役 務 提 供 型 契 約 法 改 正 の 挫 折
︱ ︱ 法 制 審 議 会 民 法 ( 債 権 関 係 ) 部 会 の 議 論 の 分 析
𠮷 永 一 行
一 平 序 成二 六年 八月 二六 日︑ 法制 審議 会民 法 (債 権関 係) 部会 (以 下単 に﹁ 部会
﹂と 呼ぶ )は
︑﹁ 民法 (債 権関 係) の改 正に 関す る要 綱仮 案﹂ (以 下単 に﹁ 要綱 仮案
﹂と 呼ぶ )を 決定 した
︒要 綱仮 案は
︑ま だ定 型約 款を 検討 課題 とし て残 し たま まに して いる
﹁仮
﹂の もの であ るが
︑部 会の 設置 から ほぼ 五年
︑学 者有 志に よる
﹁民 法 (債 権法 )改 正検 討委 員 会﹂ によ る検 討の 開始 から は八 年に わた る民 法改 正の 議論 に︑ 一つ の区 切り をつ ける もの であ った()1
︒ しか し︑ 役務 提供 型契 約に つい てみ ると
︑当 初の 意欲 的な 改正 提案 は影 を潜 めて おり
︑小 規模 な提 案に とど まっ てい るこ とに 気が つく
︒と りわ け︑ 役務 提供 型契 約に 関す る規 定の 体系 を見 直す こと や︑ 必要 に応 じて 新た な類 型を 立て る こと も検 討課 題と され てい たも のが
︑要 綱仮 案に いた るま でに 完全 に脱 落し てし まっ てお り︑ その 意味 で役 務提 供型 契
1 (419)
約の 改正 は挫 折し てし まっ たと 評価 をす るこ とが でき る︒ ここ で重 要な こと は︑ 当初 の意 欲的 な改 正提 案を 支え てい た役 務提 供型 契約 につ いて の認 識︱
︱サ ービ ス化 が進 む 現代 社会 の中 で︑ 明治 時代 に作 られ た民 法の 規定 は不 適合 を来 すよ うに なっ てお り︑ 役務 提供 型契 約に 関す る規 定の 再 整理
・再 構成 が必 要と なっ てい ると いう 認識
︱︱ につ いて は︑ 部会 の中 でも 共有 され
︑そ のこ と自 体に 異論 はな かっ たと いう こと であ る︒ すな わち
︑役 務提 供型 契約 法の 改正 は︑ その 必要 性を いま だ残 した まま の未 解決 の課 題と とら え るべ きで ある
︒必 要な 改正 を行 い︑ 現代 のサ ービ ス化 社会 に適 合し た民 法の 規定 にす るた めに も︑ 今回 の改 正を 妨げ た もの が何 であ った のか を分 析し
︑そ れを 踏ま えて 改正 に向 けた 戦略 を練 り直 すこ とが 必要 であ る︒ 本稿 は︑ その 序論 的 検討 とし て︑ 部会 の議 事録 を主 たる 資料 とし て︑ その 議論 を分 析し よう とす るも ので ある
︒ 以下 では まず
︑こ れま で部 会か ら三 度に わた って 示さ れて きた 改正 提案 の中 間案 につ いて
︑本 稿の 主題 に関 連す る範 囲で 紹介 する
︒続 いて
︑議 事録 を資 料と して
︑部 会に おけ る議 論を 紹介 する
︒最 後に
︑役 務提 供型 契約 に関 する 規定 の 再整 理・ 再構 成が 挫折 した 原因 につ いて 分析 を示 して
︑本 稿を 閉じ るこ とと する
︒ (1 注
) 法制 審議 会民 法 (債 権関 係) 部会 の議 事録 及び 部会 資料 は商 事法 務社 より 刊行 され てい る︒ 本稿 に関 係す るの は次 に掲 げ る巻 であ る (以 下で は太 字部 分の みで 出典 を示 す)
︒
『民 法 (債 権関 係) 部会 資料 集第 集1
︿第 巻4
﹀( 第14 回〜 第17 回会 議議 事録 と部 会資 料)
﹄( 二〇 一一 年)
『民 法 (債 権関 係) 部会 資料 集第 集1
︿第 巻6
﹀( 第21 回〜 第26 回会 議議 事録 と部 会資 料)
﹄( 二〇 一二 年)
『民 法 (債 権関 係) の改 正に 関す る中 間的 な論 点整 理の 補足 説明
﹄( 二〇 一一 年)
『民 法 (債 権関 係) 部会 資料 集第 集2
︿第 巻8
﹀( 第55 回〜 第59 回会 議議 事録 と部 会資 料)
﹄( 二〇 一四 年)
『民 法 (債 権関 係) の改 正に 関す る中 間試 案の 補足 説明
﹄( 二〇 一三 年)
『部 会資 料集
﹄は 本稿 脱稿 時点 で第 集2
︿第 巻9
﹀( 第60 回〜 第63 回会 議の 議事 録と 部会 資料 を収 録) まで しか 刊行 され て いな い︒ それ 以降 の会 議の 議事 録及 び部 会資 料に つい て本 稿で は︑ 法制 審議 会W eb サイ トに 掲載 され た議 事録 及び 資料 を 参照 した
︒そ れら につ いて は左 記の UR でL
︑二
〇一 四年 一一 月三
〇日 にア クセ スで きる こと を確 認し てい る︒ 以下 では 太 字部 分の みで 出典 を示 す︒ なお 議事 録は PD 版F に基 づい てペ ージ 数を 示す こと とす る︒
「中 間試 案の たた き台
⑸ (概 要付 き)
﹂( 部会 資料 57) ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 10 71 96 .p df 部会 第六 八回 会議 議事 録 ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 11 32 98 .p df
「中 間試 案の たた き台
⑷⑸ (概 要付 き)
︻改 訂版
︼﹂ (部 会資 料59 ) ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 10 82 16 .p df 部会 第七 一回 会議 議事 録 ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 11 49 37 .p df
「要 綱案 のた たき 台⑹
﹂( 部会 資料 72A ) ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 11 72 38 .p df
「要 綱案 の取 りま とめ に向 けた 検討
⑼﹂ (部 会資 料72 )B ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 11 72 39 .p df 部会 第八 一回 会議 議事 録 ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 12 40 88 .p df 部会 第八 二回 会議 議事 録 ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 12 47 65 .p df
「要 綱仮 案の 原案 (そ の3 )補 充説 明﹂ (部 会資 料81− )3 ht tp :/ /w ww .m oj .g o. jp /c on te nt /0 00 12 51 63 .p df 要綱 仮案 は︑ NB 一L
〇三 四号 臨時 増刊 (二
〇一 四年 )が 現行 条文 との 対照 付で 全文 を掲 載し てお り︑ それ を参 照し た︒ なお
︑部 会資 料の 表題 はい ずれ も﹁ 民法 (債 権関 係) の改 正に 関す る﹂ で始 まる が︑ 本稿 では この 部分 を省 略し て表 記す るこ とが ある
︒
3 (421)
二 法制 審議 会・ 民法 (債 権関 係) 部会 の提 案の 概観 1
序 部会 では これ まで
︑① まず 部会 の開 設か ら約 一年 半を 経た 平成 二三 年四 月一 二日 に﹁ 民法 (債 権関 係) の改 正に 関す る中 間的 な論 点整 理﹂ を︑
②続 いて 平成 二五 年二 月二 六日 に﹁ 民法 (債 権関 係) の改 正に 関す る中 間試 案﹂ を︑
③そ し て平 成二 六年 八月 二六 日に
﹁民 法 (債 権関 係) の改 正に 関す る要 綱仮 案﹂ を決 定し
︑公 表し てき た︒ その 内容 から
︑役 務提 供型 契約 法改 正に 関連 する 部分 を概 略的 に紹 介す る︒ 2
「中 間的 な論 点整 理﹂
「中 間的 な論 点整 理﹂ では
︑﹁ 第47 役務 提供 型の 典型 契約 (雇 用︑ 請負
︑委 任︑ 寄託 )総 論()2
﹂及 び﹁ 第50 準委 任に 代 わる 役務 提供 型契 約の 受皿 規定()3
﹂と いう 項目 を掲 げて いる
︒さ らに
︑﹁ 第49 委任
﹂に おい て﹁ 5 準委 任()4
﹂を 掲げ
︑同 様の 問題 関心 から の論 点の 提示 を行 って いる (以 下そ れぞ れの 論点 を﹁ 総論
﹂﹁ 受皿 規定
﹂﹁ 準委 任再 構成
﹂と 呼ぶ )︒
「総 論﹂ にお いて は︑ 今日 の社 会に おい て新 しい 役務
・サ ービ スの 給付 を目 的と する もの が現 れて いる が︑ 既存 の規 定で は十 分対 応で きて いな いの では ない かと いう 問題 関心 のも と︑
﹁役 務提 供型 の典 型契 約の 全体 的な 在り 方に つい て︑ 更に 検討 して はど うか
﹂と の論 点を 示し てい る︒ その 際の 検討 の方 向と して は︑ 役務 提供 型に 属す る新 たな 典型 契約 の 創設
︑役 務提 供型 の契 約に 適用 され る総 則的 な規 定の 創設
︑さ らに 既存 の各 典型 契約 に関 する 規定 の適 用範 囲の 見直 し の三 点が 挙げ られ てい る︒
「受 皿規 定﹂ では
︑現 代社 会に おけ る種 々の サー ビス の給 付を 目的 とす る契 約に つい て︑ 準委 任の 規定 (民 法六 五六
条) がい わば 受皿 とし ての 役割 を果 たし てき たも のの
︑そ こで 準用 され てい る委 任の 規定 内容 は︑ 種々 の役 務提 供型 契 約に 適用 され るも のと して 必ず しも 妥当 でな いの では ない かと の問 題関 心が 示さ れる
︒そ こで
︑﹁ 既存 の典 型契 約に 該 当し ない 役務 提供 型の 契約 につ いて 適用 され る規 定群 を新 たに 設け るこ との 要否 につ いて
⁝⁝ 更に 検討 して はど うか
﹂ との 論点 を示 すと とも に︑ その 場合 の規 定の 内容 とし て︑
﹁役 務提 供者 の義 務﹂
﹁役 務受 領者 の義 務﹂
﹁報 酬﹂
﹁任 意解 除 権﹂
﹁役 務受 領者 の破 産﹂
﹁そ の他
﹂に わけ てさ らに 検討 する べき 論点 を示 して いる
︒さ らに
︑﹁ 総論
﹂に おけ る論 点の 提示 と同 様に
︑こ うし た受 皿規 定を 設け る場 合の 役務 提供 型契 約に 関す る規 定の 編成 のあ り方 につ いて も検 討に あた っ ての 論点 とし て示 して いる
︒
「準 委任 再構 成﹂ では
︑準 委任 には 種々 の役 務提 供型 契約 が含 まれ ると され てい るが
︑そ のす べて を準 委任 に包 摂す るの は適 当で はな いと いう 問題 関心 に基 づく もの であ る︒ その 上で
︑受 皿規 定の 創設 と関 連し て︑ 準委 任の 適用 範囲 や︑ 準用 する べき 委任 の規 定の 範囲 につ いて 検討 する こと を論 点と して 提示 して いる
︒そ の際 準委 任の 適用 範囲 につ いて は︑
﹁第 三者 との 間で 法律 行為 でな い事 務を 行う こと を目 的と する もの
﹂と する こと が例 示さ れて いる
︒ 3
「中 間試 案﹂ しか し︑ それ から 約二 年後 に決 定さ れた
﹁中 間試 案﹂ では
︑﹁ 総論
﹂﹁ 受皿 規定
﹂の 項目 は姿 を消 して いる
︒
「準 委任 再構 成﹂ につ いて は︑
﹁第 41 委任
﹂の
﹁6 準委 任()5
﹂に おい て維 持さ れて おり
︑﹁ 論点 整理
﹂で 提示 され た問 題に つい て︑ さら に具 体化 した 規定 案を 示し てい る︒ それ によ れば
︑ま ず準 委任 の範 囲に つい ては
︑ブ ラケ ット 付 (仮 の提 案で あり 文言 につ いて はさ らに 検討 を要 する こ とを 示し てい る) では ある が︑
﹁法 律行 為で ない 事務 の委 託で あっ て︑
﹇受 任者 の選 択に 当た って
︑知 識︑ 経験
︑技 能そ
5 (423)
の他 の当 該受 任者 の属 性が 主要 な考 慮要 素に なっ てい ると 認め られ るも の以 外の もの
﹈﹂ との 提案 が行 われ てい る︒ そし てこ れに 該当 する 場合 には
︑委 任の 規定 のう ち三 つの もの を準 用か ら外 すと いう のが 試案 の提 案内 容で ある
︒準 用か ら外 され るの は︑ 自己 執行 義務 (中 間試 案で 新設 が提 案さ れて いる )︑ 任意 解除 権 (民 法六 五一 条)
︑そ して 委任 の 終了 (民 法六 五三 条) の規 定で ある
︒そ の上 で準 委任 の終 了に つい ては
︑① 期間 の定 めが ない とき は︑ 二週 間 (こ れ もブ ラケ ット 付の 仮の 提案 であ る) の予 告期 間を おい た解 約を 各当 事者 がい つで も行 うこ とが でき る︑
②期 間の 定め があ ると きで も︑ やむ を得 ない 事由 があ ると きは
︑各 当事 者は 契約 の即 時解 除を する こと がで きる
︑③ 無償 の準 委任 にお いて は︑ 受任 者は
︑い つで も契 約の 解除 をす るこ とが でき ると の提 案を 行っ てい る︒ 4
「要 綱仮 案﹂ しか し︑ そこ から ちょ うど 一年 半後 に決 定さ れた
﹁要 綱仮 案﹂ にお いて は︑
﹁準 委任 再構 成﹂ の論 点も 姿を 消し てい る︒ こう して
︑役 務提 供契 約の あり 方の 検討 とい う課 題は
︑今 回の 民法 改正 から は完 全に 落ち てし まう こと にな った の であ る︒ (2 注
)
『論 点整 理の 補足 説明
﹄三 七四 頁 (3 )
『論 点整 理の 補足 説明
﹄四 二〇 頁 (4 )
『論 点整 理の 補足 説明
﹄四 一五 頁 (5 )
『中 間試 案の 補足 説明
﹄四 九九 頁