広汎性発達障碍児の他者の意図理解と自己の意志決定との関連性 [ PDF
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(2) る条件は対象児ごとに 8 場面あった。 3)手続き. 的な差異について検討することを目的としているため,対 象児 1 人につき 8 場面全ての回答を合計して度数として,. Table.2 質問の手続き(例). 質問. 質問内容. 測定変数. 質問a. このとき、みつるくん(くみこさん)は何と答えます か。空いている枠の中にみつるくん(くみこさん)が 言うと思う言葉を書いてください。. 他者への応答. 質問b. たけしくん(ゆきこさん)はどうして「君も一緒の方が 楽しいから、一緒に遊ぼう」と言ったのでしょうか。. 他者の意図理解. 質問c. みつるくん(くみこさん)はどうしてさっき書いたよう に答えたのですか。. χ2 検定を行っている。各群の反応の傾向を検討した分析 2~4 に記述する分析結果を Table.6 にまとめた。 Table.3 他者の発言に対する応答の分類基準 反応の分類名. 定義. 反応例. 同意. 他者の発言に対して同意している回答。. 「いいよ、やっとくね」. 拒否. 他者の発言に対して拒否している回答。. 「やだよ」. 戸惑い. 他者の発言に対して、同意や拒否の応答をしていない、もしくは同意 「何で急いで帰るの?」 や拒否が明確でない回答,戸惑いや疑問を含む回答。. 提案. 同意や拒否が明確でなく,新たな条件の提示や提案をする回答。. 反応の分類名. 定義. 事情重視理解. 提示された他者の発言中の理由の説明を重視して他者の意図理解 「急いで帰らないといけな をしている回答。 いから」. 関係性重視理解. 登場人物間の関係性を表す教示を重視して他者の意図理解をしてい 「仲良しだから」 る回答。. 事情+関係性重視理解. 「急いで帰らないといけな 提示された他者の発言中の説明する文章や教示された登場人物間 いから仲良しの友達に頼 の関係性の両方を重視して他者の意図理解をしている回答。 んだ」. 要求重視理解. 提示された他者の事情を説明する台詞や教示された登場人物間の 関係性によらず、誘いや依頼といった他者の要求そのものを重視し 「掃除をしたくないから」 て他者への応答を決定している回答。. 情報の付け加え理解. 提示された条件にはない文脈や登場人物の背景情報を付け加えて 「たけしくんは掃除が大 いる,または他の図版中に示されている情報を付け加えて他者の意 嫌いだから」 図理解をしている回答。. 各場面に関して,他者の発言の理由を尋ねる質問 b,対象児. 反応の分類名. 定義. の応答の理由を尋ねる質問 c への回答を得た。課題の順序. 事情重視決定. 「帰らないといけない用 提示された他者の発言中の理由の説明を重視して他者への応答を 事があるってわかったか 決定している回答。 ら」. 関係性重視決定. 登場人物間の関係性を表す教示を重視して他者への応答を決定し 「友達だからやってあげ ている回答。 る」. 説明+関係性重視決定. 「友達が急いで帰らない 提示された他者の発言中の説明する文章や教示された登場人物間 といけなくて困っていた の関係性の両方を重視して他者への応答を決定をしている回答。 から」. 要求重視決定. 提示された他者の発言中の説明する文章や教示された登場人物間 の関係性によらず、誘いや依頼といった他者の行為そのもの、もしく 「掃除を頼まれたから」 は遊びや掃除といった状況そのものを重視して他者への応答を決定 している回答。. 規範意識重視決定. 提示された他者の発言中の説明する文章や教示された登場人物間 「当番は自分でやるもの の関係性によらず、常識や規範などを重視して他者への応答を決定 だから」 をしている回答。. 情報の付け加え決定. 提示された条件にはない文脈や登場人物の背景情報を付け加えて 「たけしくんが嘘つきだか いる,または他の図版中に示されている情報を付け加えて他者への ら」 応答を決定をしているもの。. 自己の意志決定. 実験者は対象児に予備課題を実施時に『この絵を見てく ださい。この絵は左側の人が「この絵は上手に描けてるね」. 「一緒にやろう」. Table.4 他者の意図理解の分類基準. と右側の子に言っています。このとき,右側の子はどんな 風に答えるでしょうか。この子が言うと思う言葉を四角い. 反応例. 枠の中に書いてください。一番初めに思いついた言葉を書 いてください。決まった答えはないので自由に答えてくだ さい。 』と教示し,その後「これから何枚か絵を見せます。 その絵にもこんな風にあなたが思いつく言葉を書いてくだ さい。 」と教示し,課題を開始した。図版を呈示した上で, 登場人物間の関係性の教示をした後に,図版の左側の人物 の台詞を読み,質問を行った(Table.2)。その後,質問 a を 実施し,右側の人物がどのように応答するか空白の吹き出 しに記入を求めた。8 場面全ての質問 a への回答終了後,. Table.5 意志決定の分類基準. はカウンターバランスをとった。 3.結果と考察 分析 1)実験課題における回答の分類 本実験課題での回答について,中村(2006, 2008)を参考に, 本実験課題の構造に沿ってカテゴリー名の変更や追加を行 って,カテゴリーが生成された。その結果, 「他者への応答」 は Table.3, 「他者の意図理解」は Table.4, 「自己の意志決 定」は Table.5 に示す反応カテゴリーが生成された。その 後,筆者を含む 3 名の評定者によって各回答を評定し,評. 反応例. 分析 2)「他者への応答」についての各群の比較. 定者間で一致しない回答は協議の上意見の一致を図り,評 定を行った。各回答についての一致率は, 「他者への応答」. 群と「他者への応答」カテゴリーの関連を検討するため,. は 95.74%, 「他者の意図理解」は 87.22%, 「自己の意志決. χ2 検定を行った結果,有意な結果が得られた(χ2(6)=24.72,. 定」は 85.51%であり,信頼性のある評定であったと考えら. p<.01)。残差分析の結果は Table.6 に示す。. れ,以下この評定に基づいて分析を行った。. 高学年群で「戸惑い」が少なかったことから,定型発達. 本研究では,それぞれの群における「他者への応答」 , 「他. 児では加齢に伴って他者に応答を返す場面での戸惑いや疑. 者の意図理解」 , 「自己の意志決定」の各反応についての質. 問は少なくなっていると言える。. 2.
(3) Table.6 各群における「他者への応答」,「他者の意図理解」,「自己の意志決定」の反応傾向 群. 他者への応答. 他者の意図理解. 自己の意志決定. **. *. 「事情重視理解」多い. 低学年群( n =15). 「関係性重視」少ない. *. 「要求重視理解」多い **. **. 「戸惑い」少ない. *. 「関係性重視理解」多い. 「事情重視決定」多い **. **. 「事情+関係性重視理解」多い. 高学年群( n =15). 「情報の付け加え理解」少ない. 「関係性重視決定」多い. **. *. 「事情+関係性重視決定」多い. 「情報の付け加え決定」少ない **. *. 「戸惑い」多い PDD群( n =14). *. 「関係性重視理解」少ない. *. 「提案」多い. **. 「関係性重視決定」少ない. 「事情+関係性重視理解」少ない. *. **. 「情報の付け加え決定」多い. **. 「情報の付け加え理解」多い 注 *: p <.05, **: p <.01. 一方で,PDD 群の「戸惑い」と「提案」が多いことから,. な主観的に情報を付け加えるといった対人場面での認知の. 他者に応答を返す場面では,PDD 児は他者の意図を確認す. あり方は他者との意図の共有を困難にしていると思われる。. るような疑問を含んだ応答や新たな条件を提示する応答が. また,このような他者との意図の共有の難しさは彼らの友. 多いと考えられる。. 人関係の築きにくさに影響を与えている可能性がある。. 分析 3)「他者の意図理解」についての各群の比較. 分析 4)「自己の意志決定」についての各群の比較. 群と「他者の意図理解」カテゴリーの関連を検討するた. 群と「自己の意志決定」カテゴリーの関連を検討するた. め, χ 2 検定を行った結果,有意な 結果が得られた. め,χ 2 検定を行った結果,有意な関連が見られた( χ. (χ2(8)=58.15,p<.01)。残差分析の結果は Table.6 に示す。. 2(10)=79.48,. p<.01)。残差分析の結果は Table.6 に示す。. 低学年群の「事情重視理解」が多く,高学年群では「関. 低学年群の「要求重視決定」が多く,高学年群の「事情. 係性重視理解」及び「事情+関係性重視理解」が多かったこ. 重視決定」 「関係性重視決定」 「事情+関係性重視決定」が多. とから,定型発達の低学年時は直接的に他者の事情を説明. かったことから,定型発達の低学年時は「誘われたから」. する言葉を手がかりとするが,加齢に伴ってより直接的に. といった他者の要求そのものを重視して意志決定を行うこ. 評価しにくい,他者との内的な側面である関係性を手がか. とが多いが,加齢に伴い,他者の言語的説明や他者との関. りとした意図理解や,説明と関係性を統合した意図理解を. 係性を重視した意志決定や,それらを統合して意志決定す. 行うようになると言える。. ることが多くなると言え,事情や関係性といった内的な内. 一方で,PDD 群では「関係性重視理解」 「事情+関係性重. 容を重視して意志決定をすることが多くなると考えられる。. 視理解」が少なく, 「情報の付け加え理解」が多かったこと. 一方で,PDD 群の「関係性重視決定」が少なく, 「情報. から,PDD 児は他者との関係性を手がかりとすることが少. の付け加え決定」が多かったことから,PDD 児においては. なく,場面に含まれない情報を付け加え,それを手がかり. 他者との関係性を重視して意志決定をすることが少なく,. とした他者の意図理解が多い。関係性を手がかりとするこ. 場面に含まれない文脈を重視して意志決定を行なっている. とが少ないことについて,抽象的な認知が困難であるとい. と言え,他者の意図理解とほぼ同様の結果となった。この. った認知特性(Happe, 1995)や友人関係の築きにくさとい. 結果より,他者の意図理解の際に付け加えられた情報に沿. った社会的経験の乏しさから,他者が行動を起こす上で抽. って意志決定を行った可能性が考えられる。. 象的な内容である関係性を重視するという理解が難しかっ. 分析 5)「他者の意図理解」と「自己の意志決定」との関連. たことが推察される。次に,情報を付け加えることについ. 各群の「他者の意図理解」と「自己の意志決定」との関. ては,本実験で呈示された場面の内容は中立的に示されて. 連を検討するため,各群の中で「他者の意図理解」と「自. おり,これらの内容のみでは PDD 児は場面の内容と他者の. 己の意志決定」を変数として,χ2 検定を行った。その結果,. 行為を結びつけることが難しく,他者がその行動に至った. 低学年群(χ2(16)=57.32,p<.01)と PDD 群(χ2(16)=51.10,. 理由の整合性を保つために背景情報を主観的に付け加えて. p<.01)では有意な結果が得られた。低学年群と PDD 群の残. 他者の意図理解の手がかりとしたと考えられる。このよう. 差分析の結果を Table.7,8 に示す。高学年群では有意な結. 3.
(4) Table.7 低学年群における「他者の意図理解」と「自己の意志決定」の組み合わせについての回答の内訳 . 事情重視理解. 関係性重視理解 他者の 意図理解. 事情+関係性 重視理解 要求重視理解 文脈の 付け加え理解. 計. 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%). 事情重視決定 22 30.14 2.20** 1 7.14 -1.52 4 44.44 1.56 0 0.00 -1.39 1 5.56 -1.93 28 23.33. 関係性重視決定 1 1.37 -4.16** 8 .00 5.93** 1 11.11 .03 1 50.00 .47 2 40.00 .04 12 10.00. 自己の意志決定 要求重視決定 21 28.77 .92 1 7.14 -1.70 2 22.22 -.26 2 33.33 .43 5 27.78 .20 29 24.17. 規範意識重視決定 18 24.66 2.23* 0 .00 -1.89 1 11.11 -.58 0 .00 -1.19 3 16.67 -.20 22 18.33. Table.8 PDD群における「他者の意図理解」と「自己の意志決定」の組み合わせについての回答の内訳 . 文脈の付け加え決定 11 15.07 -2.19* 4 28.57 .67 1 11.11 -.80 3 50.00 1.73 7 38.89 1.92 23 19.17. 計 73 100.00. 説明重視理解. 14 100.00. 関係性重視理解. 9 100.00. 他者の 意図理解. 説明+関係性 重視理解. 6 100.00. 状況重視理解. 18 100.00. 文脈の 付け加え理解. 120 100.00. 計. 果が得られなかった(χ2(20)=30.74,n.s.)。. 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%) z 回答数 比率(%). 説明重視決定 14 28.00 1.52 0 0.00 -1.53 2 50.00 1.42 1 9.09 -1.05 7 25.00 -.66 22 22.68. 関係性重視決定 3 6.00 -1.45 4 50.00 3.73** 2 50.00 2.59** 1 9.09 -.183 2 7.14 -1.40 10 10.31. 自己の意志決定 状況重視決定 7 14.00 -.54 0 .00 -1.28 0 .00 -.89 7 63.64 4.52** 4 14.29 -1.23 18 18.56. 規範意識重視決定 7 14.00 1.01 0 .00 -1.02 0 .00 -.71 0 .00 -1.21 5 17.86 .53 12 12.37. 文脈の付け加え決定 19 38.00 -.59 4 50.00 .53 0 .00 -1.70 2 18.18 -1.63 21 75.00 2.01* 46 47.42. 計 50 100.00 8 100.00 4 100.00 11 100.00 28 100.00 97 100.00. しかしながら,PDD 児は自己と他者の相互の内的な側面. 結果より,低学年児童において他者の意図理解と自己の. である関係性を重視することは少なく,場面の内容と他者. 意志決定に関連があり,特に意図理解をする際に他者の事. の行動を結びつけて理解することの困難さから場面に含ま. 情を重視する場合と他者との関係性を重視する場合は,自. れない情報を付け加えるといった他者との意図の共有が図. 己の意志決定と重視する内容が一致することが多いと言え. りにくいと思われる反応が多いと考えられる。また,この. る。この結果より,低学年時は自己と他者を対比させずに. ような特徴は自己と他者の視点を分けずに同一の内容を重. 単一の内容に注目して他者の意図を理解し,自己の意志決. 視して意図理解及び意志決定を行なうことと関連している. 定を行うことが多いと考えられる。高学年群では他者の意. と思われる。つまり,他者との意図の共有を図りにくい対. 図理解と自己の意志決定の関連は見られず,双方を独立し. 人場面での認知のあり方が良好な友人関係の形成の困難と. て行っていると言える。この結果より,高学年時は自己と. 関連しており,そういった社会的経験の乏しさから,対人. 他者が重視する内容が必ずしも同様でないことを前提とし. 場面において他者との関係性を重視することが少なく,2. て他者の意図を推測し,それとは独立して自己が重視する. 者間で自己と他者を対比させずに単一の方法で他者の意図. 内容を選択して意志決定をすると考えられる。. を理解し,他者に応じようとしていると推察される。. 一方で,PDD 児は他者の意図理解と自己の意志決定に関. これらの知見を踏まえ,PDD 児は場面の内容と他者の行. 連が見られ,他者の意図理解と自己の意志決定で重視する. 動を結びつけることの困難から情報を付け加えて他者に応. 内容の一致が多かった。このことから, PDD 児は自己と. じようとしている可能性があり,何に注目して他者の行動. 他者の視点を分けずに他者の意図理解と自己の意志決定を. の意図について推測すべきかを伝えることが有効であると. 行うことが考えられる。低学年児童と PDD 児で自己と他者. 考えられる。その際に,彼らが日常で意識しにくい他者と. の視点を分けずに対人場面を捉えている可能性が示唆され. の関係性に注目を促し,良好な対人関係の形成を体験する. たが,両群には重視する内容に差があることから,その過. 機会を提供することが挙げられる。また,PDD 児の主観的. 程が同様であるとは考えにくい。. な体験を理解し,その上で他者の意図理解を促すことで自. 4.総合考察. 己―他者関係の理解も促すことが考えられる。 5.今後の課題. 以上の結果から,定型発達児は加齢に伴って自己と他者 の相互の内的な側面である関係性を他者の意図理解と自己. 本研究では,対象児の年齢や認知特性に幅があるが,個. の意志決定の両方で重視するようになり,このような過程. 人の特性に合わせた支援について考えるならば,PDD 児の. は自己と他者の視点を分化させて意図理解及び意志決定を. 特性と本研究の課題との関連について検討する必要がある。. 行うようになることと関連していると思われる。つまり,. また,本研究の知見を踏まえ,今後 PDD 児への支援を検討. では友人関係の形成といった社会的経験の蓄積から自己と. するためには,場面の内容と他者の行動のつながりを明確. 他者の視点の違いに気づくとともに対人場面において他者. になるような教示を行った際に PDD 児の反応がどのよう. との関係性を重視するようになると考えられる。. に変化するかを検討する必要があると思われる。. 4.
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