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1階偏微分方程式

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(1)

ハ ミル トンとヤコビの研究における変分法 と

1階偏微分方程式

(変分法 におけるハ ミル トン・ ヤ コビ理論 の形成過程)

1.は じめ に

今 日の変分 法 で,ハ ミル トン・ ヤ コ ピの理論 は,一つの重要 な分野 を形成 して いる。一 日にハ ミル トン・ ヤ コ ピの理論1と い って も,正準座 標 系の導入ヒルベル トの不 変積分,

場 の理 論 とい った よ うに多彩 な内容 を包括 して い るが,この報告 で は,この理論 の出発点 とな った,いわ ゆ る「 ハ ミル トン・ ヤ コ ピの方 法」,すなわ ち,ある変分 問題 を解 くこと 1階偏微 分 方程 式 を解 くことに帰着 す る手続 きを問題 にす る。

いま,yを ■の関数,Fは ■,y,Jに ついて2回 連続微分可能とする。積分

J=f:F(・ y,ク)と,J=豊

を極値 とす るよ うなy=y(3)を求 め ることは,方程式,

ご ∂F

E∂J (*)

ラー が この結 果 を

̀・

を解 くことに帰着 され ることは よ く知 られて い る.1変数 の場 合 に オイ

指摘 しラグ ラ ン ジュが

F=F(3,yl….,続 ,01…,ム)

( yi tt x @ffift, i1; =

の場 合 に拡 張 した くこの場 合っ方程式 (*)に 相 当す る ものは連立方程式 とな る)こ とか ら,

方程 式 (*)は オ イラー・ ラグ ランジュの方程式 と呼ばれてい る。

これ に対 しハ ミル トン・ ヤ コ ピの方法 は,

%=0,

π

F =P'

1たとえ

̀エ

クーラン・セルベルト,斉藤利弥・珈嶋格次郎訳『数理物曜学の方法3J,1989年 ,東京図 .

(2)

″(3,y,p)=ρ′―F(=,y,す)

な る変 換 を行 な い, 1階偏 微 分 方 程 式

を解 き,」を計算 した うえで,y=y(・)を求 め るとい う方法 で あ る。

教科 書 に この よ うに書 いてあ るか ら,私た ちは指示 され た通 りにや ってみ るわ けだが,

なぜ この よ うな手 法 を と らわば ないのか はだれ しも気 にな るところであ ろ う。

ハ ミル トン・ ヤ コピの方法 と名づけ られてい るのだか ら,こ れが,ゥ イ リアム oロ ー ワ ン・ ハ ミル トン(1805‑1865)と カー ル・ グスタフ・ ャ コプ・ ャ コ ピ(1804‑1851)に 発 して い ることは確 かであ ろ う。ふた りと も有 名 な数学者であ り,彼 らの仕事 に関す る数 学史 的 な研究 は,一通 りな されてい る。 ところが,ハ ミル トン・ ヤ コ ピの方法 が どの よ う

に導 か れ たか につ いて は,ほとん ど調 べ られて いないのが現状 であ る。

先行 研究 につ いて も う少 し詳 しく述 べて お こう。変 分法 の歴 史 において,ハ ミル ト

ン・ ヤ コ ビ理論 は どのよ うに扱 われてい るだろ うか。

ハ ミル トンは,1820年代後半 か ら35年頃 にか けてお こな った光学・ 力学研 究 の なか で しば しば変分法 を使 ったに もかかわ らず,彼が変分学上 どの よ うな寄与 をな したか につ いて は,ほ とん ど論 じられて いな い。 これ に対 してヤ コ ピの変分学史上 の業績 につ いて ト ドハ ンタ…2, ̲ル ドシュタイ ン3, フ レイザ ー4らが検討 して きた,彼らの話題 の中心 は,ヤ コ ピの1837年論 文 変分 と1階偏 微分方程式 の理論"6の前 半部分 で あ る.

ヤ コ ピはそ こで,第2変分 を導入 す ることによ り,最大 。最小 の問題 を扱 って い る。 ラグ ランジュや ル ジャ ン ドルによ って導入 され た第2変分 の理論 は,最大 。最小 の問題 と結 び つ いて お り,ヤ コ ピを経て,ヘ ッセ,ク レブ ッシュ,ヮ ィェル シュ トラス らに受 け継 がれ て い く。 その流 れの なかでャ コ ピがなにを成 したかは変分学史上 の重要 なテーマであ るこ とは容易 に理解 で きる。 したが って多 くの数学史家の関心 はこち らに集中 して しまい,第

1変分 を問題 にす るハ ミル トン・ ヤ コ ピの方法 について は,あま り関心 が もたれず,わ か に2つの事実… ヤ コ ピが1837年論文 の後半 部分 でハ ミル トン・ ヤ コ ピの方法 について 言 及 して い ること,この結果 は ク レブ ッシュによ り拡張 された こと…が指摘 されてい るだ けで あ った。そ こで,今回 は,これ まで見逃 されて きたハ ミル トン・ ヤ コ ビの理論 の原型 が形成 され るにあた って,ハ ミル トンとヤ コ ピが実際何を成 したか について検討 してい き た い。

ハ ミル トンの力学 の論文 を読 んだャ コ ピが,変分 法での ハ ミル トン・ ヤ コ ピの方法 の アイデ アを得 た こ とは1837年論文 のなかで彼 自身が記 して い る。1834年 35年に発 表 された力学 の論文 は,ハ ミル トンが それ以前 におこなった光学の研究 と深 く結 びついて

21.Todhunter,ス

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ry,(1861)

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π

(3)

い る.そ こ で この報 告 で は,ハ ミル トンの光 学 の論 文 の検 討 か ら始 め,力学 の 論 文 へ と す す ん で い きた い。 言 うまで もな く,これ らの論 文 は物 理 学 上 の問題 を扱 った もの で あ る ,こ の 報 告 で は,これ らを数 学 史 の立場 か ら評 価 して い くこ とにな る。つ ぎに ヤ コ ピの 力 学 と等 周 問 題 に関 す る議 論 を分 析 し,ハ ミル トン・ ヤ コ ピ理 論 の形 成 され た過 程 を論 じ て い く。

ヤ コ ピの 記 述 か ら察 せ られ るよ うに,変分 学 に お け るハ ミル トン・ ヤ コ ピ理 論 は,力

学 か ら得 られ た もの で あ る。 た だ し,力学 の理 論 を数学 に焼 き直 す に は,それ な りの 工夫 が な され て い るはず で あ る.こ れ が 実 際 に何 で あ ったか もあ わ せ て検 討 した い。

2.ハ ミル トンの光学―力学 研究 1)光学 の特 性関 数

ハ ミル トンは,1828年 光線 系 の理 論第1部 "6を発表 し,新 しい幾 何光学 の方法 を 提唱 した。 これ は,ハ ミル トン自身 が特性関数 と呼 んで い る新 た な関 数 を導入 す る ことに よ り,光学 系 の幾 何学 的 な性 質 を研究 しよ うとす る ものであ る.今日の幾何光学 で は アイ コナ ー ル と呼 ばれて い る関数 が用 い られてい るが,特性 関 数 は その原 型 とな った もので あ る。

この 論 文 の 冒 頭 で,ハ ミル トンは,光線 の 径 路 が,

δS=0, (2‑1‑1)

は屈 折 率お は線 要 素)

に したが うことを反射・屈折 の法則 か ら証 明 し,こ の命題 を「 最小 作用の原理 」 と名づ け .こ の名前 のつ け方 について,2つほ ど注意 を して お こ う.ま,「原理 」 と名づ け られ て い るが,こ れ は反射・屈折 の法則 か ら導 かれ た もので,彼の光学 の原理 で はな い。 また

「 作用 」 と呼 ばれ て い るが,こ の命題 は光線 の径路 の長 さに関 す る もので あ る。 今 日光線 の径路 の長 さに屈 折率 をか けた もの は,光学 的距離 と呼 ばれ て い るので,「 光学 的距離 最 短 の 命題 」 と呼 ぶ のが ハ ミル トンの主 旨 を もっと も明 確 に伝 えた表現 とい うこ とに な ろ う。 ただ し,光が粒子 であ ると仮定 す れば,質1の粒 子 の力学 的 な作用 が最小 で あ るよ うに粒 子 の運動 が規定 され るこ とを示 して い ると解釈 で き る し,波動 で あ る とみ なせ ば, フェルマー の「 最 短時 間 の原理 」 と読 み とる こと もで きる。今 日の光学 の教科書 で は,式

(2‑1‑1)自 体 を指 して,「 フェルマー の原理 」 と称 して い る もの もあ る。

続 いて ハ ミル トンは,反射・ 屈折 の法 則 か ら積分

r=/υ,

を ■,y,zで微分す ると光線 の方向余弦が与え られ るこ 方程式

(2‑1‑2)

とを 示 して い る。 この関 数 は偏 微 分

2,      (2‑1.3)

caご.,15,(1828),pp.69‐178=in rc̀ic̲

c'Theory of Syrtems of Rays(Part First)," Trans.Rog.Irish malicol Papcn, vol.l, pp.1-87.

(4)

を み た す の で,こ れ を解 いて 積分 (2‑1‑2)が 求 まれ ば,光線 系 の 性 質 を規 定 す る こ とが で き る。 そ こで ハ ミル トンは積 分(2‑1‐2)を「 特 性 関 数 」 と名 づ け た。

光 線 系 の理 論 第2部"7でハ ミル トンは別 の方法 で特性 関 数 を導 入 した.ま,積

(2‑1‑2)の変 分 を 計 算 す る こ とに よ り,

δ¨ =/δ)

(2‑1‑4)

(2‑1‑6) (2‑1‑7)

((α,β ,γ)は (・,y,Z)における,(α

,7)は (・

,y′ ,Z′)における方向余弦′は(・

,y′,z′ )

に お け る.屈折 率 。)

い ま,両端 を固 定 して 積 分 を とる と「 最小 作用 の原 理 」か ら(2‐1‑4)式=0,δ3=δy=

δz=0,δE′ y′ z′ =0と な るか ら,

(1等)¨ =d(υl場),

(:;)dρ=ご:;),

(2‑1‑5)

が得 られ る。 これが光線 の径路 を与 え る方程式 とな る。(2‑1‑4)式 と光線 の出発点 が固定 されて い る とい う条 件 よ り,特性関 数Iの変 分 は,

とな る。 これ か ら

とな るので,方向余弦 の性質 よ り,(2‑1‑3)と 同様 の1階偏微 分方程式 (:サ)″ρ=ご:;),

δf=υδδy+γδ″), α=:(::),β =:(:;),γ =:(::),

(農:)2+(11)2+(例 :)2=υ

2, (2‑1‑8)

が 導 かれ る。 この方程 式 を解 けば光学 系 を特徴 づ け る特性 関数fを得 ることがで きるので あ る。

ハ ミル トンは, 光線 系 の理 論第1部"では反射・ 屈折 の法 則 を基 礎 に して,1最 小 作 用 の原理Jを証 明 し,特性関数 の理論 を展開 して きた。 と ころが 第2部"で,「最小 作

7 Th"ry of Systemsiof Rays(Part s∝ ond),"  未発表の論文であるが全集には収録 されている。in

i′̀̀lomarビc̀′Pape■9,vol.1,pp.88‐106.

(5)

用 の 原 理 」 を光 学 の基 礎 原 理 と して,特性 関 数 の理 論 を構成 して い る。 この理 由 は,大 中 の 光 線 の屈 折 な ど,屈折 率 が連 続 的 に変 化 す るよ うな現 象 を記 述 す るた め に は,積分 形 を伴 う「 最 小 作 用 の原 理 」 を用 いて 光線 の振 る舞 い を規 定 す る方 が適 当で あ った ため で あ ろ う。

2部"で完 成 され たハ ミル トンの光学 の理 論 はっ ぎの よ うな もので あ った。「 最 小 作 用 の 原理 」で規 定 され る光 線 の幾 何学 的 性 質 は,特性 関 数 を用 いて記 述 す る こ とが で き る.この 特 性 関 数 は1階偏 微 分 方程 式 を解 くこ とに よ って得 られ る。"この 物 理 学 上 の 理 論 を 純 粋 に数 学 的 に読 みか え れ ば,以下 の よ うに な ろ う。 あ る極 値 曲線 に伴 う関 数 は

1階偏 微 分 方 程 式 を解 くこ とに よ って与 え られ る。 この関 数 が わ か れ ば,極値 曲線 は特定 で き る。"すな わ ち!変分 学 上 の問 題 を1階偏 微 分 方 程 式 に帰 着 さ せよ うとす る ア イ デ ア が こ こで登 場 して い るの で あ る。 ハ ミル トンの 光 線 系 の理 論"の数 学 史 上 の意 義 は この 点 に あ ろ う。

2)力学 の 特 性 関 数

ハ ミル トンは 1833年 に は,光学 の 特 性 関 数 と力 学 の 作 用 積 分 が,数学 形 式 上 類 似 し て い る こ とを論 文8の なか で指 摘 して い る。 この点 に着 目 し,力学 の 特 性 関 数 の 理 論 を提 示 した の が 1834年 動 力 学 に お け る一 般 的 方 法"9であ る。

以 下 で は 時 間 微 分 を 。で 表 す こ とにす る。 ハ ミル トンは ニ ュー トンの運 動 方 程 式 に力 学 の 基 礎 を 置 き,こ れ を積 分 して 活 力 保 存 則y+T=〃 を 導 き出 した.こ こで,びは 今

日の ポ テ ン シ ャル・ エ ネル ギ ー の 符 号 を逆 に した もの,Tは運 動 エ ネル ギ ーで あ る。″ は 積 分 定 数 で あ る.つ ぎに ハ ミル トンは 力学 の特 性 関 数 を

v = | lm;(i;dx; * i;dy; * i;ctz;) = !o' zTdt, (2‑2‑1)

と定 義 す る。 この変 分 は δy=)Em̀(ム δti+Oiδ

"+ムδ4)一 Σ m.(a・δαi+義 Jbi+島δCI)+tδ ″, (2‑2‑2)

と な る。 これ よ り連 立 方 程 式

需 喜要事

τil誕

,「11

が得 られ る。 この方程 式 か ら,仮に特性関数yが求 まれば,任意 の位置 での速 度 が得 ら れ るこ とがわか る.すなわ ち,特性関数 は運動 を特徴 づけ る もの なのであ る。活 力保存 の 8"On a General Method of Exprcsring the Paths of Light , and of the Planetr, by the Coefficients of Characterirtic Function," Dutlin Univcrtily Retieu, October, (1833)r pp.795-826.=in Mathematical

Papcrl, vol.l,3l l-332.

e"OD, B Geaeral Methoh in Dynamics," Phil.Trans.,Part Il(1834), pp.247- 308=in Mathemalicil Pa- pcr4 vol.Z, pp.l0$161

(2‑2‑3)

(6)

. 

co              2つ δ

(2‑2‑4)

て特性 関 数 が求 め られ る。

(2‑2‑5)

S=y― =五tF+叫

で定 義 した。 この関数 の変分 は

(2‑2‑6)

る こ とが示 さ ハ ミル トン自身 は,力学 の特 性関数 の提示 に あた り,光学 との数学 形式 の重要性 を 強調 して きた。確 か に1階偏 微分 方程式 を解 いてあ る関数 を求 め,その関数 の微 分 か ら 光学 系 な い し力学 系 の特徴 をつか もうとす る意 図 は光学・ 力学 ともに同 じものであ る。 し か し,変分法 と1階偏 微分方程式 の関係 を把握 しよ うとの視点 か ら見れば,両者 は大 きく 隔 た って い る。光学 において,彼が問題 に して いたの は,変分原理 に したが う光線 の径路 で あ り,その性質 を求 め るため特 性関数 が導入 され たのだ った。 これに対 して力学 では,

「 変分 原理 に したが う質点 の軌 道 」 とい う理解 はな い。彼 が問題 に してい るのは,あ くま で も運 動方 程式 に基 づ く質点 の運動 なので あ る。ハ ミル トンの 1834年論文 では,ハ ミル

トン・ ヤ コ ピの方 法 の基本的 な発想 は消 えて しま ったの だ った。

3)正準形 式 の導入     '

1835年,ハ ミル トンは 動力学 におけ る一般的方法第2論"11を出版 し,彼の力学 の定式 化 につ いての議論 を続 け る。 まず彼 は,ニ ュー トン方程式 か ら,いわ ゆ る ラグ ラン

ジュ方程 式

(2‑3‑1)

10 )n the Appuca・tion tO Dynalnics of a Ceneral Mathematical MethOds Previously Applied to Optics,'' BHtish Ass∝ iadOn Report,(1834),pp.513518.in irafirm●

̀icar Paper3,vol.2,pp.212‐ 216.

11 Se∞nd L腱yo■ ●Ctnerd Method in Dyna扇 cs,"′ rra73●.Par̀二(1835),pp.95‐ 144 in″

̀̀A●

̲

mà̀caI PcPc",vol.2,pp.162‐211.

(7)

[::Lilll[[Ittt,」t[覆Jと扱われている。つぎにハミルトンは需

意 図は明確 に述 べ られていないが,何らかの

方法 で,運動方程 式 を1階常微分方程式 系 に帰着 しよ うと したため と考 え られ る。運動 エ ネルギーを表 すTは変数 う1.… ,,温 2次の斉次関数 なので

2r=Σ

,

が成 り立 って い る。一方 で関 数 Tの変分 を計算す ると

δT=Σ

(等δ+需δ),      P‑3‑o

となる。(2‐3‑2)よ り求めたδυr)か(2‑3‑3)で のδTを引くことにより

δT=Σ

 (,Iδミミ

:[δ ),      (2‑3‑4)

が 得 られ る。 ハ ミル トンは

=qと お き,こ れ を新 た な独 立変 数 と した。 そ して,新

す な わ ち しい座 標 系 (■,■)での運 動 エ ネル ギ ー を関 数 Fを用 い て,

とな る。一方でFの変分は

δF=ΣE(■δω

̀‑1:δ ),

δF=Σ

(器δq+綿1),

(2‑3‑2)

(2‑3‑5)

(2‑3‑6)

(2‑3‑7)

に は依 らな い こ

(2‑3‑8) (2‑3‑9)

T(■,…,■.,う1,…,名.)=F(ωl,….,ω3■l,・・・,■), で表 した,すると方程式(23‐4)は

とな るか ら,これ と(2‑36)式を比較 し,ポテ ンシャル・ エネルギーがω とに注意 す る と, ̀

δF    δT δF     δT T= 肩T'…

.= 扇' が得られる。これら2記号を用いてラグランジュ方程式は,

牲書=器 =れ,犠ρ=蒜 =れ"

d"j=δ F)

    δ■ ' (2‑3‑10)

(8)

とか くこ とが で き る。 ハ ミル トンは

=F― y=F(ω l,ω2,・

"3●,ηl,772,…・,■.)一 υl,o,…

'お"), (2‑3‑H)

と して 関 数 ″ を導 入 した。 これ よ り運 動 方 程 式 に相 当 す る2n個の連 立 方程 式 系

=赫;蔵

了 ― 赫

;

"2'   出 = 扇

ご■.   δ″   ご″3■   5″=;

 =δω3●;  dt = δ

.;

(2‑3‑12)

が得 られた。 これ が,今日正準 方程 式 と呼 ばれて い る ものの原型 であ る。

ここで ハ ミル トンは,積

S=バΣq器

)出, (2‑3‑13)

(2‑3‑14) (2‑3‑15)

(2‑3‑16)

[Itii£litttil二襦ぶΣ″ =2T―=T+υ

を正準座標系 で書 き換 えた もの だ と察す るこ とがで きるだ ろ う。彼 は,積(2‐313)が ,運動方程式(2‐312)の積分 を与 え るこ とを証 明 して い く。

δS=fκZ

S′ q器 ,

とお くと

とな る。 これ よ り

δ

(器δq+qδ)―Σ(絡δq+締δ)=Σ (・δ器―締δ)

(・δ+午δ)=岳Σq&L

が 成 り立 って い るか ら

δS=Σ ("̀δ■ ―ル ),      (2‑3‑17)

((2,CI)は

̀,■)の初 期 値) とな る。 この両 辺 を比 較 す る こ とに よ り,ハ ミル トンは別 の連 立 方 程 式 系

"1=房; A= 藤;

O=砺; p2= i蕩;

δS         δs

"3o3=τttT: P3● = 薦;

(2‑3‑18)

(9)

を得 た。 この 方程 式 に よ りωメ ま■ の関 数 と して 定 め られ るの だ か ら,こ れ らは方程 (2‐3‐12)の積 分 を与 え て い る こ とに な ろ う。 こ こで ハ ミル トンはSを主 関 数 と名 づ け か え た。

ハ ミル トンは,Sのみ た す1階偏 微 分 方 程 式 を以 下 の よ うな手 順 で求 め た。Sを時 間

tで全 微 分 す る と,

と な るか ら

が 得 られ る。 これ よ り

一出 =霧 締害,

=メΣω=―,

+″ =0,

とな る。 こ こで一″=―(F― y)は定 数 だ か ら,彼は 偏 微 分 方 程 式 系

・轟納 ,つ")=υ ,け,

+F儒,場r… 轟″b%…)=1/1el,申 ちヽ

:IΣ (岳器…

(2‑3‑19)

(2‑3‑20) (2‑3‑21)

(2‑3‑22)

κ

を得 た。

この過 程 を見 て も,ハ ミル トンは,自分 の力学 の理論 を変分原理 に基づ いて作 ろ う とは して いな い ことがわか るだろ う。 しか しこの論文 で,彼は変分原理 と主関 数 の関 係 に つ いて,つぎの よ うな ことを指摘 して い る:Sに2つの意味 が あ る.両端 を固定 して変 分 を とれば,ラ グ ラ ンジュの運動方程式 を与 え,両端 を開放 して変分 を とれば運動方程式

の解 を与 え る,と12

この注 意 は,変分原理 を軸 と して力学 の理論 を構成 す るためのひ とつの可能性 を示 唆 して い る。す なわ ち,運動 の軌跡 は変分原理 によ って規定 され,その方 程式 の解 は, 1 階偏微 分方程式 を解 くことによ って与 え られ ると読 みかえ る ことが で きるの で あ る。ハ ミ ル トンーヤ コ ピ形式 の基本的 なアイデアが再 び登場 して きた とい うことがで きるだ ろ う。

3.力学形式 か ら変分 法 ヘ

1)ハ ミル トンの成果 のヤ コ ピによ る再構成

ヤ コ ピがハ ミル トンの力学 の論 文 を読 んだのは 1836年後半 と思 わ れ るが,そ の年 末 には,論 変分 法 と微分 方程式 の理論 について"を発表 し(出版 は1837年)等周間

126sを

計算す ると,

6S=

となることより得 られる。

Σ

tll ).J ,

(10)

13の解 も力 学 と同 様 な1階偏 微 分 方 程 式 に帰 着 され る こ とを述 べ て い る。 この手 順 が 実 際 に示 され た の は,『力 学 講 義 』14第 19講で あ る。 これ を検 討 す る前 に,ヤ コ ピの力学 上 の 成 果 に つ いて2つほ ど言 及 して お こ う。

1つ,ヤ コ ピが ハ ミル トンの 主関 数 を ポ テ ン シャル ェ ネルギー が時 間 を陽 に含 む 関 数 とな って い る場 合 に まで拡 張 して い る こ とで あ る.この 成 果 は上 述 の論 文 とは 別 の,

や は り1837年に 出版 され た論 文 連 立 常 微 分 方 程 式 を偏 微 分 方 程式 に帰 着 させ る方 法 に っ ぃ て"15で詳 し く述 べ られ て い る。

も う1つ,ハ ミル トンの 注 意 を生 か し,変分 原 理 を基 礎 に据 え て 力学 理 論 を構 成 し て い る こ とで あ る。 す な わ ち,今日 ハ ミル トンの 原 理 と呼 ば れ る変 分 原 理

(3‑1‑1)

(こ こで関 数 yは時 間 を陽 に含 む) か ら出発 して,ニュー トン方程式 および ラグラ ンジュ方程式 を導 いて いる.さ らに ラグラ

ンジュ方程式 か ら,正準方程式 を導 き出 して い る。 この手続 きは,『力学 講義』第8。 9講

で示 されて い る。ヤ コ ピの力学 では これ を基礎原理 と して主関数 の理論 をは じめ とす る考 察が な され て い るので あ る.

では等周問題 が扱 われてい る第19講につ いて検討 してい こ う。以下で は1=1,… .,n とす る.ヤ コ ピは まず,力学 の理論整備 か ら始 めて い る。彼 は積分,これ はハ ミル トンの 主関 数 を表 して い るの だが,

(3‑1‑2)

fF+Jldt=Q

υ

υ

δ

/Σ

ンジ

δy=δ/,出 ]:静δ9j一 Ei彎:5ぽ

(3‑1‑3)

とな る。

(3‑1‑4)

13今日等周問題といえば,何らかの境界条件のついた変分問題と理解されている。しかし,18世紀におい ては,等周問題という言葉で,変分問題=般を指すことはすでに指摘されている。C.Fraser, LopeJmetHc

Problemsin the Variational Calculus of E■ler and Lagrange," Joだo lfaぬematjca,19,(1992),pp.423.

ヤコ ピも等周問題 とい う言葉を使 っていなが ら,境界条件を付 していない。

14 yorre3."Je,=Ocr Dy

̀

j亀 (1866),Berlin,clebsch ed.rep」 ntd by Chdseain 1969.

15 ober die Roduction der lntegration der parthllen Direre.6algldchungen erster Ordntng zwischen irgend einer Z血 l Variabeli atf dic lntegration dnes dndgen Systems gewohn‖ cher Direrentialgleichun‐

gen,"Jl.力r dic rè■●u.̀n,cψ lrari.,17,(1837),pp.97‐ 162.=iR 7erl● 4,pp.5■127.

(11)

と お き,

(3‑1‑5)

(3‑1‑6)

(3‑1‑7)

9=#=写 鮮弊, (3‑1‑8)

となる.こ こでψ(pj,9i,ι)=ΣP31J ぼ90,4,ι)と おくことにより, 1階偏微分方程式

γ+aち,新,新)=0,

が得 られ る。 この方 程 式 を解 くこ とによ り,主関 数 が 得 られ るの で あ る.さ らに ヤ コ ピは

ψp・│:‑9=2T― (T+こ′)=T― =〃,     (3‑1‑10)

とす ることにより,(3‑1‐9)式 を

(3‑1‑H)

と書 き換 えた。今 日の力学 の教科書 では,こJf(2,97,ι)をハ ミル トニア ンと呼んで いる。

ハ ミル トンが正準座標系 を導入 した ときは,関Tは運 動 エネ ルギーを表 してお , 2次の斉次 関数 で あ るとい う条件 の もとで議論が進 め られて いた。 ャ コ ピも第 9講

で は この条 件 を仮定 して いた。 しか し第 19講で は この条件 を仮定 せず,任意 の関 数Tに 対 して ρ

̀=07と して正準座 標系 を導入 して い る.

この よ うに『 力学講義Jで,第 8・9講で得 られ た運動方程式 に基 づいて,第 19講

で主関数 の理論 が提示 されて いる。 この理論展開 は,ハ ミル トンの注意 を生か した もの と 判断 して よいだ ろ う.今日の教科書 に見 られ る力学 のハ ミル トン・ ヤ コ ピ形式 …変分原 理 か ら質点 の運動方程式 を求 め,その方程式 の解 は1階偏微分方程式 を解 くことによ って得

られ る… は ここで確立 した もの とい うことが で きよ う。

力学 の定式化 を終 えた後,ヤコ ピは,これ と同様 な数学 的 な手続 きを とることに よ り,

等周 問題 の新 しい定式 化 が で きる ことを論 した。 そ こで はT+yは 運動 エ ネルギ ー とポ テ ン シャル・ エネルギーの和,と と らえ るので はな く,純枠 に数学 的 な,t,9j,1の 関数 と

,9=T+び と表す。 そ して

(3‑1‑9)

+〃 =0,

f9191tl,0,颯 (3‑1‑12)

(12)

の極値 曲線 を与 え るよ うな関数9=,(ι)を求 め る ことを1階偏 微分 方程式 を解 くことに 帰着 させ よ うとす るので あ る。

ヤコピは新 しい関数ψci・‑9,を導入 して,その2種 類の変分を計算する.

δψδ4‑δ9=Σ2‑Σttδ 鮮屁, 0‑1‑lo

δψ

(:静)″ (:1)δ

(3≠)&.

この両者 を比較す ることに よ り,

(3‑1‑14)

(3‑1‑15) (3‑1‑16) (3‑1‑17)

(3‑1‑19)

ρ

¨

一方 で

の必 要条件 と して,オ イ ラー・

υ

(3‑1‑18)

が 導 か れ る。 これ は

фJ   ∂ψ

T= 万'

とか くこと もで きる。(3‑1‐16)式と (3‑1‑19)式 よ り,極値 曲線 を与 え る方程式 は正準方程 式 に帰着 され る こ とを示 す ことがで きた。

ヤ コ ピの理論 で は,力学 と同 じ形式 が等周 問題 に も適用 で きる。 ヤ コ ピが ポ テ ンシャ ル関 数 を時間tを陽 に含 む場 合 に まで拡 張 した こと,Tが 2次の斉次関 数 で あ るとす る 力学 的 な仮定 を落 と した上 で,正準座標系 を導入 して力学形式 を整備 した ことが,これを 可能 に した要因 で あ ろ う。

2)正準座 標 系 の意義

力学 で あれ,変分 法であれ,微分方程式論 であれ,ハ ミル トン・ヤ コ ピの方法 には,必

ず正準座 標 系 が伴 う。 この座標系 の意 義 につ いて,力学 と変分法 での ヤ コ ピの手続 きを比 較す ることによ り考察 して い こ う。

(3‑1‐2)式で定義 され る主関 数 のみたす偏微 分方程式 を導 く過程 に注 目 してみよ う.ヤ

コ ピは1837年論文 連 立常微分方程式 を偏 微分方程式 に帰着 させ る方法に つ いて"に いて以下 の よ うな手続 きを示 してい る。まず,一般座標系… これはデ カル ト座標系 に容易 に読 みか え る ことがで きる…で はSを微分 す るこ とによ り

Σ

(3‑2‑1)

(13)

が 得 られ る。 こ こか ら偏 微 分 方 程 式 を導 くた め に は,7を 何 らか の 偏 微 分 係 数 に お きか え な けれ ば な らな い。 古典 力学 の問題 に対 して は,ポ テ ン シ ャル関 数 〔′が9iと tに依 存 ,運動 エ ネ ル ギ ー を 表 す関 数Tが,1,…,,.の 2次の 斉 次 関 数 との仮 定 が あ った か ら,

(3‑2‑2)

と い う関 係 が成 り立 って お り,こ こか ら,関数 ア が み た す 偏 微 分 方程 式 を得 る こ とが で き る。 と ころが,等周 問 題 で は,関T+yが ,=《 98,││,ι)と 置 き換 え られ て い るた め, この 方 法 で偏 微 分 方程 式 を導 き出 す こ とはで きな い.すな わ ち,デカ ル ト座 標 系 や 一般座 標 系 で は,主関 数 の偏 微 分 方 程 式 を求 め る時 点 で ハ ミル トン・ ヤ コ ピの方 法 は破 綻 して し ま うの で あ る。

この場 合 に,正準 座 標 系,よ り正 確 に い え ば ヤ コ ピが『 力学 講 義 』第 19講で 用 いた そ れ は有 効 な道 具 とな る。 そ こで は,力学 的 な条 件 を付 す こ とな く,任意 の関 数 に対 して =結 の 関 係 が あ るか ら,aを 2の 関 数 と して 表 す こ とが 出 来 た し,2=器 も成

り立 って い る。1つめ の性 質 に した が う こ と に よ り,ff=Σρjl‑9(9jl:/)と 定 義 され,

(Pl,9j,0,ι)の関数であるはずの″ を:,。,f)の関数として得ることができた。この関係

式 と2番目 の性 質 を 用 いれ ば,(3‑2‐ ⇒ か らΣ

維 争 を 消去 す る こ とが で き る。 また,2

″は,]争ι.こ ,力 載∴

:竃1∴F'Л槻爾ご1羅真現棚 以琳 問 │ヒ1117竜lltlt・l」Ъ1こIミち′同じ

4.おわ りに

これ までの議 論 を通 して,ハ ミル トンとヤ コ ピが,彼 らの名 を関す る方法 を確 立す る際 ,実際 ど うい う役割 を果た したかを明 らか にす ることがで きた。ハ ミル トンは,光学 と 力学 の問題 を体系的 に扱 お うとす る際,い くつかの数学 的 な道具 を開発 した。それ はあ く まで物 理 的 な問題 を解決す るために用 い られた ものだ った。ヤ コ ピは,それ らの道具 の数 学 的 な面 での価値 を理解 し,それ らを生 か して,ハ ミル トンの ア イデアを整理 した。 その ,ハ ミル トンが仮定 して いた物理学 的 な制限 を ヤ コ ピが はず して い く様子が見 い出 さ れた。

ヤ コ ピの この手続 きを,私, 数学化"と い う言葉 で表現 したい と思 う。19世 は じめの物理学・ 数学 ゃ歴史 を扱 う際,科学史家 は しば しば 物理学 の数学化"と い う表 現 を用 い る。 この言葉 は,状況 に応 して さまざまな意味 あ いで使 われて い るが,こ こでい う 数学 化"と ,自然現象 を記述 す る方程式 や関数 か ら物理的 な仮定 を取 り去 る過程 で あ る。

最後 に変分問題 を1階偏 微分方程 式 に帰着 す ることの メ リッ トについて述 べて お き た い.ヤ コ ピは力学 の問題 について…数学的 には,主関数Sが変数 ιを陽 に含 まない場 合 ,変分 問題 に は もちろん適用で きない・・。は,直接運動方程式 を解 くよ り, 1階偏微分方

π

ν

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