微生物燃料電池におけるセル構造の最適化
Optimization of the Cell Structure in Microbial Fuel Cell
速 水 一
*・杉 浦 公 彦
**・西 岡 求
***Hajime HAYAMI, Kimihiko SUGIURA and Motomu NISHIOKA
(Received January 10, 2012)
The world should sever the dependence of fossil fuel to solve serious global environmental issues. Recently, although the dissemination of the nuclear plant was promoted because of the low CO2 emission in the world, it will be controlled by the accident
of the Fukushima nuclear plant due to the East Japan great earthquake. Therefore, renewable energies such as the sunshine, the wind forces and biomasses are paid to attention as an alternative energy of the fossil fuel and nuclear power, and the dissemination of the fuel cell such as Polymer Electrolyte Fuel Cells and Molten Carbonate Fuel Cells is greatly expected from the world, especially. However, these fuel cells are too expensive by use of the noble metal catalyst, a high manufacturing cost, a low lifetime and insufficient ensuring hydrogen. Therefore, as the development of a low-cost fuel cell is expected, microbial fuel cells (MFC) are paid to attention. The cost of MFCs can be reduced because microbes as a catalyst can be manufactured from the genetic operation at a low price, and organic waste such as sludge and food residue etc. become a fuel for MFC. Therefore, MFC are expected to apply to from large-scale sewage plant to a portable power source. However, the MFCs performances such as power density, stability, durability and so on are worse than that of other fuel cells and power source. Therefore, we aim to solve these issues by improving the mechanical factors. However, it is difficult to evaluate the performance of the MFCs accurately because the growth and extinction of a microbe greatly depend on the experimental condition such as temperature, power generation and fuel quantity etc. Wherein, we made two trial products of MFC that used the commercially available active dry yeast as an anode catalyst, evaluated its performance, and have extracted the problem of MFC. As a result, we obtained the max power of 0.85 - 1.0 mW/cm2 by two trial
products of MFC. Moreover, the influence of the fuel diffusion polarization on the performance was larger than conventional fuel cells. It was clarified that the cell structure such as an interelectrode distance and a shape of fuel tank in each pole etc. influences the cell performance. Additionally, the fixation in electrode of microbe and the effective supply method to microbe of fuel should be further examined to improve the cell performance.
Key Words: Woody Microbial Fuel Cell, Glucose, Yeast
*大阪府立大学工業高等専門学校総合工学システム専攻機械工学コース(〒 572-8572 寝屋川市幸町 26-12) Osaka Prefecture University Collage of Technology (26-12 Saiwaicho, Neyagawa, Osaka 572-8572, Japan)
**大阪府立大学工業高等専門学校総合工学システム学科機械システムコース(〒 572-8572 寝屋川市幸町 26-12) Osaka Prefecture University Collage of Technology (26-12 Saiwaicho, Neyagawa, Osaka 572-8572, Japan)
***大阪府立大学工業高等専門学校総合工学システム学科物質化学コース(〒 572-8572 寝屋川市幸町 26-12) Osaka Prefecture University Collage of Technology (26-12 Saiwaicho, Neyagawa, Osaka 572-8572, Japan)
研 究 論 文
1.緒 言 現在、地球の人口増加および世界各国の高度経済成長に 伴うエネルギー需要の増加によって化石燃料の枯渇が進ん でいる。これにより、世界各国では増え続けるエネルギー 需要を賄うため、省エネルギー技術の開発や代替エネル ギーが盛んに研究開発されている。また、2011 年 3 月に発 生した東日本大震災による原子力発電所倒壊事故の影響か ら脱原子力依存の世論も強くなっており、再生可能エネル ギーや燃料電池など分散型電源によるスマートグリッド電 力網のため研究開発が進められている。 燃料電池とは、水の生成反応を電気化学的に連続的に生 じさせることで発電するシステムである。種々の電解質を 介して分離されたアノード電極(燃料極)とカソード電極 (酸化剤極)から構成され、燃料には水素を主成分とする燃 料ガス、酸化剤には酸素ガスまたは空気が用いられる。こ の燃料電池は現在一般に普及しているエネルギー変換装置 としてのエンジンやタービンと比べると、水素と酸素の電 気化学反応により直接電気エネルギーを取り出すため比較 的高効率であり、排熱利用により総合効率をさらに高める ことが可能である。また、基本排出物は水のみであるため、 地球温暖化の原因となる CO2、SOx や NOx などの大気汚染 物質をほとんど排出せず、さらに運転時の振動や騒音が小 さく、微小な電池から発電用電池に至るまで発電効率がほ ぼ一定でありながら機械的な稼動物がないためサイズの自 由度が大きいといったエネルギー変換装置として燃料電池 特有の優位性がある。しかし、徐々に市場へ導入されるに つれ、環境性だけでなく、コストや燃料の確保といった本 格的な実用化に向けて解決すべき問題があげられるように なってきた。既存の燃料電池では普及を妨げる大きな要因として、製 造コストと燃料の確保があげられる。これらの問題を解決 した燃料電池のひとつの形として、微生物を触媒とした微 生物燃料電池(MFC: Microbial Fuel Cell)が新しいエネルギー 源として注目され始めている。微生物燃料電池は白金のよ うな無機触媒ではなく、微生物の生命維持活動を触媒とし て利用するため既存の燃料電池と比べ低コストになる。ま た、燃料には糖やアルコールなどの食品系燃料や下水汚泥 などの有機廃棄物など様々なエネルギー源が利用可能で、 これらは水素よりも確保しやすい。そのことから、微生物 を利用した工業設備などでの小規模な電力需要に対する供 給などが期待される。しかし、既存の燃料電池や他の再生 可能エネルギー利用のエネルギー源と比べると得られる電 流密度は未だ微小であり、電極触媒としての微生物は探索 されているものの電極の安定性や耐久性などがシステムと してほぼ検討されておらず、実用段階に至るまでの課題は 多い。さらに、時間とともに増殖死滅する微生物はその反 応自体においても刻々と変わる溶液の組成に影響されるた め、定量的な計測が困難であり、実際に応用されるシステ ムにおいてはその装置の構造や動作条件が電池の性能に大 きく影響する。したがって、微生物燃料電池を評価する実 験装置においても、実験条件などに対して任意に制御でき るような工夫が必要である。そこで本研究では電池の電流 - 電位 (I-V) 測定実験からみた実験装置の問題点を抽出し、 その改善を通して微生物燃料電池における実験系やセル構 造の最適化を目的とした。 2.微生物燃料電池の特徴 本研究で取り扱った微生物燃料電池では、白金のような 無機触媒ではなく、微生物が持つ酵素の化学反応における 反応促進性を触媒として利用するため、既存の燃料電池と 比べてコストが低く抑えられる。また燃料には水素ではな く糖やアルコールなど微生物の栄養となる様々な炭素源が 利用可能で、これらの炭素源は水素などの精製を必要とす る燃料と比べると手軽さの面で優位性がある。さらに、生 物の代謝そのものを利用するため常温常圧での作動が可能 で、反応の過程で有害な物質が発生せず、環境負荷が極め て小さく、取り扱いが容易である。 微生物燃料電池を含む一般的なバイオ燃料電池はバイオ エレクトロカタリシス反応と呼ばれる電気化学反応と酵素 触媒反応を共役させた反応を基礎としている。このバイオ エレクトロカタリシス反応は、酵素または微生物と電極の 間を電子が直接移動する直接移動型と、電極との間に酸化 還元化合物(電子伝達メディエータ)を介して移動する間 接移動型に分類される。酵素には各種オキシダーゼやデヒ ドロゲナーゼなどを使用し、微生物の場合はこれらを体内 に持つ菌体などが使用される。電子伝達メディエータには キノン類やオスミウム錯体などが使用されることが多い。 ここで、バイオ燃料電池の例として、本研究で取り扱った 微生物燃料電池の発電原理を Fig.1 に示す。アノード電極 には、炭素基盤などに微生物を定着させ、増殖させたもの を使用する。そのため、アノード電極には導電性を持ち、 かつ微生物が定着しやすいフェルトや網などを使用するこ とが一般的である。カソードには一般的な固体高分子電解 質形燃料電池 (PEFC) と同様に白金を担持した炭素電極を 使用して、大気開放にするか本図に示すように炭素電極を 用いて触媒兼酸化剤としてフェリシアン化カリウムなどを 添加した水溶液を用いることが多い。これらの電極の間に は短絡を防ぎ、プロトンを移動させるためにナフィオンⓇ などのプロトン交換膜を挟む。そうすることで電気化学 セルとしての燃料電池を構成する。電池として作動する際 は、アノードに微生物の栄養源となる糖などを供給し、カ ソードで酸化反応を促すことで電気エネルギーを外部に取 り出すことが可能となり、微生物は糖から自己が活動する ためのエネルギーを得る過程で生体反応により電子を放出 する。近年まで、この微生物から電子を引抜する行為には、 外部からのメディエータの添加による間接移動が必要とさ れていたが、メディエータを自己生成するものや直接電子 移動をする微生物も発見されており、導電性の微繊維(ナ ノワイヤー)経由で微生物体内から直接電子を移動できる 可能性も示唆されている。 微生物燃料電池の反応について、燃料としてグルコース (C6H12O6) を使用し、このグルコースの分解が、最終段階ま で進んで完全に酸化される場合を例に述べる。アノード電 極でグルコースは最終的に二酸化炭素 (CO2) とプロトンお よび電子に分解され、生成したプロトンは交換膜を介して カソード電極へ、電子は外部回路を通り負荷で電力が消費 された後、カソード電極へ移動し、酸素と反応して水 (H2O) を生成する。なお、両極での反応の酸化還元電位の差を取 ることで得られる起電力の理論値をとることができる。た だし、実際の測定では様々な電圧降下要因が発生し、電池
として電力を取り出す際の電圧はこの数割程度であるとと もに、一種類の微生物だけでグルコースを完全に分解する こともできないのが現状である1) 2)。 3.実験装置および実験方法 本研究では、二種類のセル形状を変えた微生物燃料電池 を構成し、その性能を任意の電位を定常的に保った状態で の電流・電位測定と長時間の電力消費実験から評価した。 3.1 実験装置 本研究で用いた微生物燃料電池セルはアノード・カソー ド両槽にそれぞれ異なった溶液を入れ、ナフィオンⓇ で両 槽を仕切っている。この両槽の溶液をそれぞれアノード溶 液、カソード溶液とする。本研究で用いた微生物燃料電池 の溶液組成および共通の仕様を Table 1 にまとめる。アノー ド溶液は pH 7.0 に調整した McIlvaine 緩衝液のなかに、触 媒として市販されているドライイーストを 100 g/L、電子 伝達メディエータとして 1,4- ナフトキノンを 0.01 M (1 M = 0.001 mol/cm3)、燃料としてグルコースを 30 g/L の濃度で 溶かした溶液を使用した。また、カソード溶液には同様の McIlvaine 緩衝液のなかに、触媒としてフェリシアン化カリ ウムを 0.5 M の濃度で溶かした溶液を使用した。なお、電 極反応は溶液の濃度に依存するため、本研究ではこれらの 濃度を以降標準溶液濃度として扱い、溶液量に従って溶か す試薬の量を変え、濃度を一定に保った状態で実験した。 各槽の間には各溶液が混合せずにイオンを透過するための プロトン交換膜としてナフィオンⓇ を挟んだ。また、安定 した電流を取り出すため、電極であるカーボンペーパー上 20 × 20 mm2 のエリアに炭素微粒子を焼結することで有効電 極面積を増大させた。本研究で用いた実験装置を Fig.2 に 示す。微生物燃料電池の実験セルは槽内温度を 40 ℃に設定 した恒温槽内に配置し、アノード槽の溶液温度を熱電対に て計測する。アノード溶液はマグネティックスターラで攪 拌し、アノード・カソード両電極の端子をポテンショスタッ トと接続した。ポテンショスタットは、参照電極に接続し た電気化学反応の酸化還元電位を基準に作用電極の電位を 測定する。本図では、カソード電極に参照電極としての機 能を持たせ、対極と兼ねて接続することアノード・カソー ド間の電位差を任意に制御できるようにした。I-V 特性は 任意の電位での電流値をポテンショスタットによる定電位 測定法で測定し、そのときの電圧、電流および温度をデー タロガーによりオンラインで記録し、PC 上に保存した。 3.2 小型セル構造 微生物燃料電池の性能を測定するにあたって、小型のセ ルを設計製作した。実際に実験に使用した小型セルの分解 図を Fig.3 に示す。小型セルでは大きさ 50×50×10 mm3の アクリル部品を組み合わせて、アノード槽およびカソード 槽の各槽を形成し、締め付けボルトによって規定の圧力で
Table 1 Specifications of the MFC
Anode Cathode Catalyst Yeast [100 g/L] Potassium ferricyanide [0.5 M] Mediator 1,4-naphtoquinone [10 mM] -Fuel Glucose [30 g/L]
-Buffer Phosphate buffer solution [100 ml] Electrode Ketjenblack coated carbon paper [4 cm2
]
Electrolyte Nafion®
NR 212 Experimental
Temperature Setting temperature [40 °C]
Potentiostat Data logger PC MFC Magnetic stirrer Thermocouple Thermostat bath Anode Cathode Electrode
Proton exchange membrane RE CE WE1 WE2 Temperature Current density Cell voltage Data
Fig.2 Experimental apparatus
締め付けることで、各槽をシールしている。ここで、各極 における溶液容量は標準溶液濃度で、アノード槽の容量は 20 ml、カソード槽の容量は 3 ml である。 3.3 二筒型セル構造 これまでの実験に用いた小型セルは、50 × 50×10 mm3の パーツを組み合わせることでアノード槽およびカソード槽 を形成し、使用するパーツと組み方によって多種の実験に 広く対応できるよう設計した。しかし、容器底板が厚く、 平滑でないことから攪拌子がうまく回らなかった。また、 電極が固定できずに電極間距離を一定に保つことが難し かった。さらに、ボルトで強く締めないと水密性を保てな いが締めすぎると熱応力によってひびが入るなどの問題が 生じた。そこで、新たに二筒型セルを設計し、製作したセ ルで実験した。 実験に使用した二筒型セルの外観を Fig.4 に示す。各槽 の容量は 30 ml から約 100 ml までである。今回の実験では、 アノード溶液およびカソード溶液ともに標準溶液濃度で 50 ml 使用した。電極は銅板で製作した集電板とともに挟み 込み、ボルトで軽く締め、設計上の不備で発生した隙間は シリコングリスで充填した。また、両槽の間にはガスケッ トとしてシリコンシートを使ってナフィオンⓇ を挟み込み、 セパラブルクランプで締結した。 3.4 実験方法 小型セルと二筒型セルの性能を比較するため、I-V 特性 を計測した。電圧変化直後は電極近傍に発生した電気二重 層の影響で、しばらくは電流値が大きくなるため、電流値 が安定するのを待って測定した。これを開回路の状態から 電圧を下げて短絡 (0 mV) まで繰り返すことで I-V 特性を取 得した。二筒型セルでは槽の容量が異なるため、攪拌の強 さを必要に応じて変更した。 4.実験結果および考察 4.1 小型セルにおける電流電位測定 小型セルの標準溶液濃度での I-V 測定結果を Fig.5 に示 す。I-V 特性では、横軸に電流密度、両縦軸にそれぞれ電 圧、電力密度を示す。ここで、図中には、測定した電圧ご とに線上のプロットが描かれているが、これは前述したと おり電流値が電圧変化直後から次第に変化するためであ り、全てのデータをプロットしている。また、点線はその 電圧における電流収束値を示す。この I-V 特性には、電極 反応の理論電圧に反応時に必要なエネルギーとしての活性 化分極、内部抵抗による抵抗分極、反応物質の不足による 拡散分極といった 3 つの電圧降下要因をあわせることで形 成される。また、活性化分極は低電流密度領域、拡散分極 は高電流密度領域で大きく現れる。本図より、約 2.4 mA/ cm2 時で最大電力 0.85 mW/cm2を示すがこれ以上の電流を 取り出すと電池電圧が急激に低下しており、アノード側の 拡散分極が増大しているといえる。燃料であるグルコース は初期投入量のままであるため、高電流密度領域では、グ ルコノラクトンなどのグルコースの分解途上のものが微生 物近傍に存在することになり、攪拌しているもののグル コース分圧は低下するため、急激な電圧降下が生じたと考 える。また、低電流密度領域における I-V 曲線の傾きから 求めた抵抗は 20.693 Ωであり、一般的な PEFC での抵抗値 の約 1000 倍も大きいことから、両電極と隔壁膜間の距離 の大きさや接触抵抗など改善すべき点が多くあることがわ かった。 次に、このときの経時変化を Fig.6 に示す。図中の横軸 に時間、各縦軸に電圧、電流密度、温度をそれぞれ示す。 本図より、電圧変化時に過渡応答としてスパイク状の電流 値のピークが生じており、この波形から 1 次遅れ要素であ
Fig.4 Structure of the twin-pipe cell
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 0 100 200 300 400 500 600 700 800 Cell voltage Power density Cell voltage [mV]
Current density [mA/cm2]
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Power density [mW/cm 2 ]
るコンデンサ、つまり電気二重層の影響が反映していると いえる。最大電力(電流密度が 2.4 mA/cm2付近)を超える とこの電流のピークは生じないことから、電気二重層の静 電容量を超える電荷量が流れたためであると考える。また、 測定開始時の溶液温度が低いが、これは予熱がしっかりで きていなかったためであり、一定温度条件で実験するため には、あらかじめ溶液を 40 ℃付近まで温めておく必要があ ることもわかった。 4.2 市販イースト菌中の含有物質の影響 一般的に市販品のドライイーストは、パンなどの発酵を 促進させるためにイースト菌の活性に必要な成分があら かじめ含まれていることが多い。そこで、この添加されて いる物質の影響を確認するため、アノード標準溶液から 燃料であるグルコースを除いた状態での I-V 特性を測定し た。その結果を Fig.7 に示す。なお、電池抵抗値は 18.792 Ωであった。本図より、開回路電圧は燃料であるグルコー スがないため低くなっているが、開回路電圧を生じている ことから触媒であるイースト菌の燃料物質が含まれている ことは明らかである。さらに、グルコースがあるときより も低電流密度領域から急激な電圧降下が生じることから微 生物に対する燃料は市販イースト菌にはさほど含まれてい ないと考える。そこで、含まれる燃料物質量を推定するた め、グルコースを除いたセルで電圧を最大出力である約 0.8 mW/cm2 が出せる 400 mV にあわせて電流が取り出せなく なるまで連続運転した。その測定結果を Fig.8 に示す。本 図より、3 時間程度は直線的な減少傾向であるが、これは 燃料濃度の低下による拡散分極の増大によると考える。ま た、3.5 時間の時点で急激な低下が見られるが、これは、燃 料不足の状態で電流を取り出していることから、イースト 菌に大きな負担がかかり死滅し始め、これにより活性化分 極が増大したと考える。さらに、恒温槽内の気温と平衡状 態にある溶液温度が電流低下とともに低くなっていること からもイースト菌の死滅によって生物反応による発熱が少 なくなり、蒸散などの放熱と反応によって発生した熱量が 平衡を取れる温度が徐々に低くなっていったためであると 考える。実験後のアノード溶液にはイースト菌の死がいと 見られる沈殿物があったことから、この仮説は概ね妥当で あると考える。 以上の結果より、イースト菌の純粋な触媒としての能力 を評価するには、市販イースト菌に含まれる燃料物質を取 り除いておくことが望ましいといえる。 4.3 二筒型セルにおける電流電位測定 電極間距離を短くすることによる内部抵抗の低減と燃料 槽の改善による拡散分極の低減を図るために試作した二筒 型セルの電池特性を評価した。その結果を Fig.9 に示す。 本図と Fig.5 を比較するとセル構造の改善によって明らか に性能が低下している。I-V 特性から求めた抵抗値は 66.15 Ωと小型セルの場合と比較して 3 倍も大きい。これは電極 を固定して電極間距離を定めたことで結果的に電極間距離 が大きくなったこと、シール剤であるシリコングリスが槽 0 500 1000 1500 2000 0 100 200 300 400 500 600 700 800 Cell voltage Current density Tempurature Cell voltage [mV] Time [s] 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
Current density [mA/cm
2] 33 34 35 36 37 38 39 40 Tempurature [ °C]
Fig.6 Change with the lapse of time of cell temperature and current density 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 0 100 200 300 400 500 600 700 800 Cell voltage Power density Cell voltage [mV]
Current density [mA/cm2]
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Power density [mW/cm 2 ] 0 1 2 3 4 5 6 7 8 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Power density Tempurature Power density [mW/cm 2 ] Time [h] 38.0 38.5 39.0 39.5 40.0 Tempurature [ °C]
Fig.7 Influence of fuel material in yeast on cell performance
内にはみ出して電極やその周囲に付着して絶縁体となった ことや攪拌不良による電極反応の阻害つまり拡散分極が低 電流密度領域で出てしまったことに起因すると考える。ま た、攪拌は、アノード槽容量が増加したにもかかわらず、 スターラ出力を小型セルで使用したときと同じにしていた ため、攪拌による単位電極面積あたりの流量が小さくなっ ていたと考える。そのため、小型セルでの攪拌と同等程度 の効果を得るためには、さらに強く攪拌する必要があると わかった。 そこで、スターラの出力を上げ、単位電極面積あたりに 供給される量を小型セルの場合と一致させて攪拌するとと もに、余分なシリコングリスの除去により抵抗値を 24.207 Ωと低減させたときの I-V 特性を Fig.10 に示す。本図より、 運転条件を合わせるとセル構造改善の効果が表れ、最大出 力は 1.0 mW/cm2と向上した。また、拡散分極による電圧 低下も高電流密度領域側へシフトしていることから、機械 工学的なアプローチによるセル構造や燃料供給法によって 電池性能を向上することができることがわかった。さらに、 糖の分解反応自体は槽全体で起こっているにもかかわらず 電流降下が大きく、かつ、反応槽の流動により電圧降下が 改善されることから、メディエータと電極間の電子移動が 性能に大きく影響しているといえる。このことから、反応 で生じるエネルギーを効率的に取り出し、全体の活性化分 極による電圧降下を低減させるためには、微生物とメディ エータを電極へ固定化し、分解反応を局所的に発生させる 必要があることも示唆できた。 5.結 言 本研究における実験およびその結果より以下の知見を得 た。 1) 市販のドライイーストでも十分に微生物燃料電池は作成 できる 2) 小型セルにて最大出力 0.85 mW/cm2 を得ることができ、 二筒型セルでは 1.0 mW/cm2の最大出力を得ることができ た 3) 市販のドライイーストには、燃料物質が含有されており、 純粋なイースト菌の触媒能を評価するにはその燃料物質 を取り除かなければならない 4) 試作した微生物燃料電池は拡散分極の影響が大きく、溶 液中で燃料であるグルコースと分解後の物質を分離させ て燃料分圧を一定にするセル構造が必要である 謝 辞 本研究を進めるにあたり実験方法や電池作製についてご 教授いただいた京都大学大学院農学研究科生体機能研究室 加納健司教授および同研究室の皆様に心より感謝いたしま す。 引 用 文 献 1) 渡辺一哉・石井俊一:微生物燃料電池の最新の進歩 池田篤 治(編)“バイオ電気化学の実際―バイオセンサ ・ バイオ電池 の実用展開―”、シーエムシー出版、(2007) 307-311 2) 柿薗俊英:バイオ燃料電池―有機性廃棄物・廃水を電力資源 化する―、高温学会誌 35-5 (2009) 263-268 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 0 100 200 300 400 500 600 700 800 Cell voltage Power density Cell voltage [mV]
Current density [mA/cm2]
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Power density [mW/cm 2 ] 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 0 100 200 300 400 500 600 700 800 Cell voltage Power density Cell voltage [mV]
Current density [mA/cm2]
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Power density [mW/cm 2 ]
Fig.9 I-V performance on the twin-pipe cell
Fig.10 I-V performance of diffusion polarization improvement on cell performance of the twin-pipe cell