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ドイツ新債権法における仕事の瑕疵に関する請負人 の責任

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(1)

ドイツ新債権法における仕事の瑕疵に関する請負人 の責任

その他のタイトル Die Haftung des Unternehmers wegen mangelhafter Werkleistung im neuen BGB

著者 今西 康人

雑誌名 關西大學法學論集

巻 52

号 4‑5

ページ 1093‑1122

発行年 2003‑03‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/00023511

(2)

ドイツ新債権法における仕事の瑕疵に関する請負人の責任

ドイツ新債権法における仕事の瑕疵に関する請負人の責任

二旧法における請負人の責任

三新法における請負人の責任

わが国では︑特定物売買における売主の瑕疵担保責任の法律効果として法文上︑直接には追完請求権が買主に認め

られていない︒そのため︑具体的妥当性を図る意図から解釈論レベルにおいて追完請求権を肯定しようとする諸見解

が存在する︒これと関連し︑又は比較対照して取上げられるのが請負人の担保責任である︵民六三四︶︒仕事の目的

物に瑕疵がある場合︑注文者は︑請負人に対して担保責任の法律効果として修補を内容とした追完請求権を有する︒

修補に代わる損害賠償請求権も認められる︵民六三四

I I )

︒これら効果は︑従来からこの責任が売主のそれと異なり

西

(1

0

(3)

旧法における請負人の責任

第五二巻四・五号

( 1 )  

不完全履行の特則たる性質をも有することに基づくと理解されてきた︒

(1

0

ともあれ一定の仕事の完成を目的とした事務処理契約と財産権の一回的給付を目的とした物品等供給契約との差異

こそあれ︑同じ有償契約の瑕疵に関する担保責任でありながら︑その法律効果の妥当性から見れば︑請負人の担保責

( 2 )  

任に関する諸規定の方が優ると理解されてきた︒

0

0

一年︶までのドイツ法もこれと類似する状況であった︒追完

請求権につき明文規定のない特定物売買における売主の担保責任では買主にこれを認めず︑他方︑請負人の担保責任

( 3 )  

では注文者にこれを認めていた︒しかし︑二

0

0

二年一月﹁ドイツ債権法現代化法﹂によって改正されたドイツ民法

( 4 )  

典の新債権編は︑買主にも追完請求権を認めた︒

では︑この改正は担保責任モデルを単に旧法からの請負契約型の規定内容に一元化しただけなのか︑それとも請負

契約におけるこの責任も何らかの実質的な変更を加えられ︑単一の新しいモデルが形成されたのか︒本稿では︑

B G

( 5 )  

B

の請負契約に関する新規定に焦点を当てて︑この問題を検討し︑日本法への示唆を考えてみたい︒

性質と瑕疵概念旧法では請負人は︑瑕疵のない仕事を完成させる義務を負担した︒ここでいう瑕疵の定義は︑

売買における物の瑕疵と同一であった︵旧

4591・II)

︒すなわち︑仕事が﹁保証された性質﹂を有しない場合︑又

は﹁欠点﹂︵仕事の価値を消滅又は減少させる欠点︑又は通常の使用若しくは契約によって予定された使用に対する

適性を消滅又は減少させる欠点︶を有する場合︑請負人はこの義務に違反し︑義務不履行︵債務不履行︶責任を負担 ところで︑ドイツに目を向けるなら︑

(4)

2

注文者の権利

した︵旧

633

l

)

︒換言すると︑仕事が右性状︵保証された性質︑通常の使用若しくは契約によって予定された使用

に対する適性等︶を備えていない場合︑注文者は︑瑕疵の除去請求として無償の修補請求権を有した︒︵旧

633

I I  

S . 

( 6 )  

1 S.  

2 , 4   7 6

a ) ︒

1の場合︑注文者は︑仕事完成義務の完全な履行を求めるべく︑修補請求権を有した︒ただ︑

瑕疵の具体的な除去方法︵修補︑やり直し︶

( 7 )  

定することができると解されていた︒ の決定につき明文の規定はなかった︒判例によれば︑請負人がこれを決

ところで︑注文者は︑瑕疵の除去請求権を有するだけではない︒まず︑瑕疵の除去は︑注文者が相当の期間を指定 してこれを請求する︒その期間経過後は︑換言すると︑この期間内に適時に瑕疵が除去されないときには︑①注文 者は︑瑕疵の除去を拒絶し︑契約の解除又は減額を請求することができた︵旧

634

S .  1

S . 

3 )

︒これは瑕疵に関す

( 8 )  

る請負人の帰責事由を要件としない無過失責任であった︒また︑解除及び報酬減額の権利については︑売買のそれと

( 9 )  

同様︑形成権構成でなく請求権構成が採られていた︒他方︑このような場合︑②注文者は︑解除又は減額を請求せ ず︑瑕疵を自ら除去し︑要した費用の償還請求をすることを選択することもできた︵旧

6 3 3 I I I

)

注文者が相当期間を定めて瑕疵除去請求をしたにもかかわらず︑請負人がその帰責事由に基づき瑕疵の除去を遅滞し たことが要件となる︒また︑請負人は︑注文者の瑕疵除去請求につき例外として拒絶権を有した︒すなわち︑③瑕 疵の除去につき過分な費用を要するときは︑請負人は︑除去を拒絶できた︵旧

633

I I   s .  

3 )

︒この場合︑注文者は︑直

ちに解除又は報酬減額︑損害賠償を請求するほかなかった︒さらに︑④注文者に直ちに解除等の請求が認められる 場合として︑瑕疵の除去が不能な場合︑請負人が除去を不当に拒絶する場合及び注文者の特別な利益により解除若し

(1

0

(5)

3消滅時効 第五二巻四・五号

一般消滅時効規定に服し︑三

0

年が時効期間と

(1

0

( 1 0 )  

くは減額の請求権を行使することが正当である場合︑以上三つが認められていた︵旧

6 3 4 1 1 )

︒但し︑⑤瑕疵による

仕事の価値又は適性の減少が重大でないときは︑注文者は解除をすることができず︑減額だけを請求できた︵旧

6 3 4

三︶︒最後に︑⑥仕事の瑕疵が請負人の帰責事由に基づくときは︑注文者は︑解除又は減額に代えて不履行に基づく

( 1 1 )  

損害賠償を請求することができた︵旧

6 3 5 )

︒これは︑解除又は報酬減額と異なり請負人の過失責任である︒なお︑

ここでの損害の中にいわゆる瑕疵結果損害が含まれるか否かが積極的契約侵害︵旧

2 4 2 ・ 2 7 6 )

との競合の有無及び

消滅時効の適用条文︵旧一九五条が定める30年か旧六三八条が定める短期時効期間か︶をめぐって判例・学説上争わ

( 1 2 )  

られていた︵旧

6 3 8

I s .  

1)︒但し︑不動産の作業については一年に︑土地のエ作物については五年が時効期間となる

︵ 旧

638

I s .  

1)︒請負人が瑕疵を知りながら告げなかったときには︑

( 1 3 )  

なる︵旧

6381

s .  

1)

製作物供給契約

り︑仕事の瑕疵については請負契約の規定を適用すると定めていた︵旧

6 5 1 )

︒製作物供給契約の性質につきその請

負的要素を一律に重視する立場である︒ただ︑学説は代替物と不代替物を区別し︑前者については売買の要素が強い

( 1 4 )  

ので︑売買の規定︵例えば旧四八

0

条の瑕疵なき物の給付請求権︶を適用すべきであるとした︒ 関法

注文者の

2

で挙げた諸権利につき︑仕事の引取り時を起算点として︑六ヶ月の短期消滅時効が定め

条文上は︑代替物又は不代替物を区別せず︑請負人が自ら材料を調達して仕事を制作する限

(6)

物及び権利の瑕疵

請負人は︑注文者に対して物の瑕疵及び権利の瑕疵のない仕事を完成し取得させる義務を負う

( 6 3 3 1 )

いての﹁物の瑕疵﹂の意義は︑製造者︑売主等による物の特定の性質に関する公の表示と関連づけられた﹁物の瑕

疵﹂類型を除けば︑売買における﹁物の瑕疵﹂の意義

( 4 3 4

I s .  

1 ‑ 2 )

とほぼ同一である

( 6 3 3

I I  

s .  

1 ,

s .     2 )

︒瑕疵の意

( 1 5 )  

義はともかく︑売買及び請負において単一の瑕疵概念が妥当する点は︑旧法から変更されていない︒すなわち︑主観

的瑕疵を基本として︑三段階に類型化し︑まず①仕事が合意した性状を有しないこと

き合意がないときには︑仕事が契約において前提とした使用に適しないこと

( 6 3 3  

I I   S.

 1)︑R性状につ

定の使用を前提としなかったときは︑仕事が通常の使用に適し︑かつ︑同種の仕事において普通とされ︑注文者がそ

( 6 3 3  

I I   S.

  2 

Nr .2 )

を以って仕事に関する物の瑕疵を定める︒①主

観的瑕疵︑②主観的・客観的瑕疵︑③例外としての客観的瑕疵という順に段階的な基準が設けられたが︑瑕疵の意義

( 1 6 )

1 7

)  

自体が大きく変更されたわけではない︒この点は売買と異なる︒なお︑①から③を通じキーワードとなる性状につい

( 1 8 )  

ては特に定義されてはいない︒

他方︑仕事に関する﹁権利の瑕疵﹂はそもそも旧法では存在しなかった︒ただ︑その内容は売買における﹁権利の

瑕疵﹂を定める第四三五条第一文と対応し︑かつ︑旧法第四三四条と類似する︒第三者が仕事に関し注文者に対し正

当に権利を行使することができるとき︑又は第三者が仕事に関し契約において注文者により引受けられていない権利 の仕事の種類から期待できる性状を有しないこと

新法における請負人の責任

(1

0

( 6 3 3  

I I   S . 

Nr . 

1)︑③契約において

(7)

(2)  (1) 

旧法と異なり︑以下のような特色を有する︒

2

仕事に瑕疵がある場合における注文者の権利

第五二巻四・五号

を行使することができるとき︑仕事に関し﹁権利の瑕疵﹂がある

( 6 3 3 I I I )

(1

0

なお︑条文体裁は︑﹁物の瑕疵﹂及び﹁権利の瑕疵﹂いずれの定義においても︑瑕疵が存在しない具体例の形を

取っている。この点は、売買と同様である(63311•

434 I・435)

︒瑕疵の存在につき注文者が証明責任を負担す

( 1 9 )

る ︒

 

追完請求権︑解除権︑報酬減額権︑損害賠償請求権及び瑕疵除去権がそれぞれ一定の要件の下で認められる点は︑

旧法と同じである︒加えて給付に代わる損害賠償請求権に代えて︑無駄になった費用出費につき費用の損害賠償請求

権が明文で認められた(634

④•

2 8 4 )

︒ただ︑注文者の権利に関する体系的位置づけ及びこれら諸権利の行使要件は

諸権利の体系的意義と性質

である︒他方︑解除権︑損害賠償請求権及び費用賠償請求権は︑債権総論における給付障碍における債務者の義務違

反を要件とする債権者の権利である︒瑕疵ある給付は︑債権総論における給付障碍の要件としての義務違反の一類型

にすぎず︑仕事の瑕疵に関する請負人の責任は︑債務不履行責任の特殊例にすぎない︒なお︑追完請求権は旧法同様︑

( 2 0 )  

本来の給付請求権の変形である︒解除権及び報酬減額権は︑いずれも形成権である︒形成権は︑特に債権総論のそれ

( 2 1 )  

と同一概念

(R

k t r i t t )

追完法の選択権者 一方で︑これら諸権利のうち瑕疵除去権及び報酬減額権は︑請負契約特有のもの

追完請求権については追完法︵新たな仕事としてのやり直し又は修補︶の決定権が請負人

にあることが明文化された

( 6 3 5 1 )

︒追完法の決定権が売買と異なり債務者たる請負人に付与されたのは︑物の単な

(8)

(3) 

る供給ではなく製造が委託される以上︑どのようにして瑕疵なき状態を実現するかの判断を請負人自身に委ねるべき

( 2 2 )  

こと︑さらにどのような追完法が適正であるかに関する専門知識は請負人が有することがその理由である︒

請負人の追完拒絶権一方で債権総論が定める二七五条二項及び三項に基づく債務者の給付拒絶権が︑他方で︑

追完につき過分な費用を要する場合における請負契約固有の特殊な給付︵追完︶拒絶権が認められた

( 6 3 5 i l l )

︒後者

の拒絶権が旧法︵旧

633

I I  

s .  

3 )

でも認められていた点は既述した︒不経済な代物︵追完︶給付は回避しなければな

 

( 2 3 )  

らないという基本的考えは︑旧法時代から承継された一一五一条︵期間の指定なき金銭賠償︶にも現れている︒もとも と討議草案段階では︑後者の追完拒絶権の成立要件につき﹁過分な費用を以てのみ追完が可能﹂であるだけことが定 められ︑かつ︑この過分性に関する三つ掛酌事情として売買の四三九条三項二文に相当する詳細規定が設けられてい

( 2 4 )  

た︵討議草案

6 3 4 I I T

s .  

2 )

︒しかし︑討議草案には給付の不能に着目した前者の給付拒絶権につき明文規定がなかった︒

政府草案において前者の給付拒絶権が明文化されたのは︑後者の追完拒絶権の要件に関する旧法時代からの判例によ る拡大解釈が大きく影響している︒判例は︑瑕疵の除去が請負人に対し信義則上期待し得ないときにも﹁過分性﹂を

( 2 5 ) ( 2 6 )  

認めていた︒費用の過分性を要件とする旧二五一条二項においても過分性は期待不可能性の意味に解釈されていた︒

したがって︑追完の﹁可能性・不能性﹂のみならず﹁期待可能性﹂に着目する旧法以来の後者・拒絶権の成立要件は︑

その内容上債務者の給付拒絶権を定める新法二七五条︱一項及び三項と一致する︒以上が前者の拒絶権が明文化された

理由であると思われる︒

なお︑前者及び後者の給付︵追完︶拒絶権を定める点は︑条文の文言も含め︑売買とほぼ同一である︒これは︑物 の瑕疵に関する責任を売買及び請負いずれにおいてもできるだけ同一内容で債務不履行責任に一元化しようという考

(1

0

(9)

第五二巻四・五号

解除権及び報酬減額権の行使要件

(

10

0)

 

この二つの権利は︑原則として旧法同様︑請負人が注文者により設けた追

完のための相当期間内に追完しなかったときに初めて︑いずれかを選択して行使することができる

( 6 3 4

N r .  

3・323 

I)

︒軽微な瑕疵の場合︑報酬減額権のみが許される

( 6

N r .

3・323VS. 

2 )

︒この原則に対し︑以下に述べる五つの

( 2 7 )  

場合には︑例外として追完期間の定めを要しない︒換言すると︑注文者は直ちにいずれかの権利を行使することがで

( 6 3 4

N r .  

3・323Il・326V・636)

︒これは売買とほぼ同一である

( 4 3 7

N r .  

2・323  Il・326V・440)

①請負人が給付︵追完︶することを断固としてかつ終局的に拒絶するとき

( 3 2 3 I I

N r .  

l)︑請負人が契約において定

められた期日又は期間内に給付︵仕事を取得させること︶せず︑かつ︑注文者がその契約において給付が適時にされ

なければ給付利益が存続しないとしていたとき

( 3 2 3 I I

N r .  

2 )

︑又は当事者双方の利益を衡量して特別な事情から即

時の解除が正当とされるとき

( 3 2 3 I l

N r .  

3 )

︑②追完が主観的又は客観的に不能であるため︑注文者が追完請求権を

行使することができず︑請負人が給付︵追完︶を要しない場合

( 6 3 4

N r .  

3・326V)

︑③請負人が六三五条三項により

追完を拒絶するとき

( 6 3 6

前段︶④追完が達成されなかったとき

( 6 3 6

中段︶︑⑤追完が注文者に期待することがで

これらと旧法との関係は以下のとおりである︒②︑③及び⑤は︑旧法六三四条二項にいう﹁瑕疵の除去が不能であ

るとき﹂︑﹁請負人が除去を拒絶するとき﹂及び﹁注文者の特別な利益により解除若しくは減額の請求権を直ちに行使

( 2 8 )  

することが正当であるとき﹂にそれぞれ対応する︒

次に︑①

( 3 2 3 I I  

N r .  

1 , 

N r .  

2 )  

きないとき

( 6 3 6

9 9  

関法

と②から⑤までとの関係は︑以下のように整理できる︒①のうち︑﹁請負人が給付

(10)

︵追完︶することを断固としてかつ終局的に拒絶するとき

( 3 2 3 ] 1

N r .  

1)﹂と③とは請負人による追完拒絶の点で共通

するが︑拒絶の理由が異なる︒後者︵③の場合︶は六三五条三項にいう追完費用の過分性の要件が充足される事実を

理由とするのに対し︑前者

( 3 2 3 I l

N r .  

1)

( 2 9 )  

完を拒絶する場合を包含する︒①のうち︑﹁請負人が契約において定められた期日又は期間内に給付︵仕事を取得さ

せること︶せず︑かつ︑注文者がその契約において給付が適時にされなければ給付利益が存続しないとしていたとき

( 3 2 3 I I  

N r

2

.  

)

﹂とは仕事の完成と引取りがいわゆる定期行為となる場合を指すのに対し︑④では契約締結時に適時の

( 3 0 )  

履行を特約する定期行為でなくても︑期待不可能性を理由に直ちに解除することができるのである︒①の最後の﹁当

事者双方の利益を衡量して特別な事情から即時の解除が正当とされるとき

( 3 2 3 1 1

N r .  

3 )

﹂と⑤は重なり得る︒前者

のような場合︑追完は通常︑期待不可能だからである︒ただ︑後者すなわち⑤は前者と異なり︑契約の実現に対する

請負人の利益をもはや考慮せず︑単に注文者の利益のみに着眼して期待不可能性を考慮するのである︒両当事者でな

く注文者の利害のみを基準に広く追完の期待不可能性を捉える⑤の存在意義を重視するなら︑債権総論の規定である

( 3 1 )  

前者は請負では機能しないと考えられる︒

最後に︑直ちに解除権又は報酬減額権を行使できる新たなケースとなった④に触れておく︒追完の不達成という概

念自体は旧法でなく︑旧普通取引約款規制法︱一条一

0

bに存在した︒判例によると︑それは非常に広義の概念で

あり︑客観的又は主観的追完不能︑不十分な追完︑追完の不当拒絶︑追完の著しい遅延︑誤った追完の実施のみなら

( 3 2 )  

ず︑追完の期待不可能性を含んでいた︒これらのうち幾つかは既述したように独立して明文化されたため︑新法の概

念は従前のそれに比しはるかに狭義のものである︒それは︑具体的には追完の実施が効を奏しない場合を指す︒この

(

10

1)

 

(11)

第一に︑仕事の瑕疵による給付の遅滞に基づく損害賠償請求権について︒瑕疵ある建築物の引渡しのために注文者

がこの建物を利用した開業が遅れ︑営業逸失利益が生じた場合がその例である︒旧法ではこれを請求するためには︑

遅滞に基づく損害賠償に関する旧法二八六条一項の要件すなわち請負人が遅滞に陥っていること

の事前の催告︶を充足しなければならなかった︒しかし︑新法では瑕疵ある仕事を行ったこと自体が既に義務違反を

意味するので︑請負人の帰責事由に基づく瑕疵である限り︑六一二四条四号・ニ八

0

条一項に基づき損害賠償が認めら

( 3 4 )  

の適用はない︒但し︑瑕疵ある給付に基づれ︑旧法二八六条一項に相当する二八

0

条二項・ニ八六条︵債務者遅滞︶

く遅延損害ではなく︑追完の遅滞に基づく遅延損害については︑これらの規定が適用される︒例えば︑追完請求の実

( 3 5 )  

現のために︑法的手続を弁護士に委託した場合における報酬相当額がそうである︒

第二に︑仕事の瑕疵に基づく損害賠償請求権について︒瑕疵損害及び瑕疵結果損害いずれも同一規定

( 6 3 4

N r .  

3 )  

に基づき賠償の対象となる︒損害が瑕疵のある仕事の結果であろうが請負人の他の義務違反の結果であろうが︑無関 の態様は︑以下のとおりである︒ 点︑売買と異なるのは︑追完の試みが既に二回にわたり失敗に終った場合︑追完の不達成に関するみなし規定

( 4 4 0

s .  

2 )

が存在しないことである︒したがって︑注文者がどの程度切迫して瑕疵のない仕事の給付を必要とするのか︑

また今後も適正な追完が行われないとの推論が成り立ち得るのは実施済み追完の失敗が何回にわたったときなのか︑

( 3 3 )  

を掛酌して個別具体的に考えざるを得ない︒

損害賠償請求権の意義と態様

務不履行︶において債務者の帰責事由を要件として発生する法律効果となった

( 6 3 4

N r .  

4・280 

I

)

︒損害賠償請求権

第五二巻四・五号

旧法と異なり︑請負契約固有の請求権としての側面は払拭され︑給付障碍︵債

(

10

二 ︶

(12)

害を賠償請求するか

係である︒ただ︑新法もこの二つの損害の態様を区別する点は旧法と同様である︒瑕疵結果損害の根拠は六三四条四

号・ニ八

0

条一項であるのに対し︑瑕疵損害は二八

0

条一二項の適用を受けるため︵履行に対する債権者側からの拒絶

( 3 6 )  

を前提とするいわゆる﹁給付に代わる損害賠償﹂︶二八一条に従う︒給付に代わる損害賠償は︑旧法︵旧

6 3 5 )

不履行に基づく損害賠償に対応する︒以下︑いわゆる大きな損害賠償と小さな損害賠償とに関連づけて︑給付に代わ

給付に変わる損害賠償は︑仕事を契約に適合して完成させる可能性を請負人から奪う︒その限りで︑その法律効果

は解除と同一である︒そのため︑両者の成立要件は類似するのである︒すなわち︑追完のための相当期間の徒過が共

通要件である

( 2 8 1 l

・ 3 2 3

 l )

︒ただ︑この点は旧法も同じであった︵旧

6 3 4 l・635)

︒期間の指定が不要となる例

外ケースについても︑新法では解除と類似する

( 6 3 6 ・ 2 8 1

I l ,  

636・323 

J I  

N r .  

1•

N r .  

3 )

︒ところで︑旧法では解除に

代えた損害賠償請求のみが要件であったため︵旧

6 3 5 )

︑注文者は︑仕事を返還し契約全部の不履行により生ずる損

︵大きな損害賠償︶︑瑕疵のある仕事を保持し仕事又は仕事の適性の縮減結果として生ずる損害

を賠償請求するか︵小さな損害賠償︶を選択することができた︒しかし︑新法では︑このような区別は維持されなが

らも

( 2 8 1

S . 

2 ,  

S.  

u .   V )

︑大きな損害賠償を請求することができる場合が限定された︒すなわち︑義務違反つまり

仕事の瑕疵が重大であるときに限り︑大きな損害賠償︵新法は﹁全部の給付に代わる損害賠償﹂と呼称︶が認められ

( 2 8 0 I I I ・ 2 8 1  

IS . 

3 )

︑その代わり請負人は︑解除の場合と同様仕事の返還を請求できる

( 2 8 1

V ,  

3 4 6 ‑ 3 4 8 )

︒この点は

( 3 7 )  

解除の要件と同一である

( 3 2 3

VS . 

2 )

第三に︑無駄になった費用の損害賠償請求権について︒二八一条の要件が充足される︑つまり給付に代わる損害賠 る損害賠償につきもう少し詳論する︒

(

10

三 ︶

(13)

第五二巻四・五号

費用︵例えば契約費用︶

(

10

四 ︶

償を請求し得る場合︑注文者はこれに代えて︑自ら契約に適合した仕事の給付を受けることを信じて出費した正当な

の賠償を請求できる︒契約費用の賠償請求は︑旧法でも売買・請負共通に認められていた

︵ 旧

634N・467)

︒但し︑新法ではこの請求は﹁給付に代わる損害賠償﹂に代えてのみ請求できるにすぎない

( 3 8 )  

第四に︑原始的に追完不能な瑕疵における損害賠償請求権について︒瑕疵のない仕事の完成が不能であることが締

約時に確定し︑又は請負人が二七五条二項若しくは三項により給付を拒絶できる場合︑注文者は︑給付に代わる損害

( 3 9 )  

賠償又は無駄になった費用の損害賠償を請求することができる

( 6 3 4 N r

.   4・311a・281・284)

旧法では請負人が瑕疵の除去につき遅滞にあることが要件であったのに対し︵旧

6 3 3

( 4 0 )  

三︶︑新法ではこの要件を不要とし︑解除及び報酬減額の権利行使と同一の要件に服するものとした︒すなわち︑第 注文者の瑕疵除去権

一に︑注文者が相当期間を定めた追完請求をした場合において︑請負人が六三五条に定める事由︵当該追完の費用の

過分性︑二七五条二項又は三項の定める要件事由︶が存在しないにもかかわらず追完を拒絶するとき︑追完期間経過

後︑注文者は瑕疵除去権を行使できる

( 6 3 7 1 )

︒第二に︑注文者が一二二三条二項に基づき︑又は追完が達成されず︑

若しくは追完が注文者に期待できず︑期間の定めを要しない場合には︑直ちに注文者は瑕疵除去権を行使できる

( 6 3 7 1 1

)

︒したがって︑期間の定めの要否にかかわらず︑注文者は︑解除又は報酬減額と自らの瑕疵除去とを選択す

ることができるようになった︒さらに︑旧法下で判例・学説上認められていた瑕疵の除去に関する注文者の費用前払

( 4 1 )  

い請求権が明文で認められるに至った

( 6 3 7

I I I )

( 2

8 4

 

(14)

九七

10

( 6 3 4 a  

N r

.   1)︒後者は前述のように一般消滅 aを設ける形への変更があった︒そのため︑六三四の

条という条文が挿入された︒特別規定を設けたことの意義は︑

新しい一般消滅時効規定の特則となる消滅時効期間

( 6 3 4

a I 

N r .  

1,

N r  

.  

2

の二年又は五年︶及び時効起算点

( 6 3 4

I I  

a

の二点に関係する︒請負でも︑六三四の

a

条一項一号︵動産︶・ニ号︵土地工作物︶を除く仕事

( 6 3 4 a

N r

.   3)すなわち物以外に関する請負給付については︑期間及び起算点につき一般消滅時効規定が適用される

( 4 3 )   ( 6 3 4 a  

N r

.  

3 ,   6 3 4  

I I ,  

1 9 5 ,   199 

I

)︒しかし︑同条一項の一号及び︱一号にいう仕事については本条が特則となる︒

まず︑時効期間について︒新消滅時効規定では︑通常の消滅時効期間は三年である

仕事ではある程度長い期間の経過後には初めて瑕疵が発見されるのが通常である点に配慮したからである︒この点は︑

︵ 旧

638

l

)︒ただ︑土地工作物に関係する限り︑これを計画する仕事︵給付︶及び監督する仕事

についての瑕疵も五年の時効期間に服する︒旧法下では︑設計の立案にしろ︑建築士による設計監理にしろ︑判例は 計画給付又は監督給付が土地工作物において具体化する場合と土地自体において具体化する場合とに分類し︑前者に

( 4 4 )  

ついてのみ五年の期間を適用し︑後者については﹁不動産の作業﹂とみなし一年の期間を適用した︒しかし︑新法は︑

﹁物の製作︑整備若しくは変更の仕事︑さらにこれを計画し︑若しくは監督する仕事﹂と﹁それ以外の仕事﹂に分類

し︑前者につき仕事の引取りを起算点にして二年の時効期間を定める

期間を単一化し期間の選択に関する法的混乱を防止すべく︑

一律五年とした︒土地工作物以外の物の仕事について︑

旧法と同様である 物では仕事の引取りを起算点にして五年の時効期間を定める

( 1 9 5 )  

のに対し︑土地の工作

立法過程では売買同様︑ 3

( 4 2 )  

一般消滅時効規定に服するだけの当初の案から︑旧法同様請負に関する規定中に特別規定

( 6 3 4 a  

N r

.  

2

)

︒三年より長期とされたのは︑この種の

(15)

第五二巻四・五号

時効規定の適用に服する︒旧法では前者は六ヶ月の期間に服した

間があまりに短期であることがしばしば判例上問題となり︑それがために瑕疵結果損害につき三

0

年の時効期間の適

( 4 5 )  

用を受けるべく積極的契約侵害構成が登場したことを考慮したものである︒物の製作等の仕事に関する計画給付及び

監督給付もこれに包含された点は︑土地の工作物と同様の理由からである︒

次に︑時効の起算点について︒土地の工作物等

( 6 3 4

I  a

N r .  

2 )

及び土地工作物以外の物の製作等の

( 6 3 4

a I 

N r .  

1) 

はいずれも引取り時が時効の起算点となる

( 6 3 4 a

I I

)︒起算点に関する一般規定

( 1 9 9

I )

と異なり︑請求権の成立等

に関する権利者の認識又は認識可能性︵権利者の主観的事情︶を掛酌せず︑客観的に固定した時点を起算点としたの

は︑この種の仕事を目的とする請負取引を安定化させるためである︒また︑この種の仕事は有体物の請負であるので︑

( 4 6 )  

引取り時より瑕疵を発見し得ることが可能であり︑かつ︑注文者にそれを期待しうるからである︒

製作物供給契約

新法は︑いわゆる製作物供給契約に関する適用法規︵物の瑕疵に関して売買又は請負のいずれの規定を適用する

か︶を明確化し︑この種の契約が売買契約か請負契約かの区別を明確化かつ単純化した︒同時に︑消費者動産売買指

令に従い一定の国内法化措置を講ずることが目的とされた︒条文を一見すると︑この種の契約に関する主たる適用法

規が旧法の請負規定から新法の売買規定に変更された自体が大きな変更のように思われる︒しかし︑新法の意図した

上記二つの目的を考慮し︑かつ︑瑕疵に関する売主及び請負人の各責任が債権者側の瑕疵除去権︑危険移転時期等を

除けば債務不履行責任に一元化したため︑その規定内容が平準化したことに留意し︑実質的な改正点を考える必要が

︵ 旧

638

IS . 

1)︒二年に伸長されたのは︑旧法の期

(

10

六 ︶

(16)

買に関する規定の認めていた︵旧

651

IS . 

1 ,  

S . 

2 )  

まず︑動産の製作又は製造を目的とした契約については︑製作又は製造される動産に関する材料提供者が注文者か

請負人かを問わず︑すべて売買に関する規定が適用される

( 6 5 1

S.

1

 

)

︒旧法が材料提供者が請負人の場合に限り︑売

のと異なる︒材料提供者の点につき新法が唯一着目するのは︑注

文者が提供した材料による瑕疵の場合︑売買の四四二条一項が適用され︑請負人の責任を排除する点である

( 4 7 )  

s .  

2 )

次に︑代替物の製作又は製造と不代替物のそれとの区別は︑新法でも維持された

( 6 5 1

s .  

3 )

︒立法過程では一時こ

( 4 8 )  

の区別を廃止し︑さらに製作物供給契約という範疇自体を否定する案も存在したが︑結局︑それは見送られた︒新法 一方で代替物たる動産の製作又は製造に関する契約︵いわゆる﹁不真正な製作物供給契約﹂︶には売買の規定を 適用する︒他方︑不代替物たる動産の製作又は製造に関する契約︵いわゆる﹁真正な製作物供給契約﹂︶は売買契約 であると共に請負契約の側面も有する一種の混合と評価された︒そのため原則として売買規定を適用法規とする︒だ から︑請負人には瑕疵除去権がない︒しかし︑危険移転時期についてはその基準時に関する四四六条及び四四七条に おける引渡し時を引取り時に代えて︑かつ︑注文者の協力義務︑危険負担︑注文者の解約権及び経費見積もりに関す

る請負諸規定

( 6 4 3 , 6 4 5 ,   6 4 9 , 5   6 0 )

を適用する︒これら規定が想定する状況に関する売買規定が何ら存在しないため︑

( 4 9 )  

その欠鋏を埋める必要があるからである︒なお︑売主︵請負人︶による誤った組立てによって物の瑕疵が生ずる場合

( 5 0 )  

には︑四三四条二項一文に基づき︑売主︵請負人︶が責任を負う︒

最後に︑六五一条が対象としなかった製作等に関する供給契約︑すなわち︑物ではなく無形のものの製作︵無形の

仕事︶等を目的とする契約︑製作された動産が約定に従い建物の構成部分となることを内容とする契約︑動産の引渡

,'~

ま ︑

(

10

七 ︶

( 6

5 1

 

(17)

以上︑紹介した新法の概要を幾つかの視点から簡単に分析・検討して︑結びに代えたい︒

債権法改正委員会最終草案と新法

(

10

八 ︶

しでなく労務給付が主要部分を占める供給契約︵例えば純粋な修補契約︶については︑いずれも請負に関する規定が

( 5 1 )  

既に︑請負契約における仕事の瑕疵に関する請負人の責任については︑既に一九九一年連邦司法省の債権法改定委

( 5 2 )  

員会が出した最終草案︵以下︑改正草案と略称︶において改正提案が行われていた︒改正内容は物又は仕事の瑕疵に

( 5 3 )  

関する売主又は請負人の責任を債務不履行責任ヘ一元化するものであったので︑改正の骨子はこの時期に定まってい

たと言ってよい︒右一元化を徹底すべく売主と請負人の各責任の要件及び効果を同一化する方向性は︑改正草案の段

階で立法化に向けた既定路線であった︒右草案における瑕疵なきものの給付義務︑瑕疵の定義︑責任の成立要件︵義

務違反のみを根拠とする追完請求権・解除・減額とさらに帰責事由を要件として付加する損害賠償請求︑債務不履行

に基づく解除規定の適用又は準用︶︑追完請求権の行使とその他の権利の行使に関する二段階論などは︑売買及び請

負の各条文内容の点でほぼ同一となっていた︒この基本的姿勢は新法でも貫徹されている︒しかし︑内容の点で債権

法改正最終草案と新法を比較するなら︑細部において以下のような差異が見られる︒

①仕事の瑕疵につき︑主観的瑕疵を原則として︑主観的・客観的瑕疵︑さらに客観的瑕疵の順に瑕疵の存否に関す

る基準を並べる点︵草案

633

I I)

は共通であるが︑新法は客観的瑕疵をより詳細に定義する︒﹁同種の仕事において

10

0 

(18)

10

 

普通とされ︑注文者がその仕事の種類から期待できる性状を有する﹂か否かが新たな掛酌事情として付加されている

( 6 3 3 I l  

S . 2•  

N r .  

2 )

︒②瑕疵がある場合における諸権利につきこれを列挙する規定

( 6

は︶が一ヶ条設けられ︑その規

定中に解除及び損害賠償に関する根拠条文として債務不履行責任の諸規定を挙げることによって債務不履行責任への

一元化が明示されている︒③改正草案は瑕疵に基づく注文者の諸権利の消滅時効につき特別規定を設けず︑詳細な一

( 5 4 )  

般消滅時効規定︵草案

1 9 5 :

1時効期間は原則三年︑土地のエ作物は五年︶に服するとした︒新法は特別規定

( 6 3 4 a )

を設け︑﹁物の製作︑整備若しくは変更の仕事又はこれを計画し︑若しくは監督する仕事﹂につき2

及びこれを計画し︑若しくは監督する仕事﹂につき5年を定め︑それ以外の仕事に限り一般消滅時効規定

( 1 9 5

:

効期間は三年︶を適用する︒④請負人の追完拒絶権につき︑改正草案は債権総論が定める債務者の給付拒絶権も当然

( 5 5 )  

認められる立場からこの点を明示しなかった︵草案

6 3 5 i l l )

給付拒絶権

( 2 7 5 I l

・ i l l )

を明示し︑追完拒絶事由を網羅した

( 6 3 5 i l l )

︒⑤改正草案が解除︑報酬減額及び損害賠償

につき各一条ずつ規定︵草案

6 3 7 , 6 3 8 , 3   6 9 )

を設けたのに対し︑新法は②で指摘した立場から︑債務不履行責任の

一般的効果でない請負特有の効果である報酬減額についてのみ規定

( 6 3 8 )

を設けるにとどめた︒解除及び損害賠償

については︑債務不履行の一般規定が定める要件︵﹁追完のための相当期間の指定﹂と﹁右期間の徒過﹂︶に対する特

則︑すなわち期間の指定が不要な場合︵追完請求せず︑即時に解除及び損害賠償を請求できる場合︶だけを定める

( 6 3 6

)

︒さらに⑥即時に解除及び損害賠償を請求できるケースにつき︐改正草案が債務不履行に関する規定︵草案

3 2 3 1 1 ・ 2 8 3  

I I  

[ 2 8

1 I

I

に相当])が定める場合以外として﹁追完が達成されない﹂場合のみを定めていたのに対し︑新

法は︑債務不履行に関する規定が定める一場合を変更する共に

( 2 8 1 1 1 ・ 3 2 3

I I  

N r .  

1  : 

﹁期間の定め又は催告が効果の

(

10

九 ︶

のに対し︑新法は︑追完費用の過分性と並べて債務者の

(19)

に関する一般売主の責任規定の多くは︑

1で見たように改正草案を単純かつ機械的に立法化したものではない︒周知のように新法のうち物の瑕疵

2

消費者動産売買指令との関係 する旨の明文規定を置いた

第五二巻四・五号

(

0

) 

︵ 追

ないことが明らかであるとき﹂を﹁債務者が給付することを断固としてかつ終局的に拒絶するとき﹂に変更︶︑請負 特有の場合としてさらに﹁請負人が六三五条三項︵追完拒絶権︶により追完を拒絶するとき﹂及び﹁追完が注文者に

期待することができないとき﹂を追加した

( 6 3 6

)

︒即時解除等ができる場合が新たに拡大したというよりも︑これが

( 5 6 )  

できるケースをより明確かつ具体的に条文化し︑整理したと思われる︒これと関連して︑⑦注文者による即時の 完期間の定めを要しない︶瑕疵除去権行使の要件が即時の解除又は代金減額︑損害賠償と同一要件に服する点は両者

( 5 7 )  

共通であるが︑即時に瑕疵除去権を行使し得るケースも⑥と同様に明確化された︒最後に︑⑧製作物供給契約につき

改正草案は規定を設けず︑旧法︵旧

6 5 1 IS. 

2 )

と同一内容のもの︑すなわち代替物の製作につき請負でなく売買の

規定を準用する旨︵草案

6 3 1 l I S . 2 )  

の条項を請負の冒頭条文︵請負人の主たる義務︶に置いた︒不代替物の製作に ついては請負の規定が適用されることを当然の前提とし︑旧法のような請負規定の適用を指示する規定︵旧

6 5 1

I S

・   ( 5 8 )   2 )

を置かなかった︒﹁動産﹂の製作又は製造を殊更取り上げてもいない︒物の瑕疵に関する責任の内容を同一化させ る改正草案の立場では︑売買か請負かいずれの規定を適用するかを定める製作物供給契約の規定が存在意義を失った

( 5 9 )  

と考えたのである︒他方︑新法は︑代替物及び不代替物を問わず﹁動産﹂の製作等供給契約につき売買の規定を適用

除される旨の規定

( 6 5 1 S .   2 )

は改正草案になかったものである︒

( 6 5 1   s .  

1 )

︒同時に注文者が提供した材料が瑕疵の原因である場合に︑請負人の責任が排

一九九九年に出された﹁消費者動産の売買及び消費者のための保証の一定局

10  

(20)

面に関する

E

C指令︵消費者動産売買指令︶﹂の国内法化措置として立法化されたものである︒消費者動産売買に

限って物の瑕疵に関する売主の責任につき国内法化措置を講じるという小さな改正ではなく︑

( 6 0 )  

民法改正を行う大きな改正が行われた︒したがって︑仕事の瑕疵に関する請負人の責任は外見上民法典自体の改正に

消費者動産売買指令の間接的影響 一般売主の責任として

過ぎず︑消費者動産売買指令の国内法化と無関係であると思われるかもしれない︒しかし︑右指令は︑以下に述べる

ように︑指令自体により﹁直接的﹂に︑また物の瑕疵に関する売主及び請負人の責任を基本的に同一内容で債務不履

行責任に一元化する新法の基本的立場を通じ﹁間接的﹂に請負人の責任に影響を与えたと考えられる︒

①消費者動産売買指令の直接的影響4で既述した製作物供給契約において﹁動産﹂の製作等供給契約につき

売買の規定を適用する旨の明文規定を置いた

( 6 5 1 S ・ 1 )

のは︑消費者動産に関する限り︑消費者動産売買指令一条

( 6 1 )  

四項の国内法化措置である︒また︑注文者が提供した材料が瑕疵の原因である場合に︑請負人の責任が排除される旨

の規定

( 6 5 1

s .  

2 )

も︑消費者動産に関する限り︑消費者売買指令一条三項後段がいう契約適合のみなし規定の国内

( 6 2 )  

法化措置である︒したがって︑これらの規定の解釈は消費者動産に関する限り︑ドイツ国内裁判所が行う解釈問題で

( 6 3 )  

E

裁判所の先行判決を要する︒C

以下︑四点を指摘しておく︒第一に︑仕事の瑕疵に関する定義規定

( 6 3 3 I I  

s .  

1,

s .  

 

2 )

は︑三ーで既述したように売買における物の瑕疵に関するそれ

( 4 3 4 l)

に対応する内容となった︒物

の瑕疵の定義は︑国際統一動産売買法をモデルとした改正草案に従うのみならず︑同売買法を参考とした消費者動産

( 6 4 )  

売買指令を一般売買にまで拡大して行われた国内法化措置の産物である︒したがって︑仕事の瑕疵に関する定義規定

につき同指令の間接的影響を指摘しうる︒第二に︑二2③で既述した請負人の追完拒絶権の要件となる拒絶事由

( g 5

(2) 

10

(

 

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