九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
CTによる人健常上顎洞の容積および大きさに関する 研究
有地, 淑子
https://doi.org/10.11501/3099003
出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(歯学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
CTによる人健常上顎洞の 容積および大きさに関する研究
有地淑子
九州大学歯学部歯科放射線学講座 (指導:神田重信教授)
現:長崎大学歯学部歯科放射線学講座
(1994)
目次
1. 緒言
II. 測定精度の検討
A.容積測定の精度 B.長さ測定の精度
111. 生体上顎洞の計測
A.上顎洞の容積の計測 1.測定対象および方法
a.上顎洞の容積 b.年齢との関連
C.上顎臼歯の有無との関連
d.中顔面頭蓋骨の大きさおよび身長、 体重との関連
2.測定結果
a.平均および健常範囲 b.男女差
C.左右の相関、 左右差および対称度 d.年齢との関連
e.上顎臼歯の有無との関連
f.中顔面頭蓋骨の大きさおよび身長、 体重との関連
B.上顎洞最大横断面の横径・前後径および上顎洞底の高さの 計測
1V. 考察
1.測定対象および方法 2.測定結果
a.平均および健常範囲 b.男女差
C.左右の相関、 左右差および対称度 d.年齢との関連
e.容積との関連
f.上顎臼歯の有無との関連
g.中顔面頭蓋骨の大きさおよび身長、 体重との関連
A.測定精度について B.上顎洞の容積について
C.上顎洞最大横断面の横径・前後径および上顎洞底の高さに ついて
V. 結論
VI. 参考文献
1.緒三
近年、 上顎洞病変の診断にコンピュータ断層撮影法(以下CTと略す)が頻繁 に用いら れるようになった1・3)0 CTは病変の進展範囲の診断 のみならず、 手術計画 あるいは術後の評価にも有用である“)。 上顎洞骨折の場合には、 その整復や術後の 顎顔面形態の評価にもCTは利用される7)。 嚢胞、 炎症、 腫蕩あるいはその他の異常 によって、 また上顎洞根治術術後において、 上顎洞の大きさが変化すると報告され ている 1-2,8)。 しかし、 いずれの報告も上顎洞の容積あるいは大き さを定量的に評価 したものではない。 健常な上顎洞の大きさを把握することによって、 上顎洞の種々
の病変や発育異常による容積 の変化を定量的に論議できると思われる。 すなわちCT 診断に先立って、 健常な上顎洞容積あるいは大きさを計測する臨床的意義は大きい と考えられる。
従来、 屍体頭蓋骨を用いた上顎洞の計測は多くなされているが9-14)、 年齢が 不正確であ りしかも生体上顎洞とは状態が異なることが推測される。 Waters法等の 単純X線撮影を用いた報告も散在してい るものの 、 上顎洞上方部が他の副鼻腔や顔 面骨と、 また下 および内方部が歯と重なり合うために計測の不正確さを残している 15-19)。 再現性のある解剖学的指標点も決定しにくい。 この点、 CTはX線吸収差の検 出能に極めて優れており、 骨、 空気および粘膜で構成される上顎洞は明瞭に描出さ れ得る。 また、 断層面の任意の領域の距離や面積を算出することも、 再現性のある 基準点を決定することも可能 である。 したがって、 CTは生体上顎洞の計測には最も 適している方法と考えられる。
発育段階にある小児あるいは青年期における上顎洞の大きさは加齢とともに 増大することは知られてい る17.2G22)O しかし成人の健 常上顎洞 の加齢的変化は興味 の持たれるところであるにも かかわらず、 小児から高齢者まで経年的に調査したも のは少なく9-10,15) 詳細な分析はなされていない。 また上顎洞の大きさと歯との関連 も考えられるが、 上顎洞と歯との上下的位置関係を検討した報告がほとんどである9- 10,18,2日6)。 上顎洞の容積あるいは大きさと歯の有無との関連について述べたものは上 村によるもののみであ る12)。 また年齢や歯の有無との関連において、 上顎洞底の高 さ自体の変化を分析 した報告 はほとんどない21)。 さらに上顎洞容積および大きさと 骨格の大きさとの関連15,17)について詳細な報告はみられない。
そこで本研究では、 CT画像を用いて、 健常な上顎洞の容積および大きさを把 握し、 これらの年齢による変化を検討し、 さらには成人上顎洞につい て上顎臼歯の 有無および骨格 の大きさとの関連を詳細に 分析することを目的とした。 われわれは すでに上顎洞容積の 健常値と その加齢 的変化に 関して報告を行なった2九しかしな がら、 臨床的に 上顎洞の容積を即時的に算出することは困難であり、 もっと簡便な 上顎洞の大きさをしめす指標 が必要となる。 そこで上顎洞最大横断面 の横径および 前後径に着目し、 これらが上顎洞の大きさを表わす指標となり得るものかを検討し、
2
さらに年齢や歯の有無と関連して上顎洞底の高さはどのように変化するのかも観察 した却)。 これらの測定に先立ち、 CT画像を用いた容積および大きさの測定精度もあ わせて検討-した。
対象論文 "Age changes in the volume of the human maxillary sinus: a study using computed tomography."はDentomaxillofacial Radiology 23(3): 1994 (発刊平成6年8月)
に掲載されており、 本文の12頁から22頁がこれに該当する。 また本研究は九州大学 歯学部歯科放射線学講座において行なった。
11.測定精度の検討
A.容積の精度の検討
1.検討対象および方法
[a]CT画像上で測定する容積の精度
実際の容積に対するCT画像上の容積の測定誤差をファントム実験によって検 討した。 実験には、 生体上顎洞を想定して、 直径1.0 cm、 1.5 cm、 および2.5 cmの木 製の球の外側にそれぞれLipiodol UF (Laboratoire Gerber, France)を混在させたUtility wax (而至歯科工業株式会社, 日本) を一層被覆したもの却) (平均CT値は 516 H.U.)、 殻 を取り除いたゆでた鶏卵に同様にUtility waxを被覆したもの(CTイ直は 560 H.U.)、 およ びピンポンボールを用いた(図1)。 これら3種類5個のファントムを各々水中に固定 してCT撮影を行なった。 使用したCT装置はSomatom DR(Siemens,Germany)で、 撮影 条件は管電圧125kVp、 350mAs、 スライス厚4mm、 スライス間隔4lnmで、あった。
計測はCTフィルム上で行なった。 CTフィルムは、 当科で通常骨組織観察用 としている条件、 すなわちウインド幅3500、 ウインド値 500 Hounsfield Units (H.U.) で表示された処理画像を、 Multiformat Camera (Siemens, Germany)で、撮影することに より作成された。 CT画像の各スライス面において、 各断面をデジタイザーでトレー スした。 以下の画像解析装置を用いて、 スキャン i における面積Slを得た。 画像解 析装置は次の構成よりなる(図2)。
1) ビデオカメラ C2400-00 (浜松ホトニクス,日本) 2) デジタイザー(ニコン社,日本)
3) パーソナルコンビュータ PC-9801 VM (NEC社,日本) 4) CRT PC-TV455 (NEC社,日本)
5) 画像解析用ソフト 二次元解析コスモゾーン l SA (ニコン社,日本)
。
Lipiodol UF+ Utility wax Pingpong ball
図1.容積の測定精度の検討に用いたファントム
4
C
図2.画像解析装置
a. ビデオカメラ C2400-00 (浜松ホトニクス,日本) b. デジタイザ- (ニコン社,日本)
C. パーソナルコンビュータ PC-9801 VM (NEC社,日本)
d. CRT PC-TV455 (NEC社,日本)
e. 画像解析用ソフト二次元解析コスモゾーンlSA(ニコン社,日本)
f. CTフイノレム
面積siおよびそのスキャンのスライス厚tiより、 そのスライスに相当する容 積を求めた。 これを全スキャン数nにわたって積算し、 CT画像上でのファントムの 容積とした。 一方、 容積の実測値あるいは理論値も求めた。 木製球はノギス(ミッ トヨ,日本)によりその直径を実測し、 容積の理論値を算出した。 鶏卵は水の入った
ビーカ-内に入れ、 増量した水の容積を測定し、 鶏卵の実容積とした。 ピンポンボ ールはノギスにより外径と厚さを実測し、 得られた内径より理論値を算出したo CT
画像上で求めた容積と実際の容積との相関係数を求めた。 また相対誤差は以下の式 により求めた。
CT画像で求めた容積と実|民の容積との差
相対誤差= ー X 100 (%)
実際の容積
[b]変動係数
直径1.5cmの木製の球のCT画像において、 同様の方法によって20田容積を計 測し、 以下の式により、 変動係数を求めた。
標準偏差
変動係数= � " -,�- X 100 (%)
[c]測定誤差
3種類5伺のファントムのCT画像において、 それぞれ2回ずつ容積を測定し、
その2回の計測値の差を求め以下の式の解を求めた(Dahlberg's formula)。
Error of… d:2回の計測値の差
n:2回計測の数
2.検討結果
[a]CT画像上で日IJ定する容積の精度
CT画像上で求めた容積と実際の容積との相関係数はr=0.99で、あり、 よく相関 した (図3)。 また相対誤差はいずれも50/0以内であった。
[b]変動係数
変動係数は1.220/0であった。
[c ].測定誤差
誤差は0.42cm3であった。
280
ω
- 木球
 ゆで卵
・ ピンポンボール
AV
AV
Aリ
Aり
のり 6
4
2 ω52。除問》ω』ロ切符ωgHhv
20 40 60
80
Actual Volume (cm3)
図3.容積の実測値とCT画像上での計測値との相関
6
B.長さの精度の検討
1.検討対象および方法
[a]CT画像上で測定する長さの精度
実際の長さに対するCT画像上の測定誤差をファントム実験によって検討した。
ガラス製の円柱の容器を2種類、 およびガラス製の直方体の容器を水中に置いて、
CT撮影を行なった。 使用したCT装置および撮影条件は前述のとおりとした。 CT画 像上において計測すべき2点をデジタイザーで指示し、 前述の画像解析装置(図2)を 用いることによって、 2点間距離を得た。 この方法により、 容器の直径(2種類) およ び短径、 長径のそれぞれ内径およびタ粁歪を測定した(図4)。 一方、 それぞれの長さを
ノギスを用いて実測した。 CT画像上で求めた長さと実際の長さとの相関係数を求め た。 また相対誤差も同様に求めた。
[b]変動係数
ガラス製の直方体の容器の短径(外径) を同様の方法によって20回計測し、 変 動係数を求めた。
[c]測定誤差
上記各材料に対して3回ずつCT撮影を行なって、 各スライス面において、 直 径(2種類)、 短径および長径の各内・外径をそれぞれ2回ずつ測定した。 計24セット の2回の計測値の差を用いて、 同様に測定誤差を求めた。
glass receptacles
図4.長さの測定精度の検討に用いたファントム
[d]CT撮影時のpositioningによる誤差
CT検査時患者のpositioningはガントリー内の照準用光ビームによって行なう。 縦 方向の光ビームは顔面の正中線に合わせ、 横方向の光ビームは両眼寓下縁に合わせ、
Frankfult Horizontal平面に平行にCT撮影ができるように、 バンドにより頭部の固定 を行なう。 肉眼的にpositioningするためにズレが生じる可能性がある。 したがって、
両眼寓下縁の傾きが長さの測定精度に対して与える影響を検討した。 3伺の乾燥頭 蓋骨を用いて、 両眼寓下縁を結んだ線が横方向の光ビームに対してう。 からゆ。 傾い た時のCT撮影を行ない、 両頬骨弓の描出を検討した(図5)。 さらにこれらのCT画像 を用いて、 本研究において計測した長さ(図6. a-d)の測定誤差を求めた。 誤差の算 出は以下のように行なった。
(各角度での長さ)-(角度0。 の時の長さ) 誤差= ' 1---< / .. ,_,_ - - --- - / V"_'_ - - .. - ...-- - /
X 1 00 ( % ) 角度0。 の時の長さ
なお+5。 を越える場合には肉眼的にも 明らかに傾いて いるこ とがわかる。
[e]上顎洞底の高さの測定誤差
前鼻東京最上端から上顎洞底までの、 Frankfult Horizontal平面に垂直方向の距離 として求められる上顎洞の高さ(図6.e)について、 測定上の誤差を検討した。
・・
図5. CT撮影時のpositioningによる誤差の検討
xo;両眼簡下縁を結んだ線が横方向の光ビームに対する角度
8
ti;スライス厚
e.上顎洞底の高さ=乏ti . cos e
e ;ガントリイ頃余ヰ角
図6. CT画像上の計測点
a. 頬骨間径
b. 中顔面頭蓋骨前後径 c. 上顎洞最大横断面の横径 d. 上顎洞最大横断面の前後径 e. 上顎澗底の高さ
2.検討結果
[a]CT画像上で収IJ定する長さの精度
CT画像上で求めた長さと実際の長さとの相関係数はr=0.99であり、 よく相関 した(図7)。 また相対誤差はいずれも50/0以内であった。
[b]変動係数
変動係数は0.470/0であった。
[c]測定誤差
誤差は0.02cmで、あった。
[d]CT撮影時のpositioningによる誤差
両頬骨弓が同一スライス面に描出されるのは、 両眼禽下縁を結んだ線の傾き がう。 からは。( 1個の乾燥頭蓋骨では_40 でも可能)であった。 また傾きによる長さ の誤差はいずれも+5%以内であった(図8)。
AV QO /0 4『
ヲ,M (gω)岡山細切5凶志』まggHhv --
径径径径内内外外 径 径 長 長 径 ・ 径
・
・・ 直短直短
o口
0リ 00
2 4 6 8
Actual Length (cm)
10
図7.長さの実測値とCT画像上での計測値との相関
nu 'EEA
Phantom 1 Phantom 2 Phantom 3 一-・
...•....
・・・..--
b.
30
Phantom 1 Phantom 2 Phantom 3 一寸・"'"ー・....
---‘-_ .
a.
一--�ーー一一四.. 一一・・・・・
戸町20求 '-' 10
h 。 同と0
-10 Ot一面--ー-
30
,-.20
b h
'-' 10
』。
』』
同-10
5
3 4
-20 -30
・5 -4 -3 ・2 -1 0 1 2
Angle 4 5
3 2 -20
-30 -5 -4 -3 -2 -1 0 1
Ang l e
O� 戸掛崎市毛 '
-・-Phantom 1 (Right) -.0-ーPhantom1 (Left) --t・- Phantom 2 (Right) ーーロ・ー・ Phantom 2 (Le代)
…ー合…・Phantom 3 (Right)
…ー合…Phantom 3 (Lert)
30
d.
,-. 20 S ご10。
』』
同 -10
ー-・-Phantom 1 (Right) 一一O同一 Phantom 1 (Left) -・- Phantom 2 (Right) ーーε』ーPhantom 2 (Left) ー-‘._ Phantom 3 (Right) ーー合・- Phantom 3 (Left)
指令e楠
30 c.
20 10
-10
。
(求)・5と同
-20 -20
1 2 3 4 5
Angle
-5 -4 -3 -2 -1 -30
-5 -4・3・2・1 012345
Angle
-30
図8. positioningによる長さの誤差の検討
a.頬骨間径
b.中顔面頭蓋骨前後径 c.上顎洞最大横断面の横径 d.上顎洞最大横断面の前後径
[e]上顎洞底の高さの測定誤差
上顎洞底の高さの測定において、 誤差を含んでいるのは前鼻練最上端および 上顎洞最下端のスライス面であり、 スライス厚とpartial vol ume effectにより影響され る。 両端のスライス面において、 前鼻東京あるいは上顎洞の一部が走査されていた場 合でも、 それらが描出される場合とされない場合があり、 スライス厚の+1/2以内の 誤差があると考えられる。 したがって、 スライス厚2mmの場合は+2mm(O.2cm)以内
スライス厚4mmの場合は+4mm(0.4cm)以内の誤差があるものと考えられた。
の、
III.生体上顎洞の計測
A.上顎洞の容積の計測
1.測定対象および方法
[a]上顎洞の容積
対象は九州大学歯学部附属病院歯科放射線科において1985年から1992年の間 にCT検査を行なった顎顔面領域疾患症例約5,000例のCT像より選ばれた。 疾患の内 訳は、 口腔癌(舌、 下顎歯肉)、 耳下腺腫蕩、 下顎骨の良性腫蕩および嚢胞、 顎関 節症、 三叉神経痛であった。 対象の選定基準は上顎洞全体をスキャンすることがで き、 しかも明らかに病変の原発部位から離れており、 両側ともに健常であると考え られた上顎洞とした。 すなわち、 臨床的に無症状でしかも粘膜肥厚のない上顎洞と し、 既手術、 骨折および腫蕩等の明らかな病変上顎洞は除外した。 症例数は115例 (230上顎洞)で、 男性58例、 女性57例で、 年齢は4歳から96歳で平均46.8歳であった (表1) 。
CT検査 には、 SomatomDR (Siemens, Germany)を用い、 撮影条件は管電圧 125kVp、 350mAsとした。 測定に用いた画像は、 原則としてFrankfult Horizontal平面 に平行な横断像であり、 スライス厚は4mmまたは2 mmで、 スキャンごとのテーブ ル移動距離はスライス厚に一致させた。 ウインド幅3500 H.U.、 ウインド値500 H.U.
で表示されたCTフィルム上の各スライス面 において、 各断面をデジタイザーでトレ
表1.対象
年齢(歳) 男性 女性
計
'"'--9 2 (4) 3 (6) 5(10)
10'"'-- 5(10) 5(10) 10(20)
20'"'-- 6(12) 10(20) 16(32)
30'"'-- 8(16) 6(12) 14(28)
40'"'-- 8(16) 7(14) 15(30)
50'"'-- 10(20) 5(10) 15(30)
60'"'-- 10(20) 10(20) 20(40)
70'"'-- 5(10) 8(16) 13(26)
80'"'-- 4 (8) 2 (4) 6(12)
90'"'-- 0 (0) 1 (2) 1 (2)
計
58(116) 57(114) 115(230) ( )内は上顎洞数12
ースし、 前述の画像解析装置(図2)を用いて、 スキャンiにおける面積SIを得た。si にそのスキャンのスライス厚tiおよび、 テーブル移動距離を補正するためにガント
リ-傾斜角度。の余弦cos eを乗じて、 そのスライスに相当する容積を求めた。 これ を全スキャン数nにわたって積算し、 CT画像で求めた上顎洞の容積をVとした(図的。
n
V = 2: si . ti . cos e
健常上顎洞容積に関して、 容積の平均ならびに標準偏差、 男女差、 左右の相 関、 左右差ならびに対称、度を検討した。対称度は左右差より下記の如く求めた30)o
対称度=(容積の左右差/容積の大きい方の値) X 100 (0/0)
[b]年齢との関連
上記の対象において、 上顎洞容積の年齢による変化を検討した。
[c]上顎臼歯の有無との関連
CT画像およびパノラマ断層写真を用いて上顎臼歯の有無を検索し、 上顎洞容 積への関与を検討した。対象は永久歯の萌出がほぼ完成した20歳以上の症例のうち、
上顎臼歯の歯数の確認できた97症例 194上顎洞であった。片側上顎臼歯が1---5歯存 在するH有歯群"(133上顎洞)と上顎臼歯が5歯ともに欠損しているけ欠損歯群"(61上 顎洞)にわけで両者を比較した。
n
v=乏si . ti . cos e
。;ガントリー傾斜角 ti ;スライス厚
図9. CT画像上での上顎洞容積計測
つぎに各何人において左右の歯の存在状態と上顎洞容積との関連を検討した。
左右ともに上顎臼歯が1�5歯存在するH有歯一有歯群" (61症例)、 左右の片側は上顎 臼歯が存在し、 反対側は全臼歯が欠損しているH有歯-欠損歯群"(11症例)、 および 左右ともに全上顎臼歯が欠損しているH欠損歯一欠損歯群" (25症例) の 3群にわけで、
左右相関および左右差ならびに対称度を検討した。
[d]中顔面頭蓋骨の大きさおよび身長、 体重との関連
20歳以上の症例のうち中顔面頭蓋骨の大きさおよび体格の検索可能であった 症例において、 上顎洞の容積と中顔面頭蓋骨の大きさおよび体格との関連を検討し た。 検討対象にした症例数を表2に示す。 中顔面頭蓋骨の大きさの1つの指標とし て、 Waitzmanらによる計測点6)を応用し、 CT横断像において頬骨間径および前後径 を計測した(図10) 。 頬骨間径は、 頬骨の前方と側方の交差する角部を基準点とし、
両側頬骨の基準点間の距離とした。 前後径は、 両側頬骨の基準点を結んだ線に正中 を通る垂線をひき、 後頭骨にいたるまでの垂線の長さとした。 CT画像上において、
上記2種の2点間距離を画像解析装置を用いて測定した。 ガントリーの傾きを補正す るために、 CT画像上の前後径の計測値にガントリー傾斜角度の余弦を乗じた。 体格 の指標として身長と体重を用いた。
平均および、分散の統計的検定(t検定およびF検定)において、 p<0.01を有意差 があると考えた。 2変量聞の相関の有意性の検定の場合には、 p<0.0 1を有意な相関が あるとした。 また2組の標本の相関係数の差の検定には、 p<O.Olを有意差があると考 えた。
表2.中顔面頭蓋骨の大きさ および身長、 体重の検討
に用いた対象症例数
ノニヒ\
男 女
中顔面頭蓋骨
頬骨問径 前後径 身長
92 63 60
46 29 31
46 3 4 29
1 4
体重
64 32 32
図10. CT画像上の計測点(1)
a. 頬骨間径
b. 中顔面頭蓋骨前後径
2.測定結果
[a]平均および標準偏差
20歳未満の上顎洞容積の平均値は14.18 cm3、 標準偏差は6.35 cm3であった。
また20歳以上の成人上顎洞の容積の平均値は14.71 cm3 、 標準偏差は6.33 cm3であっ た(表3)。
[b]男女差
20歳未満の男性の上顎洞容積の平均値は 15.88 cm3、 標準偏差は 6.36 cm3、 女 性の平均値は 12.70 cmヘ標準偏差は 6.15 cm3であった。 また20歳以上の男性の上顎 洞容積の平均値は15.40 + 7.04 cln3 、 女性は13.98 + 5.43 cm3であった(表3)0 20歳未 満の上顎洞においても、 また20歳以上においても、 男女聞の容積の平均に有意差は
みられなかった(t検定)。 なお男女の年齢の平均および分散に有意差はなかった(F 検定およびt検定)。
[c]左右の相関、 左右差および対称度 (1)左右の相関
左右の容積の相関係数は0.95で強い相関が見られた(図11)。
表3.容積の平均
相 年齢(歳) 容積(cm3)
対象
:z
臥 最小~最大 平均+s.d. 最小~最大 平均+s.d.
全 <20歳 30 4�19 12.7 + 5.0 7.48 �29.09 14.18 +6.35 注20歳 200 20 �96 52.0 + 19.2 4.56 �35.21 14.71 +6.33 男 <20歳 14 4� 19 13.7 + 5.5 8.39 '""'"'29.09 15.88 +6.36 主主20歳 102 20 �84 52.6 + 17.6 4.56 �35.21 15.40 土7.04 女<20歳 16 6'""'"'19 11.8 + 4.4 7.48 ---27.95 12.70 +6.15
注20歳 98 20 �96 51.2 +20.7 4.76 ---27.77 13.98 +5.43
16
(2)左右差
左右の上顎洞容積について、 有意差は認められなかった(paired t検定)。 次 に各伺人において容積の左右差および対称度を求めた。 左右差の平均は1.49 cm3、
標準偏差は1.40 cm3であり、 対称度は10.2+9.1 0/0であった(表4)。 男女間において、
左右差および対称度の平均値に有意差はなかった(t検定)。
(円程ω)
40
•
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5
30
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oo ov
10 20 30 40
Volume of right maxillary sinus (cm3)
図11.左右上顎洞容積の相関
115症例、r=0.95
表4.上顎洞容積の左右差と対称度
左右差(cm3) 対称度(0/0) ---司--_.圃..__.圃・・..--_.圃・・・・岨・・・・・・・・・・・・--_.聞._--- ---司--.圃・固・圃._---_.胴・・・・・・・H・・・・・・・---
最小~最大
平均:ts.d. 平均士s.d.,ノゴニ\ 0�5.40 l.49土1.40 10.2 +9.1
男 0�5.40 1.68 + 1.45 11.3+9.3
女 0'"'--5.35 1.30土1.33 9.0 +8.9
[d]年齢との関連
イ同人の上顎洞容積と年齢との関係を検討した。 加齢に伴い20歳未満では容積 は増加し、 20歳以後は減少した(図12) 。 容積と年齢との相関係数は、 20歳未満 (30上
顎洞)において0.72、 20歳以上(200上顎洞)において-0.44となり、 いずれの年齢層に おいても、 容積と年齢の聞には有意な相関がみられた(p<O.OOOl)。
[e]上顎臼歯の有無との関連
有歯群において、 上顎洞の容積は4.70 cm3から35.21 cm3で平均15.84 cm3、 標準 偏差は6.53 cm3で、あり、 一方欠損歯群では、 4.56 cm3から27.15 cm3で平均12.33 cm3、
標準偏差は5.40 crrずであった(表5 および図13) 。 両群間の上顎洞容積の平均に有意 差が認められた(t検定、 p< 0.0003)。 しかし両群の年齢の平均および分散に有意差 があるので(p<O.OOOl)、 年齢の分布を考慮して50歳代から70歳代までの対象のみにつ いて再検討を行なった。 その結果、 50歳代から70歳代までの有歯群(13.26+ 5.15 cm3)と欠損歯群間(11.81土5.60 cm3)に、 容積の平均 に有意差はみられなかった(t 検定)。
40
〆-ヘ 門
店
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20 40 60 80 100
Age
図12.上顎洞容積と年齢との関係
上顎洞容積(y)と年齢(x)との間には、 20歳未満の症例の上顎洞においてy=2.56+0.91x (r=0.72)、 20歳以上においてy=22.03-0.14x(戸・0.44)の関係が認められた
表5.上顎臼歯の有無と上顎洞容積(20歳以上の上顎洞)
洞 年齢(歳) 容積(cm3 )
数 最小~最大平均+s.d. 最小~最大 平均+s.d.
有歯群133 20"-'81 44.1土17.1 4.70"-'35.21 15.84+6.53
(48) (52"-'79) (63.0土7.4) (4.70 "-'24.34) (13.26+ 5.15) 欠損歯群 61 42"-'96 68.7+11.6 4.56"-'27.15 12.33+5.40
(46) (50"-'79) (65.4 +7.5) (4.56 "-'27.15) (11.81 + 5.60) ( )内は50歳代から70歳代の上顎洞
_..,
40
5 ω
一 . 有歯群(133上顎洞)
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欠損歯群(61上顎洞)230
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Age (years)
100
図13.有歯群と欠損歯群における上顎洞
容積と年齢との関係(20歳以上の上顎洞)
さらに各伺人における左右の上顎臼歯の存在状態と上顎洞容積との関連は、
有歯一有歯群では左右の容積は相関係数r=0.96で、あった。 また有歯-欠損歯群では r=0.95、 欠損歯-欠損歯群ではr=0.90で、 いずれも強い相関を示した(図14)。各群
聞において左右の相関係数に有意差はみられなかった。 有歯一有歯群の左右容積の 回帰直線より容積の950/0信頼区間を求めた結果、 ほとんどの症例の容積はこの信頼 区間内にあった(図14)。 また各群において、 左右の上顎洞容積についてpaired t検 定を行なったが、 いずれの群においても左右容積に有意差はみられなかった。 各偶 人における容積の左右差および対称度を求め、 各群においてそれらの値の平均およ び標準偏差を求めた(表6)。各群間において左右差および対称度に有意差はみられ なかった(t検定)。
-有歯-有歯群 (61症例) r=0.96 A有歯-欠損歯群 (11症例) r=0.95 ロ欠損歯-欠損歯群(25症例) r=0.90
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10 20 30 40
Volume of right maxillary sinus (cm3 )
図14.左右の上顎臼歯の存在状態による3群に おける左右上顎洞容積の相関(20歳以上の上顎洞)
点線:有歯-有歯群の左右容積の回帰直線より求めた容積の95%信頼区間
20
表6.左右上顎臼歯の存在状態による3群 における上顎洞容積の左右差と対称度
(20歳以上の症例)
症 左右差(cm3)
伊l数 最小~最大 平均+s.d.
有歯- 61 有歯群
有歯ー
欠損歯群 11 欠損歯- 欠損歯群 25
0'""'-'5.40 1.53+ 1.38
0.10,,-,4.08 1.70+ 1.62 0"-'5.23 1.51 + 1.45
[町中顔面頭蓋骨の大きさおよび身長、 体重との関連
対称、度(0/0)
---.
平均+s.d.
9.9+ 8.8 10.2+ 8.7 13.0+11.1
中顔面頭蓋骨の大きさ、 身長および体重の平均と標準偏差を表7に示す。 各々 の値に男女差を認めた(t検定、 p<O.OOOl)。 また年齢と各々の値との相関を検討した 結果、 年齢と身長および体重との間に有意な負の相関を認めた( 男性の年齢と身長;
r=-0.61, p<O.OOOl、 女性の年齢と身長;r=-0.53, p<O.OOOl、 男性の年齢と体重; r=-0.48,
p<O.OOOl、 女性の年齢と体重; r=-0.40, p<0.0009)(表8)。 個人の上顎洞容積と中顔面頭 蓋骨の大きさ、 体格および年齢との相関を検討した結果 を表9に示す。 容積と頬骨 問径は男女ともに有意な正の相関を認めた(男女ともにr=0.33, p<0.002)o 女性にお いて容積は 中顔面頭蓋骨前後径と有意な負の相関を示した(r=-0.33, p<0.006)o 男性 において容積と身長および体重は 有意な正の相関を示した(容積と身長 ; r=0.48, p<
0.0001、 容積と体重; r=0.46, p<O.OOOl)。
表7.中顔面頭蓋骨の大きさおよび身長、 体重 (20歳以上の症例)
中顔面頭蓋骨
頬骨問径(cm) 前後径(cm) 身長(cm) 体重(kg)
平均 平均 平均 平均
(例数) (例数) /
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: , (例数)
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_:
\(例数)
(±s.d.) (±s.d.) (±s.d.) (土s.d.)
11.72 ,/'" 13.92 全(92) /
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( + 8.46) ,'-' 'J ( + 1 1. 14) .15 ',... 'H 14.51
男 (46) I
_:__ ..-
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女 (46) / _:_ �
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表8.年齢と中顔面頭蓋骨の大きさ、 身長 および体重との相関係数(20歳以上の症例)
ノ@-二. 男 女
中顔面頭蓋骨 頬骨間径 前後径 身長
ー0.12 (92) 0.20 (63) ー0.40**(60) ー0.20 (46) 0.04 (29) -0.61 **(31) ー0.24 (46) 0.33 (34) -0.53**(29)
体重
ー0.38**(64) -0.48**(32)
-0.40**(32)
**有意の相関がある(p<O.OOl)
)内は症例数
表9.上顎洞容積と中顔面頭蓋骨の大きさ、 身長、
体重および年齢との相関係数(20歳以上の上顎洞)
中顔面頭蓋骨 頬骨間径
全0.31**(184) 男 0.33* (92) 女 0.33* (92)
日“新歪
ー0.17 (126)
ー0.13 (58) ー0.33* (68)
身長 体重 年齢
0.42**(120) 0.45**( 128) ー0.44**(200)
0.48** (62) 0.46** (64) -0.36**( 1 02) 0.22 (58) 0.17 (64) ー0.57** (98)
* 有意の相関がある(p<O.Ol)
**有意の相関がある(p<O.OOl)
)内は上顎洞数
22
B.上顎洞最大横断面の横径・前後径および上顎洞底の高さの計測 1.測定対象および方法
上顎洞容積を測定した症例のっち107症例(214上顎洞) について(表10)、 上顎 洞最大横断面における横径および前後径(図15)を前述の画像解析装置(図2)を用いて 計測した。 上顎洞横径は、 上顎洞最大横断面において耳聴道線に平行な上顎洞の最 外側点を通る水平線の長さとした。 前後径は、 同断面においてこの水平線に対する 垂線の最長値とし、 ガントリーの傾きを補正するために計測値にガントリー傾斜角 度の余弦を乗じた。 また上顎洞底の高さを表わす指標として、 前鼻赫の最上端を基 準点とし、 基準点と上顎洞底聞のFrankfult Horizontal平面に垂直方向の距離を用いた。
基準点が描出されているスライス面から上顎洞底の描出されるスライス面までにわ たって、 スライス厚とガントリーの余弦の積を積算した値を求めた。 上顎洞底が基準 点より下方にあるときの高さは負の値とした(図16)。 それぞれの計測値の平均およ
び標準偏差、 男女差、 左右の相関および左右差を求め、 年齢および容積との関連を 検討した。 また20歳以上の92症例(184上顎洞)に ついて、 上顎洞の各計測値と上顎臼 歯の有無および骨格との関連も検討した。 統計的検定はp<O.Olを有意とした。
図15. CT画像上の計測点(2)
C. 上顎洞最大横断面の横径 d. 上顎洞最大横断面の前後径
+
ti;スライス厚
。
上顎洞底の高さ= 2: ti . cos e
。;ガントリイ頃斜角
図16.上顎洞底の高さの計測
24
N l.Il
表10.上顎洞最大横断面の横径・前後径および上顎洞底の高さ
対象 洞 年齢(歳) 横径(cm) 前後径(cm) 洞底の高さ(cm)
委女 最小~最大 平均+s.d. 最小~最大 平均+s.d. 最小~最大 平均+s.d. 最小~最大 平均+s.d.
全
<20歳 30 4---19 12.7+ 5.0 2.33---3.60 3.00+0.39 2.76---3.89 3.43+0.30 -0.96---0.80 -0.24+0.44 注20歳184 20---96 52.0+19.3 0.97---5.63 2.75+0.64 1.60---4.41 3.57+0.48 -1.60---1.20 -0.38+0.46男
<20歳 14 4---19 13.7+ 5.5 2.61---3.60 3.10+0.30 2.76---3.80 3.44+0.27 -0.96---0.00 -0.44+0.34 孟20歳 92 20---84 53.8+ 18.0 0.97---5.63 2.78+0.74 1.60---4.76 3.54+0.53 -1.60---1.20 -0.41 +0.49女
<20歳 16 6---19 11.8+ 4.4 2.33---3.56 2.91土0.44 2.78 ---3.89 3.42 +0.33 -0.80---0.80 -0.07 +0.47 注20歳 92 20---96 50.1 +20.5 1.66---3.95 2.73+0.53 2.30---4.35 3.59+0.42 -1.20---0.40 -0.35+0.442.測定結果
[a]平均および標準偏差
上顎洞最大横断面の横径、 前後径および上顎洞底の高さの平均および標準偏 差を表10に示す。 20歳未満の上顎洞において、 最大横断面の横径は平均 3.00+0.39 cm、 前後径は3.43士0.30 cm、 上顎洞底の高さは-0.24+ 0.44 cn1で、あった。 成人上顎洞 の場合はそれぞれ2.75+0.64 cm、 3.57+0.48 cm、ー0.38+ 0.46 cmで、あった。 また、 20 歳未満の上顎洞においても20歳以上においても、 前後径は横径よりも有意に大きかっ た(paired t検定、 P<O.OOOl)。
[b]男女差
20歳未満においても20歳以上においても、 男女聞の上顎洞各計測値に有意差 はみられなかった(t検定)。
[c]左右の相関および左右差
各計調IJ値の左右の相関係数はそれぞれ0.67、 0.79、 0.73であり、 いずれの左右 の値にも有意な相関がみられた(p<O.OOOl)。 また 左右の各計測値において、 有意差は 認められなかった(paired t検定 )。 また左右差はいずれも0.3 cm未満ときわめて小き かった(表11)。
[d]年齢との関連
各計測値と年齢との関係を図17に示す。 20歳未満の症例において、 上顎洞横 径は年齢との問に有意な正の相関が(r=0.53, p<0.003)、 また20歳以上の症例において、
横径および前後径は年齢と有意な負の相関がみられた(横径と年齢, rニー0.34, p<
0.0001、 前後径と年齢; r =-0.33, p<O.OOOl)。 一方、 20歳未満の症例において、 上顎洞 底の高さは年齢との間に有意な負の相関が(r=-0.53, pく0.002)、 20歳以上の症例にお いて、 高さは年齢との間に有意な正の相関が認められた(r=0.30, p<O.OOOl)。
表11.上顎洞横径、 前後径および上顎洞底の高さの 左右の相関および左右差
横径 前後径 洞j長の高さ
左右の相関係数 0.67 0.79 0.73 左右差最小~最大 0---4.00 0.01 ---1.00 0---0.80
(cm)
平均IS.d. 0.29 +0.42 0.23 +0.19 0.21 +0.26
26
ト.顎�ríJ検符(20成未満) L顎洞横筏(20歳以l二) 上瀕制前後符(20歳未満)
L�1l洞前後径(20歳以上)
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20上顎洞底の高さ(20歳未満) 上顎洞底の高さ(20歳以上) 0
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80 100
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Age(years)
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20歳以
図17.上顎洞横径、
年齢との関係
a.上顎洞横径(Yl)および、前後径(yJと年齢(x)とは、 20歳未満においてそれぞれYl=2.48+
0.04x(r=0.53)およびY2=3.11+0.03x (rニ0.42)、 20歳以上においてY1=3.35-0.01x (r=-0.34) およびY2=3.99-0.01x(r=-0.33)の関係がみられた。
b.上顎洞底の高さ(Y3)と年齢(x)とは、 20歳未満においておニ0.36-0.05x(r=-0.53)、
上においてお=-0.75+0.01x(r=0.30)の関係がみられた。
前後径および上顎洞底の高さと
[e]容積との関連
各計測値と容積との相関係数はそれぞれ0.74、 0.71、-0.65であった。 いずれ も容積との聞には有意な相関が認められた (p<O.OOOl)o
向上顎臼歯の有無との関連
有歯群と欠損歯群聞における上顎洞の各計測値の平均 および標準偏差を表12
に示す。 両群間において各計測値の平均 に有意差を認めた (t検定、 横径; p<0.0008,
前後径; p<0.003, 高さ; p<0.004)o しかし、 年齢分布を考慮し、 50歳代から70歳代ま での対象について各計測値の平均を比較した場合には、 両群聞において有意差 はみ られなかった。
[g]中顔面頭蓋骨の大きさおよび身長、 体重との関連
各計測値と中顔面頭蓋骨の大きさおよび身長、 体重との相関を表13に示す。
上顎洞横径と中顔面頭蓋骨頬骨間径、 身長および体重との聞には有意な正の相関が みられた(上顎洞横径と頬骨間径; r=0.31, p<O.OOOl、 横径と身長; r=0.24, p<0.009およ び横径と体重; r=0.30, p<0.0006)。 また上顎洞底の高さと頬骨間径、 身長および体重 との間には有意な負の相関を認めた(上顎洞底の高さと頬骨問径; r=-0.20, p<0.006、
高さと身長 ; r=-0.31, p<0.0007および高さと体重; r=-0.38, p<O.OOOl)。 女性の場合は、
骨格との間に有意な相関を認めなかった。
表12.上顎臼歯の有無と上顎洞各計測値
(20歳以上の上顎洞)
洞 年齢(歳)
数 平均+s.d.
有歯群 125 44.4 + 17.5 (48) (63.0 +7.4) 欠損歯群 59 68.1 + 11.4
(46) (65.4 +7.5)
前後
洞震の
横径(cm) 径(cm) 高さ(cm)
-・・・・・・・・・・・・・・・圃・・・・・・・・・・・・圃・・・・・・4・・・岡.. "圃.._--・・・・・・・・・・・・・・・・・ー--_.・・・・・・・・・ ---_.圃・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
平均土s.d. 平均+s.d. 平均+s.d.
2.86土0.55 3.64 +0.39 -0.44 +0.46 (2.75 + 0.43) (3.51 + 0.38) (-0.36 + 0.45) 2.53 +0.76 3.42 +0.60 -0.24土0.45 (2.50 + 0.81) (3.36士0.61) (-0.23 + 0.46)
( )内は50歳代から70歳代の上顎洞
28
表13.上顎洞各計測値と 中顔面頭蓋骨の 大きさおよび身長、 体重との相関係数
(20歳以上の上顎洞)
中顔面頭蓋骨 身長 体重 頬骨間径 前後径
横径
0.31 * *(184) -0.13 (126) 0.24 * (116) 0.30 * *(124)上
男 0.35**(92) ー0.03 (58) 0.28 (60) 0.32* (62) 号員 女 0.38**(92) -0.30 (68) 0.11 (56) 0.12 (62) 1同目lj後径
0.12 (184) -0.09 (126) 0.14 (116) 0.20 (124)洞底
の高
さ男 0.18 (92) ー0.05 (58) 0.23 (60) 0.21 (62) 女 0.19 (92) ー0.19 (68) 0.04 (56) 0.14 (62)
ー0.20 * (184) -0.05 (126) -0.31 * *(116) -0.38 * *(124) 男 -0.28* (92) -0.01 (58) ー0.45料(60) -0.42村(62) 女 -0.14 (92) -0.09 (68) -0.12 (56) -0.16 (62)
*有意の相関がある(p<O.Ol) 料有意の相関がある(p<O.OOl)
( )内は上顎洞数
IV.考察
A.測定精度について
CT画像上で頭蓋内容積を測定したPosnickらの報告 4)によると、直接乾燥頭蓋 骨を測定した値とCT画像上の測定値との違いは平均2.3%であった。 また、長さの 測定に関して、測定者内あるいは測定者間の測定値のばらつきは小さいと報告され
ている山)0 CT横断像上の2点間距離精度はよいが、体軸方向の精度は劣るとの報告 32)もある一方では、三次元再構成像上での測定が元のCT画像上での測定よりも優れ ているとの報告もある33)。 測定精度は、使用したCT装置の性能やスキャンの条件、
測定装置の精度等によって異なってくるものと考えられる。 したがって、本研究に おける測定精度をまず予備実験において検討した。 その結果、CT画像上で測定した 容積および長さと実際の値とは強い相関を示し、その相対誤差はいずれも5%以内 であった。 容積測定の変動係数はl.220/0、長さのそれは0.470/0、測定誤差はそれぞれ 0.42cm3および、0.02cmであり、これらは個体差より十分に小さく、臨床的には有意義 な値であると考えられた。
B.上顎洞の容積について
成人屍体頭蓋骨を用いて上顎洞容積の算出を行なった報告は多く、彼らの 報告によると容積の平均は14.8cm3 (吉永,1923)9)、14.5 cm3 (吉永,1926)10)、
8.9cm3 (三浦,1953)")、8.0cm3 (上村,1974)12)、9.0cm3 (Schumacher,1974)13)、 11.8 cm3(Anagnostopoulou, 1991 )14)であった。 Waters法を利用して人上顎洞に注入した 鉛球の量により容積を求めたPenevらの報告によると14.1 cm3であった15)。 また 断層X線写真を用いて成人の上顎洞容積を測定した益田の報告では21.9mlであっ た34)。 屍体頭蓋骨の上顎洞容積を直接的に測定する場合には、粘膜の状態によ る影響が考えられ、また単純X線写真を利用して人上顎洞に注入された物の量よ り間接的に上顎洞容積を求める場合には、重複像による不正確さが生じる。 した がって、生体上顎洞の測定には最もCTが適していると考えられる。 また、測定 法による差のみならず、人種による違いも、様々な値が報告されている原因であ
ろっ。 CT画像を用いたわれわれの検索では成人上顎洞の容積は平均14.71cm3で あり、吉永久10)あるいはPenevら15)の報告に類似していた。
性差については、従来の報告では、男性の方が女性よりも大きいと論じて いる9-10,15)が、いずれも有意差検定はなされていない。 しかし有意差検定をした われわれの検索では、全年齢を対象とした場合にも、成人を対象にした場合にも
男性の上 顎洞容積の平均は女性よりも大きいものの有意差はみられなかった。
左右の上顎洞容積の相関関係について、Schmacherらによるr=0.49という 報告13)があるが、対象数が8例と極めて少ない。 今回115症例について左右の相 関係数を求めた結果、r=0.95と強い相関を示した。 左右差については、いずれの 報告も左右差は小さいとしている11-12,14-15)。 われわれの検索において、 左右差は
30
十分小さく従来の報告に一致しており、 また左右差より対称、度も求めたが30)対 称、度も100/0前後であった。
上顎洞容積の年齢による変化に関しては、 小児および青年期の上顎洞の年 齢に伴う発育は詳細に報告され20-21)、 小児の上顎洞容積は歯の萌出に大きく左右
されるという報告もあればiL.1)、 呼吸の様式が上顎洞を含む顔面頭蓋骨の発育に 関与することを示唆しているものもある35-36)。 しかしながら、 青年期から老年期 にいたるまでの症例の容積を測定した文献は少なく9-10,15)、 しかも詳細な研究はな されていない。 吉永9・10)あるいはPenevら15)は年齢の区分を3段階にわけでその平 均容積を求めている。 われわれは、 全年齢層にわたって上顎洞容積の変化を観察 した。 その結果20歳までは増加、 それ以降は縮少した。 成人上顎洞の容積と年齢 との負の相関は何に起因するかについて、 上村は上顎歯との関連を指摘し、 無歯 顎症例では上顎洞容積は縮小すると述べている12)。 一方Penev らは骨格との関連 を指摘し、 上顎洞容積は頭蓋骨の大きさと相関すると述べているl九歯の喪失に ともない上顎歯槽骨は徐々に退縮することが予想されるが、 即座に上顎洞容積を 左右するとは考えにくい。 また骨格の大きさが上顎洞容積に影響すると仮定して、
年齢がどのように関わってくるか解析されていないのが現状である。
上顎洞の前方限界および後方限界の歯、 あるいは上顎洞底に最も近い歯を 記載した文献から推察して、 上顎洞に関連した歯は第l小臼歯から第3大臼歯と考 えられる9-11,18,23-26)。 したがって上顎臼歯左右各5歯の有無をCTおよびパノラマ断 層写真で観察した。 有歯群と欠損歯群の平均容積には、 上村が報告したように12) 有意差がみられるものの、 年齢分布を考慮して歯の影響を比較した場合には両群
聞の平均容積に有意差はみられなかったO さらに症例数を増やして詳細な検討の 必要はあるものの、 歯の喪失が上顎洞容積へ与える影響は従来考えられているよ りも小さいかあるいはないと思われた。 さらに各個人において左右の歯の存在状 態の違いによる左右容積への影響も検討した。 有歯ー欠損歯群も含むいずれの群 においても左右容積は有意に相関し、 左右差も小さかった。 症例数が少ないとは いえ、 この結果からも上顎臼歯の有無が上顎洞容積に与える影響は小さいと推測 された。
CT画像上で計測可能な中顔面骨の大きさのlつの指標として、 Waitzmanら の計測点6) を応用し、 2種類の径を計測した。 上顎洞容積は男女ともに頬骨間径 と有意な相関を示し、 中顔面骨の横径は上顎洞容積を左右する因子と考えられた。
女性の容積は中顔面骨の前後径と負の相関を示した。 すなわち女性においては、
横径が大きく前後径の短い中顔面をした症例ほど上顎洞容積は大きい値を示すと 考えられた。 男性の容積は、 年齢と強い相関のある身長および体重と有意な相関 を示した。 日本において、 現在の老齢者の体格は青年のそれよりも小さいことが 予測され、 それが本研究において、 年齢にともなって上顎洞容積が減少した理由 と考えられる。 したがって、 個人の上顎洞容積が経時的に減少するとは結論でき ない。 女性の場合は、 容積と体格との聞に有意の相関がみられないので、 容積と
年齢との負の相関には他の何らかの因子が関与しているものと推測される。
C.上顎洞最大横断面の横径・前後径および上顎洞底の高さにつ
いて
屍イ本頭蓋骨の上顎洞の大きさを直接計測した報告9・1山)あるいはWaters法 上で計測した報告17)は散在するものの、 計測点がそれぞれ異なり再現性の点で 問題が残る。 一方、 CTは再現性のある解剖学的指標を決めることが比較的容易 である610)O 従来の報告では、 上顎洞の前後径が最大で3.31cm(吉永,1923)9)、
3.54cm(吉永,1926)10)、 3.1cm(三浦,1953Y1)、 ついで上顎洞の垂直径で3.10cm(吉 永,1923)9)、 3.18cm(吉永,1926)10)、 2.8cm(三浦,1953)11)、 上顎洞の横径は2.21cm (吉永,1923)9)、 2.71cm(吉永,1926)10)、 2.2cm(三浦,1953)11)となっている。 本研究 において、 成人上顎洞の前後径は平均3.57cm、 横径は平均2.75cmであり、 前後径 のほうが横径よりも大きく、 従来の報告と同様であった。 上顎洞底の高さに関し て、 上顎臼歯と上顎洞底との関係の記載は多数みられるものの9判-ぺ10,1は8,幻.之β2
底の位置を解剖学的指標(主に前鼻束赫束あるいは鼻腔底)との関係において計測し た報告は多くはみられなUい、J沙仰9仏判川.ぺ刊l川0,1山,26)羽拘6め)O 上顎洞底は、 鼻腔底より下方0.26---0.30cm (吉永,1923,1926)9-10)、 あるいは有歯顎において前鼻練を含む水平面より下方0.5 ---0.7cm(上村,1974)12)と報告されている。 本研究でも上顎洞底は前鼻東京より下方 0.36cm、 また有歯群に限った場合には同下方0.44cmでありほぼ同等の値であった。
性差に関して、 上顎洞の横径、 前後径は男性の方が女性よりも大きいとい う報告もあればヲ)、 X線写真上における上顎洞面積は女性のほうが男性よりも大 きいという報告もある16)。 しかし、 いずれも有意差検定はされていない。 また、
上顎洞底の高さの性差に関する記載はみられない。 本研究において、 上顎洞の横 径、 前後径および上顎洞底の高さに有意な男女差はみられなかった。
左右の計測値に関して、 男性の上顎洞面積は左側のほうが右側よりも有意 に大きいという報告もあるが16)、 吉永は上顎洞の横径および前後径に左右差は みられなかったと報告している9)。 上顎洞底の高さについて、 詳細に左右を比較 した報告はみられない。 われわれの検索において、 いずれの計測値も左右の値に 有意な相関がみられ、 左右差も十分小さかった。
年齢による上顎洞各径の変化に関して、 吉永は年齢区分を3段階に分けて その平均値を報告している9・10)。 もっと詳細なものには、 5歳あるいは10歳毎に 上顎洞面積の平均値を求め、 年齢と面積との関係を示したNowakらの報告がある が16)、 その中で彼らは上顎洞面積は20代まで増加、 それ以降は縮小したと述べ ている。 小児の上顎洞各径は3---4歳まで急速に発達し、 その後は徐々に増加した と報告されている20)。 本研究においても従来の報告と同様、 上顎洞横径および 前後径は20歳までは増加、 20歳以降は縮小しており、 特に20歳未満の上顎洞横径
と年齢、 および20歳以上の横径、 前後径と年齢は有意な相関がみられた。 上顎洞 の高さと年齢との相関を詳細に検討した報告はみられない。 本研究において、 上
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顎洞底は20歳までは下降し、 20歳以降は上昇した。
上顎洞各径と歯の有無との関連について、 上村は無歯顎症例では上顎洞の 前縁および後縁は退縮するが、 外側に広がると述べている12)。 ただし上村の報 告では、 屍体頭蓋骨を用いたために、 対象年齢が明らかにされていない。 今回の 検索によると全年齢層を対象とした場合には、 欠損歯群の上顎洞最大横断面の横 径、 前後径ともに有歯群のそれよりも有意に小さかったが、 年齢分布を考慮した 結果、 両群間には有意差はみられず、 歯の有無による上顎洞各径への影響は小さ いものと推測された。 上顎洞底の高さと歯との関連について、 小児の場合は歯の 萌出に左右されるとの報告がある21)。 今回は小児の症例が少なく、 歯との関連 は成人のみに限って、 歯の喪失にともなう上顎洞底の高さの変化を検討した。 上 村は、 無歯顎症例の上顎洞底の高さは有歯顎症例のものに比較して上方にあると 報告しているものの、 対象年齢は明らかではない12)。 年齢分布を考慮したわれ
われの検索では、 有歯群・欠損歯群間において上顎洞底の高さに有意差はみられ ず、 歯の喪失は上顎洞の高さを有意に左右する因子とは考えられなかった。
上顎洞の各計測値と骨格との関連について、 小児上顎洞の大きさは神経頭 蓋、 顔面頭蓋の発達と正の相関がみられるという報告がみられるが17)、 成人上 顎洞の計測値に関しての記載はみられない。 今回の検索の結果、 上顎洞横径は中
顔面骨頬骨問径、 身長および体重と有意な正の相関が、 また上顎洞底の高さは頬 骨間径、 身長および体重と有意な負の相関がみられた。
上顎洞最大横断面の横径および前後径は容積と強い相関を示し、 また年齢、
上顎臼歯の有無および骨格との関連においても、 容積との関係と矛盾しない結果 が得られたので、 これらの計測値は、 容積と同様に、 しかも簡便な上顎洞の大き さを示す指標と考えられた。 上顎洞底の高さは容積と強い相関を示すことより、
頬骨間径とも相関がみられたものと考えられる。 また成人の上顎洞底は加齢にと もなって上昇したが、 これは歯の喪失による影響とは考え難かった。 上顎洞の大 きさを示す一指標と考えられる上顎洞底の高さの変化は、 容積の場合と同様に体 格との相関によるものと推測された。 ただし、 現在の老齢者の体格は青年のそれ よりも小さいことが予測されるので、 本研究では年齢にともなう上顎洞底の上昇 がみられたものと考えられ、 個人の上顎洞底が経時的に上昇するとは結論できな かった。
v.結論
CTを用いて115例230上顎洞の容積および107例214上顎洞の大きさを測定 し、 年齢、 上顎臼歯の有無および骨格・体格との関連を検討し以下の結果を得た。
A. 測定精度について
予備的実験の結果、 CTを用いた上顎洞容積および大きさ測定に関する相 対誤差は 50/0以内、 変動係数および測定誤差も小さく、 CTによる測定精度は十 分高いものと考えられた。
B. 上顎洞の容積について
1. 成人上顎洞の容積は4.56cm3から35.21cm3であり、 その平均は14.71 cm3、 標 準偏差は6.33cm3であった。
2. 上顎洞容積の平均値に有意な男女差は認めなかった。
3. 左右の上顎洞容積は強い相関を示したO また左右の容積に有意差はなかっ た。
4. 上顎洞の容積は20歳までは増加し、 それ以降は減少した。
5. 上顎臼歯の有無で有歯群と欠損歯群に分けると、 年齢分布を考慮した結果、
両群聞において容積の平均に有意差はみられなかった。 また各個人において左右 の歯の存在状態と成人上顎洞容積との関連を検討した結果、 左右の容積において、
歯の存在状態の如何による差はみられなかった。
6. 成人上顎洞容積と頬骨間径とは有意な正の相関を示した。 女性において上 顎洞容積と中顔面頭蓋骨前後径は有意な負の相関を示した。 また男性において容 積は身長および体重と有意な正の相関を示した。
C. 上顎洞最大横断面の横径・前後径および上顎洞底の高さについて
1. 成人上顎洞最大横断面の横径は2.75+0.64 cm、 前後径は3.57+0.48 cm、 上 顎洞底の高さは前鼻赫から下方0.38+0.46 cmであった。
2. 各計測値に有意な男女差はみられなかった。
3. 左右の上顎洞各計測値は強い相関を示した。 また左右の計測値に有意差は なかった。
4. 20歳未満の症例において、 上顎洞横径と年齢とは有意な正の相関が、 20歳 以上の症例において、 上顎洞横径および前後径と年齢とは有意な負の相関が認め られた。 また、 20歳未満の症例において、 上顎洞底の高さと年齢とは有意な負の 相関が、 20歳以上の症例において、 上顎洞底の高さと年齢とは有意な正の相関 が認められた。
5. 上顎洞の最大横断面における上顎洞横径および前後径は、 容積と有意な正 34
の相関を示すこと より、 これらの値は上顎洞の大きさを示す簡便な指標と 考えら れた。
6. 上顎洞横径および前後径は、 年齢を考慮した結果、 上顎臼歯の有無によっ て左右されなかった。 また上顎洞底の高さも同様であった。
7. 成人上顎洞横径は、 中顔面頭蓋骨頬骨間径、 身長 および体重と有意な正の 相関を、 また上顎洞底の高さはこれら と有意な負の相関を示し、 容積との関係と 矛盾しない結果が得ら れた。
本研究の要旨は、 第26回日本歯科放射線学会総会(1985,東京)、 第28回日本 歯科放射線学会総会(1987,広島)、 第43回日本口腔科学会総会(1989,長崎)および 第10回Congress of International Association of Dento-Maxillo-Facial Radiology (1994,
Seoul)において発表した。
謝辞:稿を終えるにあたり、 御指導、 御校閲を賜りました九州大学歯学部歯科放 射線学講座神田重信教授に深甚なる謝意を表します。 またと もに研究にあたった 黒木敬士助手(現;黒木歯科医院院長)、 森口信二助手(現;金隈病院歯科科 長)お よび有地栄一郎助手(現;長崎大学歯学部附属病院講師)、 本研究に御助言をいた だいた吉浦一紀講師、 ならびに御協力をいただいた歯科放射線学講座の諸先生お よび附属病院歯科放射線科のスタッフの皆様に深く感謝いたします。 さらにここ ろよく本研究の継続をさせていただいた長崎大学歯学部歯科放射線学講座中村卓 教授に多大 なる謝意を表します。