成果計算が特に重要視せられる近代企業会封においては︑資本と利益との区別︑およびその区別の保持は睦めて
重要な課題であり︑その意味において︑資本会計ほ損益計算と並立する地位を占めるものというべきである︒而し
て栗本会計の中心課題をなすものほ剰余金会計であるが︑剰余金の概念がわが崗に導入せられてから日蘭浅く︑今
日までのところ諸学者の論考は必ずしも多くほない︒主題の問題ほ剰余金会計の基礎的問題であるが︑わが国ほも
とよりその発祥の地アメリカにおいても︑諸家の論ずるところ区々たる状態であるので︑以下諸家の緒論を紹介し
つつ︑筆者の見解を︑明らかにしたいと思う︒
川 剰余金の 本質
︵A︶ アメリカ語学者の所説
まず剰余金についてアメリカの語学者の挙げる定義を紹介すれば次の通りである︒
川 クエードの定義T︶
﹁剰余金とほ資本と表示資本金との差額である︒﹂
回 パイルの定義︵2︶
﹁会社の剰余金とほその資本のうち︑資本金勘定に示されている金額を超過する部分である︒﹂
剰余金の本質とその源泉別分類 ︵山三ニ ー \ 剰余金の本質とその源泉別分類
高 木
H フィニイの定義︵3︶
﹁剰余金とほ会社の純財産額のうち︑資本金によって代表せられていない部分である︒﹂
これらの定義を要約すれぼ
放談1庫割紛=墾紗紛
ということであって︑大体これらと同様な趣旨の定義を挙げるものに︑サンダース・ハットフィールド・ムーア
︵4︶︑モント︑ゴメリー︵ヱ︑ピンカートン︵6︶︑マツキンゼー・ノーブル︵7︶等がある︒
H マッケンジーの定義︵8﹀
﹁資産が負債と資本金の合計額を超過する額は会社の潮余金と呼ればる︒換言すれば︑資本のうち︑発行済資本
金を超過する額が剰余金と呼ぼれる︒﹂
糾 マクファーランドとエイヤーズの定義︵9︶
﹁剰余金とほ企業の資産が負債と資本金との合計額を超過する額である︒換言すれば︑会社の株主に帰属すべき
経済価値を示すために資本金に付加さるべき額である︒﹂
M モイヤーとモーヅの定義︵1︒︶
﹁〟般に剰余金は資産が負債および資本金を超過する額を示すために用いられる語である︒会社の資産総鶴が負
債と資本金の合計額を超過するとき︑その会社は剰余金をもつと言われる︒換言すれほ剰余金とほ縄財産額のう
ち︑資本金によって代表されていない部分である︒﹂
これらの定義を要約すれば︑
放熱−︵沙茄+掩割紗︶=逆沙斡 欝三十二巻 第二号 ︵一一三一︶︑ 二
ということであり︑これらと同様な趣旨の定義を挙げるものに︑ジルグアースデイソ︵11︶︑︒ヘースとケストラし彗蛮
がある︒これらのうち︑囲およびMにおいてほ単なる封算的︑形式的説明ほかりでなく︑積極的説明が試みられて
いる︒
旧 二7.イラーとミラーの定義︵用︶
﹁一般・に剰余金とは資本金に充当せられた株金払込以外の源泉から生ずる純財産額の付加分である︒﹂
この定義は前に示した諸定義とは梢趣を異にしている︒
見 ︵B︶私
筆者は剰余金を次のように定義する︒
﹁剰余金とほ株主持分のうち資本金によって代表せられない部分である︒﹂
株式会社は出資者である株主とは別個の独立した企業実体であって︑それ自身権利義務の主体となる︒株主から
出資せられる資産の所有権は株主から離れて会社に移る︒このように株主ほ出資した特定資産に対する所有権を失
うが︑会社の所有する全資産に対し︑綜合的包括的に︑株主特有の権利をもつ︒この権利は株主持分StOCkhO−dersu
Equityと呼ほれる︒
個人企業の場合に︑出資者持分が一個の資本金勘定によって代表せられるのに反し︑株式会社の場合︑株主持分
が資本金と︑剰余金との二つの項目によって代表せられるのは次のような理由によるのである︒
株式会社の出資者たる株主の責任ほ︑株式の引受価額を限度とするから︑会社債権者に対する唯山の担保ほ会社の
資産のみである︒そこで債権者保護の立場から︑ある程度の資産−原則として少くとも資本金の額に相当する純財産
−の常時保有が要請せられる︒この要請に従って︑株式会社にあっては︑資本金の概念は法定せられたものとなって︑
︵一三三︶ 三 剰余金の本質とその源泉別分頬
ケ
ぐノ瑚
第三十二巻 第二号 ︵劇三四︶ 四
渡りにその額を増減することは許されない︒特に資本金減少については︑株主総会の特別決議︑債権者の異議申立
に関する公告等︑厳しい制約がある︒そこで︑株主からの出資額そのもののうらにすら資本金の枠内に入らない部
分を生ずることがあり︑況んやその他の種々の原因による株主持分の増加分はすべて資本金にほ吸収せられない︒
このような資本金常吸収せられない株主持分の増加分や︑株主への配当︑損失の発生等による株主持分の減少分を
吸収するために︑資本金とは別個に剰余金が存在するのである︒
前掲諸家の定義のように︑剰余金の額は︑仙応計算的︑形式的には︑資産総額から負債と資本金の合計額を控除
した額ということができるのであるが︑これは各種の資産が帳簿価格通りの価値を有することを前提とする︒
資産の真実の価値が帳簿価格よりも大きければ︑秘密剰余金が存在することを意味し︑その反対の場合は︑剰余
金の兵廣の額はそれに応じて減額せられなけれほならない︒
資本金が相当長期間変動しないのに反し︑剰余金ほ月々変動する性質をもでている︒蓋し︑株主持分ほ種々の原
因によってーーー特に損益の発生によって 一 日々変動するからである︒この意味において︑モイヤーーモーツは︑
﹁剰余金は株主請求権のうち︑利益とともに増加し︑損失とともに減少する伸縮性な持つ部分である︒︵1︒﹀﹂と指摘
している︒
会社に欠損を生ずるときほ剰余金によって填補せられ︑剰余金ほ栗本金防衛の機能を果すものごあるが︑欠損累
積の結果︑純財産額が資本金以下に減少すれば︑繰越欠損金を生ずる︒繰越欠損金ほ︑言わばマイナスの剰余金
Ne習ti完SnrpFsであって︑資産に対する株主の権利を示すために︑資本金から控除さるべき額である︒
︵1︶声H.Wade∵冒鼠ame乏a︼s Of AccOunェng︸−誤−.P−会
︵2︶芦W.Py−e︸Fundamenta−AccOu已ing P︻incip−e00︐−欝∽■ P・∽設
⁝
こ 剰余金の源泉別分類
剰余金の分類は︑単なる形式的問題でほなく︑各種剰余金の本質を如何に理解するかということと密接な関連呑
もつものである︒このような観点から剰余金の発生源泉別分類について考察を試みたいと思う︒
︵A︶資本剰余金と利益剰余金とに分類し︑▲評価替剰余金を資本剰余金に包含させるもの
川 パイルの分類︿1︶ ︵3︶H・A.ヨnneyu Princ−p訂s Of AccOuntingu lntrOductOry.−¢金.P.N遥 ︵4︶Sanders﹀Hatfie−d and MOOre︸ A Statement Of AccOunt首g Princip−es︼−300.P.¢N ︵5︶R・喜・MOntgOmery.Auditin的丁訂○︻y and Practice﹀−芝〇.P一∽∽∽ ︵6︶PりW‖ PinkertOn一AccOunting fO︻SurpF∽■−∽N㌣ P‖− ︵7︶1.〇.Mac芥ins2y and H・S・20b−e︼ AccOuコtingPr−nCip−2S︸−翌芯・勺.畠○ ︵8︶D●H.MackenN耳 The句已ndamenta−s Of AccOunting﹀−淫奔 P小会N ︵9︶Macfariand and Ayars−AccOunting句undame已a−s.−芝↓.P.∽ひ○ ︵10︶C.A.MOyer and R−K.Maま2﹃uncti呂a−AccOunting−−誘−・P.Nヨ ︵11︶N.L.Sil詔rS︷ein︶ COrpOrate Finance Simp−ified∵−慧芦 P.N−00 ︵12︶H.St︸C.Pace and E.1.只aest訂r︸COrpO⊇ti〇〇AccOunting.−浮草 P﹂缶 ︵13︶1.b.Tay−01and H.C.Mi−−er−1nte︻mediat2AccOuntin呵︸−諾00P・NNり ︵14︶MOyer and Mautz︸ Opht・︸ P.N遥
剰余金の本質とその源泉別分類 ︵一三五︸ 五
彼によれば︑利益剰余金とは利益から生ずる剰余金であり︑資本剰余金とは利益以外の輝泉から生ずる剰余金で
ある︒
回 企業会計審議会企業会計原則 罪三十二巻 第二号 剰 余 金1
一利益剰余金 一発本剰余金1
ーa 株式発行差金 ︵額面超過金︶
b 無額面株式の払込剰余金
C 合併差益 ー3︑評価蕃剰余金 ︵仙三六︶ 六
11︑払込剰余金
a 株式プレミアム
b 株式割引額︵マイナスの剰余金︶
C 無額面株式の払込剰余金
d 失権剰余金
e 株主の追出資
− 金庫株売買益
12︑贈与剰余金
a 株主からの株式又は資産の贈与
b 部外者からの贈与
企業会計原則によれば︑利益剰余金とほ利益の留保額からなる剰余金であり︑︑資本剰余金とは利益以外ノの源泉
から生ずる剰余金である︒
︵B︶払込剰余金と利益剰余金に分類し︑末実現の資産増価額は剰余金と呼ほるべきではないとするもの︑
フィニイと︑\エフLヱは剰余金を次のように分類する︒
剰余金の本質とその源泉別分顆 剰 余 金− 剰 余 金− 1 利益剰余金 ー払込剰余金− 資本剰余金−
e
.▲−■
g −n
■l
r▲●J
ーa 株主の贈与から生ずる株主持分
﹁a
d 資本的支出に充てられた国庫補助金︵建設助成金︶及び工事負担 金 資本補填を目的とする贈与剰余金又は債務免除益 減資差益 固定資産評価差益 再評価積立金 貨幣価値の変動に基き生じた保険差益 自己株式の処分乳の資本取引によって生ずる剰余金 部外者の贈与から生ずる株主持分 自社の株式に■関連する取引から生ずる株主持分で資本金に吸収せ られないもの 営業純利益から生ずる剰余金︵一三七︶ 七
・識
﹁b 非経常的利益から生ずる剰余金 彼は未実現の資産増価額に対しては剰余金という語を用いるべきではないと主張する︒
︵C︶教本剰余金︵又ほ払込剰余金︶︑利益剰余金︑再評価剰余金に三分するもの
川 マッケンジーの分類︵3︶ 第三十二巻 第二号
剰 余 金− 剰 余 金1
ぺートンの分類︵5︶
﹁利益剰余金 特殊損益の結果をも含む利益蓄積癒 テイラーとミラーの分類
1資本剰余金⊥b 贈与剰余金 + ﹁C 金棒株販売益
ふ甲足資療再評価剰余金
Ⅰ
利益剰余金 t貞盛増価より生ずる未実現剰余金 .−資∵茶利余金− l利益剰余金−ーa 払込剰余金 .ノa −b r a
b 経常的利益 非経常的利益 株式プレミアム
金膵株取引剰余金
減資剰余金 ︵仙三八︶ 八
剰余 金 ﹂=⁝紺⁝綽金法定資本金を轡差込額
H マクファーランドとエイサーズの分類︵6︶
彼等ほ刷応剰余金の二大分類として︑利益剰余金と資本剰余金を挙げ︑資産の再評価差額は資本制余金に包含せ
しめてもよいと述べた後︑よりよき処理方法ほこのような剰余金を︑再評価剰余金という特殊の項目に吸収するこ
とであると述べている︒
附 佐藤孝一博士の分類
回 その他の分類方法
剰余金の本質とその源泉別分類 剰 余 金1
再評価剰余金
′
︵未実現剰余金︶ ノ資本剰余.金− ′利益剰﹁1︑不労所得再評価剰余金 ﹁ 2︑価値変動再評価剰余金 ノ2︑そ・の他の贋本剰余 金
1
る株 払式
込原 始発行によ 剰余金
b C
ld ′a 無額面株払込超過顔 ノb 額面株プレ︑\\アム ノa 合併剰余金
減資剰余金
贈与剰余金
金庫株取引その他による剰余金
′
︵山王九︶ 九
嘲 資産の再評価
彼等はとれらの源泉から生ずる剰余金は︑それぞれ次のような名称の項目に吸収せられるべきものと主張する︒
︵9︶
揖のab − 利益剰余金
揖の′℃ 1贈与剰余金
②の全部 − 払込剰余金 第三十二巻 第二号 ニュトラヴとガーナーほ剰余金発生の源泉を次のように分類する︒主 闇 部外者との取引
a 経常的取引
b 非経常的取引
C 部外者からの贈与および債務の免除
脚 株主との取引
a 株式の額面額又は奉不額を超える払込額
b 金膵株取引
C 株式の額面額又鱒表示額の引下
d 株式からの贈与
e 株主の追出資
f 失権株 ︵〟四〇︶ 副○
畑再評価剰余金
︵F︶私 見 剰余金を利益剰余金と資本剰余金とに分類する二分法は︑極めて簡単安易な分類法でであるが︑利益以外の源泉
から生ずる一切の剰余金を資本剰余金とする結果︑資本剰余金ほゴ︑︑\捨場的なものとなり︑異質のものが包含せら
れることになる︒特に企業会計原則のように︑資本剰余金の項目下に︑各種の源泉から生ずる剰余金を椎然と羅列
するが如き隼甚しく非科学的であると思われる︒筆者ほ︑各種の剰余金の本質を吟味し︑その性質に従ってこれ
らを整理統合した結果︑剰余金の源泉別分叛としては左記のようなものが妥当ではないかと考える︒
常山 利益剰余金
㈲ 経常的取引から生ずる利益を源泉とするもの
㈲ 非経常的取引から生ずる利益を源泉とするもの
第二 資本剰余金
Ⅲ 株主によ一る資本酸出を源泉とするもの︵払込剰余金︶
a 株式発行の際の株主からの払込額を源泉とするもの
川 株主からの払込額の一部が直ちに剰余倉となるもの
額面株式の額面超過金
無額面株式の払込剰余金
合併剰余金
自己株式売却益
剰余金の本質とその源泉別分類
︵凹︸︶+山一
第三十二巻 第二号 ︵高二︶一二
回⁚∴ニ軍資本金を構成していた株主からの払込額が後に剰余金に振替えられるもの
減資剰余金
b 追出資を意味する株主からⅦ贈与
脚 部外者による資本酸出を源泉とするもの︵贈与剰余金︶
建設助成金
工事負担金
固定資産贈与益
第三 再評価剰余金
a 貨幣価値変動に基く再評価積立金
b 貨幣価値変動に
C 固定資産評価益
モイヤー・モーツも述べるように︑︵10︶﹁利益剰余金とは︑直接又ほ間接に会社の営業乃至利潤損得努力から生
ずる剰余金である︒﹂株主ほ企業活動から生ずる危険の究極の負担者であるとともに︑企業活動から生ずる純財産
の増加額に対して権利をもつ︒利益剰余金はかくして成立するのである︒会社の本来の目的とする物品の生産︑販
売その他の基本的営業活動から生ずる利益は︑利益剰余金の最大の源泉である︒作業屑の売却︑余剰不動産の賃貸
のような補助的活動から生ずる利益︑使用中叉ほ拡張用の資産の処分益︑貨幣価値安定期における保険差益のよう
な非経常的利益︑過年度損益の修正等も亦利益剰余金の源泉である︒なお︑資産処分益︑保険差益等は過去の過大
償却に因ることが多く︑実質的には過年度損益引算の修正の意味をもつものといえる︒
二分法をとるときは︑資本剰余金を利益以外の源泉から生ずる剰余金と説明するのみで︑積極的な説明が困難で
ある︒筆者は︑後に明らかにするように︑再評価剰余金は資本剰余金とほ本質を異にするものと認め︑資本剰余金を
㊦ ﹁株主による資本醸出離のうち資本金を構成しない部分︑およぴ︑り部外者による資本醸出を源泉とする剰余金﹂と
定義する︒筆者と同様に︑剰余金三分論の﹂山場をとる佐藤孝一博士は︑﹁資本剰余金は︑株式会社の経常的営業活
動並びに非経常的損益取引以外より生じたところの︑実現した剰余金を総称する︒換言すれば︑資本剰余金とほ︑
利益剰余金以外の剰余金であって︑しかも未実現部分を除く剰余金の繚葡的概念である︒︵11︶﹂と述べておられる︒
しかしながら筆者ほ︑﹁実現﹂ ﹁未実現﹂という語は︑利益に関連して用いられるのが普通であるから︑実現利益
に粛応する剰余金とか︑未実現利益に対応する剰余金という意味に用いられるならばともかくとして︑利益と全く
かかわりのない資本剰余金の説明としてほ如何かと思う︒
資本剰余金の主要な源泉は︑株主による酸出資本であり︑これに︑株式発行の際の株主の払込と︑追出資を意味
する株主からの贈与とがある︒額面株式の額面超過金︑無額面株式の払込剰余金等は前者の代表的なものであり︑
株主の払込額の二部が直ちに剰余金となるものである︒これらと本質を等しくするものに︑合併剰余金と自己株式
売却益がある︒
合併剰余金とは︑合併によって消滅した会社から承髄した純財産額が︑被合併会社の株主に支払った金額並びに
交付した株式の金額︵即ち合併後存続する会社の資本金増加額︶ を超過する額である︒この取引は︑被合併会社の
株主グループの︑存続会社に対する現物出資とみることができる︒故に︑このとき生ずる合併剰余金ほ︑一
株発行の場合における額面超過金と︑その本質を等しくするものである︒
わが国では︑原則として︑会社が眉己株式を所有することは禁止せられているが︑商法第二劇○条は︑会社が山
剰余金の本質とその源泉別分類
︵四三︶ 二一劇
−1
︵仙四四︶ 一四 第三十二巻 第二号
時的に自己株式を所有し得る例外的場合を列挙している︒自己株式取得の本質は︑株主によって出資せられた資本
の一時的減少であり︑自己糠式の売却は別の株主から改めて払込を徴収することである︒従って所謂自己株式の売
却益ほ︑有価証璧冗却益とほ全く性質を異にし︑株主の醸出資本の山部であり︑資本剰余金を構成するものである︒
仙度資本金を構成していた株主からの払込額が︑後に剰余金に振替えられることがある︒減資剰余金の場合であ
る︒減資剰余金とは︑減資によって減少する資本金の額が︑株式の消却︑叉ほ払戻に要する金額︑および欠損の填
補にあてる金額を超える額である︒この超過額に相当する資本金減少分ほ︑剰余金に振替えられて減資剰余金とな
る︒仙度資本金を構成したものが剰余金に振替えられたものである点に︑この剰余金の特色がある︒
会社の財政状態の改善等の目的で︑株主によって︑その持株数に応じて醸出せられる現金等ほ︑明かに追出資の
意味をもつものであるから︑部外者からの贈与剰金とは区別して︑払込剰余金の二樽とすべきものである︒
ニューラヴ・ガーナーは︑これについて︑次のように述べている︒﹁贈与剰余金という語が︑頻繁に︑株主によ
る会社への贈与と関連して︑用いられるのほ︑不幸なことである︒このような贈与は醸出資本の山部であってハ払
込剰余金と考えられるぺきである︒︵崇﹂
.部外者からの資本醸出を源泉とする剰余金を贈与剰余金という︒贈与剰余金たるためには︑贈与が株主としての
資格においてなされたものではないこと︑および︑贈与者が︑企業に対する資本提供を意図していることが必要で
ある︒贈与者の意図が経営補助にあるときほ︑その贈与は利益剰余金の源泉となる︒贈与剰余金の源泉は︑建設助
成金﹂ 工事負担金︑固定資産贈与益等である︒
剰余金の分類にあたって問題の傭点となるものは再評佃剰余金である︒
二分論者が︑再評価剰余金を資本剰余金に包含せしめる理由について︑明快な説明を聞くことほ困難である︒山
下教授は﹁固定資産そのものが︑一般的な価値変動の下で再評価された場合において︑資本の投下形態としての固
定資産そのものの価値修正の結果として招来した再評価差額が︑本来的にいって稼得利益でないところからみても ︵㍑︶ それが資本剰余金の性格をもつものであることについては︑恐らくは異論のないとこをであろう︒﹂と述べておられ
る︒しかしながら︑稼得利益でないから資本剰余金であるということほ︑AでないからBであるというに等しく何
放にCであり︑Dであってはならないかという説明を欠いでいる9
阪本教授は﹁企業会計上では︑貨幣価値に著しい変動を生じたときには︑資本修正の目的をもって︑財産の評価
沓をなすことを特に認める打である︒この場合に生じた評価差額は資本剰余金となる︒資産の再評価をなすことに
よって︑資本そのものの緻の修正を行うことを目的とした評価巻は︑資本取引とみられるからである︒︵14︶﹂ と論ず
る︒しかしながら︑資産は自己資本のみによ≠て賄あれるものでほなく︑調達資金の相当多くの部分ほ負債によっ
ている︒これによって調達した資産の再評価差額を︑単純に自己資本の修正なりと断定することはできない︒又同
教授の所謂﹁資本﹂が負債をも包含するものであるならば︑負債と対立関係にある株主持分の一部である剰余金を
論ずるにあたって︑両者の混同は避けるぺきであろう︒﹁再評価額と従来の帳簿価額との差額たる再評価積立金
は︑
という丹波教授の説に対してもへ︒同様の批判がなされる︒
貨幣価値の変動が著しい程度に達したとき︑最近の貨幣価値に合致するように資産の評価替を行い︑資産の帳層
価額を妥当な数値に修正し︑爾後の減価償却を合理的に行い︑損益計算を公正ならしめる目的で資産再評価が行わ
れる︒借方科目たる資産勘定の数値が修正せられるとともに︑貸方にお.いて︑その総修正額を吸収するものが︑再
評価積立金である︒もし︑再評価せられた資産が︑すべて資本金によって調達せられたことが明らかであるとき
四五︶ 一五 剰余金の本質とその源泉別分類
︵四六︶一六 第三十こ巻 軍事 は︑再評価積立金は資本金修正剰余金である︒資本金の他に︑資本剰余金︑利益剰余金等が充当せられているなら
ば︑再評価積立金は︑東本金︑資本剰余金および利益剰余金修正剰余金で濁る︒これらが︑いずれも︑自己資本で
/ あるの故をもって︑貸本修正剰余金と考えてもよい︒この場合︑資産とそれに充当せられた自己資本の数値を︑貨幣 価値変動に応じて︑修正したに過ぎないから︑実現利益はもとより︑未実現利益も考えられない︒再評価積立金が 常にこのような性質のものであるならば︑当然これを資本剰余金の一療とみなければならない︒然るに︑事実上︑ 固定資産の調達資金源ほ負債によることが多い︒
ある工業会社が︑七億円の資金をもって新工場を建設し︑その設備の耐用年数ほ七年とし︑所要資金七億円ほ全
額償還期限七年の長期借入金によって調達し︑利率は伴二割とする︒満山年後に貨幣価値が三分の這低下し︑資産
の償却後帳簿価格を三倍して︑十八億円と再評価すれば︑十二億円の再評価鏡立金を生ずる︒この場合の再評価積
立金は︑自己資本の修正額ではない︒本来設備の資金源たる借入金の数値修正にあてることが公正な措置である
が︑借入金は借入当時の数値によって返済すればよい︒よって︑この会社は︑価値大なる貨幣を借入れ︑価値少せ
貨幣をもって返済することによって︑実質的に利益を得る可能性がある︒しかし︑今ほまだ実現利益でほない︒七
年間の原価の内容︑および収益が左表の通りと仮定する︒︵設傭の残存価格は0とする︶
計 収
益 12.7 12 7 36〃7 36り7 36.7 36。7 3臥7 36.7 36.7 36.7 36小7 36.7 36.7 36.7 232.9 232.9
︵単位二億円︶
右の結果︑一応七年間の損益0という答が出ているが︑七年間の収益合計二三二・九億円のうらから︑製造原価
︵減価償却費を除く︶︑一般管理販売費︑支払利息合計二三㌻九億円を支払い︑更に当初の借入金七億金を返済
すれは︑最後に⊥二億円の現金が残る︒このエ場ほ自己資本0︑全額借入金をもって建設されたものであるから︑
負債完済後に残った山二億円は疑いもなく利益を示すものである︒この額は再評価積立金山二億円に相当し︑第二
年度の期首に予想せられた未実現利益が︑設備の耐用期間中に実現したことを物語るものである︒故に本例におけ
る再評価積立金は︑当初の自己資本修正額を示すものではなく︑未実現利益を示すものであり︑これほ︑経営が順
詑に行われ︑ふつ︑デフレーショソがなければ︑設備の耐用期間中に除々に実現するものである︒従ってこの場合
の再評価積立金ほ︑資本剰余金の性質を全くもたない︒それは利益剰余金に近く︑漸次利益剰余金に変質するもの
である︒
実際問題とし へ
場合︑固定資産は︑自己資本と負債の両者によって調達せられる︒従って一般論としては︑再評価積立金ほ︑資本
︵一四七︶一七 剰余金の本質とその源泉別分類 減 年 次
製そ 販一 ヽ∨‖ レ
77︑77777
支払利息 0▲0・〇.〇.〇.〇・〇.
売 イ
26企U6666
97777サー7
2ノウ〟り〟り〟22
1333333
1234567 9 4 38 1 7 1 9 1
四八︶ 一八 第三十二巻第二号
剰余金の性質と︑未実現利益剰余金乃至利益剰余の性質を併せ有するものと︑いわなければならぬ︒筆者が︑再評
価積立金を単純に資本修正剰余金なりとする説に反対し︑剰余金三分論を主張する所以である︒
ついでながら二言すれば︑貨幣価値変動期に︑単に︑価値大なる貨幣を借入れ︑後に価値少き貨幣をもって返済
することのみからは︑利益は生じない︒金融機関のように︑借入れた資金を︑そのまま他に貸付ける場合には︑前
例のような性質の利益ほ生じない︒借入れた資金と︑その用途との結合如何にかかるものである︒従って︑前例の
ような資金借入とその運用も︑二樺の利潤獲得努力とみることができる︒
貨幣価値凌動に基く保険差益も再評価積立金と同様の性質をもつものと考えられる︒
通常の営業年度において︑資産評価益を計上することは︑極めて稀であると思われるが︑もし︑それが計上され
▼▲ るならば︑未実現利益剰余金たる性質をもつものと考える︒
資産再評価が行われていないとき︑更生︑準更生に挺し︑新しい貨幣価値に合致せしめるために︑資産の評価告 /
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を行う上すれほ︑このとき生ずる資産評価益は再評価積立金とその性質を等しくするものである︒
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︵7︶佐藤孝一剰余金論 昭和三〇年 四七頁
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︵10︶M名eHandMau︷♪ Op・Cit・u P・N謡
︵11︶佐藤孝一前掲蕃 山六六頁
︵12︶け訂w−○諾 and Garner一〇p・Cit・︶PJNN
︵13︶山本勝治 再評価積立金の本質 産業経理 欝一九巻 第一号
︵14︶阪本安山 財務諸表論 昭和三二年一四七貢
︵15︶丹波康太郎 資本会計 昭和三二年 二二四頁
剰余金の本質とその源泉別分頬 ︵一四九︶ 一九