岡 山大学 環境 理 工学 部研 究 報 告
第11巻,第1号, pp.107‑110,2006年3月
ポ リ( 乳酸 ‑エチ レングリコール) トリブロック共重合体の乳化特性
松本康夫● 北村吉朗● 吉滞秀打
Em
ulsifica d o n
PrDrde s o f P o l y ( l a c t i d e ‑ b l o c k d y l e n eg ly c
ol ‑ b l o c k ‑ l
ac t i c i d e ) Bl ukP o l y me r s Y a s u
oMATS UMOT O ,
Y o s h i m K T r AMU RA, Hi d e k a mYOS HI ZAWA
( Rec ei vedNovember 30,2005)
H
omか arK I c p 小一 耶 O fr x
)bOadc
ac叫 h a v e
紳m
txh attentim tx:cam O f加 計b
kKkgW nib
,arKIb
kxqn p a 曲
ih b
r・TTxyh a v en t J mC r O
uSa押 1i血 hせ 妃b i o me d i c a lG e l dd
LCtO止 血
FXb tia l
.h止 血 pbme r s , we a r e
htereddi n r
K)M Iadca c i d
hx)Mt t hy l e r k :g b c o l )b
l∝kr K ) b me r s .
1加 amp
hi p h i l i c
hbl∝kc o pb me r s , t x ) M pL‑
kK 血 a
ci
dlr x )
桝e d l y l e n eg b c o l
)・pM
pL‑ ぬ i ea c i d )
PLE
L),hv ek T X I V
m tOhts
urtiKd v e a b i 1 秒
Ttm fm
,weh a v e
shK h e de m
ulsi鮎由o n
pt耶de sw i
th 加 rx)b 仰e r S .PLELwe
repqdt
wr in g 叩 血 g c q p o bm
Tido no f D
L1actidean dr K ) Me d l y l e neg ly c o l ) c a h b z e db y
stannot J S2 d l y me X
arKde.We押 de d l y l
acetal
e ・
water ‑ P u Le mu l s i o n
an
dafPliedd l i se
mu ls i o nt o b 山野
∝bb l ef
D b ers c a qo l d s .PL As
ca氏
Il d swe r e
押 印r
db ya ne
mu l s i
onBceze‑dyi ng
medKd lltses c a qo l d swe r
em∝kb y
Ⅷγi n gwぬ we i g ht
触 LThe計st血 Fm SiZX!ぬ
me bS
er心血b c I で弘i n
gw
a虹 we i g ht
お 山 1.K
q W 血Z Po
bOa c d ca c i d ) , P o
Me d l y l e r k t g ly c o l ) , Bi
側め1 et x ) b m e r , T I M En 由I e ah g , S t
舶1
緒言近年、環境や人体に負荷の少ない生分解性高分子である ポ リ乳酸
( PLA)
が注 目されているoPI
A は生体適合性 ・ 生分解性を有することか ら、生体内における薬物や農薬、肥料 な どの徐放 制御 を 目的 と した マ イ ク ロカ プセル
( MC)
のマ トリックスとして用い られている。また、 PI . A
などの生体適合性の合成高分子はT is S ueEng i ne e r ing
に おいて、細胞の増殖や分化の足場 となる細胞外マ トリック ス‑の応用が期待 されている。PLAMC
は、主 としてエマルシ ョンの液中乾燥法によ り調製 され る。 これは、良溶媒にPL
Aを溶解 させ、界面 活性剤 を用いて水な どの貧溶媒 中に分散 させてエマル ションを調製 し、内相の良溶媒を蒸発 させ ることで
PI . A MC
を得る方法である。しか し、この方法ではエマルシ ョン調製時の機械的捷拝によ り油滴が多分散化する。そこで
岡山大学界境理 工学部衆境物質工学科
1()7
本研究では、微細かつ比較的単分散なエマルシ ョンを調製 することが可能な転相乳化法に注 目した。
転相乳化法は、界面活性剤 を用いて 目的 とす る型のエマ ルシ ョンと反対の型のエマル シ ョンを調製 し、温度や体積 比 を変化 させ ることによって 目的 とす る型のエマルシ ョ ンに転相 させ る方法である (竹内節,1999)。温度変化に よる転相乳化法は、ノニオン性界面活性剤の曇点を利用 し た乳化法であ り、転相温度付近では親水性 一疎水性バラン ス (HLB)が釣 り合 うため低界面張力場 とな り、微細な エマル シ ョンを調製す ることができる (紺野 ら,1999)。
一方、体積比の変化による転相乳化は、油相あるいは水相 にもう一方の相を枕拝 しなが ら加 え、転相点で十分捷拝す ることで粘度によるせん断的効果が働 き、微細かつ単分散 なェマルシ ョンを得る方法である (辻弗,1976)。
本研究では、疎水基に
PL
Aセ グメン ト、親水基に生体1 ( ) 8
岡山大学環境理工学部研究報告,ll(1)2006年適合性 に康れたポ リエチ レング リコール (PEG)セ グメ ン トを持つ両親媒性高分子であるPI.A‑PEG・PLA トリブ ロック共重合体 (PLEL)を用いて、転相乳化法によって エマルシ ョンを調製 し、その乳化特性 に関す る基礎的検討 を行 った。 また、疎水性 のPLELを用いて調製 した高内 相のW/0 エマル シ ョンを利用 し、細胞培養 を 目指 した生 分解性多孔質材料の創製 を試みた。
2
実検方法2.1PLELの合成 と評価
PLELの合成は 2・エチル‑ キサン酸スズを触媒 とした D,L・Lactideのバル ク重合によ り行 った.反応 スキームを Fig.1に示す。 まず、アンプル管にD,L・LactideとPEG
(重量平均分子量 :2000)を挿入 し、触媒 を加 えた。 1 時間減圧乾燥 した後、アンプル管を封管 し、130℃で24 時間反応 させた。反応後、未反応 のモ ノマーお よび PEG を取 り除 くため重合物 をクロロホルムに溶解 させ、メタノ ール 中での再 沈澱 操作 に よ り目的物 を得 た。 生成 した pLEいま】H・NMR(溶媒cDC)3)によ り構造 を確認 したo PI.ELの分子量及び分子量分布 をポ リスチ レンを基準物 質 とす るゲル浸透 クロマ トグラフィ (GPC)によ り測定
した。
2.2PLELの水溶性拭験
10wt% PLEL水溶液 を調製 し、25℃、150rpmで24 時間振 とうさせた後、水溶液の様子を 目視で観察 した。
2.31点測定
1wt%PLEL水溶液を調製 し、冷熱式セル温度 コン トロ ー ラーによ り連続的に温度 を変化 させ、水溶液中の濁度 を 波長600mmの吸光度によ り測定 した。昇温 ・降温速度は 1℃/mi皿とした。
2.4乳化実験
PLELを酢酸イ ソプ ロピルに溶解 させ、水:油=1:1 (重 量比)となるよ うに混合 し、ホモジナイザー(12,000rpm, 2min)によってエマル シ ョンを調製 した。エマル シ ョン の型は、サーキ ッ トテスターによる電気抵抗測定 よ り決定 した。PLELによる転相乳化は水/油の重量比 を変化 させ ることによ り行 った。まず、lwt%のPLEL酢酸イ ソプロ ピル溶液 を調製 した。その溶液 を (12,000rpm)で捷拝 しなが ら、W/0型か らOrW 型‑転相す るまで超純水また は水溶液PLELの1wt%水溶液 を少量ずつ滞下 した0
2.5PLAスポ ンジの調製 と評価
実験 に使用 したPLAとPLELの重量平均分子量はそれ ぞれ79,000、13,500 (PEG 2,000)である。Fig.2に
o o A yC
H3
HO
‑ r
Ok oHI
qc J y . 0
p E G
Di‑hc t i d e
catalyst
≡
130℃,24hr
0 0
寸 。 人 c 出。 H 3 へpLELは 。 八 ≠ C H 3
Fig.I SyntheticschemeorPLEL
Fig.2 PreparationnowchartofPLAsponge
T&bleI PreparationconditionofPLAsponge
Water:OilconcPeLAnb.alionconPceLELntrationconcWacrLttrearIIOncEtohynceln拡etrdltdeOn lwt%1 lwl%1 lwl%1 【wt%1
3755 5 5 2570 6530
64 54 36
73 63 27
PI.A スポンジ調製のフローチャー トを示す。PI.AO.25ど とPLEL0.25gを酢酸エチルに溶解 させ 、ホモ ジナイザ ー (12,000rpm)で捷拝 しなが ら超純水を加 え、W/0エ マルシ ョンを調製 した。調製 したW/0エマル シ ョンを24 時間凍結乾燥す ることでPLAを固化 させ、Pl.Aスポンジ を調製 した。調製後、デ シケー ター内で数 日間乾燥 させたo Tablelに調製条件 を示す。水 と酢酸エチルの重量比 を水:
酢酸エチル=3:7‑7:3と変化 させた。
得 られたPIJAスポンジの表面形態は走査型電子顕微鏡 (SEM)によ り観察 した。 また、細孔径分布 を水銀 ポ ロ シメー ターによ り測定 した。測定に用いたPLAスポンジ は測定前 日に窒素雰囲気 下、30℃ で一晩乾燥 させ た もの を用いた。サンプル量は0.05gとした。
吉揮 秀和ら /ポリ(乳酸‑エチレングリコール)トリフロック共重合体の乳化特性
3 実検結果と考察
3.1乳化実験
3 . 1 . 1
エマルションの型HIJBの異なるPIJELを用いて調製 したェマルシ ョンの 型をTablelに示す。TablelよりPLELのHLBが6以 下 (非水溶性)ではW/0エマルシ ョン
、7
以上 (水溶性) ではO/W エマルションを形成 し、水‑の溶解性がエマル ションの型を決定す る因子であることが分かった。これは 油溶性界面活性剤を用いた系では油相が連続相 とな り、水 溶性界面活性剤 を用いた系では水相が連続相 を形成す る とい うバンクロフ トの規則 と一致 した。以上 よ りPLEL のfW によりエマルションの型 を変化 させ ることが可能 であることが分かった。3.1.2体積変化による転相乳化
Fig.3に水相 と油相の体積比を変化 させた時のエマル シ ョンの光学顕微鏡写真を示す。まず、超純水を少量添加 した時、混合溶液は均一に乳化 され安定なW/0エマルシ ョンを形成 した。さらに水を滴下 し、水の体積比をかな り 大きくしたにも関わ らず、W/0 エマルシ ョンを保持 した ままであった。この時、分散液の粘度は著 しく増加 し、内 水清が密集 していることが分 か った(Fig.3・a)。 これ は PLELのHLBがかな り低いため、バ ンクロフ トの規則に 従 う水/油比の範囲が広いためであると考えられ る。次に、
水:油=1:7にした時、分散液の粘度が減少 し抵抗値が低下 したため、エマルシ ョンが転相 した と考えられ る。この と き分散液はW/0/W エマルシ ョンを形成 した(Fig.3・b)ま た、転相直後クリー ミングを起 こした。24hr後、このエ マルシ ョンを観察 した ところ、0ハⅣ エマルシ ョンとなっ た伊ig.3‑C)。これはW/0/W エマルシ ョンの内水滴が油滴 を介 して連続相の水‑拡散す るためであると考 えられ る。
一方、水溶性PI.ELのlwt%水溶液を南下 した場合、超 純水を清下 した時 と同様に、高内相のW/0エマルシ ョン を形成後、水:油=1:5で転相 した。この時、W/0/W エマル ションを形成 し、24hJ・後、0ハⅣエマル シ ョンを形成 した (Fig.3・d)。 しか し、超純水を滴下 した系 と比較 して油敵 は小 さく、エマルシ ョンは安定であった。これは親水基の PLELが0ハⅣエマルションを安定化 しているためである
と考えられ る。
3.2Pu スポンジの鋼製 3.2.1PLAスポンジの表面形態
調製 したPI.Aスポンジの表面SEM親秦の結果をFig.4 に示す。SEM写真 より、PI.Aの表面に多 くの孔が観察 さ れ、PI.A スポンジの調製に成功 した。細孔径がエマルシ ョンの清径 と同程度であることか ら、エマルシ ョンの凍結 乾燥によって水滴が蒸発 して細孔になった と考えられ る。
また、写真より内相である超純水の割合が増えるに従い、
TAble2 Emulsiontype ofWater/Tsopropylacetate/PLEL SyStem
PLEL PLA HLB solubility Cbud emulsion
〟レ Mw test pointr℃l tytx
ll124 9281 3.3 X W/0 6200 4357 5.9 × W/0 5637 3821 6.4 A W/0 5253 3410 7.0
●
0/W4567 2724 8.1
0
34.5 0/W 4274 2431 S.60
42.0 0/W water/Isopropylacetate/PLEL‑47.5/47.5/5(wt%)・Precipitation▲Dispersion●TraJISlucentOClear
(C)
50pm Fig.3 0pticalmicroscopeimagesofwater/isopropylacetate
/PLELemulsion,(a)water:oil=l:6,(b)water:oil‑I:7, (C)alter1dayof(b)and(d)aAer1dayofIwt% PLELaq:oil‑1:5
スポンジ表面の細孔が大きくなっているのが分かった。こ れは水滴が増加 し、内相の密度が高 くなったことで蒸発す る水の量が多 くな り、表面に多 くの穴があいたためと考え られ る。
3.2.2
P L
Aスポンジの水銀ポロシメーター5M定水銀ポロシメーター測定によ り得 られた各組成の PLA スポンジの細孔径分布をFig.5に、ピーク トップの細孔径 をTable3に示す。まず グラフよ り、細孔径が数nmか ら 数十nmよび数pmか ら数十pmの範囲に分布 していること が分かった。このよ うな細孔の大きさの違いは形成原因の 違いによるもの と考えられ る。数pmの孔の形成原因は酢 酸エチルが蒸発す ることでポ リマーが固化 し、残った水滴 が蒸発す ることにより、水滴部分が孔 となった と考えられ る。一方、数nmの孔の形成原因は凍結乾燥時の乾燥プロ セスであると考えられ る。凍結乾燥時、酢酸エチルが上部 か ら蒸発 してポ リマーが固化す るため、下部には蒸発 して いない酢酸エチルが存在 している。その結果、下部の酢酸 エチルが蒸発す る際、上部で固化 したポ リマーに孔をあけ ると考えられ る。
Fig.5における数pm付近の ピークに注 目すると、水の 109
110 岡山大学環境理工学部研究報告,ll(1)2006年
water:oil=3:7
water:oil=6:4
water:oil=7:3
Fig.4 SEMmicrographsofPLAspongesurfaces
割合の増加に伴い ピークが大きくな り、細孔径分布はシャ ープとなった。また、ピーク トップの位置が孔径の大きい 方‑シフ トしていることが分かった (Table3)。これ を以 下のよ うに考察 した。水の割合が小 さい場合、水滴が少な いため液滴密度が低 くなる。その結果、凍結乾燥後に細孔 同士が合体す る ことは少 な く比較的小 さい細孔 になっ
6420︻叫\tu3]uO!Srul亡
t
tC!PJa貞!凸叫01101 102 103 104
PoreDiameterlnm]
Fig.5 PoresizeDistributionofPLAsponge
Table3 Porediameterofpeaktop舟omFig.5 Water:Ethylacetat Diameterofpeaktoplnm]
3:7
約
450 0
5:5
約
550 0
6:4
約
6000 7:3約
7000た と考えられ る。一方、水の割合が大きい場合、水滴密度 が高いため液滴同士が接触 していると考えられ る。その結 果、凍結乾燥後に孔同士が合体 して大きな細孔になった と 考えられ る。以上 より、水の割合の増加に伴い、小 さな細 孔が減少 し孔径の大 きな方‑ ピー クがシフ トした と考 え
られ る。
4 轄言
pLELを界面活性剤 として用いてエマル シ ョンの調製を 試みた結果、PLELの水溶性 によってエマルシ ョンの型が 決定 された。
pLELを界面活性剤 として用いて調製 したW/0 エマル シ ョンを凍結乾燥 し、PLAスポンジの調製 を試みた とこ ろ、分散相の割合によってスポンジ表面の細孔径お よびス ポンジの細孔径分布が変化 したC
以上 よりPLELの乳化特性 を利用 しPLAスポンジの調 製が可能であ り、調製条件を変化 させ ることで表面形態お
よび細孔径分布の制御が可能であると言える。
参考文献
紺野義一,菅谷良夫,広部み どり,外尾恵美 (1999):転 相温度 (PTT)乳化法による微細エマルシ ョンの調艶 J. Soc.Cosmet.Chem.Japan,33,pp.59‑65
竹内節 (1999):界面活性剤 上手に使いこなすための 基礎知識,米田出版,p.102・127
辻薦 (1976):乳化 ・可溶化の技術 工学図書,p.66‑72