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大学生と中学生による地域の小学生のためのロボットセミナーの実践

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Academic year: 2021

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大学生と中学生による地域の小学生のためのロボッ トセミナーの実践

著者 福田 哲也, 原田 岳志, 森本 弘一, 谷口 義昭

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 17

ページ 235‑241

発行年 2008‑03‑31

その他のタイトル The Robotics Class for Primary Schoolchildren

by University and Junior High School Students

URL http://hdl.handle.net/10105/691

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1.はじめに

 昨今、さまざまな教育問題が取りざたされている。な かでも、次期の学習指導要領の改訂は、教育関係者の みならず広く国民に注目されているところである。2007 年11月に中央教育審議会初等中等教育分科会(第56回)

教育課程部会(第4期第15回)合同会議が開催され、

「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」が 公表された。このなかで「社会の変化への対応の観点 から教科等を横断して改善すべき事項」として、「情 報教育」「環境教育」「ものづくり」「キャリア教育」

「食育」「安全教育」「心身の成長発達についての正し い理解」などがあげられ、今後、これらをキーワード

とした教育実践が求められると予想される。本研究は、

教科横断的な教育としてロボット教育に注目し、創造 力を育成する教育の在り方を探究した。

2.ロボット教育活動の経緯

 奈良教育大学附属中学校では、2002年12月から「も のづくり」「情報通信技術」「国際交流」をベースにし たロボット教育に注目し、生徒の創造力育成、科学技 術の向上、ならびに日米友好・交流をねらいとした活 動をおこなってきた。

 当初、アイオワ州のウエストブランチミドルスクー ルの生徒と本校の生徒が「火星探査」をテーマにした

大学生と中学生による地域の小学生のためのロボットセミナーの実践

福田哲也

(奈良教育大学附属中学校)

原田岳志

(奈良教育大学教育学部学校教育教員養成課程理数・生活科学コース 4回生)

森本弘一

(奈良教育大学)

谷口義昭

(奈良教育大学)

The Robotics Class for Primary Schoolchildren by University and Junior High School Students

Tetsuya FUKUDA

(Nara University of Education Junior High School)

Takeshi HARADA

(Nara University of Education)

Kouichi MORIMOTO

(Nara University of Education)

Yoshiaki TANIGUCHI

(Nara University of Education)

要旨:近年、教育界で、子どもたちのものづくりや考える力の育成が叫ばれているなか、地域の小学生を対象にロ ボットセミナー開催した。たんにものづくり力の向上だけでなく、ロボットを試行錯誤しながら製作することで、創 造力の育成にもつながった。また、教員を目指す大学生とロボット技術に堪能な中学生が協同で小学生を指導する形 態をとった。このような世代をこえた教授形態は、他に類をみないであろう。そして、このような教授法ができるこ とは、ロボット教育の可能性を大いに感じるものである。大、中、小学生がつくるロボット教育のコミュニティが奈 良で生まれつつある。そこで新しい教育形態による新しい内容の実践がおこなわれ、注目を集めている。

キーワード:「ロボットセミナー」「ロボット教育」「ものづくり」「考える力の育成」「世代をこえた教授形態」

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マーズプロジェクトを立ち上げた。この活動は、スペー スシャトル・チャレンジャー号の爆発事故で死亡した クリスタ・マコロリフ飛行士(教師)のフェローシッ プであるNASAの教育基金を基にして始めた。本活動 によって、生徒たちは火星の環境を学習し、モデルを 製作する過程で、生命に満ちた地球環境について再認 識することができた。また、悪路を走る探査機を作る 過程で、車輪および車体の構造、モータの力率、操縦 方法、その他多くの因子を克服することができ、創造 力の向上につながった。

 さらに活動を進める過程で、FLL(ファースト・レ ゴ・リーグ)やWRO(ワールド・ロボット・オリンピ アード:名誉実行委員長 有馬朗人氏)などの世界的 規模のロボットコンテストと出会った。2つのロボッ トコンテストは、ロボットが自らミッションをおこな う点(自律型)で共通しており、前述の米国の交流校 とともに2005FLLに参加することになった。

 本校は2005年に開催のFLL大会に初めて参加し、近 畿大会に優勝、全国大会でトータルプレゼンテーショ ン賞を獲得し、世界大会へ参加の権利を獲得した。世 界大会はオランダで開催され、日本チームとして初の タイトルを獲得した。続いて2006年開催のFLLでも近 畿大会と全国大会に勝利し、アメリカで開催の世界大 会において上位成績をおさめた。大会の様子を図1と 図2に示す。また、WROにおいても、世界大会におい て銅メダルを獲得するなど大きな成果をあげた。今ま でWROでタイトルを獲得した日本の中学生チームは本 校だけある。加えて、FLLとWROの2つの世界大会で タイトルをとったチームは、世界の中でも本校だけで あると聞いている。

 以上の成績から、本校のロボット教育に対する取り 組みは、世界の中でも最先端に位置すると言っても過 言ではない。「火星探査」をテーマにしたプロジェク トに端緒をおいた活動が、生徒たちの熱心な取り組み・

努力によって世界制覇という偉業を成し遂げたことか ら、ロボット教育における学習の効果が顕著であると 推察できる。このような中学生の活躍や成果に対して、

内外から高く評価していただくともに、多くの小学生 ならびにその保護者の方々から「ロボットについて教 えてほしい」という声をきくようになった。

3.大学生と中学生による地域の小学生のためのロ ボットセミナー

 本校中学生のもつロボット技術を少しでも広めよう と、2007年4月、奈良教育大学の学生と協同で、地域 の小学生のためのロボットセミナーを立ち上げた。

3.1 セミナーをはじめるにあたり

 2007年3月、卓越したロボットの技術をもつ附属中 学校科学部の中学生と、理科実験教室開催のノウハウ を 持 つ 奈 良 教 育 大 学 の 学 生 有 志 グ ル ー プ「enjoy  science time実行委員会」のメンバーが、ロボットセ ミナーについて協議した。奈良教育大学の近隣の小学 校にセミナー参加の募集を行った。4月後半から小学 校6年生20人を対象にロボットセミナーを開始した。今 回のロボットセミナーは4/29・5/6・5/13の計3日間の 日程で、原則的に小学生2人を1チームに編成し、各 チームに附属中学生と大学生が各1人ずつ補助した。

3.2 ロボットセミナー(ベーシック)の実施

①セミナー1回目

 1回目はロボットの製作である「ものづくり」で あった。発泡スチロールで作った凹凸のある山を製作 ロボット車が乗り越えられるように改造するとことを 課題とした。ロボットは、組立に自由度が高いレゴマ 図1 FLL世界大会 競技のようす

図2 FLL世界大会での表彰

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インドストームを用いた。

 製品に添付の説明書の通りに作ったロボットでは山 を乗り越えることは不可能であり、子どもたちは二輪 駆動車を四輪駆動にしたり、車体を上げるなどの改造 を施すことになる。レゴロボットの最大の特徴は、前 述のように何度でも簡単に改造をすることができ、何 度でもやり直すことができるということである。子ど もたちは挑戦しては壁にぶつかり、弱点を見つけるこ とによってどのように対処すれば良いかを考え、改善 して、また挑戦するというサイクルを繰り返す。この 作業は、問題解決能力を育成する【Plan→Do→Check

→Action】を身に付けることになり、「生きる力」の育 成につながると考える。

 最終的に出来上がったロボットは創意・工夫に満ち たものであり、一つとして同じものはない。前もって 設定した「超上級コース」を克服するチームが2つも 出現するなど、子どもたちの創造力は当初の予想を大 きく上回るものとなった。試行錯誤して完成したロボッ トを図3に示す。

②セミナー2回目

 2回目は、製作したロボット車の走行を制御するた めに必要な「プログラミング」に焦点をあてた。課題 は、「レンガを組み合わせた迷路を脱出する」ように ロボット車に命令するプログラムを作成することであ る。はじめに簡単なプログラミング方法について説明 した後、「3秒前へすすみ、右へ1秒曲がる」などの 簡単な動きを実際にプログラムさせ、基礎的なプログ ラミング方法を習得させた。次に、実際に迷路を提示 し、どうすれば迷路を脱出できるかを考えさせた。そ の際、大学生には子どもたちがどう考え、失敗したと きどう対処したかなどを詳細に記録させた。子どもた ちのつまずき場面、克服方法の把握は教師の不可欠な 資質である。活動の過程で子どもを把握する力は学生

間で大きく差があることがわかり、看取りの経験を積 むことによって学生自身の指導力を磨く良い機会に なったと考えている。

 また、中学生には小学生がつまずいている場面で手 助けをするように指導していた。普段乱暴な言葉を使 う生徒たちも小学生に対しては、丁寧に教える姿が見 られ、中学生にとっても自己研鑽に本ロボットセミナー は大きな意義があると感じた。また、ロボット技術を 教えることによって、ロボットに関する理解がより深 まったことはいうまでもない。中学生が小学生にプロ グラミング方法を教えている様子を図4に示す。

③セミナー3回目

 最終日の3回目は過去の2回を融合させ、「ロボット の改造」かつ「プログラミング」という課題を設定し た。具体的には、ロボット車を安定して迷路を走行さ せて、終点に設置の旗を倒すというものである。旗は 2色あり、自分のチームの色を倒せば得点が入り、相 手チームの旗を倒せば減点されるという、迷路を抜け た後にも一工夫を要するようにルールを設定した。こ の課題に対して、小学生、中学生、大学生及び保護者 で1チームを構成し、コンテスト形式で活動させた。い ずれのチームとも白熱した戦いとなり、会場は歓声に つつまれていた。コンテストの様子を図5に示す。

図3 超上級コースに挑戦するロボット

図4 小学生にプログラムを教える中学生

図5 ロボットセミナー(ベーシック)3回目

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 学生の感想からは、3回目では小学生のペアの間で、

「役割分担」や「譲り合い」が見られるようになった という意見が多数あった。これら3回のセミナーを通 してチームワーク、すなわち「チームで考える」こと も活動の基本理念の1つとしてきた。2人で意見を出 し合い、最善の策を取るということは非常に重要で、

時には自分の意見が通らない場合もある。そのような 経験も本セミナーの大きな成果であった。

④セミナーアンケート結果

 参加した小学生ならびに保護者のロボットセミナー についてのアンケートを資料(資料1:小学生対象  資料2:保護者対象)にまとめた。

 小学生のアンケートをみると、セミナーそのものに 対して高い評価をしてくれているだけでなく、「いろ いろな課題に対して取り組む際、その解決のためにしっ かり考えなければならなった」との回答が多数あった。

また、保護者のアンケートをみても、「課題解決能力 に効果的か」という問いに対して、「非常にそう思う」

の回答が100%であったことは、ロボット教育がたんに

「ものづくり力」だけでなく、「考える力」の育成に つながっているということがいえよう。

4.さらなる挑戦

4.1 大学生と中学生によるロボットセミナー(ア ドバンス)

 ロボットセミナー(ベーシック)でさらに興味を もった小学生(附属小学校・鼓阪北小・佐保川小)に 対して、5月と6月にロボットセミナー(アドバンス)

を設けた。そして、WRO(ワールド・ロボット・オリ ンピアード)の奈良大会に出場することを1つの目標 にかかげ、以下の課題を設定した。

 1)光センサーを使おう。

 2)ライントレースするロボットをつくろう。

 3)複雑な形の線をライントレースするロボットを つくろう。

 ロボットセミナー(アドバンス)のコース例を図6 に示す。

4.2 WRO全国大会を目指して

 本校の生徒ならびにロボットセミナー(アドバンス)

に参加した小学生(附属小学校・鼓阪北小)が一緒に なって、WRO全国大会を目指した。小・中学生は、7 月から図7に示すWRO大会のコースに対応するため に、ロボット製作ならびにプログラミングに取り組ん だ。

 コースを攻略するためには、設定された迷路を通り 抜けるだけでなく、いかに障害物を避けて進むかとい うことが重要な課題であった。これには、ロボットの 形状、車輪、モーター等々の細部まで工夫を凝らし、

加えてプログラミングにおいても、万一障害物に衝 突・接触しても安全に抜け出せるように設定しなけれ ばならない。参加者した中学生及び小学生は、これら に対応できるまでに成長することができた。

 小学生が考えた具体的な方法として、

1)ロボットの向きを正しくコントロールするために、

故意にロボットを壁にぶつけて、向きを調整する ようにした。

2)ロボットの構造やギヤ比を工夫し、馬力を落とさ ない程度にできるだけスピードをアップした。

3)万一、トンネルの角にひっかった場合を想定して、

時間とともに進行方向を少し変えるようにプログ ラミングした。

 8月20日に関西大会(大阪電気通信大学)が開催さ れ、本校中学生とセミナー参加の小学生が参加した。

中学生の部では、1位から4位まで本校のチームが独 占し、全国大会へ出場する権利を獲得した。また、小 学生の部においても、1位と2位を占有し、すでに奈 良大会で優勝しいる1チームとともに全国大会に参加 することになった。全国大会の小学生枠は10チームで あるが、そのうち3チームが本セミナー参加者による チームであり、本セミナーの学習効果があったことを 裏付けている。

 9月9日に全国大会(東京・科学技術館)が開催さ れた。本校チームは全国4位、附属小学校チームは全 国3位になった。このなかで、本校チームは、高い完 走率を有するロボットを製作したため、その成果が評 価され、日本代表チームとして選出された。図8に 図6 アドバンスセミナーのコース

 図7 2007WRO大会のコース

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WRO全国大会の様子を示す。

 11月に開催された世界大会(台北)に出場し、世界 大会でも上位入賞のチームに贈られる優秀賞を獲得し た。

 全国大会に参加した小学生は、次のように感想を述 べている。

1) ぼくが、ロボットをつくれるなんて思わなかっ た。自分の考えたプログラムで、自分の思い通り にロボットが動いたときは、とてもうれしかった。

2) 全国大会では、少しの時間で調整しなければな らず、とても緊張した。ロボットの調整がうまく いかなかったので、悔しかった。来年は、もっと 頑張る。

5.おわりに

 今回のロボットセミナーの目的の1つは、子どもた ちに「自分で考え、創造力を育成する」ことであった。

1回目のロボット車の「山越え」の活動の際、小学生 は、教員や大学生が思いつかないようなロボットを作 り、大いに驚かせてくれた。日常生活では、「こうす るべきだ」という固定観念や効率を追求するため、創 造性を発揮できない場合が多々ある。本セミナーでは、

子どもたちに柔軟に考える場を提供できたのではない かと考える。

 子どもたちは初対面の小学生とペアを組み、また中 学生や大学生に教わりながら作業をしたが、セミナー の回数を増すごとに互いに協力する姿が見られた。保 護者のアンケートに「コミュニケーションの苦手なう ちの子がしっかりと意見を言っており、感心しました」

という感想があり、このプロジェクトが子どものコミュ ニケーション能力の向上にも一役かっていたことを改 めて感じさせられた。

 さらに「是非とも公立小学校でも取り入れてほしい」

「家で市販のゲームでしか遊んでいない中、レゴブロッ クで作ったロボットを自分で考え、プログラムし、何 度もトライしていくことは大変重要だと感じた」とい う保護者の声もあり、ロボット教育は今後多くの方面 からより大きなニーズが求められるであろう。このこ とは、本セミナーならびにWRO大会の成果と活躍を新 聞等のマスメディアで知り、全国の小学生から問い合 わせを受けていることからも裏付けられる。

 さらに主催者側である大学生及び指導的役割を果た した中学生にとっても、このようなロボットセミナー を開くことによって、大きな学習の場となった。セミ ナーのなかで、「教える」ことによって「学ぶ」こと ができた場面を垣間見ることができた。また、自分た ちの能力や活動について、自信もつけることができた ようである。

 今後、さらに新しい内容の実践が行われ、ますます 注目を浴びることが予想される。また本セミナーをベー スにして、大学生、中学生、小学生でつくるロボット 教育のコミュニティが奈良で生まれつつあり、このよ うな活動をさらに発展させたいと考えている。

図8 WRO全国大会の競技ようす

図9 WRO全国大会に参加した「Team奈良」

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参照

関連したドキュメント

②に関して,本研究ではプログラミングを行う環境として, Scratch と GeoGebra を扱う。Scratch

続いて,本手法の具体的な処理に関する説明を行う.本手法では,ロボットに停止制御 を行った直後から ∆t 秒間ずつ判定を行い,

が小学生を指導する形で実践した。

についても紹介した。その後、小学4年生にロ

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-443- 車に見立てて児童が学習をする様子も見受けられ た. 3.2.2 2時間目 本時ではパソコン室に移動し,児童に

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