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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

促成栽培イチゴにおける土着天敵ハダニアザミウマ を活用したナミハダニ防除技術の開発

柳田, 裕紹

http://hdl.handle.net/2324/1866344

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)

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氏 名 柳田 裕紹

論 文 名 促成栽培イチゴにおける土着天敵ハダニアザミウマを活用した ナミハダニ防除技術の開発

論文調査委員 主 査 九州大学 准教授 上野高敏 副 査 九州大学 教 授 広渡俊哉 副 査 九州大学 准教授 津田みどり

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

ナミハダニTetranychus urticae Kochは,体長0.45mm内外と微小で増殖力が高く,果樹や野 菜,花き類等の多くの園芸作物を加害し,特にイチゴにおいては近年発生量が増加している重要害 虫の一つである。イチゴの促成栽培では,ハウスの加温開始以降からナミハダニ個体数が指数関数 的増殖を示し,高密度になると株全体が萎縮した状態になり著しい減収をきたす。ナミハダニは苗 に寄生した状態で本圃へ持ち込まれるため,本圃での本虫の被害を抑制するためには,育苗時期の 防除を徹底する必要がある。しかし,生産現場では,薬剤防除を徹底しているにもかかわらず,ナ ミハダニの発生が抑制されない事例が多く認められている。また,生産者の高齢化に伴う作業負担 の増加も問題となっていることから,生産現場からは,新しい防除技術の開発が求められている。

そこで本論文では,福岡県におけるナミハダニの薬剤感受性の動向を把握し,化学的防除法の防 除効果の現状を明らかにした上で,イチゴでの土着天敵を活用した新しい防除技術の有効性を検討 した。

まず,促成栽培イチゴで使用される主要殺ダニ剤に対する雌成虫と卵・孵化幼虫に対する殺虫効 果を検討した結果,ナミハダニ 9 個体群の雌成虫に対して効果的な薬剤は認められず,2007 年の 薬剤検定結果において,雌成虫に対する効果が高かったミルベメクチン水和剤,エマメクチン安息 香酸塩乳剤およびビフェナゼート水和剤の殺虫効果の低下が認められた。この結果は,ナミハダニ の防除効果が低下している事例を反映するものであり,化学的防除に依存した防除体系の限界を示 す結果となった。

ナミハダニの薬剤感受性低下を踏まえ,育苗期の化学的防除法の代替技術として,土着天敵の活 用に着目し,福岡県八女市の現地4圃場にて,インゲントラップに誘引された土着天敵種とイチゴ で認められた土着天敵種を調査し,これらを活用した防除体系の可能性について検証した。その結 果 , 全 て の 圃 場 の イ ン ゲ ン ト ラ ッ プ で 確 認 さ れ た 土 着 天 敵 は ハ ダ ニ ア ザ ミ ウ マ Scolothrips

takahashii Priesnerと数種のカブリダニであった。しかし,全ての圃場において,イチゴで認めら

れた天敵はハダニアザミウマだけで,ハダニ類が高密度時でもカブリダニ類は一部の圃場でしか確 認されなかった。この結果より,イチゴ育苗期ではカブリダニ類よりもハダニアザミウマを主に利 用できる可能性が高いと考えられた。

次に,優占的に発生するハダニアザミウマの防除資材としての特性を評価するために,実験的評 価法に基づき,ナミハダニに対するハダニアザミウマの密度抑制効果を評価した。また,イチゴ栽 培で使用頻度が高い 26 薬剤に対するハダニアザミウマの感受性検定を実施し,本虫を保護利用で きる選択的薬剤の選定を行った。小型ケージを用いたナミハダニに対する密度抑制効果試験では,

チリカブリダニと同様にハダニアザミウマもナミハダニに対する密度抑制効果を有すことが明らか

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となった。更に,露地条件で実施した試験場内試験においても,ナミハダニが要防除水準密度以下 の低密度条件であったにもかかわらず,イチゴ圃場へのハダニアザミウマの移入が認められ,ナミ ハダニの密度抑制効果が確認された。イチゴ栽培で使用頻度が高い 26 薬剤に対するハダニアザミ ウマの感受性試験を実施した結果,20種類の選択的薬剤を明らかにすることができ,本虫を防除資 材として利用するために必要な情報を得ることができた。

最後に,八女市の現地3圃場にて,ハダニアザミウマを保護利用したナミハダニ防除体系の有効 性を3カ年の試験にて評価した。本試験では,ナミハダニの発生はいずれの圃場でも要防除水準密 度の1頭/小葉以下で推移したが,全ての圃場でハダニアザミウマが認められ,カブリダニ類は認め られなかった。また,殺ダニ剤が散布されていない時期にハダニアザミウマが認められ,ナミハダ ニが増加することなく,低密度で推移した事例も認められ,本試験によって,ハダニアザミウマを 保護利用した防除体系がナミハダニの密度抑制に有効であることが立証された。

以上の結果を総合し,福岡県における土着天敵ハダニアザミウマを保護利用したナミハダニ防除 体系を構築することができた。これにより,ナミハダニによる被害の抑制が期待される上,殺虫剤 散布回数の削減効果も期待される。殺虫剤散布回数の削減は,近年懸念されているナミハダニの薬 剤感受性低下を回避できるものと考えられる。

以上要するに,本論文は有効性が証明されていなかった土着天敵ハダニアザミウマの有効性を示 したうえ,本種を活用したナミハダニ防除体系を提案した優れた研究であり,生物的防除学の発展 に寄与する価値ある業績と認める。よって,本論文は博士(農学)の学位に値するものと認める。

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