九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
交通流動における社会ジレンマの構造に関する解析 的研究
莖田, 慎司
http://hdl.handle.net/2324/2236283
出版情報:九州大学, 2018, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式3)
氏 名 :莖田 慎司
論 文 名 :交通流動における社会ジレンマの構造に関する解析的研究 区 分 :甲
論 文 内 容 の 要 旨
多くの研究分野で取り上げられている環境問題は、簡単に解消に至ることの出来ない複雑な状況 が絡み合っており、それは社会ジレンマとして数理モデル化することが可能である.この社会ジレ ンマを寛解・解消する互恵的協調関係がどのような契機で人間社会システムにおいて構成を論究す ることは,会物理学上も挑戦的な研究課題であると考えられる.環境問題のひとつである交通渋滞 においても、その背景に社会ジレンマ構造が潜んでいるとにらみ、2009年・2010年に山内ら・中田 らは2車線狭窄合流部のボトルネックでの割り込みにより流動相が乱され輸送効率が低下する現象 の背景には,囚人のジレンマゲーム(Prisoner’s Dilemma Game, PDG)の数理構造が潜在すること を明らかにした。このことは,人間が操作する自己駆動多粒子系ダイナミクスの物理的本質を理解 する上で有意なだけでなく,これまで進化ゲーム理論で培われてきたジレンマの緩解・解消プロトコ ルが交通渋滞の逓減に応用出来る可能性を示唆した点でも小さくない発見である.
一方で,通常の道路交通を考えるとき,車線狭窄によるボトルネックより一般的状況として,車 線変更による流れの擾乱がボトルネックを惹起することが想起されるが,この現象の背後にも数理 ジレンマが潜在するか否かは興味深い問題である.流動相への擾乱を付加することと数理ジレンマ 性とに因果があるのだとすれば,通常走行時の過剰な車線変更が効率的流動を阻害する現象にも同 様の,もしくは異なるクラスのジレンマ性が潜在する可能性がある.
本研究では,如上の分野の研究経緯を踏まえ,車線変更により励起される数理ジレンマ構造を解 析することを目的としている。
第1章は序論として、本研究の背景および本論の構成について述べる.第2章及び第3章にて,
本論の骨格となる理論である,交通流理論およびゲーム理論について説明をする.第2章では,交 通流研究の基礎ならびに,本研究で用いるミクロモデルとしてのマルチエージェントシミュレーシ ョン方法について、既往研究のレビューも含めた紹介を行なう.また第3章では,ゲーム理論の基 礎となる戦略およびジレンマの定義についての紹介を行なう。
第4章では交通流動の演繹アプローチとして,Fukui-Ishibashi (FI)モデル及びQuick-Start(QS)モ デルの解析解の導出について述べる.第5章では実際の交通流動の計測を行なった,実測データの 収集・検証に関する研究について述べる.
そして第6章にて,第2章・第3章で紹介した交通流理論ならびにゲーム理論を用いた研究につ いて述べる.まずマルチエージェントシミュレーションを用いた車線変更解析モデルの説明を行い,
この車線変更という行為にゲーム理論の考え方を導入し,車線変更モデルに基づくシミュレーショ ン結果を示し,車線変更の背景に潜在する数理ジレンマ構造についての解析を行ない,最後第7章 にて本論の総括を述べる.