6.石 組溝 および暗渠位置復原工事
原位置復原 の意義
この復原工事 の対象 とな った飛鳥寺南方遺跡 の石組溝 およ び石組 暗渠 は遺存状況がよ く、飛鳥 の石造構造物構築手法や水利施設 の歴史 を 知 る上 で重要 な遺構 であ った。 しか し、下水道計画 の遂行上、立坑 の位置の変 更 が困難 であ ったため、関係機関 と協議の結果、石組溝および暗渠の石材をいっ
たん解体 して保管 し、工事 の完了後、原位置 に復原 す る方針が とられた。
一般 に土木建設工事 の対象地 が遺跡 と重 な り、土木工事 を優先す る場合 の遺 跡 の取 り扱 い として は、発掘調査 を実施 して記録 を とった うえで遺跡 を除去 し て しま う記録保存が大勢 を占め る。 まれに、遺構 が移築 に耐 え る石造等 の もの で、かつ諸条件が整 った場合 に、記録を十分 にとった うえ遺構 をいったん解体・
保存 し、別 の場所 に復原 して展示 に供 す る移築復原が実施 され ることがあ る。
佐賀県 の久保泉丸 山古墳 や京都市 の旧伏見城 の石垣 などがその実例 であ る。
今回の飛鳥寺南方遺跡 の場合、重要な遺跡であるとともに石造の構造物であっ たため、移築復原す る案 も検討 されたが、 あえて復原後遺構 をおゝたたび地 中 に 埋 め戻 す原位置復原 とい う方法 を採用 した。 それ は、以下の理由による。まず、
た とえ展示 な ど現在 の機能 に対応 し得 ない場合 で も、遺構 を原位置 に戻す とい うことが遺構 の保存方法 の一つの選択肢 であ ると考 えたためである。第二 に、
石組溝 および暗渠 はその前後 に連続す る遺構 の一部であ り、 とくに石組溝 は現 在で も地下水 の流路 とな って溝内の遺物、 と くに木質遺物 の保存 に寄与 してい
る可能性があるためであ る。
記録作成 (1993年 3月
)
一般 に石造構造物 の原位置復原 を実施 す るにあた っ て は、 その絶対位置を正確 に記録す るとともに、 隣接す る石 の接合状況 な ど復 原 のために必要 な情報 を確保 してお く必要 がある。 そのため、解体前 に以下 の 手順 で記録作成 を行 った。1)石
組溝 および暗渠 の正確 な平面図および立面図の作成。2)石
材一つ一つ に水性 ペ ンキで番号 を書 き込 み、平面図および立面図 に もそ の番号 を記入 して対照で きるよ うにす る。―‑10‑一
3)隣
接す る石 の接合状況 を示すため接合部 に墨打 ちを行 う。4)以
上 の作業 が終 わ った遺構細部 を詳細 に写真撮影す る。解体・ 保管 (1993年 3月〜1995年 2月
)
上記 の記録作成 が終了 した部分か ら 解体 を行 った。石組暗渠 の下部 の一部 な ど解体前 に記録作成 がで きなか った箇 所 につ いて は、適宜、追加 の記録作成 を行 った。解体 は上部 か ら順 に手作業で 慎重 に行 ったが、石材 の大半 が花 南岩 であ リー部 に風化が激 しく取 り上 げ不能 の もの もあ った。解体 した石材 は水洗 いで上 を落 と した後、 ビニール シー トを かぶせて保管 した。復原工事 (1995年 2〜 3月
)
復原 は解体前 に作成 した実測図・ 写真 に もとづ き実施 した。 なお、風化 のため取 り上 げ られなか った石 の欠損部分 には、 で き るだ け同程度 の大 きさの石 を補 った。補充 した石 には墨で1995と 西暦年号 を記 入 し、本来 の石 と区別 で きるよ うに した。工事 の手順 は以下 の とお りであ る。1)立
坑工事終了後、遺構面 の標高付近 までマサ上で埋 め戻 し・ 締 め固めを行 い、復原工事 の地盤 を造成。2)石
組溝 の側石 と石組暗渠 の側石・ 底石 につ いて は、1.5〜2m前
後 に1個の間隔で基準石 を設定 し、実測図の平面座標 および標高値 に もとづ いて正確 に 位置 を復原 し据 え付 けた。基準石 は、大型 あ るいは形状 に特徴 があるな ど正確
に位置を決定 しやす い ものを選んだ。なお、石の据え付 けにあたっては、 クラッ シャー ラン
(C40)を
底部 に充填 した。3)基
準石 の間 に入 る石 を実測図 と写真 に基づ いて据 え付 けた。 その際、解体 前 に打 った墨 によ り接合部 を解体前 の状況 にで きるだ け近 づ けるとともに、底 部 や 目地 はC40で充填 した。4)石
組暗渠 の蓋石部分 につ いて は、暗渠 内をマサ土 で充填 し、 その上 に位置 を復原 し据 え付 けた。5)石
組水路 は伏流水 の流路 とな っている可能性 があるため、水路 の底面・ 側 石 の背面 には、C40にベ ン トナイ トを混合 して不透水層 を築成。 また、側石 の目地 は、 ベ ン トナイ トとマサ土 を混合 した日地 を入 れた。
6)遺
構復原完了後、 マサ土 で遺構全体 を埋 め戻 した。‑11‑