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中高・理科教育法における物理・地学分野の授業力 育成

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中高・理科教育法における物理・地学分野の授業力 育成

著者 青木 寿史

雑誌名 東京家政大学教員養成教育推進室年報

巻 5

号 1

ページ 215‑222

発行年 2018‑02‑28

出版者 東京家政大学教員養成教育推進室

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010192/

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中高・ 理科教育法における物理・地学分野の授業力育成

Fostering teaching skills of physics and earth science field in the junior / senior high school science teaching methods

栄養学科非常勤講師 青木 寿史

1.はじめに

 中学校・高等学校の理科教員には,学習指導要領に定められる領域(エネルギー,粒子,生命,地球)

すべての素養が求められる。この領域は,物理,化学,生物,地学の各分野に相当する。現実的には,こ のすべての分野を学ぶのは中学校までである。高等学校では選択科目になるため,すべての分野を学習す るカリキュラムが用意されていない限り,理科の教員でさえ,高校時代に全く触れていない分野が存在す ることになる。

 本学で理科教員免許状を取得できる環境教育学科と栄養学科管理栄養士専攻のカリキュラムの特徴とし て,化学と生物分野の授業が充実している。これは学科の設定意図としては当然のことといえる。一方 で,資格として理科教員免許状を取得するには,教育職員免許法施行規則に定められた物理学,化学,生 物学,地学の全領域を,実験を含めて履修しなければならない。

 本学で理科教育法を履修している学生の,高等学校における理科の履修科目は全国的な傾向と変わら ず,化学・生物分野の履修が多く,物理分野や地学分野が少ない。

 このような傾向から,中学校や高校基礎段階において,物理と地学の分野の授業を展開する場合,化学 や生物に比べて抵抗感のない程度までに授業力を育成したいと考えた。そこで,理科教育法の授業におい て,理論に固執せず,物理や地学に関するテーマや実験の関心を高め,他科目や生活と結びつけた授業展 開の実践事例を多く取り入れるよう工夫した。

2.高等学校における理科各科目の履修状況

 平成29年度の大学3年生は,高等学校において現行の学習指導要領で理数先行実施された平成24年度 高校入学の学年であり,多くの普通科における理科では,「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」

(いずれも標準2単位)から3科目が必履修である。

 その前(平成29年度の大学4年生・平成23年度高校入学生まで)の学習指導要領による教育課程では,

必履修科目は,「理科総合A」「理科総合B」(いずれも標準2単位),「物理Ⅰ」「化学Ⅰ」「生物Ⅰ」「地学

Ⅰ」(いずれも標準3単位)から理科総合を含む2科目であった。このときの履修状況は,文部科学省の 調査によると,物理Ⅰが3割弱,化学Ⅰが7割,生物Ⅰが6割強,地学Ⅰが1割弱の傾向であった。

 教育課程の改訂により,普通科においては化学基礎と生物基礎はそれぞれ9割以上,物理基礎が約 65%,地学基礎が約 35%の履修率になっている。教育課程の改訂によって,物理・地学分野に触れる生 徒が増えたとはいえ,化学・生物分野に比べれば,中学校のみの学習で終わっている生徒がまだ多い状況 である。

 一方,本学で化学・生物を中心に,物理・地学を含めて自然環境を広く学ぶ機会のある環境教育学科の 学生についてはどうだろうか。地学系科目である平成29年度の地質土壌学を履修している,高等学校現 行教育課程修了の3年生のうち27名について,高等学校における履修科目を調査した。その結果,化学 系科目(「化学基礎」の履修を含む)と生物系科目(「生物基礎」の履修を含む)は全員が履修していたが,

物理系科目(「物理基礎」の履修を含む)は14名,地学系科目(「地学基礎」の履修を含む)は11名であった。

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 さらに,本学で理科教育法を履修している平成29年度の3年生15名について,高等学校における履修 科目を調査した。この15名は先に記載の27名に一部重複する。15名については,化学基礎と生物基礎は 全員が履修していたものの,物理基礎は13名,地学基礎は4名になっている。なお,基礎を履修した後 に選択履修できる物理は4名,化学は13名,生物は10名が履修していた。地学は0であった。対象人数 が少ないので,はっきりとした傾向はいえないが,理科教員免許取得を目指す学生でも,化学・生物分野 の履修傾向がきわめて多く,続いて物理分野,そして地学分野がきわめて少ないことは全国的な傾向と変 わらないといえるだろう。この学年以前で理科教育法を履修した学生にも,全国的な傾向があてはまると 考えるなら,物理と地学の分野の履修率はもっと少なかったということになる。

表2 高等学校における科目の履修状況(平成25年度入学者抽出調査)

出典:文部科学省「平成27年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について」

表3 本学の地学系科目履修者における高校時代の履修科目(平成29年度 3年生 27名)

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全員が履修していたものの,物理基礎は 13 名,地学基礎は4名になっている。なお,基礎を履修した後に 選択履修できる物理は4名,化学は 13 名,生物は 10 名が履修していた。地学は0であった。対象人数が 少ないので,はっきりとした傾向はいえないが,理科教員免許取得を目指す学生でも,化学・生物分野の 履修傾向がきわめて多く,続いて物理分野,そして地学分野がきわめて少ないことは全国的な傾向と変わ らないといえるだろう。この学年以前で理科教育法を履修した学生にも,全国的な傾向があてはまると考 えるなら,物理と地学の分野の履修率はもっと少なかったということになる。

表2 高等学校における科目の履修状況(平成 25 年度入学者抽出調査)

出典:文部科学省「平成 27 年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について」

表3 本学の地学系科目履修者における高校時代の履修科目(平成 29 年度 3年生 27 名)

表4 本学の理科教育法履修者における高校時代の履修科目(平成 29 年度 3年生 15 名)

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全員が履修していたものの,物理基礎は 13 名,地学基礎は4名になっている。なお,基礎を履修した後に 選択履修できる物理は4名,化学は 13 名,生物は 10 名が履修していた。地学は0であった。対象人数が 少ないので,はっきりとした傾向はいえないが,理科教員免許取得を目指す学生でも,化学・生物分野の 履修傾向がきわめて多く,続いて物理分野,そして地学分野がきわめて少ないことは全国的な傾向と変わ らないといえるだろう。この学年以前で理科教育法を履修した学生にも,全国的な傾向があてはまると考 えるなら,物理と地学の分野の履修率はもっと少なかったということになる。

表2 高等学校における科目の履修状況(平成 25 年度入学者抽出調査)

出典:文部科学省「平成 27 年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について」

表3 本学の地学系科目履修者における高校時代の履修科目(平成 29 年度 3年生 27 名)

表4 本学の理科教育法履修者における高校時代の履修科目(平成 29 年度 3年生 15 名)

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全員が履修していたものの,物理基礎は 13 名,地学基礎は4名になっている。なお,基礎を履修した後に 選択履修できる物理は4名,化学は 13 名,生物は 10 名が履修していた。地学は0であった。対象人数が 少ないので,はっきりとした傾向はいえないが,理科教員免許取得を目指す学生でも,化学・生物分野の 履修傾向がきわめて多く,続いて物理分野,そして地学分野がきわめて少ないことは全国的な傾向と変わ らないといえるだろう。この学年以前で理科教育法を履修した学生にも,全国的な傾向があてはまると考 えるなら,物理と地学の分野の履修率はもっと少なかったということになる。

表2 高等学校における科目の履修状況(平成 25 年度入学者抽出調査)

出典:文部科学省「平成 27 年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について」

表3 本学の地学系科目履修者における高校時代の履修科目(平成 29 年度 3年生 27 名)

表4 本学の理科教育法履修者における高校時代の履修科目(平成 29 年度 3年生 15 名)

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表4 本学の理科教育法履修者における高校時代の履修科目(平成29年度 3年生 15名)

3.中学校理科における苦手意識

 現職の公立中学校の理科教員に,科目による指導の苦手意識を調査した結果がある。平成 20 年度に,

科学技術振興機構理科教育支援センターと国立教育政策研究所教育課程研究センターが共同調査した,中 学校理科教師実態調査の結果を表5に示す。

表5 理科各領域の指導に関する調査結果(公立中学校理科教員572人)

出典:科学技術振興機構理科教育支援センター,国立教育政策研究所教育課程研究センター

「中学校理科教師実態調査 集計結果」(平成20年9月)

全員が履修していたものの,物理基礎は 13 名,地学基礎は4名になっている。なお,基礎を履修した後に 選択履修できる物理は4名,化学は 13 名,生物は 10 名が履修していた。地学は0であった。対象人数が 少ないので,はっきりとした傾向はいえないが,理科教員免許取得を目指す学生でも,化学・生物分野の 履修傾向がきわめて多く,続いて物理分野,そして地学分野がきわめて少ないことは全国的な傾向と変わ らないといえるだろう。この学年以前で理科教育法を履修した学生にも,全国的な傾向があてはまると考 えるなら,物理と地学の分野の履修率はもっと少なかったということになる。

表2 高等学校における科目の履修状況(平成 25 年度入学者抽出調査)

出典:文部科学省「平成 27 年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について」

表3 本学の地学系科目履修者における高校時代の履修科目(平成 29 年度 3年生 27 名)

表4 本学の理科教育法履修者における高校時代の履修科目(平成 29 年度 3年生 15 名)

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3.中学校理科における苦手意識

現職の公立中学校の理科教員に,科目による指導の苦手意識を調査した結果がある。平成 20 年度に,科 学技術振興機構理科教育支援センターと国立教育政策研究所教育課程研究センターが共同調査した,中学 校理科教師実態調査の結果を表5に示す。

表5

理科各領域の指導に関する調査結果(公立中学校理科教員 572 人)

出典:科学技術振興機構理科教育支援センター,国立教育政策研究所教育課程研究センター

「中学校理科教師実態調査 集計結果」(平成 20 年9月)

この結果によると,各分野の指導が「やや苦手」「苦手」の回答が,物理 31%,化学 13%,生物 28%,

地学 44%になっている。「苦手」だけで見ると,物理が 2.8%,化学が 0.4%,生物が 1.75%,地学が 5.6

%になっており,物理の苦手意識,さらには地学の苦手意識が大きいことがわかる。また,この調査では,

教職経験年数ごとでの集計もあり,「やや苦手」「苦手」は,物理においては,経験年数の若い教員ほど 多く,経験とともに苦手意識が縮小する傾向が見られる。一方で,地学においては,経験年数によらず,

どの世代でも苦手意識が高い。

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この結果によると,各分野の指導が「やや苦手」「苦手」の回答が,物理 31%,化学 13%,生物 28%,

地学44%になっている。「苦手」だけで見ると,物理が2.8%,化学が0.4%,生物が1.75%,地学が5.6%

になっており,物理の苦手意識,さらには地学の苦手意識が大きいことがわかる。また,この調査では,

教職経験年数ごとでの集計もあり,「やや苦手」「苦手」は,物理においては,経験年数の若い教員ほど多 く,経験とともに苦手意識が縮小する傾向が見られる。一方で,地学においては,経験年数によらず,ど の世代でも苦手意識が高い。

4.理科教育法における展開

(1)専門教育をどう結びつけるか

 理科の教員免許を取得しようとする学生は,環境教育学科,または栄養学科管理栄養士専攻に属してい る。カリキュラムの構成上,学生は化学や生物分野の専門性が高く,素養を持っている。理科教育法にお いては,単に中学校・高校の物理・地学分野の授業展開を学ぶのではなく,化学や生物の専門性を生かし,

関連づけての授業にしたい。そもそも,自然は物理・化学・生物・地学がすべて含まれ,関連し合ってい ることは自明である。それを,カリキュラム上,単元に分けているに過ぎない。中学校・高校は,専門家 を養成する機関ではなく,広く学ぶことで,自らの道を選択していくものである。

 したがって,化学や生物分野を得意とする学生でも,中学校や高校基礎段階において,物理と地学の分 野の授業を展開する場合でも抵抗なく臨める程度までに授業力を育成しておきたい。中学校はもちろん全 分野を担当するし,高校の基礎科目は教員の専門分野によらず誰でも担当できることを想定している。教 師用の教材も,専門分野ではなくとも使えるように開発研究されている。地学基礎分野の教材には,その 傾向が特に強い。

 そこで,授業力育成の方策として,理科教育法の授業において,理論に固執せず,物理や地学に関する テーマや実験への関心を高め,他科目と関連づけた授業展開の実践事例を多く取り入れるよう工夫した。

これにより,学生自身が理科(自然科学)を広く総合的に見られる力をつけることを意識した。

(2)現場で生かせる授業展開を意識して

 物理学や地学の事象に関する基礎的,専門的な授業は,教員免許取得のための教科に関する必修科目と しても設定されている。本学における設定は表6のとおりである。

表6 本学における理科免許取得のための物理学・地学系必修科目

(高)は高校免許取得要件

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4.理科教育法における展開

(1)専門教育をどう結びつけるか

理科の教員免許を取得しようとする学生は,環境教育学科,または栄養学科管理栄養士専攻に属してい る。カリキュラムの構成上,学生は化学や生物分野の専門性が高く,素養を持っている。理科教育法にお いては,単に中学校・高校の物理・地学分野の授業展開を学ぶのではなく,化学や生物の専門性を生かし,

関連づけての授業にしたい。そもそも,自然は物理・化学・生物・地学がすべて含まれ,関連し合ってい ることは自明である。それを,カリキュラム上,単元に分けているに過ぎない。中学校・高校は,専門家 を養成する機関ではなく,広く学ぶことで,自らの道を選択していくものである。

したがって,化学や生物分野を得意とする学生でも,中学校や高校基礎段階において,物理と地学の分 野の授業を展開する場合でも抵抗なく臨める程度までに授業力を育成しておきたい。中学校はもちろん全 分野を担当するし,高校の基礎科目は教員の専門分野によらず誰でも担当できることを想定している。教 師用の教材も,専門分野ではなくとも使えるように開発研究されている。地学基礎分野の教材には,その 傾向が特に強い。

そこで,授業力育成の方策として,理科教育法の授業において,理論に固執せず,物理や地学に関する テーマや実験への関心を高め,他科目と関連づけた授業展開の実践事例を多く取り入れるよう工夫した。

これにより,学生自身が理科(自然科学)を広く総合的に見られる力をつけることを意識した。

(2)現場で生かせる授業展開を意識して

物理学や地学の事象に関する基礎的,専門的な授業は,教員免許取得のための教科に関する必修科目と しても設定されている。本学における設定は表6のとおりである。

表6

本学における理科免許取得のための物理学・地学系必修科目

(高)は高校免許取得要件

理科教育法においては,上記の科目を生かしつつ,中学校・高校で授業展開するにあたり,学生自身の 関心を高め,苦手意識,抵抗感を少しでもなくすことを目的のひとつとし,講義には演示実験を取り入れ た。この演示は,現場での授業にも生かせる内容を意識した。

理科教育法は講義室での授業なので,多くの準備が必要なもの,大がかりなもの,高価な実験器具を使

うものはできない。この状況は決して不利・不便なのではなく,身近な材料,器具を用いた実験を紹介す

ることに集約できる。これは,中学校や高校の普通教室(実験室ではない通常のホームルーム教室)でも

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 理科教育法においては,上記の科目を生かしつつ,中学校・高校で授業展開するにあたり,学生自身の 関心を高め,苦手意識,抵抗感を少しでもなくすことを目的のひとつとし,講義には演示実験を取り入れ た。この演示は,現場での授業にも生かせる内容を意識した。

 理科教育法は講義室での授業なので,多くの準備が必要なもの,大がかりなもの,高価な実験器具を使 うものはできない。この状況は決して不利・不便なのではなく,身近な材料,器具を用いた実験を紹介す ることに集約できる。これは,中学校や高校の普通教室(実験室ではない通常のホームルーム教室)でも 演示できるということになる。本にはあまり載っていない実験や,いくつかの研究グループでつくられた 実験などを紹介するようにしてきたが,近年の中学校の教科書に掲載され始めている実験もある。しか し,今の大学生が中学生だった頃にはほぼ掲載されていないものなので,学生自身も見た経験がないとい うものがほとんどのようであった。

 演示では,中学校・高校の授業で生かせるよう,次のようなことなどを付け加えて解説した。

道具の選び方と入手方法 手作りの工夫

理科教材として販売されている器具との相違 授業での生かし方の例

1つの単元に固執しない使い方(同じ器具でも視点を変えれば複数の単元で使えること)

 この演示においては,授業での使い方を決めつけるものではなく,1つの例であることを強調し,どの ようにでも工夫できることを伝えた。だからこそ,幅広く関心を持つことで,自身での工夫の幅も広がる ということを知ってほしいという意図である。

(3)演示の事例

 実際に講義室で行った演示の例を次に示す。それぞれの演示と視点,単元の広がりや生活との関連を添 える。実験室ではない条件下での演示であることが前提である。

身長は立って計るときと寝て計るときでは異なる  →重力の存在を体感

アルミの飲料缶を斜めに立たせる  →力のつり合いの導入と考察 フランクリン沸騰器

 →温度・圧力・状態変化・雲の発生などへ多用可能 ペットボトルで自作した浮沈子

 →目盛り付き試験管を使うことでボイルの法則へ発展 ループコースターのモデル(クロソイド曲線)

 →力学的エネルギーから,体に作用する重力加速度の負担と生物の関連へ発展 ビッグバルーンをブロアーの風で浮かばせる(ベルヌーイの定理)

 →斜めでも浮く理由から,ボールを吹き上げるおもちゃ,飛行機の翼の形などへ発展 傘袋を瞬間的に膨らませる(ベルヌーイの定理)

 →空気の動き方から,駅のホームに列車が進入するときの風圧などへ発展 手持ち振り子(単振り子)

 →周期計測前に,振動がぶれないための工夫を試行 自作の滑走体(等速直線運動)

 →厚紙とポリ袋から1人ずつ作成して実験可能

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自作の反応時間測定定規

 →等加速度直線運動や自由落下運動と,生物の反応時間との関連 コイルモーター

 →安価な道具で1人ずつ作成して実験可能 小型手回し発電機で電球とLEDの違いを比較  →発電のための力の違いと回転の向きの関係を体感 過電流の振り子(ネオジム磁石とアルミ板)

 →ネオジム磁石の強さの体感と,IHや非接触充電のしくみへ発展 割り箸ウェーブマシン

 →すだれ式ウェーブマシンの代用品の自作と,波動の可視化,地震波への応用 風船電話と針金電話

 →糸電話の発展型による音波の体感 念力振り子

 →手持ちの共振振り子の自作と,ブランコや建築物との関係,音合わせの理論 沖縄の民芸品・教訓茶碗(サイホンの原理)

 →プラスチックコップで仕組みを考えて工作,水洗トイレの構造などへ発展 液状化のモデル

 →手持ちの水槽で水と砂で実験し,ビーズや小豆を用いる実験と長所を比較 地震の発生原因

 →岩石の破壊を小型万力とチョークで再現 化石の復元

 →大きさ1m程度の古生物や足跡を実物大に描き,大きさや色,行動を再現 気圧のモデル

 →アナログ(針)のキッチン用秤を縦に重ねて気圧の定性的な鉛直分布を再現 低気圧のモデル

 →ビーカーに茶殻を入れて渦をつくり,低気圧場での空気の対流を再現 高潮のモデル

 →水槽に立てたアクリルパイプ内を簡易ポンプで減圧して台風による吸い上げ効果を再現 上空ほど気圧が低いことを可視化

 →真空調理器を用いてマシュマロを減圧・加圧して空気の膨張・収縮を可視化 雲の発生モデル

 →教室全体を使い,ペットボトルロケットを用いて雲粒・雨滴の生成理由を再現 前線のモデル

 →水槽で1℃差の水2種で前線の移動と遷移層(前線面)の形成を再現 太陽と地球の大きさ比較

 →赤い観測用気球(パイロットバルーン)を膨らませ,微小球と比較 水の沸点の利用

 →水入りの紙皿やゴム風船に火を近づけ,紙皿の料理などとの関連を考察 状態変化

 →カセットボンベのブタンを試験管に出して物質の状態変化と加圧状態を体感 水入りのポリ袋

 →鉛筆や針を刺すことで,ポリエチレンの性質や穴の大きさと水分子の関係を考察

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(4)演示実験の理解と感想

 教室でできる物理・地学系の演示実験を体験したことで,授業展開にどう生かせるかを学生にまとめて もらった。感想のような記述もあるが,そのまま紹介する。

 実験室ではなく,教室で行えるような身近なものを使用してできる実験をいろいろ知ることが できたので,中学生に教えるときに役に立つと思いました。

 授業中に教卓でできる演示が身近なものを使用して作れることを知れたので,今後に生かして いきたいと思った。

 生徒に見せる授業は楽しかったですし,自分でもやってみたいなど,とても興味のわく授業展 開で,実際に見せる大切さを学びました。

 さまざまな導入機材を見せていただき,こんな見せ方もあるのか!こんな身近なもので代用で きるのか!と新しい発見をすることができ,とても楽しかったです。見せていただいた実験で,

私も感じたように,生徒に「あ!」と言わせたいです。

 実験はどれも簡単でわかりやすく,楽しいものばかりでした。

 身のまわりのことや小学生でもできるような実験も使い方を工夫すれば授業のツールになるこ とを学びました。

 演示で行っていた実験では,コスト面での実験道具の工夫や,生徒が興味を持つような内容を 取り入れ,さらに,いろいろな授業に生かせる内容になっているところが,今後生かしていける と感じました。

 この授業を受けて,液状化や前線のでき方を演示や模型で初めて見ました。ふだんでは見るこ とのできない現象を授業で可視化することの大切さに気づき,自分がこの先授業をするときは手 作りの模型などを使ってみようと思います。

 難しい実験よりも,日常で使うものであったり,簡単につくることができる実験道具だったの で,私たちにも身近に感じ,とても興味を持つことができました。

 +αのオリジナルの重要性を感じました。

 実験用の道具を自分で手作りするという考えがなかったので,値段や材料などとても勉強にな りました。

 実験器具や演示実験は,身のまわりのもので代用がきくというのもためになった。決まったも のでしかできないだと,身近な生活と結びつけにくいけど,身近なものを使うことで,あ!ここ にも理科が!!という,興味・関心につながると思った。

 教材を手作りすることができるアイディアも参考になりました。

 お金を使わず工夫して実験をするというのは,この授業を受けるまで考えてもみませんでした。

 身近なもので体験できた実験は,驚きであるとともに,発想の転換につながる経験でした。実 際に目で見ることで生徒が新鮮な驚きを感じ,「理科っておもしろい!」という思いをもつきっ かけになると感じました。

 実習中は,演示を見せて興味をもってもらう授業を思い出し,授業をつくることができました。

5.まとめ

 物理・地学分野の授業展開について,この分野の指導に不安を感じる学生でも,自身が楽しみながら生 徒の関心も高められるような方策を探った。教室に持ち込める簡易的な実験や,予算をかけずに手間の少 ない手作りの道具を紹介してきた。この授業後の学生の意見や感想を見ると,理科の実験に対し,これま では「構えている」印象を受ける。教科書に掲載されている既製の実験器具を用い,その単元に見合った

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展開をしていくことが頭に刻まれている。もちろん,定量的な実験を行うには,既製の器具を用いなけれ ばならないし,器具の使い方を学ぶことも大切である。ふだん学生が取り組んでいる大学の実験では当然 である。一方で,理科の専門家をつくるのではない中学生や高校生の授業を考えるとき,発想も変えなけ ればならない。

 1つの実験器具は1つの授業単元だけに用いるものではなく,工夫,発想,視点を変えれば,どんな単 元にも,化学や生物の授業にも生かせることを,この授業を通して捉えたようである。筆者としては,こ れを入り口として,物理・地学分野の授業を楽しみつつ展開を考えられるようになることを期待してき た。現場の理科教員も,指導分野によって得手不得手があることは否めない。これから理科の教員免許を 取得しようとする学生に対し,科目による抵抗感を少しでも減らし,物理・化学・生物・地学のどの分野 も基礎的な範囲は均等に自信を持って授業に臨める力を育成するよう,検討を続けていきたい。

参考文献

独立行政法人科学技術振興機構理科教育支援センター・国立教育政策研究所教育課程研究センター,

2008;平成20年度中学校理科教師実態調査集計結果(速報)

藤林紀枝・中井睦美・藤本光一郎・中井均・星博幸・天野和孝・七山太・牧野泰彦・伊藤孝・山北聡・

酒寄淳史・川村寿郎・林信太郎・池田保夫・高木秀雄,2010;知識社会における理科教育・地学分 野の重要性と教員養成における問題点,地質ニュース 669号,69-73

文部科学省,2015;平成27年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について 富田晃彦,2017;物理・地学嫌い克服は教員養成から,『学術の動向』2017年1月号「これからの高校

理科教育のあり方」をめぐって,52-54,『学術の動向』編集委員会編集 日本学術協力財団

参照

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