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多波長顕微ラマン分光光度計

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Academic year: 2021

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はじめに

物質に光を照射し、反射光の波長(色)を 分析すると、入射した光とは別の波長の光が 混ざっていることが分かります。これは、入 射光の一部が物質中の原子を振動させてエネ ルギーを失ったり、逆に原子の振動エネルギ ーが光エネルギーに転化されたためで、この 現象はラマン効果と呼ばれています。なお、

波長が変化した光は反射光ではなく、ラマン 散乱光と呼ばれます。

ラマン効果の重要な点は、ラマン散乱スペク トルを分析することにより(ラマン分光法)、原 子・分子の振動や回転運動に関する情報を得る ことにあります。

多波長顕微ラマン分光光度計

多波長顕微ラマン分光光度計は、レーザ光を 試料に照射することによって、ラマン効果を測 定する装置です。当研究所が所有する多波長顕 微 ラ マ ン 分 光 光 度 計 ( 日 本 分 光 ( 株 ) 製 NRS-3300)を図1に示します。

基本仕様 光学系

測定波長範囲:

50~8000cm-1

10~8000cm-1(低波波測定ユニット)

(532nm 励起時、ラマンシフト値)

搭載レーザ:

He-Cd レーザ(325nm:20mW、442nm:80mW)

固体ブルーレーザ(488nm:50mW)

固体グリーンレーザ(532nm:100mW)

He-Ne レーザ(633nm:17mW)

分光器:f=300nm シングルモノクロメータ 600gr/mm、1800gr/mm

及び 2400gr/mm グレーティング 検出器:2048×512 ピクセル CCD 検出器

測定部

顕微鏡光学系:共焦点光学系

対物レンズ:5 倍、20 倍、100 倍、250 倍、

紫外用 40 倍

ステージ:自動 XYZ 測定ステージ、

オートフォーカス付

ラマンスペクトル

図2に単結晶 Si のラマンスペクトルを示し ます。この例は、波長 532nm の固体グリーンレ ーザを Si に照射し、散乱光のスペクトルを観測 したものです。波長 547.152nm の光が鋭いピー クを形成していることが分かります。レーザ光 が Si 結晶によって散乱され、その波長が照射レ ーザ光に比べて長くなっています。

このことを理解するために、光の波長(λ)

とエネルギー(E)の関係について述べます。光 は E = hνというエネルギーを持っています。

ここで、h はプランク定数(6.626×10-34 Js)

で、νは光の振動数です。真空中での光速を c

(2.998×108 m/s)とすると、光の波長と振動 数はλ = c/νの関係がありますから、光のエネ ルギーは E = hc/λと表すこともでき、波長に 反比例することが分かります。したがって、図 2の結果は Si 結晶がレーザ光のエネルギーの 一部を奪い、残りのエネルギーを波長の長い光

図1 多波長顕微ラマン分光光度計

多波長顕微ラマン分光光度計

キーワード:ラマンスペクトル、多波長、顕微鏡、波数、マッピング測定

No.09010

(2)

として再び結晶の外に放出した、ということを 意味しています。実はこの時、結晶によって奪 われたエネルギーは格子振動のエネルギーに転 化しています。格子振動は原子の質量や原子間 の結合の強さ等と関連しているので、失われた エネルギーの量から、結晶を構成している元素 などを知る事ができます。さて、図2の横軸(下)

についてもう少し説明します。横軸(下)は波 数と呼ばれる量で、単位は cm-1です。入射レー ザ光および散乱光の波長をそれぞれ、λi 、λs cm とすると、波数は次式で表されます

波数 = 1/λi - 1/λs

λi = 532 nm = 532×10-7 cm ですから、散乱光 のピーク(547.152 nm = 547.152×10-7 cm)を 波数に換算すると、約 520cm-1となります。定 義から分かるように、波数は結晶によって奪わ れたエネルギーに比例します。ラマンスペクト ルのピーク位置を波数で表したものをラマンシ フトと呼びます。ラマンシフトは入射レーザ光 の波長を変えても変化しない、物質固有の量で す。

(http://www.inorg.yamanashi.ac.jp/ccst/lab oratories/Nakagawa-lab/keywords/Raman.htm)

測定できるもの

ラマン分光の魅力は、試料が気体、液体、溶 液、固体、結晶、繊維、フィルム等、物質の状 態に関係せずあるがままの状態でしかも、非破 壊、非接触でスペクトルの測定ができることで す。そのため、透明な容器(ガラス越し)や水 溶液中の試料が直接測定できます。

また、顕微ラマン分光では、顕微鏡用スライ ドガラス上の試料を直接分析でき、原理的には

光の照射部分だけ試料があれば測定が可能(極 微量測定)です(液体ならばキャピラリーで数 μL、固体であれば数 ng 程度)。 さらに、顕微 ラマン分光ならではの空間分解能(1μm)を生 かした試料の面分析(マッピング測定)や共焦 点光学系を生かした透明試料中の異物(埋没試 料)の測定(三次元マッピング測定)が可能で す。

実際の測定例を以下に示します。

低波数領域の硫黄スペクトル

無機化合物は低波数領域において興味深いス ペクトルを示します。低波数領域は、入射光が 反射した光(波数 0cm-1)の強度が強く現れる領 域であり、従来のフィルタを用いた測定では極 めて困難です。しかし、低波数測定ユニットの 利用により、測定は大変容易となります。図3 に、レーザ波長を変えて測定した低波数領域の 硫黄の測定結果を示します。

おわりに

ラマン分光法は、赤外分光法と相補的な分子 の振動の情報が得られることに加え、空間分解 能が高い、低波数測定が可能である、励起波長 により共鳴ラマン効果があるなど、赤外分光法 とは異なる特色を有します。例えば、赤外分光 法は、物質によって吸収された光の波長で、物 質が何であるかを判定していますが、ラマン分 光法では、物質による光吸収が必ずしも必要で ないため、赤外分光法で測定が困難な試料も測 定できることがあります。

皆様のご利用をお待ちしております。

図3 硫黄のラマンスペクトル

作成者 化学環境部 櫻井 芳昭 Phone:0725-51-2674 発行日 2010 年 1 月 27 日

参照

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