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(1)

現代アメリカ企業の支配構造 : E.S.ハーマンの研 究の検討

著者 中本 悟

雑誌名 靜岡大学法経研究

巻 35

号 3‑4

ページ 308‑273

発行年 1987‑03‑14

出版者 静岡大学法経学会

URL http://doi.org/10.14945/00008667

(2)

現代 アメ リカ企業の支配構造

一一EOS,ハ ーマ ンの研究の検討一―

 

は じ め に

ハ ーマンの所説の概要

 ハーマンの所説の意義――研究史 とのかかわ りで

 ハーマンの所説の問題点 と研究の新展開 むすびにかえて

は じ め に

現代企業を支配する者は誰か。そして,ま,現代資本主義における支配的 資本形態は,いかなるカテゴリーをもって把握されるべきか,とい う問題は古 くて新しい問題であ り,それをめ ぐる研究は,きわめて論争的な性格をおびて きた。このいわゆる金融資本論争は,おおむね巨大企業を支配する者は誰か, とい う「巨大企業における所有 と支配」という問題 と,それ と関連して,企 間関係,なかでも産業企業 と銀行企業 との関係をどうとらえるか とい う点を,

(1)

その中心課題 としてきた といってよいる

小稿では,こ うした課題に真正面か ら取 り組んだエ ドワー ド・S・ ハーマン の最近の著作『 企業支配 と企業権力』(Edwtt S.Herm叩,0り励 α鵬笏孝

Cοψ ″励 P銀グ,N:Y。,Cambridge University Press,1981)の 検 討を通 じて, 現 代 ア メ リカ企業 におけ る支配構造 について探 ってみたい。 ハ ‐マ ンの所説 を

と りあげ るのは,彼の研究が この分野 において きわめて高い水準 にあ る,と (308)  189

(3)

われ るか らであ り,した が って また,われわれが現代 アメ リカ金融資本 を分析 す るにあた って,重要 な論 点がそ こに提示 され てい る と考 え られ る か ら で あ る。 以下,ハーマ ンの所説 の概要を紹介 し,つぎにそ の意義 と問題 点 を 検 討 ,最後 に,今後われわれが金融資本分析 をす る場合 の基本的視角 につ いての べ る。

ハ ー マ ンの所 説 の概 要

あらか じめ,この著作の章別構成を示 してお く。

1章 企業支配 :背景 と問題点 2章 支配 と戦略的地位

3章 巨大企業の支配:その歴史的変遷 と現状 4章 巨大企業の金融支配

5章 政府 と巨大企業

6章 権力,責,利害の対立

なお,われわれは,巨大企業の所有 と支配の構造を論 じている第3章,お び企業 と銀行 との関係を論 じている第4章,第6章を中心に とりあげる。

1.誰が企業を支配するのか

まず第1章では,企業支配についての諸見解を概括 してい る。若して,ハ マンは,経営者支配説を高 く評価 し,最終的に正 しい としなが らも,その理論 的前提やrFc営者 の権力(a■thOr辻,)の決定要因や,またその制限要因について はあいまいだ とす る (p.14。 以下ページ数は同著作のものである)。

そ こで第2章では積極的に経営者支配の源泉について論 じる。 まず,ハーヤ

ンは企業 の支配構造を分析す るにあた って,企業の意志決定には内部,外部の

(4)

法経研究

諸 力が関与す るが,「企業 とそ の支配を分析す るには,企業 を閉鎖体系(C10Sed

system)として あつか うのが有効な第1次的接近 であ り,相対的 に固定的 な背 後の強制力は無視されるべ き」(p.18)とす るのである。そ して,支配概念を次 のように規定す る。ハーマンによれば,「文字通 りの支配」(1比erd∞ntrol)と ,企業 の重要な意思決定 (生産物,市,投資分野,投資額,会社幹部の選 出な どについて)を下す力 (pOWer)であ りこれ とは 区 別 さ れ る強 制 力 (pOWer tO constnin)と は,配当や設備投資 の額な どのい くつかの意思決定に あた って制限を加えた り,会社幹部選出にあた っての拒否す る力をい う(p.19)。

そ して,この両者は,「積極的権力J(actiVe power)と「潜在的権力J(latent pOWer)に対応す るもの とされ る。 さらにハーマンは,誰 (WhO)支配す るか とい う問題 と,支配をいかに (hOW)獲得 し,維持す るか とい う機構 と手 段の問題は区別 されるべ きだ として,株式分散か ら少数持株支配 (1〜5%)

を主張す る見解を批判す る。すなわち,少数持株主が,支配可能なのは,株 所有 とい う手段によってではな く,すでに「 戦略的地位」(Strategic POsitiOn) にあるがゆえに支配す るのであ り,持株は,その支配力を補強す るものだ とぷ な。

ここで,ハーマンがい う,この支配の根拠 としての戦略的地位 とは,会社幹 (tOp mtta7gement,toP offiCer)の 地位なのであ り,通常いわれるような法 的な意味での力の所在地 としての重役会ではない。 とい うのは,重役会 自身が top officerによって決定されるか らである。

ハ ーマンは,以上の基本的視角にもとづ き,ひきつづ き第3章,巨大企業 の支配形態分類 とその歴史的傾向について論 じている。ハーマンによって分析 対象 とされたのは,1974年 末現在 の資産規模別最大200非金融会社であ り,そ れ ,経営者支配,過半数持株支配 (maiOrity Ownership control),少 数持株支 (minOrity OwJllership∞ ntrolD,企 業間持株支配(inter∞rpOrate ownership

∞ r01),政 府支配 (government control),  金融支配 (finmCial∞ntrol),管

財人支配(COmpanies in receivership)に 分類する。そして,これらの支配形

態分類は以下のような基準にしたがっている。

(306)  191

(5)

A,B/経営者支配::重要な意思決定の力が企業内部に存在 してお り1外部勢 力との関係をもたず,戦略的地位にもとづいて支配

̀5%未満の持株し

かない内部経営者が支配。ハーマンは,さらにこれを,内部経営者支配 ,内部十外部経営者支配に細分。なお,ハーマンは5%の根拠を, 5

 │%であってもその時価が膨大になり,会社支配の観点からは無視できな いことにもとめているようである。困みに200社 の持株5%の平均時価

3,800万 ドルである(p.63)。         l      f

C/過半数持株支配:50%以止の株式を所有している個人,家j小グループ

に よる支配。

D/少数持株支配:5%以上所有しているグループによる支配であ り,それは さらに四つに細分される。なお,こ こで重要なことは, 5%以上の持株 であっても,機関投資家の場合はこのカテゴリーに入らない (これは,

ハーマンの金融機関と企業についての見解によるものと思われる一一後 )。

E/企業間持株支配:別の企業による少数持株支配 (5%以)。

F/政府支配:この研究からは除外。

G/金融支配:銀,投資銀行,その他の融資関係者,金融投機業者による支 配。ただし,こ の金融的利害関係者が,完全支配を欠き,影響力を行使 す る位置にある場合には,A,Bの 細項 目の2に入れ られ る。

以上が,ハニマンの支配形態分類であるが,さ らに,彼は直接的支配形態 と は別に,究極的支配形態分布をも調査 している。 これは直接的支配形態分析の 結果,支配す る会社それ 自身の支配形態を分析 した ものである。

以上の結果をまとめた ものが表1である。 ここか ら,次の ような諸点が明ら か となる。究極的支配形態においてはj経営者支配の企業が,最200社の う 165社 (全会社数 の32.5%)とい う圧倒的優位を しめている。 しか し,この支 配形態のなかに入るもあでも,79社 (全会社数の39。5%)が大株主や金融 グル ニプの強制力=部分的支配を受けていることに注意すべ きである:これをィヽャ

(6)

法経照 3・

表 ‐最大 200非 金融会社の支配形態分綺 (1974年末現在)―

究 極 的 支 配 形 態     額に占ゅ

る 比

C%)

内部経営者支配

1.かな りの大 日の株式をもつ株主 (持株比 率 1〜5%)1)

2。 金融グル∵プ1)

3.規制機関1)

4.上記の利害関係者がいないもの"

    3)

内部経営者 と外部重役によう支配

1.かな り大 日の株式をもち株主 (持株比率 1〜5%)1)

金融 グル ープ1) 規制機関p

上記の利害関係者がいない ものυ     3)

経営者支配計 (A+B) 過半数持株支配

少数持株支配

1。 (a)重役会や重要な委員会への参加 (持 株比率10%以)

lbl 現役の幹部職員(持株比率10%以)

として参加

2.b)重役会への参加(持株比率10%以 上) (D 重役会への参加なし(    ) 3.持株比率が小さいが(5〜10%),現役の

幹部職員として参加

4.持株比率は小さく(5〜10%),現役の幹 部職員でもないが,決定的な支配力を行使

し うるもの    企業間持株による支配

26

20 58 47 151‑20

==131 15

18 16 3 52‐18

==34165 3

3

12

6 0 6

2

29 13,0

10,0 29.0 23.5 65.5

7.5

9.0 8,0 1.5 17.0 82.5 1.5

1.5

6.0 3,0 0,0 3.0

1,0

14.5 7.3

8.5 33.8 34.3 75,3 4,5

5。6 5,0 1.1 10.1 85,4 0.8

1,4

4.9

3.6 0.0 2.2 0.4

12.5

8。9 6.4 15.5 47.0 73.1

5。9 4.6 3.4 1,3 10.2 83.3 1,0

1.4

6。7 4,4 0.0 2,0

0。4

14.9

(304)  193

(7)

':リ

カ企業の支配構造

.1. 過半数持株支配

2,大きな少数持株による支配

3.小さな少数持株による支配    

政府支配

金融支配 管財人支配

究 極 的 支 配 形 態    

0.5

0。5 0.5

に苫あ

0。3

0。2

0。3

 1)細分類した小項目は,重役会年代表を派遣しているか,または,最高幹部職 員の選任や重要な経営上の決定の全部に対する重要な支配力はもたないが,意 思決定に対して特711な影響力を行使することはできる,特定の利害関係者

CinterestsDを示す。

::[li省

曇 曇 歯 倉 「∵ 煮

i〕

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な 量 を 募 』

liよ[][]童

li

(出)Eo S.Herman,G4"%影 G筋物 ″,Cw黎 篠″ R別,1981;pp.58‐ 59.

マンは,金融支配・株主支配とはみなしていないのである。②過半数持株支配 は3社 にすぎなしヽ③少数持株支配のカテゴリーに入る企業は,29社 (全企業の 14.5%)であり,④企業間持株支配は直接支配形態分類では, 8社であるが,

これらは究極的には,別 の支 配 形 態 の カテゴリーに入れられる。例えば,

Ch五stttm Se,t五esによるDu Pont社支配は,Chri雛ma社1が Du Pont一 族によって支配されているので Du Pont社の究極1的支配はpu pont̲族によ

る少数持株支配になるも また,Roytt Dutch She■ ヵミ経営者支配なのでShen は究極的には経営者支配のカテゴォーに入れられる。⑤政府支配は直接的支配 形態分類においては存在しないが,究極的支配形 態 分 類 に おいては SOHЮ

(S慟頑帥d Oi1 0f Ohio)が このカテゴリーに入れられる。同社の株式25%を 有しているB重tiSh Petroleumの過半数株所有者が,イギ リス政府であるから

100。0 1  100,0

(8)

法経研究 304号

であ る。⑥金融支配 のカテ ゴ リーに入 る企業 はUniOn Rttfic l社の教であ る。

巨大会社の支配形態     (1900‑1901年 )

究極的支配形態 社 数 構成比(%) A&B

C D

過 半 数 持 株 支 配 少 数 持 株 支 配 法的手段 に よる支配 営 者 管財人に よ る 支 配      

支 配 過 半 数 持 株 支 配 少 数 持 株 支 配 (持株比率10%以)

    

銀行に よ る も の 投機家に よるもの

7.5 5 12

3 12.5 (5.5) (7  )

18.75 12.5 30.0 7.5 31.25 (13.75) (17.5 )

23.75 12.5 32.5

31.25 (13.75) (17.5 ) 9.5

5 13

12.5

(5。5 (7

3, 4,1 3,145

1,54 1,258

18,480 2,127 47,1 58.1 44,341

0. 269

11,4531 100.0 )巨大会社社のサンプルのなかには,大手鉄道会社15社,大手鉱工業会社17社,運

輸会社2社,電力会社2社,ガス会社2社,および通信会社2社が含 まれている。

(出 所)Eo S,Herman,ο夕。,P,62.

最大 200非金融会社の究極的支配形態    (1929年)

当初の会社数 調整後の会社

当初の会社資 産総額

調整後の会社 資産総額

  成比 (%)

・0 65

23

23 20 44

・2

・0 46

88

5.

4.

32.

4.

40.5

11, 17,

1.

13.

21,

3.9 1.6 22.8 2.6 54,7 0.3 14,1

1.

11.

)A.A.Berle ttd G.CI Mea憔 ,r滋 腕 滋 θγ夕θ%″ α I磁7/77′ι Rttθ,

1032,P。 115よ り加工。誤 りを訂正するとともに,新しく「金融支配」分類を設け て調整 した もの。

(出)Eo S.Herman, p.64.

  数 1構 成比(%)

200.01 100.01 200.01 roo- ol ar, ozsl r00.

(302)  195

(9)

以上のように,ハ中マンによれば,1974年末においては,経営者支配の企業 が圧倒的に優位であることが示 さ│れる。

つぎに,パマンは,以上の結果を,1900年,1929年における支配形態分布 と比較 して,その歴史的傾向について考察 している(表2,表3)。・まず1900年 についてみると,経営者支配は,全会社40社18.75%であるのに対し,金 支配は31.25%,少数持株支配は30%であった。1929年時点では経営者支配 の企業は全会社数 200社 の40.5%に対し,金融支配の企業は1118%,少数持株 支配 り企業は32.5%であった。このように,歴史的傾向としては,ハーマンは

①経営者支配の企業の増大 (1900年の23.75%か ら1974年82.5%へ)。 ②金融 支配の企業は急減 (同31.25%→0.5%)していることを指摘する。

推 こで,この よ うに株式所有 に もとづ く支配か ら,所有 に もとづか なぃ経営 者 支配へ の歴史的傾 向の基底要 因を,ハーマ ンは次 の ように述べ ている。それ ,①古 い成熟 した 巨大企業 の漸進的な株式所有分散か ら生 じる経営者支配化 を補 うだけの新興 の同族会社 (eFltrepreneurtt firms)が 巨大企業 クラスに参加 してこなか った こと。②個人や,家族 の持分の分散化である。 この後者につい ては,ハーマンは実証的資料を提供 している(pp.73〜77)。 それによると,192Cl 年代後半か ら30年代にかけて家族支配の企業で,最200社に入ってお り,し

か も,74年において も最大200社に入っている企業43社 の大株主である家族, 家族 グル ープの持株比率 の推移を調査 し,43社の うち26社20〜 30年代か ら70 年代中頃にかけて経営者支配の企業に転化 しているとみている。 こうした個人, 家族の株式所有の分散化の要因 として,第1に,企業が急成長 し,公開株式市 場で資金調達をす るようになると支配的な個人,家族大株主は,彼らの持株比 率を維持す るに十分な追加資本を投入しようとしない し,また出来ないか らで あ り,第2に,資産税をのがれた り,家族による支配を保持す るために財団等 に家族の持株を分散す るが,結,自立性を求める戦略的地位―にある経営者が, 財団自身の経営者になるため,財団の持株は経営者支配の手段 となる,とい う

ことな どが指摘 されている。

(10)

法経研究

豪撲尋律の直接・

    持 株 比 率

20%以 10〜20%

5〜10%

2〜 5%

1〜 2%

0.5〜 1%

0.5%以

17 3 8 25 15 23 109

8.5 1.5 4,0 12.5 7.5 11.5 54.5

21 11 20 40 16 33 59

10.5

5。5 10.0 20.0 8.0 16.5 29.5

5。5 1,5 1.5 6.5 4.0 7.5 73.5

(Hm) E. S. Herman, oP, ai't., PP.87, 89, 92.

か くして,ハーマンは,現在において も家族支配を主張す るラン ドバ ーグな どをイデオ ロギー的主張だ として批判す る。そ して,「家族支配を,1相当大 き な株式所有 と会社創立や経営にさい して,家族が果 した特別な歴史的役割 との 結合に依拠 した永続性のある支配を意味す るもの と解釈す るな らば,家族支配 型の比重の低下は,確固た る歴史的事実である」(p.79)と結論す るのである。

さらにハーマンはこうした株式所有に もとづかない経営者が どのような企業 目標を もつのか,したが ってまた,どのような企業行動を とるのかについての考 察に移 っている。結論的にいえば,今日の経営者支配の巨大企業の第一義的 目 標は,50年70年前 の巨大企業の始れ と同様,収益性 の増大(prOfitable growth) であるとする。それでは,こ うした収益性の増大 (prOfitaЫe grOwth)を 聟極 的に所有の利害や権力を結びつける経路 とは何か。ハーマンは,①重役会に代 表される持株,②市場にもとづ く圧力や社会からの圧力のほか,③企業の構造 的・組織的変化をあげている。①ついてはこれをさらに詳しく,(i)内部重役自 身による直接的・家族的所有,は)内部重役に外部重役を含めた重役会の全メン バーによる直接的・家族的所有,liiil重役会の直接所有分に,重役会に代表を出

株π硼 一数一%

雰警拿牟豪換聾森

・1

・3

・5

・47

(300)  197

(11)

現代アメリカ企業の支配構造

している機関の直接的所有分および,信託所有分を加えた所有,の三つのレベ ルに分けてみている(表4)。

まず,内部重役,外部重役を含めた全重役メンバーによる持分についてみる ,1975年現在,最200の非金融企業のうちで持株比率が5%以上の企業は 28社 (14%)にすぎず所有 と支配の分離がすすんでいる。つぎに,機関保有分 を加えた持分をみると,200社のうち持株比率が5%以上の企業は52社 (全 業数の26%)である。このように機関保有分も含めても所有と支配の分離はす すんでいるが,同時に少なくとも巨大企業においては,その株式所有は量的に は膨大であるとする。

さい ごに,内部重役の持株をみてみ よう。最大200社の うち,内部重役の持 株比率が5%以上の企業は17社 (全体 の8,5%)であるのに対 し,持株比率0.5

%以下 の企業 は147社 (全体の73.5%)を占める。

しか し,巨大企業め場合,持株比率は低 くとも,枠の時価総額は膨大である ことが留意 されるべ きであ り,例えば,1974年において最大100鉱工業企業の 内部重役の持株時価総額の平均 は92万ドルであった。 しか も,これ ら会 社 幹 ,重役の個人的資産の うちで,自分が関係 してい る企業の持株のもつ比重は 大 きく,ま,ス トックオブシ ョンな どの株式所有ベースにもとづ く所得 も大 きし:。 さらに経営者の報ullは企業の収益性にようて決定 され ることか ら,通, 経営者支配論でいわれているような,経営者 と株主の利害が対立 しているので

はな く,同じ利害 と,同じ目標をもつ ものである。

以上みてきた ように,ハーマンは,現代巨大企業が株式所有にもとづかない 経営者支配の もとにあること,同時に捨 うした企業 も上にのべた ような理由に よって,株式所有者 と同 じような行動二収益性の増大 (prOfittble growth)行 動を とってい ることを明らかに している。

2,企業 と金融諸機関 との関係

さて,それでは,企業 と銀行企業 との関係は,支配構造上を どのようにみ ら

(12)

法経研究

れ るのであろ うか。 これが次の論点であるが, 4章,6章を申心にこの問題に ついてのハーマンの所説をみてみよう。

まず第4章,金=銀行支配の性格 とその発展過程について述べている。

まず,「金融支配 とはその主要な利害が外部の金融諸機能一資金調達供給 と証券の売買のいずれか,あるいは両方―のパフォーマンスにある,個,グ

ル ープ,組織に よって,企業の重要な意思決定が握 られている,とい うことを 意味す る」(p.115)。 ハーマンは金融支配概念をこのように定義 し,1その支 配の根拠を以下の五点にわた って検討 している。

①引受業務,投資銀行業務,発起業務

個人や機関投資家の顧客に新規証券を販売す る証券の引受業務や投資銀行業 務は,33年銀行法により商業銀行にその業務が禁止されて以来,投資銀行によ って行なわれてきている。 この投資銀行は,最初の一大企業勃興期の今世紀移 行期においては,個人的銀行業者 として中心的な役割をはた してきた。 しか し, これ らの投資銀行はそれ 自身商業銀行であるか,あるいはまた,個人的に,ま た業務の うえで,それ と関係を持 っていた。

このようにして「1893〜 1904年の企業合併の大運動期においては,投資銀行 はしば しば戦略的な役害Jをはた し合併の発起者 として,ま,なかば独 占的な 証券販売者 として実質的な支配力をもったのである」(p.118)。 さらにハー キンは1900年には投資銀行業務が主要な商業銀行や生保会社 と同盟関係にある 少数の機関の担い手に集中 し,これ らのグループは国の内,外の投資家の間で名 声を博 し,主要なグループの間ではかな りの程度の協力 と結託が見 られた こと を指摘 したあ と,「こうした ことが,MOrgan Bakeち Kuhn Loeb,D■bw Read のような利益集団(inteFeSt group)を して,新規発行証券が公開証券市場で大 量に売 り出されなければならない ときに,支配的地位につけたのである。1900

1905年の時期には,『マネー トラス ト』は存在 したのである」(p.119)と 述 べている。

しか し,投資銀行の支配力は一時的な ものであ り,第 1時大戦後衰退過程を (298)  199

(13)

た どり,1920年代の小休止をはさんで,30年代には政府の諸規制に よって地位 は低下 してきた。さらに戦後の50〜60年代には企業合併運動があったにもかか わ らず,他の金融機関の成長,私募 の発展,投資銀行の集積の低下等により, む しろ,企業合併の道具 となっているのが現状であるとす る。

②貸 

ハーマンによれば,「非金融会社に対す る金融的支配あるいは影響力は,金

融機関が信用を与えた り引上げた りす る力,信用を拡大す る1際に種 々の条件を 強要す る力,信用協定の諸条件を強制す る力か ら生 じるのであ り,これが今 日 のアメ リカの非金融会社に対す る金融諸機関一特に商業銀行や生保会社一の支 配力の主要な基盤である。そ して金融il■関に よる重役派遣は株式所有や証券引 受機能ではな く信用の供与 との関連でみ られるのが最 も通常の場 合 で あ る」

(p。121)と言 う。 しか し,他,銀行の巨大企業 に対す る影響力は,①全国的 な商業銀行の統合化 と,その結果 としてのより多数の大銀行による営業,② 外での資金調達,③生命保険会社,年金基金,金融会社等の他の信用1機関の成 ,商業銀行の地位 の相対的低下,などによって,借り手 も借 りる先を多様に 選択できることに よって制限 されていることも指摘す る。大企業の場合,し

しば数百行の銀行 と取引をおこな うのである。

ハーマンによれば,企業が金融困難になった場合は,支配力が強化された り, 弱体化 した企業は実際に倒産におい こまれ ることもあるとはいえ (この場合で

,現行法は,債権者に資産の直接的没収を禁止 している), 通常大企業 と 大銀行の関係は「 永続的・互恵的関係J(p.123)であるとい う。

③制限条項 (Rest山伍ve Covenant)

回転信用や満期が1年以上の定額融資での貸付けの場合,銀行や生命保険会 社は:借り手の企業に対 して諸条件を付 した取 り決めをす る。ただし,ハーマ ンによれば,これに よる金融的支配力は大企業においては潜在的であ り,大 なものではない とす る。

④銀行の重役派遣

(14)

法経研究 最大 200非 金融会社の重役会および経営執行

委員会への金融機関の代表数

重役派遣数

CitiLnk

lorga.nG■laranty Trust Lchman Brothers Mellon Bank

[anufacturers Hanover Trust Chelllical Bank

Chase l〔anhattan Bank Balllkers Trust

L〔Mard Frёres

National Bank Of]Detroit White Weld

Kuhn Loeb Metropolitan Liね Wells Fttgo Bank U.S.Trust

Security Pacific

WachovL Bank

Eastman I)11lon Goldman Sachs

Browlll Brothers Harrilnan lrving Trust

State Street Trust Marine Midhnd

FirSt BOStO■ COrPoration Bank Of California Kidger PeabOdy Crocker Aetna Equitable

Massachusetts ln、 estors Trust Fむ st Chica.go Corp∝ation

20 14 12 10 10 9 9 7 7 6 5 5 5 4 4 4 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3

IJ『

手 掛 響 浴 覇つ 「手 予 孝

li静

暴豪

l硼

(296) 201

(1975生F)

覆昂轟ξ豪

(15)

5にみ られるように,銀行は,多 数の重役を派遣 している。そ して最大200 社の3分2以上の重役会にたい して,会社幹部(Offier)の派遣をおこなって い る。

このように,金融機関は通常,大企業の重役会,財務委員会に重役を派遣 し ているが,そこにおける彼 らの役割は,純粋にア ドバイザー的なものにす ぎな い とす る。銀行の重役派遣の役割については,論者によっては,重役会や経営 委員会が内部重役を雇用 した り,解雇 した りす る法的権限をもっているか ら, 銀行はこのルー トだけを通 じて企業を支配す るとい う見解に対 し,「大企業の 大半は,内部 の最高経営者が政策の作成や重役選任を決定す るのであ り,外部重 役はいかに権威ある銀行家であろ うとも通常は支配力を もたない」(p.134)と

,実際に も70年代には重役会は,企業 の基本的意思決定をす る場所ではない, とす るのである。 また,大銀行 も大企業 もお互いの重役交換を求め ようとす る のであ り,これがまた,両者の名声,互恵的業務関係を強めるのである。か くし ,ハーマンは,「重役会や委員会への代表の有無は,よ り大 きな支配力総体の 一部 として慎重にあつかわれなければならない」(p.137)と結論す るのである。

⑤機関投資家による株式所有

74年末の2∞の非金融会社の うち単独で2%以上 の株式を所有す る株主は163 件あ り,その うちの21.4%が商業銀行であ り,32.5%にあたる53社,従業員 株式貯蓄・ 利潤分配プランが大株主であ り,その他に,投資会社や生保会社があ ,圧倒的に機関投資家が多い。 ところが従業員株式貯蓄・利潤分配プランは, パススルー・ ボーテ ィング(議決権差 し戻 し行使)であ っても,あるいは,銀行の 単独議決権行使 であっても,何れに して も結局,経営者の支配を強化す るもの で しかない とす る。 また一般に機関投資家は,竹れ と同程度に株式を保有す る 個人や家族に比 して,企業支配を獲得す ることに関心をもたず,逆に後者の方 ,現在の経営者 よりもうま く経営できるとかの理由によって積極的に支配権 を求め ようとす る。 このように,ハーマンは機関投資家の株式所有にもとづ く 支配に対 しては否定的であ り,支配指向の根拠 としてあげ られる,①内部情報

(16)

法経研究 35巻304号 獲得,②追加的取引の獲得・③多 くの企業に対す る競争制限か ら生 じる利益など に対 し,それぞれ反論す る。 また,機投資家の保有す る株式が大量

ので 可脅 で処分す ることが困難 とな り,その持株を保護す るために介入す るとい う見解 に対 し,「株式持分の売却 はそれが大 日のものであっても投資先の企業に決 定的なダメージを与えることはないだろ うし,また株式保有者が 自らの利益を まもる力は債権者のそれほ ど大 きくない」(p。149)と ,さ らに大 日の株式を 処理す る取引業者の出現によって,さほ ど価格低下せずに売却できるとして, 反論す るのである。「 このように,機関投資家 による支配指向はめったにない ので,企業経営者は,大日の株式買付けを,株価有利をもた らすために,ま,

忠誠心の表明 としてあったか く歓迎す るのである」(p.152)。

以上の よ うに,過去には存在 した金融支配は,現在においては1社 (UniOll Pac」ic)だけであ り,大企業 と大銀行の関係は,相,互恵的なものであると

い うのがバーマンの主張である。だが,一方では最大200社の うち,40社が金 融機関が企業の政策決定になんらかの力をもつ,重大な影響力(Significant in―

fluclrlce)=制約的かつ究極的な権力を もたない否定 的 な 力 (COnstnining ttd netttive power)=部分的支配(ptttial∞ ntrol)の下にあ り,117社=58。5%の 企業は金融機関が重役派遣を通 じて潜在的な影響力をもっているとい うことも 指摘 してtヽ (p。159)。

ところで,これ らの企業は,業務上あるいは社会的な関係上,また市場の不 安定性を減 らし,最低限の安定を求め ようとす ることか ら,種々の関係を通 じ て企業間集中 (Supn∞rporate centrdセion)の共同行動を とる。 こうした企 業間結合が,各企業の行動に影響を与え うるォ キンネルは,指(∞mmttd), 意思疎通 (COmmunimtion),利害の共通性 (COmmunity of interest)に 分類

され る。指令は,同じ家族による株式所有のような統一的な権威にもとづいて いる。意思疎通は,兼任重役制などの正式な ものか ら,電話連絡などにおよぶ。

利害の共通性 とは,ビジネス リーダーの間での,企業の共通 目標のことである。

それは,指令者にもとづ く場合 もあれば,一つの社会階層の構成員の共通の価 (294) 203

(17)

値観 に もとづ く場合 もあ る。

ハ ーマ ンは,こ うした企業間結合 として,兼任重役制,ジ ョイ ン ト・ ベ ンチ ャー,業界団体,政府諮 問委員会 な どを指摘 してい る。 ハ ーマ ンは,これ と関 連 して,いわゆ る利益集団 (interest bOroup)に ついて言及 してい る。共通 の支 配 (∞mmOn∞ntrol)の もとにある企業集団 として把握 され る利益集団の分析 ,スウ ィージーに よって頂点に達 した として,スウ ィージ ーがかつ て1937年 に分類 した8大集団(P,Mo SWee2y, hterest Groupsin the AmerL腱 Econo‐

my",in Nationd Resources Committiee,Tル S′με%o/′ル И陽

"tθ

oz仰り,Part I,1939,pp。306■317に所収)について検討を加 えている。た とえば,ロ ックフェラτ一族の持株にもとづいた ロックフェラー集団は,現, 存在は しているが,姿をかえてい る,とい う。す なわち,ロ ックフェラーによ る全ての巨大石油会社の株式所有は,非支配の水準にまで低下 し,唯― ロック

フェラーの支配下にあるチ ェース・ マンハ ッタン銀行 も,その支配は,持株に もとづ くのではな く経営への参加にもとづ くものだ とす る。 また,投資銀行家 の力を弱め,非金融会社の自立性を強めた諸力は,銀行支配,重役兼任にもと づ く利益集団 (M9暉狙■First Nttional,て Kuhn Loeb,Boston,Chicagoの 4つ)

の構成企業間の結びつ きをゆるめた。そ してその結果,こんにちでは,ほとん ど何 らかの意味をなす ような支配集団を構成 していない とす るのである。

こうして,こんにちでは,いまなお存在す る結びつ きは,企業のおり高い到 達点を一般的に特徴づけるような「利益共同体 」(COnlmunity of interest)と 同 じものである,とす る。か くして,「1んにちの『 利益集団』の中心は主 と

して,融資拡大に もとづ く,広範な顧客関係を もつ巨大商業銀行であろ う」(P.

221),と結論づけるのである。

以上が,ハーマンの所説の要約であるが,彼の研究結果は,つぎのような特 徴をもっている。

1に,企業支配力を研究す るには,まずは企業の内部か ら分析 し,つぎに,

外部諸力 との関係を論 じるとい う方法に立 っているQ

(18)

法経研究35巻3.4号 1987 2に,現代の巨大企業は経営者支配である。

3に,経営者 と株主は利害が対立す るわけではな く,したが って経営者は 収益の増大を目標 とす る。

4に,銀行は融資関係をベ ースに巨大企業 と結合 してお り,両者 の 関 係 ,相互・ 互恵的である。

5に,こ うした企業は,銀行を中心に,相互・ 互恵的なゆるい結合関係=

利益共同体を形成 している。      │

  ハ ーマ ンの所説 の意 義― 研究史とめかかわりで

(1)誰が企業を支配するか

(8)

まず第一に,誰が企業を支配す るのか,とい う論点か ら検討 しよう6ハ

ンは,この問題を扱 うにあた って,個々の企業をそれ 自身自立 した 閉 鎖 体 系 (dbSed SyStem)と して分離す る方法か ら出発 した。 この問題については,周

(9)

知 のようにバー リと ミーンズの先駆的な研究以来,多くの調査・研究がお こな われている。バ守 りとミ‐ンズは,各企業の取締役会を選出す る権限を企業支 配力 として,その支配力の根拠を株式所有権にもとめ,持株比率に応 じて支配 者を分類 した。以来,大企業の株主の株式所有にかんす る恣意的な所有率にし たが って,企業支配者を,個人・ 家族大株主か,機関投資家か,経営者か とい うような三者択二的な方法で裁断しようとする流れとして現在に至っている。

また,こうした流れの支流 として,個人・ 家族大株主の傾向的な消滅か らが一 ナムのような「経営者革命論」やバー リの「20世紀資本家革命論Jが主 張 さ ,資本家階級消滅論,資本主義否定論が引 き出され,こんにちにおいても, 同 じような主張が くり返 されている。そ して,こ うした議論に反論す る立場か らは,各企業における支配的個人大株主をなん とか して探 し出そ うとす る│「 人探 し」的研究がすすめ られて きた。

しか し,これ らの研究方法に共通 しているのは,第一に,個人・ 家族大株主 を資本家階級 とみなした うえで,第二に,個々の企業を法的には自立 した株式

(292) 205

表 7 Jo P,Morganお よび MGTと 最大 250社 の他のメンバ…との直接 的重役兼任 と持株をつ うじての結合 (19754書 ) 員 会 会 一 い職の役ハ゛て部記重ン つ 数のメな社会 の IMOrganのが1外 部重役が社1下記の会社21?ラ察 含2る│ならてい る 件 数 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 重役兼任件数合計2213211112211111111111111lAI MOrganの幹部職員が下記の会社の重役会のメンバー①Bethlehem Ste

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