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提言「建築分野の地球温暖化対策ビジョン 2050」

(案)

~建築のカーボン・ニュートラル化を目指して~

2009 年○月

日本建築学会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会 建築業協会、空気調和・衛生工学会、建築・設備維持保全推進協会、日本木材学会 日本不動産学会、建築設備技術者協会、建築設備綜合協会、日本建築構造技術者協会 Ⅰ.前 文 Ⅱ.提言の背景 Ⅲ.提 言 (目標)建築分野の地球温暖化対策ビジョン 2050 (方針) その1 建築のカーボン・ニュートラル化に向けた計画・設計方針 その2 カーボン・ニュートラル化を目指した地域や社会の構築 Ⅳ.行動計画の枠組み

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Ⅰ.前 文

建築関連5団体*1は、これまで「地球環境・建築憲章」の策定(2000 年)をはじめ、地球環境 問題に対し様々な活動を展開してきた。その間、地球温暖化に関する科学的知見の蓄積が進み、 その影響の深刻さが伝えられるとともに、社会的関心はさらに大きな高まりを見せるようになっ た。このような地球温暖化の解決には中・長期的な取り組みが不可欠であり、その具体的な道筋 を描くことが急務となっている。 また、地球温暖化問題の解決にはエネルギー・資源問題や人口問題、そして生活様式が深く係 るため、これらの視点に基づく持続可能な社会の構築が大前提となる。建築およびその集積とし ての都市・地域のあり方は、その実現に向けて重要な役割を果たす。そこで、建築関連12団体 (日本建築学会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、建築業 協会、空気調和・衛生工学会、建築・設備維持保全推進協会、日本木材学会、日本不動産学会、 建築設備技術者協会、建築設備綜合協会、日本建築構造技術者協会)は、「地球環境・建築憲章」 で掲げられた長寿命、自然共生、省エネ、省資源・循環、継承の基本理念に基づきながら、近年 の地球環境問題を巡る国内外の動向に鑑み、2050 年を目標とする中・長期にわたる建築や都市、 地域のより明確なビジョンを模索し、この領域における地球温暖化対策として具体的な方法論を 精査することとした。 新築・改修を問わず、これから作られる建築や都市、地域は近未来の社会の姿を決定づける。 従って、我々はここに示す 2050 年の目標を建築に関わるすべての人々と共有し、低炭素社会の実 現に向けた建築のカーボンニュートラル化*2に共に取り組むことを提言する。

Ⅱ.提言の背景

1)地球温暖化の警告 IPCC*3は第 4 次評価報告書(2007 年)の中で、「地球温暖化は人為起源でもたらされた可能性が 高い」、また「地球温暖化は疑う余地がない」と、かつてない強い調子で警告した。この広範な科 学的知見の成果である厳しい警告を真摯に受け止め、我々は人類の存続を脅かしつつある地球温 暖化を緩和し、予防する対策の実行に真剣に取り組まなければならない。 2)究極の目標は「気候変動の安定化抑制」 1997 年の COP3*4において締結された京都議定書は、国際社会が地球温暖化の問題に共同で立ち向 かった歴史的な第一歩であった。しかしながら、究極的には「我々人類がいかにして気候変動の 抑制安定化を図るか」が目標とすべき課題である。その結果、最近では IPCC 第 4 次評価報告書の 指摘を踏まえ、人為的排出量を自然の吸収量と同程度まで減らせるように温室効果ガスの排出量 を 2050 年までに世界全体で半減することが目標となりつつある。 3)日本の最近の目標 地球温暖化対策は世界共通の課題であるが、先進国と発展途上国では果たすべき責任の質や量に 差異があるべきことも広く認識されている。その結果、例えば一人当たりの CO2排出量を、その 国の状況に応じて公平化するという考え方が提案されている。これらを反映して、先進諸国は 50% を上回る大きな排出量の削減目標を掲げ、日本もまた 2050 年までに 60~80%の CO2排出削減を目 指す「低炭素社会づくり行動計画」を閣議決定(2008 年 7 月)した。

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2 4)「低炭素社会」の実現 CO2の排出を 60~80%削減できる技術的可能 性は様々な形で検討されている。しかし、こ のような大幅な排出削減は現状では優れて 挑戦的な目標である。その実現は、既存の個 別的対策の導入や単発的な技術開発だけで は不可能であり、市場を初めとする社会・経 済構造やライフスタイル等の抜本的な変革 が不可欠である。さらに、その仕組みの大枠 を規定する国レベルの取り組みと、地域の特 性を活かした取り組みを相互補完させなが ら、いかにして本格的な「低炭素社会」を実 現していくかが今問われている。 5)建築分野の責任 建築物由来の二酸化炭素排出量は、世界の総排出量の約3割を占める。また、IPCC 第 4 次評価報 告書では、短中期の効果的な対策によって建築分野は最大の削減可能性を有していることが指摘 されている。わが国においても、製造業部門より建築部門の方がその可能性は高いと見られてい る。産業立地条件や国際競争に多大な影響を受ける製造業に比し、建築分野は比較的安定した国 内対策を講じることが可能である。 以上を十分認識した上で、建築分野に身を置く我々は、地球規模の温暖化対策を講じる上で大 変重要な役割を担っていることを自覚しなければならない。 6)持続可能な資源利用 地球温暖化は石炭、石油、天然ガス等の化石燃料を大量に使用することで生じた問題である。し かし、いずれ枯渇する有限の非再生可能資源に依存することの限界を前に、世界の人口増加と発 展途上国の急速な経済成長は、ますます不確実な未来を予測させる。従って、そのライフサイク ルを通じて膨大なエネルギーと資源を消費する建築物は、生産・利用・廃棄の過程で二酸化炭素 を極力発生しない、再生可能な資源を利活用するとともに、循環型の利用形態へと転換していく べきである。 7)持続可能な社会の構築 それに加え、地球温暖化による地球規模での生物多様性の喪失や、身近な生態系の変化も深刻な 状況にある。すでに日本社会は人口減少に転じ、今後もさらに極端な少子化による本格的な人口 減少と高齢化を迎える。また、地方中心市街地の衰退、農山漁村の衰退はすでに社会問題化して 久しい。このような急激な社会変化を前にして、それらを反映した持続可能な地域・都市構造に 関する新たな再編への展望を描く必要がある。それなくして、実効性のある地球温暖化対策の中・ 長期的展望も描くことはできない。地域社会の構築に大きく寄与する建築や都市、地域の計画分 野で、まず未来の具体的なビジョンを描き、そこから現在に立ち戻りながら課題を発見し、その 上で地球温暖化対策の戦略を構築する、「バックキャスティング*5の方法を適用することが有効 である。 図1 気候変動の抑制安定化に向けた建築分野 の目標 究極目標「長期的な気候安定化」 世界全体で温室効果ガス排出量を半減 日本及び先進国は60~80%の削減 大きな削減可能性を有する建築分野 2050年に向けた建築分野の目標 2050年に向けた目標

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3 8)地球温暖化防止と社会資本としての建築 2008 年に京都議定書による温室効果ガス排出削減の第一約束期間が始まったが、現状でも 50 年 を超えるべき建築の寿命を考えれば、地球温暖化防止に向けた 2050 年レベルでの建築分野の取り 組みは、今すぐにでも着手する必要がある。さらに、建築の寿命そのものをさらに長寿命化する 取り組みや、既存の膨大な建築ストックに関する対策が、今後最も重要視されるべき課題となる。 建築はたとえそれが私有財産であっても、省エネルギーや再生可能エネルギー、長寿命化など の対策が地球温暖化防止策として高い公共性を有する以上、低炭素社会の実現に資する社会資本 として形成していかなければならない。 9)建築分野における世界の取組み 近年は、欧米のみならずアジア諸国においても地球温暖化防止を建築分野における最優先課題と して捉える機運は高まってきており、建築や都市の「カーボン・ニュートラル*6」や「ゼロ・カ ーボン*7」、「ネット・ゼロエネルギー*8」といった一歩踏み込んだ目標が急速に意識され始めて いる。古来より、日本は自然と共生する建築文化を有してきたが、現代社会においても新しい技 術を駆使しながら、そうした精神を継承し、世界をリードして行く必要がある。日本はアジアを はじめとする世界各国の建築界とのネットワークを構築し、情報交換、人的交流、目標の共有化、 技術移転等の連携をはかりながら、地球規模での低炭素社会化に貢献しなければならないすべき である。 *1 建築関連5団体 日本建築学会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、建築業協会 *2 カーボン・ニュートラル化 「カーボン・ニュートラル」とはエネルギー需要を抑え、必要なエネルギーに対しては再生可 能エネルギーを調達しすることで、年間を通しての二酸化炭素排出収支がゼロになる状況や、他のプロジェクトにおける削減量 を組み合わせて二酸化炭素の排出収支がゼロないとなる状況を生み出すのことを指す。「カーボン・ニュートラル化」とは、そ のような状態にできるだけ近づけることを意味する。

*3 IPCC 気候変動に関する政府間パネル (Intergovernmental Panel on Climate Change)

*4 COP3 気候変動枠組条約第 3 回締約国会議(The 3rd Session of the Conference of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change)

*5 backcasting 持続可能な社会の将来像を想定し、それを基点として効果的な実現プロセスを考える方法

*6 建築家 Edward Mazria が設立した非営利団体 architecture2030 は、2030 年までに新築建築をすべてカーボン・ニュート ラルにすることをことを目標に掲げ、アメリカ建築家協会(AIA)、カナダ建築家協会(RAIC)、ASHRAE、USGBC、LEED、ICLEI な ど多くの団体が加わっている。

*7 英国政府は Building A Greener Future:Policy Statement において 2016 年にすべての新築住宅を、Budget 2008 におい て 2019 年に住宅以外の建築もすべてゼロ・カーボンにすると発表している。

*8 米国政府は Energy Independence and Security Act of 2007 において、2030 年までに新築されるすべての商業建築をネ ット・ゼロエネルギーにすることを決定している。

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Ⅲ.提 言

IPCC 第 4 次評価報告書の警告を受け、世界の多くの国々で 2050 年までに温室効果ガス排出を 現状から半減させることが、地球温暖化対策の長期目標となりつつある。有限な地球の環境容量 をベースに、バックキャスティングの手法によって導き出される目標に向かって、我々は戦略的 に建築の設計と評価を取り巻く市場や社会を変革していかなければならない。 その過程で、先進諸国は先導的な役割を果たすとともに、より大きな責任と負担を引き受ける べきである。先に触れたように、IPCC 第 4 次評価報告書では建築分野の課題が特に取り上げられ、 短中期の地球温暖化の緩和や防止に貢献すべき分野として、最大のポテンシャルを有することが 述べられている。このことは建築に関わる我々が世界の温暖化対策をリードすべき立場に置かれ ていることを意味している。 地球温暖化による様々なリスクを未然に防ぐために、我々は新築、既築を問わず、二酸化炭素 を極力排出しないよう、建築の「カーボン・ニュートラル化」に取り組む。そして、今後 10~20 年の間にまず新築のカーボン・ニュートラル化を推進するとともに、2050 年までに、既存ストッ クも含めた建築分野全体としてカーボン・ニュートラル化を実現することを目標とする。以下は その具体的な方策の概要である。 (目標)建築分野の地球温暖化対策ビジョン 2050(図2参照) ① 新築建築は、今後 10~20 年の間に二酸化炭素を極力排出しないよう、カーボン・ニュー トラル化を推進する 新築建築は、その建設及び運用に要するエネルギー消費が最小となるよう設計すると共 に、必要なエネルギーに関しては出来る限り再生可能なエネルギーを利活用する。また、 エコマテリアルを選択しながら長寿命化を図ることができると同時に、将来においても 改修が容易な設計に留意することによって、二酸化炭素を排出しないカーボン・ニュー トラル化を推進する。建築のカーボン・ニュートラル化は既存の技術でも十分可能であ るが、課題となる追加コストを極力低減できる技術開発や制度構築を進めることによっ て、できるだけ早期の実現を目指す。 ② 既存建築は、改修を通しても含め2050 年までに建築全体のカーボン・ニュートラル化を実 現する推進する 建築は社会資産のストックを形成しており、新築だけではなく、その膨大な量の既存建 築についても改修による対策を講じる必要がある。既存建築の現状を把握し、設計段階 において意図された改修方法に配慮しながら、省エネ対策や再生可能エネルギーの導入、 耐久性の向上など、建物のライフサイクルにおいて負荷を最小にするよう改修を進め、 2050 年までに建築分野全体のカーボン・ニュートラル化を実現目指する。 ③ 建築を取り巻く地域や社会まで含めたカーボン・ニュートラル化を実現する推進する 建築のカーボン・ニュートラル化を実現するには、地域の気候風土への配慮や資源の活 用、経済活動やコミュニティとの連携など地域と建築が密接な関係を築くことが重要で ある。また、建築は地域の重要な構成要素であり、建築のカーボン・ニュートラル化を 通して地域の低炭素化を促進させることができる。すなわち建築単体の対策のみならず、 地域や社会まで含めたカーボン・ニュートラル化を目指す。

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5 「 長期的な 気候変動の抑制」 建築と地域のカーボンニュートラル化 「 地球温暖化」 化石燃料に依存する 建築と 地域

Backcasting

バックキャスティング

forecasting

フォアキャスティング 運用対策/建設対策 新築対策/既築対策 省エネルギー/再生可能エネルギー 長寿命化/エコマテリアル 現在の社会 持続可能な社会 ・循環型社会 ・地域資源利用 ・都市環境改善 ・地方活性化 ・自然と順応した ライフスタイル ・資源枯渇 ・人口減少、少子高齢化 ・都市過密化 ・中心市街地空洞化 ・農山村過疎化 ・エネルギー多消費型の ライフスタイル 図2 気候変動の抑制安定化に向けた 2050 年の建築分野のビジョンと対策 (方針) 方針1 建築のカーボン・ニュートラル化に向けた計画・設計・施工・運用の方針(図3参照) ① 建築は、エネルギー消費が最小となるように設計、運用する 建築における冷暖房用エネルギー消費起源の二酸化炭素排出量は大きいが、断熱、日射 遮蔽など建築躯体の基本的な環境性能の強化や近年省エネ性能が近年格段に向上した 空調、照明、給湯、OA 機器等の導入によって大幅な削減が可能である。さらに、ライ フスタイルや優れた家電の選択といったユーザー側の行為による削減効果も大きく、そ れを促進させる。こうした省エネルギー対策を設計段階で可能な限り導入することによ って、快適性を損なうことなくエネルギー消費の最小化を図る。 ② 建築は、自ら再生可能エネルギーによって必要なエネルギーを賄えるように設計する 建築として設計段階で利活用を検討すべき再生可能エネルギーに、太陽、風、地中熱、 水力、バイオマスがある。特に太陽エネルギーなど、再生可能エネルギーの熱利用は 建築自身が需給システムを構築していくものである。建築が消費するエネルギーを最 小化しつつ、必要となるエネルギーは自ら再生可能なものに転換していくことで、運 用エネルギーの二酸化炭素の排出を可能な限り減らし、カーボン・ニュートラル化を 推進する。 ③建築は、その寿命を長期化できるよう、設計、運用する 建物の寿命を可能な限り延ばすことで、建築の建設や廃棄に起因する二酸化炭素の排出 を抑制し、カーボン・ニュートラル化を実現推進する。そのためには、耐久性、耐震性、 防災性を高めることによって物理的な性能を向上させる。また、新築の段階から将来の 改修を考慮し、スケルトン/インフィルを明確に分離する等、既存の構造体や部材を極 力活用するとともに、将来の市場で円滑に流通しうるようなフレキシブルな設計を行な う。さらに、既存ストックに対しても、適切な改修を施すことによってエネルギー性能 を向上させながら長寿命化を目指す。

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6 ④ 建築は、二酸化炭素排出の少ない資材や炭素固定蓄積が可能な木材利用を推進する 建築で使用する資材や建材は、製造や輸送過程での二酸化炭素排出量の小さなものを選 ぶ。また、木材の積極的利用によって炭素の固定蓄積量を増大させることで、大気中の 二酸化炭素を削減する。そして、解体時においても材料の再利用を積極的に推進する。 ⑤ 建築は、オンサイトで排出削減できない場合はオフサイトで削減できるように計画する 建築がオンサイト(敷地内(オンサイト)でカーボン・ニュートラル化を実現できな い場合は、対象建築の敷地外(オフサイト)隣接地を含めた地区レベルでの対策やオ フサイト(敷地外)における削減対策についても検討することで設計の自由度を確保 しながらも、全体としてカーボン・ニュートラル化の実現を図る。その例として、外 部から再生可能なエネルギーを調達するために証書を活用したり、排出削減量認定制 度を用いて建物同士で排出削減量を融通し合う経済的手法がある。 ⑥ 建築の設計・施工・運用・改修・廃棄プロセスを通じて一貫したライフサイクル・マネ ジメントが可能なシステムの構築・活用を図る 建築のあらゆる情報を関連づけたデータベースを建築のライフサイクル・マネジメン トシステムに活用することで、設計・施工・運用・改修の連続した建築環境マネジメ ントが容易となる。こうしたデザインやマネジメントのプロセスの一貫したシステム の構築・活用によって、建築のカーボン・ニュートラル化を推進する。 ゼロカーボン建築:化石燃料ゼロを念頭に設計し、 必要なエネルギーは再生可能なものを利用 カーボンニュートラル建築:オフサイトでの措置も含めて ゼロカーボンを達成する ゼロカーボン エネルギー 消費部分 省エ ネ ゼロカーボン エネル ギー 消費部分 再生可能 エネルギー 利用 再生可能 エネルギー 利用 カーボンエネ 消費部分 カーボン クレジット等 オンサイト オンサイト 省エネ建築エネ消費量 省エネ建築エネ消費量 省エネ建築:エネルギー負荷を少なくする 一般建築 カーボン エネル ギー 消費 化石燃料 起源 エネルギー 供給 カーボン エネルギー 消費 化石燃料 起源 エネルギー 供給 一般建築エネ消費量 省エネ建築エネ消費量 計画論的省エネ手法 パッシブ環境基本性能 高効率機器等 カーボン エネ供給 オフサイト オフサイト 再生可能 エネルギー 地域供給 等 オフサイト 再生可能 エネルギー 地域供給等 オフサイト 省エ ネ 省エ ネ 図3 建築の省エネからカーボン・ニュートラル化へ

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7 方針2 カーボン・ニュートラル化を目指した地域や社会の構築 ① 都市や地域までを視野に入れた対策の推進 建築単体レベルの対策を越え、緑や水辺等を活かした環境負荷の低減、都市のコンパ クト化、地域レベルでのエネルギー供給、未利用エネルギーや面的エネルギーシステ ムの構築、再生可能エネルギーの導入、輸送エネルギーの低減等、地域や都市レベル の総合的な対策を実行することで、カーボン・ニュートラル化を目指したまちや社会 を構築する。その際、既成市街地の建物やインフラストラクチャー等を有効に利活用 しながら再生し、コンパクトな都市構造へと転換することによって、都市のスプロー ル化による資源・エネルギーの浪費を極力防ぐ。 ② 地域の気候風土への配慮と、その特性の利活用 日本は多様な気候風土を有し、建築はその影響を大きく受ける。この地域の気候や土 地の微気候を活用したパッシブな建築やまち並みの設計手法によって、冷暖房のエネ ルギー需要を低減させる。また、地域に特有の資源や材料を積極的に用い、再生可能 エネルギーを導入することは、温暖化対策に貢献するだけでなく、地域に根ざした建 築やまちの創出にも寄与する。 ③ 森林吸収源対策への貢献 森林は二酸化炭素の吸収源として貴重な資源であり、長期的な計画に基づく利用・育 成が不可欠である。その一方で、建築産業は木材の最大需要者であるが、建築に取り 込まれた木材は吸収した炭素を貯蔵する効果がある。違法伐採による木材の使用禁止 や、間伐材を含めた国産材の積極的利用など、建築における適正な木材利用を通して、 森林吸収源対策に貢献する。 ④ 情報・経済システムの活用 温室効果ガスの排出に関する情報公開や、近年普及が進んできた建物環境性能のラベ リングによる可視化等は、社会的な意識変革の上で大変大きな効果があり、最近では それがさらに不動産の市場評価と連動する気運が高まっている。一方、建築への直接 規制は有効な手段だが、より高い目標を実現するためには便益を伴う経済的インセン ティブも欠かせない。また、それぞれの立地特性を活かした対策を有効に評価するた めには、個々の建物における二酸化炭素排出削減量の認証、クレジット化やクレジッ ト購入のシステムも、条件が整えば融通性の高い手法となりうる。 ⑤ ライフスタイルの変革 建築のエネルギー消費は、関連する建物性能の善し悪しだけではなく、建物利用者の 属性や使い方に大きく左右される。利便性や快適性の追求は、と、過度な都市化の進 行は自然と隔絶されたエネルギー多消費型のライフスタイルを生み出してきた。カー ボン・ニュートラル化の実現にはライフスタイルの変革も必要であり、その反省に立 ち、今後は森林や農地とも共生するライフスタイルを再構築する必要がある。建築・ まちづくり建物性能の改善だけでなく、エネルギーに依存しないライフスタイルも含 めたの提案を行い、・実践・マネジメントの各段階で、このような視点に立った取り組 みを利用者・や市住民とともにその実践を推進するしていく必要がある。都市の緑化 を進める等により、また、特に幼少期から子どもの生活環境を健全化し、自然と順応 したライフスタイルを育むこともていくことは重要である。 ⑥ 市民とともに描く 2050 年の長期的な地域や社会像の共有化 我が国は、近年極端な少子高齢化が進行し、人口減少社会を迎えている。また、地方 都市における中心市街地の空洞化や農山漁村の過疎化は大きな社会問題となって久し

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8 い。すなわち、従来の人口増加を前提としてきた社会構造や将来計画を、新たなパラ ダイムの下に根本的に見直さなければならない時代に入っている。長期に及ぶ地球温 暖化対策はこうしたのようなライフスタイルや社会構造の変革とも不可分であり、将 来の建築や地域像を市民とともに描くことが不可欠である共有化していかなければな らない。

Ⅳ.行動計画の枠組み

建築は所有者や利用者の生命や私的財産を保護するだけではなく、地球温暖化防止をはじ め、地域や地球そのものの環境を保護する公共財的な存在にならなければでなければならな い。すなわち、建築をカーボン・ニュートラル化することで二酸化炭素の排出を削減し、地 球温暖化防止に寄与することによって、建築は高い公共性を具備することができる。 そのために、生活様式や地域、社会制度と深く係る建築の地球温暖化対策は建築主や建築 関係者だけではなく、社会全体として取り組むことが不可欠である。そこでこのような見地 に立ち、建築に関わる者の我々は、そのための意思表示として「建築分野の地球温暖化対策 ビジョン 2050」を広く社会に向けて提言するとともに、その実現に向けた自らの行動計画の を策定し推進する。その枠組みは以下の通りである。 ① 研究開発 建築の飛躍的な省エネルギー化と大胆な再生可能エネルギーの導入、そして大幅な長 寿命化を実現するための技術開発と総合化の研究を行う。また、建築だけではなく、 2050 年に向けた社会像とシナリオを描きながら、対策実現のロードマップを作成する。 ② 政策提言 建築における地球温暖化対策の実効性が確保されるよう、規制的手法から情報的手法 や・経済的手法による誘導策まで、海外の事例等も踏まえながら政策提言を行う。対 策を導入するために要する費用負担の考え方を整理し、政策に反映させる。 ③ 人材育成 企画、設計、施工、運用等の業務に携わる専門家や学生を対象に、建築分野における 地球温暖化対策の意味を理解し、地球温暖化対策に関する知識や技法を身につけられ るような人材育成を行う。 ④ 情報発信 施主や利用者となる一般市民に対しても、地球温暖化対策における建築の重要性や効 果を分かりやすく伝えられるために、ラベリング等情報の提供や公開に努める。また、 建築や都市・地域における市民生活が地球温暖化と深い関わりのあることを、環境教 育等の機会を通して周知する。 ⑤ 横断的連携 建築の地球温暖化対策を推進するためには、設計や建設、メンテナンスに関わる専門 家だけでなく、材料の生産者や供給者、設備機器メーカー、エネルギー供給事業者な どの建設関係者はもとより、建築主、利用者、地域住民、行政、不動産・開発事業者、 金融業者等の様々なステークホルダーによる共通した理解と協力・協働が不可欠であ る。そのための横断的連携を図る。 ⑥ 国際的連携

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地球温暖化を防止するために建築のカーボン・ニュートラル化を世界共通の目標とし て共有し、実践できるように、世界の地域や国々との緊密かつ継続的な連携を図る。 また、日本固有の風土や気候の中で育まれた建築文化を活かしながらこの目標を達成 していくことで、多様な建築や地域の解決策を提示していく。

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10 究極目標「長期的な気候変動の抑制」 世界全体で温室効果ガス排出量を半減 2050年建築分野のカーボンニュートラル化 ① 新築建築は、今後10~20年の間に二酸化炭素を極力排出しないよう、カーボン・ニュートラル化を推進する ② 既存建築も含め2050年までに建築全体のカーボン・ニュートラル化を目指す ③ 建築を取り巻く地域や社会まで含めたカーボン・ニュートラル化を目指す エネルギー消費の最小化と再生可能エネルギーの導入 運用対策(①省エネルギー、②再生可能エネルギー)と建設対策(③長寿命化、④エコマテリアル) 経済的手法の活用・ライフサイクルマネジメントの構築 ・都市や地域までを視野に入れた対策 ・情報・経済システムの活用 ・地域の気候風土への配慮と利活用 ・ライフスタイルの変革 ・森林吸収源、炭素固定対策への貢献 ・長期的な地域や社会像の共有化 方針1 建築のカーボン・ニュートラル化に向けた計画・設計・施工・運用の方針 方針2 カーボン・ニュートラル化を目指した地域や社会の構築

建築分野の地球温暖化対策ビ ジ ョ ン 2 0 5 0

行動計画 研究開発、政策提言、人材育成、情報発信、連携

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1 提言「建築分野の地球温暖化対策ビジョン 2050」(案)への意見回答 地球温暖化対策会議 ≪環境工学委員会からの意見≫ Ⅱ.提言の背景

Ⅱ.2) 究極の目標は「気候安定化」

「温室効果ガスの排出量を 2050 年までに世界全体で半減すること」

しかし、実際にそれで良いのかは疑問。本当の気候安定化を求めるなら、このようないい加

減な政府の目標に関わることなく、もっと科学的に独自の目標を設定するべき。それは実際

の大気中に含まれる温室効果ガスの濃度を適切な大気の温室効果に保つものに戻すこと、た

とえば CO2 濃度を 300ppm に戻す、と言うような設定にすることが必要。

->IPCC 第 4 次評価報告書は、海面および陸上の自然吸収量は化石燃料起源の人為排出量の 43%であることが示されており、人為排出と自然吸収のバランスをとるには最低でも 50%削 減は必要になることを記述する。 ・修正文 2)究極の目標は「気候安定化」 1997 年の COP3*4において締結された京都議定書は、国際社会が地球温暖化の問題に共同で立 ち向かった歴史的な第一歩であった。しかしながら、究極的には「我々人類がいかにして気 候安定化を図るか」が目標とすべき課題である。その結果、最近では IPCC 第 4 次評価報告書 の指摘を踏まえ、人為的排出量を自然の吸収量と同程度まで減らせるように温室効果ガスの 排出量を 2050 年までに世界全体で半減することが目標となりつつある。

究極の目標として「気候安定化」というのは言いすぎで、ここは「気候抑制」あたりにとど

めておくべきと考えられます。

->「安定化 stabilization」という表現は IPCC で頻繁に使われる用語ではあるが、今回は 「気候変動の抑制」に修正 Ⅱ.3) 日本の最近の目標

「先進諸国は 50%を上回る大きな排出量の削減目標を掲げ」

->修正 Ⅱ.4)「低炭素社会」の実現

「技術的可能性は様々な形で検討されている。」

->修正

「地域の特性を活かした取り組みをいかに相互補完させながら」

->修正 Ⅱ.5) 建築分野の責任

「建築物由来(において発生する)の二酸化炭素」

->修正

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2 Ⅱ.6) 持続可能な資源利用

「しかし、いずれ枯渇する・・・依存することの限界と?」

「いずれ枯渇する有限の非再生可能資源に依存することの限界を前に」の部分:資源枯渇よ

りも CO2 を排出する再生不可能なエネルギーを使うことの環境影響を問題視している話の流

れからすると、資源枯渇の話を出す必要がないように思われる。

->地球温暖化問題を多面的にとらえるための記述として残す。

「ますます未来の予測を不確実にする。」

->原文「不確実な未来を予測させる。」を尊重する。

「従って、そのライフサイクルを通じて」

->修正 Ⅱ.7) 持続可能な社会の構築

「生物多様性の喪失や、身近な生態系の変化も」

->修正

「このような革命的な社会変化」

->修正「急激な」

「バックキャスティング」「」書きするほどのものではない、当たり前の概念。

->修正

Ⅱ.8) 地球温暖化防止と(、)社会資本としての建築

->修正

「温室効果ガス排出削減の第一約束期間」

->修正

Ⅱ.9) 建築分野における世界の取組み

->修正

「現代社会においても新しい技術を駆使しながら」

->修正

「低炭素社会に貢献しなければならない。」

->修正

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3 Ⅲ.提言

「カーボン・ニュートラル化」ということばについて

「カーボン・ニュートラル」ということばが説明もなく使われているが、提言の相手として

広く一般の市民も含めるのであれば、最初に定義を明確にしておくことが必要なのではない

か。また、別に次の意見:カーボン・ニュートラルは植物由来の燃料を使用した場合に、生

産時と消費時における二酸化炭素の吸収量と排出量が短期的に等しくなることを意味する。

そのままこのことばを建築に当てはめるのは適切な表現とは言えない。最終目標としてこの

ような方向もあり得るかもしれないが、実際には排出量の最少化、カーボン・ミニマイズと

呼ぶべきであろう。日本語で簡単に「低炭素化」だけでも十分。

->「カーボン・ニュートラル」は前文に出て、その定義は注として説明されている。低炭 素社会という用語は、政府の 60~80%削減という行動計画の中で使用されている。低炭素化 という用語を一般的な表現としてみれば抽象的であり、政府目標としてみれば建築はそれ以 上の目標が必要であるとの認識から、「カーボン・ニュートラル化」という表現を用いてい る。このことを明確化するため、注として「カーボン・ニュートラル」はエネルギーの消費 と生産における炭素収支において、年間を通しての排出がゼロになる状況や、他のプロジェ クトの削減とも組み合わせてゼロになる状況であることを補足する。

「われわれは戦略的に市場や社会を変革していかなければならない」とあるが、p.28~30 の

方針1、2の内容がどのように市場や社会の変革につながるか、あるいはつなげようとして

いるかについてさらに踏み込んで記述したほうがよいと思われる。

->記述追加 ・修正文 有限な地球の環境容量をベースに、バックキャスティングの手法によって導き出される目標 に向かって、我々は戦略的に建築の設計と評価を取り巻く市場や社会を変革していかなけれ ばならない。

図2は未整理の図。循環型社会、少子高齢化、中心市街地活性化など、思いつくままの現

状の課題が、どのように低炭素化と関連するかわからない状態で、ただ並べられているだけ。

まったく意味がわからない図になっている。

->2050 年の気候変動対策は、社会変動をも同時に考慮しながら多面的に取り組まなければ

ならないことを示す図として整理する。

目標の①の「二酸化炭素を極力排出しないカーボン・ニュートラル化」は完全に矛盾した

表現になっている。

->修正「二酸化炭素を極力排出しないよう、カーボン・ニュートラル化を推進する」

目標の②の「2050 年までに建築全体のカーボン・ニュートラル化を実現する。」と言い切

っていいのか。これは宣言なので、完全にできないと社会的責任を果たせないことになる。

植物由来の燃料だけを使うとか、再生可能エネルギーだけの問題ではない。すべての建築材

料をカーボン・ニュートラルにすると仮定したら、すべての建築をコンクリートも鉄も使わ

ない建築に変えるという意味か。不可能とは言わないが非常に非現実的。これもカーボン・

(15)

4

ミニマイズにするべき。③も同様。

->長期使用が大前提となるが、例えば鉄も電炉鋼にし、再生可能エネルギーで生産するこ とや炭素固定貯留という方法が考えうる。「実現」は「推進」とする。

方針1の②でいきなり電力のグリーン化と言うことばが登場するが、これは非常に不自然。

これは単に低炭素化または脱化石燃料化とでも呼ぶべき。

->「グリーン化」削除

最後の「二酸化炭素の排出を可能な限りなくし」という表現はおかしい。「可能な限り」に

続くなら「減らし」であろう。「なくし」と表現すれば、ゼロにすると言う意味であり、「可

能な限り」とは相容れない表現。また、「可能な限り減らし」ても、カーボン・ニュートラ

ル化は実現できない。5行目「直接取り込むべきものである。」

-> ・修正文 建築が消費するエネルギーを最小化しつつ、必要となるエネルギーは自ら再生可能なものに 転換していくことで、運用エネルギーの二酸化炭素の排出を可能な限り減らし、カーボン・ ニュートラル化を推進する。

方針1の③では「建築の建設に起因する」と書かれているが、一般に建設に起因すると言

えば建設時、つまり建築の生産時を意味する。建築の寿命の長期化によって減少する二酸化

炭素は生産時だけでなく、解体廃棄時も含まれるはず。これだけで「カーボン・ニュートラ

ル化」は実現できないので「低炭素化」にすべき。

->修正「建築の建設や廃棄に起因する」

方針1の④で最後の文、「そして」は小学生並みの作文。「さらに」または接続詞を何も

入れない方が良い。

->「そして」削除

方針1の⑤の「隣地を含めた地区レベルでの対策や敷地外(オフサイト)」という表現は

わかりにくい。単純に「対象建築の敷地外(オフサイト)」あるいは「対象建築の敷地外の

近隣地域(オフサイト)」程度でいいのではないか。

->修正「対象建築の敷地外(オフサイト)」

図3はつぶれてしまって見えないため、ほとんど解読不可能。

方針2の①は意味不明の文が多い。「緑や水辺等を活かした環境負荷の低減」とは具体的

に何を意味するのか。単なる雰囲気だけの表現に見える。

->削除

「面的エネルギーシステム」とは何か。都市計画が最もエネルギーの削減に効果を上げるの

は、コンパクト化等も含めて、交通体系の変革にある。交通に関する方向性や評価がまった

く入っていないのはおかしい。

->「面的エネルギー利用」は「地域レベルでのエネルギー供給、未利用エネルギーの活用」 に修正。

(16)

5 ->「輸送エネルギーの低減」追加。

方針2の②は2つの内容を無理に地域性として一つにまとめようとしている。一つは気候

的特徴であり、これは自然エネルギーや省エネルギー方策につながり、もう一つは地域資源

の活用による地元生産の考え方である。無理にまとめるより分ける方がわかりやすい。

->地域に視点をおくことを主眼としてまとめている。

方針2の③の「違法伐採による木材の使用禁止」を今頃、表面に掲げて良いものか。当然

過ぎることであり、「違法伐採の禁止」だけで十分。

->建築における「違法伐採による木材の使用禁止」を確保する枠組みがない現状では指摘 する必要がある。

方針2の④は非常にわかりにくい文章。たとえば「建築への直接規制」とは何を意味する

のか。

->「直接規制」は「規制」にする。

「それぞれの立地特性を活かした対策」とは何か。ここはもっと簡単に、エネルギー消費量、

二酸化炭素排出量の情報開示とそれに基づく二酸化炭素削減量のクレジット化を述べるだけ

で十分。

->修正。

方針2の⑤は前置きの説明が長過ぎ。また、都市化がすべて悪いわけではない。「森林や

農地と共生するライフスタイル」と言うのはかなり視点がずれている。都市の中でもそれを

活かした省エネルギー型ライフスタイルがある。

また、最後の子どもの育成環境の話はここではまったく意味を持たない。ライフスタイルの

見直しは必要な方針であるが、この内容は的外れなので、全面的な書き直しが必要。

-> ・修正文 建物利用者の利便性や快適性の追求は、自然と隔絶されたエネルギー多消費型のライフスタ イルを生み出してきた。カーボン・ニュートラル化の実現にはこうしたライフスタイルの変 革も必要であり、建物性能の改善だけでなく、エネルギーに依存しないライフスタイルも含 めた提案を行い、利用者や住民とともにその実践を推進していく必要がある。また、幼少期 からの生活環境を健全化し、自然と順応したライフスタイルを育むことも重要である。

方針2の⑥は説明がまわりくどい。より簡潔な表現が望まれる。また、基本的に「市民と

ともに描く」で良いのか疑問。住民参加のまちづくりの発想から来ていると思われるが、こ

れは非常にリスクが高い。将来を予測して時代にふさわしい社会像を多くの一般市民が描け

るとはとても思えない。

->「市民とともに描く 2050 年の社会像」を「長期的な社会の将来像の共有化」と修正する。

方針全般について:方針1、2の中にすでに入っているが、既存のストックや現状のシステ

ムを日常の運用や更新なども含めて低負荷になるようにマネジメントするという視点をもう

すこし強調(項目を立てるなど)してもよいのではないか。

(17)

6 ->既存のストック対策については「目標」には記述されているが、「方針」にも追加記述 する。 ・修正文 ③建築は、その寿命を長期化できるよう、設計、運用する 建物の寿命を可能な限り延ばすことで、建築の建設や廃棄に起因する二酸化炭素の排出を 抑制し、カーボン・ニュートラル化を実現する。そのためには、耐久性、耐震性、防災性を 高めることによって物理的な性能を向上させる。そして、新築の段階から将来の改修を考慮 し、スケルトン/インフィルを明確に分離する等、既存の構造体や部材を極力活用するとと もに、将来の市場で円滑に流通しうるようなフレキシブルな設計を行なう。また、既存スト ックに対しても、適切な改修を施すことによってエネルギー性能を向上させながら長寿命化 を検討していく。

(18)

7 Ⅳ.行動計画の枠組み

Ⅳの前文にある「・・・公共的存在でなければならない。」は少し言い過ぎ。地球温暖化の

問題が露見してからの話であり、それ以前に地球環境を保護するための建築などという概念

はほとんどなかったはず。「・・・公共的存在にならなければならない。」とすべき。

->IPCC の報告の通り、地球温暖化はすでに露見している。また、新たな建築の役割を提案 することもこの提言の意図するところではあるが、表現としては修正する。

次の段落の接続詞「しかしながら、」はまったく間違っている。接続詞なしでも良いが、こ

こで使うなら「そのために、」。

->修正。

次の文ではいきなり1人称で「我々は・・・宣言する。」になっているが、これはかなり異

様である。客観的な文章にできないものか。たとえば「このような見地に立ち、建築に関わ

る人間の意思表示として「建築分野の地球温暖化対策ビジョン 2050」を広く社会に向けて提

言するとともに、その実現に向けた行動計画を策定し、これを実施するものである。」

->修正

最後のフロー図の四角で囲まれた部分は問題ないが、上の方の枠外に小さな字で書かれて

いる、IPCC 第4次評価報告書とかバックキャスティングなどの6つのことばが、全体の流れ

の中でどのような意味を持つのかわからない。これらのことばを入れるなら、もっと考えた

図を書くべきであり、この状態にしたいならすべて削除した方が良い。

->6つのことば削除

(19)

8 ≪

材料施工

委員会からの意見≫

「特定の資材(木材)のみを偏重するのは、日本建築学会の提言としては望ましくな

いと思われます。」

木材以外の資材におきましても、化石系資源から製造された資材につきましては、

長い年月(例えば、長寿命化の目標となっている 200 年オーダー)を考えれば、自然

環境下におきまして、化石系資源から排出された二酸化炭素は、元の元素と結合して

安定な状態になります。たとえば、セメントクリンカー製造時、鉄鉱石の還元時に炭

酸カルシウムから放出された二酸化炭素は、長い年月を経て(場合によっては、10

年オーダーという期間)、再びカルシウムと結合して炭酸カルシウムになります。一

方、木材も数 10~数 100 年オーダーかもしませんが、自然環境下に放置しておきます

と、分解されて固定化した二酸化炭素を放出します。従いまして、カーボン・ニュー

トラルという概念は、化石系資源にも天然有機系資源にも成立し、化石燃料の使用量

が二酸化炭素の排出には問題となります。セメントクリンカーおよび鉄鋼の製造では、

それぞれ焼成および溶融に相当の化石燃料等を使用しますが、木材とて乾燥過程にお

いて 相当のエネルギーを消費しています。

以上より、特定の資材を偏重しない表現に修正すべきであると考えます。

木材は自然環境下で、もともと二酸化炭素の吸収、排出を繰り返しています。しか

し、自然環境下で、化石系資源は地上環境に影響を与えることなく、地下資源として

存在していたものです。自然界には二酸化炭素の吸収能力がありますが、地球温暖化

はその吸収量を人為起源の排出量が大きく上回っていることが原因となっています。

人為的な使用によって大気中に放出され、二酸化炭素濃度の上昇、地球温暖化の原因

を生み出した化石系資源はカーボン・ニュートラルとはいえません。

木材を自然環境下に放置すると分解されて固定化した二酸化炭素を放出するとい

うのは、木が森林の中のように野ざらし状態で倒れ腐れていく過程では起こりますが、

建築として管理された木材は固定し続けます。

木材の乾燥過程エネルギーを考慮しても製造段階の二酸化炭素は木造が少ないの

はデータより明らかです。

しかしながら、木材以外の資材についても、それぞれ優れた特性を有しており、鉄

もコンクリートも環境負荷低減策や耐久性向上が図られており、特にカーボン・ニュ

ートラル化に向けて重要なのは長寿命化となります。そのため、提言においても方針

1③で長寿命化をまずあげております。そして、その次の②において二酸化炭素排出

の少ない資材をあげた上で木材利用に言及しています。

(20)

9

出典:建物の LCA 指針、日本建築学会

参照

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