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青少年非行と道徳教育 (一)

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77

青少年非行と道徳教育 (一)

戦後に於ける青少年非行の量的,質的推移の概観一 社会科学教育研究室 定 形 善 次 郎

目      次 一 序  論

1 道徳教育の二面 2 青少年及び非行の概念

二 戦後に於ける青少年犯罪の量的推移 1 青少年犯罪と成人犯罪の量的推移の比較 2 青少年の各年令層別犯罪の量的推移の比較 三 戦後に於ける青少年犯罪の質的推移

1 青少年犯罪と成人犯罪の質的推移の比較 2 青少年の各年令層別罪種内容の比較 四 最近に於ける児童生徒の犯罪の特色

1 量的な特色 2 質的な特色

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1 道徳教育のこ面

道徳教育という言葉を広い意味に解した場合, そのはたらきには二つの面が考えられ る。その一つは子供達の道徳性を啓培してより高い道徳的価値を実現し道徳的理想に少し でも近づけようとする積極的な面であり,他は子供の反道徳的,反社会的な違法の行動を 防止し或はそれを補導して正常な道徳的社会的行動にまで復帰させようとする消極的な面 である。前者が道徳の最高限を目ざして積極的に道徳性を高めようとするはたらきである

とすれば,後者は,道徳の最低限を確保して,それからの脱落を防止し,或は救済しょう   ・ とするはたらきである。家庭に於ける積極的なしつけや,学校に於ける教育課程を通して

の計画的,組織的な道徳教育等は前者に属し,社会の各種機関による青少年補導や,不良     化防止,学校に於ける生活指導,特に校外指導等は主として後者に属する。

勿論この両面は互に相関連し相補って始めて道徳教育は全うされるぺきものであって,

事実戦後に於ける青少年の犯罪或は不良行為の激増が学校その他に於ける積極的な道徳教 育の必要性を叫ばせた重要な因子の一つであることは否定できない。従って本来反社会的 な非行を防止して道徳の最低限を確保する為には道徳の最高限を目ざす積極的な道徳教育

(2)

によるべきではあるが,生活環境が無意図約な力を以て強力に子供達にはたらきかける今 日の我国の社会的環境的条件の中にあっては,積極的な面の強化と共に,非行への転落を 防止し或は補導することを直接の目標とする道徳教育の消極的な面が十分に考慮されなけ ればならない。学校に於ける道徳教育に限定して考えても,所謂教育課程を通しての計画 的な道徳教育の充実と共に,日常の生活,就中校外の生活指導が重視される所以であり,

しかも後者に実際指導上の多くの問題点と困難点とがあるのである。

然し非行への防1ヒ或は補導が道徳教育の重要な領域であるとしても元来違法性をもった 犯罪行為のすべてが常に反道徳的行為であるとは言い得ない。社会的規範としての法が時 処の制約を受ける相対約な意味をもつものであるとすれば違法性をその要件とする犯罪も 又相対的な意味をもつものである以上,すぺての犯罪が絶対的な意味に於て反道徳内であ るとは言い得ないし,更に行為の心術が社会改革約或は利他的動機に基づく確信犯罪のよ うな場合には,所謂背徳内破廉恥的動機に基づく犯罪とは異った性格をもつものであり,

行為者自らも自己のなした行為について違法性の意識を全然もたない場合があり,このよ うな行為がたとい結果として違法性をもった犯罪として成立したとしてもそれが厳密な意 味に於て反道徳内な行為であるか否かの判定は極めて困難な場合が多い。従って違法性を

もった犯罪行為が厳密な意昧に於ては常に必ずしも反道徳的な行為であるとは言い得ない が,然し少くとも青少年の犯罪或は非行はそのほとんどが反社会的な心術から出た反公共 的性格をもった行為であり,その意味では反道徳灼な行為として考えることが出来るの で,我々は今日の青少年の道徳1生の実態をその犯罪或は非行の実態を通しても窺うことか できるのである。

従って,一般に法が道徳の最低限であるとすれば,その法に違反した犯罪或は非行を防 止して道徳の最低限を確保することは依然として今日の青少年には必要な道徳教育の消極 的な面であり,しかもその為にはその道徳性の指表としての犯罪或は非行の実態を正確に 把握することが何よりも必要である。即ち特に最近に於ける青少年犯罪或は非行の量的及 び質的な推移の傾向,青少年犯罪非行の動機原因の特色,更にはその地域的環境的条件等 についての把握は,直接的には道徳の最低限の確保を目ざす消極約な道徳教育の為に必要 であると共に,それが今日の青少年の道徳性を示す一つの指表である限りに於て,それは 又道徳の最高限をめざす積極的な道徳教育の為にも必要な重要な資料の一つになるので

ある。本稿では上述の意味に於ける道徳教育との関連をその基本にふまえながら,青少年 犯罪非行の実態の中で,特に戦後に於けるその量的及び質的な推移の傾向を,主として統 計的資料に基づいて概視することを中心とし,青少年非行の実態の中でその原因,動機の 特色やその地域的環境的条件等については紙数の関係上次稿に譲ることにする。

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定 形:青少年非行と道徳教育 (一)      79

2 青少年及び非行の概念

犯罪学上或は犯罪統計上の青少年の概念は社会慣習上或は心理学上のそれとは必ずしも 相一致しない。前者の立場に於ける少年の概念は少年法に基づくものであって,昭和23年 に改正された少年法では,大正11年に始めて公布された少年法に於ける18才の少年年令を 20才まで引き上げたので,現在では20才に満たないものをすぺて犯罪学上の少年と呼んで いる。更に大正11年の矯正院法によれば「矯正院に収容した者の在院は23才を超えること ができない」と規定されているが,これは犯罪時18才に満たないものが少年であり,18才 を超えても矯正の為に23才まで収容した場合少年に準じた取扱をしてこれを準少年又は青 年と呼んでいる。従ってrrl矯正院法では18才から23才までが犯罪学上の青年であったが,

改正の矯正院法では14才以上26才未満の者を収容することになっているので,現在では20 才以上25才以下の者が青年に属するわけである。従って犯罪学上或は犯罪統計上青少年と 呼ぶ場合は25才以下のすべての者を指し,そのうち20才以上25才以下が青年,20才未満が 少年に属するわけである。この場合青年及び少年の年令限界を決定する基準は,前者が主 として感化能力を中心としているのに対して,後者は主として犯罪時に於ける意思決定の 濃度を中心にしているのであって,この年令限界を決定する基準が社会慣習上或は心理学 上のそれと異っている為に,両者の青少年の概念が必ずしも相一致しないのである。即ち 犯罪学上の青年は主として心理学上の青年後期に当り,心理学上の青年前期,中期は児童 期や幼児期を含めてすぺて犯罪学上の少年に入るのである。

次に青少年非行の内容をなす犯罪の概念については,本来それは法律的な概念であっ て,犯罪が成立する為の要件としては一般に(1)構成要件に該当した現実の事実(2)違法性

(3侑責性の3要素が具備されることが必要であって,このうち全部又は一部の要素が欠け た行為は,たとい道徳的に悪とされ宗教的に罪とされる行為であっても法律上犯罪とはさ れない。従って青少年非行の内容もこの犯罪を成立させる3つの要素との関係で分類する

と次のようになる。

第1に実質的には上述の3つの要素のうち(1)及び②の要素を備えた構成要作に該当した 違法性をもった行為であっても,行為者がまだ十分に自己の行動に対する責任能力を特た ないと認められる14才未満の少年の場合は,未だ刑事責任を負わすべき有責性の行為とし ては認め難いという立場から犯罪としては認められず,唯法に触れる所謂触法行為として 犯罪行為から区別されている。

ところが14才以上の少年の場合は既に十分に責任能力を持った存在として,(1)及び(2)の 要件に該当した行為は当然完全な犯罪行為として認められる。唯同じく犯罪であってもそ

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(4)

の精神約な特殊性,意思決定の濃度,感化能力等の立場からその審判や処分に就ては成人 犯罪の場合とは別個な少年法の規定に従って特別な取扱いをうけているが,法律上の犯罪 である点に於ては成人犯罪と何等異るものではない。

更に20才から25才までの青年の犯罪行為は完全な成人犯罪として取扱われ,唯感化能力 等の立場から矯正上少年に準じた取扱をうける場合があるだけである。

次に少年の行為の中で実質的には反社会的反道徳ゴ勺な行為であるが,犯罪を成立させる 要件としての(1)及び(2)に該当しない為に,形式的法律的には犯罪行為としては成立しない が,然し犯罪行為を生み又はそれに発展する可能性をもった所謂不良行為を虞犯行為と呼 び,刑罰の対象としてではなく補導教育の対象としている。

以上の14才未満の触法行為,少年及び青年の犯罪行為,少年の虞犯行為のすべてを総称 して一般に青少年の非行と呼び,この非行の主体としての青少年を非行少年又は非行青年 と呼んでいる。

本稿では以上の青少年非行に就て,各年令階層及び罪種別にその量的及び質的な推移の 特色を,主として警察庁の統計資料を中心にして概観しようとするものであるが,紙数の 関係上虞犯行為については本稿では触れない。

二 戦後に於ける青少年犯罪の量的推移

1 青少年犯罪と成人犯罪の量的推移の比較

戦後に於ける我国の青少年犯罪(触法を含む)の量的な変化の特色を成人犯罪のそれと 比較して明かにするために,終戦直前の昭和18年から32年に至る15年間の全刑法犯及び青 少年,成人の検挙人員の実数を警察庁の統計によゲ(示すと第1表の(1)の通りであるが,

更にこの全刑法犯に対する育少年犯罪と成人犯罪の割合の変化を第1表(2)について比較す ると

① 昭和18年から20年に至る終戦直前の3ケ年は青少年犯罪は全刑法犯の約巷であって成 人犯罪の大体看であったが,

② 終戦直後の21年から早くも青少年の割合は急激に増加して成人に迫り,23年以降31年 までは多少の割合の増減はあったが僅かに成人犯罪を下廻りながら全刑法犯の半数近く を占めていた。

③ ところが32年に至って遂に青少年犯罪は全刑法犯の過半数の51%を占めて成人犯罪を 僅かながら凌駕するに至った。

従って青少年犯罪を全刑法犯に対する割合の上から終戦直前と戦後とを比較すると全刑

(5)

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(6)

率は成人の2倍を遙かに超えて,全刑法犯に対する割合の場合と同様の傾向を示している。

然し青少年犯罪のこのような高い増加率は,終戦直前の3ケ年の平均を基準としている 為であって,今終戦直後の21年を100とする指数で戦後の推移を成人のそれと比較すると,

第1表の㈲にみられるように22年の例外を除いては依然として青少年は成人より高い指数 を示してはいるが,両者の差は終戦直前を基準とした場合よりも遙かに少くなり両者の最 高指数は青少年の26年の149に対して成人の25年の134となり,青少年犯罪の増加率が成 人犯罪のそれに比較して必ずしもそれ程高いとは言えない。この基準の年度の相違からく

る増加率の相違は,基準となった終戦直前の3ケ年の平均に対する終戦直後の21年の増加 率の大小によるものであって,成人が18年内至20年から21年にかけては僅かに2割足ら ずの119の増加指数であるのに対して,育少年の場合は2倍以上の209の高い指数を示し ており,この基準年度の増加率の相違が終戦直前に対する青少年犯罪の戦後の増加率を成 人に比較して特に高くしている事内であると共に,終戦直後を基準とした両者の増加率の 相違を少くしている理由でもある。従って戦後に於ける青少年犯罪の推移の中で,この終 戦直後に於ける急激な増加がその特色の一つとして注目されるぺきであって,このことは 後に詳述するように青少年厄特に青年層と戦争との特殊な関係に基づくものである。

以上成人犯罪と比較した青少年犯罪の量的推移の特色としては,

① 全刑法犯に対する割合に於ても,増加率に於ても青少年は成人よりも高い増加を示し ているが,

② 特に終戦直前から直後にかけて成人より遙かに高い土曽加を示していることがその重要 な特色の一つであると共に,

③ 一度頂点に達した成人犯罪がその後は僅かながら減少の傾向を示しているのに対し て,青少年犯罪が同様に減少の傾向を示しながら,30年から再び可成著しい増加を示し て32年に至っている事実である。

2 青少年の各年令層別犯罪の量的推移の比較

青少年犯罪の年令層別の量的変化の特色をみる為に,青少年を20才から25才までの青年 層,14才から20才未満の少年層,及び14才未満の低年令層に分けて各年令層に於ける昭和 18年から32年までの検挙人員の実数をあげると第2表(1)の通りであるが,更に第2表(2)に

よって青少年犯罪全体に対する各年令層別の割合をみると,

① 青年層は終戦前は少年層より割合が低くて大体全体の巷であったが,終戦直後から急 激にその割合が増加し,22年からは少年層を凌駕して,その後は常に3年令層の中で最

も高い割合を占め,25年から27年までの3ケ年を除いては全体の過半数を占めて,14才

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以上のように戦後に於ける青少年の各年令層別の割合は高年令層程高くて,昭和32年に 於ける3年令層の割合は大体5:4:1になり青年層が青少年犯罪全体の半数を占めている。

然し推移の全体をみると特に終戦直後に於ける青年層の割合の急激な増加と,24年以降に 於ける少年層の激しい割合の変化が特に注意されなければならない特色があるが,このこ

とは後述の年令層別の増加率の比較によって一層明かになるであろう。

なお年令層別の特色を更に詳細にみる為に14才から20才未満の少年層を14才から17才,

18才から19才の2年令層に分けて,第一図のように4年令層についてその構成割合の変化 をみると18才以上の高年令の青少年が大体全体の70%前後を,17才以下の低年令の少年層 が30%前後の割合を占め,そのうち14才未満の最低年令層が全体の10%前後を占め,32年 現在の4年令層の比は大体5:2:2:1の割合になっている。

第一図 4年令層別構成割合の変化

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次に青少年犯罪の各年令層別の特色をその増加率の面からみる為に,青少年犯罪全体の   , 推移の特色の上から,戦後の21年から32年までの12年間を3つの時期に分けて,終戦直後 から急激に増加して最頂点に達した第1期を第1上昇期,最頂点から次第に減少の傾向を 示して最低点に達した第2期を下降期,最低点から再び増加を始めた第3期を第2上昇期

と名づけると,青少年全体及び各年令層別の各時期は第3表のようになる。

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(9)

定 形:青少年非行と道徳教育 (一)       85 が400前後の高い指数を示して最も高く,24年までは少年層がこれに次でいたが25年以 降は14才未満の最低年令層が急激に増加して少年層を凌駕し,青年層に次で最高321の 指数を記録している。

② 更に少年層を18才から19才の高年令少年層,14才から17才までの中年令少年層に分け て第二図のように4年令雇別の増加率を比較すると,14才から25才までの青少年の各年 令層ては全期間を通じて高年令屠にゆく程高い増加率を示しているが,唯14才未満の最

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次に各年令層別の特色を第1上昇期,下降期及び第2上昇期の3時期に分けて梢詳細に みると(第二図)

① 青年層は第1上昇期が最も短かくて短期間のうちに急激な増加をみせて23年に早くも 頂点に達し,その後は他年令層に比ぺてその変化が極めて少くて所謂下降期と称すべき 時期が明かでないが,概して24年から27年まで緩かな減少傾向を示し・28年から第2上 昇期に入って30年以降は第1上昇期の頂点である23年を上廻る高い指数を示しながら増 加を続けている。

② これに対して最低年令の14才未満の少年層は青年層の第1七昇期に当る時期は,僅か に120以下の増加指数を示して大した増加もみられなかったが,青年層が下降期に入っ た24年から著しい増加をみせて26年には戦後最高の321の指数を示し,その後27年から 30年までは減少の傾向をみせたが31年から第2上昇期に入って他の年令層に比べて可成 著しい増加を示している。

(10)

③ 14才以上20才未満の少年層は上述の2年令層のような急激な上昇は第1上昇期にはみ られず21年から26年まで徐々に増加して頂点に達し,その後の下降期及び第2上昇期は 概して低年令層と同じ傾向を示している。然しこの少年層を更に14才から17才,18才か

ら19才の2年令層に分けてみると,18才以上の高年令少年層では青年層に,17才以下の 中年令少年層では14才未満の最低年令少年層に夫々似た変化の曲線を示している。従っ て青少年犯罪の戦後に於ける増減の傾向は,又18才以上と18才未満との2年令層に分け てその特色をみることができるが,特に第1上昇期に於ける終戦後の増加の傾向には18 才以上の高年令層と18才未満の低年令層の間には明かに異った特色がみられるのである。

④ 各年令層に於ける第1上昇期の頂点,下降期の起点及び底点,第2上昇期の起点等は 必ずしも同じでなく,第4表のように概して各期の起点頂点底点等は高年令層程早く低 年令層にゆくに従っておそく始まっている。このことは犯罪増減の波が高年令層から始

まって低年令層に及んでゆくことを示しており,青少年犯罪の増減は高い世代から低い 世代に次第に転移してゆくことを示している。

第4表  各年令層に於ける増減の頂点,起点,底点

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低年令少年刷14才未測26年 27年13・勾一31・臼

⑤ 更に各年令層に於ける犯罪増減の波の振幅は青年層が最も小さく,14才未満の低年令 層が最も大きく,少年層は両者の中間を示している。従って戦後に於ける犯罪の増減の 変化の大小は低年令層程大きく高年令層にゆくに従って小さくなっているが,更に成人 層をも合わせて比較すると一層明かであって,第1表にみられるように成人層には所謂 第2上昇期と称すぺき時期がなくて, その増減の振幅は青年層より更に小さくなって いる。このことは戦後に於ける各種の杜会的環境的条件の変化が,精神的安定性を欠く 低年令層程敏感に影響している事実を示すものと思考される。

以上終戦直前を基準とした増加率の比較では最高年令層である青年層が最も高い増加率を 示し,しかも終戦直後から極めて短期閲のうちに急激な増加をみせて他の年令層にはみら れない400を超える指数を示していることは戦後に於ける青少年犯罪の特色の一つとして 注目されなければならないが,しかしこれを以て直ちにこの年令層が戦後特に犯罪化した

(11)

定 形:青少年非行と道徳教育 (一)       87 とみることはできない。即ち青年層の高い増加指数は終戦直前を基準とした増加率である 為であって,この基準となった昭和18年から20年の期間は太平洋戦争の末期で青少年の中 では20才から25才の青年層が最も多く軍務に服し,犯罪を犯す可能性をもった実質人口が 極度に少くなり,それがこの期間のこの年令層の犯罪を異常に少くしたのである。ところが 終戦にょって21年から23年にかけて復員その他の事情でこの年令層の人口は急激に増加し

これに伴って犯罪実数も,非常に少かった終戦直前に比較して激しい増加をみせ,高い増 加指数を示すに至ったのである。従って仮に復員のまだ完全に終了しなかった21年から22 年にかけての2ケ年間の平均を100とした指数で23年以降の増加率をみると第2表㈲のよ うに青年層が他の年令層に比ぺて特別高い増加を示しているとはいい得ないのであって,

むしろ14才未満の最低年令の少年層の方が遥に高い増加指数を示しているのである。従っ て終戦直前を基準にした増加率では青年層が極めて高い増加指数を示しているが,これは 特にこの年令層が戦争の直接影響による特殊な事情に基づくものであり,23年以降は大き な変化がみられないのに対して,終戦直前から直後にかけてはそれ程の増加を見なかった 14才未満の少年層がその後著しい増減をみせて今日に至り,しかも特に第2上昇期には他 の年令層より遥かに急カーブを描いて上昇を続けている傾向こそ,戦後の青少年犯罪の中 で特に注目されなければならない特色の一つであり,更にこの年令層はすぺて現在義務教 育の対象として学校教育をうけている年令層であるだけに,道徳教育上特に考慮されなけ ればならない問題である。

三 戦後に於ける青少年犯罪の質的推移

1 青少年犯罪と成人犯罪の質的推移の比較

犯罪の内容分類はいろいろな立場から行われているが,警察庁の犯罪統計は兇悪犯(殺 人,強姦,放火,強盗)粗暴犯(暴行,傷害,脅迫,恐喝)窃盗罪・知能犯(詐欺・横領 偽造,潅職,背任)風俗犯(賭博,狸褻,堕胎)及びその他の刑法犯に分類しているが・

ここではこの分類の中特に青少年犯罪に関係の深い兇悪犯,粗暴犯,窃盗罪及び性犯(兇 悪犯の中の強姦罪と風俗犯の中の狸i褻罪とを合わせたもの)を中心として青少年の罪種別 構成割合と増加率の変化を成人のそれと比較して青少年犯罪の内容的質的推移の特色を概 観する。

(1)罪種別構成割合の比較

昭和23年から32年に至る過去10年間の青少年及び成人の各罪種別の犯罪実数は第5表の

(1)の通りであるが,その罪種別の構成割合の変化を青少年と成人とを比較すると,第5表

(12)

の②のようである。

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この表について両者に共通な質的変化の特色をみると,

① 両者共に全期間を通じて窃盗が最も高い割合を占め,粗暴犯がこれに次ぎ,兇悪犯 性犯はその割合は共に低くなっている。

②更に両者を通じて窃盗犯の割合は次第に減少の傾向を示しているのに対して,粗暴 犯の割合は可成著しい増加の傾向をみせて居り,兇悪犯と性犯との間にもこれと類似

した傾向がみられる。

次に両者の相異点を通して成人犯罪に対する青少年犯罪の質的変化の特色をみると,

① 窃盗は両者共に全犯罪に対する割合は最も高くなっているが,その刮合は青少年の

(13)

定 形:青少年非行と道徳教育 (一)      89 方が遥に高く,昭和26年の64.6%を頂点としてその後は次第に減少はしているが,32 年を除いては常に全犯罪の過半数を占めている。これに対して成人は常に30%台を上 下し,この範囲内で青少年と同様26年の39・1%を最高として僅かながら減少している。

② 窃盗に次で高い割合を占めている粗暴犯は,25年までは青少年の方が稽高い割合を 示していたが,26年以降は両者が殆んど同じ割合を示しながら13%台から25%台に相 当著しい増加を続けている。

③ 青少年では窃盗と粗暴犯の割合を合わせると,全期間を通じて大体75%の線を上一ド しているので,両罪種で全犯罪の量を占めており,昭和32年では窃盗が全犯罪の毒弱 粗暴犯がま強になっているが,成人の場合では両罪種で大体50%から60%の間を増加 しており,32第現在では粗暴犯は青少年と同様全犯罪の量弱であるが窃盗は青少年の 壱弱に紺して巷弱になっている。

④ 兇悪犯と性犯とはその犯罪実数が窃盗や粗暴犯に比べて非常に少い為に,全体に対 する構成剖合も低くこの上から変化をみることは困難であるが,然し次の罪種別増加 率でも明かなように犯罪実数の上では両罪種共可成り著しい増減を示している。唯両 罪種共に青少年が成人よりも全体に対する割合が高くなっていることは青少年犯罪の 特色の一つである。

⑤ 知能犯,風俗犯を含むその他の刑法犯の割合が成人の場合は青少年より遥に高くて・

40%内至う0%を占めているというところに青少年犯罪に対する成人犯罪の質的な特色 がみられる。

以上青少年犯罪と成人犯罪との内容的質的推移の特色をその共通点と相違点から概 観したのであるが,この特色は更に罪種別増加率を比較すると一層明かになる。

(2)罪種別増加率の比較

昭和23年から32年までの10年間の各罪種別の増加率を23年を100とした指数で青少年と 成人とを比較すると第6表(1汲び第三図にみられるように,両者共に増加率の高いのは粗 暴犯と性犯であり,窃盗犯と兇悪犯とは23年以降僅かながら減少の傾向がみられる。然し 粗暴犯と性犯及び窃盗と兇悪犯とを青少年と成人とについて梢詳細にみると次のような特 色がみられる。

先づ粗暴犯と性犯では,

ω 青少年では粗暴犯が全期間を通じて注犯より高い増加率を示しているのに対して,成 人では29年までは性犯が粗暴犯より遥に高い増加率を示し,30年以降よ粗暴犯が性犯を 凌駕した。

② 更に23年以降は青少年では粗暴犯が性氾より早く急激な増加を開始して,その後も依

(14)

第6表  青少年,成人,罪種別増加率

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然激しい増加を続け,性犯は遅くれて増加を始めたがその後は急カーブを描いて上昇し ているのに対して,成人では性犯が粗暴犯よりも早く極めて急激な増加を始めて27年に は最高310の増加指数を示しながら,その後は著しい減少を示したが,粗暴犯は性犯よ りおくれて増加を始めながら着々と増加の一途を辿り,30年には遂に性犯を凌ぐ増加指 数を示すに至った。

③ 次に粗暴犯と性犯の各々につい 第三図(一) 青少年罪種別増加率 て青少年と成人とを比較すると,

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(15)

定 形:青少年非行と道徳教育 (一)      91

第三図(二) 成人罪種別増加率 加指数を遥に凌駕したが,28年に は極端な減少を示してそれ以後は

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青少年の指数を下廻りながら僅か

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200 28年の例外を除いては21年以来常

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いる。

以上のように粗暴犯は犯罪実数が多いために前述の構成割合もヌ増加率もその変化が極め て明かであるが,性犯は実数が少い為にその構成割合の変化は著しく見られなかったがそ の増加率では極めて顕著な変化がみられるのである。

次に窃盗と兇悪犯については23年以降10年間を通じて成人,青少年共に減少の傾向にあ

るが,

① 兇悪犯は両者共に23年内至24年を頂点として28年までは減少し,成人では29年30年に 梢増加したが31年以降は可成り著しく減少しているのに対して,青少年の場合は29年以 降再び僅かながら増加をみせている。

② 窃盗は両者共に26年までは増加を続けているが,その後は僅かの例外を除いて,年々 徐々に減少の傾向を示し,しかも,その減少の程度は青少年の方が成人より僅かに大き

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③ 兇悪犯と窃盗は23年を100とした増加率では青少年,成人共に粗暴犯や性犯よりもそ の増加率が遥かに低く,しかも漸次減少の傾向がみられるが,然しこれは終戦直前に比 べて戦後の増加率が特に低いことを意味するものではない。即ち今昭和18年から32年ま での両罪種の変化を終戦直前の18年から20年までの3ケ年の平均を100とした指数でみ ると,第6表(2)のように兇悪犯については終戦直後から既に他の罪種にはみられないよ

うな急激な増加がみられ,特に青少年の場合は23年には早くも850という驚異的な最高 指数に達している。従ってこの23年を基準とした指数では前述のように24年以降は減少 の傾向を示しているが,これは決して兇悪犯が終戦直前に比ぺて増加率が低いことを示

しているのではなく,32年でも終戦直前の7倍の,指数700に達しているのである。

このことは又窃盗犯についても同様であって,その増加率では兇悪犯には遥かに及ばな いが,21年から23年までに既に相当の著しい増加を示している為に23年を基準とした前 述の指数ではその後の変化が少くなっているのである。

(16)

92       茨城大学教育学部紀要 第九号

以上の概観から青少年犯罪では終戦直後最も早く急激な増加を開始したのは兇悪犯であり 窃盗がこれに次いでおり,粗暴犯と性犯とはおくれて増加を始めたが,しかも早く増加を 始めた兇悪犯と窃盗とは23年内至26年に弔くも頂点に達して,その後は漸次減少している のに対して,おくれて増加を始めた粗暴犯と性犯とは23年以降殆んど減少をみせずに激し い増加の傾向をみせている。しかもこの傾向は成人の場合も略々同じである。

(3)罪種別,青少年と成人の割合の比較

成人犯罪に対する青少年犯罪の質的な特色を更に各罪種総数に対する青少年と成人の割 合の比較を通して眺めると,第7表のように青少年が常に全体の過半数を占めて,成人よ

り高い割合を示しているのは兇悪犯と窃盗であり,両罪種は終戦直前は成人の方が高い割 合を占めていたが,終戦後は全期間を通じて青少年が60%内至70%を占め,特に31年から その割合が増加して32年現在では両罪種共に70%前後を青少年で占めていることは青少年 犯罪の特色として注目すぺき現象である。

第7表  罪種別,青少年と成人の割合

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性犯と粗暴犯とは23年以来必ずしも青少年が成人より常に直い割合を占めているとは言 い得ないが,性犯は26年と27年を除いては青少年が55%内至65%の過半数を占めているの で過去10年間を通じて,概して青少年は成人より高い割合を占めているということができ る。これに対して粗暴犯は23年は成人,24年から26年までは青少年,27年から31年までは 成人32年は再び青少年と夫々交互に過半数を占めているので,過去10年間の全期間を通じ ては成人と青少年とが相半ばする割合を占めているということができる。

以上のように各罪種に於ける青少年の成人に対する割合は兇悪犯が最も高く,次で窃盗 性犯,粗暴犯の順位になっているが特に31年から32年にかけてはどの罪種も青少年の割合 が.顕著に増加していつれの罪種も成人を凌駕する割合を示していることは第2上昇期に

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