市場に流入する情報 と為替レー トの ボラテ ィリテ ィ
須 賓 正 幸
市場 に流 入す る情報 と為替 レー トのボ ラテ ィリテ ィ
Abstract
Informationflowedintoforelgnexchangemarketmusthavesomeef‑ fectonforelgnexchangerateifmarketisefficient.Inthispaper,wein‑
qulreintotherelationsbetweeninformationinflow andforeignex‑
changeratevolatilitywithUltraHighFrequencyJPY/USDratedata.
Totestthehypothesis,wedevelop480minutesintervaldatafrom UHFDanduseGARCHwithtdistributionmodel.Thenumberoftick andthenumberofnewsheadlineareemployedastheproxyvariableof informationinflow.Inmakingourdataset,Weeliminatesuchfactors whichmightbeasourceofanomaliesasthetimeoftheday,thedayof theweek.From ourempiricalresult,wecanconfirm thatforelgnex‑
changeratefollowsstrongform marketefficiency,becausethenumber oftickhassignificanteffectonforeignexchangeratevolatility.Iffor‑ eignexchangedealersareinformationbaseddealer,theytrade whenevertheygetnew informationandthistradeisrecordedasone tick.Therefore,theactionoftheirtradereflectsnewinformationarrival andthisactioncanbecapturedbythenumberoftick.
Keywords:foreignexchangeratevolatility,UltraHighFrequency Data,GARCHwithtdistributionmodel,strongform marketefficiency
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1 はじめに
市場 に流入する情報 が資産価格,あるいはそのボラテ ィリテ ィに与 える影 響は, これまで多 くの研究者 によって検討 されて きた。それは,資産価格が どの ように変動す るか,あるいはなぜ変動するかを知 ることによ り,価格形 成プロセスの ミクロ構造的基礎 を明 らかにする とい う研究面の重要な課題 に 答 えることとなるためである1)0
1) この ような観点から市場の ミクロ構造 を包括的に研究 したものは以下の文献がある。
Garman,Mリ(1976),0'Hara,M.,(1995)0
このような資産価格の変動モデルの多 くは,市場の効率性を前提 としてい る。 しかし,実際の金融資産の価格流列のデータを用いた多 くの研究では, 市場の効率性が必ず しも支持されているわけではない。実際,多 くの資産価 格 (その収益率)の分布は正規分布 よりも尖度が大 き く,歪度 も大 きいこと が知 られている。
市場の ミクロ構造 の分析では,市場 に影響を与 える情報は一般 に公的情報 (publicinformation)と私的情報 (privateinformation)に区分 される。外 国為替市場での私的情報 とは,た とえばカスタマーデ ィーラーの顧客からの オーダーフローが考 えられる。ある特定のディーラー,あるいは銀行に顧客 か ら外貨の大量の買い注文が入ると, この市場参加者のみがこの後外貨への 需要が増大するとい う情報を持つことになる。私的情報を明示的に扱 う場合, デ ィーラー間の情報格差,すなわち市場での情報の非対称性を明示的に扱 う
ことになる。 この点に関する実証研究はデータの入手の容易な株式市場では 行われているが,外国為替市場 についてはLyons(1995,1996),Evans/
Lyons(1999)な どの研究が主要な ものである。 この ような研究では個別デ ィーラーの売 り,買い,取引数量,その ときの時間な どのデータを必要 とし, これ らのデータは一般 には公開されていないためである。近年 EBS (Elec‑ tronicBrokingSystem)のデータを用いた研究がなされるようにな り,この
ような研究が進めば為替 レー トに関 してもデータ上の制約が緩 くなることが 予想される。本稿では為替 レー トを対象 とするため,以下のサーベイは為替
レー トに関する研究を中心に行 うことにする。
相対的に入手の容易な公的情報 についての分析では, これまで多 くの研究 成果が報告 されている。 これ らの研究の 目的は,マ クロ的接近法 とミクロ的 接近法に区分できる。マクロ的接近法 とは,事前に予定 される経済指標の効 果が為替 レー トの水準,あるいはその変化率へ与える影響を分析することで, 外国為替市場 を対象 としてマ クロ経済理論 を もとに分析す るこ とを意味す
る。 ミクロ的接近法では,観測間隔の短いデータを用いて市場に流入する情
市場 に流 入す る情報 と為替 レー トのボ ラテ ィ リテ ィ 359
報の効果を分析 し, しば しばその解釈,あるいはテス トされる仮説が市場の ミクロ構造理論 に基づいている。本稿はこの後者 に属する。
マ クロ的接近法 に属す る初期の研究は,Hakkio/Pearce(1985)やIto/
Roley(1987)な どに代表 される。 この分野の研究の進展は,時系列分析手法 の発展 と,利用可能なデータの充実 という二つの面か ら整理することがで き る。 これ らの研究の多 くは, 日次の為替 レー トを用いていた。た とえば同一 の市場のopenとcloseの値やそれ らの毎 日の値 による対数差分や差分 を用 いていた。手法 としては指標公表 日にダミーを用い,その有意性をもってア ナウンスメン トの効果 としていた。
Ito/Roley(1987)では,東京市場 とニ ュー ヨー ク市場のopenとcloseの データ,すなわち 1日 (24時間)の中で4時点の円 ドル レー トの差分を計算 し,日本 とアメリカの経済指標の発表の効果を比較 している2)。また,ニ ュー スの効果はサプライズ (実現値 一予想値)がその源泉であるとい う,効率的 市場が想定 されている。テス トは為替 レー トの差分を被説明変数 とし,サプ ライズ,事前の予想値 を説明変数 として線形モデルをOLS推計 し,それぞ れのパ ラメータの有意性によりニュースの効果を測定 している。そこではア メリカのマネーサプライの影響は有意であるが,物価水準や生産 に関わる指 標公表の影響は見出されていない。
この研究の もう一つの特徴は,地理的な市場間の相違の影響 を分析 してい る。 しかしこれは厳密 には取引時間帯を市場 として区別 したものであ り,経 済指標公表の効果の, これ らの取引時間帯間の相互作用を分析 している。す なわち, 日本 とアメリカの経済指標の発表がどの程度長 く為替 レー トに影響 を与 えているかを分析 している。そ こでは4つの取引時間帯が重複 していな い とい う性質が,市場間の相互依存関係の分析を可能 としている。 この分析
2)アメ リカのデータは,アメリカ東部標準時間 (EST), 9時,12時, 4時30分の3時点 のニ ュー ヨーク連邦準備銀行か ら公表 される為替 レー トを用いているので,4つのデー
タのみを用いているわけではない。
はEngle月to/Lin(1990),Hogan/Melvin(1994)において,メタシャワー 効果 とヒー トウェーブ効果 として より進んだ手法で再検討されている. メタ シャワー効果 とは時間的に連続する市場間の影響を示 し,ヒー トウェーブ効 果は市場固有の効果を意味する。そ こではGARCHモデルが用い られ,敬 引時間で基準化 した 日中の為替 レー トの変化をモデ リングし,条件付 き分散 に含まれる情報 に関する代理変数のパラメータの有意性により市場間の影響 を分析 している。 また,時間的に連続する市場間で影響が持続する理由を, 市場の ミクロ構造理論 に求めている.Admati,etal.(1988)モデルは非対称情 報 とstrategicliquiditytraderで特徴づけ られ informedtraderの情報が取 引を通 じて価格に反映されるには時間がかかることが示 される。市場秦加者 間の予想に大 きな違いがあるな らば,すべての人の評価が一致する価格に到 達するためには時間がかかる可能性がある。 このため,市場 にもたらされた 情報を反映 した均衡価格が成立するために時間がかかるという現象が,時間 的な区分 による市場間での分散の依存性 として表れると,そこでは説明され ている。いずれの研究においても, メタシャワー効果が報告 されている.
市場参加者の個別行動 に起因す る, 日中に観測 され る為替 レー トの変動 特性 を説 明 しよう とい う試 みが,それに適 したデー タ (超高頻度デー タ (UltraHighFrequencyData,以下ではUHFD))が利用可能 となってきた 状況の もと盛んに行われるようになった。 これが先述のミクロ的接近法であ
る。
為替 レー ト,その対数差分,あるいは絶対差分な どを用いた,為替 レー ト のボラテ ィリティのモデ リングを主要な 目的 としている研究が当初は数多 く 見 られた。そこでは単変量の非定常時系列モデルが主に用い られている。
UHFDを用いた経済指標のアナウンスメン トの影響の分析 も数多 く報告 されるようになった.為替 レー トを対象 とした研究では,Goodhart,etal.
(1993)や Tanner(1997),Andersen/Bollersrev(1998),須斎 (1998)は UHFDを,Ederington/Lee(1993)は通貨フューチ ャーのデータを用いて
市場 に流入す る情報 と為替 レー トのボ ラテ ィリテ ィ :̲161
経済指標のアナウンスメン ト効果を分析 している3)0
Ito/Roleyをは じめ とした分析では,市場のopenとcloseを用 いた取引 時間平均の為替 レー トの変化率を用 いてお り, 日中に成立 している為替 レー トを用 いた ものではない。Ederington/Lee(1995)ではユー ロダラーお よび マル クのフ ューチ ャーのUHFDを用いて,価格 の対数差分 を もとに した10 秒間隔の分散 (これをボラティリテ ィとよんでいる)の変化を時系列的に観 察 した ところ,経済指標公表の2か ら3分後 までの間で指標公表 がない 日と 異なる動 きを していることを発見 した。 この期間でニ ュースの影響が消失 し て しま うな らば,市場のopenとcloseを用 いた為替 レー トの変化 は,予定 された経済指標の発表 とい う情報のみな らず,その後 に生 じた情報の効果を 含んで しま うことになる。効率的市場を仮定する とき,経済指標の公表な ど の情報 の効果のみを抽 出するためにはデータ間隔が より細 かな ものが好 まし いことはこの例か らも類推できよう。
Tanner(1997)では, ドルマル クのスポ ッ トレー トを用いて,EST8:30に 公表 される経済指標 に限定 し,それ らの為替 レー トへの影響を分析 している。
1時間間隔の為替 レー トを用いて,その変化率を被説 明変数,各経済指標の サプライズを説 明変数 として,経済指標の発表の効果 を個別のパ ラメータの 有意性 によ り検証 してい る。貿易収支 とCPIでは経済指標 の影響 が相対的 に長期 にわたることが確認 されている。CPIは,指標発表の一定時間後 か ら 影響が現れている。 この原因は,市場の非効率性,あるいは指標の実際に公 表 された値の影響を分析するために時間がかかったためかは,推測の域 を出 ていない。 同様の説 明は,Ederington/Lee(1993)において も採用 されてい る。
Ederington/Lee(1993)は,公的情報の市場への流入によるボラテ ィリテ ィの持続性 と,市場の効率性の検証 を 目的 としている。そ こではCMEに上
3)その他た とえばP.Jorion(1996)も通貨オプシ ョンのUHFDを用いて為替 レー トのボラ ティリティと取引量の関係を分析 している。
場 されているT‑bondの他,ユーロダラー,マルクのフューチャー価格が用 い られている。そ こではアメリカの主要経済指標がEST8:30に公表 される
ことを考慮 し,EST8:20より取引が開始される三つの商品を選択 している。
5分および1分間隔の資産価格の収益率を用いて,経済指標公表後5分,お よび1分の時間帯の価格の対数差分の平均 と,公表のなかった 日の値 との絶 対差を被説明変数に,指標発表 日に 1,それ以外に0を とるダミー変数を説 明変数 として,ダミー変数のパラメータの有意性で指標の発表の効果を計測 している。個別の指標 ご との影響は,ユーロダラーではCPI,PPI,Dura‑ bleGoodsOrders,失業率が最初のgrid (EST8:30か ら35)で有意な反応
を示 している。 ドイツマルクでは,PPI,GNP,貿易収支,DurableGoods Orders,失業率が最初のgridで有意な反応 となっている。 したがって,こ
れ らの指標の発表は,それぞれの資産価格の変化率に即時的な影響を与えて いる。ボラティリティの持続性の検証では,指標公表後 1時間まではそれぞ れの値 に有意な差がみ られるが,当初の5分間がその差が最大 となっている。
5分間で市場の反応が消失する可能性を考慮 し1分間隔でみてみると,価格 の調整は1分以内で終了する可能性を示唆する結果 を得ている。 これは,こ れ らの市場の取引が大変活発であること,採用 した経済指標は事前に分析の 準備が済んでお り指標の発表直後に反応が現れる可能性などを理 由としてい る。また市場の効率性 に反 してボラティリテ ィの持続性が存在する理 由は, 指標発表 に関わる新たな情報が持続的に市場に提供 される可能性を挙げてい
る。
現在利用 されているUHFDの多 くは,情報配信機関か ら金融機関等に配 信されているデータや,EBSから直接入手 した ものであ り,Goodhart,etal.
(1993)はその初期の研究である.そ こではデータはロイター社のFXFX画 面から取 られ,為替 レー トの他にヘ ッドライン ・ニ ュースも用い られている。
このようなデータを用いた研究の問題は,データが不等間隔に並んでいる点 である。Goodhart,etal.(1993)やLyons(1995,1996)はデータ間隔の調整を
市場 に流入す る情報 と為替 レー トのボ ラテ ィリテ ィ 363
行わずに統計解析 してい る4)。 この課題 に対 しては,先 ほ ど触 れたTanner (1997)やEderington/Lee(1993)の ように一定時間間隔のデー タをクロスセ クシ ョン的 に用 いる,Andersen/Bollerslev(1997)に代表 され るようにデー タを均一間隔に変換す る方法を取 る,Engle/Russel(1997),Engle/Lunde (2003),Dufour/Engle(2000)な どの ようにこの不均一な間隔 自体をモデ リ ングす るとい った対応 が採用 されている。Engle/Russel(1995)は ドルマル クレー トを用 いて分析 している。
Goodhart,etal.(1993)では ドイツマル クのUHFDを用 いて,GARCH‑M モデル を採用 し,条件付 き分散式 にニ ュースダ ミーを加 えて経済指標の発表 の効果 を推計 している。ニ ュース としては,アメ リカの貿易収支 とイギ リス の利上げの二 つを採用 している。二 つのニ ュースは為替 レー トの水準 と分散 に有意な即時的効果 を与 え,その後 は双方 とも元の水準 に回帰す る傾 向が報 告 されている。 またAndersen/Bollerslev(1998)では,本稿 と同 じデー タセ ッ トに含 まれる ドルマル クレー トを用いて,経済指標の発表q)効果が検討 さ れている。そ こでは, ドルマル クレー トのbidとaskの平均値 の対数差分 を 用いて5分間の平均値 を作成 し,本稿 と同 じ経済指標の発表が為替 レー トの ボラテ ィリテ ィに即時的な影響を与 え,その効果 は10‑20分 くらいで消滅す
ることが報告 されている。
市場への情報の流入量を直接測定することは容易ではない。単位期間当た りのヘ ッドラインニ ュース数やウォールス トリー トジ ャーナルの記事の大 き さな どを情報量 を表す指標 として解釈 し,それ 自体の時系列過程や金融市場 への影響 を分析 している研究 もある5)。須斎 ・桑名(1999)で触れているよう に,任意の期間当た りのヘ ッドラインニ ュース数はいわゆる公表情報である。
金融資産の価格形成 に影響する情報 は公表情報ばか りでな く,個別のデ ィー
4)物理的な時間の間隔は異な るが,経済的な時間 (economictime)は等 間隔であ る と考 えている。
5)た とえばBerry,etal・(1994)やMitchell,etal.(1994)を参照.
ラーが保有 している私的情報 も重要である。 とくに市場での情報の不完全性 が重視 される場合は後者の影響を排除することは不適切であろう。本稿では 期間当た りテ ィツク数 およびヘ ッドラインニ ュース数を市場への情報流入を 表す変数 として扱 う。市場への為替 レー トの提示が情報 に基づいてなされる と仮定す るな らば,期間当た りテ ィツク数は公表 お よび私的情報の双方を含 む もの と考 えることができよう。すなわち,期間当た りヘ ッ ドラインニ ュー ス数 はFama(1970)で定義 されているSemistrong‑formの効率的市場 に対 応 し,期間当た りテ ィック数はstrong‑formの効率的市掛 こ対応するもので
あると考 えられ よう。
さらに本稿では為替 レー トおよびその他の変数は,曜 日や取引時間帯の特 異性等を排除するように変換する。それは,為替 レー トや株価に関 して多 く の研究で曜 日による変動特性,あるいは市場の開始時点 と終了時点ではボラ ティリテ ィが高まる といった 日中の価格変動特性が報告 されているためであ り,市場 に流入する情報の効果のみを検討す るためにこの ようなデータの敬 り扱いを行 う。
本稿は,以下の ように構成 される。第 2節 において,分析に用い られるモ デルについて解説する。利用 したデー タについての説 明および基礎的な分析 は第3節で行 う。第 4節ではモデルの推定結果 とそのインプ リケーシ ョンを 述べ,第 5節で本稿のま とめお よび今後の課題 について触れる。
2 モ デ ル
本稿では円 ドル レー トの対数差分 を用いてGARCH (1,1)モデルを推 定す る。 Siを円 ドル レー トとす るとき, siをその対数差分 として次式の よう
に示す。
st‑ln藍
市場に流入する情報 と為替レートのボラティリティ 365
∫舌を用いて以下の ようにGARCHモデルを構築す る。
st‑p卜1+Jh;gt,
ケース1:gf〜Ⅳ(0,1) ケース 2 :Ei〜t(V)
ht‑ αo+ α1(st111Lt‑1)2+β1ht‑1
Lamoureux/Lastrapes(1990)ではetを正規分布 と仮定 してモデルを推定 し, 推定 された標準化残差の正規性検定 によって収益率の条件付分布 が正規分布
に したが うか どうかを検証 している。本稿では, Eiは正規分布 に従 う確率 変数 とするもの と, 自由度 〝の f分布 にしたが う確率変数である とする二 つ のケースを想定 し,AICを用 いてモデルを選択す ることにす る。撹乱項に f 分布を採用するモデル を選択する場合,その 自由度 γが‑であるかを検定 し, 為替 レー トの対数差分の条件付分布が正規分布 に したが うか どうかを検証す
る6)0
つぎに上で推計 されたGARCHモ デルの条件付分散式 に,市場 に流入す る情報量 Viを導入 したモデルを推計する。
ht‑ αo+ α1(si‑1lFLt‑1)2+β1h卜 1+rVi
このモデル を推定す る際 には情報流入量Viに既述の二 つの代理変数 を用 いる。分布混合仮説 が成立 し,同時 に情報の市場への流入量の代理変数が適 切 に選択 されているな らば,パ ラメータ(γ)が有意 に推計 され 同時にα1,
β1が有意ではな くなることが予想 される。
情報流入量の代理変数 としては期間当た りヘ ッ ドラインニ ュース数 とテ ィ ック数を採用する。 もし市場参加者 が市場 にもた らされる情報 にのみ反応 し 6)Bollerslev,etal.(1994),渡部(2000)ではそれぞれニ ュー ヨーク証券取引所株価指数, 東証株価指数 を対象にGARCHモデルの Ei(撹乱項)に対 して,t分布 と一般化誤差分 布 (以下ではGEDと表記する)の両方を特殊ケース として含む一般化 J分布を採用 して 推定を行っている.その結果, 両者 とも一般化t分布,GEDよりt分布の当てはま りが
よいことが示 されている。
て取引を行 うとすれば,ティツク数は流入する情報量 に比例するであろう。
期間当た りのヘ ッ ドラインニ ュース数や テ ィック数 をVfに用い るな らば価 格の変動 と情報流入量の間の同時性の問題を回避す ることがで きる7)0
モデルの推定は擬似最尤推定法を採用 し,尤度関数の最大化のアルゴ リズ ムにはMarquardt法を用いる。
撹乱項 にt分布 を採用 したモデルの対数尤度lnLは,サンプル数 をTと する と,
・ n L ‑ C 弓
fi.nht・(V・1,.n( 1
・# ))で表現 され る。ただ しCはつぎの ようになる。
C‑lnr(誓ト lnr(i)‑iln(V‑2)‑‡1n汀
3 デ ー タ
本稿では01sen&Associates社 か ら提供 されたデー タセ ッ トHFD93を用 いる8)。 円 ドル レー トはaskレー トとbidレー トの単純平均 を求め,それを ミッ ドレー ト (midと表記) とし,上記のSfとして採用す る.期間は1992 年10月 1日GMTO:00:00か ら1993年 9月30日GMT23:59:59までである。
これ らのデータはいわゆる超高頻度データであ り,それ らを480分 (8時間) の等間隔のデータに変換する。デー タの始点がGMTの0時であ るため,東
7)ボラテ ィリテ ィと取引高が同時 に決定 され るモデル を用 いた分析 としてLamoureux/
Lastrapes(1994),Tauchen/Pitts(1988),Andersen(1996),Watanabe(2000),Liesen‑ feld(2001)等がある。
8)当該 デー タセ ッ トは多 くの研究者が これまで多 くの研究で用いていると伴 に,01sen&
Associates社 か ら入手可能である。 したが って,カバー されている期間は古いが,本稿 の帰結の反証可能性 が確保 されることを考慮 して このデー タセ ットを用いている。
市場に流入する情報 と為替レー トのボラティリティ 367
京の金融市場が開 く時点か らデータが始 まっている。世界の主要外 国為替市 場の取引時間 とこのデータを考 える と,最初のデータ間隔は東京市場,つぎ の市場 はロン ドン市場,最後はニ ュー ヨーク市場 (ただ しロン ドン市場の午 後 とニ ュー ヨーク市場の午前は重な る)をカバー しているもの と理解で きよ
う。
市場 に流入す る情報 の量 は,一定期 間内のテ ィツク数 とヘ ッ ドラインニ ュース数を代理変数 とする。前者を情報の量 と考 えるのは,価格変化が起 き るのは新 たな情報が市場 にもた らされるか らである と本稿では仮定 している ためで あ る。 ヘ ッ ドラインニ ュー スは経済 に関 わ る ものば か りではない が,外 国為替市場 のデ ィー ラーが注視 してい る画面 に現れた ものであ るた め,それ ら全てを市場への情報流入 として捕 らえている。
以下で説 明するように,本稿では外国為替市場で事前に予想 され る構造的 な特異性 を除去 したデー タを用 いる9)。須粛(2002)で指摘 された ように,本 稿のデー タを用いた場合為替 レー トの対数差分あるいはボラテ ィリテ ィに曜 日,市場あるいは経済指標の公表が影響を与 える可能性が示唆されていた0 これ らを考慮 して,以上の要因を特異性の源泉 として取 り扱 うことにす る。
ただ し,曜 日あるいは市場 と経済指標の公表は構造的特異性 とい う観点か ら 同 じように扱 うことは難 しい可能性 がある。経済指標の公表は市場への情報 の流入である。 しか し,一定期間内のテ ィック数やヘ ッドラインニ ュース数 の ようにランダムな情報ではな く, これ らの経済指標 は定期的に公表 される とともにその予想値 も事前に公表 される。 この ような定期性 とい う点では耀 日や市場 と同じであろう。 したがって以下で取 り除 く特異性 としては曜 日, 時間帯 お よび市場,曜 日,市場,時間帯および経済指標 とい う二 つのケース を想定す ることにす る。
9)例 えばAndersen,efαJ.(2000)参照。また,Lamoureux/Lastrapes(1990)と同じフレー ムワークを用いてダミー変数により曜日効果を確認しているChoudhry(2000)も参照 され
たい。
特異性を除去するためには,ダミー変数を用いる。経済指標 に関 しては, 市場が合理的であれば予想値 と実現値の差 (サプライズ)のみが為替 レー ト
に影響を与 えるもの と考 えられる。 しか し,上記の議論 か ら経済指標 につい て もそれ らが発表 された時点に 1,それ以外の時点に0の値 を とるダミー変 数 によって,その影響 を捕 らえるこ ととする。経済指標では, 日本について は消費者物価指数,卸売物価指数,国民所得,マネーサプライ,貿易収支を 対象 としている。アメリカでは消費者物価指数,卸売物価指数,失業率,マ ネーサプライ,鉱工業生産指数,貿易収支を対象 としている。特異性の除去 については以下の方法 にしたが う。推計式 に直接ダ ミー変数を導入する方法 な ども採用 されているが,本稿ではGallant,efαJ.(1992),森保 ・須粛(2003) にしたがい,為替 レー トの対数差分,一定期間当た りのテ ィツク数およびヘ
ッドラインニ ュース数 に対 して以下の変換を行 うこ とで曜 日,市場,時間帯 お よび経済指標の公表 による特異性 を排除することにする。
まず次式を回帰分析 によ り推計す る。
W‑xb+u
ここで Wは特異性の除去を対象 とす る系列であ り,本稿ではsiである。xは 定数,曜 日ダミー,時間帯 ダミー,経済指標ダミーか ら構成 され る説 明変数 行列であ り,uは撹乱項である。次にこの回帰か ら得 られる残差 dを用いて, 以下の式 を回帰分析 により推計する。なお 〟は撹乱項である。
lnll2‑xz+K
最後 に,変換 されたデータ系列wadjを以下の式で求める。
w a d j ‑ C + d
ここで,C,dはW とwadjの標本平均 と標本分散がそれぞれ等 し くなるように
市場 に流入す る情報 と為替 レー トのボ ラテ ィリテ ィ
決定する。
4 実証分析 (1) 基本統計量
表‑1 基本統計量
369
変 数 平 均 標準偏差 歪 度 尖 度 ∫‑B疏計量
rmid. ‑1.63E‑04 3..84E‑03 ‑0.408 8.182 943.597
rmi(Ladj ‑1.63E‑04 3.84E‑03 ‑0.409 8.159 935.487
rmid̲adjall ‑1.64E‑04 3.84E‑03 ‑0.412 8.157 935.294
nn 122.961 61.624 0.59 2.299 64.123
nn̲adj 123.050 61.872 ‑0.187 5.939 301.070
nnーadjall 123.060 61.877 ‑0.168 5.987 309.943
nq 687.029 395.031 0.174 1.962 41.068
nq̲adj 689.141 393.946 ‑0.375 4.272 74.757
nq̲adjall 689.072 393.911 ‑0.344 4.291 73.423 注)J‑B統計量 はJarque‑Bera検定統計量 を表 す。
すべての変数で歪度が0の帰無仮説を棄却 している。尖度は期間当た りヘ ッドラインニ ュース数 (nn),期間当た りティック数 (nq)を除 くすべての 変数で3以上の値 を とり,その値が3であるとい う帰無仮説は棄却 されてい る。すなわち,これ らの変数の分布は正規分布 よりも裾野が厚い ものである ことが示 されている。また,Jarque‑Bera検定統計量の値 か ら,すべての変 数でその分布の正規性が棄却 されている。
以上か ら,本稿で扱 うデータのほ とんどは,正規分布 と比較すると平均の 周辺でその値 は高 く,また裾野が厚 い分布にしたが うことが確認 された。 こ れは本稿のデータが,金融資産の収益率の時系列データで しば しば指摘 され る典型的な性質を有 していることを示 している。
(2) GARCHモデルの推定
特異性の除去の効果を確認す るため,条件付分散式 に情報流入の代理変数 を含 まないGARCH(1,1)モデル を推定す る。推計結果を表‑2に示す。
条件付 き分散式のパ ラメータの推計値 とAIC,f分布の 自由度 即の推計値の みを掲載す る。そ こでは撹乱項 に正規分布を当てはめたモデル と自由度 即の t分布 を当てはめたモデルの推計結果が示 されている。
表 ‑2では,上の二つは条件付分散式の中に情報流入量の代理変数を含ま ないモデル,つぎの二つは期間当た りヘ ッドラインニ ュース数,最後の二つ は期間当た りティック数を情報流入量の代理変数 に用いたモデルの推計結果 であ るO またモデルの欄 内のカ ッコ内のNは撹乱項 に正規分布 を用いたモ デル,またTは f分布を用いたモデルを示 している。
まず撹乱項の分布 についてモデル選択 を行 う。 ここではいずれのモデルに おいて も撹乱項 にt分布 を用 いたモ デルがAICの値 か ら選択 され る。 した
表‑2特異性排除以前のデータによる推計結果
モデル α 1 β γ 〃 AⅠC
non‑Ⅰ(N) 0.031* 0,967* ‑8.379 (0.012) (0.016)
non‑Ⅰ(T) 0.092* 0.889* 3.336* ‑8.509 (0.035) (0.029) (0.471)
nn(N) 0.084* 0.549* 5.90E‑08* ‑8.367 (0.038) (0.102) (2,5E‑8)
nn(T ) 0.134* 0.568* 5.48E‑08* 3.396* ‑8.514 (0,059) (0.099) (1.44E‑08) (0.509)
nq(N) 0.010 0.647* 7.59E‑09* ‑8.407 (0.016) (0.085) (3.68E‑09)
nq(T) 0.053 0.641* 7.46E‑09* 3.543* ‑8.544
注)カッコ内は標準誤差を示 し,*は5%で有意であることを示 している (以下の表でも同様)
市場 に流入する情報 と為替 レー トのボラティリティ 371
がって, このセクシ ョンでは撹乱項 に f分布 を用 いたモデルの推計結果 を用 いて分析 を進める。パ ラメー タ 〝の値 は3.3か ら3.5程度の値 を とってお り,
gfは正規分布 よ り裾野が厚 いことが示 されている。
ここでの推計結果 か らする と,期間当た りティック数を条件付分散式 に導 入 したモデル以外は,すべてのモデルですべてのパ ラメータが有意 に推計 さ れている。情報流入量 を用 いないモ デルではα 1+βが 1に近 い値 を とり, 高いGARCH効果が示唆 されている。
つぎに情報流入量の代理変数の効果 を確認する。期間当た りヘ ッドライン ニ ュース数および期間当た りテ ィック数のいずれを考慮 したモデル も,それ らのパ ラメー タは有意 に推計 されている。α 1+βで示 され るGARCH効果 もいずれのモデル も0.69へ と低下 してお り,分布混合仮説で予想 された結果 が示 されているが,GARCH効果 が消滅 す るほ どの影響 は確認 されていな
い 。
(3) 特異性 を除去 したデータを用いたモデルの推定
つぎに,特異性を除去 したデータを用いてモデルを推計する。なお,曜 日, 時間帯および市場の特異性を除去 したデータと,曜 日,市場,時間帯および 経済指標の公表の効果 を除去 したデータを用いた推計結果を順 に確認する。
(a)曜 日,市場お よび時間帯の特異性を除去 したデータを用いた推計結果 表 ‑3において も,撹乱項の分布 に J分布 を当てはめたモデルが選択 され る とい う結果が示 されている. ここで もt分布 を用 いた推計結果 を確認 して い く。表 ‑2と同様 にパ ラメータ 〝の値は3.3か ら3.5程度の値 を とってお
り,gfは正規分布 よ り裾野が厚い ことが示 されている。
情報流入量を考慮 しないモデルではα1+βで示 されるGARCH効果は0.98
と,特異性 を除去 しないデータによる結果 とほぼ同 じとなっている。しか し, 情報流入量の代理変数 を用いたモデルでは結果が異 なっている。期間当た り