素材物性学雑誌 第1
0
巻 第1
号7 9 ‑8 9( 1 9 9
7)論 文
AH . 03mas s%Si 合金 における高温変形挙動 と Si 析出粒子の Os t waJ d 成長
呂 満 珊
, *
後 藤 正 治,**麻 生 節 夫,**小 松 芳 成
, *
*劉 武 *Os t wal dGr owt horSiPr e c i pi t at e sandEl e v at e d Te mpe r at ur eDe f or mat i oni nA
1‑1 . 0 3mas s %SiAl l oy
by
Mans hanI J UT,Shoj iGo TOf I,Se t uoAs o † I ,Yos hl nar iKo MATS U† IandWuLI UI ABSTRACT
Thec oar s e nl ngbe havi orofSipr e c i pl t at e Sf orove トagl ngS t ageWasObs e r ve d l nA 1 ‑ 1. 0 3mas s %Sial l oy. Thec oar s e ni ngdat awe r eagr e e me ntwi t h Li f s hi z
‑Wagne rt he or yondi f f us i on‑ c ont r ol l e dc oar s e ni ng. Thei nf l ue nc eoft hi sOs t wal d gr owt hofSlpr e C l pl t at e SOne l e vat e dt e mpe r at ur ede f or mat l Oni nt hi sal l oywas s t udi e datt e mpe r at ur e sf r om 4 7 3 K t o6 2 3 K i nai randati ni t i als t r ai nr at e sf r om 7. 9 4×1 0 5 t o1 . 7 6×1 0 2S 1 . 1 twass howe dt hatt hes t e adys t at ef l ow s t r e s si s de c r e as e dwi t ht heOs t wal dgr owt hofSipr e c I Pl t at e S. TEM obs e r vat i onr e v e al e d t hatt hei nt e r ac t i onbe t we e ndi s l oc at i onsand Sipr e c l pi t at e si sofat t r ac t i ve ‑ i nt e r ac t i ont ype,i ndi c at i ngt hatt hes t r e s sf i e l dofadi s l oc at i oni sr e l axe dat t heSipr e c i pi t at e s /mat r i xi nt e r f ac e.
Ke y Wor de:A1 ‑ Sial l oy,Os t wal d gr owt h,di s l oc at i on,e l e vat e d t e mpe r at ur e de f or mat i on,yi e l ds t r e s s, pr e c i pl t at i on‑ har de ni ng, at t r ac t i v ei nt e r ‑ ac t i on,voi d‑ har de ni ng.
平成
9
年3
月2 4
日受付*秋 田大学大学院鉱 山学研究科博士後期課程機能物質工学専攻
〒01 0
秋 田市手形学園町1‑1 ℡0 1 8 8 ‑8 9 ‑2 41 8
**秋 田大学鉱 山学部物質工学科
〒01 0秋 田市手形学園町1‑1
千Gr a d u a t es t u d e n t ,Gr a d u a t es c h o o lo fMl n l n ga n d En g l n e e r l n g , Ak l t aUn l V e r S l t y ,1 ‑1 Te g a t aGa k u e n c h o , Ak l t a 0 1 0 , J a p a n
T千De p a r t me n to fMa t e r i a l sEn g l n e e r l n ga n dAp p l i e d Ch e ml S t r y ,Mi n i n gCo l l e g e ,Ak i t aUn l V e r S l t y ,1 ‑1
Te g a t aGa k u e n c h o ,Ak l t a 01 0 ,J a p a n
7 9
1 . 緒 言
金属材料の高温強度向上のために,従来熱的 に安定 な粒子を含む粒 子分散強化合金 に関 しては,高温変形 に対す るいろいろな基 礎 的立場 か らの研究 が行 われ
で )2)
3
),実験結果 に基づ く経験式 もすでに確立 されて
いる。 しか し,実用材料 には時効析出型 の合金 を用 い
る場合が多 く,この場合析 出粒 子 は熱 的 に不安定 で,
高温使用中に中間相か ら安定相 に変化 した り,あ るい
は Os t wal d 成長を伴 って粗大化す るため,力学 的性
呂 満珊 ・後藤正治 ・麻生節夫 ・小松芳成 ・劉 武
Tabl e1 Che mi c alc ompos i t i onoft heal l oy
Si F e T
iC
uM g M n A1 ( mas s%) ( pp
m )( pp
m )( pp
m) ( pp m ) ( ppm) ( mas s %) .
質の劣化を生ず ることが多 く問題 となっている。 した が って,実際面では熱的に安定な粒子ではな く,熱 的 に不安定 な粒子を含む析出型合金の高温変形挙動を明 らかに してお くことが材料開発の点で基本的に重要 な ことである。
ところで ,ALS l合金 に関す る従来の研究 によれば, 複雑な析出過程 はな く,時効初期か らダイヤモ ン ド構 造 を有す る硬 い Si 粒子が析出 し,その後,母相 の Si 濃 度 は平衡値 に近づ き ,Si 析出粒子 の総体積 はほぼ一定 となる,いわゆる一段硬化挙動を示す ことが知 られて いる
4)。 この時効段階では Os t wal d 成長 によって,よ り大 きな析出粒子が小 さな析出粒子を くって更 に大 き な もの‑ と成長す る。 この析出物 は比較的性質の明 ら かな Si 単体である。 したが って,析 出型合金 の高温 変形挙動 におよぼす Os t wal d 成長 の影響 な どを研究 す るには ,ALSi 合金 は非常 に適 した ものであ ると考 え られ る。今 まで Al ‑ S l合金 の研究 で は Os t wal d 成 長 に伴 う粒子の平均半径の時間変化や粒子半径の分布 曲線などの基礎的実験 5 )は行われて来てい るが,変形 に関す る研究 は少 な く,根本 ら
6)7)が A L 1 . 4 2 wt %Si 合金の室温変形 において転位 と析出粒子の相互作用を 観察 して ,Or owan の 恒7 ‑ paS S機構 について明 らかに したのみである。 しか しなが ら,この合金の高温変形 挙動や変形機構 に関 してはまだ明 らかにされておらず, 特 に高温変形 に対す る Si 粒子の Os t wal d 成長の影響 については全 く研究が行われていない。
そ こで本研究では ALSi 合金の時効析出過程 にお け る ,Si 粒子の Os t wal d 成長 と高温変形挙動 との関連 性を明 らかにす るとともに,高温 にお ける Si 粒子 と 転位 との相互作用を透過電子顕微鏡 による直接観察 を 行 うことによって,高温変形機構 について も明 らか に す ることによって,熱的に不安定な析出粒子を含 む合 金の高温変形挙動の予測のための基礎的知見を得 るこ とを目的 とした。
2 . 試料 および実験方法 2 .1 試料作製 と熱処理
純 Al と金属 Si を大気 中溶解 して ,2 0 wt %Si 母合 金を作製 した。その後 この母合金 と純 Al を大気 中溶 解 して ,3 5×9 1×1 4 6 mm 形状 の A 1 ‑ 1 . 0 3 mas s%S l合 金 イ ンゴットを作製 した。 そのイ ンゴ ッ トを 8 4 3 K で 7 5 時間の均質化焼鈍を行 った。 これを 4 等分 したのち 5 7 3 K で熱間圧延加工 によ って ,6×5 1×3 7 0 mm の板 材を作製 した。合金の化学成分 は Tabl e lの通 りで あ る。次 にこの板材 を切削加工す ることによって,軸方 向が圧延方向に平行で,長 さ 1 0 mm ,直径 4 mm の円 柱状圧縮試験片 と した。 これ らの試験片 を 8 3 3 K で 3 時間の溶体化後 Oo Cの氷水中に焼入れ,初期時効条件 を等 しくし,かつ時効初期 に球状 に近 い微細析 出粒子 を形成 させ るために急冷後 Oo Cの氷水中で 1 時間 の予 備時効を した 6 ) 。その後 4 7 3 Kで2 0 0 hr までの時効処理 を行 って,時効処理試験片 とした。
2 .2 高温圧縮書 式験
時効処理試験片の変形 には I ns t r on 型万能試験機 を 用 いて,大気中 47 3 K か ら 6 2 3 K までの温度範 囲 お よび 7. 9 4×1 0 5 S1 か ら 1. 7 6×1 02 S1 の初期 ひず み速度範 囲で圧縮試験 を行 った。応力‑ ひずみ曲線の形状を検 討す るとともに,得 られた応力‑ ひずみ曲線か ら定常 変形応力( 応力‑ ひずみ曲線で変形応力 が ひず み に ほ とん ど依存 しな くなる応力)とひずみ速度 の関係 を求 めた。 さらに比例限界の応力 を降伏応力 と して決 め, これを測定 した。試験片の加熱 には,抵抗加熱炉 を用 い,か つP.LD. 方式 によって温度制御 した。試験中 の温度変動 は設定温度 に対 して ±2. O K の精度 で あ っ た。 また,各試験温度での変形組織をで きるだ け安定 に保持す るために,試験機か ら取出 した試験片 は試験 後 ただちに氷水中に焼入れた。
2 .3 電子顕微鏡観察
粒子のオス トワル ド成長を確認す るため ,Si 析出粒
子観察用の薄膜試料 は ,4 7 3 K で各時間時効処理 した
円柱状試験片 の断面 を切 断 して,厚 さ 0. 5 mm の円板
を作 製 し, エ メ リ一紙 お よ びバ フで研 摩 した 後 ,
2 7 3 K に保持 した過塩素酸‑エチル アル コール 1:4 混
合溶液を用 いて ツイ ンジェット電解研摩法 によって作
第 1 0 巻 第
1号( 1 9 97 ) A
l‑ LO 3 ma s s %S i
合金 における高温変形挙動 とS
l析出粒子のOs t wal d
成長製 した。また,転位 と析出粒 子の相互作用の様 子を観
察す るために圧縮変形 した試験片か ら電子顕微鏡観察 用の薄膜試料 を作製 した。観察 には JEM‑ 2 0 1 0 型電子 顛微鏡を用 いて,加速電圧 2 0 0 KV で行 った。転位 と 粒子のコン トラス トを常 に最良の状態に保つために試 料二軸傾斜 ホルダーを用いた。
3 . 実験結果および考察 3 .1 応力‑ ひずみ曲線
Fi g.1 ‑Fi g.4 は各温度および各初期 ひずみ速度 で の圧縮試験で得 られた応力‑ ひずみ曲線 について調べ た結果である 。Fi g. 1は 4 7 3 K/1 1 hr 時効処理 した合 金 に対す るもの ,Fi g.2 は 4 7 3 K/3 0 hr 時効処理 した 合金 に対す るもの Fi g.3 は 4 7 3 K/1 0 0 hr 時効処理 し た合金 に対す る もの,また Fi g.4 は 4 7 3 K/2 0 0 hr 時 効処理 した合金 に対す るものである。いずれの応力‑
ひずみ曲線 において も直線的に応力が増加す る弾性変 形域か ら加工硬化を伴 う塑性変形域 までを示 している。
しか し,ひずみ量が約 1 2% 以上 になるといずれ の温度 やひずみ速度 において も定常変形状態域 に入 ることが わか る。また同一圧縮試験温度ではひずみ速度が減少
E/%
8 1
す るはど応力 レベルが低下 し,かつ同一ひずみ速度 で は変形温度が上昇す るほど応力 レベルが低下す ること がわか る。 このことは後 にも述べるように,変形によっ て導入 された転位の密度増加 による加工硬化 と変形中 に回復 によって生ず る転位密度減少 による軟化および Os t wal d 成長 による Si 粒子の粗大化再分散 が主 な原 因 にな っているものと考え られ る。特 に温度 5 7 3 K 以 上での低ひずみ速度では変形初期に明瞭な高温降伏現 象が見 られるが,高ひずみ速度で は定常変形状態 に入 る前 に大 きく加工硬化 していることがわか る。次 に こ れ らの曲線か ら得 られ る降伏応力 と定常変形応力の挙 動 について検討す ることにす る。
3 .2 降伏応力
粒子分散強化合金の高温変形 においては,それ以下 の小 さい応力で は変形が進行 しない,いわゆる変形 に 対す るしきい応力が存在す ることが知 られている。 し きい応力値が高いほど材料 は高応力で も変形で きない のであるか ら,この値 は材料 の高温強度向上 に対 して 重要な因子であ り,この値を知 ることは高温変形機構 の解析 にも大変重要 となって くる。そ こで,本節 で は 前述の応力‑ひずみ曲線を もとに最初 に しきい応力 に
e/%
1 1 0 % 1
Fi g・1 Tr ues t r e s s ‑ t r ues t r ai nc ur ve satvar i ouss t r ai nr at e sandt e mpe r at ur e sf ort heal l oyage dat
4 7 3 K f orl l hr
8 2
呂 満珊 ・後藤正治 ・麻生節夫 ・小松芳成・劉 武e
/%
ど/ ' % 一 .̲ ・
.し竺Fi g.2 Tr ues t r e s s ‑ t r ues t r ai nc ur v e satvar i ouss t r ai nr at e sandt e mpe r at ur e sf ort heal l oyage dat 4 7 3 K f or3 0 hr
e
/%
Fi g.3 Tr ues t r e s s ‑ t r ues t r ai nc ur v e satvar i ouss t r ai nr at e sandt e mpe r at ur e sf ort heal l oyage dat
4 7 3 K f orl O O hr
第 1 0 巻 第 1号 ( 1 9 9
7)A
1‑ 1 . 0 3 ma s s %S l合金 における高温変形挙動 と
S l析 出粒子 の Os t wa l d
成長e/ i e/ % . 1 0 % .
8 3
Fl g.4 Tr ues t r e s s ‑ t r ues t r ai nc ur v e satv ar i ouss t r al nr at e sandt e mpe r at ur e sf ort heal l oyage dat 4 7 3 K f or2 0 0 hr
つ いて検討す ることと した。 しきい応力 の求 め方 に は ク リープ試験法や引張試験法 な どいろいろの方法が提 案 されているが,吉 田 ら
8)によれば ,分 散 強化 合金 の 高温変形 の しきい応力測定法 の一つ と して,引張試 験 によって得 られた応力‑ ひずみ曲線 の形状 を解析すれ ば,この ときの比例限界 の応力すなわち,降伏 応 力値 が しきい応力 とほぼ一致す ることを報告 している。本 実験 において も吉 田 ら
8)の方法 に従 って ,圧縮 試験 で 得 られた応力‑ ひずみ曲線 の比例限界応力を降伏応力, すなわち しきい応 力 と して測 定 した 。Fi g. 5 は 4 7 3 K で各時間時効処理 した試 料 を室 温 ( RT),5 2 3 K,5 7 3 K および 6 2 3 K で圧縮試験 した ものの降伏応 力 の値 を それぞれ ( a),( b),( C )および ( d) の曲線 と して示 した。各曲線 は 4 7 3 K にお け る時効 処理 時 間 に対 して 中間 に ピークを有す る単純 な一段時効硬化 曲線 の形態 を呈 している。 この ことか らも本合金 は時効初期 に微 細 Si 粒子が単体で析出 し,粒 子 径 の増 大 は見 られ な いが 9 ) ,数密度 の増加 を伴 った初期時効段階を経て ピー ク位置を示 した後に Si 粒子同志の Os t wal d 成長 によっ て,粒子径 は増大 し,数密度 は減少す るいわ ゆ る過 時 効段階を経て軟化す るもので ある ことが推 察 で きる。
(edH)S♪aJ)S P一a l^
る O C O T Z O 4 0 . 6 0 ' 勧 〕 三 c c 三 三 O
Agl ngTl me
(hr )
Fi g.5 Thec hangel nyi e l ds t r e s spr e s s e datvar i ‑ Oust e mpe r at ur ewi t ht i meage dat4 7 3 K 圧縮温度 の増加 とともに,応力 レベルおよび ピー ク値
ともに低下す るのは圧縮温度が本試験片の最初 の時効
処理温度 よ りも高温で あるために,それ らの温 度 で圧
縮試験 を行 っている過程 です で に Os t wal d 成長 が進
行 し ,4 7 3K での時効状態が一層加 速 され た ことによ
るもの (ピーク以後) と考 え られ る。 なお ,5 2 3‑6 2 3
K における圧縮 の場合約 1 0 0 hr の ピーク値 を示 す時効
時間 まで はそれぞれの温度での ピーク値 よ り低 い値 を
呂 満珊 ・後藤正治 ・麻生節夫 ・小松芳成 ・劉 武
示 しているが,これ はそれ らの温 度 で は Si 粒 子 の サ イズが小 さす ぎて,まだ初期時効段階 に相当 して いた ことや復元現象 に もとず く一部粒子 の再固潜 による軟 化 によるものであろ う。 いずれ に して も,ピー ク値以 後 は析 出粒 子の体積分率が一定 の もとで粒子同志 の く い合 いがお こ り ,Os t wal d 成長 に帰 因 す る過 時効 の 効果 によって降伏応力,す なわち しきい応力が低下 し てゆ くもの と推察 され る 。
以上 のよ うに熱的 に不安定 な粒 子を含む析出硬化型 合金 の場合 は,変形 に対す る しきい応力 の値が分散 粒 子 の析出状態 によって,様 々に変化 し得 ることが明 ら か とな った。 この ことは材料 の実用面 において も大 変 注 目すべ きことである。
3 .3 定常変形状態 にお ける応力 とひずみ速度 の関 係
3 .3 .1 変形温度依存性
4 7 3 K で時効処理 した合金 に対 して ,種 々の温度 に おけるひずみ速度 E を定常変形応力 Uの両対数でプロッ トした一例 を Fi g.6 に示す。 なお ,この図 に は 47 3 K で 1 1 hr 時効処 理後 4 7 3‑6 2 3 K で圧縮試 験 を行 った時 の定常変形 応 力 のみ を示 し,そ の他 の時効処 理 時 間 ( 3 0 hr,1 0 0 hr,2 0 0 hr ) での結果 もほぼ同様 の傾向を示 したので ここで はそれ らを省略 した。 また比較 のた め
10[‑ 01
1DE‑ 02
10E‑ 03
1OE‑ 04
iOE1 05
10〔‑ 06
10〔‑ 07
6/ MPa
Fi g.6 Ther e l at i onbe t we e ns t r e s sand s t r ai n r at ef ort hes t e ady‑ s t at ede f or mat i on
に純 Al 試験片 に対す る結果 も示 した。 さ らに,前述 の比例限界応力
cTyを しきい応力 と して見 な し,ひず み速度が ほとん ど無視で きるほどの変形速度 ,す なわ ち 8‑ 1 . 0×1 0 7S 1 の位置 にプロッ トして示 した。 図 か ら明 らかなよ うに,比例限応 力
uyが変形 温度 に強 く依存 して い る ことが見 られ る。 と ころで ,葉 英華 ら 1 ) によると分散強化 A 1 ‑ 1 . 5vo1 %Be 合金 の高温変形 における しきい応力 は変形温度 には依存 しない ことが 報告 されてお り,本実験 の結果 と大 きな違 いを示 して いる。 この ことは前節で も述べたよ うに本実験で用 い た試料 は熱的に不安定 な析出粒子 を含 むか らで あ る。
この ことは著者 らが前 報 1 0 )で提案 した モ デルを用 い て得 られた結果 ,すなわち,熱的 に不安定 な粒子 を含 む合金 の場合 は しきい応力が変形温度 に強 く依存す る が,安定 な粒子 である場合 は しきい応力 は変形 温度 に 依存 しないとい うことを実験的 に証 明 したものである。
Fi g.6 に示 して いる測定 点 はそれ ぞれ の高応 力域 で 直線関係が成 り立 ち,その直線 の勾配すなわち応 力指 数 は変形温度 の増加 とともに幾分小 さ くな る傾向が認 め られ るようで ある。なお,比較 の ため純 Al に対 し て測定 した結 果 も同図 に併記 した。 純 Al と A 1 ‑ 1. 0 3
%Si 合金 の場合 を比 べ ると,変形温度が高 いほど,ま た応力が低下す るほど,両者間の差が大 き くな って常 に A l ‑ 1・ 0 3%Si 合金 の方 が高応 力側 に位 置 して お り, いずれの温度 において も析出粒子強化 の効果が顕著 に 現れていることがわか る。
3 .3 .2 Si 析 出物粒子のパ ラメ‑タ‑依存性 A 1 ‑ 1. 0 3 mas s%S l合金 にお いて は転 位 は Si 析 出粒 子 によ って運動 を阻止 され るので,その ことによって, 合金 の強度 は高 くなる。 したが って ,Si 析 出粒 子の分 散パ ラメー ターが高温変形中 にどのよ うに変化す るの かを明 らかにす ることは合金 の高温強度 を論 じる上で 重要 な問題であ る。前節で述 べ た よ うに Fi g.5 によ り ,4 7 3 K で時効 処理 した合 金 を 47 3‑6 2 3 K の温度 範 囲で変形すれば降伏強度 の ピーク位置が約 7 0 hr 〜1 0 0 h
r時間範囲 に現れている。その後 の時間 に対 して は析 出粒子が Os t wal d 成長す ると考 え られ る。 この場 合 , 定常変形応力 とひずみ速度 の関係が どのよ うに変化す
るのかを解明す るために ,4 7 3 K で各 時 間時効処 理 し た合金を種 々の温度で圧縮変形 して,その ときの定常 変形応力 とひずみ速度 の関係 を求 めて Fi g.7 示 した。
図中の記号 は 4 7 3K で時効処理 した時 間 を示 す (た と
第1 0巻 第
1号( 1 9 9 7 )
1 . O E ‑ 01
1 . 0 [ 一 02
10 E ‑ 03
7 1O E ‑ 04
ヽ
∽
ヽIt A J IO E ‑ 05
1 . 0 [ ‑ 0 6
10 E ‑ 07 10 E ‑ 01
1 , O E ‑ 02
1 . 0 〔 一 03
T 1O E ‑ 0 4
iZ
の
IL A J l . OE ‑ 05
l , OE ‑ 0 6
10 E ‑ 0 7
A 1 ‑ 10 3 ma s s %S i
合金における高温変形挙動 とS
l析 出粒子 のOs t wa l d
成長1 0 0 q/MPa
47 3K ( b)5 23K ( C)57 3K and ( d)623K
えばrl O O bは 47 3K で1 0 0hr 時効処理を Si 粒子 を成長分 散 させた合金を各温度で圧縮変形 したものである)す なわち,rl O O h か ら r5 。 。 h になるほどSi 粒子 は粗大分散 し ているo これ らの図を見 ると,いずれ と もSi 析 出物 粒 子の大 きさが増加す るとともに,定常変形応力 が減 少す ることが見 られる○すなわち,また圧縮試験温度 が上昇す るほど (( a)か ら ( d)へ)応力値 は低応力 レ ベル側 に移動 し,高温変形中にもOst wal d 成長を伴 っ た強度低下が進行 していることを示 している。 この原 因を調べ ると,Ost wal d成長 して析 出粒子 の粗大化 にともな って,析出粒子の数密度 は減少 し,平均粒 子
1 0 0 α/MPa
8 5
Fi g17 Ef , I r 7 1 ヽ f T e L T / ctofOst 1\‑ √ ヽ l r T wal y ・′\̲ dgrowt ̲. 、 . ̲ I hont her el at i on bet ween st rai n rat eand st eady‑ st at est r essf or ( a)
問距離が増加す るので,Si 析出粒子強化の効果が弱 く なるものと考え られ る。 この ことは宮川 ら1 1 )によって も報告 されているように,分散パ ラメータが小 さい方 が分散粒 子による強化が大 きいということと同 じ傾向 である。
3.4 0st wal d成長の観察
前節 においては高温 における定常変形応力の変化や
しきい応力の温度依存性 などは,すべて本合金 にお け
るSi 析出粒子 の Ost wal d成長 に帰因す るものであ る
として議論を進めて来た。 しか し,本合金 にお いて実
際に Ost wal d 成長が生 じているか否 を実証 す る必要
8 6
呂 満珊 ・後藤正治 ・麻生節夫 ・小松芳成 ・劉 武Fi g.8 TEM phot ogr aphofSlpr e C l pl t at e Si nal l oy
( a)age dat4 7 3 K f orl l hr ,‑ ra‑4. 3 0× 10 7 c m,( b)age dat4 7 3 K f or3 0 hr , ‑ rb‑5. 5 0 × 1 0‑7 c m , ( C )age dat4 7 3 K f orl O Ohr ,子。 ‑4. 3 0 ×1 0 7 c m,( d)age dat4 7 3 K f or2 0 0hr ,fd‑4. 3 0×
10ー 6 c m.
がある。そ こで本節ではこの点 について検討す ること に した 。Fi g. 8 は 4 7 3 K で時効処理 した合金 の Si 析出 粒子の透過電子顕微鏡写真である 。 ( a)は , 1 1時間で 時効 した もの,( b) は 3 0 時間で時効 した もの,( C) は 1 0 0 時間で時効 した もの,また ( d) は 2 0 0 時間で時効 した ものである。いずれの場合 も Si 析 出粒子 はほぼ 球状であることが確認 された 。Li f s hi z ‑ Wagne r の理 論 によれば ,Os t wal d 成長 が拡散律速 で起 こる場合 には,時効処理時間
tに対す る析出物粒子 の平均半径 r の依存性 は テ3
‑ ‑r3+kt で 与え られ る。 ここで ,k‑
8c T DCVm/9 RT, Uは析出粒子 と母相 の間 の界面 の 界面 自由エネルギー ,D は母相中での溶質原子の拡散 係数 ,Vm は析 出物粒子 のモル体積 ,R は気体定数 お よび T は温度であ り , ‑ r 。は Os t wal d 成長 が始 ま る時 点での析出粒子 の平均半径である 。TEM 写 真か ら Si 析出粒子の平均半径を測定 した結果 を Fi g.9 に示 し
14
12
10
8
6
4
2
2 3 4 5 6 7
t l /3 ( h l /3)
Fi g.9 Thec hangeofme anr adi usofSipr e c l pl ‑
t at e sage dat4 7 3 K
第