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鋼表面への微細円すい状突起物の生成

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Academic year: 2021

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鋼表面への微細円すい状突起物の生成

1. はじめに

 近年,マイクロマシニング技術の進 歩により,材料表面に微細模様のパ ターニングが可能となっている.しか しながら,パターニングには極めて高 額な設備や多大な手間を要することが 一般的である.われわれの研究グルー プでは,スパッタエッチングにより鋼 表面に微細円すい状突起物を形成する ことに成功している(1)~(3).本技術の特 徴は,マイクロマシニング技術を使用 した整然としたパターニングとは異な り,安価に微細円すい状突起物を形成 可能な点にある.図 1 に合金工具鋼

(SKD5)およびオーステナイト系ス テンレス鋼(SUS304)へのスパッタ エッチングにより形成した微細円すい 状突起物の様子を示す.いずれにも先

端が鋭くとがった突起が形成されてい る.合金工具鋼表面には直径が 1μm 以下の微細な突起が高密度に形成し,

ステンレス鋼には直径が数μm の突起 物が比較的疎に形成されている.突起 物の密度・寸法は,基材の種類やエッ チング条件により変わる.本突起物に 関する話題は,日本機械学会誌 2007 年 3 月号の特集記事にも掲載されてい るので,参照いただきたい.

2. 円すい状突起物の形成過程

 数 Pa から数千 Pa の圧力下におい て直流または交流電圧を印加すると,

グロー放電が生じて気体はプラズマ状 態になる.スパッタエッチングにおい ては,アルゴンプラズマ中のアルゴン イオンを電場により加速して基材表面 に衝突させて基材表面原子をはじき出 させる.工業的にはスパッタエッチン グは基材のクリーニングとして使用さ れている.図 2 に突起物の形成過程を 模式的に示す.アルゴンイオンにより スパッタエッチングを行うと,基材表 面原子がはじき出されるが,アルゴン イオンの衝突の際に基材は加熱される ため,基材表面には微細な炭化物が多 数析出する.炭化物のスパッタ収率が 基材のそれよりも低いと,時間の経過 とともに突起物は相対的に突出する.

これと同時に炭化物底辺は成長するの で,基材表面には多数の微細円すい状 突起物が形成される.

3. 微細円すい状突起物のコー ティング下地としての利用

 微細円すい状突起物の適用可能性は 幅広い.まず,表面積が増加する点を 利用すれば触媒下地,および放熱装置 としての適用が考えられ,先端の鋭さ を利用すればコールドエミッタへの適

用が考えられるとともに,柔らかな相 手材と接触すると先端が引っ掛ること が期待できるので,搬送装置としての 可能性がある.さらに,凹凸を利用す ればアンカー効果によりコーティング と基材の密着力が向上する.

 微細円すい状突起物の密着力向上効 果を確認するため,微細円すい状突起 物を形成させた高速度鋼(SKH51)

基材上に SiC 薄膜をスパッタコーティ ングした.図 3 に表面の様子を示す.

SiC 薄膜は突起物を形成させた基材上 にはがれることなく成膜されている.

マイクロエッジインデント法により評 価し SiC 薄膜のはく離エネルギー(密 着力)は,スパッタエッチングを行わ ない基材に成膜した SiC 薄膜のそれに 比べ約 26%向上しており,円すい状 突起物がアンカー効果を発揮すること が実験的に確かめられた.もし,切削 工具等のコーティング下地等へ適用す れば,中間層が不要にできる可能性が ある.

4. おわりに

 微細円すい状突起物は工業的に利用 範囲が広く,また極めて安価に製造可 能であるという魅力がある.今後は,

突起物の実用化を目指し開発を進める つもりである.

(原稿受付 2008 年 2 月 29 日)

〔加藤昌彦 広島大学〕

( 1 )張 清廉・王 栄光・加藤昌彦・中佐啓治●文 献 郎,ステンレス鋼および合金鋼のスパッタ エッチングによる円錘状表面炭化物の生成,

日本金属学会誌,69-3(2005),312-319.

( 2 )Wang, R., Zhang, Q., Kato M. and Nakasa, K., Formation of Fine and Dense Conical Carbides on Tool Steel Surface by Sput- ter Etching, Materials Transactions, 47-7

(2006),1798-1804.

( 3 )鄭 錦華・加藤昌彦・竹添星児・中佐啓治 郎,アモルファス SiCN スパッタ薄膜の耐 摩耗性とマイクロエッジインデント法によ るはく離強度評価,材料,54-10(2005),

268-274.

図 1 スパッタエッチングにより形成した 微細円すい状突起物の例

(a)合金工具鋼(SKD5)(b)ステンレス鋼(SUS304)

1μm 2μm

図 2 微細円すい状突起物形成過程 Ar+

基材

基材 時間

図 3 微細円すい状突起物を形成させた SKH51 基板上への SiC 薄膜の成膜

基材 領域SiC 薄膜

2μm

610

日本機械学会誌 2008.7 Vol.111No.1076

─ 38 ─

参照

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