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線形・非線形ラマン顕微分光法を用いた電池構成材 料の構造化学研究

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Academic year: 2022

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線形・非線形ラマン顕微分光法を用いた電池構成材 料の構造化学研究

著者 戸田 尚吾

URL http://hdl.handle.net/10236/00029930

(2)

学位論文(要約)

線形・非線形ラマン顕微分光法を用いた 電池構成材料の構造化学研究

Structural Chemistry Study of Battery Component Materials with Linear and Nonlinear Raman Microspectroscopies

2020

12

月 博士(理学)申請

関西学院大学大学院理工学研究科 化学専攻

戸田尚吾

(3)

電池の高性能化を図るうえで,その構成成分の物理化学的性質を分子レベルで明らか にすることは非常に重要である。特に,複雑な組成をもつ物質や新規材料については,

それらの性能を最大限引き出すためにも基礎的な知見の蓄積は大きな意味を持つ。本研 究では,分子の構造や分子が置かれた微視的環境を鋭敏に反映するラマン分光法に基づ いた手法を駆使して,近年注目を集めているペロブスカイト太陽電池の構成成分である 有機無機ハイブリッドペロブスカイトの微結晶配向イメージング,およびリチウムイオ ン電池などの電解液としての応用が検討されているイオン液体の電場効果の分光観測 を行った。さらに,測定に長時間を要するという線形(自発)ラマン分光法の問題点を 克服するために,3次の非線形光学効果の一種であるコヒーレントアンチストークスラ マン散乱(CARS)を用いた顕微ラマン分光装置の開発を行い,電池構成成分のイメー ジング測定および電場効果測定の高速化に向けたデモンストレーションを行った。

まず,有機無機ハイブリッドペロブスカイト薄膜を構成する微結晶粒(グレイン)の 配向を可視化するために,低振動数ラマンイメージングを行った。2次元的な層構造を もつヨウ化鉛ブチルアンモニウムペロブスカイトを対象とし,主に格子振動に由来する ラマンバンドが観測される低振動数領域(<200 cm−1)の空間分解偏光ラマンスペクトル を測定した。得られた結果から,入射光の偏光方向とグレインの結晶軸方向のなす角度 によって低振動数領域のラマンスペクトルが顕著に変化することを明らかにした。また,

薄膜試料を回転させ,複数の角度でイメージング測定を行った結果を解析することで,

空間固定座標系におけるグレインの配向を大気条件下で可視化することに成功した。

次に,イオン液体のラマンスペクトルに対する外部電場効果の観測を行った。顕微鏡 下で液体試料に電場を印加するセルを設計し,アルキルイミダゾリウム系イオン液体を 試料として,電場印加時(ION)と非印加時(IOFF)の差ラマンスペクトルI(= IONIOFF) を測定することに成功した。I スペクトルはラマンスペクトル全体の強度変化を意味 する形状を示し,電極からの距離には依存しないことが分かった。この結果から外部電 場印加によるイオン液体/電極界面での透過率変化がI 信号の原因であることを見出し た。そこで,外部電場により屈折率が変化(Pockels効果)した層(中間層)が電極界面 に形成されると仮定し,簡単な幾何光学モデルを用いて実測の信号強度比IIOFFから中 間層の屈折率変化を定量的に見積った。さらに,その結果から中間層の空間的な広がり が10102 nmである可能性を示した。

最後に,上記のイメージングや電場効果の観測の高速化に向けて,マルチプレックス CARS 顕微分光装置を構築した。イメージング測定では自発ラマンイメージングの約 100倍の速さで測定を行うことに成功し,電場効果測定のデモンストレーションではヘ キサデカンを試料として電場印加による CARS スペクトルの変化を観測できただけで なく測定時間の大幅な短縮も達成することができた。

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