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九州大学学術情報リポジトリ

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格子上の核子系有効場理論に対する繰り込み群解析 に基づいた再加重法

佐々部, 悟

https://doi.org/10.15017/1806808

出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

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(様式6-2)

氏 名 佐々部

Reweighting method for nuclear effective field theory on a lattice on the basis of renormalization group analysis

(格子上の核子系有効場理論に対する繰り込み群解析に基づいた再加重 法)

論文調査委員 査 九州大学 教授 原田恒司 査 九州大学 教授 八尋正信 査 九州大学 教授 鈴木博 査 九州大学 助教 松本琢磨

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

原子核を含むすべてのハドロンを記述する基本理論は QCD と呼ばれるクォークとグルーオンを 基本粒子とする場の量子論であることは既に確立している。しかし、QCDに基づく第一原理計算で ある格子 QCD シミュレーションでは、符号問題と呼ばれる困難のため、有限密度系に対しては極 めて限られた情報しか得られないのが現状である。佐々部氏は、低エネルギーでの物理を系統的に 記述する有効場理論ではこの種の符号問題がないことに着目し、これを格子に乗せてシミュレーシ ョンを行うことで有限密度の核子系に対して計算を行う方法を提案している。

核子系有効場理論では、QCDとは別種の符号問題が生じる。核子間の相互作用を表す項は、補助 場を用いて核子の双一次形式に書き直されるが、その際に、結合定数の符号によっては係数が複素 数となり、核子場を積分した際に現れる行列式が複素数となって、モンテカルロ計算の確率分布の 一部とはみなせなくなる。このような場合、本来の行列式と「近い」と考えられる別種の行列式を 参照行列式として導入し、これを確率分布の一部として、その違いを再加重因子として補正する「再 加重法」がよく用いられる。佐々部氏の研究の独創的な点は、この参照行列式を、繰り込み群を用 いた解析に基づいて決定しているところにある。

繰り込み群の考え方に従えば、有効場理論に現れる相互作用の重要度は、そのスケール次元によ って決まる。核子系有効場理論では、非自明な繰り込み群固定点が存在することから、相互作用演 算子のスケール次元は素朴な次元解析から得られる正準次元から大きくずれることが知られている。

佐々部氏は拡大的(relevant)な演算子のみを含む参照行列式を定義し、その参照行列式から縮小

的(irrelevant)な方向に再加重する場合と拡大的な方向に再加重する場合の、再加重因子の標準

偏差の違いを、さまざまな化学ポテンシャルの値に対して比較し、繰り込み群に基づく再加重法の 有効性を(パイオンを含まない)NLOの核子系有効場理論に対して確認した。また、繰り込み群解 析によって得られたスケール次元に基づく演算子の重要度の序列が、素朴な正準次元に基づく序列 の考え方よりも優れていることを、再加重因子の標準偏差の違いを通して定量的に示した。

以上の結果は、有限密度核子系の物理を探索する新しい非摂動論的な方法を示唆するものであり、

近年話題となっている中性子星の状態方程式などへの将来の応用が期待される。また、質量数の大 きな原子核に対する有効場理論に基づいた格子シミュレーションへの新しい可能性を拓く重要なも のである。

よって、本研究者は博士(理学)の学位を受ける資格があるものと認める。

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