物流連 ニュースリリース 平成 23 年 11 月 1 日
『広域災害に対応し得る物流システムの構築の提言』を発表
当連合会では、3 月 11 日に発生した東日本大震災の経験を踏まえて、「広域災 害対策小委員会」を立ち上げ、震災後の物流事業者の活動について精査すると ともに、救援物資輸送等の緊急支援活動での問題点と課題について検討を重ね てまいりました。 これら精査や検討の結果をもとに、この度、今後の広域災害に対応し得る物 流システム構築に関して、「提言」としてとりまとめ、発表しましたので、お知 らせ致します。 尚、本提言は、10 月 25 日、奥田国土交通副大臣に事前にご説明しております。 社団法人日本物流団体連合会 T E L : 0 3 - 3 5 9 3 - 0 1 3 91 平成23年11月
広域災害に対応し得る物流システム構築の提言
~東日本大震災の経験を踏まえて~
社団法人日本物流団体連合会 1.はじめに 東日本大震災においては、救援物資の輸送や集積拠点の運営をはじめとして、物流 事業者の精力的な活動が行われた。その結果、被災者に必要な物資を的確に届けると いう物流の重要性が認識されたところである。 しかし、被災地での救援物資等については、集積拠点までの輸送や、集積拠点の運 営、避難所等への端末輸送の実務等において、様々な問題が生じ、その対応の難しさ が明らかになった。 そこで、社団法人日本物流団体連合会では、傘下の各事業者や協会等の声をもとに 今回の大震災から学ぶべき課題や改善点、要望などを確認し、今後起こり得る広域災 害に備えて適切な物流システムを構築すべく、関係各所に対し、下記の提言をするも のである。 2.震災後の物流事業者の活動 今回の震災において、物流業界は総力をあげた取組みを行った。緊急支援活動では、 救援物資等の送り出しや県単位で設けられた集積拠点(1次集積所)までの緊急輸送 を、政府からの要請に対して延べ合計 1,925 台(5 月 9 日に終了)、地方自治体等公的 機関からの要請に対して延べ合計 8,702 台(6 月末まで)のトラック輸送で対応した ほか、貨物鉄道輸送(3 月 17 日から 4 月 20 日まで救援物資 326 コンテナの無賃輸送 を実施)やフェリー輸送(3 月 12 日より自衛隊員・消防員・警察官とその車両を輸送) でも対応した。内航海運は 4 月末までに、タンカーが燃料油、LPG 等を約 204.7 万ト ン、一般貨物船が畜産飼料約 6.2 万トン、RORO(注:1)/自動車船が緊急車輌、建 設機械など約 230 台の輸送を行った。港湾運送は政府の要請により緊急物資搬入体制 を確保したものの、岸壁、荷役施設に被害が発生していたため手荷役で対応し、貨物 鉄道はライフライン確保のため、4 月 21 日に東北線が運転再開するまでの間、3 月 18 日以降、根岸から日本海側を経由して盛岡まで石油列車で合計 37 千 kl を輸送し、3 月 25 日からは根岸から新潟を経由し、通常は貨物輸送を行っていない磐越西線を通 って郡山まで合計 20 千 kl の輸送を行った。国内航空も救援支援者や救援物資、非常 (注:1)ROROとは「RO-RO船」を言う。Rool-on/Rool-off ship の略で、フェリーのようにランプを備え、トレーラーなどの車 両が荷役機器なしでそのまま乗降できる貨物船のこと。2 用補修部品等の輸送を行った。また、外航海運は、海外からの支援物資等の無償輸送 (コンテナ 318TEU(注:2))に協力するとともに、倒壊した冷蔵倉庫の代用として、冷 凍コンテナ 51 本を寄贈した。このような政府・地方自治体の要請による輸送に加え て、個別企業やボランティア団体等からの依頼による輸送にも対応した。 集積拠点(1次集積所)の運営・管理では、地方自治体からの要請により、トラッ ク協会あるいは倉庫協会を通じトラック運送事業者、倉庫事業者が協力をした。 更に、市町村単位で設けられた2次集積所までの輸送やその集積所の運営・管理、 そこから避難所や自宅避難者までの輸送でも、トラック運送事業者が協力をした。 救援物資の輸送に加えて、生産をはじめとする産業活動の維持・継続に対しても、 トラック輸送、内航海運、貨物鉄道、航空の各物流事業者が緊急輸送や代替輸送等で 対応した。 このように、今回の震災直後の救援物資輸送等の緊急支援活動はもとより、現在の 復旧・復興に向けたステージにおいても、物流事業者が極めて重要な役割を担ってい る。 3.救援物資輸送等の緊急支援活動での問題点と課題 今回の救援物資輸送等の緊急支援活動においては、特に初動期において物流システ ムが適切に機能せず、被災地・被災者までなかなか物資が届かない、あるいは物資が 不足・滞留する等といった問題が生じた。問題の具体例を以下に示す。 ①1次集積所までの輸送上の問題 救援物資の緊急輸送は、原則として政府や自治体等の要請に対応して行われたが、 その要請内容の情報に不備な点が多く、車両の手配や積荷作業に支障をきたすケー スがあったほか、輸送途上において納品先が変更になることもあった。また、配送 先にも納品情報が適切に伝わっていないケースがあり、伝わっていたとしても、集 積所のスペースや受け入れ態勢が十分ではなかったため、納品に時間を要したなど の混乱が生じた。 更に震災直後には、トラックの燃料(軽油)が被災地側のみならず出発地側でも 不足したため、車両の迅速な手配や実際の運行が困難となったケースが多々みられ た。 ②1次集積所の管理・運営上の問題 宮城県では、1次集積所は、当初想定していた施設が津波の被害を受けたり、遺 体安置所等別の利用をせざるを得なかったため、自治体の既存施設を転用する形で スタートしたが、物資集積所としては手狭なところが多く、しかも不慣れな自治体 (注:2)TEU(twenty-foot equivalent unit、20 フィートコンテナ換算)とは、コンテナ船の積載能力やコンテナターミナルの貨 物取扱数などを示すために使われる、貨物の容量のおおよそを表す単位。
3 職員が担当したため混乱が生じた。 そこで、急遽1次集積所として営業倉庫を活用する形に変更したが、そもそも空 きスペースが少なかった上、大半の営業倉庫が被災したこともあり、当初は品目別 に4箇所の倉庫からスタートするしかなかった。その後、箇所数を増加したものの、 倉庫が複数にわたり、救援物資の在庫が分散したことにより必要物資の積み合わせ 作業に時間を要し、また、納品データの情報が的確に伝わらなかったことなどから、 作業等が効率的に実行できなかった。 岩手県では、県のイベント施設を1次集積所として利用し、早期に管理運営に民 間のノウハウを導入したため、比較的混乱は少なかったものの、災害対策本部への 連絡なしに到着するトラックが多数あったことなどから、物資の余剰・滞留などの 問題が生じた。 ③2次集積所への輸送と集積所の管理・運営上の問題 1次集積所の混乱により、2次集積所への輸送も迅速性に欠けるケースが見られ た。また特に津波の被害が甚大であった沿岸部では、市町村の役所が被災したため、 運営管理の人員が不足し、ノウハウも不十分であったこと、2次集積所のスペース が極めて限られたこと、特に被災直後は通信手段の途絶により、必要とする救援物 資の要請を行うことすら難しかったことなどにより、2次集積所として十分な機能 を果たせない現場が少なくなかった。 ④「ラストワンマイル(注:3)」の輸送上の問題 2次集積所から最終配送先である避難所や自宅避難者への輸送は、震災直後は主 に自衛隊により実施されたが、不慣れな自治体職員が担当したエリアでは、瓦礫に 行く手を阻まれ、目印も流失するなどにより、困難を極めた。震災後1週間あたり から、宅配事業者の従業員がボランティアで協力しはじめたり、自治体からの要請 によりトラック運送事業者が参画したりするなどにより運営が適正化した。 ⑤その他の局面での緊急支援活動上での問題 震災直後に政府の要請を受け、被災地への物資輸送のために直ちに内航船が確保 されたが、航路啓開の未実施、岸壁や荷役機器、荷さばき施設、倉庫など港湾施設 の損傷や、陸上輸送体制が整わないなどにより、実際に輸送を行うまでに時間を要 した。 貨物鉄道では、迂回ルートにより石油輸送等を行ったが、機関車、貨車、運転者の 手配、更に通常は貨物輸送を行っていない路線を走行させるために社内訓練の確認 (注:3)主に通信業界で使われている用語で、直訳すると「最後の 1 マイル」。マイルは距離を表す単位で、1 マイルは 1.6Km。通信事業者の基地局などから、利用者の端末側までの伝送経路末端部を示す用語である。ここでは 2 次集積所か ら最終配送先である避難所や自宅避難者までを指す。
4 や旅客会社等との運行調整など、政府からの要請に対応するには多くの課題に対処 する必要があった。 ①~⑤の問題が生じた大きな要因は、下記によるものと考えられる。 1)想定を越える広域かつ甚大な被災であった 今回の震災は、東日本の複数の県が同時に被災した。特に沿岸部は大規模な津波 により、また内陸部は震度7に達する大きな揺れにより、道路、鉄道、港湾、空港 などの交通インフラが甚大な被害を受けた。同時に、長期にわたる広域停電や通信 施設の被災により、大規模に通信が途絶した。 このような複数の自治体にわたる複合災害は、想定の範囲を上回る広域かつ甚大 な被災であったため、阪神淡路大震災や新潟県中越地震などの前例をもとに構築さ れていたこれまでの災害時の救援・復旧体制では十分でなかった。 2)通信の途絶と情報伝達の錯綜・不備があった 今回の震災により、大規模な通信途絶が生じたため、救援物資の供給に必要な情 報の送受信ができなかった。 更に、救援物資の梱包に様々な物資が混在していたり、「物流システム」に必要 な輸送オーダー、納品情報、在庫情報等の内容が統一されておらず、情報に不備な ケースが多々あったため、情報の的確な伝達に支障を及ぼし、様々な局面で混乱を 招いた。 加えて、政府と都道府県、市町村との役割分担や指示命令系統が錯綜したうえに、 救援物資の輸送についても、政府や被災地自治体からの要請に加え、姉妹関係にあ る自治体からの要請、ボランティアや民間の善意など様々な立場から行われたこと が、被災地での混乱や受け入れ能力を超える結果をもたらした。 3)行政(自治体)等による救援物資集積所運営が限界であった 今回を含めこれまでの災害時の対応は、都道府県及び市町村の災害対策本部をベ ースに行われてきた。しかし、今回のように広域かつ壊滅的な被害が広がるなかで、 庁舎が流失し、首長が死亡した自治体があるなど自治体そのものの機能が著しく失 われたところがあった。このような状況で自治体が、通常業務では経験することの 少ない救援物資の物流の管理機能を担うことは、極めて難しかったといわざるをえ ない。 このように被災地の行政機関の対応能力のばらつきと実務上の限界があった。 4)避難所等端末の被災者までの輸送が準備されていなかった 今回の大規模震災で混乱が生じた2次集積所の運営とそこから避難所等の被災 者までの輸送については、現実的な対応方法が想定されていなかったケースが多い
5 とみられる。それは、都道府県とトラック協会等との間での災害時の緊急救援輸送 協定は締結されていても、2次集積所の運営やそこから避難所等への輸送といった より被災者に身近な活動を担う市町村では、緊急時の協定等を締結しているところ がほとんどなく、物流事業者等への具体的な協力要請ができなかった。結果として、 民間の物流事業者の手をいち早く導入したところと、そうでなかったところとの混 乱度合いには差がみられた。 4.今後の広域災害に対応し得る物流システム構築に向けた提言 広域災害時に国民の生命や生活を確保するためには、必要な物資を適切に届ける物 流システムは必要不可欠である。 そこで、今回の東日本大震災における経験をもとに、今後の広域災害に対応し得る 物流システム構築に向け、必要と考えられる対応を提言する。 ①国の主導で対応すること (災害に強い社会づくり) (1)災害時の的確な指令機能の確保(国および自治体BCP(注:4)の策定) 今回のような大規模広域災害は、いつどこで起きるか想定できない。首都圏が被 災し政府機能がマヒする可能性も排除できない。従って、被災した自治体が個々に 対応を検討・実施することでは、今回のような限界が生ずる可能性が大きい。被災 地自らが救援物資輸送の物流システムをコントロールできる余裕はないことを前 提として、どこの地域で災害が起きても、救援物資輸送ができる体制を構築すべき である。 それには、国のリーダーシップのもと、災害時支援の物流システムとそのコント ロール体制を構築する必要がある。例えば、被災直後の3日間は、予め被災者に最 低限必要と考えられる物資(水、食料、毛布等)を被災地の近隣または最も近い大 都市圏から送り込むシステムを構築しておき、迅速に対応する。その間に被災状況 と物資需要を把握・評価し、その状況に応じた最適な物流システムを構築すること が必要である。この被災状況の把握と物流システムの構築を「誰」が、「どのよう な方法」で行うか、また「誰」がそれをコントロールするかを決めておく必要があ る。またこれらをコントロールする災害対策本部には、物流事業者が早期から構成 員として参画し、ノウハウを提供するような(詳しくは後述)、国・自治体と民間 の適切な役割分担・連携体制を構築する必要がある。そのためにはトラック協会や 倉庫協会などの物流事業者の協会等も含めて、それぞれ役割を決めて参画すること が求められる。 具体的には、まず国が災害時の物流システムを盛り込んだBCPを見直す。次に、 国のリーダーシップのもと、自治体のBCPの見直し、もしくは新規制定が必要で (注:4)BCP(business continuity plan:「事業継続計画」)組織が、事業継続を取り組むうえで基本となる計画。 災害や事故などが発生した際、事業の中断によるロスを最小化するために事前に策定される行動計画。
6 ある。なお、このBCP作成に当たっては、国と都道府県、市町村との役割分担を 明確にする必要があるとともに、国、地域、隣県等の間で相互に協力・補完する体 制についても検討し、取り決めておくことが重要である。またBCPにも物流事業 者が参画することと具体的役割も決めておく。なお、災害の内容や規模は、想定外 の状況となることが十分に考えられるため、災害時の物流システムは、その場の状 況に応じて、適切かつ柔軟に対応する必要があるが、自治体の災害対策本部等現場 でコントロールする側の判断を優先させることができるような裁量権を与えるこ とができる仕組みが望まれる。 東日本大震災を日本の社会システムを再構築する機会として、行政のなかにおけ る縦割りシステム、行政と民間という仕切りなどを見直し、災害時の指令機能とし て新しい関係を築き上げていくことが期待される。 (2)緊急輸送時の燃料の優先的補給 輸送に必要な燃料については、災害時には全国どこでも緊急輸送車両等が優先的 に補給できる体制を常に整備しておくべきである。そのためには、政府は石油販売 関係者との調整等を早急に進めるべきである。また災害時における燃料自体の輸送 が重要であることが今回再認識された。物流事業者が緊急時に燃料を円滑に輸送で きるように全国隈なく速やかに供給できるような体制を国や社会全体として整備 しておくべきである。 (3)輸送ルールの弾力的な運用 災害時においては、各輸送機関や物流関連インフラ等の平常時の運用ルールでは 制約が生じる場合がある。災害時の物流システムを適切に運用する上では、例えば 今回の震災において、被災地に向かう高速道路では、一般車両走行を規制し、緊急 輸送車両に開放されたことなど、一部で弾力的なルールの運用がなされた。通常の 運用ルールを弾力的にかつバラつきなく変更するような判断とその情報の迅速な 伝達が必要である。今回、緊急輸送車両の標章発行に非常に時間を要するケースや、 特殊車両の通行許可の事前手続きが相変わらず必要とされるなどの問題もあり、よ り弾力的な対応が求められる。 (4)非常用救援物資の備蓄量と供出可能量の把握と速やかな発送体制 災害時には国のリーダーシップのもと、各自治体の非常用救援物資の備蓄量をリ アルタイムに把握するとともに、救援物資に該当する民間の生産在庫量についても、 短時間で情報を集約し、官・民から必要物資を供出し、被災地に速やかに救援物資 を発送し、被災者に直ちに物資が届く体制を整備すべきである。 (5)自国物流事業者の緊急即応体制の確保 福島原子力発電所における放射線漏出に伴い、在留外国人が我が国から退去する
7 事態があり、また東京港などへの入港を避ける外国船があったが、我が国の物流事 業者は国や自治体と連携しながら、冒頭に記した輸送に総力を挙げて取り組んだ。 災害時など緊急の必要に対応した物流を確保するためには、国の危機管理や安全保 障等の観点からも、今後とも政府、自治体と連携して活動する自国物流事業者の維 持、発展、従業員の安定的な確保を図ることが必要である。 ②自治体が対応すること (被災状況等の情報提供・公共インフラ機能回復) (6)災害時物資集積所の適切な設置 物流事業者の参画のもと、各自治体では救援物資の集積所から端末輸送までの基 本的な物流システムの構築が必要である。しかし、今回の震災では、自治体が救援 物資の集積所として計画していた施設が被災したり、他の用途に使わざるを得なく なったりなど、事前の計画通りに実施できなかったところが少なくない。どのよう な災害が起きるか、その被害状況はどれほどか等によって、災害対応は自ずと異な る。 従って、基本的な物流システムを計画するにあたっても、被災状況に応じ、その 時々で利用できる輸送ルート(道路、鉄道、港湾、空港)、輸送モード・ルート(ト ラック輸送、貨物鉄道、内航海運、航空、港湾運送)及び物流施設(倉庫やトラッ クターミナル等)を適切に活用する弾力的な物流システムの構築を図るべきである。 今回の震災で課題となった1次集積所について言えば、例えば、1次集積所は必 ずしも一つの県単位に配置する必要はなく、隣県や大都市圏といった施設や労働力 等に余裕があるところに配置し、そこから市町村単位で設けられる2次集積所へ輸 送するシステムも考えられる。そのためにも、自治体が相互に連携・協力できる体 制を予め整えておくことが必要である。 ③国や自治体と物流事業者が連携して対応すること (7)国・自治体と物流事業者との災害時の実務協定の整備と災害後早期の業務委託 救援物資輸送の仕組みづくりと実際の管理・運営には、震災直後から物流の実務 経験者が、国、都道府県、市町村の災害対策本部の構成員として、また現場での実 務に参画する仕組みが必要である。具体的には物流事業者の団体が、職員や傘下企 業を指名して参画すること等が考えられる。 物流事業者のノウハウや施設、機材等の活用は、被災地への輸送、被災地での物 資の受け入れ、管理から、避難所等にいる被災者までの輸送といった全ての局面で 全面的に活用することが望ましい。幹線輸送や大量一括輸送、重量物輸送、ハイス ピード輸送等においては、貨物鉄道、内航海運、国内航空、長距離トラック等の適 正な輸送機関による輸送力の確保が、また、1次集積所においては、倉庫事業者の ノウハウや施設等の活用が、更に、2次集積所の運営・管理やそこから端末までの 輸送においては、宅配事業者や地場に詳しい物流事業者のノウハウや施設等を活用 することが現実的である。
8 そのためには、国や都道府県と物流事業者の団体あるいは物流事業者が災害時の 実務的な業務協定を締結することが必要である。なおこの協定には、2次集積所の 運営や端末の輸送についても、被災を受けた市町村からの要請により、物流事業者 が早期に現場に入れるよう取り決めておくべきである。 また災害規模、輸送規模に応じて各々指定機関にその役割、機能を持たせる視点 から、適切な団体、企業を指定公共機関(注:5)に追加することも効果的と考える。 なお、実務経験者を必要な時に即座に、災害本部等に派遣、または現場での実務 に参画させられる研修制度を各物流事業者の団体で整えることも有効と考えられ る。 (8)通信手段の確保と情報内容の標準化 被災地との間で確実に情報伝達を行える体制作りが必要である。ここで必要とな る情報伝達は、救援物資輸送に必要な情報、道路や鉄道、港湾、等のインフラの被 災状況や復旧情報などがあるが、これらの情報は、国と自治体、市町村等の行政間 における伝達が必要であるとともに、実務を担う物流事業者との間における伝達も 極めて重要である。 情報手段の確保の具体策としては、国をはじめとする行政、自治体、避難所とな りえる公共施設、物流事業者団体や物流事業者に携帯衛星電話の整備や停電時の自 家発電設備等を設置することが考えられる。 また、救援物資の迅速・確実な物流をおこなうのに欠かせない輸送オーダー、納 品情報、在庫情報等の内容を標準化し、救援物資の運送依頼内容に荷姿や問い合わ せ連絡先等も加えたフォーマットを広く普及させることが必要である。 (9)災害に強い物流インフラの整備 災害に強い物流システムの構築に必要な長期的対策として、港湾施設、空港、貨 物鉄道など公共性の高い物流インフラの耐震化、免震化、および液状化対策、津波 のときに避難しやすい多層階建物化、道路の耐震性強化とネットワーク化などを着 実に進めていくことが必要である。また岸壁の荷役設備が被災しても荷役が可能な RORO船やフェリーの維持等の多様な物流経路の確保及び港湾荷役支援体制の 迅速な回復方策も必要と考える。 トラックや倉庫等の物流事業者の民間施設についても、耐震化、免震化、および 液状化対策を考慮していくことが必要であり、そのためには適切な支援策も必要で ある。また、緊急支援活動を行う際に必要な輸送機材等の確保に関しても、その仕 組みづくりに努めていくことが必要であると考える。 (注:5)災害対策基本法に基づき、国や地方公共団体と協力して緊急事態などに対処する機関。医療・電気・電気通信・ 放送・ガス・運送事業者が指定されている。
9 ④物流事業者が取り組むべき対応 (現場での迅速、的確な対応) (10)物流事業者のBCP策定 物流事業者においては、直接被災を受けた物流事業者はもとより、被災を受けて いない事業者でも、救援物資輸送やサプライチェーン、産業活動の復旧に向け、通 常と異なる業務体制が求められた。今回の震災では、自社内でBCPを策定してい た物流事業者でも、被災地での安否や被害状況の確認に時間がかかったり、政府か らの要請実現に向けた部外との調整など、実務への対応に苦慮した現場が少なくな かった。 物流事業者においても、今回の震災を教訓に、広域災害時を想定したBCPの見 直しあるいは新規の制定をするとともに実地訓練を行うことが必要である。 5.おわりに 東日本大震災を踏まえて、救援物資輸送の緊急支援活動を中心に問題点を整理し提 言を取りまとめた。今後の広域災害に対応するために、政府、自治体、物流事業者等 は改めて対応方策の策定、充実の為の活動を始めている。この提言がそのような活動 の中で活用され、広域災害時に効果的に機能する物流システムの構築に役立つことを 期待する。