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21小学校模擬裁判資料

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【模擬裁判】

~スナックサイバーン殺人未遂事件~

札幌市立資生館小学校

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1 模擬裁判シナリオ 裁判官A それでは、審理を始めます。被告人は証言台の前に立って下さい。 (被告人は、証言台に立つ。) 裁判官A 名前は何と言いますか。 被告人 山田太郎です。 裁判官A 生年月日はいつですか。 被告人 昭和46年4月15日です。 裁判官A 住所はどこですか。 被告人 札幌市中央区大通西11丁目1番1号です。 裁判官A 職業は何ですか。 被告人 スナックを経営しています。 裁判官A それでは、これから被告人山田太郎に対する殺人未遂被告事件に ついて審理します。検察官は起訴状を朗読してください。 (検察官A 起立) 検察官A 配布資料番号 1の起訴状をご覧下さい。 公訴事実 被告人は、平成21年6月10日午後11時30分ころ、札幌市 中央区南60条西40丁目250番地クリスタルビル1階にある スナック「サイバーン」において、田中二郎 (当時 35歳)に対し、 殺意をもって、包丁を胸部に向けて突きだして、胸部を突き刺そ うとした。しかし、田中が、これを避けるために体を回して右腕を 上げたため、包丁は田中の右腕に突き刺さった。引き続き被告人は、 殺意をもって包丁を田中の胸部に向けて突きだして、胸部を包丁 で突き刺そうとしたが、田中がその包丁を右手でつかんだ。以上の 行為によって、被告人は、田中に対し、加療約6週間を要する右 上腕動脈切断を伴う右上腕部刺創、右手掌切創の傷害を負わせた が、田中を殺害するには至らなかったものである。 罪名及び罰条 殺人未遂 刑法第 203条、第199条 以上について、審理を求めます。 (検察官A 着席 )

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2 裁判官A これから朗読された事実について審理を行いますが、審理に先立 ち、被告人に注意しておきます。被告人には黙秘権があります。被 告人はこの法廷で答えないでいることもできるし、答えることも できます。 それでは、事件について、被告人の意見を聞きます。今、検察官が 読んだ内容に違っているところはありますか。 被告人 私は、被害者から身を守るために包丁を持ち出しました。すると、 被害者の方から私に近づいてきて包丁をつかんだのです。被害者 ともみ合いになった際に誤って包丁が被害者に刺さってしまいま した。私は、被害者の胸を突き刺そうとしてもいないし、被害者を 殺すつもりもありませんでした。 裁判官A 弁護人の意見はいかがですか。 (弁護人A 起立) 弁護人A 被告人の意見と同じです。被告人には、包丁で被害者を突き刺す行 為も殺意もありませんから 、被告人は無罪です。 (弁護人A 着席 ) 裁判官A 被告人は元の席に戻って下さい。 (被告人、元の席に戻る。) 裁判官A それでは、証拠調べに入ります。検察官、冒頭陳述をどうぞ。 (検察官B 起立) 検察官B それでは、事件のあらすじ、争点、検察官の立証の予定の順にお 話しします。配布資料番号2の冒頭陳述要旨をご覧下さい。 まず、事件のあらすじですが、被告人と被害者である田中さんは スナック「サイバーン」を共同で経営していました。しかし、二人は ことあるごとに対立し、被告人は田中さんに対する不満や憤りを 募らせていました。事件当日、田中さんが被告人を無視していつも より早く閉店しようとしました。被告人はこれに腹を立て、田中さ んに向けて灰皿を投げつけました。そこで、被告人と田中さんはつ

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3 かみあいになり、被告人は、田中さんを殺してやろうと思い、店 のキッチンに行って包丁を持ち出し、周囲の者が止めるにもかか わらず、包丁を振り上げて田中さんに近づいていき、田中さんの 胸めがけて包丁で突き刺そうとしました。田中さんはとっさに体 を回転させながら、右腕を挙げて防御しました。包丁は田中さんの 右腕の上腕部、つまり肩と肘の間に突き刺さりました。なおも、被 告人は、胸を突き刺そうとしましたが、田中さんが、 包丁をつか んで防戦し、周囲の者が被告人と田中さんを引き離したことで、 田中さんは命を取り留めました。ただ、田中さんは右腕と右手のひ らに治療に約6週間かかるけがを負いました。 ところで、被告人と弁護人は、もみ合いとなった際に誤って包丁 が田中さんに刺さってしまったものであり、田中さんの胸を突き 刺そうとはしていないし、殺すつもりもなかったと主張していま す。そこで、この事件では二つの争点があることになります。 第1は、被告人は田中さんの胸を包丁で突き刺そうとしたのかと いう点です。 第2は、被告人に田中さんを殺してやろうという気持ち、すなわ ち殺意があったのか、なかったのかという点です。検察官は、これ から次のような証拠、証人を出します。 まず、店内の様子、特にどこに血痕が飛び散っていたか、付いた かとい点について現場の図面で立証します。この血痕の飛散状況、 付着状況に注意して下さい。犯行に使われた包丁も提出します。 証人は、まず、被害者の田中さんです、彼は、被告人に胸を突き 刺されそうになったことを証言してくれるでしょう。 2番目が目撃者の佐藤さんです。佐藤さんは、その場にいた店のお 客さんですが、被告人の方が田中さんに向かっていったこと、そ して、犯行直後に被告人が言った言葉についても証言してくれる でしょう。この言葉は、被告人の当時の気持ちを示すもので、重要 な証拠となります。 3番目の証人が、田中さんを治療した高橋医師です。この証言によ り、田中さんの傷の状況やそれがどのようにしてできたかが明ら かになるでしょう。 これらの証拠を提出することにより、検察官は、裁判官及び裁判 員の皆様に、被告人は殺人未遂罪で有罪であると判断していただ けると確信しています。

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4 (検察官B 着席 ) 裁判官A 弁護人、冒頭陳述をどうぞ。 (弁護人B 起立) 弁護人B 初めに被告人は無罪であることを改めて主張しておきたいと思い ます。検察官の主張は事実とは違っています。配布資料番号3の冒 頭陳述要旨をご覧下さい。 まず、検察官は、被告人が田中さんを殺してやろうと思って、包 丁を持ち出したと言います。しかし、実際は、被告人は、田中さん にやられてしまうという恐怖心から、身を守るために包丁を持ち 出したのです。検察官は、被告人が包丁を振りかざして田中さんに 向かっていったと言います。しかし、実際は、田中さんが近付い てきて、被告人の包丁を奪おうとしたのです。そこで、両者がもみ 合いとなり、誤って包丁が田中さんに刺さってしまったのです。被 告人は、田中さんに包丁を取られないように最後まで包丁を手放 さないでいただけなのです。被告人は、田中さんの胸を突き刺そう としてはいないし、田中さんを殺すつもりも全くありませんでし た。 目撃者である被告人の妻の証言を聞いていただければ、被告 人の供述が信用できることが分かっていただけると思います。ま た、日頃から二人の間にいさかいがあり、被告人が田中さんを恐 れていたことが、被告人質問や被告人の妻の証言により明らかに なると考えています。最後に、被告人を有罪とするには、検察官は、 合理的な疑いを超える程度の立証をすることが必要であります。 これは、被告人は無罪ではないかと考えられる点が一つでもあれ ば、被告人を無罪にしなければならないということです。本件では、 検察官がこの立証をできずに審理は終了し、被告人は無罪になる と、弁護人は確信しています。 (弁護人B 着席) 裁判官B それでは、双方から請求のあった証拠の取り調べを行います。まず、 検察官は証拠書類の内容を説明して下さい。 (検察官C 起立)

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5 検察官C 配布資料番号4の現場見取図を見て下さい。これは現場検証をし た図面です。カウンター、テーブル、ソファーなどがあります。そ して、被告人や田中さん、目撃者がいた場所が示されています。そ して、血痕は、田中さんがもともと座っていた席の近くにたくさ んついていました。 配布資料番号5の写真を見てください。これが犯行に使用された 刃の長さ約20.9センチメートルの包丁です。そして、被告人の 警察官に対する供述です。被告人がつかまって間もないころ、捜査 段階初期の供述内容が記載されています。この調書においては、被 告人は「包丁を持ち出したのは自分ではなく、被害者が包丁を持 ち出してもみ合いになりました。」と供述しています。 (検察官C 着席) 裁判官B それでは、検察官請求の証人田中二郎さんの尋問を行います。 (証人田中二郎 傍聴席から入場) 裁判官B 田中さん、証言台の椅子に座って下さい。 (証人田中二郎 証言台の椅子に座る。) 裁判官B それでは、検察官、主尋問をどうぞ。 (検察官A 起立) 検察官A あなたは、被告人とスナック「サイバーン」を共同経営しているの ですね。 証人1 はい。 検察官A あなたと被告人との関係はうまく行っていましたか。 証人1 店のやり方とかについて、意見が食い違っていて、普段から言い 合いになることが多かったです。 検察官A 事件当日も、被告人と争いになりましたね。 証人1 はい。 検察官A そのきっかけはどういうことだったのでしょうか。 証人1 その日、いつもより早く店を閉めようとしたんですが、そのこと

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6 を被告人に事前に相談しなかったんです。そうしたら、被告人が腹 を立てて文句を言ってきたんです。 検察官A 被告人は文句を言っただけでしたか。 証人1 いいえ。文句を言って、まず、近くにあった灰皿を投げつけてきて、 その後、被告人がつかみかかってきたので、つかみ合いのけんか になりました。 検察官A そして、どうなりましたか。 証人1 被告人は、いったん離れると、キッチンから包丁を持ち出してき て、何か怒鳴りながら、包丁を持って、私の方に近づいてきまし た。店の従業員が止めようとしたのですが、それを振り切って近づ いてきたんです。 検察官A どのようにして近づいてきたのですか。 証人1 包丁を振りかざすようにして近づいてきました。そして、包丁が私 の胸の辺りに向かってきたので刺されると思って、体をかばうた めに、体を回して右腕を上げたら、包丁が右腕に刺さったんです。 検察官A それで終わったのですか。 証人1 いいえ。被告人は、もう一度、包丁を胸に向けて突きだして、胸を 刺そうとしてきたんです。それで、私は被告人の方に向き直って、 包丁の刃を右手でつかんで、何とか刺されるのは防ぎました。その 後、店の従業員が被告人を取り押さえてくれたんです。 検察官A 被告人は、取り押さえられた後、何か言っていませんでしたか。 証人 1 「ぶっ殺してやる。」と大声で叫んでいました。 検察官A 質問を終わります。 (検察官A 着席 ) 裁判官B 弁護人、反対尋問はありますか。 (弁護人C 起立) 弁護人C はい。 被告人が包丁を持ってあなたの方に向かっていく前に、あなたの 方が、被告人に向かっていったのではないのですか。 証人1 いいえ。私は動いていません。被告人が近づいてきたんです。 弁護人C 終わります。 (弁護人C 着席)

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7 裁判員1 被告人は包丁をどのように握っていたのですか。 証人1 (動作をしながら)右手で逆手に握っていました。 裁判官B 終わりました。お帰りになって結構です。 (証人田中二郎、傍聴席に戻る。) 裁判官B それでは、検察官請求の証人佐藤三郎さんの尋問を行います。 (証人佐藤三郎、傍聴席から入場) 裁判官B 佐藤さん、証言台の椅子に座って下さい。 (証人佐藤三郎、証言台の椅子に座る。) 裁判官B それでは、検察官、主尋問をどうぞ。 (検察官B 起立) 検察官B 事件当日、あなたは、スナック「サイバーン」に客として行ってい たのですね。 証人2 はい。 検察官B そのとき、被告人と田中さんの争いを目撃したのですね。 証人2 はい。 検察官B どのような状況だったのでしょうか。 証人2 被告人は、回りの者 に止められたのに、それを振り切って、包丁 を持って田中さんの方に近づいていったんです。 検察官B 被告人は、結局、店の従業員に取り押さえられましたね。 証人2 はい。 検察官B その後、被告人は、何か言っていませんでしたか。 証人2 被告人は、取り押さえられた後も「お前を殺すぞ。」と言っていまし た。 検察官B 質問を終わります。 (検察官B 着席) 裁判官B 弁護人、反対尋問はありますか。

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8 (弁護人C 起立) 弁護人C はい。 田中さんも被告人の方へ近づいていったのではないですか。 証人2 いいえ。田中さんが、被告人に向かっていくような素振りはあり ませんでした。 弁護人C 終わります。 (弁護人C 着席) 裁判官B 終わりました。お帰りになって結構です。 (証人佐藤三郎、傍聴席に戻る。) 裁判官B それでは、検察官請求の証人高橋四郎さんの尋問を行います。 (証人高橋四郎、傍聴席から入場) 裁判官B 高橋さん、証言台の椅子に座ってください。 (証人高橋四郎、証言台の椅子に座る。) 裁判官B それでは、検察官、主尋問をどうぞ。 (検察官C 起立) 検察官C あなたは大通病院の医師ですね。 証人3 はい。 検察官C あなたは、この事件の被害者の田中さんを知っていますか。 証人3 はい。事件当日に田中さんの治療をしました。 検察官C 田中さんは、どこかけがをしていましたか。 証人3 右腕の上腕部と右手の手のひらに傷がありました。 検察官C 具体的にどこの部分か説明してもらえますか。 証人3 この部分です。 (右腕の上腕部と右手の手のひら部分を示す。) 検察官C それでは、まず、右腕の上腕部の傷について簡単に説明してくだ さい。

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9 証人3 刃物で刺されたことによってできた傷です。傷の幅は約5センチ です。腕の外側の傷口から入った刃物は上腕骨の前面をかすって、 腕の内側の上腕動脈に達して切断しています。 (刃物の動きを身 振りで示しながら話す。)刃物は途中でねじれた動きをしています。 検察官C 刃物がねじれた動きをしたのはなぜでしょうか。 証人3 刺した人が刃物をこじるようにしたのか、刺された人が体をひね ったのか、どちらかであると思いますが、傷の状態だけからは、 そのどちらかまでは分かりません。 検察官C 田中さんは胸を刺されそうになったので、体をひねって右腕で防 ごうとしたところ、その右腕に刃物が刺さったと言っていますが、 この傷と矛盾しないでしょうか。 証人3 そうですね。矛盾しないと思います。 検察官C 田中さんのけがは生命に危険があるものなのでしょうか。 証人3 放置されれば、出血性ショックにより生命の危険はあったと思い ます。 検察官C それでは、右手の手のひらの傷について簡単に説明してください。 証人3 刃で傷つけられたもので、2列あります。 検察官C この傷から何か言えることがありますか。 証人3 刃物を握った後に、その刃物が引き抜かれたことでできた傷と考 えられます。(刃物の動きを身振りで示しながら話す。 )いわゆる 防御創といえます。 検察官C 防御創というのはどういうものですか。 証人3 被害者が刺されたり、切られたりするのを防御するために刃物を つかんだりしてできる傷のことです。 検察官C 傷が2列になっているのはどうしてですか。 証人3 2列あるのは.刃物が片刃であれば2回傷を負った可能性があり ますが、防御創の場合はもみ合って手の中で刃物が動くことがあ るので断定はできません。 検察官C 質問を終わります。 (検察官C 着席) 裁判官B 弁護人、反対尋問はありますか。 弁護人C 特に、ありません。 裁判官B 終わりました。お帰りになって結構です。 (証人高橋四郎、傍聴席に戻る。)

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10 裁判官C 続いて、弁護人側の証人山田花子さんの尋問を行います。 (証人山田花子、傍聴席から入場) 裁判官B 山田さん証言台の椅子に座って下さい。 (証人山田花子、証言台の椅子に座る。) 裁判官C それでは、弁護人、主尋問をどうぞ。 (弁護人B 起立) 弁護人B あなたと被告人の関係を教えてください。 証人4 夫婦です。 弁護人B 事件のとき、あなたは、スナック「サイバーン」の店内にいたので すね。 証人4 はい。 弁護人B そのとき、被告人と田中さんの争いを目撃したのですね。 証人4 はい。 弁護人B その状況ですが、被告人が田中さんに近づいていったのですか。 証人4 田中さんも被告人に向かって近づいていきました。 弁護人B 話は変わりますが、被告人と田中さんの関係はどうだったのです か。 証人4 二人は、店の経営について、日ごろから、争っているというか、 いさかいをしていて、被告人は、田中さんを怖がっていました。 弁護人B 質問を終わります。 (弁護人B 着席) 裁判官C 検察官、反対尋問はありますか。 (検察官A 起立) 検察官A はい。 被告人が田中さんに近づいていったのではないですか。 証人4 少しは近づいたかもしれませんが・・・。 田中さんも被告人に向かって近づいていっています。

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11 検察官A 被告人が包丁を手にとったのを見ましたか。 証人4 分かりません。 検察官A 質問を終わります。 (検察官A 着席 ) 裁判官C 終わりました。お帰りになって結構です。 (証人山田花子、傍聴席に戻る。) 裁判官C それでは、被告人質問を行います。被告人は、前に出て、証言台の 椅子に座って下さい。 (被告人、証言台の椅子に座る。) 裁判官C それでは、弁護人お願いします. (弁護人A 起立) 弁護人A あなたは、田中さんとスナック「サイバーン」を共同で経営してい るのですね。 被告人 はい。 弁護人A あなたと田中さんはうまくいっていましたか。 被告人 いいえ。経営のやり方について、もめることが多かったです。言い 合いになることもあって、そのときの田中さんの態度なんかから、 恐いと思うこともありました。 弁護人A 事件の日も田中さんともめましたね. 被告人 はい。田中さんと言い合いになりました。 弁護人A それでどうなったのでしょうか。 被告人 田中さんが、私の方に近づいてきたので、恐くなったので、灰皿 を投げておどかそうとしました。それでも、田中さんは近づいて殴 りかかろうとしてきたので、おどかそうと思ってキッチンにあっ た包丁を持ち出しました。 弁護人A 田中さんを殺してやろうと思って包丁を持ち出したのですか。 被告人 違います。あくまでおどかそうとしただけです。 弁護人A 包丁を見て、田中さんは近づくのをやめたのですか。

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12 被告人 いいえ。田中さんは近づいてきて、包丁を奪おうとしてきたので、 もみ合いになりました。 弁護人A そのとき、田中さんを包丁で突き刺したのですか。 被告人 私は、突き刺すようなことはしていません。もみ合ううちに間違っ て刺さったのだと思います。 弁護人A 質問を終わります。 (弁護人A 着席 ) 裁判官C 検察官、反対尋問はありますか。 (検察官B 起立) 検察官B それでは、1点だけ。 包丁を持ち出したのはあなたなのですか。 被告人 はい。 検察官B 警察官の取調べを受けたときは、田中さんが包丁を持ち出したと 話していますね。 被告人 はい。 検察官B どうして言っていることが変わったのですか。 被告人 自分で持ち出したと話すと不利になると思っていたので・・・。で も、弁護士の先生に言われて、本当のことを話そうと思ったんで す。 検察官B 終わります。 (検察官B 着席) 裁判員2 取り押さえられた後、「お前を殺すぞ。」というようなことを言って いませんか。 被告人 よく覚えていません。 裁判官C 被告人は元の席にもどって下さい。 (被告人、被告人席に着席する。) 裁判官C 以上証拠調べを終わります。検察官の論告を述べて下さい。 (検察官C 起立)

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13 検察官C 公訴事実はこの法廷で取り調べられた証拠により、証明十分であ ると考えます。したがって、本件では殺人未遂罪が成立しますの で、被告人に対して厳重な処罰が必要です。被告人は懲役6年に 処するのを相当と考えます。(検察官C 着席) 裁判官C 弁護人の最終意見を述べて下さい。 (弁護人C 起立) 弁護人C 被告人は田中さんにやられてしまうという恐怖心から、身を守る ために包丁を持ち出したものです。さらに、田中さんが近づいてき て、被告人の包丁を奪おうとしてもみ合いになり、その際に誤っ て包丁が田中さんに刺さってしまったものです。 したがって、被告人には田中さんを突き刺そうという行為も殺す つもりもないので、被告人は無罪です。 (弁護人C 着席) 裁判官C 被告人は証言台の前に立って下さい。 (被告人、証言台の前に立つ。 ) 裁判官C これで審理を終わりますが、最後に言っておきたいことがありま すか。 被告人 私は、田中さんの胸を突き刺そうとしてもいませんし、田中さん を殺すつもりもありませんでした。信じて下さい。 裁判官C 被告人は、元の席に戻って下さい。 (被告人、元の席に戻る。) 裁判官C これで審理を終わります。これで閉廷します。

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模擬裁判登場人物

裁判官A,B,C 3名 被告人 山田太郎 検察官A,B,C 3名 弁護人A,B,C 3名 検察側証人 証人1 田中二郎 スナック「サイバーン」共同経営者 証人2 佐藤三郎 スナック「サイバーン」の客 証人3 高橋四郎 大通病院医師 田中二郎の治療担当 弁護側証人 証人4 山田花子 被告人の妻 裁判員1,2 2名 登場人物 16名 裁判員役 18名 学級合計 34名

審理の手順

①模擬裁判を行う前に目標を決める ②模擬裁判 ③評議 メンバー:裁判官 3名 裁判員 20名 ④判決 ⑤振り返り 評議する内容 5人または6人が4グループに分かれて行う

殺人未遂かそうでないか

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平成 21 年検第〇一〇〇〇〇号

起訴状

平成 21 年 7 月 1 日 札幌地方裁判所殿 札幌地方検察庁 検察官 検事 〇〇 〇〇 下記被告事件につき公訴を提起する。 記 本籍 東京都千代田区隼町 2 丁目 2 番 2 号 住居 札幌市中央区大通西 11 丁目 1 番 1 号 職業 スナック経営 山 田 太 郎 昭和 46 年 4 月 15 日 公訴事実 被告人は,平成 21 年 6 月 10 日午後 11 時 30 分ころ,札幌市中央区南 60 条 西 40 丁目 250 番地クリスタルビル 1 階にあるスナック「サイバーン」において, 田中二郎 (当時 35 歳)に対し,殺意をもって,包丁を胸部に向けて突きだして, 胸部を突き刺そうとした。しかし,田中が,これを避けるために体を回して右腕 を上げたため,包丁は田中の右腕に突き刺さった。引き続き被告人は.殺意をも って包丁を田中の胸部に向けて突きだして,胸部を包丁で突き刺そうとしたが, 田中がその包丁を右手でつかんだ。以上の行為によって,被告人は,田中に対し, 加療約6週間を要する右上腕動脈切断を伴う右上腕部刺創,右手掌切創の傷害 を負わせたが,田中を殺害するには至らなかったものである。 罪名及び罰条 殺人未遂 刑法第203条,第199条

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冒頭陳述要旨(検察官) 殺人未遂 被告人 山 田 太 郎 1 事件のあらすじ 被告人と被害者である田中さんは、スナック「サイバーン」を共同で経営し ていました。しかし、2人はことあるごとに対立し、被告人は田中さんに対す る不満や憤りを募らせていました。事件当日、田中さんが被告人を無視してい つもより早く閉店しようとしました。被告人は、これに腹を立て、田中さんに 向けて灰皿を投げつけました。そこで、被告人と田中さんはつかみ合いになり、 被告人は、田中さんを殺してやろうと思い、店のキッチンに行って包丁を持ち 出し、周囲の者が止めるにもかかわらず、包丁を振り上げて田中さんに近づい ていき、田中さんの胸めがけて包丁で突き刺そうとしました。 田中さんは、とっさに体を回転させながら、右腕を挙げて防御しました。包 丁は、田中さんの右腕の上腕部、つまり肩と肘との間に突き刺さりました。な おも、被告人は、胸を突き刺そうとしましたが、田中さんが包丁をつかんで防 戦し、周囲の者が被告人と田中さんを引き離したことで、田中さんは命を取り 留めました。ただ、田中さんは、右腕と右手のひらに治療に約6週間かかる怪 我を負いました。 2 争点 被告人と弁護人は、もみ合いとなった際に誤って包丁が田中さんに刺さって しまったものであり、田中さんの胸を突き刺そうとはしていないし、殺すつも りもなかったと主張しています。 そこで、この事件では2つの争点があることになります。 ◆第1は、被告人は田中さんの胸を包丁で突き刺そうとしたのかという点です。 ◆第2は、被告人に田中さんを殺してやろうという気持ち、すなわち殺意があ ったのか、なかったのかという点です。 3 立証の予定 (1)店内の様子、特にどこに血痕が飛び散っていたか、付いたかという点に ついて現場の図面で立証します。この血痕の飛散状況、付着状況に注意 してください。犯行に使われた包丁も提出します。 (2)証人は、まず、被害者の田中さんです。彼は、被告人に胸を突き刺され そうになったことを証言してくれるでしょう。 2番目が目撃者の佐藤さんです。佐藤さんは、その場にいた店のお客さ んですが、被告人の方が田中さんに向かっていったこと、そして、犯行 直後に被告人が言った言葉についても証言してくれるでしょう。この言 葉は、被告人の当時の気持ちを示すもので、重要な証拠となります。 3番目の証人が、田中さんを治療した高橋医師です。この証言により、 田中さんの傷の状況やそれがどのようにしてできたかが明らかになるで しょう。 以上

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冒頭陳述要旨(弁護人) 殺人未遂 被告人 山 田 太 郎 1 初めに被告人は無罪であることを改めて主張しておきたいと思います。検 察官の主張は事実と違っています。 まず、検察官は、被告人が田中さんを殺してやろうと思って、包丁を持ち 出したと言います。しかし、実際は、被告人は、田中さんにやられてしまう という恐怖心から、身を守るために包丁を持ち出したのです。検察官は、被 告人が包丁を振りかざして田中さんに向かっていったと言います。しかし、 実際は、田中さんが近付いてきて、被告人の包丁を奪おうとしたのです。そ こで、両者がもみ合いとなり、誤って包丁が田中さんに刺さってしまったの です。被告人は、田中さんに包丁を取られないように最後まで包丁を手放さ ないでいただけなのです。 被告人は、田中さんの胸を突き刺そうとしてはいないし、田中さんを殺す つもりも全くありませんでした。 2 目撃者である被告人の妻の証言を聞いていただければ、被告人の供述が信 用できることが分かっていただけると思います。 また、日ごろから、2人の間にいさかいがあり、被告人が田中さんを恐れ ていたことが、被告人質問や被告人の妻の証言により明らかになると考えて います。 3 最後に、被告人を有罪とするには、検察官は、合理的な疑いを超える程度 の立証をすることが必要であります。これは、被告人は無罪ではないかと考 えられる点が一つでもあれば、被告人を無罪にしなければならないというこ とです。 以上

参照

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