問題と目的
文部科学省(2017)によると,2016年度に年間
30
日以上欠席した児童生徒は小学生で31,151
人(前年度比
12.9%増),中学生で 103,247
人(前年度比4.9%増)であった。これは小学生の 208
人 に1
人,中学生の33
人に1
人が不登校という割合であり,深刻な課題である。不登校児童生徒の支援活動 不登校児童生徒を支える枠組みとして,メンタルフレンド事業,適 応指導教室,校内適応指導教室が挙げられる。メンタルフレンド事業とは,厚生省(当時)の「ひ きこもり・不登校児童福祉対策モデル事業」のひとつとして始められた「ふれあい心の友派遣事 業」を指す(伊藤,
2002)。具体的には,支援者(メンタルフレンド)が不登校児童生徒の家へ行き,
一緒に遊んだり勉強したりすることで,不登校児童生徒の心理的な悩みや葛藤を和らげる役割を担 う(玉木,2007)。他方,適応指導教室とは「不登校児童生徒に対する指導を行うために,教育委 員会が教育センター等学校以外の場所や学校内の余裕教室等において,学校生活への復帰を支援す るため,児童生徒の在籍校と連絡をとりつつ,個別カウンセリング,集団での指導,教科指導等を 組織的・計画的に行う施設として設置したもの(文部科学省,2015)」を指し,校内適応指導教室 とは,そのような適応指導教室の機能を学校内に導入したものを言う。
これらの不登校支援活動では,教員やスクールカウンセラーなどの専門家だけでなく,学習途上 にある非専門家の大学生ボランティア(有償/無償)が多く活用されている。その利点の一つに,
被支援者との「斜めの関係」が挙げられる(豊嶋,2004)。不登校児童生徒にとって大学生ボラン ティアは,教員との「上下の関係」とも同世代との「横の関係」とも異なる存在,すなわち,それ らの中間に位置し指導的役割と親しみの両要素をもつ「斜めの関係」を築ける存在である。その「斜 めの関係」により,不登校児童生徒が等身大でいられるのである(馬場,2016)。
不登校支援に関わる大学生ボランティアを対象とした研究 豊嶋・長谷川・加川(2002)は,2 年間にわたり不登校支援を行った大学生を対象に
PAC
分析を行い,その体験過程を体系化している。また,野々口・豊嶋(2011)は,適応指導教室の支援学生を対象に,支援活動による日常的な自我(現
不登校児童生徒の支援活動に関する調査研究
―支援員が抱える悩みとそのサポートに着目して―
前川真奈美・田中 乙菜
実自我)と不登校支援者としての自我(イメージ自我)の変容を検討している。さらに鈴木(2007)
は,不登校支援に関わる大学生が活動についてどのように意識しているのかを調査している。
しかし,これらの先行研究は支援活動による変化を示したものが主であり,大学生ボランティア 自身の支援につながるような研究は少ない。学校教育現場において大学生ボランティアの需要が高 まる一方で,非専門家の彼らの導入によって教員に新たな役割(大学生ボランティアへの指導や教 育,連絡調整など)が加わり,負担が増加するという懸念もあり(高橋,
2006),支援現場では様々
な葛藤が生じていると考えられる。大学生ボランティアが活動において何に悩み,どのようなサ ポートを必要としているのかを検討することは,大学生ボランティアを支えるだけでなく,彼らの 支援を受ける不登校児童生徒にとっても重要なことといえる。そこで本研究では,公立小・中一貫校の校内適応指導教室(以下,A教室)にて不登校児童生徒 の支援を経験したことのある方々に調査を行い,彼らが悩んでいることや困っていることを明らか にし,どのようなサポートが求められているのかを把握する。
方 法
調査協力者
現在あるいは過去に
A
教室で支援員経験のある21
名のうち,回答が得られた15
名(男性7
名,女性
8
名,平均年齢24.5
±2.3
歳)を分析対象とした。調査時期
2017
年10
月26
日から10
月30
日に実施した。調査内容
ボランティア活動での悩み尺度(伊藤,2006) 心理学専攻の学生を対象にボランティア活動の 悩みを測定するための尺度である。原版の
20
項目に第一著者が3
項目加えた計23
項目を使用した。多肢選択法で,「ない」,「ある(活動開始〜1年目)」,「ある(1年目以降)」で評定した。
役に立ったサポート 玉木(2007),赤穂(2011),染谷(2011),内田・横山(2011),日高(2012),
河村(2012)を参考に,第一著者が作成した計
14
項目を使用した。多肢選択法で,当てはまる項 目を選択した。また,「その他」として自由に記述する欄を設けた。あると良いと思うサポート 「役に立ったサポート」と同じ項目,評定方法であった。
フェイス項目 性別,年齢,活動期間,活動内容(校内適応指導教室での支援,家庭訪問による 支援)を尋ねた。
手続き
目的,個人情報の保護,調査協力は任意であることを説明したうえで,Googleフォームの
URL
を 伝えた。回答は無記名とした。結 果
得られたデータのうち,「ボランティア活動での悩み尺度」は,単純集計,マクマネー検定によ る比率の差の検定(1年以上の経験者のみを対象),数量化Ⅲ類による分析を行った。「役に立った サポート」ならびに「あると良いと思うサポート」は単純集計,数量化Ⅲ類による分析を行った。
数量化Ⅲ類とは,複数の質的変数をもとに類似した個体やカテゴリを見出し,個体間,カテゴリ間 の関係を明らかにする統計手法である。分析には
R 3.4.0,HAD15.0(清水,2016)を使用した。
調査対象者の内訳
調査対象者を性別,活動期間で分類した(Table 1)。
ボランティア活動での悩み尺度
単純集計 実態把握のため,活動期間(1年未満・1年以上)ごとに,各項目に「ある」と回答 した人数を集計した(Table
2)。「ある(活動開始〜1
年目)」の回答を見ると,「a 子どもの問題に どの程度触れてよいか悩んだ」(15名中15
名)や,「b 自分のとるべき態度がわからなくなった」(15 名中14
名)が多かった。次いで,「r 活動に必要な技術や知識を持っていなかった」(15名中12
名)や「c 自分が役に立っているのかわからなくなった」(15名中
11
名)も多く見られた。マクマネー検定 活動期間の経過に伴い悩みも変化するかどうかを確かめるため,活動期間
1
年 以上の8
名のみを対象に,マクマネー検定による比率の検定を行った。その結果,「p 最後までで きるか心配だった」のみ有意傾向を示し(χ
2(1)=3.2,p<.10),活動 1
年目以降はそのような悩み を抱かなくなる傾向が示された。数量化Ⅲ類 調査協力者全員を対象に,各項目について「ない」と回答した場合は「0」を,「あ る(活動開始〜1年目)」あるいは「ある(1年目以降)」と回答した場合は「1」を付値し,数量化
Ⅲ類を行った。なお,度数が
2
以下の項目は分析対象から除外した。分析の結果,解釈可能性から2
軸を採用した。各軸の固有値は第1
軸が.197,第 2
軸が.139
であった。算出されたカテゴリスコ アを,第1
軸を横軸,第2
軸を縦軸として散布図に示した(Figure1)。さらに,カテゴリスコア
Table 1 調査協力者内訳
性別 活動期間
1年未満 1年以上 計
男性 3 4 7
女性 4 4 8
計 7 8 15
Table 2 活動における悩み
悩み 活動継続
期間
ある(〜1年目) ある(1年目〜)
人数 (%) 人数 (%)
a 子どもの問題にどの程度触れてよいか悩んだ 1年未満
1年以上 7
8 (100.0)
(100.0) ―
5 ―
(62.5)
b 自分のとるべき態度がわからなくなった 1年未満
1年以上 7
7 (100.0)
( 87.5) ―
3 ―
(37.5)
c 自分が役に立っているのかわからなくなった 1年未満
1年以上 6
5 ( 85.7)
( 62.5) ―
3 ―
(37.5)
d 子どもから,対処の難しい相談を受けた 1年未満
1年以上 5
2 ( 71.4)
( 25.0) ―
3 ―
(37.5)
e 子どもから,個人的な相談を持ちかけられた 1年未満
1年以上 5
3 ( 71.4)
( 37.5) ―
5 ―
(62.5)
f 活動時間外に,子どもやその家族が連絡を取っ
てきた 1年未満
1年以上 0
0 ( 0.0)
( 0.0) ―
0 ―
( 0.0)
g 子どもが,自分に深く関わってきすぎて負担に
なった 1年未満
1年以上 0
0 ( 0.0)
( 0.0) ―
0 ―
( 0.0)
h 子どもから過度の謝礼を渡されて困った 1年未満
1年以上 0
0 ( 0.0)
( 0.0) ―
0 ―
( 0.0)
i 自分の思っていた活動ができなかった 1年未満
1年以上 3
6 ( 42.9)
( 75.0) ―
4 ―
(50.0)
j 困ったことを相談できる人が身近にいなかった 1年未満
1年以上 0
0 ( 0.0)
( 0.0) ―
0 ―
( 0.0)
k 特に得るものがない活動だった 1年未満
1年以上 0
0 ( 0.0)
( 0.0) ―
0 ―
( 0.0)
l 活動がマンネリ化した 1年未満
1年以上 1
2 ( 14.3)
( 25.0) ―
1 ―
(12.5)
m 指導者と活動方針が合わなかった 1年未満
1年以上 0
1 ( 0.0)
( 12.5) ―
0 ―
( 0.0)
n 活動にかかるお金が負担になった 1年未満
1年以上 1
1 ( 14.3)
( 12.5) ―
1 ―
(12.5)
o すべての子どもを,自分一人で背負っているよ
うな負担を感じた 1年未満
1年以上 0
0 ( 0.0)
( 0.0) ―
1 ―
(12.5)
p 最後までできるか心配だった 1年未満
1年以上 4
5 ( 57.1)
( 62.5) ―
0 ―
( 0.0)
q 活動の主催職員(養護教諭,副校長)と連携を
取るのが困難だった 1年未満
1年以上 1
1 ( 14.3)
( 12.5) ―
1 ―
(12.5)
r 活動に必要な技術や知識を持っていなかった 1年未満
1年以上 6
6 ( 85.7)
( 75.0) ―
2 ―
(25.0)
s 学業が忙しくて両立できなかった 1年未満
1年以上 2
0 ( 28.6)
( 0.0) ―
1 ―
(12.5)
t 自分自身の心の悩みなど(不登校体験など)が
喚起された 1年未満
1年以上 1
1 ( 14.3)
( 12.5) ―
1 ―
(12.5)
u 子どもの要望を断れず,活動の枠(活動時間や
支援員としての業務内容の枠)が保てなかった 1年未満
1年以上 1
2 ( 14.3)
( 25.0) ―
0 ―
( 0.0)
v 学習指導の方法について相談できる人が身近に
いなかった 1年未満
1年以上 0
1 ( 0.0)
( 12.5) ―
1 ―
(12.5)
w 年齢や経験の差のため,支援員から教員へ何か
を依頼するのが躊躇われた 1年未満
1年以上 3
4 ( 42.9)
( 50.0) ―
2 ―
(25.0)
をもとにクラスタ分析(ウォード法)を行った。デンドログラムの形状からクラスタ数は
4
と設定 し,Figure 1に円で示した。クラスタごとに見ると,「a 子どもの問題にどの程度触れてよいか悩んだ」,「b 自分のとるべき態 度がわからなくなった」,「c 自分が役に立っているのかわからなくなった」,「i 自分の思っていた 活動ができなかった」,「p 最後までできるか心配だった」,「r 活動に必要な技術や知識を持ってい なかった」,「s 学業が忙しくて両立できなかった」で構成されるクラスタは第
1
軸が負・第2
軸が 負の傾向に位置しており,《支援員としてのあり方に関わる悩み》と解釈された。「l
活動がマンネ リ化した」と「n 活動にかかるお金が負担になった」で構成されるクラスタは第1
軸が負・第2
軸 が正の傾向に位置しており,《活動と自分の状況との折り合いに関する悩み》と解釈された。「q 活 動の主催職員(養護教諭,副校長)と連携を取るのが困難だった」と「w 年齢や経験の差のため,支援員から教員へ何かを依頼するのが躊躇われた」で構成されるクラスタは第
1
軸が0
付近・第2
軸が正の傾向に位置しており,《学校側との連携に関わる悩み》と解釈された。「d 子どもから,対 処の難しい相談を受けた」,「e 子どもから,個人的な相談を持ちかけられた」,「u 子どもの要望を 断れず,活動の枠(活動時間や支援員としての業務内容の枠)が保てなかった」で構成されるクラ スタは第1
軸が正・第2
軸も正の傾向に位置しており,《支援員としての枠に関わる悩み》と解釈 された。a c b
d
e i
l n
p q
r
s
u w
-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
-4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0
第2軸
第1軸 自分の役割 活動の体制
バランスの難しさ
(対子ども・学校)
バランスの難しさ
(自分の状況)
Figure 1 活動における悩み 数量化Ⅲ類
第
1
軸は「l 活動がマンネリ化した」が低値,「u 子どもの要望を断れず,活動の枠(活動時間 や支援員としての業務内容の枠)が保てなかった」が高値を示すことから,《バランスの難しさ(自 分の状況)―バランスの難しさ(対子ども・学校)》を表すと解釈した。第2
軸は「s 学業が忙しく て両立できなかった」が低値,「q 活動の主催職員(養護教諭,副校長)と連携を取るのが困難だっ た」が高値を示すことから,《自分の役割―活動の体制》を表すと解釈した。役に立ったサポート
単純集計 実態把握のため,各項目を選択した人数を集計した(Table 3)。「1 活動を始める前に,
支援する児童・生徒の情報や支援方針について説明を受ける」や「6 定期的な場として,指導者に 相談したり助言をもらう機会がある」や「7 定期的な場として,他の支援員と意見交換をする機会
Table 3 役に立ったサポート・あると良いサポート
サポート 役に立った あると良い
人数 (%) 人数 (%)
0 何も無い 0 ( 0.0) 1 ( 6.7)
1 活動を始める前に,支援する児童・生徒の情報や支援方針について
説明を受ける 14 (93.3) 0 ( 0.0)
2 活動を始める前に,支援員としてのガイドライン(守秘義務の範囲,
各教員・スーパーバイザー・支援員それぞれの役割分担の明確化,
など)について説明を受ける 11 (73.3) 2 (13.3)
3 活動を始める前に,その学校や学年ごとのルールについて説明を受
ける 10 (66.7) 4 (26.7)
4 活動を始める前に,ロールプレイなどを実施し,子どもとの関わり
方を練習する 1 ( 6.7) 4 (26.7)
5 教員を対象とした不登校に関する校内研修会に参加する 2 (13.3) 5 (33.3)
6 定期的な場として,指導者に相談したり助言をもらう機会がある 14 (93.3) 0 ( 0.0)
7 定期的な場として,他の支援員と意見交換をする機会がある 14 (93.3) 0 ( 0.0)
8 活動中あるいは活動直後に,指導者に相談したり助言をもらう 9 (60.0) 2 (13.3)
9 活動外の日常生活のなかで,他の支援員と意見交換をする 11 (73.3) 0 ( 0.0)
10 活動中に,その場で,自分の支援方法や関わり方について他者から
フィードバックされる 6 (40.0) 6 (40.0)
11 各活動の前に,自分の活動日以外の子どもの様子(家庭や保健室で どのように過ごしていたか,担任等とどのようなやり取りがあった
か,どの生徒と関わりがあったか,など)を教えてもらう 12 (80.0) 1 ( 6.7)
12 定期的に,担任や教科担当の先生と情報共有する機会がある 10 (66.7) 3 (20.0)
13 定期的に,担任や教科担当の先生が子どもと関わりをもつ,あるい
は指導をする機会がある 7 (46.7) 4 (26.7)
14 各支援員の負担(事務作業を含む)が偏らないように,支援員間で
の取り決めがある 10 (66.7) 3 (20.0)
がある」が役に立ったという回答が
14
名(93.3%)と多かった。数量化Ⅲ類 調査協力者全員を対象に,各項目について選択していない場合は「0」を,選択し た場合は「1」を付値し,数量化Ⅲ類を行った。なお,度数が
2
以下の項目は分析対象から除外した。分析の結果,解釈可能性から
2
軸を採用した。各軸の固有値は第1
軸が.114,第 2
軸が.073
であっ た。算出されたカテゴリスコアを,第1
軸を横軸,第2
軸を縦軸として散布図に示した(Figure 2)。さらに,カテゴリスコアをもとにクラスタ分析(ウォード法)を行った。デンドログラムの形状か らクラスタ数は
3
と設定し,Figure 2に円で示した。クラスタごとに見ると,「1 活動を始める前に,支援する児童・生徒の情報や支援方針について 説明を受ける」,「2 活動を始める前に,支援員としてのガイドライン(守秘義務の範囲,各教員・
スーパーバイザー・支援員それぞれの役割分担の明確化,など)について説明を受ける」,「3 活動 を始める前に,その学校や学年ごとのルールについて説明を受ける」,「8 活動中あるいは活動直後 に,指導者に相談したり助言をもらう」,「9 活動外の日常生活のなかで,他の支援員と意見交換を する」,「11 各活動の前に,自分の活動日以外の子どもの様子(家庭や保健室でどのように過ごし ていたか,担任等とどのようなやり取りがあったか,どの生徒と関わりがあったか,など)を教え てもらう」,「12 定期的に,担任や教科担当の先生と情報共有する機会がある」
で構成されるクラス
タは第1
軸が正負両方 ・第2
軸が負の傾向に位置しており,《様々なタイミングで情報共有や指導1 2
3
7 6
8
9 10
11 12
13
14
-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
-3.0 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
第2軸
第1軸 共有
連携
即時(現場) 定期的
Figure 2 役に立ったサポート 数量化Ⅲ類
を受けられること》と解釈された。「6 定期的な場として,指導者に相談したり助言をもらう機会 がある」,「7 定期的な場として,他の支援員と意見交換をする機会がある」,「14 各支援員の負担(事 務作業を含む)が偏らないように,支援員間での取り決めがある」で構成されるクラスタは第
1
軸 が正・第2
軸も正の傾向に位置しており,《一定の決まり事として,関係者との連携があること》と解釈された。「10 活動中に,その場で,自分の支援方法や関わり方について他者からフィードバッ クされる」と「13 定期的に,担任や教科担当の先生が子どもと関わりをもつ,あるいは指導をす る機会がある」で構成されるクラスタは第
1
軸が負・第2
軸が正の傾向に位置しており,《支援中 の現場で,関係者との連携があること》と解釈された。第
1
軸は「10 活動中に,その場で,自分の支援方法や関わり方について他者からフィードバッ クされる」が低値,「14 各支援員の負担(事務作業を含む)が偏らないように,支援員間での取り 決めがある」が高値を示すことから,《即時(現場)―定期的》を表すと解釈した。第2
軸は「3 活 動を始める前に,その学校や学年ごとのルールについて説明を受ける」が低値,「13 定期的に,担 任や教科担当の先生が子どもと関わりをもつ,あるいは指導をする機会がある」が高値を示すこと から,《共有―連携》を表すと解釈した。あると良いと思うサポート
単純集計 実態把握のため,各項目を選択した人数を集計した(Table
3)。「10
活動中に,その 場で,自分の支援方法や関わり方について他者からフィードバックされる」が6
名(40.0%)と最 も多く,次いで「5 教員を対象とした不登校に関する校内研修会に参加する」が5
名(33.3%)で あった。数量化Ⅲ類 調査協力者全員を対象に,各項目について選択していない場合は「0」を,選択し た場合は「1」を付値し,数量化Ⅲ類を行った。なお,度数が
1
以下の項目は分析対象から除外した。分析の結果,解釈可能性から
2
軸を採用した。各軸の固有値は第1
軸が.620,第 2
軸が.558
であっ た。算出されたカテゴリスコアを,第1
軸を横軸,第2
軸を縦軸として散布図に示した(Figure 3)。さらに,カテゴリスコアをもとにクラスタ分析(ウォード法)を行った。デンドログラムの形状か らクラスタ数は
3
と設定し,Figure 3に円で示した。クラスタごとに見ると,「4 活動を始める前に,ロールプレイなどを実施し,子どもとの関わり 方を練習する」,「5 教員を対象とした不登校に関する校内研修会に参加する」,「8 活動中あるいは 活動直後に,指導者に相談したり助言をもらう」,「10 活動中に,その場で,自分の支援方法や関 わり方について他者からフィードバックされる」,「12 定期的に,担任や教科担当の先生と情報共 有する機会がある」で構成されるクラスタは第
1
軸が負・第2
軸も負の傾向に位置しており,《様々 なタイミングで,支援現場で活かせる情報を得ること》と解釈された。「2 活動を始める前に,支 援員としてのガイドライン(守秘義務の範囲,各教員・スーパーバイザー・支援員それぞれの役割 分担の明確化,など)について説明を受ける」と「3 活動を始める前に,その学校や学年ごとのルールについて説明を受ける」で構成されるクラスタは第
1
軸が正・第2
軸も正の傾向に位置しており,《活動開始の前に,支援に関する情報を得ること》と解釈された。「13 定期的に,担任や教科担当 の先生が子どもと関わりをもつ,あるいは指導をする機会がある」と「14 各支援員の負担(事務 作業を含む)が偏らないように,支援員間での取り決めがある」で構成されるクラスタは第
1
軸が 負・第2
軸が正の傾向に位置しており,《一定の決まり事として,関係者間で連携があること》と 解釈された。第
1
軸は「13 定期的に,担任や教科担当の先生が子どもと関わりをもつ,あるいは指導をする 機会がある」が低値,「3 活動を始める前に,その学校や学年ごとのルールについて説明を受ける」が高値を示すことから,《定期的―活動前・中》を表すと解釈した。第
2
軸は「5 教員を対象とし た不登校に関する校内研修会に参加する」が低値,「13 定期的に,担任や教科担当の先生が子ども と関わりをもつ,あるいは指導をする機会がある」が高値を示すことから,《実践―支援体制》を 表すと解釈した。その他 選択肢の項目以外で「あると良いサポート」として,「保護者からのフィードバック」,
「子どもが関わる外部機関(地域の適応指導教室など)との連携」,「適切な教材選びのために,各 生徒の学習進度や,(ある場合は)学習障害についての情報」,「活動を始める前あるいは定期的に,
支援や指導の事例研究をする機会(例:生徒間のトラブル事例とより良い対処法/生徒の抱える問 2
3
4
5
8
10 12
13
14
-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2
-1.5第2軸 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
実践 第1軸 定期的
活動前・中 支援体制
Figure 3 あると良いサポート 数量化Ⅲ類
題への支援員の関わり方とより良い対処法/支援員のアプローチによって改善した事例/活動中に よく起こるケースなど)」が回答された。
考 察
本研究の目的は,不登校支援に関わる大学生が悩んでいることや困っていることを明らかにし,
どのようなサポートが求められているのかを把握することであった。
不登校支援に関わる大学生が抱える悩み
分析の結果から,主に《支援員としてのあり方》,《活動と自分の状況との折り合い》,《学校側と の連携》,《支援員としての枠》に関する悩みが確認された。特に《支援員としてのあり方》に含ま れる,「子どもの問題にどの程度触れてよいか悩んだ」といった子どもへの関わりの難しさと,「活 動に必要な技術や知識を持っていなかった」といった能力不足に関する悩みが最も多いことが示さ れた。
伊藤(2001)は,メンタルフレンド活動の経験がある大学生を対象に調査を行い,活動における 悩みとして「(役割上の)迷い」,「孤立・負担感」,「枠破り不安」の
3
因子を見出している。また,その後,教育や心理臨床などのボランティアの経験がある大学生を対象に調査を行い,活動におけ る悩みとして「かかわる程度の迷い」,「過度のかかわりへの悩み」,「無力感」,「心理・物理面の負 担」,「バランスの難しさ」の
5
因子を抽出している(伊藤,2006)。さらに,悩みに関する自由記 述から,「かかわりの難しさ,わからなさ」,「自分の対応を内省しての落ち込み」,「人間関係の難 しさ」,「子どもから受けた傷つき」,「精神的苦痛」,「無力感」などを見出している(伊藤,2006)。本研究で明らかとなった悩みも,これらの先行研究と合致していると言える。
なお,本研究では,活動
1
年目以降は「最後までできるか心配だった」という悩みを抱かなくな る傾向が示された。上述の結果を踏まえると,活動1
年未満の間は子どもへの関わりの難しさを感 じることが多く,それを自分の能力不足と結び付けてとらえるため自己効力感も低減するが,後述 のように,活動を通して様々な有用なサポートを受けることで,支援員としての自己効力が回復し,「最後までできるか心配だった」という悩みが軽減すると推測される。
有用なサポート・求められているサポート
分析の結果から,有用なサポートとして,《様々なタイミングで情報共有や指導を受けられるこ と》,《一定の決まり事として,関係者との連携があること》,《支援中の現場で,関係者との連携が あること》が見出された。また,求められているサポートとして,《様々なタイミングで,支援現 場で活かせる情報を得ること》,《活動開始の前に,支援に関する情報を得ること》,《一定の決まり 事として,関係者間で連携があること》が示された。これらから,大学生ボランティアの支援では,
「実践で活用できる情報の提供」と「学校側の方々を含む関係者とのスムーズな連携」が重要であ
ると示唆される。「実践で活用できる情報の提供」に関して西(2017)は,校内適応指導教室にお ける学生ボランティアを対象に,月に一度ケースカンファレンスを実施している。そこでは守秘義 務に留意したうえで,各学生が一か月間の活動の経過報告をパワーポイントで発表し,スーパーバ イザーがその発表内容に対して助言や情報提供を行う。また,「学校側の方々を含む関係者とのス ムーズな連携」に関して黒沢・日髙(2009)は,学生ボランティアに向けて「活動ガイドライン」を,
受け入れる学校側にむけて「学校用活用案内」を作成している。「活動ガイドライン」には活動の 目的や守秘義務などの枠組みや社会常識,トラブル防止の留意点が明示されており,「学校用活用 案内」には連携指針,学生ボランティアも守秘義務を負うこと,学生ボランティアの個人差や限界 への理解が盛り込まれている。これらを参考に支援体制を充実させることで,大学生ボランティア が活動しやすくなり,支援活動全体が一層活性化していくと推測される。
今後の課題
最後に,本研究の限界点と今後の課題を述べる。第一に,本研究は選択回答式の調査であった。
そのため,不登校支援経験者の意見や考えを十分にとらえることができなかった可能性がある。今 後は,日高(2012)のようなヒアリングの実施や,割澤(2015)のような支援者の活動記録をもと にしたグラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析,豊嶋ら(2002)のような
PAC
分析など,質的な検討を取り入れる必要がある。第二に,本研究の調査対象者はある一つの校内適応指導教室 の支援員経験者のみであった。そのため,本研究で示した内容が不登校児童生徒に関わる他の大学 生にも当てはまるとは言い難い。今後,調査対象者を拡大して検討することが望まれる。
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