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高校生の性と性教育に対する教員の意識

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高校生の性と性教育に対する教員の意識

著者 槌谷 亜希子, 篠木 絵理, 藤井 可苗

雑誌名 北海道医療大学看護福祉学部紀要

号 16

ページ 69‑73

発行年 2009‑12‑20

URL http://id.nii.ac.jp/1145/00006288/

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<研究報告>

高校生の性と性教育に対する教員の意識

槌 谷 亜希子1),篠 木 絵 理2),藤 井 可 苗3),阿 保 順 子1),横 井 寿 之4)

抄 録:本研究の目的は、高校生の性および性教育に対する高校教員等の意識を明らかにする ことである。北海道内の公立・私立高等学校、予備校に勤務する教員等70名を対象に高校生の 性および性教育に関する質問紙調査を実施し、以下の結果を得た。

1)高校生の性について、50%以上の教員が問題と思う項目は、性行動の低年齢化、性感染症 の増加、性情報の多様化であった。

2)高校生からの性の相談を受けたことがある教員は46.6%であり、具体的な相談内容は、多 い順に男女交際、妊娠、人工妊娠中絶であった。また、高校生からの性に関する相談をう けたくない・どちらともいえないと回答した教員は約90%であり、その理由として、対応 に自信がない、(対応に)時間がかかるなどがあげられた。

3)教員が考える性教育実施の適任者は、母親、父親、教師、養護教諭の順に多く、性教育内 容として示した20項目全てについて、80%以上が教えるべき・教えたほうがよいと回答し た。

以上の結果から、教員は、高校生からの性の相談を受ける機会は少なくないが、性の相談お よび性教育に対して消極的姿勢であることがうかがえた。また教員は、性教育実施の適任者と して両親をあげており、性教育に対しては家庭教育に依存的であることがうかがえた。

キーワード:思春期、性教育、教員、性の問題

!.はじめに

現代の思春期の性に関する問題点として、性的経験率 の上昇、性的経験の早期化、女子の性行動の活発化があ げられており、その背景として、若年層における情報化 の進展による性情報の増大が指摘されている1)。また、

母子保健の主なる統計(28)によれば、20歳未満の人 工妊娠中絶実施率は、21年の13.0をピークに減少傾向 を示しているものの、地域格差の問題も指摘されてお り、今後も取り組むべき課題とされている2)。さらに、

感染症発生動向調査によると、10代の性感染症罹患率は 近 年 減 少 傾 向 が 続 い て い る も の の 、STDSexually Transmitted Diseases)6疾患(梅毒、HIV、性器クラミ ジア、淋菌感染症、性器ヘルペスウィルス感染症、尖圭

コンジローマ)すべてで10代前半の報告が認められてい ることから、中学生の段階からSTD予防教育が重要であ ることが示されている3)。このような現状をふまえて、

「健やか親子21」における主要課題の1つとして「思春 期の保健対策の強化と健康教育の推進」があげられ、思 春期教育の量的拡大や質的転換と共に、学校・家庭・地 域の連携の充実が求められている4)

我々は、学校・家庭・地域の連携による思春期健康教 育のあり方を検討している。そこで、本研究では、高校 生の性および性教育に対する教員の意識を明らかにする ことを目的に調査を行った。

".研究方法

1.対象者

北海道内の公立・私立高等学校、予備校に勤務する教 員で、性感染症に関する講演の参加者を対象とした。

講演は、高等学校主催の教員研修会および大学主催の 高等学校・予備校教員対象の入試説明会における研究活 1)北海道医療大学 看護福祉学部

2)東京医療保健大学 医療保健学部 3)関西福祉大学 看護学部

4)社会福祉法人 当麻かたるべの森 副理事長

北海道医療大学看護福祉学部紀要 No.6 29年

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動紹介として、筆者自身が実施した。講演内容は、1)

性感染症とは(主な性感染症の種類、症状、感染場所、

治療)、2)性感染症の動向(性器クラミジア感染症、

性器ヘルペスウィルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌 感染症、HIV/AIDS)、3)性感染症の背景(性行動の低 年齢化・活発化、若年妊娠・人工妊娠中絶、知識と行動 の不一致について)であり、講演時間は60分〜90分の範 囲であった。

2.調査方法

講演終了時に無記名自記式質問紙を配布し、当日回収 した。調査期間は25年5月〜6月であった。

3.調査内容

先行研究を参考に、高校生の性および性教育に関する 教員の意識に関する全9項目の質問紙を作成した。内容 は、基本属性3項目(年齢、性別、性教育関連科目担当 の有無)、高校生の性の問題に対する考えについて1項 目、高校生からの性の相談経験・相談内容について3項 目、高校生への性教育に対する考えについて2項目で、

回答は主に選択式とし、一部自由記載を含めた。

4.分析方法

選択問題は、項目毎に単純集計した。自由記載は項目 毎に内容を分類し整理した。

5.倫理的配慮

質問紙には、研究の趣旨、調査結果を統計的に処理す ること、個人の回答がそのまま公表されることがないこ となどを記載すると同時に、質問紙配布後、口頭でも説 明し、任意で協力を依頼した。回答後の質問紙の提出を もって同意とみなした。

!.結

質問紙は、70名中に配布し、60名から回答を得た(回 収率85.1%)。60名全てを有効回答とし、質問項目毎に 欠損値を除外した上で分析した。

1.対象者の概要

基本属性については、60名から回答を得た。性別は男 性48名(80%)、女性12名(20%)、年齢は20代〜50代の 範囲で、40代が26名(43.3%)と最も多かった。現在、

性に関する内容を含 む 科 目 を 担 当 し て い る 者 は17名

(28.3%)、担当していない者は43名(71.7%)であっ た。

2.高校生の性の問題に対する意識(図1)

高校生の性について問題と思うことを7項目からの選 択式(複数回答)で質問し、56名から回答を得た。その 結果、高校生の性について50%以上の教員が問題と思う 項目は、「性行動の低年齢化」40名、「性感染症の増加」

7名、「性情報の多様化」33名であった。性の問題の項

目別に、問題と思う理由についてもたずねた。「性行動の 低年齢化」については、「知識がないまま性行動に走 り、様々な問題に巻き込まれる可能性が高い」「知識と行 動のバランスがとれていない」「(性行動の低年齢化によ り)招いた結果が不幸になるケースが多い」などがあげ られた。「性感染症の増加」については、「不妊症の問 題」「実態は不明だが、生徒の中にも感染した子がいた」

などがあげられた。「性情報の多様化」については、「イ ンターネットの普及による性情報の入手の容易さ」「マス メディアなどから多様な情報が簡単に手に入る」「正しく ない情報、ゆがんだ情報が多い」「誤った情報を信じてい る」などがあげられた。「人工妊娠中絶の増加」について は、「ほとんどが中退している」「簡単に考えている」「中 絶に対する意識が低い」などがあげられた。「異性関係の 変容」については、「同世代での健全な関係がない」「簡 単に付き合い始める」「付き合ってからセックスするまで の期間が短い」「付き合う、別れた、の話が常に聞こえて くる子が多くなったように感じる」などがあげられた。

3.高校生からの性の相談経験・内容(図2)

高校生からの性の相談経験ついては、58名から回答を 得た。その結果、「相談を受けたことがある」は27名

(46.6%)「相談を受けたと聞いたことがある」は14名

(29.3%)「相談を受けたことも聞いたこともない」は 7名(24.1%)であった。具体的な相談内容(複数回 答)について、11項目からの選択式(複数回答)で質問 し40名から回答を得た。その結果、多い順に「男女交 際」24名、「妊娠」20名、「人工妊娠中絶」17名であっ 図1 性について問題と思うこと(複数回答)(n=56)

図2 性に関する相談内容(複数回答)(n=40)

北海道医療大学看護福祉学部紀要 No.6 29年

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た。また、性に関する相談を受けたいと思うかという質 問に対しては、49名から回答を得た。その結果、「は い」が5名(10.2%)「いいえ」が12名(24.5%)「ど ちらともいえない」が32名(65.3%)であり、「いい え」「どちらともいえない」の理由として、「どう説明す るか迷う」「対応に自信がない」「時間がかかる」「性に関す ることは、基本的に家庭の責任と思う」などがあげられ た。

4.高校生への性教育に対する意識(図3、4)

性教育は誰が行うべきかについて、7項目からの選択 式(複数回答)で質問し、60名から回答を得た。その結 果、「母親」49名、「父親」46名、「教師」37名、「養護教 諭」34名の順に多かった。また、性教育内容について は、20項目の内容を提示し、「教えるべき」「教えた方が よい」「教えない方がよい」「教えるべきでない」の4段階 のリッカート方式で選択してもらったところ、54名から 回答を得た。その結果、全20項目について、80%以上の 回答者が「教えるべき」「教えたほうがよい」と回答し た。一方、「教えるべきではない」という回答があった 項目は、「月経のしくみ」「射精のしくみ」「男性と女性の 心理や行動の違い」「性は人生にどういう意味を持つか」

「各避妊方法の使い方」の5項目で、「教えない方がよ い」という回答は、「性感染症の治療法」以外の19項目 にあり、多いのは「性感染症の検査方法」「人工妊娠中絶 の方法」であった。

!.考

1.高校生の性の問題に対する意識

教員は、性行動の低年齢化、性感染症の増加、性情報 の多様化を、高校生の性の問題と捉えていることが示さ れた。また、問題別に問題と思う理由について質問した ところ、(様々な)問題に巻き込まれる、不妊症の問題 など、それぞれの問題に連鎖されうることを危惧してお り、日常的に高校生と接している経験から問題として実 感している様子がうかがえた。

2.高校生の性に対する教員の関わり

教員は、高校生からの性の相談を受ける機会が少なく ないことがわかった。しかし、高校生の性の相談および 性教育に対しては、「どう説明するか迷う」「対応に自信 がない」など、自信のなさがうかがえた。鈴木らの調 5)からも、高校教員が性教育に対して自信がないこと が示されており、本研究でも同様の結果が得られた。ま た、渡會らの調査6)では、教職員が性教育の必要性を感 じながらも過去3年間に性教育を実施しなかった理由と して、「指導が難しい」が多かったと報告している。教 員は、高校生にとって日常的に関わる身近な存在であ

る。従って、教員が自信をもって高校生の性の相談や性 教育に取り組めるように、教員への支援体制を検討する 必要がある。

3.高校生への性教育に対する意識

性教育内容として提示した20項目全てについて、80%

以上が「教えるべき」「教えた方がよい」と回答している ことから、高校生への性教育として教えるべき内容につ いて、教員の意識に大きな差はないことが示された。し かし一方で、「教えるべきではない」との回答が5項 目、「教えない方がよい」との回答が19項目であったこ とから、数名の教員の性教育に対する消極的な姿勢がう かがえた。「教えるべきではない」「教えない方がよい」

と回答された項目については、そう考えた理由について も調査する必要があるだろう。

また、教員は、性教育を実施する適任者として母親、

父親を多くあげていることから、性教育は教員の役割と して位置づけられておらず、家庭教育に依存的である傾 向がうかがえた。このことは、前項の高校生からの性の 相談を受けたくない・どちらともいえない理由の中で、

「性に関することは、基本的に家庭の責任と思う」とい う意見があったことからもその傾向がうかがえる。小川 図3 性教育は誰が行うべきだと思うか(複数回答)(n=60)

図4 性教育内容に対する考え(n=54)

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らが思春期の性教育について行った教員への意識調査7)

の中で、「学校がすべてでなく、家庭で親が性教育を伝 える必要がある」という教員の要望が多いことが報告さ れており、本研究も類似した結果であった。しかし性教 育は、学校、家庭、地域が連携して行うことが期待され ている。今後は、性に関する家庭教育の現状を把握した 上で、高校生の性教育における学校、家庭、地域の連携 と具体的な支援策を検討することが課題であろう。

1)財団法人日本性教育協会編:「若者の性」白書−第6 回青少年の性行動全国調査報告−,小学館,27.

2)財団法人母子衛生研究会編:母子保健の主なる統計 平成20年度刊行,母子保健事業団.

3)岡部信彦・多田有希:発生動向調査から見た性感染

症 の 最 近 の 動 向 , 日 本 性 感 染 症 学 会 誌 ,1

(1),28.

4)厚生労働省,健やか親子21検討会報告書,http : //

www1.mhlw.go.jp/topics/sukoyaka/tp1117−1_a_18.html

(29年9月)

5)鈴木康江・佐々木くみ子・片山理恵・前田隆子:思 春期性教育活動に向けての基礎調査−中学生,保護 者,教師の意識調査から−,母性衛生45(4),5

−57,25.

6)渡會睦子:小・中・高等学校生における性の実態と 教職に見る性教育の現況,日本性科学学会雑誌,

(1),39−45,23.

7)小川久貴子・久米美代子・村山より子:思春期の性 教育に関する教員の意識調査−静岡県A町公立中学 校 に お い て − , 日 本 ウ ー マ ン ズ ヘ ル ス 学 会 誌,3,53−61,24.

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1)Health Sciences University of Hokkaido 2)Tokyo Healthcare University

3)Kansai University of Social Welfare 4)Social Welfare Corporation To¯ma Katarube

Attitude of high school teachers to the sexuality and sex education

Akiko TSUCHIYA1),Eri SHINOKI2),Kae FUJI3),Junko ABO1),Toshiyuki YOKOI4)

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参照

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