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問題解決場面からみた階層的クラス化の発達

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Academic year: 2021

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(1)

問題と目的

子どものクラス化 (

) の発達は, 概念発達, 抽象化の発達, カテゴリー化の発達, 分類行動の発達などの名称で, 古くから研究がなされてきた (

)。 この中で,

(

!

) は, 分類の根拠や基準の内容がどのように発達的に変化するかという分類の内容的, 知識的側 面でなく, 思考行為としての分類作用や分類の機能的側面の発達を研究対象とし, 特には論理的クラ スの理解や構成に焦点を当てた論理操作としてのクラス化操作の発達を研究した。 そして, クラス化 操作の発達段階として, 共通属性に基づかない分類構成を示す象形的収集の段階 (2歳半〜4歳), 共通属性に基づいた分類を行う非象形的収集の段階 (5歳〜7歳), さらにクラス間の階層的関係の 理解を示すクラス化操作の段階 (8歳以降) という3つの発達段階を提出している (

)。 最後のクラス化操作の段階は, 系列化, 数などの他の論理数学的操作や保存概念の 獲得とともに一般的には具体的操作期 (7,

8歳から

,

歳まで) として位置づけられている。

しかしながら,

のクラス化の発達段階に関するその後のさまざまな研究において, 多くの 理論的, 実証的問題が提出されている (

" #$%" & #

土居#&"'(

杉村湯沢!)。 特に,

によって階層的クラスの理解の 有無をみる決定的な課題として用いられたクラス包含課題 (

) については, 具体的操 作期であるか否かを示す代表的課題の1つであるため多くの研究がなされてきた。 クラス包含課題は, 例えばチューリップの花 (例えば8本) とそのほかの花 (例えば2本) を呈示して 「花とチューリッ プではどちらが多いですか」 と問うもので, チューリップは上位クラスである花に包含される下位ク ラスであるので 「花の方が多い」 という反応がなされるとクラス間の階層的関係が理解できていると する課題であるが, その後の研究では7〜8歳の具体的操作期よりもずっと後になってしか論理的に 正しい反応を示さないことが報告されている。 例えば,

)

(

#*

) は,

の標準的なクラ ス包含課題を使用した$の研究を整理し, 具体的操作期とされる7〜8歳よりも遅い時期でないと解 決できないという報告の方が圧倒的に多いことを指摘し, また保存に代表される他の具体的操作期の 指標とされる課題より獲得時期も遅いことから, 包含課題は階層的クラスの理解を超える認知スキル を必要とするのではないかと考えている。 実際のところ,

自身のデータ (

問題解決場面からみた階層的クラス化の発達

二十の扉問題における刺激の空間的配置の効果

中 島 実

(2)

) においてもクラス包含課題に成功する年齢は早いケースでも8歳で, 多くの場合は9歳以降で

あることがうかがわれる。 また,

()

は, この課題の遂行には少なくとも8種類の下位過程が関与していることを指摘し, 子どもの間違っ た反応 (例えば, 下位クラスである 「チューリップ」 の方が多い」) は階層関係の理解以外のさまざ まな下位過程 (特に花などの上位クラスの指示対象を同定する過程) に起因することを示している。

これらの研究から,

がクラス化操作成立の基準的課題としたクラス包含課題を階層的クラ ス化の基準的測度と考える必要はないと主張されるようになってきた (

! "

#$! % $

)。 例えば

! % (

) は, さま ざまな要因によって誤反応が起こりやすい包含課題はクラスの階層関係の理解を調べる課題として基 準が厳しすぎることを指摘し,

&! (

) が扱ったような関係の非対称性 (下位クラスのすべて の成員は上位クラスの成員でもあるが, その逆は妥当でないこと) や関係の推移性 (クラスAがクラ スBに包含され, クラスBがクラスCに包含されるなら, クラスAはクラスCに包含されること) の 理解を階層理解の基準とすることを提案しているし, (

) はこの他に階層的分岐の理解 も加えている。 そして, 彼らは階層関係の理解の発達を調べる課題として, 分類課題やクラス包含課 題だけでなくより広範な課題によってクラス階層の理解を探求すべきであると提唱している。 これら の指摘は,

によるクラス化の発達段階, 特に具体的操作の代表的指標である階層的クラス化 がいつ頃, そしてどのように発達するかに関して, クラス包含課題を含むさまざまな課題をとおした 研究がさらに必要であることを示唆するものである。

このような課題の1つに, 問題解決において階層的クラス化の過程が関与する二十の扉問題があげ られる (

' ()$ * $

大村・福本$+

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中島

,$*/ )

)。 この課題は多くの対 象から1つの解となる対象を特定する問題であり, 必然性の理解を伴う論理的な問題解決課題である ことが指摘されている (

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)。 この課題を解決するためには, 質問によっ て得た手がかりをもとに対象を分類することによって順に解となりうる対象を収斂させて, 最終的に

1つの対象を特定する必要があり, 認知発達の研究としては *

(

) によって はじめて使用された。 とくに らは, 対象を収斂する質問方略 (収斂的方略) の背景には対 象を階層的にクラス化する認知能力の発達が必要であることを指摘している。 彼らの知見によると収 斂的方略を継続して進めるのは歳になってからであり,

6歳や8歳においてはほとんどみられない

ことが示されている。

これに対して, 中島 () はこの課題で必要とされる階層的クラス化が

のいう具体的操 作期でのクラス化操作に対応することを指摘した。 とくに, らが示した年齢傾向 (

歳) と 具体的操作期 (7〜8歳) には年齢的ずれが大きいことを検討するため, 基本構造を維持しながら子 どもの能力をより反映する課題に再構成 (対象全体の数を減らすこと, 大人による示範の導入など) して実施した結果, ほぼ具体的操作期 (8歳程度) の子どもにおいて収斂的質問を継続する方略によっ て解決が可能であることが示された。 また中島 (

) では,

の非象形的収集段階で可能と

(3)

なる悉皆的分類 (分類課題において共通属性をもつ対象を残らず1つのクラスに分類すること) と, 二十の扉問題において対象を階層的にクラス化していく収斂的解決の間には明らかな発達的差異が存 在することが示され, これは

による非象形的収集段階からクラス化操作の段階への発達的移 行に対応することが示唆された。 さらに, 中島 ( ) では対象を収斂するために必要な情報を実験 者がヒントとして与える聞き取り形式の二十の扉問題を使用して, 対象を順次収斂していく途中過程 での処理状態が検討された。 その結果, 収斂的解決が不可能な者は1つ目のヒントによって対象を収 斂 (または分類) する段階では支障はないが, 続く2つ目のヒントによってさらに対象を収斂する段 階において誤反応が多く起こることが示された。 これは, 第1のヒントによって対象を分類し, その 結果得られたターゲット対象 (解になりうる候補対象) を保持しながら次の第2のヒントによりクラ ス化する過程での失敗が収斂的解決の可否にとって決定的な過程であることを示唆するものであった。

このような知見をもとに, 本研究では聞き取り形式の二十の扉問題を用いて, 収斂的解決の可否に とって決定的な過程である第2ヒントの処理段階の失敗がいかなる認知発達的限界に起因するのかを 検討する。 とくには, 第2のヒントの処理段階での失敗は第1のヒントによる分類で得たターゲット 対象を一時的に保持する過程が不十分なことによるのか否かに焦点をあてる。 もし, 第1ヒントによ る分類の結果保持が不十分なため収斂的解決に失敗するのであれば, 第1ヒントによる分類結果の保 持を容易にするような課題構成によって成績が改善されることが予想される。 これに対して, このよ うな課題構成によっても成績に改善がみられなければ, 第1分類によって処理が完結してしまい, 次 の第2分類へと処理の継承がそもそもなされないために収斂的解決に失敗することになる。 本研究で は, 第1ヒントによる分類結果の保持が容易となる課題として対象全体の布置が各次元の値によって 規則的に配置されている秩序配置課題も実施し, これと各刺激がでたらめに配置されている標準的な 二十の扉問題 (ランダム配置課題) での収斂的解決の成績を比較することでこの点を検討する。

1)

被験者 小学校1年生名 (男児 名, 女児名) で, 平均年齢は6歳ヶ月, 範囲は6歳6ヶ 月〜7歳5ヶ月であった。

2)

刺激および課題 二十の扉問題に使用される幾何図形の各次元の値について弁別可能か否かをみ る属性弁別刺激, 課題のやり方を理解させるための練習刺激, 二十の扉問題である実験刺激からなる。

各刺激は, 以下のとおりである。

①属性弁別刺激 実験刺激に用いられた幾何図形の各次元の値について理解しているかを確認するた めのもので,

2つの幾何図形を1組とする

組 (①から⑫) で構成する。 使用された次元と値は, 形 (丸い, 三角), 大きさ (大きい, 小さい), 数 (1つ,

2つ) の3次元2値である。 課題は, これら

の6つの値の肯定形 (〜です) と否定形 (〜ではありません) について,

2つの刺激のうち当該の値

を持つ方の図形を選択するものとなっている。

②練習刺激 ヒントを最後まで聞いてから解となる図形を選択することを練習するために,

つのヒ ントを聞いて4つの幾何図形から解を選択する2つの練習課題 (

れんしゅう1

,

れんしゅう2

(4)

の表題が付されている) で構成した。

4つの刺激図形は2行2列に配置されるが, 2つの練習課題で

は異なる図形が使用された。

③実験刺激

3つのヒントを聞いて解が確定されるように3次元2値を組み合せた8つの幾何図形で

構成される。 いずれも2行4列で配置されるが, 各図形の空間配置条件によって2種類 (各2試行分 の計4課題) を作成した。

1つはランダム配置課題の刺激 (図1参照) で, 8つの図形が次元や値に

関係なくでたらめに配置されたもの, もう1つは8つの図形が次元の値によって整理された配置となっ ている秩序配置課題の刺激 (図2参照) である。 秩序配置は, 与えられるヒントの順序に対応した次 元で左右または上下に空間的にまとまるように配置された。 図2の秩序配置の場合, 例えば最初に与 えられるヒントの値 (小さい) に対応させて左右4つずつに分割され, 次に2つ目のヒントの値 (三 角でない) に対応させて上下2つずつに分割され, そして3つ目のヒントの値 (2つ) に対応して左 右のいずれかの図形に分割されるように配置された。 この秩序配置課題は,

3つのヒントによって系

統的にクラス化する過程の途中において, 解になりうる刺激の一時的保持を容易にするものとなって いる。

なお, これらの刺激はB6サイズの用紙に印刷されたもの (弁別刺激3頁, 練習刺激2頁, 実験刺 激4頁) を1つの冊子にして使用した。

3)

手続 属性弁別セッション (組), 練習セッション (2試行), 実験セッション (2つの配置各

2試行ずつ, 計4試行) の順で実施した。 実験セッションにおいては, ほぼ半数の被験者 (

名) が ランダム配置課題, 秩序配置課題の順に, 残る被験者 (名) は逆に秩序配置課題, ランダム配置課

図1 ランダム配置課題の刺激例

(図形番号:1行目左から1〜4, 2行目左から5〜8)

図2 秩序配置課題の刺激例

(5)

題の順に実施した。 実験はこの2つのグループごとに集団で実施し, 教示とヒントはすべて実験者が 口頭で与えた。 実施に先立って図形を選択する方法 (図形を○で囲むこと) や, 選ぶのは1つだけで あることを説明した。

属性弁別セッション:属性弁別用の刺激のページ (ページ番号で指示) を開くよう教示した後, ① の2つの図形 (

大きい1つの丸

小さい1つの三角形

) が描いてある部分に注目させて, 「小 さい絵はどちらですか, 小さい方の絵を○で囲んでください」 と教示した。 これは大きさ次元の

さい

という値の弁別可能性をみるもので, 以下, ②から⑫までの各組について同様の教示により順 に実施した。 否定形の場合は, 例えば 「小さくない絵はどちらですか, 小さくない方の絵を○で囲ん でください」 と教示した。

練習セッション:練習用刺激の最初のページ (ページ番号で指示) を開くよう教示し,

れんしゅ う1

と記された4つの図形 (例えば, 上段に図1の図形番号4と2, 下段に8と1) が描いてある 部分に注目させ, 「それでは, あたりの絵をさがす練習をします。 ここには4枚の絵がありますね, この中でどの絵があたりかを見つけてもらいます。 あたりを見つけるために,

2つのヒントを教えて

あげますから,

2つのヒントを最後までよく聞いてあたりを見つけてください」 と説明した後, 「ヒ

ント1:あたりは大きい絵です。 (5秒後) ヒント2:あたりは丸ではありません」 と教示して, あ たり (解) の絵を○で囲むよう求めた。 同様に,

れんしゅう2も実施したが, ここでの2つのヒ ントは

2つ

小さい絵ではない

であった。

実験セッション:実験用刺激の最初のページ (ページ番号で指示) を開くよう教示し,

もんだい

の表題のある8つの図形が描いてある部分に注目をさせ, 「こんどは8つの絵があります。 この 中からあたりの絵を見つけてもらいます。 ヒントは3つありますから, 最後までよく聞いてあたりを 見つけてください」 と説明した後,

3つのヒントを順に口頭で与えてあたりの絵を選ぶよう求めた。

つの課題で使用されたヒント (値) の構成は表1に示すとおりである。

また, 約半数の被験者にはランダム配置 (2試行), 秩序配置 (2試行) の順に, また残る被験者 には秩序配置 (2試行), ランダム配置 (2試行) の順に合計4試行実施した。

被験者となった

名のうち,

組の属性弁別のいずれかで誤答した者あるいは練習課題で

試行と も誤答であった者が6名みられた。 これらの者はクラス化の前提となる値の弁別が十分でないか, 二 十の扉形式の問題解決のしかたの理解が十分でない可能性があるので, 以下の分析から除外した。 そ

表1 二十の扉 (聞き取り) 課題で用いられたヒント

試 行 与えられるヒント ランダム配置 大きい 丸でない 1つ

1つ 小さくない

秩序配置 小さい 三角でない 2つ 三角 2つでない 大きい

(6)

の結果, この6名の者を除外した

名が分析対象となった。

また, ランダム配置課題と秩序配置課題を2試行ずつ実施したが, 偶然による正答反応の可能性を 考慮し, 以下では各課題において2試行とも正答であった者をその課題の 「正解者」, これに満たな かった者を 「不正解者」 として分析する。

まず, 全体としての両課題における正解者数の相違をみる。 図3は, 両課題での正解者の割合 (%) を示したものであるが, ランダム配置で名 (

%), 秩序配置で名 (

%) となってい る。 正解者は秩序配置の方が9名 (

%) 多くなっており, 両課題での正解者数の相違について 検定 (二項分布による) を行った結果, 有意な差がみられ (

), 秩序配置において収 斂的解決が可能になる者は増加しているといえる。 通常の二十の扉問題であるランダム配置における 正解者率は

%であったが, 中島 () での聞き取り形式の二十の扉問題における7歳児の正解 者率

%とほぼ同様の傾向を示している。 二十の扉問題の解決の発達において, 本実験のような聞き 取り形式の方が質問形式よりも正解者率がやや高くなる傾向があるものの,

7歳は過渡的状態にあり 8歳以降において大半の者が解決可能となるという傾向 (中島,

) があらためて確認されたとい える。 これに対して, ヒントに対応させて各値によって刺激を規則的に配置した秩序配置では正解者 の割合が

%に達しており,

7歳においてもほぼ解決可能になっている。

これらは課題別の全体としての正解者に基づくものであるが, 次に両課題に対する個人内の成否パ ターンの結果からさらに検討する。 表2は両課題での正解, 不正解のパターン別の人数を示したもの である。 まず, ランダム配置での正解者 (名) について秩序配置の成否の様子をみる。 ランダム配 置よりも易しいと考えられる秩序配置でも正解であった者は

名 (

%), 不正解であった者が1名 (4%) みられた。 これらをランダム配置正解者の中での割合で示したものが図4であるが, ほとん どの者が正解であることがうかがえる (χ(

)

)。 また, この正解者の割合について, ほぼ1に近い母比率

とする二項検定を行った場合でも有意ではなく (

), ランダム課題

図3 2つの配置での正解者の割合

(7)

での正解者はほぼ全員が秩序課題においても正解することが示された。 なお, よりむずかしいランダ ム配置で正解しながら秩序配置で不正解であった者が1名みられているが, これは課題の総数によっ ては注意が持続せず, 論理的にありえない反応がこの年齢においてみられることを示しており, 課題 実施上の留意点を示唆するものといえる。 以上から,

1名特殊なケースがみられたものの, 全体とし

てはランダム配置で正解であった者はほぼ秩序配置でも正解すると判断してよいと考えられる。

次に, 本実験の基本的なねらいとなるランダム配置での不正解者 (名) について, 秩序配置での 成否を検討する。 この

名のうち, 秩序配置での正解者は

名 (

%), 不正解者は5名 (

%) で あった。 さきと同様に, これらをランダム配置不正解者の中での割合で比較したものが図5である。

図5に示されるとおり, ランダム配置で不正解であった者でも刺激を次元に基づいて秩序配置した場 合には解決が可能となる者がかなりみられる。 さきの図3の全体での両課題の正解者数の差, 特に秩 序配置での正解者の有意な増加はすべてこれらの者によるものである。 この秩序配置の正解者の割合 について, 正解者がほとんどいないことを意味する母比率

の二項検定を行った結果, 有意で あった (

)。 したがって, ランダム配置では解決できない者でも, 一連のヒントに対するクラス

表2 両課題での正解・不正解のクロス表 (人) 秩序配置

正解 不正解

ランダム配置 正解

不正解

図4 秩序配置での結果 (ランダム配置正解者)

図5 秩序配置での結果 (ランダム配置不正解者)

(8)

化処理の途中結果を維持するのが容易な秩序配置では, 解決可能な者がかなりいることを示している。

しかし他方では, 解決がより容易な秩序配置においても不正解となる者も存在し, これらの者では刺 激配置の効果がないことがうかがえる。 この両者の人数の差については有意ではなかった (χ(

)

)。

最後に, 両課題での成否を組合せた4パターンの各人数を全被験者に対する割合で比較したものを 図6に示した。 図6の4つの反応パターンのうち, 特殊なケースであるランダム配置のみ正解のパター ン (1名) を除いた3つのパターン間の割合には, 有意差がみられた (χ(

)

)。 図6 に示されるように, 二十の扉問題での収斂的解決の発達においては, 一方にランダム配置 (標準の二 十の扉問題) と秩序配置 (途中結果の保持が容易な二十の扉問題) のいずれにおいても解決が可能な 発達水準の者が存在し, これと反対の極にいずれの課題においても解決が可能でない水準の者がみら れる。 また, これら2つの水準の間に秩序配置では解決可能となるがランダム配置はまだ十分に解決 可能でない中間水準の者が存在することも示されている。 そして年齢的には, 本実験の被験者である

7歳はこれらの各状態にある者が混在する過渡期的時期であることが示されている。

本研究は,

がクラス化の具体的操作の指標とした階層的クラス化がいつ, どのように発達 するのかに関して, 問題解決場面での階層的クラス化をとおして検討する一連の研究の1つとして位 置づけたものであった。 これは,

が使用したクラス包含課題が階層的クラス化の能力を必ず しも十分に反映していないという問題があるため, 包含課題とは異なる認知課題から階層的クラス化 の発達を検討する必要があるという指摘を背景としたものであった (

!

)。 以下ではこの点を背景にしながら, 本研究が直接の対象とした二十 の扉問題での解決能力の発達に関して本結果で得られたことを考察し, さらに階層的クラス化の発達 に関してどのような関連や意義を持つものであるかについて検討する。

本研究は, 二十の扉問題で収斂的解決に失敗するのはヒントを順次処理する過程においてターゲッ ト対象 (各段階での分類結果) の一時的保持がまだ不十分なためによるのかを検討するものであった。

全体の正解者数 (図3) で示されたように, 規則配置課題で正解者数が増加しており, ターゲット対 象の一時的保持を容易にすることは収斂的解決に対する促進的効果があったといえる。 この点は, 本

図6 2つの課題での成否4パターンの割合

(9)

研究で使用した両課題における成否の個人内パターンを分析した結果 (表2) においてより明確に示 されている。 つまり, 標準的な二十の扉問題であるランダム配置に失敗する者 (不正解者) も, ター ゲット対象の一時的保持が容易な課題ではかなりの者 (

%) が解決可能になっている。 これらの結 果は, 収斂的解決の失敗はその前に行った分類結果の保持が不十分なためであることを示すものとい える。 これを発達的観点からみると, 単一の分類は可能だが収斂的解決は可能でない水準にある者は, 分類結果を一時的に保持しておく過程が不十分なために分類を系統的に行って解を特定することがで きないのであり, 規則配置課題のように一時的保持の過程が外的に補助され容易になる場合には (例 えば, 図2で 「小さい」 というヒントから 「小さい」 値を持った図形にのみ着目しようとするとき, それらはすべて空間的には右半分にまとまっておりその部分にのみ注意をむければよい), 分類を系 統的に行って解を収斂することが可能であるといえる。 したがって, このような水準にある者は系統 的に分類を行使し解を収斂すること自体は可能であるが, ランダム配置課題のように分類結果を保持 するための空間的視覚走査の負荷が大きくなると (例えば, 図1で 「大きい」 というヒントから 「大 きい」 値を持った図形に着目するとき, 空間的に点在している図形番号1,

3, 4, 5の各図形に着

目し続ける必要がある), 一時的保持がむずかしく系統的に分類を行使できなくなってしまう状態に あると考えられる。 このような状態は, 標準の二十の扉問題では収斂的解決に失敗する中間的水準あ るいは収斂的解決の初期水準にあるといえよう。

しかし他方で, 同様に収斂的解決が可能でない水準にある者でも, このような刺激布置の効果がみ られない者がいることも示された (7歳児で%)。 これらの者は, 分類結果の一時的保持が不十分 なためというよりも, 分類結果を次の分類に継承させること自体がまだ機能していないために収斂的 解決に失敗すると考えられる。 また, これらの者は単一分類は十分に可能である (中島) こと から, 個々の分類とその結果が相互に連携されることがない孤立的な単一分類のみが可能な状態にあ ると考えられ,

の非象形的収集段階 ( ) に対応する水準にあるとい える。 発達的観点からみてこのような状態は, ある分類の結果として得られた対象に焦点を絞った上 でさらに次の分類を行うという系統的な分類行動がみられない水準といえる。

このように本結果 (および中島

) からは, 孤立的な単一分類の状態にあり収斂的 解決ができない水準, 分類が関連づけられ系統的になるものの結果の一時的保持が不十分なために収 斂的解決に必ずしも成功しない中間的水準, 収斂的解決にほぼ成功する水準, という収斂的解決の発 達過程が示されたと考えられる。 そして, この最後の水準は, 課題形式に依存するとはいえ年齢的に は8歳あたりで多くの者が到達すると考えられる (中島

)。

最後に, このような収斂的解決の発達過程に関する知見は, 階層的クラス化発達の研究にどのよう に位置づけられ関連するのかについてみておきたい。 そのために, まず二十の扉問題での収斂的解決 で働くクラス化の性質についてまとめておく。 本研究で使用した8刺激の二十の扉問題での収斂的解 決は, 最初のヒントによって分類 (第1分類) を行い, その結果, 解の可能性がある4つのターゲッ ト図形を一時的に保持しながら, 次のヒントによってターゲット図形をさらに分類 (第2分類) して

2つのターゲット図形に解の候補を収斂させ, 同様にその解の候補を一時的に保持しながら最後の3

(10)

つ目のヒントによって2つの図形から1つの解を特定 (収斂) していく過程を必要としている。 この 一連の過程は, まず対象全体 (第1水準) がある属性によって2つのクラスに分岐し (第2水準,), ターゲットを維持しながら次の属性によってさらに2つのクラスに分岐し (第3水準), ここでもター ゲットを維持しながら最後の属性によってさらにまた2つのクラスに分岐する (第4水準) というよ うに, 全体としては下方向に階層的クラスが構成されていく過程でもある。 この過程は, 最初のクラ ス化によって得た2つのクラスそれぞれについて単にクラス化するだけの下位分割 (

) と外見上は類似しているが階層の構成という点で認知的レベルが異なるものである。 下位分割 (非象 形的収集段階の最後にみられる分類レベル。

) は, 順に行われるクラス化に おいてターゲットの維持を必要とせず, 相互の関連づけなく単一分類を反復するだけのものであるた め階層的クラスを構成するものとはいえない。 中島 () においても, 下位分割は可能であっても 収斂的解決に失敗する者が多くみられ, この逆の者はまったくみられていない。 この点から考えて, 二十の扉問題における収斂的解決はまさしく階層的クラスを構成する能力そのものであり, 収斂的解 決の発達的検討は階層的クラス化の発達をクラス包含課題などとは異なる問題解決の課題や場面にお いて検討するものであるといえよう。 これは,

(

) や

!

(

) に代表される見解, つまりクラス包含課題を階層的クラス化能力の基準的指標とす べきでなく, より広範な課題をとおして階層的クラス化の発達を検討すべきであるという基本主張に きわめて合致するものといえる。 今後, 本研究が対象とした論理的な階層的クラス化にとどまらず, 自然カテゴリーにおける階層に関する知見とも相互に関連づけながら階層的クラス化の機能的側面と 内容的側面の発達過程を総合的に検討していく必要があろう。

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湯沢正通 1 階層的カテゴリーの機能とその発達 北大路書房

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