断が難しい.また,水準測量 A C B D E F 東京湾岸道路

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は今回の震災の影響だけでなく経年的な地盤変動も 含んでいると考えられるが,全体的に地盤が沈下し ている傾向にあり,東京湾岸道路より南側の沈降量 が大きい.東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動(千 葉県の東京湾岸で約4cm 程度の沈降と考えられる) や5年で約4cm の圧密沈下,並びに航空レーザ測量 の垂直方向の精度が約 15cm 程度であることを考慮 すると,航空レーザの差分図では 30cm 以上の低下が 有意なものと考えられる.よって、以下の議論では 差分で 30cm 以上の低下(図-26 で青色以上の低下) のみを有意と判断して議論する. 黄色や赤色で表示されているのは地震後に高さが 増加した箇所であるが,一定以上の面積で認められ るのは四角い形状をしているものが多く,造成工事 等に伴う人工的な地形の変化と予想される.東京湾 岸道路沿いでも高さの増加が認められる箇所がある が,その周辺では樹林帯が存在していることから, 人工的なものか DEM の作成を行う際に部分的にフィ ルタリングが適切に行われなかった可能性が考えら れる. 液状化が認められなかった昭和 39 年以前の陸地 に関しては,航空レーザの差分図では,大半が緑色, 黄色なので,有意な沈下は無かったものと判断して 良い.一部パッチ上に青色以上の沈下を示す箇所が あるが,水準点周辺の現地調査を行った際には,主 なところでは建物工事による掘り下げ等が行われて おり,人工的な影響と判断した. 液状化が認められた昭和 40 年以降の埋立地につ いては,航空レーザ差分図は緑色と青色が混じった 感じになっているが,航空レーザで 30cm 以上の沈下 を有意と考えると,青色の濃さで液状化に伴う地盤 沈下の程度を判断するのが適切と考えられる.この ような視点で見た場合,特に沈降量が大きいのは, 境川の西側(今川,高洲),明海,日の出などであり, 明海や日の出では海側(南東側)の沈降量も大きい. もう少し俯瞰して青色の濃い箇所をみると,図-26 のA-B-C-Dと帯状に続く領域とBから分岐して E-Fと帯状に続く領域で濃い青色が続いており,液 状化に伴う地盤沈下の大きな地域が樹枝状の形で帯 状に連続することがわかる.そのような箇所は,現 地調査を行うと噴砂現象や地盤変状が激しく起こり, 地盤変状に伴う建物の抜け上がりや傾きなども酷い 状況であることが確認できた.例えば図-26 のD地 点では,濃い青色をした領域が狭く(家2軒分程度 の幅で)帯状に連続するが,そこに該当する道路で は変状が激しく,家屋の傾きや塀の亀裂,庭での噴 砂痕などの大きな地盤変状の影響が残されており, 航空レーザの差分による低下量が大きい箇所で,液 状化被害の程度が激しくなっており,地盤沈下量と 被害状況が良く対応していた. 図-26 航空レーザ測量による標高差分図と水準測 量による相対沈下量の重ね合わせ 水準測量で約 45cm と最も大きな沈下量を示した J 地点周辺では特に濃い青色が円上に分布しており, そこの部分がすり鉢状に沈下していることがわかる. 現地調査でもその周辺のマンションで約 40cm の抜 け上がりが数箇所で計測されている.他に5cm 以上 の沈下を示したG地点とそれより海側の街区基準点 でも,その近傍で噴砂等が確認されており,周辺の 構造物に数 cm 程度の抜け上がりが観察された.よっ て,街区基準点の沈下量は周辺の地盤沈下量を適切 に反映しているとみなせる. 街区基準点の沈下量とその近傍9メッシュ(航空 レーザのデータは2メッシュなので6m四方とな る)の航空レーザの差分データの平均値の関係をグ ラフ化したものを図-27 に示す.この関係を見ると, 簡易水準測量による沈下量が大きい箇所で航空レー ザによる差分による低下量が大きいので,両データ の対応は概ね良いと判断できる. ただし,絶対値的な対応は必ずしも良いわけでは ない.水準測量で 10cm 以下の沈下量であった街区基 準点近傍の航空レーザの差分による低下量は約 20 ~30cm である.この航空レーザの差分による低下量 は有意なのか否かは判断が難しい.また,水準測量 A C B D E F 東京湾岸道路 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 簡易水準(cm) 航空レ ー ザ(9 メ ッ シ ュ 平 均 、cm) 図-27 水準測量による街区基準点の沈下量と航空レ ーザ差分図による変化量との関連性 で 10~15cm の沈下量であった街区基準点近傍の航 空レーザの差分による低下量は約 20~35cm,水準測 量で約 45cm の沈下量であった街区基準点近傍の航 空レーザの差分による低下量は約 50cm である.全体 的に,航空レーザの差分による低下量は,簡易水準 測量による沈下量よりも大きい傾向がある. 航空レーザの差分値の絶対値には問題が残るもの の,沈下の程度の大小等の相対的な変動量の判断や, 細かなパッチ状の変状を除いた全体的な沈下分布の 傾向を見るには,十分な精度を持っているものと判 断され,浦安市の液状化に伴う面的な地盤沈下量を 把握するには,有効な成果と考えられる. 4.3 航空レーザ測量の差分と基礎杭建物の抜け 上がり量との対比 千葉県環境研究センター(2011b)では,杭基礎を 持つと思われる構造物の抜け上がり量(≒表層の沈 下量)を計測して,ホームページで公開している. 千葉県環境研究センター地質環境研究室への聞き取 りによると、このデータは1つの建物について数点 以上で測った結果の代表値で,その建物の中心位置 にプロットしており,圧密沈下による抜け上がりを 極力排除して,今回の地震による抜け上がり量のみ を計測しているとのことである.また筆者らは現地 調査の際に,代表的な建物 10 数棟について抜け上が り量の計測を行ったが,その数値は千葉県環境研究 センターの数値とほぼ同様のものであった. よってこのデータは,戸建て住宅地域や建物の無 い地域を除いて高密度に計測されており,地殻変動 による沈下量や圧密沈下は含んでいないため,表層 の沈下量を正確に計測していると予想される.従っ て,液状化による面的な沈下量を求める際には非常 に参考になるデータと考えられる. このデータを GIS データ化して,航空レーザによ る差分図と重ね合わせたものを図-28 に示す.デー タを見る限りでは,東京湾岸道路よりに南で抜け上 がり量が大きい.特に抜け上がり量が大きいのは, 京葉線より北の境川沿い(富岡二丁目:図-28 のA, 美浜二丁目:図-28 のB),高洲(図-28 のC),明 海(図-28 のD),日の出(図-28 のE)などであ るが,日の出,明海の海側(南東側)は抜け上がり 量が小さくなっている.この分布は,定性的には4. 2節で示した樹枝状で帯状に分布する航空レーザの 差分による低下量が大きい地域と概ね一致する.今 後は,杭基礎建物の抜け上がり量の GIS データと航 空レーザの差分情報等と対応付けて,より定量的な 解析を行っていく予定である. 5.おわりに 以上,東日本大震災における液状化による被害実 態等について,土地の成り立ちとの関連性が深いも のを中心に紹介した.また,土地の成り立ちを知る のに旧版地形図や過去の空中写真等の時系列地理空 間情報が役に立つことも紹介した.いずれの事例も 旧河道や水部の埋立地であり,時系列地理空間情報 を活用することでその履歴を詳細に明らかにするこ とができる. 浦安市については,簡易水準測量や航空レーザ測 量データを基に,液状化による沈下量を面的に求め る手法について紹介した.簡易水準測量の結果は現 地の沈下量を適切に反映していた.航空レーザの差 分データは,簡易水準測量の結果と比較したところ, 地域全体の沈下量の相対的大小を面的に捉えること は可能であることがわかり,相対的に沈下量の大き い箇所が樹枝状で帯状に分布することを捉えること ができた.この傾向は,杭基礎建物の抜け上がり量 の大きい箇所とも概ね一致するようである. 現在,首都圏直下型地震や東海・東南海・南海地 震などが想定されているが,液状化災害を予め想定 しておくことが,地域の防災力を高める上でも重要 であると考える.本稿がそのような視点でお役に立 てれば,望外の喜びである.最後に,今回の大震災 で被災した皆様に,心よりお見舞い申し上げます.

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図-28 杭基礎建物の抜け上がり量(千葉県環境研究センター,2011b)と航空レーザ測量による標高差 分図との重ね合わせ(航空レーザ差分図の凡例は図-26 と同じ.抜け上がり量の色は航空レーザ 差分図の色と同様) 謝 辞 航空レーザによる解析の一部は,浦安市を通して 国際航業の向山栄氏に行っていただいた.千葉県環 境研究センターの風岡修氏,古野邦雄氏,吉田剛氏 には,同センターで公表した抜け上がり量図につい て色々御教示頂いた.土木研究所土質・振動グルー プの佐々木哲也上席研究員,石原雅規主任研究員に は,液状化に関して色々御教示頂いた.また,常総 市役所産業観光課には吉野公園の現地調査の際に便 宜を図って頂き,調査に同行して頂いた.以上の方々 に,心より感謝申し上げます. 参 考 文 献 千葉県環境研究センター(2011a):平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震による東京湾岸埋め立て地 での液状化-流動化被害(第1報),http://www.wit.pref.chiba.lg.jp/_sui_chi/chishitu/touhoku/ekij ouka20110318s.pdf (accessed 26 Dec.2011).

千葉県環境研究センター(2011b):第3報 千葉県内の液状化-液状化現象とその被害の概要及び詳細分布 調査結果-浦安地区(1)-,http://www.wit.pref.chiba.lg.jp/_sui_chi/chishitu/touhoku/dai3/ekijou ka3a.pdf (accessed 26 Dec.2011).

Koarai and Nakayama(1996): The Geological and Topographic Conditions of Reclaimed Lands affecting the Distribution of Liquefied Sites –A Case Study on the Coastal Area of Tokyo Bay by the 1987 East Off Chiba Prefecture Earthquake-,日本沿岸域学会論文集,8,53-64.

国土交通省関東地方整備局・公益社団法人 地盤工学会(2011):東北地方太平洋沖地震による関東地方の地 盤液状化現象の実態解明報告書,http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000043569.pdf (accessed 26 Dec.2011). A B C D E

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図-28 杭基礎建物の抜け上がり量(千葉県環境研究センター,2011b)と航空レーザ測量による標高差 分図との重ね合わせ(航空レーザ差分図の凡例は図-26 と同じ.抜け上がり量の色は航空レーザ 差分図の色と同様) 謝 辞 航空レーザによる解析の一部は,浦安市を通して 国際航業の向山栄氏に行っていただいた.千葉県環 境研究センターの風岡修氏,古野邦雄氏,吉田剛氏 には,同センターで公表した抜け上がり量図につい て色々御教示頂いた.土木研究所土質・振動グルー プの佐々木哲也上席研究員,石原雅規主任研究員に は,液状化に関して色々御教示頂いた.また,常総 市役所産業観光課には吉野公園の現地調査の際に便 宜を図って頂き,調査に同行して頂いた.以上の方々 に,心より感謝申し上げます. 参 考 文 献 千葉県環境研究センター(2011a):平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震による東京湾岸埋め立て地 での液状化-流動化被害(第1報),http://www.wit.pref.chiba.lg.jp/_sui_chi/chishitu/touhoku/ekij ouka20110318s.pdf (accessed 26 Dec.2011).

千葉県環境研究センター(2011b):第3報 千葉県内の液状化-液状化現象とその被害の概要及び詳細分布 調査結果-浦安地区(1)-,http://www.wit.pref.chiba.lg.jp/_sui_chi/chishitu/touhoku/dai3/ekijou ka3a.pdf (accessed 26 Dec.2011).

Koarai and Nakayama(1996): The Geological and Topographic Conditions of Reclaimed Lands affecting the Distribution of Liquefied Sites –A Case Study on the Coastal Area of Tokyo Bay by the 1987 East Off Chiba Prefecture Earthquake-,日本沿岸域学会論文集,8,53-64.

国土交通省関東地方整備局・公益社団法人 地盤工学会(2011):東北地方太平洋沖地震による関東地方の地 盤液状化現象の実態解明報告書,http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000043569.pdf (accessed 26 Dec.2011). A B C D E 浦安市(2011):東北地方太平洋沖地震による地盤変動状況,http://www.city.urayasu.chiba.jp/item26038. html (accessed 26 Dec. 2011). 土地の履歴を知るのに活用可能な地理空間情報のサイト 旧版地形図の図歴(http://www.gsi.go.jp/MAP/HISTORY/5-25-index5-25.html) 国土変遷アーカイブ(空中写真)(http://archive.gsi.go.jp/airphoto/) 歴史的農業環境閲覧システム(http://habs.dc.affrc.go.jp/) 土地条件図(http://www1.gsi.go.jp/geowww/themap/lcm/) 治水地形分類図(http://www1.gsi.go.jp/geowww/themap/lcmfc/index.html)

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