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高木かおる高木かおる

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(1)

高木かおる

(2)

Abstract 

This paper analyzes the effect of public capital on the optimal and  steadystate growth. We incorporate public capital, which takes a part  as an input in private sector's production and raises the productivity, in to an endogenous growth model, and investigate the relations between  public capital, the productivity and the growth rate. The analysis shows  that the elasticity of public capital (and public investment) and the pro ductivity is  a crucial factor in controlling public investment and main taining the economic growth. 

.はじめに

社会資本の蓄積が経済にどのような影響を及ぼすか,とくに,それは生産 活動にどの程度貢献しているか,という問題は,実証面からその本格的取り 組みがはじまったといえる。米国では, 1980年代の終わり頃から多くの実証 分析が報告されている。たとえば, Aschauer (1 Jなどによる時系列デー タを用いたマクロ生産関数に関する一連の研究,あるいはMunnell(6 J どによる州別データを用いた一連の分析が代表的なものである。そして,少 なからず例外も存在するが,全般的には社会資本の生産活動への寄与を認め る結果がえられている。

一方,日本においても,米国で行われた分析手法を日本経済にあてはめる 形で, 1990年以降数多くの実証分析が報告されている。こうした動きは,欧 米に比較して日本の社会資本蓄積の遅れおよび不十分さが指摘され,政策的 対応の必要性が叫ばれはじめた時期にも対応している。日本で試みられた実 証分析についても, (10Jおよび (8J所収の諸論文などに代表されるマク ロ生産関数に関するもの,ならびに (7Jおよび(11]などでみられる地域

(3)

データを用いて行われたものの両面からのアプローチが存在する。そして,

いずれの結果をみても,その程度は別として,社会資本の生産力効果の存在 を確認している。

こうした実証分析に理論的裏付けを与えるlつの道具は,経済主体の異時 点聞の行動を取り込んだ動学最適化モデルである。すなわち,政府が税など の政策パラメータの時間的径路を決めるとき,民間部門はそれに応じて合理 的な意思決定を行うという枠組みの中で組み立てられた理論モデルである。

標準的モデルに公共部門を導入する試みは,たとえばBarro(2 Jなどで もみられるが,そのとき問題となるのは,公共部門の提供するサービスある いは資本と民間部門との行動との連関をどのように定式化するか,という点 である。とくに,理論モデルにおける社会資本の生産力効果の取り扱いにつ いては,多くの課題が残されている。たとえば,社会資本を生産関数に導入 する場合,社会資本のもつ外部性などの特性をどのように定式化すべきかは 議論を要する問題といえる。先に紹介した数々の実証分析は,理論モデルで 採用される設定の整合性を確認し,また理論を補完する作業という見方もで

きょう。

ところで,諸変数の成長径路が内生的要因によりに決定される,いわゆる 内生的経済成長論を応用した研究は,近年のマクロ経済学の主流の 1つであ る。たとえば,モデルに人的資本を導入することで,生産性と経済成長の関 係を検討する試みが数多く行われてきた。しかし全般に,社会資本と生産性 に関する理論分析が十分なされているとは思われない。

本論文では,社会資本を内生的経済成長モデルへ導入し,主として社会資 本のもつ生産性効果およびそれが経済成長へ及ぼす効果を,理論的側面から 考察していくo その過程で,生産関数への社会資本の導入にともなって発生 する生産性の評価の問題にも注意を払う。さらに,社会資本が経済成長に対 しでもつ生産性効果を考慮に入れるとき,政府のとるべき公共投資政策が何 によって決定づけられるべきかについて検討したい。

(4)

2.では,本論文の基礎となる理論モデルを提示する。 3.では,分析の 基準となる,集権的経済における最適成長および定常状態成長を考察し,併 せて従来のモデルとの相違点を確認する。 4.では,分権的経済へモデルの 拡張を図り,その場合の最適成長および定常状態成長を吟味する。そして5. では,各種の公共投資政策が生産性およびそれを通じて経済成長へ及ぼす効 果を理論的側面から検討する。

2.モデル構成

2.では,本論文の基盤をなすモデルを提示する。ここでは,海外部門を 捨象し経済は国内部門のみから構成されるとする。まず,代表的個人は,次 式で与えられる生涯効用の最大化によってその意思決定を図る。

foOO u[c(t) Je‑p ︑ ︑

I

Ei

' t ︑ ︑

c(t) は個人ひとりあたり消費,また pは主体的時間選好率であり正の定数 とする。 u(c)を,限界効用の弾力性一定の性質をもっ瞬時的効用関数

Cl‑o(t)‑l  u[c(t)]=l‑o 

によって定義する。 0は正の定数であり,このとき限界効用の弾力性は1/() となる。議論を容易にする目的で,人口および労働は一定と仮定する。

次に,マクロ生産関数を Y(t) = Kα(t)H(t)LT (t) 

で定式化する。 Y(t) K(t)  H(t) および L(t)はそれぞれ,集計された生 産,民間資本,社会資本および効率単位で測った労働である。係数 αs よび rは,民間資本,社会資本および(効率単位で測った)労働それぞれ の生産にかかわる係数であり oαs, r1を満たす定数とする。

(5)

通常の理論分析では,これらの係数αsおよびrについてあらかじめ追 加の条件1を設けておくのが一般的であるが,ここではそれを行わない。す なわち,規模に関する収穫性について,生産要素それぞれが単独で変化する 場合には収穫逓減の性質を仮定するが 2種類あるいは 3種類の生産要素が 同時に変化する場合に収穫逓減,一定および逓増のいずれの性質が支配的で あるかについて事前的情報としての仮定は設けないこととする。 3.以降の 考察で,最適成長あるいは定常状態成長2下で必要とされるこれら係数聞の 因果関係を見いだすことになる。なお,効率単位で測った労働とは,労働L および労働生産性 X(t)により五(t)=LX(t)で定義されるが,先に仮定し たように労働Lは一定であるJ

マクロ生産関数を,次の労働 1単位あたりの変数表示に書き直すことがで きる。

y(t) =ka(t)h s(t)X(t)L日付+r‑l

y(t), k(t)および h(t)はそれぞれ,労働 l単位あたりの生産,民間資本お よび社会資本であり Lは仮定により不変である。

)たとえば, α+s+r=,すなわちすべての生産要素が比例的に増大するとき規模に関 する収穫一定を仮定,あるいはs=r,すなわち社会資本および(効率単位で測った)労 働の生産にかかわる係数の一致を仮定,などが考えられる。この追加的条件は,理論分 析の目的にしたがって恋意的にとられる傾向がある。実証分析の結果をみると,たとえ Aschauer[ Jによれば,米国において公共部門を含む収穫一定が確認されているの に対し,三井・太田 [8J所収の三井清・井上純「社会資本の生産力効果」によれば,

日本では民間部門のみで収穫一定が成立するという結果がえられている。

)最適成長とは,通例どおり,代表的個人の生涯効用の最大化および企業利潤の最大化 をもたらす径路を意味する。また, Barro and Sa1aiMartin  [3 Jにしたがって,定常状 態成長を,最適径路のうちすべての変数がそれぞれ一定率で成長するケース(それらの 成長率が同じ値をとるとは限らない)と定義する。

)ここまでの定式化ではx(t)を労働生産性と解釈したが,効率を乗算で定義しているか ら,X(t)を労働を含む広い意味での技術水準を示す変数と考えることもできる。

(6)

生産物市場の需給関係については次の式が成立する。

y(t)c(t)+(t)+ら(t) 九(t)および九(t)はそれぞれ,労働1単位あたり民間投資および公共投資 である。民間資本および社会資本の蓄積は次の関係式で示される。

k(t) =九(t)‑akk(t), 

h(t) =ら(t)‑hh (t) , 

k(O)  =ko> 0  h(O)  =ho> 0 

れおよびOhはそれぞれ,民間資本および社会資本の資本減耗率を表す。以 下では簡単化のため,民間資本および社会資本の資本減耗率は等しい正の定 0=れ=九と仮定する。

以上の定式化において,社会資本は生産活動に対する投入物としての役割 をもつが,個人の効用へは何ら影響を及ぼさないと想定している。すなわち,

社会資本のもつ生活関連施設としての側面を無視する。また代表的個人の最 適化行動において,労働・レジャー聞の選択は考慮しない。

ここまでは,内生的成長理論で通常用いられる標準的なモデル設定にした がっている。よく知られているように,生産性が外生的に与えられる一定率 で成長するならば,その生産性成長率に依存して定常状態成長率は決まる4 本論文では,生産性自体が内生的に決定される場合にモデルを拡張したい。

たとえば,研究開発設備や情報通信網といった種類の社会資本は,生産活 動において直接的な生産要素として機能し,同時に一方で,その整備により 生産性の上昇がもたらされ間接的に生産増大に寄与する可能性がある。ここ では,社会資本の蓄積と生産性との関連に注目する目的から,こうした性質 をもっ社会資本を分析対象とする。

生産性の水準が社会資本に依存すると考えれば,次の定式化をえる。

)たとえばBarroand Salai‑Martin [3 J参照。

(7)

X(t) =X(H(t)) =X(Lh (t))  x=-笠~O‑dH 

)は,労働一定のもとで,生産性の成長率が(労働l単位あたり)社会 資本の成長率に依存することを意味する。すなわち

X(t)  ̲ 11.¥ (t)  一一=f:(t)一一 X(t) ‑.. V /  (t) 

H X  

が成立する。 ε(t)=f: (Lh (t)) =‑ヲーミOは,社会資本と生産性の弾力性であ

.集権的経済

以上の定式化でその主体の行動が規定される経済の最適化問題は,制約 (3) "'  (5)のもとでの代表的個人の生涯効用()の最大化によって示 される。集権的経済において最適化が図られるとき,すなわち代表的個人の 効用最大化をもたらすように政府が消費,民間投資および公共投資を決定す るとき,最適解の必要条件から,

α

h 一 一

一 的 (7) 

をえる5。もし社会資本と生産性の弾力性f:(t)が不変であれば,最適径路 上で社会資本と民間資本は一定の比率に維持される必要があることを (7) 

)ここでの民間資本と社会資本(あるいは民間投資と公共投資)の区別は,その蓄積が 生産性の上昇をもたらしうるか否かという点についてのみ現れ,それ以外の両資本の性 質はまったく対称的となる。すなわち,いずれの資本も,単独では規模に関して収穫逓 減の性質をもち,資本減耗率も等しく,かっ蓄積過程の定式化も同じである。いいかえ れば,資本が民間に帰属するか社会(政府)に帰属するかの区別はここでは意味をもた ない。少なくとも集権的政府が意思決定を行う場合には,いずれの資本の蓄積すなわち 投資も政府によって決定されるからである。むしろ両資本の違いは,その蓄積が生産性 の上昇に寄与する資本と寄与しない資本の区別と考えるべきである。

(8)

は示している。より一般的に,社会資本と生産性の弾力性 E(t)が(労働 1 単位あたり)社会資本に依存して変化する場合, (7)を時間について微分

し整理することで関係式

[ 1 [ ( h ( t ) d E (s+rdt) Igk=1 s+μ(t) ( 1一一一一一一)l

Jgk=LtrrHt) ¥ E('t)  dhei))Jgh 

をえる。なお ,gkおよび、ghはそれぞれ(労働 l単位あたり)民間資本およ び社会資本の成長率k(t) / (t)およびh(t) / h(t)である。 dE(t) / dh (t) 0 場合が,すでに考察したdt)が一定のケースであり ,gk=ghが成立する。

従来の分析より, (社会資本が生産性に寄与しない場合の)ファースト・

ベスト解の必要条件から,最適径路上でh(t) / (t) /αが成立することが 知られている6。このことと()でえた結果を比較すれば,次のことがい える。社会資本の生産性への寄与を考慮した場合,いいかえると生産性の成 長率が内生的に決定されるモデルでは,最適径路上で社会資本は民間資本に 対し相対的に高い比率をもっ必要がある。またその比率は各生産要素の生産

にかかわる係数および社会資本と生産性の弾力性に依存する。

最適解の必要条件から,最適成長下の(労働l単位あたり)消費の成長率 gc=i;(t)/c(t)は

gc=α誠一(川)]

である。定常状態成長,すなわち消費の成長率gcが一定となる最適径路で (8)からy(t) / (t)が一定とならねばならない。したがって,定常状 態成長では,生産の成長率め=タ(t)/y(t)は民間資本の成長率gkに一致する。

さらに,生産物市場の需給関係を表す() に ()および()を代入し 変形すれば,最適径路上で

j S = 3 8 ‑ h ‑ a j S ‑ s ( 1 + 鵠)

)たとえばlhori[4 J参照。

(9)

をえる。社会資本と生産性の弾力性が不変ならば,先に確認したように,

(t) / (t)一定およびgk=gh.また定常状態成長ではy(t) / (t)一定である ことから,上式の左辺も一定とならねばならない。したがって,消費の定常 状態成長率gcと民間資本の定常状態成長率gkは一致する。以上から,定常 状態成長径路上で g==gc=gk=ghが成立し,すべての変数の定常状態成 長率が一致することを確認できる。

(t) =E一定のときgk=ghとなることを用いれば,生産関数()および 生産性関数()より

め=(α++q)gk

をえる。ここで定常状態成長においてめ=gkが成立するために必要な条件 として

α+s+εr= 

を導き出すことができる。すなわち,先に保留した,生産要素の生産にかか わる係数の因果関係として,定常状態成長では()が満たされる必要があ ることがわかる。いいかえると 3 つの係数 α • s.  rおよび社会資本と生 産性の弾力性Eが ()を満足するときに限って,あるいは3つの係数を所 与の定数と考えれば社会資本と生産性の弾力性Eが ()を満たすように決 定されるときに限って,定常状態成長は実現されうるということになる。

社会資本と生産性の弾力性が一定かつ条件()が満たされるとき. (7)  h(t) / (t) (1 α)/α となり,一方,生産関数()を変形することに より y(t)/k(t) (h(t) /k(t)) ‑O:Tがえられる。これらを用いて()を整 理すれば,定常状態成長率g

g=[(1‑atLTー ( 川

) J

E¥〆'EA U ︑ ︑﹄ ノ

で与えられる。(10)は,生産性の成長率も内生的に決定される場合の定常

(10)

状態成長率である。以上の結果は 4.以降の分析の基準となる。

.分権的経済

3.では,集権的経済において政府が消費,民間投資および公共投資を直 接にコントロールしうる場合の最適化問題を考えた。次に,分権的経済にお ける最適化問題を考察する。

はじめに,社会資本およびそれが生み出す収益の取り扱いについてふれて おきたい。生産への投入物としての社会資本を誰が所有し,その収益が誰に 帰属するかという問題は,理論モデルの定式化においても重要な意味をもっ。

Barro and SalaiMartinC 3 Jなどでも指摘されるように,社会資本および それが生み出すフローとしての公共サービスの捉え方にはいくつかの解釈が あるが,ここでは,以下のように考える。公共投資すなわちフローとして社 会資本の増大は,民間の生産活動によって創造される生産物の一部分をなす。

いいかえれば,生産活動を行うのは民間部門つまり企業のみとし,公共部門 は生産活動には従事しない。しかし,民間部門の生産活動により生み出され る価値のうちどれだけが社会資本の収益に相当するかを明示的に把握するこ とはできずにそのかわりに政府は,企業の利潤の一部を社会資本の収益と して比例法人所得税の形で企業から吸い上げるとする。政府は租税として徴 収した社会資本の収益を,公共投資にふりむけることで民間に還元する。

以上の想定のもとで,まず,代表的個人がしたがうべき制約条件は

k(t) =ω(t) +r(t)k(t) ‑c(t)  r '' ¥  E ‑ ‑ ‑ 'i ︑ ︑﹄ ノ

7)公共サービスを政府が提供する私的財と捉えるとき,社会資本が生産活動において生 み出す収益を,民間資本と同様に明示的に定式化することが可能である。そして最適化 問題を解くことで,社会資本の収益率が民間資本の収益率と一致することを導き出せる。

しかしここではそうした定式化は行っていない。

(11)

によって与えられる。代表的個人が所有しうる資産を,民間資本に対する請 求権のみとし,それ以外の債権債務関係は存在しないと仮定する。 ω(t)お よび r(t)はそれぞれ,労働および資産(民間資本に対する請求権)の収益 率である。代表的個人は,その労働および資産を企業へ提供する対価ω(t) およびr(t)を所与として,生涯効用(1 )が最大になるように消費を決定 する。

次に,企業が獲得する労働 l単位あたり利潤π(t) π(t) =y(t) ‑w(t) ‑q(t)k(t)τ(t)y (t) 

で定義される。 q(t)は民間資本のレンタル・プライス, r(t)は比例法人所 得税率である。企業は税率τ(t)所与のもとで瞬時的に利潤最大化を図り,

このときw(t)およびq(t)は,それぞれの税引後限界生産性に一致するよう に決定される。これらは

w(t) 1τ(t))ry(t)  (t) ‑r (t) )αyム ー(t)  k(t)  で示される。

(12)  (13) 

民間資本および社会資本の蓄積は, (4)お よ び ()で与えられる。ま た,個人が選択しうる資産として民間資本に対する請求権のみを考えている から,個人の予算制約 (11)における資産に対するネットの収益率r(t)は r(t) =q (t) ‑dによって決まらねばならない。

ここで,所得の分配についてあらためて検討しておきたい。(12)および (13)を企業の利潤に代入し整理すると,

π(t) τ(t))( 1 αr)y(t) 

をえる。つまりこれまでに示した設定では,企業の利潤ゼロが自動的に成立 するとは限らず,それは生産要素の生産にかかわる係数に依存する。係数間

(12)

α+r=  (14)  が成立する場合には,企業の利潤ゼロが達成される,すなわち所得分配が的 確に行われると解釈することができる。これは,民間部門のみで規模に関す る収穫一定が成立する場合に他ならない。なお,後で確認するように, (14)  は分権的経済において生産物市場の均衡が満たされる条件でもある。

社会資本の収益がどの主体(労働あるいは資本)に帰属するかという点に 関しては,従来行われた実証分析から,それが資本に帰属するという結果が えられている8。これは,本論文の定式化において企業の税引後利潤が正と なることに対応する。あるいは別の見方をすれば,民間部門のみで規模に関 する収穫逓減が成り立つ場合に他ならない。また,政府による租税を通じた 所得分配は現実には不完全にしか行われていないということもできる。

生産性については,あらかじめ社会資本と生産性の弾力性Eを一定と仮定 し,とくに次の定式化を採用したい。

X(= Ht(=Ltht(t) E~O (15)  最後に,政府の予算制約は

τ(t)y(t) =(t) (16)  で示される。すなわち,政府は,企業の粗所得に対して賦課する比例税のみ を収入源とし,そのすべてを公共投資にあてる。労働所得への課税および政 府消費は存在しないとする。なお,企業に対する比例法人所得税率は,政府 による最適化の過程で内生的に決定される。

ところで,民間資本の蓄積を示す()および民間部門の制約(11), (12) 

)たとえば,奥野他 [9J所収の西垣泰幸「社会資本と所得分配」を参照。

(13)

および(13)から,

‑r(t)) α(+r )y(t) =c(t) +(t) (17)  をえる。 (16)および(17)から,生産要素の生産にかかわる係数聞に(14) が成り立つ場合には,生産物市場の均衡が成立することを確認できる。

以上の設定において,分権的経済における最適化問題は, (4), (5), (16)  および(17)の制約の下で,代表的個人の生涯効用()の最大化で与えら れる。最適解の必要条件から,最適成長下で民間資本と社会資本のあいだ

vtv

i F e‑ ‑

l

+ 一 町

β

α L1¥

h 一 一

一 的 (18) 

が成立せねばならない。分権的経済における最適径路上の社会資本と民間資 本の比率(18) と,集権的経済におけるそれ()との大小関係は, α+r

‑ 1の符号,すなわち民間部門のみでの規模に関する収穫の性質に依存する。

もしα+rく(=あるいは>) 1ならば,すなわち民間部門のみで規模に関 して収穫逓減(不変あるいは逓増)の性質が支配的であるならば,分権的経 済において最適成長に必要な社会資本・民間資本比率は集権的経済のそれを 上回る(一致する,あるいは下回る)。

最適解の必要条件から,消費の最適成長率は

gc=

[(α+r)α

誠 一 ( 川 J )

(19) 

となる。生産,消費,民間資本および社会資本のすべての変数の定常状態成 長率が等しいこと,および定常状態成長が達成されるためには条件()が 要求されることを 3.と同様の手順により確かめることができる。また,

)および(14)が成り立っとき E =‑sIrとなり,社会資本と生産性 の弾力性はOE1の範囲内にある必要がある。

(2), (9)および(18)を用いて(19)を変形すれば

(14)

g=[(α+r)αα(1α)l‑aL̲ (p

) J

をえる。(14)が成り立っとき,上の分権的経済における定常状態成長率は g=

す [ ♂

(1‑α) aL rー(川)

J = す

[rr(‑r) l‑rLrー ( 同 ) (20)  となり,集権的経済における(10)と一致する。さらに,民間部門のみで規 模に関する収穫逓減の性質をもっ経済であれば,すなわちα+r 1のとき には, (10)および (20)を比較することで,政府が決定する比例法人税率 にかかわらず,分権的経済の定常状態成長率は集権的経済のそれを上回りえ ないことを確認できる。

以上から,分権的経済における最適成長および定常状態成長に必要な条件 は,集権的経済と同じものおよび(14)で与えられることを確認できた。い いかえると,分権的経済であっても,これらの条件が満たされるならば,政 府が比例法人所得税を用いることで,集権的経済の場合に等しい定常状態成 長率(10)を達成できる。また,政府が選択する比例法人所得税率は,代表 的個人の生涯効用最大化を実現するための手段として用いられるが,定常状 態成長率はその水準には依存しない。もちろんここでえた結果は,政府が民 間部門の行動を正確に掌握し,それに応じて比例法人所得税率を随時コント ロールしうる場合にいえることである。

.公共投資政策と定常状態成長

5.では,社会資本の生産性効果を考慮した上で政府が公共投資をコント ロールするとき,経済成長率がどのような要因で決まるかなどについて検討 する。

ここまでのモデル設定を以下でも踏襲する。ただし 4.で確認した,分 権的経済において企業の利潤ゼロおよび生産物市場の均衡が満たされるため

(15)

の条件 (14)を,あらかじめ生産要素の生産にかかわる係数が満足する所与 のものと考える。すなわち,民間部門のみで規模に関する収穫一定の性質が 成立し,公共部門を加えると規模に関して収穫逓増の状態になる経済を分析 対象とする。さらに,公共部門による社会資本整備政策が経済成長へ及ぼす 効果を考察する目的で,公共投資を政策変数として取り扱いうるようなモデ ル設定を導入したい。

民間部門の定式化については, 4.のモデルをそのまま適用する。すなわ ち政府による比例法人所得税が賦課されることを考慮、した上で,企業は瞬時 的に利潤最大化が達成されるように賃金率および民間資本のレンタル・プラ イスを決定する。また,代表的個人は,その所有する労働および民間資本(に 対する請求権)が生み出す報酬すなわち賃金率ω(t)および民間資本の収益 q(t)所与のもとで生涯効用の最大化を図る。

生産性は 4.で定式化したとおり,社会資本に依存して変化しうるとす るが,併せて政府による裁量的政策によってもその向上が生じうると考えた い。すなわち,政府はその租税収入を,実物資本増大の意味での社会資本の 蓄積にあてるだけでなく,その一部分を実物資本の増大をともなわない投資,

たとえば研究開発のようなソフト的な投資,にあてることにより,生産性上 昇をもたらしうるとする。これらは次のように定式化できる。

上で定義した生産性向上に資する政府によるソフト的投資9Ix(t),ある いは労働 1単位あたりの変数ではι(t)と表示すれば,生産性の決定式

X(t)=Hε(t)I: (t) =L EG(t) ix(t)  (21)  において,生産性は2つの要因に依存する。第1に,社会資本の増大を通じ て実現されうる生産性の向上であり, Eはその意味での社会資本と生産性の

9)以下では,この後者の意味の,社会資本の増大をともなわない政府によるソフト的な 投資を「研究開発投資」と呼ぶことにする。

(16)

弾力性を表す。第2に,社会資本の増大をともなわない,政府が研究開発投 資などの形でもたらしうる生産性の向上であり, σは政府の研究開発投資と 生産性の弾力性を表す。いずれの弾力性も非負の定数と仮定する。あるいは (21)から,生産性の成長率は,社会資本の成長率および政府の研究開発投 資の増加率に依存する,すなわち

x(t) ̲ ̲ (t) Iーら(の

玄市-~h(t) Iυι(t) 

で内生的に決定されることになる。

政府がしたがうべき予算制約は

τ(t)y(t)三九(t)+(t) (22)  で示される。政策変数としての研究開発投資ら(t)については,その投資量 そのものを政府がコントロールするかわりに,いくつかの代替的な可能性を 考察したい。

政策l

まず,研究開発投資の生産に対する比率を一定に保つ政策を政府が採用す る場合,すなわち

ι(t) byY (t) ,  0くちく1 (23) 

において,比率byを政策パラメータとするケースから考察する。このとき 最適化問題は,制約条件 (, (5) , (17)に(14)を代入した

(1 ‑τ(t) )y(t) =c(t) +(t) (24)  ならびに (22)および (23)のもとで, (1)の最大化によって与えられ 100最適解の必要条件を整理すると,

10)以下の導出過程の詳細については,本論文末の付録を参照。

(17)

也 一 位E k(t) α  および

ー ー で ム ー (α y(t) ‑bL  ¥ y) (p+d)̲ I  '" ¥ 

c‑(} Ll‑ark(t)¥J.  vyJ  ¥I"I U J J  

をえる。

定常状態成長の達成に必要な条件が

(25) 

(26) 

α+s+ (c+σ)

, =  

(27) 

であることを,これまでと同じ手順で導出できる。 (27) σ=0のとき 3.および4.の対応する条件()と一致するから,生産性関数を拡張し た場合の一般型といえる。また, (14)を仮定しているからε+σ=1 ‑sIr 

となり, cおよびσのどちらもOCσ lの範囲内にあることが要求され る。さらに,生産,消費,民間資本および社会資本の定常状態成長率がすべ て一致することをこれまでと同様に確認できる。 (26)を整理すれば,定常 状態成長率は

g寸[廿万(1ρ1十りi'[, ( ωJO一切(‑by)L i'一(川) ]

Vd

'  (28) 

によって決まる。

(28)から明らかなように,政府は生産に対する研究開発投資の比率ち をコントロールすることで,定常状態成長率を変化させることができる。と くに,定常状態成長率を最大にする政策パラメータ byを求めるために ,(28)  byで微分しゼロとすれば,

=σr (29) 

をえる。すなわち,民間部門の最適化を達成し,かっ可能な範囲で最大の定

(18)

常状態成長率を実現するには,政府は生産のうち (29)で示される割合を研 究開発投資にあてればよい。その比率は,政府の研究開発投資と生産性の 弾力性σおよび(効率単位で測った)労働の生産への貢献度rによって決 まる。

政策2

次に, (23)とは代替的な政策手段として,政府が税収の一定割合を研究 開発投資にあてる政策をとる場合を考える。すなわち,政府の研究開発投資 の定式化は

(=br:τ(t)y(t) 0くんくl (30)  によって与えられる。このとき,最適化問題は制約( ) (5), (24), (22)  および (30)のもとでの()最大化である。最適解の必要条件から,

区立=(1 ‑bτ)立土笠 k(t) α  および

gc=

す日万誠一(川

)J

(31) 

(32)  をえる。 (25) (31)を比較することで明らかなように,政策2の方が政 策 1にくらべ相対的に社会資本の比率を低く維持することで最適径路を実現 できる。

定常状態成長が達成されるために必要な条件は (27)に等しいこと,また 生産,消費,民間資本および社会資本の各変数の定常状態成長率が一致する ことも,これまでと同じ手順で確認できる11。これらを整理すると,定常状 態成長率

11)導出過程については,本論文末の付録にその概略を示している。基本的には政策1 同じ手順である。

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