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Research Report 政 700, , , , ,252 図表 1 ウクライナの乗用車販売台数 ( 単位台 ) 400, , , , , , , ,322 1

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Academic year: 2021

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はじめに

本稿では、NIS諸国のうちウクライナ、ベラ ルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンの4カ 国を取り上げ、それぞれの乗用車市場の現状と 今後の見通しを紹介するが、ウクライナに関し ては、新車市場の質的変化と「ヨーロッパナン バー」と呼ばれている中古車群の存在に着目し ながらその状況を紹介したい。また、ベラルー シとカザフスタンに関しては新車のブランド 別、モデル別の販売と自動車生産の動向などに 留意しながら、その現状と今後の展望を紹介す る。そして、ウズベキスタンに関しては、同国 唯一の乗用車メーカーであるGMウズベキス タンと市場の特殊性に焦点をあてながら、その 現状を紹介する。

1.ウクライナ

(1)市場の状況 概況 ウクライナの新車市場(小型商用車を 含む)の規模はピーク時の2008年には62万台以 上に達していたが、経済状況の悪化の影響を受 け翌2009年には前年の4分の1の約16万台に まで一気に落ち込んだ。その後、状況が若干改 善され、2011年から2013年までは年間20万台以 上の販売水準が維持されていたが、政情不安の 影響でグリブナ安が急激に進行し自動車のグ リブナ建ての販売価格が急上昇したことや、内 戦の影響でウクライナ東部の一部地域で自動 車販売が事実上停止したことが影響し、2014年 春ごろから輸入車を中心に極端な販売不振が 続くようになり、同年の通年の数字は前年比 54.5%減の9万7,020台にとどまった(図表1)。 2015年に入ってからも政情不安を背景とす るグリブナ安には歯止めがかからず不振はさ らに深刻化し、通年の販売台数は底と思われた 前年をさらに52%も下回る4万6,546台にとど まった。ただ、2015年11月ごろから状況改善の 兆しが見え始め、2016年は1年を通して月間販 売台数が前年の数字を大幅に上回る状態が続 いた。その結果、同年の通年販売台数は前年比 約40%増の6万5,562台に達した。市場関係者 の大方の予想通り、販売の回復傾向は2017年に 入ってからも続き、通年の数字は前年を約25% 上回る8万2,248台に達した。ただ、2017年の秋 ごろから市場の回復テンポが減速し始めてい るのも事実で、2018年3月にはほぼ2年ぶりに 月間販売台数が前年の数字を下回る(前年同月 比9%減の6,283台)という事態が生じている (ロシアの調査会社「Autostat」発表の数字。ウ クライナの調査会社「Autoconsulting」によれば、 2017年11月の時点ですでに前年同月の数字を 下回ったことになっている)。 2016年、2017年の市場の回復傾向を下支えし

2017年のNIS諸国の乗用車市場

ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員 坂口 泉 ■ Research Report ■

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図表1 ウクライナの乗用車販売台数 (単位 台) (出所)ASMホールディング。 ていたのは、市場が急激に縮小した2014年と 2015年の2年間に蓄積された「繰り越し需要」 であったと判断されるが、わずか2年でそのス トックが使い果たされた可能性も排除しきれ ない。春以降に再び市場の回復傾向が顕著にな ることも十分に考えられるが、2018年通年の新 車販売台数が危機前の2013年の数字(約20万台 /年)を上回ることはまずないであろう。実際、 ウクライナの市場関係者たちも同様の見解を 有しており、たとえば、エヴロカーのヤコヴリ ョワ社長は、2018年の新車市場の伸び幅が前年 比20%以上に達することはないだろう、との見 解を示している。また、ルノー・ウクライナの ミネンコ社長は2018年の新車の市場規模(LCV を含む)は、9万~11万台にとどまると予測し ている。 なお、ウクライナの2016年末時点での人口 1,000人当たりの乗用車保有台数は178台と非 常に低く、かつ、平均車齢も21年と非常に高い ので、少なくとも理論上は、同国の乗用車市場 には大幅な拡大ポテンシャルが存在すると言 ってよいであろう。ただ現時点では、そのポテ ンシャルが具現化される時期を予測するのは 困難となっている。 ブランド別販売動向(図表2) かつてウクラ イナの新車市場では低価格車を主力とするブ ランドが圧倒的な強みを発揮していた。しかし、 グリブナ安の急激な進行に伴い(グリブナ建て の)新車販売価格が急上昇したことを受け低価 格車の購買層の多くが中古車市場に流出した こともあり、2014年以降は低価格車を主力とす るブランドの苦戦と比較的高価なモデルを主 力とするブランドの健闘ぶりが目立つように なっている。2017年も、前年の2016年8月に中 古車を輸入する際の物品税率が大幅に引き下 げられたこともあって、引き続き同様の傾向が 観察された。 比較的高価なモデルを主力とするブランド の中でも2017年に特に強い存在感を示したの はトヨタで、前年に引き続きブランド別新車販 売台数ランキングのトップの座を守ることに 成功した。2位以下の顔ぶれを見ても比較的高 価なモデルを主力とするブランドやプレミア 371,019 542,332 623,252 162,291 162,595 207,453237,602213,322 97,020 46,546 65,562 82,248 0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

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ムブランドの好調さが目立つが、中でもアウデ ィの数字が突出しており、前年比で70%近く販 売台数を伸ばした。また、日本ブランドの存在 感も全般的に強く、トヨタの他に日産、マツダ、 スズキ、三菱自動車、レクサス、スバルが上位 25位以内に入っている。 一方、低価格車を主力とするブランドの中で はルノー(ロシア同様にウクライナでもロガン、 サンデロ等の低価格車を主力としている)と RAVON(GMウズベキスタンが立ち上げた新ブ ランドだが、モデルのラインナップは旧ブラン ド名<シボレーもしくは大宇>の時とほとん ど変わらない)が大幅に販売台数を伸ばしたも のの、価格の安さを最大のセールスポイントと しているウクライナのZAZ(ザポロジエ自動車 工場)とロシアのLADAは大幅に販売台数を減 少させた。その他、低価格車の代名詞的存在で ある中国ブランドの不振も目立った。たとえば、 かつてウクライナ市場で高い人気を誇り2014 年時点ではブランド別販売ランキングで第2 位となっていたGeelyは前年に引き続き大幅に 販売台数を減少させ、30位以下にまで順位を落 とした。30位以内に入っているのは707台の販 売を記録したCheryのみという惨状で、2014年 図表2 ウクライナの新車市場(乗用車)でのブランド別販売台数 (単位 台) ブランド名 2016年 2017年 増減率、% 1.トヨタ 2.ルノー 3.VW 4.シュコダ 5.起亜 6.現代 7.日産 8.フォード 9.メルセデスベンツ 10.BMW 11.アウディ 12.マツダ 13.スズキ 14.RAVON 15.三菱自動車 16.プジョー 17.ZAZ 18.レクサス 19.シトロエン 20.ランドローバー 21.シボレー 22.LADA 23.ボルボ 24.スバル 25.フィアット 7,668 6,389 5,001 4,145 3,982 3,396 3,444 3,612 2,464 3,073 1,674 2,342 1,767 285 1,028 1,273 2,758 1,164 850 913 1,203 1,533 663 603 400 9,698 8,671 6,525 5,675 5,320 4,356 4,324 3,524 2,897 2,832 2,822 2,765 2,496 2,367 2,091 1,894 1,708 1,371 1,256 819 813 789 769 721 707 26.5 35.7 30.5 36.9 33.6 28.3 25.6 ▲2.4 17.6 ▲7.8 68.6 18.1 41.3 830.5 103.4 48.8 ▲38.1 17.8 47.8 ▲10.3 ▲32.4 ▲43.5 16.0 19.6 76.8 ウクライナ全体 65,562 82,248 25.5 (出所)ASMホールディング。

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時点で14%を超えていた中国ブランド車の市 場シェアは1%強にまで落ち込んだ。LADA、 ZAZ、中国車の不振の主因は、ライバルである 中古車に顧客を奪われたことにあると推測さ れる。 なお、法人需要の割合が比較的高い(2017年 上半期の実績で32%)というのもウクライナの 新車市場の特徴であるが、数字が特に高いブラ ンドとしては、LADA(84%)、三菱自動車(58%、 アウトランダーがウクライナの警察用車両と して採用されたため)、シボレー(57%)、シュ コダ(54%)、ルノー(47%)の名を挙げるこ とができる。逆に法人需要の割合が10%未満と 低くなっているブランドとしては、RAVON、 Chery、スズキ、マツダ、起亜の名を挙げるこ とができる(autoconsulting.com.ua、2017.7.26)。 モデル別販売動向(図表3) 上述の通り、ウ クライナの新車市場では2014年ごろから低価 格車を主力とするブランドの苦戦と比較的高 価なモデルを主力とするブランドの健闘ぶり が目立つようになっているが、その傾向はモデ ル別の販売動向にも反映されており、2013年時 点では上位10位がすべて低価格モデルで占め られていたものが、2014年にはその数が7に、 2017年には2に(ダスターとロガン)、それぞ れ減少した。 新車市場における高級志向の強まりの結果、 廉価モデルが中心となっている国産車(現地生 産の外国ブランド車も含む)のプレゼンスも急 激に低下しており、2014年時点では10位以内に 7モデルも入っていたものが、2017年に10位以 内に入った国産車はシュコダ・オクタヴィアだ 図表3 ウクライナの新車乗用車市場でのモデル別販売台数 (単位 台) モデル名 2016年 2017年 増減率、% 起亜スポーテージ ルノー・ダスター ルノー・ロガン トヨタRAV4 シュコダ・オクタヴィア 現代タクソン トヨタ・カローラ RAVON R2 トヨタ・カムリ 日産キャシュカイ VWポロ VWゴルフ マツダCX5 ルノー・サンデロ 日産エクストレイル スズキ・ビターラ VWティグアン ベンツGLEクラス 日産ジューク フォード・フィエスタ 2,736 2,032 2,074 1,889 1,913 1,140 1,824 285 1,384 1,043 1,219 217 803 1,027 858 1,003 390 981 627 1,534 3,715 2,983 2,802 2,747 2,566 1,834 1,761 1,601 1,582 1,511 1,422 1,355 1,319 1,314 1,300 1,274 1,253 1,201 1,161 1,153 35.8 46.8 35.1 45.4 34.1 60.9 ▲3.5 461.8 14.3 44.9 16.7 524.4 64.3 28.0 51.5 27.0 221.3 22.4 85.2 ▲24.8 (出所)Autoconsulting。

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けにとどまった。高級志向の強まりは全般的に 価格の高いSUVの人気の高まりという現象に もつながっており、2015年時点では42%程度で あった市場シェアが2017年には50%を越えた。 ウクライナで人気の高いSUVとしては、起亜ス ポーテージ、ルノー・ダスター、トヨタRAV4、 現代タクソン、日産キャシュカイ、日産エクス トレイル、スズキ・ビターラ、日産ジューク、 メルセデスベンツGLEクラス等の名を挙げる ことができる。 (2)特別関税の導入・見直し WTO加盟に伴い、ウクライナでは2008年5 月中旬より移行期間が設けられることなく、新 車の輸入関税率が25%から10%に一挙に引き 下げられた。しかし、そのような急激な関税率 の引き下げに危機感を抱いたウクライナの国 内メーカーのロビー活動の結果、2009年3月6 日から6ヵ月間、新車に対し23%の暫定輸入関 税率が適用されることとなった。WTOからの 是正勧告もあり6か月後には再び10%の関税 率が適用されることとなったが、ウクライナの 国内メーカーによる執拗なロビー活動はその 後も続けられ、その結果、2011年の夏に、省庁 間貿易委員会(担当省庁は経済発展・貿易省) が「1,000~1,500ccの車については33.4%、1,500 ~2,200ccの車については47%の特別関税を最 長で4年間導入すること」を視野に入れた特別 調査を開始するという事態が生じた。そして、 2013年3月中旬になり省庁間貿易委員会は、 2013年4月15日より3年間、1,000~1,500ccの ガソリン車には6.46%、1,500~2,200ccのガソ リン車には12.95%の特別関税(追加関税)をそ れぞれ課すことを公式発表した(『ヴェードモ スチ』紙、2013.3.15)1) 当然ながら特別関税は輸入車の価格の高騰 につながり、一般市民や輸入業者から強い反発 の声が上がったため、ウクライナ政府はその半 年後の2013年秋ごろより早くも特別関税を廃 止する方向での検討を開始した。そして、2014 年2月になり省庁間貿易委員会が、「2014年4 月14日よりそれまでの税率を3分の2に低減 し、さらに2015年4月からは(2014年4月14日 以前の水準の)3分の1に低減すること」を発 表した。この発表後も省庁間貿易委員会は、特 別関税の廃止の方向での検討を続け、2015年9 月初旬になり9月30日より特別関税を全面的 に廃止する意向を表明した。 ただ、その直後より乗用車の輸入障壁を設け ているとウクライナ側が認識していたウズベ キスタン、ならびに、ウクライナとEUの自由 貿易協定の発効を受け2016年初頭よりウクラ イナ産食品の輸入を禁止することなどを発表 していたロシアへの対抗措置として両国製の 乗用車に対し特別関税を課すことが検討され 始めた。そして、ウズベキスタン製の乗用車に 関しては、2015年11月より12.2%の特別関税が 課せられることとなった2) また、ロシア製の乗用車に関しては、2016年 1月3日より5年間、特別関税が課せられるこ とになった。関税率はメーカーにより異なり、 ソラーズ極東工場で生産された乗用車と生産 者が特定できない乗用車には17.66%の税率が、 LADAの乗用車には14.57%の税率が、その他の ロシアの工場で生産された乗用車には10.41% の税率がそれぞれ課せられることとなった。こ のことが、2017年のLADA車のウクライナ市場 での不振の主因となった可能性も十分に考え られる。 なお、この特別関税導入の結果、ロシア製の 乗用車のウクライナ市場での価格競争力が低 下する可能性が高まったため、ルノーやフォー ドはロシアからの輸入を中止し欧州からの輸 入に切り替えることを発表している。

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(3)中古車市場の状況 中古市場(転売市場)規模 ウクライナの中 古車市場(転売市場)に関する2017年通年の数 字は入手できなかったが、ウクライナの調査会 社「Autoconsulting」によれば、2017年1~10月 期の中古乗用車市場の規模は36万5,000台(前 年同期比5%減)、中古LCV市場の規模は7万 4,000台だった、とされている。中古乗用車市場 で最も人気の高いブランドはLADAで、以下、 大宇、VW、トヨタ、ZAZ、シボレー、シュコ ダ、オペル、現代、三菱自動車と続いている。 また、最も人気の高いモデルは大宇ラノスで、 以下、シュコダ・オクタヴィア、VWパサート、 シボレー・アベオ、大宇センス、三菱ランサー、 オペル・ベクトラ、VWゴルフ、トヨタ・カム リ、シボレー・ラセッティと続いている。 中古車の輸入の状況 2000年代の初めに輸 入中古車に適用される物品税率が大幅に引き 上げられ、それ以降ウクライナの自動車(新車 +中古車)市場における輸入中古車のプレゼン スは急激に低下し、そのシェアは2~4%にま で落ち込んでいた。ところが、2016年になりウ クライナ政府は突然、「高価な新車を購入でき ない一般の人々に、比較的品質の良い車を安い 価格で獲得する可能性を与えるため」という名 目を掲げ、輸入中古車の物品税率を大幅に引き 下げることを検討し始め、同年春にその旨を規 定した法律が採択された。新法は2016年8月1 日より発効し、一定の条件3)を満たした上で輸 入される中古車に関しては物品税率がそれま での7~28分の1に低減されることになった (低減幅は車の排気量等により異なる)。 その結果、8月1日以降中古車の輸入台数が 急増し始め、年末までの5か月間で約1万 5,000台に達した。2016年初頭から7月末まで の中古車の輸入台数は5,600台だったので、8 月以降の月間の中古車輸入台数の平均値はそ れまでのほぼ4倍に達したことになる。さらに、 2017年に入ってからも同様の状態が続いてお り、1~10月期の中古車の輸入台数は前年同期 の約3倍の4万6,000台以上に達した。この輸 入中古車を対象とする物品税率の低減措置は 2018年末まで続けられることになっているの で、それまでは中古車の輸入台数が高い水準で 推移することになるであろう。なお、輸入中古 車の中で最も人気の高いブランドはルノーで、 以下、VW、シュコダ、オペル、日産と続いて いる。 ヨーロッパナンバーの車 ウクライナでは輸 入関税を支払わず保税状態で国内にヨーロッ パナンバーの車(欧州諸国で登録された中古車) を持ち込み、一定期間国内で使用することが認 められている。そのような形で持ち込まれる車 は、①個人利用目的のトランジット車(ウクラ イナを横断して他国に移動する車。最大で5日 ~10日、ウクライナ国内に滞在できる)、②個 人利用目的で持ち込まれる車(この場合は、ウ クライナ人が共同保有者になっていること、ウ クライナ国外の車検を通っていること、といっ た条件を満たしていれば1年間ウクライナ国 内に滞在できる。ちなみに、外国側の共同保有 者の国籍を見ると、ポーランド人とリトアニア 人が圧倒的に多い)、③所与の車を保有する会 社と契約を締結した上でウクライナに一時的 (期間は最大で1年間)に持ち込まれる車(商 用車であることが多い)、④人道支援(障害者 等が対象となる)目的で持ち込まれる車、の4 つのタイプに大別される。 ウクライナの関税局が発表している公式の 数字によれば、毎年50万台前後のヨーロッパナ ンバーの車がウクライナ国内に持ち込まれて おり、2017年秋時点で約2万5,000台がウクラ イナ国内に留まっていた、とされている。ただ、 多くの業界関係者はこの数字に疑問を抱いて

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おり、たとえば、ウクライナのAutoconsulting社 は、「2017年秋時点でウクライナ国内に滞在し ていたヨーロッパナンバーの車の数は少なく とも30万台以上に達しており、しかもその7~ 8割が滞在期限切れの“不法残留車”である」 との見解を示している(autoconsulting.com.ua、 2017.8.21)。一部には、この不法残留車の数の 多さが、2017年秋以降の新車市場の伸びの鈍化 の一因になっているのではないか、との見方も 存在する。 (4)商用車市場 ウクライナの総重量3.5t以上のトラックの 市場は2017年に急激に回復し、前年比84%増の 3,844台に達した。これは、危機前の2013年 (3,978台)にほぼ匹敵する数字である。ブラン ド別の状況を見ると2017年時点で最も売れ行 きがよかったのはMAZで、同年の販売台数は 761台に達した。以下、MAN:512台、フォード: 337台と続いているが、その他、年間販売台数 が300の水準を超えたブランドとしてはスカニ アとメルセデスベンツの名を、200の水準を超 えたブランドとしてはボルボ、GAZ、DAFの名 をそれぞれ挙げることができる。タイプ別に見 て最も人気が高かったのはトレーラーヘッド で、全体の31%を占めた。その他、ダンプカー の人気も高く、そのシェアは28%に達した。 ウクライナの中大型バス市場の規模は小さ く、2017年の数字は前年比17.6%の1,520台であ った。ブランド別の状況を見ると最も人気が高 かったのはATAMAN(ウクライナ)で、363台 の販売を記録した。以下、PAZ(ロシア):213 台、ETALON(BAZ-2215とも呼ばれるモデル。 ウクライナのETALON社傘下のチェルニゴフ 自動車工場で生産されている):152台、MAZ: 137台、フォード:136台と続いている。 2017年のウクライナのLCV(総重量3.5t未 満の小型商用車)の市場規模は前年比38.2%増 の1万1,549台であったが、最も人気が高かっ たブランドはルノーで、2,147台の販売を記録 した。以下、フィアット:1,173台、フォード: 1,126台、GAZ:962台、VW:911台、メルセデ スベンツ:815台、MAZ:757台、プジョー:544 台、MAN:495台、シトロエン:353台、と続い ている。 (5)ウクライナの主要乗用車メーカー ウクライナの乗用車生産部門は1990年代後 半から2001年ごろまで輸入中古車の攻勢に苦 しみ瀕死の状態にあったが、輸入中古車の物品 税率が大幅に引き上げられたことなどもあっ て2002年ごろから急激に活性化し、2008年には 生産台数が40万台を突破した(図表4)。しか し、経済危機の影響が色濃く出始めた翌年の 2009年には状況が一気に悪化し、それ以降は低 迷が続いている。特に2014年夏以降は生産の不 振が危機的な様相を呈し始め、同年の7~12月 期の生産台数は3,380台にまで落ち込んだ。 新車市場での低価格車の人気低迷(国産車の 大半が低価格車である)の影響を受けその後不 振の度合いは強まる傾向にあり、2015年の生産 台数は最悪だと思われた2014年の数字をさら に70%以上も下回る5,654台にとどまった。 2016年に入ってからも好転の兆しは全く見 えず、同年の生産台数は前年比23.2%減の4,340 台にとどまった。2017年は若干状況が改善され 7,296台に達したが、それでも全盛期の2008年 の40万台と比較すると大きく見劣りする。その 分、ウクライナの乗用車工場の稼働率は大幅に 低下しており、どの工場も赤字経営を強いられ ていると考えてよいであろう。恐らく、累積債 務額も大きく膨らんでいるものと推定される。 滅亡の危機に直面しているといっても過言で はないウクライナの主要な乗用車メーカーの 概要は以下の通りとなっている(各メーカーの ここ数年の生産動向は図表5に示してある)。

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図表4 ウクライナの乗用車生産台数の推移 (単位 1,000台) (出所)2003~2008年はウクライナ統計国家委員会。2008~2017年はASMホールディング。 図表5 ウクライナの主要メーカー別乗用車生産台数 (単位 台) (出所)ASMホールディング。 98 174 192 267 380 406 64 75 98 70 46 26 5.7 4.3 7.3 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 合計 97,580 69,687 45,758 25,941 5,654 4,340 7,296 ユーロカー 11,656 14,556 11,494 3,649 2,030 3,937 6,145 KrASZ 6,329 3,180 9,049 7,514 0 0 0 ボグダン 20,240 12,034 5,958 1,999 0 0 0 AvtoZAZ 59,355 39,917 19,257 12,779 3,624 403 1,151 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000 AvtoZAZ ボグダン KrASZ ユーロカー

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ウクルアフト 1969年に設立された会社で、 AVTOZAZ<ザポロジエ自動車工場>、イリチ ェフスクの自動車組立工場(年間生産能力4万 台でバスの生産が行われていたが、市場の縮小 を受け2015年夏に閉鎖されている)、約10の自 動車部品工場、200近くのサービスセンター、 約400の自動車販売店等を傘下におさめている。 AvtoZAZでは、かつて複数のオリジナルモデ ルが生産されていたが、乗用車に関しては、 2007年にタヴリアというモデルの生産が中止 されたのを皮切りに、2010年末までにすべての オリジナルモデルが生産中止となった。その後 は外国メーカーの旧式モデルの生産が細々と 続けられており、2015年にはシボレーのラノス、 ラノスをベースとするZAZセンス、旧型のシボ レー・アベオをベースとするZAZ VIDA、中国 のCheryのA13をベースとするZAZ Forzaが合 計で3,624台生産された。しかし、2016年は極端 な販売不振の影響で事実上の休止状態に追い 込まれ、通年の生産台数はわずか403台にとど まった。2017年は若干生産台数が増加し1,151 台に達したが、生産モデル数は大幅に減少し、 同年末時点で生産が続けられていたのはZAZ センスとZAZラノス・カーゴの2モデルのみで あった。同工場の生産能力は15万台/年である が、現在の生産水準では当然ながら黒字を出す のは不可能となっており、2017年の損失額は約 3億グリブナに達した。累積債務額も30億グリ ブナ以上に達しており、同工場の再建は不可能 に近いとみられている。親会社のウクルアフト もそのことを認識しており、工場の売り先を模 索しているようだが、今のところ買い手が出現 したという情報は出ていない。 もっともAvtoZAZの関連会社すべてが瀕死 の状態にあるわけではなく、中には好調な業績 を維持している会社も存在する。たとえば、 2005年にBosalとの間で設立された排気システ ム(マフラー)を製造する合弁工場は安定した 生産水準を維持することに成功しており、2017 年には約25万個の排気システムを製造してい る(そのうちの92%が輸出に供された)。 ボグダン 企業グループ「ウクルプロムイン ベスト」4)の総帥であったポロシェンコ現ウク ライナ大統領と同氏のビジネスパートナーで あったスヴィナルチュクが2005年に設立した 会社だが、ポロシェンコはボグダンの業績が悪 化した2009年に保有する同社の株式をすべて スヴィナルチュクに売却しており、現時点では スヴィナルチュクがボグダンの株式の100%を 保有している(ただし、今もスヴィナルチュク とポロシェンコ一族は良好な関係にあるとい われている)。ボグダンは、第1自動車工場(旧 ルツク自動車工場)、第2自動車工場、第3自 動車工場を傘下におさめているが、それらの工 場の現状は以下の通りとなっている。 第1自動車工場はソ連時代から存在する工 場で、元々はオリジナルの小型SUVを生産して いた。ボグダンの傘下に入った2000年ごろから ロシアのUAZ(ウリヤノフスク自動車工場)と LADAのモデルのSKD(セミノックダウン:組 立てラインだけを装備した生産施設での生産) を開始し、その後現代車と起亜車のSKDも開始 した。さらに、2005年からはバスとトロリーバ スの生産も開始した。しかし、2008年6月に下 記の第2工場が稼動を開始した後、第1工場で の乗用車の生産は中止され、現在は小型バスだ けが生産されている(年間生産能力は8,000台 だが、2017年の生産台数はわずか110台にとど まった)。 第2自動車工場は2008年6月より稼動を開 始した年間生産能力10万台以上の新しい工場 で、チェルカッスィに所在する。同工場では、 LADA2110をベースとしたボグダン・ブランド のモデルの生産が行われていたが(その他、一 時はLADA車や起亜車の生産も行われていた)、

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ロシアとの関係悪化の影響を受け、2014年秋に 生産が中止された。その影響もあり、2014年の 通年の生産台数は前年の約3分の1の1,999台 にとどまった。それ以降、現在(2018年春)に 至るまで生産は中止されたままとなっており、 このままでは生産の再開は難しいとみられて いる。その関係でボグダン側は工場の売却を検 討しており、複数の外国メーカーとの間で交渉 を行っているようだが、2018年春時点では取引 が成立したとの情報は出ていなかった。 第3自動車工場も2008年9月から稼動を開 始した新しい工場で、やはりチェルカッスィに 所在する。年間生産能力1万5,000台の同工場 では、いすゞの小型および中型トラック、現代 のトラック等のSKDが行われていたが、2016年 以降現在(2018年春)に至るまで生産が中止さ れたままとなっている(ロシアのASMホール ディング発表の数字)。その他、ボグダンはか つて「チェルカッスィ・アフトブス」というバ ス工場も傘下におさめていたが、2011年春に外 部 企 業 に 売 却 し て い る ( 同 バ ス 工 場 で は ATAMANというブランド名のバスが生産され ている)。 上に列挙した生産の数字からもわかる通り ボグダンの生産部門も上記のウクルアフト同 様に非常に厳しい状況に置かれており、2017年 1~9月期の損失額は4億グリブナ強に達し た。また累積債務額も年々増加しており、2017 年9月末時点で71億6,000万グリブナに達して いた(そのうちの44億が銀行からの借入金とな っている)。 非公開株式会社「ユーロカー」 オレグ・ボヤ リンという人物が率いる持ち株会社「アトル・ ホールディング」の傘下に入っている会社。同 社が保有する工場は、2001年にドイツのVWの 技術支援を受けて完成した近代的な工場で、ス ロバキアおよびハンガリーとの国境近くのザ カルパチエ州ソロモノヴォ村の自由経済ゾー ン「ザカルパチエ」に所在する。同工場では、 2001年末にシュコダ車の試験生産が開始され、 2002年春から量産に移行した。その後、一時 VW車やセアト車の生産も行われていたが、 2010年からはシュコダのモデルしか生産され ておらず、2017年には、オクタヴィア、ファビ ア、イエティ、スペルブ、ラピッド等が合計で 6,145台生産された。 その他、2018年3月からはコディアックとい うシュコダの大型SUVの生産も開始されてい る。同工場の生産能力については諸説があるが、 10万台/年を超えているのはほぼ確実で、現在 の生産水準では黒字を出すのは非常に難しい と判断される。実際、同工場も巨額の債務を抱 えており、その総額は2018年2月時点で約27億 グリブナに達していた。 なお、ウクライナでは欧州から輸入される新 車の関税率が2017年時点で5~8.2%という低 い水準に抑えられており(中古車は7.3%)、し かも、今後段階的にさらに引き下げられ2023~ 2026年を目処に新車に関しても中古車に関し ても関税率がゼロになることが見込まれてい る。関税率が低い関係で、現時点でもユーロカ ーで現地生産されるシュコダ車と同ブランド の輸入車との間にはほとんど価格差はないと いわれているが(時には後者の方が価格が安く なることもあるといわれている)、今後、計画 通りに関税率が引き下げられることになれば、 ユーロカーの経営環境は今よりもさらに厳し いものとなるであろう。 AIS(アフトインベストストロイ) KrASZ(クレ メンチュグ自動車組立工場)の他、UAZをはじ めとするロシアの複数のブランド、双竜、Geely 等の輸入・販売会社や、シトロエン、アウディ、 現代、シボレー、ルノーの販売会社などを傘下 におさめる企業グループ。KrASZでは、2000年

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ごろからLADA、GAZ(ゴーリキー自動車工場)、 UAZ、中国のGreat Wall、Geely、FAW等のSKD 方式での生産が開始され、最盛期の2004~2008 年には年間2万台前後の生産を記録していた が、販売不振の影響で2009年より数字が急激に 悪化し始め2014年夏についに生産を中止する ことを余儀なくされた。その後、破産申請が 2015年秋に裁判所により認められ、KrASZは正 式にその活動を停止した。

2.ベラルーシ

(1)新車市場の状況 概況 ベラルーシではかつて輸入中古車が 乗用車市場の核を形成しており、正規ディーラ ー経由の新車の販売台数は年間1万台未満と なっていた。しかし、2005年末に中古車の輸入 関税率が大幅に引き上げられたのを契機に 2006年以降新車販売の数字が伸び始め、2008年 には約2万5,000台の販売を記録することに成 功した。その後、販売が低迷する年が続いたが、 2013年になり急激に市場が活性化し同年の販 売台数は前年比39.5%増の2万8,810台に達し た(ベラルーシ・ディーラー協会発表のLCVも 含めた数字)。 同年の新車市場の好調さを牽引した要因と しては、①付加価値税が事実上値上がりした関 係で5) 2012年は車の買い控え現象が生じたが、 そのことと関連する繰り越し需要が2013年に 顕在化した可能性、②秋ごろから2014年にリサ イクル税が導入されるとの情報が出始め駆け 込み需要が生じた(リサイクル税は2014年3月 に導入された)、③ロシア製の低価格外国ブラ ンド車の販売台数が急激に伸び、そのことが市 場全体の活性化につながった、等が考えられる。 列挙した要因に支えられる格好で、正規ディー ラー経由の新車の販売の堅調さは、2014年初秋 まで続いたが、10月半ばごろから急激な落ち込 みを示し始め、LCVを含めた通年の数字は前年 比14.4%減の2万4,650台にとどまった。 秋口から正規ディーラー経由の新車販売台 数が落ち込んだのは、ベラルーシの運び屋によ りロシアから並行輸入される車の数が急増し たためであったが、その背景にはベラルーシ・ ルーブルのレートが比較的安定していたため ロシア・ルーブルに対して強くなり、ロシアで 車を購入しベラルーシで転売すると大幅な利 益を得ることができるようになったという事 情が存在した。2015年に入ってからもしばらく はロシアから運び屋により持ち込まれた並行 輸入車の攻勢に苦しみ正規ディーラー経由の 新車販売の低迷は続いたが、ベラルーシ・ルー ブル安の進行を受け年後半にロシアからの並 行輸入台数が減少したこともあり、2015年の通 年の数字は前年を若干上回る2万6,190台に達 した(乗用車が2万3,640台、小型商用車が2,550 台)。 諸外国から個人により持ち込まれる車に課 せられるリサイクル税の税率を2016年2月4 日からそれまでの8.25倍の水準に引き上げる ことを規定した政府決定が採択されたことも あり、2016年は並行輸入台数が前年の約2万 4,000台から6,731台にまで激減し、その結果正 規ディーラー経由の新車の販売台数は前年を 若干上回る2万6,808台に達した。2017年は、並 行輸入される車の数がさらに減少したことに 加え、秋以降に2018年初頭より新車の販売価格 が上昇するという情報を各マスコミが一斉に 流した関係で12月に駆け込み需要が発生した こと(2017年12月の新車販売台数は、前月の11 月の数字を48%も上回った)もあり、通年の新 車販売台数は前年比27.7%増の3万4,255台に 達した(atuoconsulting.com.ua、2018.1.18)。 ブランド別販売状況 2017年のブランド別販 売ランキング(正規ディーラー経由のLCVも含

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めた数字に基づくランキング)で前年に引き続 きトップにたったのはロシアで現地生産され ている、サンデロ・ステップウェイ、ロガン、 ダスターといった低価格モデルの売れ行きが 好調であったルノーで、前年比24%増の8,420 台の販売を記録することに成功した。 VWはベラルーシで伝統的に根強い人気を 誇っているが、最近は常にルノーの後塵を拝し ており、2017年も前年比25.7%増の5,591台の販 売を記録することに成功したものの、2位の座 に甘んじることとなった。VWはベラルーシ市 場に小型商用車も含めれば10以上のモデルを 投入しているが、ロシア製の低価格車「ポロ・ セダン」の人気が圧倒的に高く、総販売台数の 7割以上を占めている。 2012 年の時点でトップであったロシアの LADAは、ルノーやVWの低価格車の攻勢を受 け年々プレゼンスを低下させており、2017年の 順位は前年同様3位にとどまった。LADAの 2017年の販売台数は前年比61%増(数字が大き くなっているのは前年の2016年の数字が前年 比8%減と低調だったためである)の3,509台 であったが、最も人気の高いモデルはラルグス で1,192台の販売を記録した。その他、4×4: 637台、ベスタ:601台などとなっている。 4位には、ロシアで現地生産されているアル メーラやエクストレイルの販売が好調であっ た日産が前年比13.0%増の1,971台の販売を記 録し食い込んだ。 5位には、やはりロシアで現地生産されてい るラピッドやオクタヴィアを主力とするシュ コダが1,952台の販売を記録し入った。 6位から10位までの顔ぶれを紹介すると、 GAZ:1,807台(すべてLCV)、起亜:1,741台 (SUVのスポーテージの販売が非常に好調で あった)、現代:1,586台(SUVのクレタの販売 が好調であった)、トヨタ:820台(2016年時点 で主力だったRAV4の販売が不振で、ブランド 全体の数字も前年比で35.0%減少した)、フォ ード:680台となっている。11位以下に目を転 じるとプレミアムブランドと日本ブランドの 存在感が強くなっており、BMW(11位:2017 年の販売台数は537台)、マツダ(13位:407台)、 メルセデスベンツ(13位:407台)、アウディ(15 位:395台)、三菱自動車(20位:201台)、ラン ドローバー(21位:187台)、ボルボ(22位:169 台)、スズキ(23位:85台)、スバル(24位:78 台)、ジャガー(25位:43台)といったブラン ドが25位以内に入っている。 モデル別販売動向 ベラルーシでも他の多 く の NIS 諸 国 同 様 に ロ シ ア 製 の 低 価 格 車 と SUVの人気が高く、2017年に最もよく売れたモ デルはVWのロシア製低価格車「ポロ・セダン」 であった(販売台数は3,926台)。以下、2位か ら15位までの顔ぶれを見ても、ルノー・サンデ ロ・ステップウェイ:2,940台、ルノー・ロガン: 2,298台、ルノー・ダスター(SUV):2,253台、 ルノー・キャプチャー(SUV):1,821台、シュ コダ・ラピッド:1,365台、LADラルグス:1,197 台、起亜スポーテージ(SUV):1,117台、現代 クレタ(SUV):845台、LADA4×4:637台、 現代アクセント(ロシアではソラリスと呼ばれ ている):621台、LADAベスタ:601台、VWテ ィグアン(SUV):582台、起亜リオ:573台、 ルノー・サンデロ:572台となっており、やは りロシア製の低価格車とSUVのプレゼンスが 圧倒的に強いことがわかる。 (2)生産の状況 ベラルーシでは、ベラルーシ・英国合弁企業 「ユニゾン」(旧フォード・ユニオン)、および、 ベラルーシのBelAZと中国のGeelyの合弁企業 であるBelGeがSKD方式で乗用車の生産を行 っている。ユニゾンでは1997年春よりフォー ド・トランジットとエスコートの生産が開始さ

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れたが、販売が伸び悩んだことなどもあり2001 年にフォードはプロジェクトから撤退した。そ の後、ユニゾンでは一時イランのホドロ社のサ マンドというプジョー405をベースとしたモデ ルのSKDが行われていたが、2013年6月に生産 中止となった。それ以降、同工場では複数のブ ランドのモデルのSKDが実施されるようにな り、2014年にはプジョー/シトロエンと中国の Zotyeのモデル(Z300)が合計で217台生産され た。2015年に入りZotyeのZ300の生産は中止さ れたが、その替わりにGM(オペル、シボレー、 キャデラック)のモデル(オペル・モッカ、シ ボレー・トラックス、シボレー・タホ等)のSKD が新たに開始され、同年にはプジョー/シトロ エンのモデル(シトロエンC-Elysee、プジョー 301、プジョー・パートナー等)と合わせて全 部で4,403台が生産された。2016年はプジョー /シトロエンのモデルの生産は大幅に縮小さ れたが、GMのモデルと同年に生産が開始され たZotyeのT600というモデルが合計で5,140台 生産された。2017年は、GM側が「2017年7月 までにローカルコンテンツを50%にまで高め る」というベラルーシ政府から課せられた義務 を遂行できず生産量を減少させた関係で、工場 全体の生産量も前年比34.5%減の3,367台にと どまった。なお、GMはローカルコンテンツ 50%の達成は不可能と認識しており、2018年1 月よりユニゾンでの現地生産を正式に中止し ている(それによる損失を補うためユニゾンは、 2018年より中国のZotyeの生産モデル数を増や す意向を示している)。 BelGeはボリソフの「アフトギドロウシリチ ェリ」という工場の敷地内に建設した年間生産 能力3万台の組立工場において2013年から Geely車のSKDを開始しており、2014年には SC7、EX7、LC CROSSの3モデルを合計で9,133 台生産した。2015年は生産車種の切り替え準備 という名目で夏頃から工場の稼働時間を大幅 に減らしたため(在庫調整のための計画的減産 だったという説もある)、通年の生産台数は前 年比55.5%減の4,066台にとどまった。2016年は 若干状況が改善され、前年比21.7%増の4,950台 が生産された。ちなみに、2016年の同工場の出 荷台数は5,721台で、そのうちの4,745台がロシ ア市場に、976台がベラルーシ市場にそれぞれ 供給された。 しかしながら、2017年の年初に同工場は閉鎖 された。工業アセンブリ措置に関するロシアお よびカザフスタンとの取り決めに従い、ベラル ーシでは2017年より工業アセンブリ措置の適 用対象となっている工場でのSKDの実施が原 則的に不可能となったからである。当該の状況 を受けBelGeは、ボリソフとジョジノの境界付 近に確保した約120haの敷地において溶接ライ ンと塗装ラインを装備した新工場、すなわち、 CKD(コンプリートノックダウン。組立てライ ンの他、溶接、塗装ライン等を装備した工場で の生産を意味する)が可能な工場の建設を開始 していたが、1期工事分(年間生産能力6万台 /年)が2017年9月に完成した。その後、Geely アトラスというSUVの量産が開始され、年末ま でに213台が生産された(ASMホールディング 発表の数字)。 (3)商用車の生産状況 2017年にベラルーシでは前年比45.1%増の 8,703台のトラックが生産されたが、主要メー カー別の内訳は、MAZ:6,828台、BelAZ:824 台、ミンスク・トレーラーヘッド工場:509台、 その他(ユニゾン、MAZ-MAN、テフノツェン トル等):542台となっている。 2017年のベラルーシのバスの生産台数は前 年比2.1%減の1,145台であったが、主要メーカ ー別の内訳は、MAZが1,038台、ミンスク・ト レーラーヘッド工場が97台、その他:10台とな っている。

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3.カザフスタン

(1)新車市場の状況 概況 数年前までカザフスタンの自動車市 場でも中古車のプレゼンスが非常に強く、新車 の販売台数は低迷していたが、個人に適用され る中古車の輸入関税率が2011年7月1日以降 大幅に引き上げられたことを契機に、市場での 中古車のプレゼンスが低下する一方で、新車の 販売台数が急激に増加し、2011年時点で4万 5,302台だったものが、2013年には16万5,730台 に達した(図表6)。ただ、急成長は長続きせ ず、①秋口から石油の国際価格が急落したこと (周知の通り、カザフスタンはロシアに次ぐ旧 ソ連諸国第2位の産油国である)、②不良債権 問題に起因する流動性不足の影響で多くの銀 行が自動車ローンの貸し出し条件を厳格化し たこと、③ロシア・ルーブル安の急激な進行に 伴いテンゲがルーブルに対し強くなったこと を受けカザフスタンの人々がロシアの近隣エ リア(クルガン州やオレンブルグ州)に出向き そこの自動車販売店で新車を購入するケース が急増したこと等の否定的要因が重った翌 2014 年 の 販 売 台 数 は 前 年 比 1.31 % 減 の 16 万 3,561台にとどまった。 2015年に入ってから状況はさらに悪化し、同 年の正規ディーラー経由の新車販売台数は前 年を約40%も下回る9万7,446台にとどまった。 そして、油価下落を背景とする不況は2016年に 入ってからも続き、自動車ローンの金利の一部 を国が負担するという販売促進措置が講じら れたにもかかわらず(国産車のみが対象)、販 売台数は不振だった前年の数字をさらに52% も下回る4万6,712台にまで落ち込んだ。ただ、 油価が回復傾向を見せ始めた2017年春ごろか ら状況がやや好転し始め、2017年の新車販売台 数は、前年比5.0%増の4万9,051台となった。 もっとも、この数字はピーク時の2013年の3分 図表6 カザフスタンの新車(LCVを含む)販売台数の推移 (単位 台) (注)正規ディーラー経由の販売台数。 (出所)カザフスタン自動車ビジネス協会。 19,099 32,906 22,867 16,424 21,686 45,302 98,242 165,730 163,561 97,469 46,712 49,051 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

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の1以下にすぎず、カザフスタンの新車市場で は今も不況が続いているといえよう。なお、カ ザフスタン自動車ビジネス協会は油価の上昇 に伴い景気も徐々に回復するとの認識を有し ており、2018年の新車販売台数は前年を15~ 20%上回る可能性が高い、との予測を発表して いる(kapital.kz、2018.1.17)。 ちなみに、カザフスタン自動車ビジネス協会 の他にカザフスタン自動車関連企業連盟「カズ アフトプロム」も新車販売の数字を発表してい るが、それによれば2017年の正規ディーラー経 由の新車販売台数は前年比5.8%増の4万6,377 台(うち3万484台が輸入車)で、金額ベース の市場規模は前年比28.6%増の11億2,000万ド ルだったとされている。以下、ブランド別なら びにモデル別の販売状況に関しては、カズアフ トプロムの方の数字をベースに説明させてい ただく。 ブランド別販売動向 2017年の新車市場のブ ランド別の販売状況を見ると、日本のトヨタが 9,252台の販売を記録し、前年に引き続きトッ プとなった。さらに、トヨタは中古車市場(中 古車転売市場)でも人気が高く、同市場でもト ップシェアを獲得している。トヨタのカザフス タン新車市場における主力はロシアで生産さ れているカムリとRAV4で、2モデルの販売台 数の合計値は、2017年のカザフスタン新車市場 での同ブランドの総販売台数の過半を占めた。 LADAは長年にわたりブランド別新車販売 ランキングの首位の座を維持していたが、人気 モデル「サマラ」の生産が中止されたことなど が響き2014年ごろから人気に陰りが見え始め た。さらに、2016年には、同年初頭よりカザフ スタンで導入されることになったリサイクル 税の影響を直接的に受け(リサイクル税の影響 は低価格車ほど大きくなる)販売が激減し、つ いに1位の座をトヨタに譲ることになった。 2017年は前年の数字を約20%上回る8,792台 の販売を記録したが、年間数万台の販売を記録 していた全盛期の数字には遠く及ばず、前年同 様に2位の座に甘んじることになった。カザフ スタン市場のおけるLADAの主力は、4×4、 ラルグス、および、グランタで、LADAの総販 売台数に占めるシェアは3モデル合計で7割 以上に達する。ちなみに、LADAの場合は、ア ルマトィやアスタナといった大都市部でのプ レゼンスは低いものの(逆にトヨタは、それら 比較的購買力の高い大都市部でのプレゼンス が強くなっている)、アティラウ、コスタナイ、 カラガンダといった地方都市の市場では強み を発揮している。 3位には、ネクシアとR4(コバルト)を主 力 と し て 4,621 台 の 販 売 を 記 録 し た RAVON (GMウズベキスタンが展開するブランド)が 食い込んだ。4位以下に目を転じると、現代(4 位:3,624台)、GAZ(5位:2,611台)、ルノー (6位:2,486台)、起亜(7位:2,301台)、UAZ (8位:1,900台)といった、カザフスタンもし くはその他の旧ソ連諸国で生産されている低 価格車を主力とするメーカーの存在感が目立 つが、日本メーカーも健闘しており、日産(9 位:1,683台)、レクサス(12位:1,177台)、ス バル(16位:495台)、三菱自動車(18位:291 台)、マツダ(24位:165台)が25位以内に名を 連ねている。 モデル別販売動向等 2017年の新車市場で 最も良く売れたモデルはトヨタ・カムリで、 3,334台の販売を記録した。以下、LADA4×4: 3,029台、RAVONネクシア:2,486台、LADAグ ランタ:1,772台、LADAラルグス:1,658台、ト ヨタRAV4:1,488台、RAVON R4(コバルト): 1,412台、トヨタ・ランドクルーザー:1,215台、 ルノー・ダスター:1,119台、VWポロ・セダン: 1,017台、現代クレタ:957台、LADAベスタ:

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952台、トヨタ・カローラ:950台、現代エラン トラ:878台、現代タクソン:845台、現代アク セント:704台、ルノー・サンデロ:677台、ト ヨタ・ハイラックス:611台、レクサスLX:537 台、RAVON R2(マチス):525台と続いている。 主要ディーラー別販売状況 カザフスタンの 主要な販売会社としては、LADA、UAZ、シボ レー、起亜、シュコダ等を取り扱うBIPEK-Avto グループ、GAZ、UAZ、スバル、トヨタ、日産、 現代、BMW等を取り扱うKMK「アスタナ・モ ータース」、RAVON、UAZ、シボレー等を取り 扱うヴィラジュ、トヨタ車を取り扱うトヨタ・ シティ・アルマトィ、三菱自動車、スズキ、 RAVON、フィアット、双竜、ZAZ等を取り扱っ ているAllur Auto、VW、アウディ、ポルシェ、 三菱自動車、スズキ等を取り扱うメルクル・ア フト等の名を挙げることができる。 列挙した会社の中で2017年の新車販売台数 が最も多かったのは、人気ブランドのLADAを 中心に取り扱うBIPEK-Avtoグループで、1万 3,554台の販売を記録した。もっとも、2~3年 前から観察されているLADAの人気の低迷に 伴い同グループの市場シェアは縮小傾向にあ り、2012年時点では50%を超えていたものが、 2017年は29.2%にとどまった。以下、2017年の カザフスタンの新車市場で販売台数が多かっ た会社を列挙すると、KMK「アスタナ・モータ ース」:7,834台(市場シェアは16.9%)、ヴィラ ジュ:4,204台(9.1%)、トヨタ・シティ・アル マトィ:2,248台(4.9%)、Allur Auto:1,956台 (4.2%)、メルクル・アフト:1,386台(3.0%) 等となる。 中古車市場 2017年に登録された(中古車転 売分を含む)の車の総数は117万584台で、その うちの110万684台が転売された中古車であっ た。2017年に転売された中古車の平均車齢は全 般的に高く、20年以上が36.2%、11~20年が 29.4%、8~10年が9%、4~7年が16.6%、 1~3年が7.6%、1年未満が1.1%となっている。 一方、新規に登録された車(新車+輸入中古車) の総数は6万9,900台であった。 (2)生産の状況 現在カザフスタンではアジア・アフト、Allur Auto(コスタナイにアグロマシホールディング とサリアルカアフトプロムの2工場を保有)の 2社が乗用車の現地生産を行っているが、それ ら2社の概要は以下の通りとなっている。 アジア・アフト カザフスタン最大の自動車販 売会社であるBIPEK-AvtoとロシアのAvtoVAZ の合弁企業で(出資比率は前者が75%、後者が 25%)、2002年よりウスチカメノゴルスク市に 所在する設計生産能力4万5,000台/年の工場 で現地生産を開始した。当初はLADAの1モデ ル(4×4)だけを生産していたが、その後生 産モデルを大幅に増やし、2015年時点では4× 4の他に、起亜の14モデル(ソレント、セラト、 スポーテージ等)、シボレーの6モデル(キャ プティバ、アベオ、クルーズ等)、シュコダの 4モデル(ラピッド、オクタヴィア、イエティ 等)をSKD方式で生産していた。しかし、2016 年はシュコダとシボレーのモデルの生産が中 止された他、起亜車の生産量も大幅に減少した (同年の起亜車の生産台数は前年比96%減の わずか129台にとどまった)。ただ、2016年秋よ りLADAの生産モデル数を増やすという措置 が実施された他(グランタ、カリーナ、プリオ ラ、ベスタ、XRAYのSKDが新たに開始された)、 2017年初頭からはシボレーとシュコダの車の SKDも再開されたので、2017年には2015年とほ ぼ同じ数のモデルが生産された。 同工場の生産台数は、2007年:6,000台強、 2009年:1,000台弱、2010年:3,099台、2011年:

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7,326台と伸び悩んでいたが、2012年は市場の 急激な拡大という追い風を受け前年比125.4% 増の1万6,513台を記録することに成功した。 2013年も急激な拡大フェーズが続き、生産台数 は前年比87.8%増の3万1,005台にまで達した が、2014年はシボレー車とLADA車の生産が不 振であったことが響き、前年比7.1%減の2万 8,803台にとどまった。さらに、ロシアから並行 輸入される競合車の攻勢とテンゲ安を背景と する生産コストの上昇に苦しんだ2015年は4 ブランド(LADA、起亜、シボレー、シュコダ) のすべてで大幅に生産台数が減少し、合計の数 字は前年を実に76.1%も下回る6,882台にまで 急落した。2016年はLADA以外のブランドの生 産が事実上すべて中止された関係もあり、生産 台数がさらに落ち込み、前年比57%減の2,962 台にとどまった。ただ、2017年は、既述の通り 年初からシボレーとシュコダの生産が再開さ れた他、LADA車と起亜車の生産台数も大幅に 増加したので、通年の数字は前年の4倍近い1 万1,412台にまで回復した。なお、アジア・アフ トで生産されているモデルの中で2017年の販 売台数が最も多かったのはLADA4×4で、 4,238台の販売を記録した。以下、グランタ: 1,766台、ラルグス:1,637台、ベスタ:931台と 続いている(恐らく、輸出分も含めた数字だと 推測される)。 アジア・アフトは現時点ではSKDしか行って いないが、工業アセンブリ措置に関するロシア およびベラルーシとの取り決めに従いカザフ スタンでも今後SKDの実施が不可能になるこ とを踏まえ、戦略的パートナーであるAvtoVAZ およびカザフスタンの政府系企業「Eptic」と共 同で、プレス、塗装、溶接の各ラインを装備し た新工場の建設プロジェクトに取り組んでい る。当初の計画では1期工事は2017年に完成し、 年産6万台規模でLADAのベスタやXRAYなど のCKD方式での生産が開始される予定となっ ていたが、用地の買収に手間取ったため作業は 遅れ気味となっており、現時点の見通しでは、 1期工事の完了は早くても2021年ごろになる とみられている(autostat.ru、2018.3.6)。ただ、 1期工事の完成に必要となる資金の調達の目 処がいまだに立っていないという事実(1期工 事の総額は3億8,000万ドルと評価されている が、2018年初頭時点の累積投資額は6,200万ド ル弱にとどまっていた)を勘案すると、完成時 期がさらに大幅に遅れる可能性も十分に考え られる。1期工事完成後に2期工事を実施し生 産能力を12万台/年にまで増強するという計 画も検討されているようだが、こうした状況な ので、2期工事の着工時期は今のところ未定と なっている。なお、新工場で生産される車はカ ザフスタン国内で販売される他、ロシアのシベ リア地方や他の中央アジア諸国等に輸出され る見込みとなっている。 Allur Auto 2009年12月に、自動車販売会 社「Allur Auto」、アグロマシホールディング・ カザフスタン社、韓国の自動車メーカー「双竜」 の3社は、アグロマシホールディング社が保有 するコスタナイのディーゼル・エンジン工場に 1,600万ドル以上を投下して年間生産能力2万 5,000台の乗用車組立ラインを設置し、双竜の SUV4モデル(Kyron、Acyton、Acyton Sports、 Rexton)のSKDを開始するという計画を発表し た。そして、2010年8月より試験生産が開始さ れ、年末までに合計で77台の双竜車が組立てら れた。当初の計画では2011年には約1,500台が 生産されることになっていたが、実際の生産台 数は869台にとどまった。2012年からは、双竜 車の他にウクライナのZAZチャンスのSKDも 開始され、同年の生産台数は2,581台に達した。 2013年は春からZAZ VIDAの生産が、夏からプ ジョーの複数のモデル(301、3008、508等)の 生産がそれぞれSKD方式で開始され、ZAZ、双

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竜、プジョーの3ブランド合計で前年の倍以上 の6,464台が生産された。 2014年は、6月からコスタナイの年間生産能 力3,000台の新工場(サリアルカアフトプロム) で トヨタ ・フ ォーチ ュナ ーと双 竜Nomadの CKDが開始され(その一方で、ZAZのモデルの 生産は中止された)、2工場合計で8,354台が生 産された。その後、生産車種の大幅な見直しが 実施され、2015年からは、トヨタ、双竜、プジ ョーのモデルの他、中国のGeely、JAC、および、 現代の複数のモデルの生産も開始されたが、ど のモデルも販売が伸び悩み、同年のAllur Auto 傘下の2工場の生産台数の合計値は前年比 33.3%減の5,571台にとどまった。2016年からは 起亜やシュコダのモデルの生産も開始された が状況を変えるまでには至らず、同年の生産台 数は前年の数字をさらに下回る5,435台にとど まった。2017年にはRAVONネクシアの生産が 開始されたが、やはり状況に大きな変化をもた らすことはできず、2工場合計の生産台数はほ ぼ前年並みの5,377台となった(ASMホールデ ィング発表の数字)。なお、コスタナイの年間 生産能力3,000台の新工場(サリアルカアフト プロム)で2014年から開始されていたトヨタ・ フォーチュナーのCKD方式での生産は、販売 の不振を受け2016年末で打ち切られたが、2014 ~2016年の累積の生産台数は約1,100台であっ た(bnews.kz、2016.12.29)。 Allur Auto傘下の2工場で現地生産されてい るモデルの中で最も市場での人気が高いのは 現代エラントラで、2017年の販売台数は871台 に達した。以下、現代タクソン:842台、JACS 3:474台、シボレー・トラッカー:441台と続 いている(その他、起亜の複数のモデルが合計 で1,895台売れた他、シュコダの複数のモデル が合計で331台、双竜の複数のモデルが合計で 289台それぞれ売れた:カズアフトプロム発表 の数字)。 商用車の生産 2017年にカザフスタンでは 1,634台のトラックが生産されたが、工場別の 内訳は、KAMAZインジニリング(アクモラ 州):807台、現代アウトトランス(アルマトィ 州):477台、セミパラチンスク自動車工場:249 台、Allur Auto:96台、その他:5台となってい る。2017年のカザフスタンのバスの生産台数は 648台であったが、工場別の内訳は、Allur Auto: 410台、大宇バス・カザフスタン(セミパラチ ンスク市):148台、現代アウトトランス:69台、 KAMAZインジニリング:21台となっている。 (3)WTO加盟に伴う税制の変化 2015年12月にカザフスタンはWTOに正式加 盟し、2016年より乗用車の輸入関税率がそれま での30~35%から19%に引き下げられること になった。この措置をそのまま実行すればただ でさえ疲弊している国内自動車産業が壊滅的 打撃を受けるのは明白なので、カザフスタン政 府は法律の改定を実施し輸入車の新規登録手 数料の引き上げとリサイクル税の導入を決定 した。当該の2つの措置の具体的内容は以下の 通りとなっている。 新規登録手数料の値上げ カザフスタン政 府は2015年秋に、それまで月次算定指標(カザ フスタンで適用されている指標で、2017年の値 は2,269テンゲに設定されていた。ちなみに、 2018年の当該の値は2,405テンゲとなっている) の一律25%に設定されていた輸入車(ユーラシ ア経済連合加盟国から輸入される車も含む)の 新規登録手数料を2016年1月1日より変更す ることを発表した。たとえば、乗用車の場合は 車齢1年未満の輸入車の場合は従来通り月次 算定指標の25%に相当する手数料が徴収され るが、1~3年の車齢の輸入車には月次算定指 標の50倍の手数料が、3年以上の輸入車には 500倍の手数料がそれぞれ課せられることにな

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った。商用車に関しては車齢1年を超す輸入車 への対応がさらに厳しいものとなっており、1 ~3年が月次算定指標の240倍、3~5年が350 倍、5年超が500倍にそれぞれ設定されている (1年未満の輸入車には従来通り月次算定指 標の25%という値が適用される)。月次算定指 標の50倍は2017年の平均レート換算で約340ド ル、500倍は約3,400ドルに相当し、この措置の 導入は中古車の輸入台数の大幅減につながっ た。 リサイクル税の導入 自動車、タイヤ、バッテ リー、エンジンオイル等を対象とする税金で、 自動車に関しては新規登録の際に徴収される。 輸入車のみならず国産車も対象となり、輸入車 の場合は輸入業者もしくは車を輸入する個人 から徴収され、国産車の場合はメーカーから徴 収されることになっている。この税金の導入は 当初、上記の新規登録料の値上げ措置と同時に (すなわち、2016年1月1日より)実施される 予定であったが、税率の再検討が行われたため、 実際には2016年2月1日から導入されること になった。月次算定指標に50を乗じ導き出され る数字が基本税額となり、そこにさらに所与の 係数を乗じることにより最終的な税額が決め られることになっている。乗用車の場合は、係 数はエンジンの排気量によって差別化されて おり、排気量1,000cc以下が3(すなわち、月次 算定指標の150倍に相当する額がリサイクル税 として徴収されることになる)、1,001~2,000cc が7、2,001~3,000ccが10、3,001cc以上が23と なっている。カザフスタン国内で生産されてい る乗用車の大半は排気量2,000cc未満であるた め、一部には、リサイクル税も国内自動車産業 保護の側面を有しているとの指摘も存在する。 その他、カザフスタンではこれまで、国産車 に関しては付加価値税(カザフスタンでは税率 が12%となっている)を免除するという措置が 講じられてきたがWTO加盟に伴い2017年1月 1日より当該の措置が廃止されることになっ た。

4.ウズベキスタン

(1)生産の状況 ウズベキスタン唯一の乗用車メーカーであ るGMウズベキスタンは、1996年にウズベキス タンの「ウズアフトサノアト(ウズベキスタン 自動車協会)」と韓国の大宇自動車の対等出資 で設立された(当時の名称はUZ-Daewoo)。大 宇自動車破綻後はウズアフトサノアトが大宇 側のシェアを買い取り株式の100%を保有して いたが、2007年末にGMがそのうちの25%を買 い取るという形で新会社「GMウズベキスタン」 が設立され現在に至っている。GMウズベキス タンの自動車組立工場(年間生産能力25万台) はアクサイ市に所在するが、その周辺には合弁 の部品工場が20以上存在し、組立工場に部品を 供給している。モデルによりローカルコンテン ツの値は異なるが、一部のモデルでは6~8割 程度に達している。残りの部品は輸入されてい るが、その多くにつき特恵的な輸入関税率が適 用されている。 GMウズベキスタンの生産台数は2003年ま では3~5万台前後で推移していたが、2004年 以降に生産台数が急激に増加し始め、2009年に はついに年産20万台を突破した。その後も2014 年までは20万台以上の水準が維持されていた が、2015年は主要市場であるロシアでの販売が 不振で輸出量が激減したことの影響を受け、生 産台数は前年比24.5%減の18万5,400台にとど まった。2016年は、輸出の不振が続いたことに 加え在庫の整理を行なった関係もあり、生産台 数は前年の半分以下の8万8,152台にとどまっ た。しかし、2017年は、RAVONという新しい ブランド名が浸透し輸出をめぐる状況が若干

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改善されたこともあり、通年の生産台数は前年 比59.1%増の14万247台にまで回復した。ちな みに、2017年時点のモデル別生産台数は、ネク シア:3万4,544台、ダマス:2万7,272台、ス パーク:2万2,360台、ラセッティ:1万9,164 台、コバルト:1万8,014台等となっている。 2017年時点でウズベキスタンではトラック の生産は行われてなかったが、2017年秋にロシ アのKAMAZとウズアフトサノアトが締結し た契約に基づき、サマルカンド州のUzAuto Trailerという工場で2018年3月よりKAMAZの トラックのSKDが開始された。当該工場の生産 能力は2,000台/年で(状況次第で5,000台/年 に増強される可能性もある)、2018年には約 1,500台のトラックが生産される予定となって いる(autostat.ru、2018.3.19)。 (2)輸出の状況 ウズベキスタン政府はGMウズベキスタン の自動車を貴重な外貨獲得源と位置付けてお り、国内販売よりも輸出を重視している(輸出 の大半はロシア向け)。その関係で、GMウズベ キスタンで生産されるモデルの輸出価格は国 内価格よりも低く設定されている。たとえば、 2016年春時点でのラセッティ(ロシアではジェ ントラというモデル名で販売されている)のロ シアでの販売価格は約6,500ドルとなっていた が、国内価格の方は最も安いタイプでも1万 3,000ドル近くに達していた。また、コバルトに 関しても同様の状況が生じており、ロシアでの 販売価格が6,000ドルであるのに対し、ウズベ キスタンでの販売価格は1万2,000ドルに達し ていた(しかも、国内価格はさしたる根拠もな く定期的に引き上げられる傾向が強く、たとえ ば、2016年初頭には一部のモデルで30%弱もの 値上げが実施された)。 もっとも、破格の安値にもかかわらず、主要 な輸出相手国であるロシアでのGMウズベキ スタン車の人気は2012年にロシアがリサイク ル税を導入した頃より低迷し始め、2013年の同 国市場での販売台数は前年比31%減の6万台 強にとどまった。その後、新モデルへの切り替 えに失敗したことなどもありロシア市場での 不振は加速し、2016年の同市場での販売台数は 全盛期だった2008年(同年のロシア市場での販 売台数は約9万6,000台で、総輸出台数は約11 万台に達した)のほぼ50分の1の1,881台にと どまった。2017年に入り状況は若干改善された が、ロシア市場での苦戦は続いており同年の販 売台数は全盛期の6分の1程度の1万5,078台 にとどまった(他の国々も含めた総輸出台数は 全盛期の約4分の1の2万6,822台だった)。 (3)国内市場の状況 ウズベキスタンではGMウズベキスタンを 保護するために極端に高い輸入関税率が導入 されている。排気量2,000ccの新車を例にとれ ば、関税額は通関価格の30%+1cc当たり2.5 ドルに設定されている(ドル建て部分の値は排 気量により異なっており、最大で3ドル/ccに 達する)。その他、物品税(排気量により値は 異なるが新車の場合は1cc当たり2.4~3.1ド ル)、付加価値税(20%)、通関手数料を支払う 必要があり、実質の関税率は100%を超えてし まう。中古車には新車よりもさらに高い関税が 課せられることになっており(中古車の関税率 は40%+1cc当たり3ドルで、物品税率は4.8~ 7.2ドルとなる)、いわゆる「遠い外国」製の乗用 車を輸入することは極めて困難となっている。 政府間協定に従い、ロシア製、ウクライナ製、 カザフスタン製の車は原則無関税で輸入でき ることになっているが(その他、それらの車に は特恵的物品税率が適用されることになって いる)、輸入業者による決済用の外貨購入額を 制限するという措置をウズベキスタン側が講 じていることに加え、輸出国側が純国産モデル

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