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通常学級に在籍する児童によるADHD児の行動の意図理解に関する発達的検討 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)通常学級に在籍する児童による ADHD児の行動の意図理解に関する発達的検討 キーワード : 通常学級 ・ADHD児 ・二次障がい ・意図理解 ・発達 人間共生システム専攻 高濱 佳子 【 問題と目的】 今日,特別支援教育のもと通常学級における軽度発達. グによって変化させられると述べており,ADHD 児の理 解を促す介入の効果は十分に期待されると思われる。. 障がい児の存在に目が向けられるようになりつつある。. よって本研究では第一に,ポジティブ・ネガティブ両. 一般に,軽度発達障がい児とくくられる LD,ADHD,. 場面において周囲の児童が ADHD 児の関わり行動の意. 高機能自閉症等のある児童・生徒は,外見上障がいがあ. 図をどのように理解しているのか,発達的に検討するこ. るかどうか判断されにくい上,知的水準が標準域にある. とを目的とする。. ため日常生活においてさまざまな困難を示してもそれが. 第二に,通常学級において児童のコミュニケーション. 障がいによるもの見なされにくい。とりわけ ADHD 児. に介入する可能性の高い存在として担任教師を取り上. の場合,行動上の障がいであるために周囲への影響が大. げ,児童の ADHD 児に対する意図理解の仕方が担任に. きく,誤解も受けやすいと思われる。その結果,居場所. よる理解の促しによってどのように変化するか,発達的. が見出せない,周囲への反抗を強めて攻撃的な行動が増. に検討することを目的とする。. えるなどの不適応行動が悪循環に陥る二次障がいを抱え. ≪臨床的意義≫①児童が ADHD 児の意図をネガティブ. やすいことが問題になっている(宮本,2000) 。. に理解する場面や発達段階について検討することで同学. 従来,ADHD 児の一次障がいに対しては心理的アプロ. 年の児童が ADHD 児と関わる際の難しさを理解する。. ーチや薬物療法が行われてきた(Barkley,1997)が,. ②ADHD 児の通常学級における体験を共感的に理解す. 二次障がいについては周囲との関係性の中で生じている. ると同時に,ポジティブに理解される場面や発達段階に. ことを考える必要があると思われる。近年,障がいを環. ついて検討することで適応の可能性を見出す。③両者の. 境因子との相互作用の中で捉えようとする見方があり,. 立場を理解した上で,効果的なコミュニケーションの促. 田中(2003)は障がいのありようは関わり手側の関わり. しについて考察する。. のあり方や,社会的環境によって変容すると述べている。 このことから,ADHD 児の二次障がいへアプローチする. 研究1. には ADHD 自身への対応だけでなく,周囲の児童がど. 【 方法】. のように彼らを理解しているかにも注目していく必要が. 1.対象児 通常学級に在籍する児童1・3・5年生(A. あると思われる。. 校1年生 54 名/3年生 54 名/5年生 81 名:B 校1年生. ADHD 児の多動・衝動性の行動は, 「わがまま」 「自分. 66 名/3年生 104 名/5年生 99 名). 勝手」など,本人の性格の問題と見なされることが多い. 2.実施 各校とも学年別に質問紙調査を実施した。集団. という指摘があり(宮本,2000) ,ADHD 児の行動の意. へ一斉教示し,回答を促した。. 図が周囲の児童に伝わりにくいことが誤解を生む要因の. 3.手続き. 一つと推察される。Dodge(1994)は児童の対人行動に. ①ADHD児の行動特徴の提示. 及ぼす認知過程に関する‘社会的情報処理モデル’の中. ADHD 児(多動・衝動型)の行動特徴を反映した架空の. で,相手がなぜそのような行動をとったかという原因分. ストーリーを作成し,A2 大の図版を製作した。主人公の. 析や,意図帰属が適切に行えるかどうかが行動の選択に. ADHD 児は学年に応じて同学年の男子の設定にした。. 影響するとして重視している。以上をふまえると,周囲. ②ADHD児からの関わり行動に対する意図理解について. の児童がいかに ADHD 児の行動の意図を理解するかが. 場面設定「児童の仲間選択の理由」等を参考に,ADHD. 両者の関わりには重要であり,不適切に意図を理解して. 児からの関わり場面としてポジティブ(以下,P)場面. いる際には,適切な意図の理解を促すことがコミュニケ. およびネガティブ(以下,N)場面を各6場面ずつ設定. ーションを円滑にすると考えられる。McManis(1974). し,A2 大の図版を作成した。 (Table2,3). は,関わる他者の意図を推論する社会的能力はモデリン. P 場面の例) 手伝ってくれる(Fig.1)∼「あなたは.

(2) 給食当番で,大きなおかずの係です。でも今日はもう一. 2.. 人の友達が欠席しています。太郎くんが『手伝うよ』と. ①ポジティブ場面について. 声をかけてきました。 」. 「提供型サポート」と「共有型サポート」における意図. N 場面の例)侵害場面(Fig.2)∼「太郎君があなた. の捉え方が,学年の違いによってどのように異なるか検. の作った工作を壊してしまいました。 」. 討するため,3要因のχ二乗検定を行った。その結果,. 関わり場面における意図理解の発達的検討. 2 =40.50,p<.01) 。 各セルの独立性が有意であった(χ(17). 残差分析の結果, 「提供型サポート」 , 「共有型サポート」 の違いが意図理解に与える影響は学年によって異なら ないことが示唆された(χ2(6)=10.83,n.s.)が,学年に よ る 意 図 理 解 に 違 い が 見 ら れ た ( χ Fig.1 手伝ってくれる場面. 2(6)=19.10,p<.01,Table4) 。. Fig.2 侵害場面. Table4  学年による意図理解の違い (P場面) ハ ゚ー ソナ リティ要因. 質問の内容. ADHD 児の行動の意図をどのように帰. 属させるか, 「パーソナリティ要因」 「気分要因」 「外的 要因」 「帰属不能」の4つの帰属要因の中から1つの回 答を選択するよう求めた。 (具体的な内容は Table1) Table1 教示. 意図理解についての教示および選択肢の内容. 「太郎くんはどんなつもりで○○したと思いますか。近いものに○をつけ てください」. 選択肢 ハ ゚ー ソナ リティ要因 気分要因 外的要因 帰属不能 P場面 「親切だ・やさしい」 「機嫌がよかった」「他に訳がある」「わからない」 N場面 「意地悪だ・ わがまま」「機嫌が悪かった」「他に訳がある」「わからない」. 観測度数 1年生 期待度数 残差 観測度数 3年生 期待度数 残差 観測度数 5年生 期待度数 残差 * * p<01,* p<05. 165 160 . 0. 209 201 . 0. 201 212 . -1 .. 73 63 98 98 29 56. 気分要因. 70 71 . -0 . 76 89 . -2 . 109 94 . 2.. 28 21 57 08 * 15 25 *. 外的要因. 帰属不能. 15 24 . -2 . 41 30 . 2. 31 32 . -0 .. 15 8. 2. 7 10 . -1 . 9 11 . -0 .. 32 34 * 56 46 * 12 26. 67 58 * 89 49 45 93. どの学年においても,パーソナリティ要因に帰属させ, 「やさしい・親切だ」と答える児童が多数を占め,その 割合は学年を通じて同じ程度であった。しかし,発達的 変化について統計を用いて検討した結果,少数派である ものの,1年生では「わからない」と答える児童の割合. 【 結果と考察】 1.. が多く,相手の意図を推測することが難しい段階にある. 場面の選択 P 場面,N 場面における児童の意図理解の仕方につい. 児童がいると思われた。また,外的要因に帰属させる児. てカテゴリカル主成分分析を行い,2次元での解釈を試. 童の割合が少なく,1年生ではパーソナリティや気分以. みた。 (Table2,3). 外の要因を想定する発想に乏しいことが示唆された。 第Ⅰ主成分を『共有型サ. 3年生になると外的要因に帰属する児童の割合が多. ポート(固有値 2.10) 』 ,第二主成分を『提供型サポー. くなり,1年生に比べて多様な可能性を想定できるよう. ト(固有値 1.41) 』と命名した(α=.864) 。それぞれ負. になると思われた。. ①ポジティブ場面について. 荷量の高さにもとづいて, 『共有型サポート』から「手. 5年生になると,P 場面において気分次第で行動する. 伝ってくれる」場面を, 『提供型サポート』から「貸し. と答える割合が他学年に比べて多かった。彼らは. てくれる」場面を選択し,後の分析で用いることにした。. ADHD 児の衝動性に気づき, 「その場の思いつきで行動. Table2  ポジティブ場面における成分負荷量. している」と理解している可能性がある。ポジティブな. Table3  ネガティブ場面における成分負荷量. 次元. 次元. 共有型サポート 提供型サポート. 間接的葛藤 直接的葛藤. 貸してくれる. - .079. .874. 侵害. - .134. おしえてくれる. .025. .816. 自己中心的行動. .516. .634. 楽しませてくれる. .638. .004. 意見の対立. .690. .034. 関わりであってもポジティブなパーソナリティの理解. .872. 誘ってくれる. .735. - .131. 参入. .653. - .092. 手伝ってくれる. .770. .037. 無責任行動. .656. - .067. 心配してくれる. .745. .153. 奪取. .663. - .198. にはつながりにくいことが予測されるため,配慮が必要 な児童であると思われる。 ②ネガティブ場面について 「直接的葛藤」と「間接的葛藤」における意図の捉え方. ②ネガティブ場面について. 第Ⅰ主成分を『間接的葛藤. が,学年の違いによってどのように異なるか検討するた. (固有値 2.06) 』 ,第Ⅱ主成分を『直接的葛藤(固有値. め3要因のχ二乗検定を行った。その結果,各セルの独. 1.12) 』と命名した(α=.833) 。それぞれ負荷量の高さ. 。残差分 立性が有意であった(χ2(17)=93.05,p<.01). にもとづいて, 『間接的葛藤』から「意見の対立」場面. 析の結果, 「直接的」あるいは「間接的」かによる意図. を, 『直接的葛藤』から「侵害」場面を選択し,後の分. 理解の仕方が学年で異なることが示唆された(χ. 析で用いることにした。. 2(6)=15.78,p<.05,. Table5) 。.

(3) Table5   場面および学年による意図理解の違い (N場面) ハ ゚ー ソナ リテ ィ要因気分要因 外的要因 帰属不能 観測度数 58 18 23 33 1年生 期待度数 58 . 22 20 . 11 34 . 01 12 . 29 - 0 . 53 -2 . 19 * 6 . 49 * * 残差 -0 . 04 観測度数 90 21 46 10 直接的 73 . 44 25 . 37 42 . 9 15 . 5 3年生 期待度数 葛藤 0 . 56 -1 . 57 残差 2 . 47 * - 0 . 99 観測度数 79 25 64 7 89 . 76 31 . 00 52 . 44 18 . 95 5年生 期待度数 - 1 . 26 1 . 95 -3 . 15 * * 残差 -1 . 49 観測度数 61 26 25 20 65 . 1 22 . 49 38 . 03 13 . 74 1年生 期待度数 0 . 84 -2 . 49 * 1 . 88 残差 -0 . 64 観測度数 89 38 32 7 間接的 3年生 期待度数 82 . 12 28 . 36 47 . 97 17 . 33 葛藤 2 . 10 * -2 . 78 * * -2 . 82 * * 残差 0 . 99 観測度数 92 34 84 22 . . 67 期待度数 1 0 0 3 6 37 58 . 63 21 . 19 5年生 - 0 . 13 4 . 11 * * 0 . 21 残差 -1 . 13 * * p<01,* p<05. 発達的検討を行ったところ,1年生では直接的葛藤で あれば相手の意図が理解できない児童の割合が多かっ た。Dodge(1986)は意図帰属の仕方が反応の決定に 関わると述べているが,意図が「わからない」場合, ADHD 児に対する反応にも戸惑うことが予測され,意 図を適切にフィードバックする必要があると思われる。 3年生では,直接的葛藤場面において「わがまま・意. 【 結果と考察】 Pre 場面において「帰属不能」であった児童を除き, 介入後の意図理解の変化を「変化あり」 「変化なし」 「混 乱(わからないへ変化) 」のいずれかで結果を整理した。 P 場面から「援助場面」 ,N 場面から「侵害場面」を選 択し,意図理解の変化の仕方が場面や学年により異なる か検討するため,3要因のχ二乗検定を行った。 1.Pre場面でポジティブな意図理解をしていた児童の変化 2 =76.67,p<.01) 。 各セルの独立性が有意であった(χ(12). 学年によって意図理解の変化に有意な差が見られた(χ 2(4)=14.24,p<.01,Table6) 。. Table6 学年による意図変化の違い(Preポジティブ) 変化なし 変化あり 混乱 観測度数 56 15 2 13.88 8.62 1年生 期待度数 50.50 残差 1.60 0.38 -2.75 * * 観測度数 80 19 10 3年生 期待度数 75.41 20.73 12.87 残差 1.19 -0.53 -1.06 観測度数 75 24 24 23.39 14.52 5年生 期待度数 85.09 0.18 3.43 * * 残差 -2.55 * * * p<01,* p<05. 地悪」と捉える児童の割合が高かった。相手の行動の意. 学年をとおして器質的側面を知っても ADHD 児の意. 図を敵意と解釈した場合,その後攻撃行動が選択されや. 図についてポジティブな理解を保つ児童が大半であっ. すい(明田,1995)ことから,3年生にて ADHD 児は. た。詳細に発達的検討を行うと,1年生では混乱する児. 周囲とのトラブルが起きやすいことが予測される。しか. 童の割合が少なく,ポジティブな理解を保つ児童,ネガ. し一方で,間接的葛藤では「機嫌が悪かった」と気分要. ティブな理解へ変化する児童に分かれることが示され. 因へ帰属させる児童の割合が高くなり,ADHD 児の個. た。後者に対してはなぜネガティブな理解へ転換した経. 人的な事情に配慮する児童の存在が示された。. 緯について丁寧に捉えていく必要があると思われる。. さらに5年生になると,他学年に比べて間接的葛藤に おいて「他に理由がある」と外的要因に帰属する児童の. 3年生では他学年に比べて期待度数と観測度数との 間に有意な差が見られなかった。. 割合が高くなるのが特徴的である。間接的葛藤の状況で. 5年生では,ADHD 児の行動特性が器質的なものと知. あれば,ADHD 児と距離がとれ,外的要因に目を向け. ると混乱する児童の割合が多く,ポジティブな理解を保. る視点が芽生えると思われる。. つ児童が少なかった。高学年では他者との比較をとおし て相手の特性を理解する(川端,2003)ため,器質的な行. 研究2. 動と知ることで他者比較が困難になった結果,混乱して 【 方法】. 1. 対象者 通常学級に在籍する児童1・3・5 年生(研 究1と同様). しまうことが考えられる。また,器質的な難しさを持つ 相手の立場に立つことが難しく,相手の意図がわからな くなるのかもしれない。. 2. 実施. 学年別に,集団による質問紙調査を行った。. 2.Pre場面でネガティブな意図理解をしていた児童の変化. 3.手続き. 研究1に引き続き,以下の手続きを行った。. 2 =22.13,p<.05) 。 各セルの独立性が有意であった(χ(12). ①ADHD児理解の促し. 学年による意図理解の変化に有意な差が見られた(χ2. 12場面への回答終了後,A2大の図版により ADHD. (4)=14.24,p<.01,Table7) 。. 児理解を促す教示を行った。主人公の行動が器質的なも のであることを障がい名を用いずに説明した。後半,A 校には対人的関心を促し,B 校には長所を教示した。 ②介入後の意図理解について 12 の関わり場面について再度②と同様の質問を行った。. Table7 学年による意図変化の違い(Preネガティブ) 変化なし 変化あり 混乱 観測度数 13 22 9 22.00 4.51 1年生 期待度数 17.49 残差 -1.63 0.00 2.63 * * 観測度数 23 38 6 3年生 期待度数 26.63 33.50 6.87 残差 -1.20 1.46 -0.46 26 18 1 観測度数 22.50 4.62 5年生 期待度数 17.88 残差 2.93 * * -1.59 -2.11 * * * p<01,* p<05.

(4) 1年生では,混乱する児童の割合が多かった。ADHD. 起こしやすいのは中学年の時期であることが予想され. 児の器質的な背景を知ることでそれまでのネガティブ. た。なぜなら,3年生は直接的な葛藤場面で「わがまま. な理解が揺らがされやすいのかもしれない。しかし,ポ. だ」とパーソナリティ要因に帰属させる児童の割合が多. ジティブな変化でなく混乱してしまう心理的プロセス. い一方,P 場面では「他にわけがある」と外的要因に帰. について捉える必要があると思われる。. 属させる児童の割合が多く,ADHD 児の行動に対して. P 場面と同様に,3年生では他学年に比べて期待度数 と観測度数との間に有意な差が見られなかった。. もっとも厳しく評価する時期と思われたからである。N 場面における意図理解の仕方が P 場面における理解に. 5年生では混乱してしまう児童の割合が少ないと同. 影響していることが推察されるが,介入においては. 時に,ネガティブな理解が変わらない児童の割合が多く,. ADHD 児の長所を強調していくことが有効であること. P 場面と全く対照的な結果であった。器質的な行動特性. が示唆された。このように,発達段階に応じて理解の促. を持つと知っても「わがまま」とのネガティブな理解は. し方を工夫することが重要であると思われる。. 変化しにくく,高学年になるほど介入の効果が出にくい. その前段階にある1年生では他学年に比べて ADHD. ことが予想される。. 児の行動の意図が「わからない」と答える児童が多かっ. 3. ADHD児理解の促し方の効果に関する発達的検討. た。Piaget(1932)は,7歳頃までは行為の善悪について. ADHD 児理解の促し方の違いが児童の意図理解の変. 行為の結果をもとに客観的に判断することしかできな. 化に及ぼす効果は,学年(3・5年)によって異なるか. いと述べている。よって,ADHD 児の理解を促す際に. どうか検討するため3要因のχ二乗検定を行った。. は漠然と器質的特性を伝えるだけでなく,実際にトラブ. ネガティブ場面においてもともとネガティブな意図理. ルが発生した‘今ここ’において介入者が相手の意図を. 解をしていた場合,各セルの独立性が有意であった(χ. 丁寧に伝えて整理する必要があると思われる。. 2(7)=21.51,p<.01) 。促し方の違いが,意図理解の変. 一方5年生になると,間接的葛藤場面において外的要. 化に及ぼす影響について,学年による有意な差が見られ. 因に目が向けられるようになり,3年生のように表出さ. 。 た(χ2(2)=6.76,p<.05,Table8). れた行動に対する過敏さは収束するように思われた。し. Table8  学年&介入による意図理解の変化(N場面・Preネ ガティブ) 変化なし 変化あり 混乱 観測度数 17 5 0 12.57 0.53 3年生 期待度数 16.85 -0.86 残差 0.05 -2.95 * 対人的関心 14 1 観測度数 18 5年生 期待度数 14.09 10.51 0.45 残差 1.48 1.43 0.94 23 1 観測度数 15 13.03 0.55 3年生 期待度数 17.46 残差 -0.89 3.86 * * 0.71 長所 5 0 観測度数 13 10.89 0.46 5年生 期待度数 14.60 残差 -0.6 -2.39 * -0.78 * * p<01,* p<05. かし,5年生では器質的理解が必ずしもポジティブな変 化をもたらすとは言いがたく,より詳細に彼らの心理的 背景を捉えた上で効果的な理解の促し方を工夫する必 要がある。高学年児童は集団志向の高まりとともに信頼 できる相手かどうかという視点で友だちを選ぶように なる(明田,1995)ことから,ADHD 児をクラスメイト として仮定するか,親密な友だちとして仮定するかによ り回答が異なる可能性があり,仲間意識をふまえた理解 が不可欠であると思われる。. 3年生では,相手の長所を強調する方が相手の意図を ポジティブに捉え直すきっかけになりやすく,5年生で はきっかけになりにくいことが示された。. 【 今後の課題】 本研究では ADHD 児の行動の意図理解を発達的に捉. 3年生にとってはいかに能力を発揮するかが重要であ. え,ADHD 児の二次障がいの背景について考察したが,. り,行動で友だちを区別することから(小松ら,1999) ,. 関わり場面において生じる情動や,実際にとる行動との. 情緒的レベルより行動レベルで ADHD 児のポジティブ. 関連については直接検討されていない。今後は ADHD. な面への気づきを促す方が効果的であると考えられる。. 児と児童のコミュニケーションについて認知的レベル,. 一方,5年生では「他者評価と配慮」および「積極的他. 情緒的レベル,行動的レベルの側面からプロセスを追う. 者関与」が仲間意識で重要な要素となる〈荻原ら,1999〉. ことが課題である。また,教師による介入を受けて意図. ため,ADHD 児の優れた面を知るだけではポジティブ. の理解が変化する児童とそうでない児童とでは,介入の. に理解する視点は芽生えにくいと思われる。. 捉え方にどのような違いがあるのかについて検討の余 地があると思われる。. 【 総合考察】 以上より,もっとも ADHD 児が学級内でトラブルを.

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