1
.はじめに母語ではない言語を習得することは、学習者が有している独自の言語体系、すなわち中 間言語の体系を目標言語の体系に近づける過程である(Selinker 1972)。日本語に関して いえば、日本語学習者(以下、学習者)が目標言語である日本語を習得することは、学習 者の有している中間言語の体系を日本語母語話者(以下、母語話者)の有している体系に 近づけることである。
本稿では、Selinker(1972)の中間言語の立場をとり、ガ格の名詞句をマークする「は」
と「が」を一つの事例として取り上げ、学習者の中間言語の体系と母語話者の目標言語の 体系を、「は」と「が」の使い分けに着目して比較する。また、学習者が母語話者と同様 に「は」と「が」を使い分けられるようになるため、どのような支援が必要かを考察する。
本稿では、2.で「は」と「が」の使い分けに関する先行研究を概観し、先行研究の課題、
および問題点を述べる。3.では、研究目的を示す。4.では、行った調査を紹介し、5.で
―日本語母語話者と日本語学習者による 空所補充の比較から―
ゲオルギエバ ベロニカ
要 旨
本稿は、ガ格の名詞句をマークする「は」と「が」の使い分けについて考察する。
「は」と「が」の使い分けについては、母語話者間で揺れていることが指摘されて いる(長友1992、野田1996)が、日本語教育では二者択一であるかのように扱わ れている。本稿では、母語話者10名と学習者30名を対象に、空所に助詞を記入 する空所補充調査と、空所に助詞を記入した理由を説明する口頭調査を行い、「は」
と「が」の使い分けの差異とその差異が生じる原因を明らかにした。調査結果か ら、母語話者は文脈の解釈に基づいて「は」と「が」を使い分け、同一個人が同 一箇所に両方の助詞を使用可能とする傾向があった。一方、学習者は隣接する言 語環境にある言語形式に基づいて「は」と「が」を使い分け、両方の助詞を使用 可能とする傾向が弱かった。つまり、学習者は母語話者と異なり、「は」と「が」
の使い分けが二者択一であるとして捉えていることが分かった。
キーワード
「は」と「が」の使い分け 二者択一 個人内の揺れ 個人間の揺れ 解釈
は、調査結果と考察を述べる。6.では、結論と今後の課題を示す。
2
.「は」と「が」に関する先行研究2.1.では、母語話者と学習者による「は」と「が」の使い分けに関して、先行研究で明 らかになっていることを概観する。2.2.では、先行研究の課題、および問題点を述べる。
2.1.先行研究の概観
2.1.では、「は」と「が」の使い分けに関して先行研究で明らかになっていることを母 語話者と学習者の順に概観する。
まず、母語話者の「は」と「が」の使い分けに関しては、三尾(1948)、久野(1973)、
北原(1981)をはじめとする日本語学の膨大な蓄積がある。これらの先行研究では、「は」
と「が」以外が同一である文が取りあげられ、「は」が用いられた場合と、「が」が用いら れた場合の違いが説明されている。「は」と「が」の使い分けを論ずる前提として、一方 の助詞のみが使用可能であり、他方の助詞が使用不可能である言語的文脈を取り上げてお り、その前提のもとにそれぞれの助詞が当該の言語的文脈において果たす機能を論じてい る。つまり、「は」が使用される言語的文脈と、「が」が使用される言語的文脈が異なると いう前提に立って、異なる言語的文脈のもとで「は」と「が」の使い分けが扱われている。
しかし、長友(1992)は、母語話者を対象に川端康成の『雪国』の冒頭部分を使った空 所補充調査の結果から、たとえ同じ言語的文脈が与えられたとしても、そこで「は」と
「が」のどちらを使用するかは一律ではないことを明らかにした。長友(1992)では、川 端康成の『雪国』の冒頭を使った空所補充調査により、被調査者全229名が同一空所に記 入した助詞が必ずしも一致しなかったことを明らかにした。そして、被調査者が同一空所 に記入した助詞が一致しない現象を揺れと呼び、被調査者が「は」と「が」のどちらを選 ぶかという揺れは、規則的かつ系統的なものであると指摘した。つまり、同じ言語的文脈 において「は」と「が」の両方が使用可能な場合があることが明らかになった。
また、野田(1996)でも同様に、同じ言語的文脈では、使用される助詞が必ずしも一致 するとは限らないと述べている。野田(1996)は、同じ形式で書かれた同じ内容の新聞記 事の冒頭の文を例に、「は」と「が」の使用に揺れがあることを証明した。そして、どち らの助詞を使用するかが決まるのは、主題をもつ文にするかしないかに因り、主題をもつ 文ともたない文の使い分けの規則には相対的なものが多いと指摘している。
以上をまとめると、母語話者の「は」と「が」の使い分けに関しては、同じ言語的文脈 において、一方の助詞のみが使用可能であり他方の助詞が使用不可能である場合がある一 方、両方の助詞が使用可能である場合もあることがわかる。つまり、「は」と「が」の使 い分けが二者択一である場合と、二者択一ではない場合が存在するということである。
次に、学習者による「は」と「が」の使い分けについて明らかになっている点を二つ述 べる。第一に、学習者の日本語レベルまたは母語にかかわらず、「は」は「が」より正用 率が高く先に習得されることが明らかになっている(八木1998)。第二に、機能別に使用 状況をみると、主題の「は」・目的語の「が」・対象の「が」は正用順序が高いが、主語の
「が」・対照の「は」は正用順序が低いこと(小森早・坂野1988、八木1996、富田1997、
坂本1998)が明らかになっている。しかし、これらの先行研究では、母語話者の正誤判
断が統一された箇所のみを調査対象とし、正誤判断が分かれた箇所を調査対象外としてい る。また、正誤判定が分かれた箇所に関しては協議のうえで正誤を決めている研究もある
(八木1996)。つまり、これらの先行研究では、「は」と「が」の使い分けが二者択一であ
る場合のみを調査対象としており、両方の助詞が使用可能である場合を調査対象外として いる。したがって、同じ言語的文脈において「は」と「が」の両方が使用可能である場合 に、学習者はどのように「は」と「が」を使い分けているかは、未だ明らかになっていな いのである。
学習者に関して、「は」と「が」の使い分けが二者択一ではない場合を扱っている先行 研究は、長友(1991)のみである。長友(1991)では、以上に述べた長友(1992)と同 一の調査を上級の学習者全61名を対象に実施し、韓国語母語話者(29名)と中国語母語 話者(32名)の回答を、母語話者(229名)の結果と比較することにより、学習者の母語 別に助詞の使用実態を考察している。その結果、母語話者に観察された揺れは、学習者 の中間言語にも観察されることが分かった。また、母語話者と韓国語母語話者の相関が 0.81であるのに対し、中国語母語話者との相関は0.53と低いことが明らかになった。長 友(1991)では、母語による相関の差異は、類型論的に日本語に近い韓国語母語話者に母 語の正の転移が働き、類型論的に遠い中国語母語話者では母語の転移が働かないことに因 ると説明している。
以上をまとめると、学習者に関しては、一方の助詞が使用可能であり他方の助詞が使用 不可能である、異なる言語的文脈における「は」と「が」の使い分けは明らかになってい る。一方、両方の助詞が使用可能である、同じ言語的文脈における「は」と「が」の使い 分けは未だ十分に明らかになっているとはいえない。
2.2.先行研究の課題
2.2.では母語話者と学習者による「は」と「が」の使い分けに関して、先行研究で未だ 十分に明らかにされていない課題、および先行研究の問題点について述べる。
第一に、未だ十分に明らかにされていない課題とは、同一箇所に両方の助詞が使用可能 である場合、「は」と「が」がどのように使い分けられているかという課題である。長友
(1991、1992)、野田(1996)以外の先行研究では、異なる言語文脈における「は」と「が」
の使い分けが二者択一である場合のみを扱っており、両方の助詞が使用可能である場合を 扱っていない。しかしながら、長友(1991、1992)、野田(1996)では、同一の言語的文 脈において両方の助詞が使用可能である場合を扱っており、ある箇所に「は」と「が」の どちらを使用するのかは個人間で異なることがあると指摘されている。本稿においては、
ある箇所に「は」と「が」のどちらを使用するのかが、個人間で異なるという現象を「個 人間の揺れ」と呼ぶこととする。
長友(1991、1992)、野田(1996)では「個人間の揺れ」が存在するとの指摘に留まっ ており、同一個人が両方の助詞を使用可能と判断する場合があることには言及していな い。しかし、実際の使用においては、同一個人が両方の助詞が使用可能であると判断し、
最終的にどちらがより適切かを考え、迷うことがあるのではないか。同一の言語的文脈で は、「は」と「が」のどちらを使用するかが、個人間で異なる現象だけに留まらず、同一 個人内で異なる現象、言い換えれば同一個人が両方の助詞を使用可能と判断して「は」を 使うのか「が」を使うのかで迷う現象も視野に入れた上で、「は」と「が」の使い分けを 論じる必要があると考えられる。本稿では、同一個人がある箇所に「は」と「が」の両方 を使用可能であると判断する現象を「個人内の揺れ」と呼ぶ。そして、「個人間の揺れ」
と「個人内の揺れ」を合わせて、「揺れ」と呼ぶ1。
先行研究においては、同一個人が両方の助詞を使用可能と判断する「個人内の揺れ」が 扱われてこなかった。その理由の一つには、先行研究における調査方法が関係していると 考えられる。長友(1991、1992)における調査では、空所に入る助詞を一つに限定してい た。そのため、仮に被調査者が二つ以上の助詞を使用可能と判断したとしても、その事実 が調査結果に反映されることはなかったのである。また、野田(1996)では、調査対象に 新聞記事が用いられていたため、「個人内の揺れ」を観察することが不可能である。その ため、「は」と「が」の選択を一つに制限した調査方法で「は」と「が」の使い分けを明 らかにすることには限界があるといえる。同一箇所に両方の助詞が使用可能である場合に は、「は」と「が」がどのように使い分けられているかを明らかにする必要がある。両方 の助詞が使用可能である際、「は」を用いた場合と「が」を用いた場合で、何が異なるか は未だ十分に明らかにされていない。
第二に、先行研究の問題点とは、「は」と「が」の使い分けを調べる際に用いられる調 査方法に関する問題点である。2.1.で述べた先行研究は、研究者の内省の分析に基づいた 結果の考察であり、実際にその助詞を使用した当人の内省を踏まえた考察ではない。しか し、研究者の内省ではなく、その助詞を使用した当人の内省を言語化した形でのデータに 基づいて、「は」と「が」の使い分けの原因を明らかにする必要がある。
以上をまとめると、「は」と「が」の使い分けを明らかにするためには、どちらか一方 の助詞だけに使用を限定しない調査方法で、「は」と「が」がどのように使い分けられ ているか、またその使い分けの差異が生じる原因は何かを明らかにする必要があるとい える。
このように2.では、「は」と「が」の使い分けに関する先行研究を概観し、未だ十分に 明らかにされていない課題、および問題点を述べた。次の3.では研究目的を述べる。
3
.研究目的学習者は自らの頭の中に、どのような文法体系を構築し、「は」と「が」を使い分けて いるのか。その実態を明らかにすることは、日本語教育に求められる支援を考えるために 必要である。このような認識のもと、本稿では、「は」と「が」のいずれかのみが使用可 能な場合だけでなく、両方が使用可能である場合も含め、学習者が「は」と「が」をどの ように使い分けているかを考察する。具体的には、「は」と「が」の使い分けについて次 の(1)で示す二つのリサーチ・クエスチョンを設定し、それを明らかにする。
(1)リサーチ・クエスチョン(以下、RQ)
RQ1: 同一個人によって、同一箇所に「は」と「が」の両方が使用可能であると判
断される場合があるか。また、その判断は、母語話者と学習者では異なるか。
RQ2: 同一個人が同一箇所に「は」と「が」の両方を使用可能と判断する原因は何
か。また、その原因は、母語話者と学習者では異なるか。
以上、3.では、研究目的を述べた。次に4.では、調査概要を紹介する。
4
.調査概要4.では調査概要を紹介する。4.1.では調査方法、4.2.では対象とした被調査者の概略、
4.3.では得られたデータの例と分析方法を示す。
4.1.調査方法
本稿では、二つのRQを検証するために、二つの調査を行った。まず、一つ目の調査と して、回答を一つに限定しない空所補充調査を行った。この調査では、被調査者に対し、
筆者が作成した文章に含まれる空所に助詞を記入させ、文を完成させた。この調査の目 的は、RQ1を明らかにするため、被調査者の助詞の使用を実証的に検証することである。
空所補充調査の資料として、 Frog, Where Are You? 2という絵本を用いた。この絵本は、
子供向けの30ページの絵本であり、全く文字がなく、絵のみでストーリーが分かるよう になっている。絵本のそれぞれのページには、筆者が作成した、ところどころ助詞が抜け て空所となっている空所補充の文章を合わせて提示した。この空所補充の文章を以下の通 りに作成した。まず母語話者3名に絵本を見せてストーリーを自由に語ってもらい、その データに基づいて文章を作成した。次に、この文章に入っている助詞の63箇所を空所と し、空所補充の文章を作成した。全63空所のうち、本稿での分析対象とする「は」と「が」
の空所は46、「は」と「が」以外の助詞の空所(ダミーの空所)は17である。なお、空
所補充の文章を本稿末尾に資料1として付した。
本稿で分析対象とした「は」と「が」は、統語的な観点から「は」と「が」の両方が使 用できるガ格の名詞句をマークするものに限定している。すなわち、本稿で分析対象とし た「は」は主題化されたガ格の名詞句をマークするものであり、分析対象とした「が」は 主題化されていないガ格の名詞句をマークするものである。なお、ガ格以外の名詞句を マークする「は」は、統語的な観点から「は」と「が」の両方が使用できないため、分析 対象としない3。
回答方法としては、同じ空所に複数の助詞を使用可能とし、助詞の選択に制限を設けな かった。被調査者が同じ空所に二つ以上の助詞が使用可能であると判断した場合、その判 断を調査結果に反映させられるようにするためである。被調査者に与えた指示は、「空所 に入ると思う助詞を全部書いてください。一つだけが使えると思ったら、一つを書いて、
一つ以上の助詞が使えると思ったら、その全部を書いてください。」である。以下では、空 所補充調査によって得られたデータ、つまり被調査者が記入した助詞を「データ1」とする。
また、二つ目の調査として口頭調査を行った。口頭調査では、被調査者当人が空所補充 調査でそれぞれの記入した助詞を使用した理由について、被調査者当人に口頭で説明させ た。口頭調査は、空所補充調査と同時に実施した。つまり、被調査者は、助詞を記入する と同時に、口頭でその助詞を記入した理由を説明した。この調査の目的は、RQ2を明ら かにするため、被調査者当人に助詞を記入した理由を語ってもらうことにより、被調査者 の頭の中で起きていることを実証的に検証することである。被調査者に与えた指示は、「空 所に助詞を書きながら、その助詞を記入した理由を説明してください。」である。口頭で の説明は、全て録音録画し文字化した。以下では、口頭調査によって得られたデータ、つ まり、被調査者が口頭で述べた説明を「データ2」とする4。
4.2.被調査者
2.1.で取り上げた長友(1991)では、学習者の回答に現れる「揺れ」には、母語が影響 を与えていると指摘されている。このような長友(1991)の知見を踏まえて、本稿におい ても、母語との関わりを視野に入れて、「は」と「が」の使い分けを調査する。調査1お よび調査2ともに、母語話者(以下、JNS)10名と母語の異なる学習者(同、NNS)30 名を調査対象とした。以下では、被調査者の概略をJNSとNNSの順で示す。
まず、JNS10名は大学院で日本語教育を専攻している。日本語教育を専攻している者を 対象としたのは、二つ目の調査である口頭調査において、被調査者に対してメタ言語での 説明が要求されるためである。日本語教育を専攻している者の方が、一般の人より、無意 識的に使用している「は」と「が」の使い分けについてメタ言語で説明することができる のではないかと判断したためである。
そして、NNSに関しては、母語の内訳は、主語と主題の卓越の側面から類型的に異な る言語(Li and Thompson 1976)の母語話者を選んだ。Li and Thompson (1976)は、主 語と主題が果たす役割の観点から、世界の諸言語は、4種類に分類されると述べている。
その4種類とそこに分類されている言語の例は、(2)のようにまとめられる。
(2) a )主語卓越型と主題卓越型のいずれもある言語:日本語、韓国語 b )主題卓越型の言語:中国語
c )主語卓越型の言語:インド・ヨーロッパ言語
d )主語卓越型と主題卓越型のいずれもない言語:タガログ語
a)は、主語・述語という文法関係、および主題・コメントという文法関係の両方が明 示的に区別され、両方ともが重要な役割を果たす言語である。また、b)は、主題・コメ ントという文法関係のみが構文において重要な役割を果たす言語であるのに対し、c)は、
主語・述語という文法関係のみが重要な役割を果たす言語である。そしてd)は、主語と 主題がどの文においても区別できないほど融合されている言語である。本稿では、(2)の 分類を視野に入れ、主語と主題の卓越の観点から、日本語と同じカテゴリーに分類されて いる言語と異なるカテゴリーに分類されている言語の母語話者を対象に調査を行い、学習 者の母語が「は」と「が」の使い分けに与える影響についてより普遍的な考察を目指した。
そこで、日本語と同じくa)「主語卓越型と主題卓越型のいずれもある言語」のカテゴ リーに分類されている韓国語の母語話者を被調査者として選んだ。そして、日本語と異な るカテゴリーに分類されている言語の母語話者として二つのグループを設けて、b)「主題 卓越型の言語」のカテゴリーに分類されている中国語と、c)「主語卓越型の言語」のカテ ゴリーに分類されているブルガリア語の母語話者を被調査者として選んだ5。人数は、韓 国語・中国語・ブルガリア語、三言語の母語別に10名ずつ、計30名とした。以下では、
これらの母語別の10名ずつを、それぞれ、韓国語母語話者のグループ(以下、KNS)、中 国語母語話者のグループ(同、CNS)、ブルガリア語母語話者のグループ(同、BNS)と 呼ぶことにする。
NNSの日本語レベルは、上級以上とした。「は」と「が」の使い分けは文より談話にか かわる場合が多いため、NNSは談話を理解したり、生成したりする言語能力を身につけ ている必要があると考えたためである。
日本語レベルが上級以上であるという判断は、日本国内の大学において日本語で授業を 受ける能力を身につけていることを基準とした。つまり、NNSは国内の大学または大学 院に在籍し、日本語で授業を受けている者、あるいは国内の大学において日本語で授業を 受け、卒業した後、日本で就職している者である。調査当時は、全員日本に滞在している6。
母語別の、日本国内滞在期間と国外学習期間の平均を、表1にまとめる。
表1 NNSの母語別に見た日本国内滞在期間と国外学習期間との平均
国内滞在期間 平均 (最短〜最長) 国外学習期間 平均 (最短〜最長)
KNS 2年6月 (0年7月〜7年0月) 4年7月 (2年0月〜6年6月)
CNS 1年8月 (0年4月〜4年0月) 5年4月 (3年0月〜7年0月)
BNS 3年6月 (0年4月〜9年6月) 3年0月 (0年0月〜6年5月)
表1からは、被調査者の国内滞在期間と国外学習期間が一律ではないことが分かる。海 外での学習期間が長い者がいる一方、国内滞在期間が長い者もいる。しかし、被調査者全 員が日本の大学において日本語で授業を受けるために必要な日本語能力を持っていると判 断されている点では、同様である。その能力を基準に、本稿では被調査者の日本語レベル は上級以上であるとする。
4.3.データ例と分析方法
4.3.では二つの調査で得られたデータ例を示し、分析方法を記述する。まず、4.3.1.で は、「データ1」、つまり被調査者が文章中の空所に書き込んだ回答について述べる。次に、
4.3.2.では、「データ2」、つまり被調査者が空所補充調査で空所に書き込んだ助詞につい
て口頭で説明した回答について述べる。
4.3.1.「データ1」の場合
4.3.1.では、「データ1」の例として空所[7]とそこに記入された回答を紹介する。以
下の(3)では、空所[7]が含まれる文を示す。
(3) 次の日の朝、トムとポピー[6] 起きてみると、昨日の夜までいたかえる君
[7] どこにもいません。
空所[7]に記入された助詞を母語別にまとめた結果は、表2の通りである。表2では、
一つの空所に対して、各母語話者グループに入っている被調査者10名が記入した回答を 示しているため、合計の回答数はどの母語話者のグループにおいても10である。複数の 助詞を書き込むことを可能としているため、被調査者が書き込んだ回答には、(a)「が」
のみが書かれているものと、(b)「は」のみが書かれているものと、(c)「は」と「が」の 両方が書かれているものと、(d)「は」と「が」以外の助詞7が書かれているものの4通 りがある。
表2 空所[7]に記入された助詞
助 詞 JNS NNS
KNS CNS BNS
(a)「は」のみ 1 7 10 5
(b)「が」のみ 2 2 0 4
(c)「は」と「が」 7 1 0 1
(d)「は」と「が」以外 0 0 0 0
合計 10 10 10 10
表2から分かることは、次の通りである。空所[7]において、(a)「は」のみが記入さ れた回答は、JNSでは1、KNSでは7、CNSでは10、BNSでは5である。一方、(b)「が」
のみが記入された回答は、JNSでは2、KNSでは2、CNSでは見られず、BNSでは1である。
そして、(c)「は」と「が」の両方が記入された回答は、JNSでは7、KNSとBNSではそ れぞれ1ずつ、CNSでは見られないことが分かる。また、どの言語の母語話者グループ においても、(d)「は」と「が」以外の助詞が記入された回答は見られないことが分かる。
以上、「データ1」の例を紹介した。
そして、「データ1」を次のような方法で分析した。空所[7]において、母語話者グルー
プ別に「は」と「が」の使い分けに見られる差異について、次のことがいえる。CNS以 外の被調査者、つまりJNS、KNSとBNSでは、使用可能であると判断される「は」と「が」
が被調査者によって異なり、それぞれの母語話者内で回答が統一されていないことが分か る。一方、CNSの全10回答は(a)「は」のみであり、CNS内で回答が統一されているこ とが分かる。
空所[7]において見られる「揺れ」について具体的にいうと、「は」と「が」のどちら を使用するのかが人によって異なる「個人間の揺れ」と、同一個人が「は」と「が」の両 方を使用可能であると判断する「個人内の揺れ」の両方が見られる。母語話者グループ別 に(a)「は」のみの回答と(b)「が」のみの回答を合わせると、被調査者によって使用さ
れる助詞が異なる「個人間の揺れ」がある回答は、JNSでは3であるのに対し、KNSと BNSではそれぞれ9ずつである。これは、長友(1991、1992)、野田(1996)で報告され ている、同一箇所に使用される助詞が個人によって異なる現象と同じであると考える。ま た、「個人内の揺れ」がある回答は、JNSでは7であり、KNSとBNSにそれぞれ1ずつ である。
本稿では、同一箇所に「は」と「が」の両方が使用可能であると判断されるかという RQ1を明らかにするため、被調査者が使用する助詞を「個人内の揺れ」の有無の観点か ら分析する。例として空所[7]における回答を分析した結果を表3で示す。「は」と「が」
の両方が記入されている回答を「個人内の揺れ」ありとし、「は」と「が」のどちら一方 のみが記入されている回答を「個人内の揺れ」なしと分類した。
表3 「個人内の揺れ」の有無別に見た空所[7]における回答数
「個人内の揺れ」の有無 JNS NNS
KNS CNS BNS
「個人内の揺れ」あり 7 1 0 1
「個人内の揺れ」なし 3 9 10 9
合計 10 10 10 10
表3からは、「個人内の揺れ」がある回答は、JNSでは7であり、KNSとBNSにそれ ぞれ1ずつであることがわかる。つまり、空所[7]では、両方の助詞が使用可能である と判断した被調査者は、JNSでは7名と多く、KNSとBNSでは1名と少なく、CNSでは いないということである。ここから、母語別に見ると、両方の助詞が使用可能であると判 断する現象は、JNSと同じくKNSとBNSにおいても見られるが、両方の助詞が使用可能 と判断する被調査者の人数はJNSより少ないということが分かる。また、CNSでは全く 見られないので、母語別に差異があるといえる。
このように、以下の5.1.では、分析対象の46空所において記入された回答を「個人内 の揺れ」の有無の観点で分析することにより、RQ1を検証する。つまり、JNSとNNSでは、
同一箇所に「は」と「が」の両方が使用可能であると判断されるか、またJNSと比較し、
NNSの判断には母語別に差異が見られるかを検証する。
4.3.2.「データ2」の場合
4.3.2.では、口頭調査で得られた「データ2」、つまり被調査者が口頭で説明した回答に
ついて述べる。以下では、被調査者による口頭での回答を示す際に、まず該当の空所が含 まれる文を示し、次に被調査者の回答を記述する。被調査者の回答では、最初に【 】内 に被調査者番号と記入された助詞を示した後、口頭で説明された回答を示す。例として、
空所[7]に関して母語の異なる4名の被調査者が記入した助詞と口頭での説明を挙げる。
まず(4)で空所[7]が含まれる文を示す。(5)〜(8)では、記入された助詞と口頭の説 明を示す。
(4) 次の日の朝、トムとポピー[6] 起きてみると、昨日の夜までいたかえる君
[7] どこにもいません。
以下の(5)〜(8)は空所[7]に対する回答である。(5)では、空所[7]に「は」と
「が」の両方の助詞を記入した、JNSである被調査者J6の口頭による説明を示す。また、
(6)〜(8)では、空所[7]に同様に「は」のみを記入した、NNS3名の回答を、KNSで あるK4、CNSであるC3、BNSであるB2の順で示す。
(5)【J6 :は・が】「が」と「は」両方。「が」を言った方がかえる君が強調される。
(6)【K4 :は】7番は否定文だから「は」。
(7)【C3 :は】「何々はどこどこにいるいない」という決まった言い方があるから「は」。
(8)【B2 :は】「いない」は否定形だ。
(5)から、JNSであるJ6が空所[7]に両方の助詞を書き込み、「「が」と「は」両方。「が」
を言った方がかえる君が強調される。」と口頭で述べたことが分かる。J6は、両方の助詞 を使用可能としているが、「が」を用いた場合の効果についてのみ説明している。J6の
「「が」を言った方がかえるくんが強調される」とは、ガ格の名詞句が強調されるか否かに よって、助詞が使い分けられていることを示唆していると解釈できる。
またNNSの回答について言えば、(6)と(8)から、それぞれK4とB2は同様に後続 する述語の否定形を手がかりに「は」を記入していることが分かる。それに対し、(7)か らC3は述語の「いる」が用いられる文型を手がかりに「は」を記入していることが分かる。
(5)〜(8)から、JNSではガ格の名詞句が強調されるか否か、NNSでは述語を手がかりに、
「は」か「が」が使い分けられていることが指摘できる。
5.2.では、口頭調査で得られた「データ2」を46の空所ごとに分析した結果、一方の助 詞のみを使用可能であるとする被調査者と、両方の助詞を使用可能であるとする被調査者 の回答の差異を分析することにより、RQ2を検証する。つまり、「は」と「が」の使い分 けの原因は何か、その原因は、JNSとNNSで差異が見られるかを検証する。
5
.結果と考察5.1.では、分析対象の46空所において記入された助詞、つまり「データ1」を「個人内 の揺れ」の有無の観点で分析する。この分析により、JNSとNNSでは、同一箇所に「は」
と「が」の両方が使用可能であると判断されるか、またJNSとNNSではその判断が異な るかを考察する。そして5.2.では、「データ2」を分析し、「は」と「が」の両方が使用可 能と判断される原因について考察し、JNSとNNSではその原因が異なるかを記述する。
5.1.「データ1」の分析
5.1.ではまず46空所に記入された「は」と「が」の回答を「個人内の揺れ」の有無の 観点から分析した結果について述べる。母語別の結果を以下の表4に示す。
表4 「個人内の揺れ」の有無別に見た全46空所における回答数
「揺れ」の有無 JNS NNS
KNS CNS BNS
「個人内の揺れ」あり 49 34 13 8
「個人内の揺れ」なし 399 403 414 420 合計8 448 437 427 428
表4のJNSの回答を見ると、先行研究で扱われてこなかった「個人内の揺れ」ありの 回答は49であり、「個人内の揺れ」なしの回答は399であることが分かる。このことから、
両方の助詞を使用可能であると判断することがあるということが明らかになった。すなわ ち、日本語において「は」と「が」の使い分けは、一方の助詞を使うと正用になり、もう 一方の助詞を使うと誤用になるという二者択一ではなく、両方の助詞が使用可能である場 合があるといえる。
また、「個人内の揺れ」は、どの母語話者グループにも存在するということが分かった。
具体的に見ていくと、「個人内の揺れ」がある回答は、JNSでは49と最も多く、KNSで は34であり、CNSとBNSではそれぞれ13と8と、非常に少ないことが分かる。ここか ら、「は」と「が」の両方を使用可能とする傾向は、NNSにも見られるものの、JNSの両 方を使用可能とする傾向の強さとの間において差が見られることが指摘できるが、果たし て有意に異なると言えるのだろうか。そこで、母語別に回答に有意差があるかを明らかに するために、SPSSの統計ソフトによるクラスカル・ウォリス検定9を用いた。その結果、
「個人内の揺れ」に関しては、5%の有意水準で有意差があることが明らかになった。その 検定で得られた検定統計量を表5にまとめる。
表5 「個人内の揺れ」に関する検定統計量 カイ 2 乗 15.083
自由度 3
P値 (漸近有意確率) 0.0017467
表5からP値は検定事前に定めた5%の有意水準より小さいことが分かる。つまり、「個 人内の揺れ」に関しては、母語別に回答に有意差があることが明らかになった。
次に、JNSとどの言語の母語話者間に有意差があるかを検証するために、マン・ホイッ トニイのU検定を用いた。その結果を表6にまとめ、次頁に掲載する。
表6から「個人内の揺れ」に関して分かることは次の通りである。ボンフェローニの修 正後に有意水準が1.7%と下がったため、JNSと有意差があるのはCNSとBNSのみである。
KNSとJNSの回答には有意差が見られなかった。このことから、「主題卓越型の言語」を 母語とするCNSと「主語卓越型の言語」を母語とするBNSでは、「個人内の揺れ」があ る回答は、JNSの回答より有意に少ないということが分かった。
また、日本語と同じく「主語卓越型と主題卓越型のいずれもある言語」を母語とする KNSの回答にはJNSと有意差がなかったことが分かった。
以上をまとめると、JNSと比べ、CNSとBNSにおいては、同一箇所に両方の助詞を使 用可能とする「個人内の揺れ」が有意に少ないことが指摘できる。また、同一箇所にJNS と同じく両方の助詞を使用可能としたのは、KNSのみである。5.2.では、被調査者が助詞 を記入した理由を考察し、母語により「個人内の揺れ」の現れ方に差異があるという結果 の原因を検討する。
5.2.「データ2」の分析
5.2.では被調査者が口頭で助詞の記入理由について説明した「データ2」を分析し、一 方の助詞のみを使用可能とした被調査者と、両方の助詞を使用可能とした被調査者との間 で、使用された助詞に差異が現れる原因、つまり「揺れ」が現れる原因を探る。5.2.1.で JNSの回答を検討し、5.2.2.でNNSの回答をJNSの回答と比較しながら検討する。
5.2.1. JNSによる口頭説明
5.2.1.ではJNSの「データ2」を分析し、「揺れ」が現れる原因を考察する。
まず、同一空所において「は」と「が」の両方が記入された三つの回答を取り上げ、そ れぞれの被調査者が「は」を使用した場合と「が」を使用した場合では何が異なると説明 しているかを考察し、「個人内の揺れ」が現れる原因を検討する。例として4.3.で取り上 げた空所[7]を挙げる。(9)では空所[7]を含む文を示し、(10)〜(12)では空所[7]
に関する三つの回答を取り上げる。三つの回答とも、両方の助詞の使用を認めているが、
(10)と(11)には「は」が先に記入されており、(12)には「が」が先に記入されている。
(9) 「次の日の朝、トムとポピー[6] 起きてみると、昨日の夜までいたかえる君
[7] どこにもいません。
(10) 【J1:は・が】どっちでも行けると思ったのは、事実として静かにいなくなったと きに「は」で、かえる君に注目する、スポットが当たって「が」だ。その二つの 視点をどっちでも選べる。
(11) 【J4:は・が】どっちでもいい。「が」の方がトムとポピーの気持ちになっている 気がする。「は」だと、この本を書いた人の気持ち、立場だという感じがする。「が」
だと気持ちが入る。読み手もこの気持ちになる。
表6 JNSと他の母語との比較から見た「個人内の揺れ」
に関する検定統計量
比較したグループ Z値 P値 (漸近有意確率)
JNSとKNS −1.954 0.0506718 JNSとCNS −3.026 0.0024781 JNSとBNS −3.583 0.0003396
(12) 【J7:が・は】「が」だと、「あ、かえる君がなくなっちゃった。」で、リアルに感 じられる。「は」だと、淡々と事実を描写している。目の前に起こっている、あざ やかに現場を呼び起こすのは、「が」。
(10)でJ1は、蛙がいなくなったことを物語の一つの出来事として描写して際立たせな い場合に「は」を用い、蛙がいなくなったことに焦点を当て際立たせる場合に「が」を用 いると説明している。また、(11)でJ4は、「は」を用いれば、語り手の視点から一つの 出来事を描写するニュアンスが伝わるが、「が」を用いれば主人公の視点から出来事に焦 点を当てるニュアンスが伝わると説明している。そして、(12)でJ7は、目の前に起こっ ているようにリアルに描写する際「が」を用い、淡々と事実として述べる際「は」を用い ると説明している。(10)〜(12)の被調査者は同様に、両方の解釈が成り立つことを認め ており、「は」を使う場合と「が」を使う場合では解釈が異なると説明している。このこ とから、「個人内の揺れ」が現れるのは、二つの解釈が成り立つ場合に、同一個人が両方 の解釈を認めることに因るといえる。
次に、同一空所に一方の助詞のみを使用可能とした被調査者の回答と、両方の助詞を使 用可能とした被調査者の回答を取り上げ、「個人内の揺れ」がない回答とある回答では、
何が異なるのかを考察する。まず、空所[18]を取り上げる。空所[18]では、JNS10名 のうち、JNSの7名が「が」、3名が「は」と「が」の両方を記入している。(13)では空 所[18]を含む文を示し、(14)(15)ではその空所に関するJNS2名による口頭説明を示す。
(14)では両方の助詞が記入されている回答を示し、(15)では一方の助詞のみが記入され ている回答を示す。
(13)「あっ、大変!ポピー[18] 落ちてしまいました。」
(14) 【J10:が・は】ポピーが落ちたと言うことを強く言いたいとき「が」。「ポピーが!
みたいな。「は」は弱そう。「ポピーは落ちたんだ。」みたいな感じ。びっくりが伝 わってこない。
(15) 【J4:が】「は」だと、大変じゃなさそう。客観的に冷静に述べている。「が」だと 大変な気持ちが伝わる。
(14)のJ10と(15)のJ4は、ともにポピーが落ちたという出来事を際立たせる場合と 際立たせない場合の両方の解釈が成り立つと認めている。しかし、J10は両方の助詞を記 入し、両方の解釈を適切だとしているが、J4は「が」のみを記入し、際立たせる解釈の みが適切だとしている。このことから、両方の助詞が記入されている場合と、一方の助詞 のみが記入されている場合の違いは、成立可能な二つの解釈がある際、その両方の解釈を 適切と認めるのか、あるいは一方の解釈のみを適切と認め、もう一方を適切と認めないの かに因るということが分かる。
次に、同一空所において、「は」のみが記入された回答と、「が」のみが記入された回答 と、「は」と「が」の両方が記入されている回答では、その異なる回答の背景となる理由 にどのような違いが見られるかを考察する。例として空所[34]を取り上げる。空所[34]
では、JNS10名のうち、JNS4名が「は」を記入し、4名が「が」を記入し、2名が「は」
と「が」の両方を記入している。以下の(16)では空所[34]を含む文を示し、(17)〜(19)
ではその空所に関するJNS3名による口頭説明を取り上げる。まず(17)に両方の助詞が 使用可能とされている回答を示し、次に(18)と(19)にそれぞれ一方の助詞のみが使用 可能とされている回答を示す。
(16)「ポピー[34] 危険です。」
(17) 【J6:が・は】「は」を言っちゃうと危険さは伝わってこない。危険なのにその状 況を淡々と伝えている。臨場感がない。
(18)【J4:が】「は」だと冷静すぎる。本当に危険だから「ポピーが危険だ!」
(19)【J1:は】 ポピーがサブになっている。
(17)のJ6は両方の助詞を記入しているのに対し、(18)のJ4は一方の助詞のみを記入 しているという、記入した助詞そのものは異なる。しかし、J6とJ4はともに「が」を使 うことによって、ポピーが危険な状況に陥ったことが伝わり、「は」を用いると危険性が 伝わらないと説明しており、両者は口頭説明では両方の解釈を認めている点で共通してい る。また、(19)のJ1はポピーがサブになっていると述べ、物語の焦点とはならない付随 的な出来事であるため「は」を記入したと説明していると考えられる。(17)〜(19)の口 頭説明から、被調査者は、「は」と「が」の両方あるいは一方のみのいずれを記入したか にかかわらず、二つの解釈が成立可能だと認めているといえる。
このように、被調査者別に記入された助詞に差異があるのは、二つの解釈が成り立つ場 合に以下の三通りの選択肢が存在することに因ることが明らかになった。三通りの選択肢 とは、1)談話の中で焦点が当たる出来事として解釈するか、2)談話の中の焦点が当たら ない一連の出来事として解釈するか、3)解釈として1)と2)の両方を認めるかである。
ある事態に対して、被調査者が二つの解釈が成り立つと考える場合、その一方のみを適 切と認めるか、両方を適切と認めるかによって助詞の使用に「揺れ」が現れるのである。
JNSでは、二つの異なる解釈が成り立つと明示的に説明している回答は74と多く見られ る。74の回答の中には、両方の解釈が同等に適切であるとして両方の助詞を記入した回 答、および一方の解釈の方がより適切であるとして一つの助詞のみを記入した回答が見ら れる。被調査者の解釈を段階的に並べると、(20)のようになる。
(20)二つの解釈が成り立つ場合、被調査者がとることのできる選択肢 1)解釈1のみを認める。
2)両方の解釈を認めるが、解釈1をより適切であるとする。
3)両方の解釈を同等に認める。
4)両方の解釈を認めるが、解釈2をより適切であるとする。
5)解釈2のみを認める。
以上の(20)は異なる二つの解釈が成立可能な場合に、被調査者がとることができる五
つの選択肢を示している。二つの解釈のうち、どちらかのみを認める被調査者もいれば、
両方の解釈を同等に認める被調査者もいる。また、両方の解釈を認めても、どちらかの解 釈をより適切とする被調査者もいる。つまり、被調査者によって、(20)の五つの選択肢 のうち、どれを選ぶかに違いが見られ、その結果、使用可能と判断される助詞が異なるの である。ある被調査者が両方の解釈を同等に認めた場合、「個人内の揺れ」が現れて、両 方の助詞が記入される。一方、被調査者が二つの解釈のうち、どちらか一方のみを認めた 場合、「個人内の揺れ」が現れず、どちらか一方の助詞だけが記入される。また、被調査 者が両方の解釈を認めても、一方の解釈をより適切とした場合、最終的に両方の助詞が記 入される回答と、一方の助詞のみが記入される回答がある。
以上をまとめると、JNSでは「個人内の揺れ」がある回答がある一方、「個人内の揺れ」
がない回答があることが分かった。さらに、その「個人内の揺れ」の有無の差異が現れる のは、二つの解釈が成立可能と判断された場合に、(20)で示した五つの選択肢のうち、
どれが選ばれるかが被調査者によって異なるためであることが明らかになった。
5.2.2.NNSによる口頭説明
5.2.2.では、NNSによる口頭説明を分析し、NNSの回答がJNSの回答とどう異なるか を考察し、「個人内の揺れ」がJNSと比べて少なかったのは、何に因るかを検討する。
NNSの場合もJNSと同様に、助詞の使用に「個人内の揺れ」が現れるのは、ある事態 に対して異なる二つの解釈が成り立つ場合、(20)の五つの選択肢のどれを選ぶかによっ て記入される助詞が異なるためである。以下では、その具体例を示す。具体例として、空 所[51]に関する回答を取り上げる。以下の(21)では空所[51]を含む文を示し、(22)〜
(24)ではその空所に関するNNSによる三つの回答を、KNSであるK8、CNSである C9、BNSであるB10の順で示す。
(21)「二人[51] 、崖から落ちてしまいました。」
(22)【K8:は・が】二人の場合で書いたら「は」で、見ている自分の場合だと「が」。
(23) 【C9:は・が】「は」の場合、トムだけではなく、わんちゃんだけではなく、二人 を強調している。「が」の場合、このことだけを言っている感じがする。
(24) 【B10:は】今まで突然何かが起きたら、「が」を使うと言っていたけど、今回は それより話の転換が大事だ。前に起きたことの続きを語っている。
(22)と(23)を見ると、K8とC9はともに「は」と「が」の両方の助詞を記入しているが、
それぞれの説明は異なっている。K8が主人公の視点に立つか、語り手の視点に立つかに よって助詞が異なると説明したのに対して、C9は「は」を使うことによってガ格の名詞 句の「二人」が際立ち、「が」だと際立たないと述べている。また、(24)のB10は「は」
のみを記入し、突然起きたことに焦点を当てるため「が」を使うことがあるが、二人が崖 から落ちたことを談話の一連の出来事の中で描写するため「は」を用いた方がいいと説明 していることが分かる。
このように、異なる二つの解釈が成り立つと明示的に説明している回答は、KNSでは
51と最も多く、CNSでは11、BNSでは6である。KNSと比較して、CNSとBNSの二つ の解釈を明示する回答は圧倒的に少なく、NNS間で差が見られる。このことから、JNS で見られる成立可能な解釈によって助詞を使い分けるという傾向が、KNSにおいても多 く観察されJNSにやや近い傾向を示しているのに対し、CNSとBNSでは圧倒的に少なく JNSと異なる傾向を示していることが分かる。
NNSにおける明示的な口頭説明としては、隣接する言語環境にある言語形式(以下、
言語形式)が助詞の使用を示唆しているという回答が多く見られる。具体例として空所
[8]に関する口頭説明を示す。以下の(25)では空所[8]を含む文を示し、(26)〜(28)
ではその空所に関するNNSの回答を、KNSであるK4、CNSであるC6、BNSであるB3 の順で取り上げる。
(25)「いない! かえる君[8] いない!」
(26)【K4:は】ここも否定だから「は」。
(27)【C6:は】否定文だから。
(28)【B3:が】どこの教科書でも「いる」の前に「が」が使われているから。
(26)と(27)から、K4とC6は述語の「いない」の否定形が「は」の使用を示唆して いると述べていることが分かる。一方、(28)のB3は「いる」と一緒に使われる助詞が「が」
であると述べており、B3は述語の「いる」が「が」の使用を示唆していると説明している。
(26)〜(28)の被調査者は、異なる助詞を記入しているが、口頭説明では言語形式が「は」
か「が」のどちらかの助詞の使用を示唆していると述べている点で共通している。
次に、同じ言語形式を手がかりにしているように見えたとしても、被調査者別に異なる 助詞が記入される例として、空所[33]に関する回答を取り上げる。(29)では空所[33]
を含む文を示し、(30)〜(32)ではその空所に関するNNSの回答を示す。最初に(30)
と(31)には、同じ言語形式を手がかりにしたKNSであるK6とBNSであるB7の回答 を示し、次に(32)には、異なる言語形式を手がかりにしたCNSであるC9の回答を示す。
(29)「蜂[33] 怒って、飛び出してきました。」
(30)【K6:は】もう出てきたから「は」。
(31)【B7:が】初めて出てきて、動作するのだから「が」。
(32)【C9:が】「怒る」が自動詞だから「が」。
(30)のK6による「もう出てきた」と、(31)のB7による「初めて出てきて」では、
それぞれマークされる名詞「蜂」の照応性が助詞の使用を示唆していると述べており、同 じ言語形式を手がかりにしている点で共通しているものの、最終的に記入した助詞がK6 は「は」、B7は「が」と異なる。その理由は、被調査者間、個々人によって、言語形式の 理解が異なるためである。(30)のK6は「蜂」が照応的であると理解しているのに対し、
(31)のB7は「蜂」が非照応的であると理解しているのである10。一方、(32)のC9は K6とB7とは異なる「自動詞」という言語形式を手がかりにしており、自動詞である「怒
る」が「が」の使用を示唆していると説明している。C9とB7がともに最終的に同じ助 詞の「が」を選択していても、その選択に辿り着くまでに手がかりとした言語形式は全く 異なっているのである。
このように、被調査者によって異なる助詞が記入される原因は、被調査者によって同じ 言語形式を手がかりにしても理解が異なること、および手がかりにする言語形式そのもの が異なることの二つであるといえる。
NNSにおいて、言語形式が助詞の使用を示唆していると明示的に説明している回答は、
CNSでは69、BNSでは108であるが、KNSでは21であり、CNSとBNSと比べ少ない ことが分かった。一方、JNSでは、言語形式が助詞の使用を示唆していると明示的に説明 している回答は15である。このことから、言語形式が示唆していることを手がかりとし たという口頭説明は、JNSとKNSでは少なく、CNSとBNSでは多く見られるというこ とが分かった。
以上のように、5.では調査の結果と考察を示した。
6
.結論と今後の課題以上のことをまとめると、以下のようなことが明らかになった。
RQ1に関しては、空所補充調査で得られた「データ1」から、同一個人が同一箇所に「は」
と「が」の両方を使用可能であると判断する「個人内の揺れ」は、母語に関わらず現れる と指摘できた。また、JNSと比較したところ、NNSにおいては「個人内の揺れ」がある 回答数は有意に少なく見られる。このことから、JNSは、同一個人が同一箇所に両方の助 詞を使用可能とする傾向があり、使い分けが二者択一であるとして捉えていないのに対 し、学習者は両方の助詞を使用可能とする傾向が弱く、使い分けが二者択一であるとして 捉えていることが分かった。
NNSの母語別に見ると、JNSより有意に少なかったのはCNSとBNSであり、KNSで は有意差が見られなかったことが分かった。このことから、日本語と同じく「主語卓越型 と主題卓越型のいずれもある卓越言語」に属する韓国語を母語とするKNSに限り、JNS と同じく「は」と「が」の両方を使用可能であると判断する傾向があり、「は」と「が」
の使い分けが二者択一であるとして捉えていないことが明らかになった。一方、日本語と 異なり「主題卓越型の言語」に属する中国語を母語とするCNSと、「主語卓越型の言語」
に属するブルガリア語を母語とするBNSには、「は」と「が」の両方を使用可能と判断す る傾向が弱く、「は」と「が」の使い分けが二者択一であるとして捉えていることが明ら かになった。
RQ2に関しては、口頭調査で得られた「データ2」から、同一個人が同一箇所に「は」
と「が」の両方を使用可能であると判断する「個人内の揺れ」が現れる原因について、次 のことを明らかにした。JNSで「個人内の揺れ」が現れるのは、文脈の解釈に基づいて
「は」と「が」を使い分けているためであり、異なる二つの解釈が成り立つ場合に、両方 の解釈を成立可能として認める被調査者がいるためである。それに対し、NNSでは、JNS と同様に異なる二つの解釈が成り立つことによって助詞を使い分けている現象が観察され
たものの、JNSと比べ回答数が少なく、特にCNSとBNSにおいてこの現象は圧倒的に少 なかった。このことから、日本語と異なり「主語卓越型と主題卓越型のいずれもある言語」
を母語としない学習者には、成立可能な解釈によって「は」と「が」を使い分けることが 難しいと指摘できる。
一方、NNSでは「は」と「が」を使い分ける場合に、隣接している言語環境に現れる 言語形式を手がかりにする傾向があるため、「個人内の揺れ」がJNSと比べ少なかったこ とが明らかになった。NNSは、「は」と「が」の使い分けは言語形式が示唆していると認 識しているため、「は」と「が」の両方を使用可能と判断しなかった。NNSの母語別に見 ると、言語形式を手がかりにする傾向は、BNSで最も強く、CNSはBNSとKNSの中間 となり、KNSでは最も弱く見られる。
以上のRQ1とRQ2の結果をまとめると、被調査者が「解釈」あるいは「言語形式」と いう、異なる手がかりに基づき「は」と「が」を使い分けているため、「個人内の揺れ」
が現れる回答数が異なると指摘できる。JNSおよびJNSに近似しているKNSは、成立 可能な解釈に基づき「は」と「が」を使い分ける傾向があり、その結果、JNSとKNSの 回答において観察された「個人内の揺れ」の回答数には有意差が見られなかった。一方、
CNSとBNSでは、成立可能な解釈ではなく言語形式を手がかりに「は」と「が」を使い 分ける傾向があり、その結果、観察された「個人内の揺れ」の回答数が少なく、JNSの回 答数と有意差が見られる。つまり、JNSとKNSは文脈の解釈に基づいて「は」と「が」
を使い分けており、その使い分けが二者択一であるとして捉えていないのに対し、CNS とBNSは隣接する言語環境にある言語形式に基づいて「は」と「が」を使い分けており、
その使い分けが二者択一であるとして捉えていることが分かった。この結果から、日本語 が属する「主語卓越型と主題卓越型のいずれもある言語」のカテゴリーに属さない言語を 母語とする学習者には、成立可能な解釈によって助詞を使い分けることが難しいと指摘で きる。
以上のことから、日本語教育では、「は」と「が」の使い分けが二者択一のものではなく、
両方の助詞が使用可能である場合があることを学習者に示す必要があることが分かった。
また、学習者が必要としている支援は、両方の助詞が使用可能である場合において、「は」
を使った場合と「が」を使った場合の違いを理解し、伝えたいことに合わせて、適切な助 詞を選び、使用できるようになることであると考えられる。
学習者が「は」と「が」の両方が使用可能である場合において、伝えたいことに合わせ て、適切な助詞を選び使用できるようになるための効果的な指導方法を検証し提案するこ とを今後の課題としたい。また、今後の課題として、本稿で扱うことができなかった「主 語卓越型と主題卓越型のいずれもない言語」を母語とする学習者についても、どのように
「は」と「が」の使い分けを捉えているのかを明らかにする必要がある。
注
1 本稿では、「揺れ」を使用の変異として捉える。自由変異にはとどまらず、ある統語環境に現れ る文法項目の候補として、意味機能上の違いを含む広義の変異と考える。
2 Mayer, Mercer (1969) Frog, Where Are you?. Dial Books for Young Readers, New York.
3 ガ格をマークする「は」と「が」を機能の観点から、それぞれ主題・対比と中立記述・排他に下 位分類し分析することができるが、この分類が調査者の主観に依存するため、本稿では機能の観 点からは下位分類しない。
4 空所補充調査と口頭調査の合計所要時間は、平均33分34秒(最短11分40秒、最長69分51秒)
である。調査を実施したのは、2007年7月〜2008年3月の期間である。
5 d)「主語卓越型と主題卓越型のいずれもない言語」母語話者グループを設けなかったのは、こ のような言語を母語としている被調査者を10名集められなかったためである。
6 被調査者の中には自然習得の者はいない。
7 「は」「が」以外に使われた助詞は、JNSの場合、「も」「とも」「に」「無助詞」の4種であり、
NNSの場合、「も」「とも」「に」「無助詞」「を」「と」「の」の7種である。
8 母語別に合計が異なる理由は、「は」と「が」以外の助詞が記入されている回答を分析対象外と して取り除いたためである。取り除いた回答はそれぞれJNSでは12、KNSでは23、CNSでは
33、BNSでは32であり、分析対象とした回答数と合算すると、母語話者のグループごとの全回
答数は460(46空所×10名の回答)となる。
9 正規分布ではなかったため、ノンパラメトリクのクラスカル・ウォリス検定を用いた。その検定 はN=3以上で用いることができる検定である。
10 K6とB7の理解の違いは、被調査者の注目箇所に因るものである。K6は蜂が前のページの絵に
すでに出ていることに注目しており、蜂を照応的な名詞として捉えたが、B7は蜂という語彙が 初出であることに注目し、非照応的な名詞として捉えたためである。
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資料1 空所補充の文章(著作権のため、テキスト部分のみ掲載)
[絵1]ある夜、トムの家にかえる君(1) やってきました。トム(2) 犬のポピーと一緒に
かえる君の様子を夜遅くまで見ていました。[絵2]「もう、寝る時間ですよ」とお母さんに言われ て、トム(3) いつものようにポピーと一緒にベッドに寝ています。でも二人(4) 寝た後、
かえる君(5) そっと逃げ出したのです。[絵3]次の日の朝、トムとポピー(6) 起きて みると、昨日の夜までいたかえる君(7) どこにもいません。「いない! かえる君(8) い ない!」とトム(9) 叫びました。[絵4]そこで、トムとポピー(10) 探し始めました。
「かえる君、どこ(11) 行ったの?」トム(12) 長靴の中を探します。ポピー(13) ビ ンの中を探します。[絵5]「外(14) 行ったのかもしれない!」とトム(15) 思いつきまし た。そこで、トム(16) 窓からかえる君(17) 呼びました。「かえる君!」[絵6]あっ、大変! ポピー(18) 落ちてしまいました。大きな音を立てて、ガラス瓶(19) 割れてしまいました。
[絵7]トム(20) 窓から飛び降りて、ポピー(21) 助けました。「大丈夫? ポピー、だめ
だよ!」[絵8]そして、トムとポピー(22) 一緒に森(23) かえる君を探しに行きました。
「かえる君、どこ(24) 行ったの?」[絵9]ポピー(25) 、蜂の巣を見つけて、吠え始めま した。トム(26) 「かえる君!」と穴に向かって、呼んでみました。[絵10]すると、穴の中 からモグラ君(27) 出てきました。「僕(28) かえる君じゃないよ。」トム(29) がっか りです。[絵11]トム(30) 木の洞をのぞいている間に、ポピー(31) 蜂の巣(32) 落 としてしまいました。蜂(33) 怒って、飛び出してきました。ポピー(34) 危険です。
ところが、トム(35) 気付かずに木の洞の中(36) 向かって、「かえる君!」と叫びます。
[絵12]すると、木の洞からふくろう(37) 出てきました。「僕(38) かえる君じゃないよ。」
トム(39) びっくりして、地面(40) 落ちてしまいました。ポピー(41) まだ怒ってい る蜂の群れ(42) 追われています。[絵13]「あっち(43) 行け!」とトム(44) ふくろ うを追い出しました。[絵14]それから、大きな岩(45) 登り、木の枝につかまって、叫びます。
「かえる君!」[絵15]おや、木の枝だと思ったの(46) 、なんと大きな鹿の角だったのです。
トム(47) 鹿の頭の上にのっかってしまいました。大変![絵16]大きな鹿(48) 走り出 しました。「わあ、どこ(49) 行くの?」わんわん、わんわん。ポピー(50) 鳴きながら、
おいかけてきました。[絵17]ガラガラ!ドカーン! 二人(51) 、崖から落ちてしまいました。
[絵18]でも、浅い川(52) 助かりました。「あれ?何か聞こえるよ!」[絵19]「しー!ポピー、
静かに。」トム(53) 倒れた木の向こう側(54) のぞきました。すると・・・[絵20]「あっ、
かえる君(55) いた!」しかも、一人ではありませんでした。かえる君の横に女のかえるさ ん(56) いました。かえる君(57) 奥さん(58) いたのですね。[絵21]あ! さらに、
小さなかえるたち(59) 出てきました。かえる君(60) お父さんだったのです。[絵22]ト ム(61) かえる君から一番ちっちゃいかえるちゃん(62) 預かることになりました。「かえ る君、ありがとう。必ず大切に育てて、大きくなったら、またここ(63) 戻すからね。バイ バイ。」