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速度論的モデルによる教育反応の研究

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211

速度論的モデルによる教育反応の研究

Ⅰ.教育反応の機構および望ましい授業の教育反応次数について

竹  友 一  成*

(昭和51年10月30日受理)

The Investigation of the Educational Reaction by Using the Theory of Reaction Rate. 

Ⅰ.On the Mechanism of Efucational Reaction and on the Order of   Educational Reaction of the Good Teaching‑Learning

Kazushige TAKETOMO

(Received for Publication, October 30,1976)

1.緒

 最近,教育工学的手法による授業分析の研究が盛んに行なわれ,教育学および教育実践 技術の進歩に寄与しつつある。教育工学的手法を教育実践に応用するシステムの一つとし て,NIGHTシステムがある。 NIGHTシステムは,あらたあて言うまでもなく,離島僻 地部(以下,離島部)と都市部の地域教育事情の格差解消を目的とする広域教育工学シス

テムである。格差解消の手だてとして,教育工学的手法は勿論,電波通信技術まで,現時 点で考えられる殆んどあらゆる方法が,そこに組み込まれ,この種の研究としては,比較 的大規模な計画が案出され,かつそれらが実施されて来た。筆者もNIGHTシステムの スタッフの一人として,その実践の場に常時臨んで来たが,常に疑問として感じていたこ との一つは,このシステムが稼働し,離島部・都市部の各中学校より授業実践による学習 データの返送があった場合,単なる学習データの分析から,地域教育事情の格差解消が有 効的になされたかどうかを,はたして判断できるものであろうか,と言うことであった。

 有効的格差解消の有無を判定すべき指標があれば,特に理論に基づく指標があれば,格 差解消の有無を容易に,かつ自信をもって判定することができる。しかし,現在の教育学 界には,このようなセオリテイカルな指標を見出し得ない。

 前報1)におい,筆者は,形成的評価となるチェックポイントの正答率から,統計的に格 差解消の有無を判断すべく意図したが,学級の平均正答率分布が多くの場合,幅ひろくな

*長崎大学教育学部化学教室(長崎市文教町)

Chemical Laboratory, Faculty of Education,:Nagasaki Univ. (Burlkyo, Nagasaki,

Japan)

(2)

り,確信ある判断をなすことができなかった。単なる統計的処理に基づいて得られた成績 から,離島部・都市部間に格差解消の傾向が認められることを推定するに留まった。形成 的評価が不確定論的要素の多い評価であることを考慮すれば,このような結論になること

は止むを得ないことである。

 授業効果の判定の一つとして,診断的評価(事前テスト)と総括的評価(事後テスト)

とによる比較がある。両評価とも,形成的評価に比較して,不確定論的要素は極あて少な いから,この比較の方法が,現時点では最も適切かつ信頼性のある判定手段と推定され る。しかし,格差解消有無の判定手段・方法として,診断的評価・総括的評価の比較法を 採用するとして,NIGH:Tシステム方式で実験授業を実施した場合,これまでの研究2),3)

から,診断的評価では離島部学級より都市部学級が優位な成績になるであろうことが推察 されるが,結果として,そのような学習データが得られたとし,かつ総括的評価で離島部 学級と都市部学級の得点が同一あるいは殆んど同一であったとして,この実験授業の成績 から,NIGHTシステム適用により地域教育事情の格差解消があったと認めてよいであろ

うか。このように判定することに,何らの不都合もないであろうか。甚だ疑問である。

 上述のような格差解消を思わせる学習データが得られた場合,たしかに,事後テスト実 施時では,設定された目標致達度(この致達度をどのレベルに求めるかが重要な問題であ るが)において,少なくとも形式的には格差解消があったものと認めてよいであろう。し

      り      

かし,それは飽迄も,離島部・都市部の両学級で望ましい教授・学習(授業)あるいは無

       ロ         り         り

理のない教授・学習とか,すばらしい教授・学習が行なわれた場合に,はじめて認めてよ いのであって,離島部学級で望ましい授業が行なわれ,都市部学級で望ましくない授業が 行なわれた場合とか,あるいはその正反対の場合とかにおいて,仮令,総括的評価が同 一あるいは同一に近いとしても,それをもって格差解消を肯定する判定はできないであろ

う。

 そこで,望ましい授業の基準(指標),換言すれば,授業最適化の基準を設定する必要 性が生ずることとなる。

 本研究テーマのめざす目的の一つとして,この望ましい授業の基準設定がある。この基 準は,科学的であればあるほど,また理論的であればあるほど,その信頼性は高くなるで

あろう。

 以上述べたような望ましい授業の基準が科学的理論的に設定されるならば,NIGHTシ ステムの目的が,実際に目的通り教授・学習の場で達成されたかどうかを容易に判定でき ることは勿論,その応用利用的価値は,はかり知れないほど大きく,教育に関する諸分野 において,久しく待望されていた基準の一つと言うことができよう。

 教育の諸問題は,教育評価をすべてその基盤として展開されるものといっても過言では ないから,上述の望ましい授業の基準を設定するたあには,まず教育評価(あるいは授業 分析)が科学的理論的であらねばならない。

 望ましい授業の基準設定のため,また,科学的理論的教育評価法設定のため,筆者は,

一つの手だてとして,教育反応を生徒(P)が教育情報(M)を攻撃する反応としてとら え,この教育反応に化学における反応速度論を適用することを試みた。他方,教育反応の 主体が生徒であることは万人の認めるところであろうから,教育反応研究には生徒自体の 研究が必要で,生徒の内部諸活動性に神経情報理論の適用を試み,若干の新知見を得たの

(3)

213 速度論的モデルによる教育反応の研究1(竹友)

で報告する。

なお,本稿では,原則として一斉授業(学習)を対象に論じていることを予め述べておく。

2.教育反応と情報理論 2.1 教育反応

 教育は,生徒と教師(Ter)との情報交流としてとらえられるであろう(第1図, A)

生徒の人格陶冶,人格形成を主目的とした教育観の教育はこの形式で表わされる。教育の        目的が,生徒の人格陶冶,人格形       M  −r    成にあることは,現在および将来       1

Ter P ロ「er P

_一__@E

  A       B 第1図 教育反応のコミュニケーション・

   フローチャート

  Ter:教師   M:教育情報   P :生徒    E:教育評価

において,基本的に何ら変化する ことはないが,より効果的,より 能率的教育方法を論議するとなれ ば,生徒と教師との間に,教育情 報(M)と教育評価(E)とが介 在しているから,この両者をも加 えての考察が必要となる。これを フローチャートで示せば第1図の Bのようになる。、

 然るに,現代教育では,是非は別として生徒が如何に教育情報をより効果的・能率的に 吸収し,それを知識化し定着せしめるかに,研究の主流が向かっているし,また重要視さ れてもいる。これを肯定するならば,教育研究として,まず手がけられねばならないこと として,第1図のBにおける (P)…→[痘[ の部分,換言すれば,生徒が教育情報 を攻撃して生徒と教育情報とが反応する段階でなければならない。すなわち,生徒と教 育情報との反応の機構をまず明らかにする必要がある。しかし,従来の教育に関する諸研 究は,多くの場合,教育情報それ自体か,あるいは教育評価それ自体かのいずれかであっ た。生徒と教育情報との反応についての科学的研究は藤田ら4)の反応時間の研究などもあ るが,未だ認あられるほど多くはない。

 このように,教育反応を生徒と教育情報との反応と考えてよいが,教育反応は化学反応 のように物質と物質との反応と異なり,生徒が生体であるところに,その反応機構を解明 する難しさがある。しかし,生徒の教育上の本態を把握することができれば,この教育反 応の機構解明を科学的あるいは理論的に展開することは必ずしも不可能でなかろう。

 一方,最近における情報理論の進歩は著しく,生体情報理論の一つ,すなわち神経情報 理論においても,その理論展開に価値ある業績を見出すことができる。例えば,佐藤*は 医学の立場から,刺激・興奮の理論を研究し,閾の考え,つまり閾値(X麗,最:小有効刺 激)の逆数をもって興奮性(ε)とする式

  1ε=

  X麗 ……i1)

*本稿の記号には,原著で示されている記号を若干変更して用いたものがある。

(4)

を書きかえて,

X麗・ε=1

xσ一[ε]一1

第2図 「興奮性の法則」

   ブロック・ダイヤ    グラム(単位応答)

……i2)

とした。そして,rl」を単位応答とし,(2)式の示す事実を 興奮性の法則と称し,図式的に第2図であらわしている5)。

 また,氏は,X%のXπ倍刺激が生体に加えられ, X%刺 激の場合のr倍の応答があれば,

   Xπ・λ,a・a=r       ……(3>

となることを報告している7)・6)。ここに,λ、は判定活動性で,またaは変換活動性であ

る。

 そこで,教育反応を化学反応類似の反応としてとらえ,化学反応の諸法則を教育反応に 適用するための一つの手だてとして,上述の興奮性の法則を,生徒,教師とも「意欲性を        有するヒト生体」と解して,教育反応に適用すれば,

第3図 「意欲性の法則」

   のブロック・ダイ    ヤグラム  P :生徒の意欲性  Ter:教師の意欲性

   M・P=E         ……(4)

   E・Ter=M       ……(5)

となる。またそのブロック・ダイヤグラムは第3図で示され

る。

 このようにして,神経情報理論の「興奮性(活動性)の法 則」と同様,教授・学習の場に「意欲性の法則」が成立する

こととなる。

 前述のように,教育上最:も重要視される反応は,生徒と教 育情報との反応と考えられるから,本稿では,この生徒と教 育情報との反応を対象に,以下,論を展開する。

2.2 生徒の学習意欲性および学習意欲

 生徒を「学習意欲性(ε)を有するヒト生体」と定義すれば,いうまでもなく,学習意 欲性は生徒の内部活動性の一つとしてとらえることができるから,(4)式のPに代えεを用 いることができる。

M・ε=E ……i6)

 (6)式は,学習意欲性を有するヒト生体(生徒)に教育情報が刺激として加わり,生徒か ら,応答 (r)が出力され,それを基盤とした教育評価が表われてくることを示してい る。つまり,教育情報は生徒にとって刺激(Xπ)である。然るに,生徒の学習意欲性は,

(3)式から,学習意欲変換判定活動性(λ。)と学習意欲変換活動性(a)の積として表わ すことができる。このように,学習意欲変換判定活動性を設定することは,学習活動が神 経組織にもとつく活動であること,および神経線繊などに判定活動性の存在が一般に認め られていることなどから,充分妥当性があるものとしてよいであろう。よって,次式が成 立する。

(5)

215 速論度的モデルによる教育反応の研究1(竹友)

Xπ・λ,a・a=r ・・・…@(7)

 (7>式は,神経情報理論における佐藤6),7)の式(3)にほかならないが(7)式は,刺激により 学習意欲変換活動性が作働して,直接応答の表われることを示している。とすれば,この 学習意欲変換活動性は,学習能力(ア)なる活動性を,すでに潜在的に包括している活動 性と考えなくてはならないであろう。

 ところで,刺激により生徒が応答をなす学習活動は,学習意欲変換活動性により,まず 生徒の内部活動性としての学習意欲(T)が新たに生じ,この学習意欲で刺激(教育情 報)を攻撃して,応答なる出力を生ずるものと解されるから,(7)式は次のように書きかえ

られる。

Xη・田λ,a・aτ一T

Xη・T−r

。・・…@(8)

。・…@。(9)

 ここに,,λ。は(7)式の学習意欲変換判定活動性(λ。)にほかないが,特に学習意欲なる 点を強調して,このように表わしたものである。また,a,についても同様で, a,は(7)式 の学習意欲変換活動性(a)にほかならないが,学習意欲に変換する点を特に意識して a。としている。

 以上,論述してきたところがら明らかなように,(8)および(9)式の学習意欲(T)は,学 習能力なる活動性を,すでに潜在的に包括している活動性ということができる。したがっ て,(8)および(9)式の学習意欲(T)は,応答変換活動性(a,)と考えてよい。

 他方,学習意欲変換活動性が,学習能力と全く独立して存在すると仮定すれば,新たに 生ずる活動性,学習意欲は学習能力とは完全に独立することになる。このような学習意欲 を特に独立学習意欲(T )と称すれば,応答との問には次の関係が存在するであろう。

Xη・y・Tノ=r ……i1①

 ここに,レは生徒の学習能力である。よって,T, Tノによるそれぞれの学習でrが同一 であるとすれば,独立学習意欲(T )は,学習意欲(T)と次式の関係にあるだろう。

〃・Tノ=T ……i11)

 しかし,特殊な教育事例,例えば極あて学習能力の劣る生徒が一般的標準的教授・学習 の場で教育対象になっている場合や,学習内容が生徒の学習能力に対し極めて低いレベル にある場合など,を除き,学習意欲変換活動性が学習能力と無関係に完全独立して活動す る(つまり,独立学習意欲変換活動性にもとつく学習)とは考え難く,一般的には,両者 はシステム化された状態で存在するであろう。

 さて,(7),(8),(9)および(1①式をブロック・ダイヤグラムで示せば,第4図のように表わ すことができる。

 「学習意欲の法則」は学習意欲それ自体が応答変換活動性(第4図,右側上)と考えら れるから,「応答変換活動性の法則」に他ならない。同様に出力応答rが生ずる場合には

(第4図,左側上および右側下),すべて「応答変換活動性の法則」としてよい。学習意

(6)

xη丑r

.入。・a. T

xη一[:コーr

xη丑r

第4図 学習諸活動性の法則のブロック・ダイヤグラム  Xπ:刺激  r:応答  2、(=Tλa):学習意欲変  換判定活動性 a(一aの:学習意欲変換活動性  T:学習意欲  り:学習能力  Tノ:独立学習意欲  左側(上および下):「学習意欲性の法則」

 右側(上):「学習意欲の法則」

 右側(下):「学習能力・独立学習意欲積の法則」

2.3 刺激Xπおよび応答rの数量化

欲は応答rのような外部応答とは 異なり,内部応答として表われた 新しい活動性であることに注意し ておきたい。

 以上,生徒の学習意欲性を基盤 た,「学習意欲の法則」など学習 諸活動性について論じたが,教師 を「教授・学習指導意欲性を有す るヒト生体」と定義すれば,教師 の活動性についても,大よそ同様 の理論展開を行ない得ることはい うまでもない。

 佐藤8)は,生体の情報処理活動の基礎過程の研究で,一つの刺激量Xπ,生体の応答量 rは,いずれも一般に「確率変量」である考えを述べている。

 さて,教育の研究ではどのように考えるべきであろうか。教授・学習の場においては,

個々の生徒(P1, P,……P々)と教師および教育情報(M1, M、……M々)とは,全くばら ばらの状態で独立して存在しているわけではなく,個々の生徒は「教室環境・生徒」シス テムとでも表現すべき一つのシステムを形成している。したがって,個々の生徒に対する 刺激の強さ,速さ,および時間(以下,これらを一括して刺激とする)は,厳密には把握

し難い不規則なものとなる。また,生徒の学習意欲性も厳密には時々刻々変化しているか ら,決まった刺激に対する応答量も,これまた予測し難い側面がある。

 しかし,教育の場合には,自然環境に対する生体とやや異なり,上述のような不確定論 的面はあるが,刺激に関する限り,その殆んどを教師の活動によりコントロールすること ができる。ところで,教師の活動は,教師が教授・学習に意欲的であればあるほど,その 時代に適した一つの方向性をもつようになると思惟されるから(教師が生体である限り,

好むと好まざるに拘わらず,自然の摂理として,このような方向性が生ずる),教師によ る比較的ある定まった刺激活動が行なわれると考えてよいだろう。すなわち,教育上の刺 激は全く不確定なものではなく,全体的にはかなり確率の高い「確率変量」としてよいで あろう。特に,プログラム学習などにおいてはこの傾向が強くなる。したがって,刺激に 対応する応答についても,同様のことがいえる。しかし,「確率変量」であることには違

いないから,個々の教授・学習の場ごとに,同一の学習プログラムによる教授・学習を実 施したとしても(生徒の学習能力を平均的に大よそ同一として),形成的評価(授業時の チェック評価)に関しては教授・学習の場ごとに,その平均応答量はかなり異なった数値 を示すようになるであろう。筆者も,同一学習プログラムによる実験授業の形成的評価に ついては,教授・学習の場ごとに学級平均得点が異なり,その分布幅がかなりの範囲で変 動することを認めている1)。

 さて,刺激,応答の数量化であるが,刺激,応答が上述のような「確率変量」であるこ とから,その数量化は簡単ではない。教師を媒介しての教育情報による刺激の数量化は,

(7)

217 速度論的モデルによる教育反応の研究1(竹友)

実験医学や実験心理学の音,光などと異なり,厳密にはそれを数量化することは不可能と いってさえ過言でない。

 しかし,刺激,応答の数量化について,教育上これを理学的思考に基づき真ッ向正面か ら必ずしも取りくむ必要はないのであって,教育工学的に搦手から攻めて特に不都合を生 ずることはない。もし,そのような不都合があれば,その不都合を見出したときに別の手 だてを考え用意すればよいであろう。

 すなわち,教育上の刺激は生徒に対し,常に最適最大量(刺激・生体・応答理論の最小 有効刺激量)が与えられていると仮定すればよいであろう。教育評価や学習評価は一般に 100点満点で実施されているから,このIOO点満点評価法を採用すれば,最適最大刺激量 は100(点)となる。つまり,刺激Xπは常に100(点)であり,応答rは常に正答百分率 であらわすことができる。

3,化学反応速度論の教育反応への適用

3.1 学習障壁(学習抵抗エネルギー)およびその単位

 教育上,最:も重要な反応は,生徒(P)が教育情報(M)を学習意欲(T)で攻撃し て,教育情報の内容を生徒が吸収同化した状態(PM)に到達する段階としてよい。今,

教育情報が,未だ教師の手のはいっていない,つまり生徒に対し,かなり異質的な情報で あるとすれば,この反応は次式の如く表わし得る。

   Ter

P+M一一ロ一→PM ……i12

 ここに,Sは教具(黒板, TVなど)を,またTerは教師をそれぞれあらわしている。

 教師は,この教育反応において化学反応上の所謂触媒作用をなしているものと考えられ る。つまり,教師は,教育情報および教具などの基礎的実践的研究に基づき,元来,生徒 にとって異質的である教育情報を,その知的内容を変えることなく,生徒にとって同質的 な教育情報に変換しており,また,一般に教師の存在が生徒の学習に心理面などでも効果 的であることなどから,学習の場における教師の役割は触媒作用としてよいであろう。

 一方,教具は教師の役割をさらに効果的ならしめる作用をもち,助触媒的作用をもつも のとしてよいであろう。

 このように,教師が触媒,教具が助触媒であるということは,(12式の反応に,生徒が PM状態に到達するために生徒が打克たねばならない障壁(化学反応の活性化エネルギ ー)の存在することを示唆している。この障壁を学習障壁 (あるいは学習抵抗エネルギ ー)とすれば,学習障壁(鑑)は第5図のように表わし得る。つまり,学習意欲性(ε)を 有するヒト生体(P)に,教育情報(M)から最小有効刺激(Xのが与えられたとすれ ば,教育反応開始前の状態は,化学反応の面から<P+M>で,情報理論の面から〈ε〉

でそれぞれ示され得るし,また,教育反応終了後の状態は,化学反応の面から<PM>で,

情報理論の面から〈X4・ε〉でそれぞれ示され得る。したがって学習障壁は,この〈P+

M>状態と<PM>状態の中間に,あるいは〈ε〉状態と〈Xπ・ε〉状態の中間に位置す る障壁の山とすることができる。

 教育反応の前後における生徒の学習能力を比較するため,反応前における生徒の学習能

(8)

善1

慧i

 …

 0 P+M

P・M

(3)

 .〈 細

物」レ 、農,.

E

ε

     開始       終了         反応過程

第5図学習障壁(E)およびそのディメンション  P+M:反応開始前における生徒の学習能力     の状態

 P×M:生徒の活性化状態

 PM  :反応終了後における生徒の学習能力     の状態

 ε  :生徒の学習意欲性  X麗  :最小有効刺激

 (1)(2×3):学習障壁の例,(1)はE−8(u)

    (2)1まE=2.7(u), (3)1まE 1(u)

生徒の僅かな安定化を表わしている。

力を仮りに「0」とすれば,反応後におけ る学習能力は,単位応答(unit response)

すなわち,X㌍ε=ユの「1」だけレベ ルアップしたことになる。そこで,この 単位応答量すなわちrl」を学習障壁の 基準値とすることが自然であり,かつ最 も論理的と考えられるから,学習障壁の ディメンションを単位応答のUをもって 表わすことができる。このようにディメ

ンションを設定すれば,学習障壁の大き さは,例えば,「lu」,「2u」, 「2.7u」

……フように表わすことができる。すな わち,学習障壁の数量化が可能と:なる。

 <P×M>状態は生徒の活性化状態で ある。活性化状態では,生徒の緊張は反 応過程中最高となる。したがって,活性 化状態は極めて不安定な状態といえる。

第5図に示される障壁の山頂における僅 かな窪みは,教育情報を吸収しかかった ことによる緊張の僅かな低下,すなわち

 教育情報が生徒にとって完全に同質的である場合には,生徒が活性化状態に達すれば生 徒の知的状態は,〈PM>状態側に進む。つまり,情報の吸収が起こることとなる。しか

し,異質的である場合には,必ずしも<PM>状態側に進むとは限らず,<P+M>状態 側に逆もどりする可能性も充分ある。

 学習障壁は,学習意欲性の小さい生徒ほど大きくなると考えられ,その大きさがあまり に過大であれば学習障壁を乗越えることは難しくなる。しかし,学習意欲が特に大なる場 合には,大きな学習障壁を乗越えることも不可能ではなかろう。したがって,教授・学習 時に学習意欲性の小さい生徒には,学習意欲(あるいは独立学習意欲,2.2)を大ならし

めるような刺激が必要となる。

 然るに,一方,学習時に教師の存在があれば,第5図の経路(1)あるいは経路(2)

を経て,<PM>状態に到達することも可能である。これは,教師が触媒的活動を行なう 場合であって,(3)の経路より(2)の経路を,(2)の経路より(1)の経路をとる方が,

より容易に<PM>状態に到達し得ることはいうまでもない。すなわち,学習障壁がユ

(u)の場には,学習意欲(あるいは独立学習意欲)があれば,そこに何らの抵抗もなく,

<PM>状態となり得る。

 以上の論述より明らかなように,学習能力の非常に大きい生徒の学習障壁は1(U)であ るということができる。

(9)

219 速度的モデルによる教育反応の研究1(竹友)

 3.2 教育反応次数および教育反応速度定数

 よく知られているように,化学反応の速度は反応を起こす物質の濃度によって変化す る。すなわち,

    αA+βB一→α!Aノ+βノB       ……(13 で表わされる化学反応においては,その反応速度ηは,

    τ=k〔A〕α〔B〕β       ……(1の で与えられる。ここに,〔〕は濃度を表わす。kは反応物質の濃度に無関係な比例定数で 速度定数と称されている。kは反応原系の各物質の濃度が 1モル/1 の時の反応速度 で,反応温度が一定であれば,その反応に固有の値となる。また,α÷β一n のnは反 応次数と称されており,反応の機構を知る上で重要な要素となっている。

 (⑳式で,α=1,β=0 なる場合には,τ一k〔A〕 となる。このときの速度は,

       d〔A〕

      =k〔A〕       ……(15)

     =一         dt

で表わされる。原系の濃度が最初αで,時間tの間に濃度んだけ反応したとすれば,t時 間後の〔A〕は α一記 であるから,

・一」(窟互一k(・一の

……i16)

すなわち,

    ・一一審一k(α一κ)     ……(1の

で表わすことができる。

 以上,化学反応速度について公然の事実であることを,教育反応速度の理論展開を容易 ならしめる手続として,初歩的かつ簡単に述べた。

 3.2.1 教育反応速度

 教育反応速度を取りあつかうにあたり,その簡易化のため,仮りに,生徒の学習能力を

〔P〕,教育情報のレベルを〔M〕,教師の教授・学習指導能力を〔Ter〕,教具のレベ ルを〔S〕,学習意欲(T)を化学反応における温度とする。

      

 さて,一人の生徒の学習能力も単に学習能力と表現すれば学習能力とはある一つの能力 として纒められるが,これを詳細に分析すれば,学習能力〔P〕は素学習能力〔P1〕,

〔P,〕……〔P々〕の集合体よりなることがわかる。すなわち,学習能力〔P〕は,

    〔P〕=〔P1〕十〔P2〕十…〔P々〕       ……(17)

となる。いま,便宜上粗い近似として,

    〔P1〕 = 〔P2:〕 =……… 〔Pん〕

     P1−P2=………Pん

(10)

とすれば,〔P)=・ん〔P1〕,また P=んP、となる。そこで,前述の学習能力〔P〕を 教育反応速度に用いるたあ,これも便宜上,〔P、〕を〔P〕,またP1をPとしてそれぞ れ表わせば*,生徒は教育情報を 々P、,すなわち,ゐP で攻撃することとなる。このよ

うにして,化学反応式⑱の αA に似た項を導くことができる。

 〔M〕,〔Ter〕,および〔S〕についてもそれぞれ同様の手続きをとると,生徒の学 習意欲が一定であれば,教育反応速度ηは,

    τ=k〔P〕しも〔M〕β〔Ter〕γ〔S〕δ        ……(1鋤 となる。

 教育情報を標準的なものとすれば,〔M〕=1,また,教師および教具も標準的なもの とすれば,それぞれ,〔Ter〕=1,〔S〕=1 となる。

 したがって,教育反応速度は生徒の学習能力のみに依存することとなるから, α一n となる。よって,

η一k〔P〕n ……i19

が得られる。

 生徒には,いろいろな学習能力を有するものがおり,これを一律化できないが,一応,

標準的学習能力をもった生徒が教育対象になったとすれば,〔P〕一1 であるから,

一k となる。つまり,標準的生徒を対象に,標準的教師が標準的教具を用いて,標準 的教育情報を教授伝達(教育)しょうとする場合にあらわれる教育反応速度が教育反応速 度定数そのものに他ならない。

 教育反応では,生徒はt時間後に 〔X〕 なる学習能力を新しく獲i得するから,教育開 始直前の生徒の学習能力を 〔P。〕 とすれば,(19)式は,

・一d圏閨l一k〔P。+X〕・

・・・…@ (20)

となる。

3.2.2 教育反応次数と吸収教育情報量変化曲線

 教育により新しく生徒に吸収された教育情報量(以下,吸収教育情報量)が,そのまま 生徒の知識量のアップとか学習能力のアップになるものとは解し難いが,現在のところ,

吸収教育情報量の測定は可能であっても,学習能力の適当な測定法および計量化の方法は 実現していないようであるから,吸収教育情報量が,近似的に学習能力のアップそのもの

とすれば,⑳式の 〔X〕 を吸収教育情報量とすることが可能である。この 〔X〕 は教 育の過程において新しく生徒が獲得したものであるから,これを △X とする。一方,

⑳式の 〔P。〕 は教育開始前に生徒が保持していた情報量としなければならないから,

これをX。とすれば,教育の過程中に生徒が保持する情報量(X)は,

*係数αやβが必ず反応の次数となるものではない。すなわち,n次反応として求められた反応は 必ずしもn分子の衝突によって起こることを意味していない。したがって,このような手続きを とっても,結果的には,特に不都合を生ずることはないであろう。

(11)

221 速度論的モデルによる教育反応の研究1(竹友)

X−Xo十△X ……S

となる。よって(2①式は,

  dX    =k(Xo十△X)n

τ匹  dt ……S

τ一一Q一kX・

……

となる。

 教育においては,X。も効率的教授・学習法を設計する点で極めて主要であるが,それ よりもさらに重要視される量は △X である。特に形成的評価においては,△X の問 題一つに限られるとしても過言ではないであろう。さらに,いま一つ,、(22ン式の X。 と

△X との定量的あるいは質的関係を適切かつ確実に実測してとらえることは困難である から,教育反応次数などを求める手だての一つとして,教育工学的に,また以下の理由に より,△X のみをとりあげて論ずる方が便利かつより実際的であろう。

 すなわち,このような手だてをとっても,教授・学習の実際の場では,多くの場合,学 年別に学級が編成されており,しかも,その学級は同一地域の生徒で編成され,かつその 教授・学習が実施されるまで同一の教育がなされて来ているから,多くの生徒のX。はマ

クロ的に殆んど同一とみなしてよいし,さらに,少なくとも形成的評価においては,X。

より△X による影響の方が,非常に大きいと思惟されるから,近似的な教育反応次数な どを求めるうえで,特に大きな不都合はないであろう。

 なお,ある特定の生徒が,提示された教育情報について,その内容を完全に知識として すでに吸収保持している場合,つまり,生徒の学習能力に比し教育情報のレベルが極端に 低い場合には,教育反応速度に及ぼす影響因子はX。のみであり,問題点されそうでもあ

るが,このような生徒は,本来,教授・学習の対象外者であってしかるべきである。

 以上のことは,要するに,(22)式を

・一」無難一k(△X)・

・・・…@ (24)

として取扱ってよいことを意味している。

 さて,そこで,吸収教育情報量の時系列的パターンを吸収教育情報量変化曲線と称すれ

 吸  収  教  育  轟

(。要

       時間(匂 第6図 教育反応次数と吸収教育情報量変化曲線

ば,教育反応次数と吸収教育情報量変化 曲線との関係は,恐らく第6図で示され るようになるであろう。

 n−O の教育反応は,生徒の学習能 力に対し教育情報のレベルが,終始均質 的な場合と考えられ,この際,教育反応 速度定数が比較的大であるならば,一般 言針唇,.些騨望魯、啄亨が行なわ れたものと解してよいであろう。しかし,

生徒の学習能力に比し教育情報のレベル

(12)

が極端に低い場合にも,生徒に学習意欲があれば,n−O となり,教育反応速度定数も 大きな値となる。

 一方,n〈0の教育反応は,生徒の学習能力に対し教育情報のレベルが,特に教授・学 習の後半部において,高度に過ぎる場合と考えられる。また,教師の活動が望まし触媒的 作用でなかった場合にも,このような反応を呈するであろう。

 また,n>O の教育反応は,教授・学習の場で,よい意味での無理が行なわれた場合 とか,あるいは教授学習の前半部に無理があった場合などに生じるものと考えられる。い ずれにしても,n>0 の教育反応においては,吸収教育情報の定着性を問題としなけれ ばならないことも有り得るのではなかろうか。

 なお,反応次数を求める方法として,化学反応の場合には,積分法9),微分法10),あ るいは初速度法11)などがあるが,教育反応においても,これらの方法は充分適用可能で あろう。微分法は粗い近似値を求める方法として知られているが,比較的簡単に求め得る ことから,教育反応においては,この微分法が実際的であるものと考えられる。また,教 育反応においては教育反応次数が0次もしくは近似的にO次であるような場合。教育反応 次数および教育反応速度定数を吸収教育情報量変化曲線を基盤に作図的に求めることも可 能であろう。その実際例については,「5.次定数評価に関する実験授業例」において示

す。

3.2.3 学習能力についての補遺事項

 教育反応速度を論及するにあたり,化学反応の温度およびモル濃度をそれぞれ生徒の学 習意欲および学習能力そのものとして取扱った。教育反応次数や教育反応速度定数,ある いは教育反応速度を問題としてとりあげる場合には,この考え方を展開して得られる結果 に大きな誤りは,恐らくないであろうと思惟される。特に,教授・学習が自然な状態で行 なわれる場合には,このようにいい得るだろう。しかし,学習能力そのものを問題として

とりあげる場合,例えば学習能力の計量化というようなことになると,温度が学習意欲と する仮定のもとで,モル濃度が学習能力とする考え方を単純に化学の諸法則にあてはめ て,教育に関する諸法則を亡びきだすことには甚だ大きな疑問がある*。

 本稿では,教育反応速度や,教育反応次数,および教育反応速度定数を主目的に論じて

       り      

いるから,これらの計量化に問題がない範囲内のこととして,また,少なくとも形式的に 矛盾がなく,かつ理論の展開が容易であることからして,「モル濃度が学習能力」とする 考えを取りいれた。

 化学における温度を学習意欲と仮定する場合,モル濃度あるいはモル数と学習能力との 間に,どのような関連性があるか,また学習能力計量化の可能性など学習能力そのものに ついての報告は他の機会に行なう予定である。

*一斉授業は,生徒1人1人の学習能力を特に問題とすることなく,平均的学習能力を基盤に行な われている。だから,自然の法則・摂理を重視する側からみれば,人為的であり,無理のある教 授・学習形態と考えられる。このような一斉授業について,温度が学習意欲とする仮定のもとで,

モル濃度が学習能力とする考え方には,理論モデルが自然科学の理論であるだけに,矛盾の生ず る恐れがあろう。もし,不都合な点が明らかになれば,それを補うべき手だてを,教育の実際に そくして行なえばよいであろう。

(13)

223 速度論的モデルによる教育反応の研究1(竹友)

4.教育反応次数および教育反応速度定数による教育評価法

 無理を伴なわい,しかも効率的な教授・学習を設計し,それを実施することは,ひと しく,すべての教師が強く願っているところである。しかし,これは,実際問題として非 常に難しいことであるのみならず,現在のところ,そのような望ましい教授・学習が行な われたかどうかの判断の基準になる指標さえも,教育界に見出すことはできない。

 然るに,3.2において論じたように,教育反応次数nを求めることにより,如何なる無 理が行なわれたか,また,教育情報が生徒にとって,どの程度同質化されたものであった か,あるいは教授・学習過程における教育情報の均質化の程度とか教師の活動のバラツキ など,換言すれば教育反応の機構に影響を及ぼす諸要素の働き方を明らかにすることがで きる可能性がある。

 教育情報が標準的かつ同質化されており,教師が標準的で,生徒の応答変換活動性(学 習意欲性)が活発に作動している場合には,教育反応次数は恐らく0次となるであろう。

教育反応次数が0次であることは,生徒の学習能力とは無関係に,生徒ごとに,教育反応 が,ある定数(教育反応速度定数)をもって進行することを意味する。この意味するとこ ろは,ブルーナーが12),「知的性格をそのままに保って,発達のどの段階のどの子どもに も効果的に教えることができる」と仮説的に述べていることと,近似的に一致することで あろう。このことは,教授・学習の研究において,本質的に重要なことである。しかし,

実際的なこととしては前述のように,効果的に教えたかどうかの判断の基準をどのように 求めるか,これが問題である。

 とにかく,生徒の学習能力と無関係に,教育反応を進め得るセとは,教授・学習法を考 えるうえで極めて重要視されるべきことである。したがって,教育反応次数が○次である ようなカリキュラムの開発研究は勿論,各教師は,それぞれの教室内生徒の実態を充分把 握し,教育情報の標準化,同質化(あるいは興味化),およびこれらの教授・学習過程内 における均質化などについて充分留意研究する必要がある。

 教育反応次数が0次でないような教育反応があれば,その教育は,特別の意図目的をも って実施された教授・学習法によるものか,あるいは,教育情報の同質化や興味化の程度 が教授・学習過程を通じて,かなり一様でない教授・学習と判断してよい。すなわち,均 質な教授・学習ではないわけで,このような教授・学習は,一般論として,少なくとも無 難な教授・学習とはいい難いであろう。

 勿論,教授・学習過程のある期間,学習意欲とまではいわないまでも,興味性の点で盛 りあがりの起こるような教授・学習の設計を否定するものではない。むしろ,教授・学習 に教育としてクライマックスのある場面を設計することは必要でもあろう。しかし,少な くとも,どのような教授・学習法による授業であれ,効率性などからして,生徒応答量

(得点)が教授・学習の期間を通じて,一様に分布するよう注意されなければならないこ とも亦,たしかではなかろうか。

 以上,論じたことから明らかなように,教育反応の機構をも考慮した教育評価が,評価 法としては望ましく,したがって,教育評価は教育反応次数と教育反応速度定数をもって 行なわれるべきであろう。

 教育反応次数と教育反応速度定数をもって評価とする方法(以下,次定数評価法)は,

(14)

教師が教室ごとに単独に実施し,それを処理するより,教育工学センターなど効率的組織 を有する機関に依頼し迅速に学習データを処理して,はじめて実際的評価法となるであろ

う。

 このような次定数評価は,教授・学習それ自身,あるいはカリキュラムそれ自身の診断

・評価となることは勿論のこと,教育情報の同質化,教師の指導能力(指導の適否)など をも加味した生徒の学習診断・評価となることは,これまで論じたことから充分明らかで ある。したがって,カリキュラム開発研究,あるいは教材研究など教育に関する広範なる 諸研究にも充分応用し得る評価法と判断してよい。

 望ましい教授・学習が行なわれたかどうかの判断の基準になる指標の一つは,教育反応 次数が0次で,教育反応速度定数が比較的大きな値であることを,念のため繰り返えしあ げておく。

5.次定数評価に関する実験血温例

 NIGHTシステムの中学校理科実験授業が本格的に実施されたのは,1973年でその年に は,学習プログラム・単元「力のはたらき」(16時間分)による実験授業が試みられた1)。

続いて,1974年に修正学習プログラム・単元「力のはたらき」 (16時間分)および学習プ ログラム・単元「電流」 (17時間分),また1975年には再修正学習フ。ログラム・単元「力 のはたらき」 (19時間分,レディネス・事前・事後テストを含む)および修正学習プログ ラム・単元「電流」(17時間分)による実験授業が,それぞれ都市部および離島部の各中 学校の各学級で行なわれた。

 そこで,これらのうち,1974年に実施された学習フ。ログラム・単元「力のはたらき」お よび単元「電流」による実験授業から得られた授業時チェックポイントの学習データ(形 成的評価)に,次定数評価法の適用を試みた。

 その結果,これら両学習プログラムによる実験授業では,殆んどの生徒において反応次 数が0次もしくは近似的に0次である成績を得た。

 以下,分析の手順,分析の結果などについて記載する。

 5.1 吸収教育情報量変化曲線の作成手順

 教育反応のある経過時における生徒の吸収教育情報量は      為

    Σr1       ……(25)

    i=1

で表わすことができる。ここに,rは生徒の単位応答量*で素吸収教育情報量となる。した がって,rは,教育反応において正答でチェックポイント(問題)を通過すれば「1」と        々

なる。誤答あるいは無答の場合には r−O となる。Σr・のrを単位応答量としたが,

      i=1

生徒に加えられた刺激(教育情報)が最小有効刺激すなわち最適最大刺激であったかどう かは判別し得ない。教育上,2.3で論じたように最適最大刺激が生徒に加えられたとして いるにすぎない。したがって,rが単位応答量であるとはいえ, r−O となることは,

*本稿p214および218を参照

(15)

225 速度論的モデルによる教育反応の研究1(竹友)

しばしば起こり得る。

      ん

 さて,吸収教育情報量変化曲線の作成にあたっては,タテ軸に Σr王を,ヨコ軸に時        i=1

間tをとればよいが,一斉授業において,チェックポイント通過までの授業経過時間を常 に正しく測定することは,教育現場にとって煩雑であり,また学習データ処理上でも非常 に手数がかかり実際的でない。特に,NIGHTシステムのように多数の学級について学習 データを処理する場合,コンピュータによる処理とはいえ,学習データ処理において,こ のチェックポイント通過までの経過時間処理が律速段階になるであろうことは充分予想さ

れる。

 さらに,ペーパーテストの解答に要する時間は貴重なる学習データとなり得るであろう が,一斉授業で,仮令チェックポイント通過までの経過時間を測定したとしても,その測 定データが,教育反応次数や教育反応速度定数を求めるうえで,どれだけの必要性あるい

は貴重性を有するか疑問でもある。

 そこで,2.3で論じたように搦手から取りくむことを考え,吹収教育情報量変化曲線を 求める作業手順として,ヨコ軸の時間tのかわりに,チェックポイント番号をもってすれ ば,吸収教育情報量変化曲線を簡単に作図することができる。

 このようにして得られた吸収教育情報量変化曲線から,教育反応次数および教育反応速 度定数を求めることが可能となる。

 しかし,この作業から得られる速度は,物理学あるいは化学反応速度論で取りあつかう 速度と異なり,単位チェックポイントあたりの吸収教育情報量となる。

5.2 教育反応次数指標(n、)

 教育反応次数が0次である場合には,吸収教育情報量変化曲線から,教育反応速度定数 を簡単に求めることができる。また,教育反応次数が0次であるか,0次でないかも,同 様に簡単に知ることができる。しかし教育反応次数nが,n>0 あるいはn〈O であ る場合には,微分法10)などにより,教育反応次数および教育反応速度定数を特に求めな ければならない。

 最も簡単な微分法によるとしても,この作業は,教育現場では勿論のこと,多数の生徒 1人1人の分析であると,現在のところ機能化された効率的組織機関(例えば教育工学セ ンター)においても殆んど不可能である。

 そこで,教育反応次数の物差しとなるような指標を新しく設定することができれば実利 的である。そのような指標として,教育反応次数指標(n,)を設計した。このn、につい ては,今後充分に検討を加えなければならないであろうが,一応,次式で求めるとよいで

あろう。

n、一(r/IOk)一IO ・・・…@ (26)

 ここに,rは生徒の得点(評価IOO点満点),kは教育反応速度定数である。ただし,

kは便宜上,教育反応次数が0次であるものと仮定して,吸収教育情報量変化曲線を基盤 に作図的に求あるものとする。

 さて,

(16)

    n≒n、       ……鋤

であるよう意図して(26)式が設定されたものであるから,教育反応次数指標を求めることに より,粗い近似値としての教育反応次数を推定することができる。つまり,大まかにいえ ば,教育反応次数は,n,>O で正の次数傾向を, n、<0 で負の次数傾向を,また,

n、=0 あるいは n、≒0 で0次傾向を,それぞれ示すことになるであろう。

5.3 修正学習プログラム・単元「カのはたらき」による実験授業の教育反応次数およ   び教育反応速度定数

 5.3.1 修正学習プログラム・単元「力のはたらき」 (16時間分,中1・理料)につい    て

 「力のはたらき」の学習プログラム作成の基本的立場,単元の内容構造および指導計画

,などについては,前報1)ですでに述べた。修正学習プログラムについても,これらは殆ん ど同じである。また,学習プログラム・指導案フローチャートの一部(第1,2授業時)

についても前回1)に掲載しておいた。

 ここでは,修正学習プログラム・単元「力のはたらき」の第3授業時(1時間分)の指 導案フローチャート(設号1),その教材(設号J)および評価(記号K)などを本稿未 尾の付録(その1)に示しておく。

 なお,本修正学習プログラムのフローチャートには,形成的評価のため,チェックの場 所を総数54ポイント設定している。

 5.3.2 実験授業および授業分析

 本修正学習プログラムによる実験授業に関して,学習データの収集および学習データの コンピュータ (TOSBAC−40C)による処理がともに可能であったものは,諸種トラブル のたあ,離島部の2中学校分に留まった*。

 本稿では,このうちの1学級について,生徒のユ人1人の教育反応次数および教育反応 速度定数などについて論ずる。

 1974年度に離島部の1中学校1年1組(生徒数39名,M18名, F21名)で実施された本 修正学習プログラムによる一斉授業の学習データ分析(教育反応次数および教育反応速度 定数など)の結果を,第1表および第7図(本稿末尾)にそれぞれ示す。ただし,教育反 応速度定数は教育反応次数が0次であると仮定して求めた。

 教育反応次数指標n、が,n、一〇 である生徒の教育反応次数を完全0次とすれば,教 育反応次数が完全0次である生徒の学級にしめる割合は第2表のようである。

 第2表より明らかなように,完全O次生徒は約26%であった。しかし,第7図の吸収教 育情報量変化曲終を詳細に観察分析すれば,一〇.9≦n、≦0.9である生徒は,実際に,ま

た近似的にその教育反応次数は0次と推定することが妥当であろうから,一〇.9≦n、≦O.9 である生徒の教育反応次数を近似的に0次とすれば,教育反応次数が0次である生徒は 89.74%にまでおよんだ(第3表)。

*これらのデータは磁気テープにおさあられ,本学部付属教育工学センターに保存されておる。

(17)

227 速度論的モデルによる教育反応の研究1(竹友)

第1表 修正学習プログラム・単元「力のはたらき」 (16時間)の反応次数および反応速度定数

(1974年度・離島部・1中学校1年1組について)

   ※1)

生徒   教育 番号 反応

:No 次数     n

 ※2)※3)

教育反    得点 応速度   k   「定数

教育反 応次数 指標   nI

向丁 合次 l1

12 13 14 15 16 21 22 23 24 25 26 27 31 32 33 34 35 38 41

≒0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0

0.88 0.90 0.90 0.95 0.39 0.92 0.90 0.93 0.94 0.94 0.90 0.90 0.94 0.89 0,89 0.84 0.79 0.90

90 90 90 96 39 89 90 94 94 94 92 90 94 87 88 88 79 88

0.2 0.0 0.0 0.1 0.0 一〇.3 0.0 0.1 0.0 0.0 0.2 0.0 0.0 一〇.2

−0.1  0.5  0。0

−0.2

n>O n=O n=O n>O n=O n<O n=O n>O n=O n=O n>O n=O n=O n〈O n<O n>O n−O 反応なし n<0

(長欠?)

 0    0.91   90  −0.1   n<0

篶建議鍔

N・轡定数k・

教育反    次数 応次数 指標    傾向   nI 42

43 44 45 46 48 51 52 53 54 55 56 58 61 62 63 64 65 66

0 0 0 0 0 反応なし

(長欠?)

0.90  92 0.95  96 0.86  88 0.84  88 0.96  87

一2   0.43   35 0   0.89  88 0   0.80  86 0   0.80  81 0   0.85  87 0   0.90  90 反応なし

(長欠?)

0 0 0 0 0 0

平均  0

0.82  85 0.70  72 0.74  73 0.86  88 0.87  90 0.76  72

0.2 n>0 0.1 n>0 0.2 n>0 0.5 n>0

−0.9 n〈0

一1.9

−0.1 0.8 0.1 0,2 0.0

n<O n〈O n>O n>O n>O n=0  0.4 n>0  0。3 n>0

−0.1 n〈0  0.2 n>0 0.3 n>0

−0.5 n<0

0.0

※1)n、より推定した粗い近似次数 瀬3) 10(庶満点評価

※2)教育反応次数を0次として求めた値

第2表 修正学習プログラム・単元     「力のはたらき」の教育反応     次数完全O次生徒百分率

   (1974年度・離島部・1中学校ユ年1組)

第3表 修正学習プログラム・単元「力     のはたらき」の教育反応次数近     似O次生徒百分率

   (1974年度・離島部・1中学校1年1組)

教育反応 次  数

生徒数

(人)

百分率     備 考(%) 教育反応 生徒数百分率

次数(人)(%) 備 考 完全0次

正傾向次数 負傾向次数 反応なし*

10 16 10 3

26.32 41.03 26.32 7.69

nI=O

n、≧O.1 n、≦一〇.!

近似0次*1)

正傾向次数 負傾向次数 反応なし*2)

35 0 1 3

89,74 0.0 2.56 7.69

一〇.9≦;nl≦○.9

 n、≧1.O  n、≦一1.0

*長期欠席者(?) *1)完全0次生徒を含む

*2)長期欠席者(?)

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C. 

の原文は“ Intellectual and religious ”となっており、キリスト教に基づく 高邁な全人教育の理想が読みとれます。.

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き