報 告 ①
交通 の発達 と市場構造
小 岩 信 竹
Ⅰ は じめに
交通 の発展 が経済発展 に与 える影響 につ いては多様な側面 があ り, どの よ うな側面か ら見 るの かに よって評価 も異な るが,最小限 ,次 の二点‑ の留意が,交通 の発展 の影響 の評価 に不可欠 で あ ることは,大方 の納 得が得 られ るのではないか と思われ る。
④ 交通 の発展 が経済発展 に与 え る影響 は,一 国全体 について考察す る場合 と,特 定 の地 域 につ いて考察す る場 合 とでは異 な る。新 たな交通手段 の導 入は,物流や人的移動 の変化 を伴 い,特定 の地域に利益 を もた らし,あ る地域には不利 益 を もた らす。一 国全体 についての効果は ,特定 の 地域の利益や,別 の地域 の不利益 を総合評価 した上 で計 られ る。
④ 交通手段 の発達 の経済効果は ,輸送運賃 の低 下の効果 に外な らないが ,交通手段 の発達 か 輸送運賃の低 下 を介 して,地域間の相対価格 の変化 に結 びつ くためには ,前提 が必要 であ る。即 ち,各地市場 (主 として小売市場) が相互 に恒常 的 に交流 があ るこ とが必要 であ る。 この前提 が なければ,輸送運賃 の低 下は各地間の交流 を促す方 向に作用す るであ ろ うが,それに も拘 らず輸 送手段 の利用は少ない ままであ る可能性 があ る。
交通手段の発達 が十分 に経済効果 を上 げ るための条件が如何 に整 って きたか,卸売市場 の全 国 化,各地間の交流 が どの程度 であ ったかは ,逆 に,運賃 と物価 の関係 か ら見 るこ とがで きよ う。
何故 な ら,各地間の交流 が活発 であれば,物価差 は運賃差 に収赦 して くるであろ うか らであ る。
この点は後 に詳 し く見 るが, まず ここで,交通 の発達 と市場構造 につ いて,更 にい くつかの点 を 付言 してお きたい。
自立的な小売市場圏 は残存 しつつ も,卸売市場 を中心 に,地域的 自立性 が強 い市場構造 が次第 に統一 され,つ いには卸売市場 の全 国化‑ と帰結す るのか資 本主義 的経済構造 の市場的側面 であ
1)
るが,卸売市場 の全 国化 の程度は ,卸売価格 の地 域間の格差や変動 の差 異 で表 わ され るこ とが多 い「、この ことは,市場統一 が,商品流通 の拡大 を意味す るものであ る以上 ,当然 の ことであ るo また卸売価格の地域間格差 や変動 の差 勘 ま.卸売市場 の全 国化 の進 展 に従 って縮 小 してゆ くもの で'.土あ るが,卸売市場什 裾 引 ヒの完 成を待 って ヰ)解消 しえない地域間の差 異が残 ることも事実 で
‑ 1 3‑
あ ろ う。何故 な ら,地域間の輸送運賃 の縮 小には限度があ り,時 々の経済活動 の活発化 に よって 解消 しえない差異 の存在 は不可避 だか らであ る。従 って,卸売市場 の全 国化 につ いて も,各地価
2)
格 と輸送運賃 との比例的な対応 の成立 を以 て,時期 を画す るべ きであ る と思われ る。もちろん この ことは,卸売市場 の全 国化 の後 に おいて も,交通手 段の発達 に従 って,各地問の 輸送運賃が縮 小 され てゆ くとい う事実 が,経済的に重要 であ るこ とを否定す るものではな い。輸 送運賃 の存在 は,他 の要 因 とともに,近代的 な市場構造 の内部 で さえ も,各産業 の立地 の構造 を 規定 してい るのであ り,運賃 の縮 小は ,立地 の変化 を介 して経済構造 の編成 のあ り方 を変 えてゆ くであろ う。 交通手 段の発達が及ぼす この よ うな作用は重視 されねばな らない し,近代 的な交通 手段の発達 が もた ら した影響 は, この面 について重大 であ ると言わね ばな らない。 しか し,交通 手段 の発達 が もた らす この よ うな影響は ,全 国市場形成 に伴 って,あ るいはその達成 の上 で十分 に発現 しうるものであ る。 こ うして,地域間価格差 の存在は ,直 ちに市場 の孤立性 と結 びつけ られ るものではな く,輸送運賃 と地域間格差 の対応 のあ り方が ,市場 のあ り方 を反映 してい るこ とが 知 られ る。
本稿は, 日本 の歴史過程 ,殊 に明治期以後 をふ り返 って,一 国全体 に対 して交通手段の発達 が 果す役割 が十分 に達 成 され るための条件 が どの よ うにな っていたのか を考察す ることを課題 とす るが,その前 に,交通手段の発達が果す経 済効果 の把握 の方法 に関す る研究史 を簡単 に見 てお き たい。
Ⅱ
交通手段の発展の経済効果についての諸学説交通手 段 の発展 が経済発展 に役立 つ ことは一見 して 自明の よ うに思われ るが , この点 に反 省を 迫 ったのが
R.W.
フォーゲルの, ア メ リカの鉄道発展 に関す る研究 であ った。フォーゲルの見解は,その著書
Rai l r oadsandAme r i c anEc onomi cGr owt h:Es s aysi n
3)
Ec onomi cHi s t or y
に集成 され てい るが ,その論 旨は,同書 に所収 された ,雑誌論文 に明快 に示4 )
され てい る。 その見解 とは, ア メ リカの経済 発展 に鉄道 が果 した貢献は小 さい とい うものであ る。
この結論 に至 るのは ,次の ような計算結果 が示 され るか らであ る。即 ち,1890年 当時 の主要な農 産物 であ り,且つ輸送量 が多 い商品で もあ った,小麦 , と うもろ こ し,加工牛 肉,加工豚 肉の
4
品 目に関 し,現実 の輸送 コス トと, も し鉄道 がなか った場合 の輸送 コス ト (鉄道利用部分 を,読 合輸送手段 であ る運河 に よる水運利用 に置 きか えて計算す る) とを対比 し,その差額 を,社会的 貯蓄 の大 きさ と考 え, これ を鉄道 の貢献 とす る とい う計算 を行 うのであ る。5)
フォーゲルの計算は,P.D.
マ ク レラン ドの研究 に よれば次 の よ うに表わ され る。いま,記号 を,
PT ・
‑鉄道輸送 の トンマイル当 り運賃 ,‑ 1 4‑
pa
‑鉄道 に対す る競合輸送手段 の トンマイル当 り運賃 ,R
‑一年 間の鉄道輸送 に よる総 トンマイル,I n
‑競 合輸送手段 の速度の遅 さに基 づ く費 用 ,保険料 の鉄道 に比べ ての超過分 とすれば,社会的貯蓄
‑ ( P a‑ Pr )R+I nR
とな る。ところで,上 記 の社会的貯蓄 とは , フ ォーゲルが定義 した概念 であ り,次 の ものであ る。
「十分な デ ータがあれ ば,人は, この費用 と,同 じ量 の貨物 を,鉄道 な しに,第一次市場 か ら 第二次市場 まで,全 く同様 に輸送す る費用 とを見定 め ることがで きるだろ う。 この二 つの量 の 差異 を,私 は,農産物 の地域間分配 におけ る,鉄道 に帰せ られ る社会的貯蓄‑ あ るいは単 に
6)
「社会的貯蓄」 と呼 ぶ。」
この社会的貯蓄 の大 きさが鉄道 の貢献 なのであ るが
,1 89 0
年 の社 会的貯蓄 を算 出 した フォーゲル は,鉄道 の貢献 が小 さい ことを結論 した。さて, フォーゲルの結論 は必ず しも首肯 で きるものではない。 何故 な ら,第1に フ ォーゲルは 鉄道 に対す る代替輸送手段 として,運河 を利用す る水運 のみ を と り上げ た。鉄道 の競 合輸送手段 は ,水運以外 に馬 車等 があ り,その輸送費用は高 か ったのであ る。 第
2
に,鉄道 と水運 は長期 に わた って競 合関係 を形成 していた。従 って,両者 の運賃差 が小 であ るこ とは明 らかであ る。鉄道 が導入 され る以前の水運運賃 を低 下 させ る ところに鉄道 の貢献 が認 め られ るべ きであ り, フ ォー ゲルの算式は , この点 を考慮 していない。次いで,
A.
フ ィッシ ュ p‑は , フォーゲル と同様 の概念 を利用 しつつ,1 85 9
年 の ア メ リカに7 )
ついて研究 を行 い, フ ォーゲル と反対 の結論 を導 き出 した。 フ ィッシ ュ ローは ,運賃低 下の直接 的利 益 のみな らず ,他産業‑ の波及 に よる間接 効果 も問題 に したが ,運賃低下 につい ても,水路 と競 合す る鉄道 のみな らず ,水路 と競合 しない鉄道 が他 の交通手段 よ りも貢献 が大 であ る点 も勘 案 してい る。 また,鉄道 の貢献 を,鉄道資産 の増 加分 か ら推計す る方法 や ,土地 の値上 りか ら推 計す る方法 を も併せ用 い てい る。
フォーゲルや フ ィッシ ュ ローの,競 合輸送手段 に比べ ての運賃 の安 さを基礎 として鉄道 の貢献 を計測す る方法 に批判 を加 えた論稿 として,先 の,マ ク レラン ドの研究 があ る。 マ ク レラン ドは,
8)
次式に よって算 出を行 うべ きであ る と主張 してい る。( Pt l ‑Pt 2 ) Q
ここで,
9
‑輸送量 ,Pt .
‑鉄道 が建設 され る前の輸送運賃 ,Pt 2
‑鉄道 が建設 された後 の輸送運賃。
このマ ク レラン ドの算式は ,鉄道 が建設 された後 の輸送運賃 を,一般物価 水準 でデ フ レー トす
‑ 15 ‑
る必要はあ るものの,従来か ら考 え られ て きた交通手段 の経済効果 につい ての一 般的な理解 とも 整合 し,妥 当な ものであ る と考 え られ る
。
この よ うに して,ア メ リカの鉄道 の経済効果 に関す る論争 は,妥 当な帰結 に達 し,従来 の理 解 と整合す るに至 るのであ るが,上記 の研究 の流れ の中で,交通手段 の発達 の経済効果 が厳密 に理 解 され るよ うにな った ことは .重要 な成果 であ った と言 え よ う。
な お,マ ク レラン ドの算式 に よるに して も前に記 した よ うに,交通手段 の発達 が運賃低 下に結 びつ くためには,卸売市場 の全 国化 と何 らかの交通手段 の存在が必要 であ り,特 に競 合輸送手段 の存在が一層 の運 賃低下 を促す ことは,重視 されなければな らない。
Ⅲ 運賃,諸掛 りと商品価格
さて,各地別の商品価格 と,輸送運賃 の対応関係の考察は,市場展開 の考察の基礎 とな るもの であ るが, この考察 のためには ,地域別価格 とともに,各地間の輸送運賃の豊富な デー タが必要 とな る。殊 に,鉄道 の発達が十分 ではない水運 中心 の時代 の運賃 デ ータとして,第 二 〜 第 四 次
『農商務統計表』 に,蒸汽船 ,風帆船 , 日本形船別 の,全 国
21
港 か ら各地‑ の,総計2 61
航路(逆9)
の方 向 も一つ と数 える) の運賃 が,米 ほか8
品 目について記 され てお り,利用可能 であ る。 この 運賃 デ ータは ,明治2 0
年代初頭 の市場構造 を把握す る上 で貴重 な ものであ るが,その利用 にあた第 1
国 対横浜水運運賃 と各地米価 (明治19‑21年平均)○音
第 2
図 対大 阪水運運賃 と各地米価 (明治19‑21年平均)弦 。ダ
ヰo p名
? 寸
義○
。 境 。 毎
食。○墓
4C
l‑JOC
l出典 『農商 務統 計表』 各年 次 ( l o島/石 )
.r
l、C
1
(出 興)第
LL 5 (
]に 同 L
/
〃運賃( 1 0鋲/石 )
って,考慮すべ き点が あ る。 その一 つは ,本稿 の よ うに物価差 に注 目しつつ市場構造 の展開 を見 るためにデ ータを利用 す るのであれ ば ,航路 の選 び方が問題 にな ることで あ る。 米につ いて見れ ば,中央市場 であ る東京 ,大阪 に,また北海 道等 の消費地に輸送 され る量 が多 い ことが知 られ て い る。 そ こで, これ らの データを一括 して利用す るのではな く,東京 に近 い横浜 を中心 として, 各地 か ら横浜 までの輸送運賃 を東京 は じめ各地 の米価 , また大阪 までの輸送運賃 と大阪及 び各地 の米価 を夫 々対比す る こ とに したい (第
1
図 ,第2
図)。北海道 につ い ては,東京 ,大阪 と各 地 の対比 の中に含め るこ とにす る。 そ してまた,運賃 デー タは ,明治1 9‑21
年 の平均値 を とること に し,いずれかのデ ータが欠け てい る航路 は省略 したい。 この よ うな手順 を踏 めば,利用可能 デ ータはかな り少 な くな るが,作業 の意味 を明確 に してお くために, この よ うな デ ータの選択 を行 うことにす る。い ま一 つの問題点 は,輸送 コス トの性 格 を どの よ うに考 えるのか とい うことであ る。輸送 コス トには,運賃 以外 の諸掛 りもあ り,両者 の関係 も考察 を要す るが , 『農 商務統計表El]の運賃 デ ー タ に は こ ? 点 の記載 が な い。 そ こで,次 に,他 デ ータを分析す る ことに よって, この問題点 を 検討 してお くこ とに したい。
交通 の発達 に依存す る輸送運賃は,地域 間価格差 の一つの構成要 因 であ るが ,そのすべ てでは ない 〔 また,諸掛 りその他 の存在 を考 えれ ば,輸送 コス トのすべ てを運賃 が 占め るわけ で もない。
そ こで,地域 間輸送 に関わ る費用の うちで,運 賃が どの程度 の比重 を占め るのか を 見てお く必要 があ るO 明治1
9‑21
年 の水運 についての 『農 商務統計表』 デ ー タと同年 次の諸掛 りのデ ータがあ れば最適 であ ろ うが,見 出せ なか ったので,前後 のデ ータを見 て,あわせ て,運賃及 び諸掛 りの 比重 の長期的 な変 化 を も展望す ることに したい。1 0 )
まず ,明治
1 2
年 の開拓使編 『二府 四県采覧報文』 のデ ー タか ら見 てゆ こ う。 この調査 の結果は , 肥料 の原料 であ る各種緋 (函館 より各地‑) ,及 び米 (各地 より函館 ‑) について,総括 的 な蓑 に ま とめ られ てい る。 この裏 の一部 を摘 記 したのが第1
,2
表 であ る。 この うち,手数料 の決 め第 1 表 米 1
(氾石運賃 ・手数料 (明治12
年船)代 価
運 賃 手数料横入費 船中用捨 函館相場 東岩瀬一一函館5 8 0. 0 0 4 0. 0 0 2 2. 4 3 4 ll . 6 0 6 2 3. 1 8
伏 木‑函館5 9 0. 0 0 2 7. 5 7 2 2. 4 3 4 l l . 8 0 6 2 3. 1 8
七 尾一一函館5 8 5. 0 0 3 0. 5 0 2 2. 4 3 4 l l. 7 0 6 2 3. 1 8
坂 井一一函館61 9. 6 0 3 5. 0 0 1 2. 4 6 4 1 5. 49 6 2 3. 1 8
(出典)
F 二 府 四 県采 覧報 文 』
1) 単 位 円。‑ 1 7‑
第
2
表 胴鮮1
00石運賃 ・手数料 (明治12
年船)l代 価 運 賃 問屋仲手 数 料 船中用捨買 荷揚風袋他. 着地 相場
函舘‑東岩瀬
5 3 0. 0 0 5 2. 0 0 4 8. 0 0
‑9. 7 5 8 0 0. 0 0
函館‑伏 木5 3 0. 0 0 7 0. 0 0 4 4. 2 6 8 8 7. 4 5 8 6 8. 0 0
函館‑七 尾5 3 0. 0 0 6 5. 0 0 3 2. 0 0 8 7. 4 5 l l. 5 5 8 0 0. 0 0
函館‑坂 井5 3 0. 0 0 7 5. 0 0 31. 5 0 2 7. 5 0 6. 7 2 9 0 0. 0 0
函館‑敦 賀5 3 0. 0 0 9 0. 0 0 51 . 6 0 2 6. 5 0 3. 0 0 8 6 0. 0 0
函館‑小 浜5 3 0. 0 0 8 6. 0 0 3 4. 0 0 ‑ 6 8 0. 0 0
函館一 覧
5 3 0. 0 0 1 0 4. 0 0 51. 7 4 4 ‑ 7 8 4, 0 0
函館‑大 阪5 3 0. 0 0 1 2 0. 0 0 5 3. 5 2 8 9 2. 0 0
(出典)第 1表に同 じ。
1) 単位 円。
方 につ いては ,原蓑 に注 がつ いていて,米 につ いて も胴緋 につ い て も,着地相場 の一定 割 合 を 手数料 と してい る こ とがわか る。 各費 目の構 成
を見れば ,米 につ いては ,運賃 の比重 が高 い こ 第
3
図 明治12
年の米価と対大阪水運運賃米 価
とがわ か るが ,胴緋 につ いては ,運賃 を超 え る
(円′石
)船 中用捨 が あ る航 路 と,不詳 分は除 い て も船 中
C 1 0
用捨 が安 い航 路 もあ る。従 って,運賃 がほは距離 に対応 してい るのに対 して,諸費用 が加算 さ れた着地相場 の順 序は ,運賃 の順序 と異 な る結 果 にな ってい る。 さて,米 につ いては ,先 柾 も 見た よ うに,運 賃 が最大 の費 目とな ってお り, その他諸費 用 もそれ ほ どの地域差 がな くな って い る。 また,運 賃 と米価 との対応 関係 を見れば , 坂 井 を除 き,各港 か ら函館 までの運 賃 と各 地価 格 (代価) は ,運賃 が高 いほ ど代価 が安 い とい
う結 果 にな ってい るものの ,事例 が少 なす ぎて, 確言 は困難 であ る。 そ こで, 『二府四県采覧報 文』 の記載 を拾 い,大 阪 までの運賃 と各地 米価 を対 比 した のが第3図 であ る。大 阪 か らの運賃 と各地米価 が反 比例 してい るこ とが見 て とれ る。
‑ 1 81 71
欠b
メ.
i
・ ・ i ・ i
。え
が
fo 。 皇
O I ‑
/Q/ t コ 壬X
( 鍾/石)
(出典)第 1表に同 じ,但 し米価は 『帝国
・統計年鑑 』 . 明治
1 1 ‑1 3
年平均値『二 府 四 県采覧 報 文』 に掲 載 され てい る地 域 には ,限定 が あ る もの の , この結 果 は ,明̀治
1 9‑21
年 デ ー タの分 析 に とって も,補 助 的 な役 割 を果 す もの と思 わ れ る。1 1 )
明治31年
9
月 に初 版 が発 行 された 田 口晋 吉 著 『米 の経 済』 に ,山 口県山 口町 よ り神戸 へ輸 送す る米 の事例 (鉄 道 ,航 路) と,熊 本 ‑大阪 ,及 び 四 日市 ‑東京 の事 例 が掲載 され てい る。 これ は 前年 ,即 ち明治30年 の事例 では な いか と思 わ れ るが , これ に よ り,明治 中期 の米価 の構 成 に 占め第
3
表 明治31年米輸送撞責 (米100石)区 間 運 賃 諸経費 口 銭
U」 ロー神戸 (三 田尻 より鉄道)
5 0 6. 5
‑〟 ( 〝 船 )
6 7. 5 1 5. 5 5
熊 本‑大阪3 2. 5 7 6. 5 4
(出典) F米の経済j
1 )
単位円。る運 賃 や諸 掛 りの 内訳 を見 る こ とが で きる。 これ らを表 示 す れ ば第
3
表 の よ うにな る。 明治10
年代 の事例 に比較 し て,米価上 昇 に対 す る運 賃上 昇 の割 合 の相対 的低 さ,諸経 費 の比重 の一層 の 低 下 が わ か る。 な お, この時期 は先 の 時 期 と異 って水運 と鉄 道 が競 合 して い るこ とが注 目され る。 また ,諸費 用 の 内訳 を見れ ば ,倉敷 料 そ の他 ,輸 送 区 間 とは 無 関係 と思わ れ る費 目が多 い。近代 的 な交 通体 系 が完 成 を 見た と思 われ る大 正期 に 関 しては ,多 くの商 品 につ い て,詳 細 な デ
1 2 )
一 夕を得 る こ とが で き る。 鉄 道 省運 輸局 が作 成 した 『米 二関 スル経 済 調査 』 には ,米 につ い て, 鉄道 の駅 まで及 び駅 か らの運輸 関係 の諸 費 用 と,主要港 湾 で の諸 掛 りが ,管轄 の鉄 道管 理 局 ご と に掲 載 され てい る。 これ らは ,膨 大 な デ ー タな の で , ここには ,各 鉄 道 管 理 局 の記載 の 冒頭 に記
第
4
表 米棟卸其他費用 (釈)陸 運 水 運 運送店取手数料扱 倉庫費用
積込費取卸費集荷料 配達料 水揚料 好賃 集荷料 達 、 入庫料 出庫料 保管料
1 91 4 ( 1 ) 1
01 0 3 0 3 0
‑ ‑ ‑2 0 2 4 2 4 1 0
1 91 9 ( 2 )
小 山
1 9 2 2 ( 3 ) 1 2 2 0 2 1 2 0 4 5 0 0 4 5 0 0 ‑ ‑
‑‑ 2 4 0 0 3 4 2 8 3 4 2 8 4 4 8 8
1 9 2 4 ( 4 ) 2 0 2 0 7 0 7 0 ‑ ‑ ‑ 4 0 4 8 4 8 4 8
( 1 ) ‑ ‑ ‑ 1 5 4 5 ‑ ‑ ‑ ‑
‑3 7
( 2 )
清水港
( 3 ) 2 2 0 5 2 2 0 5 ‑ ‑ 4 5 0 5 60 9 0 ‑ ‑ ‑ ‑ 6 8 0 0
‑‑‑ ‑ 5 6 0 0 ( 4 ) 2 5 2 5 ‑ 7 0 1 1 0 ‑ ‑ 8 0 ‑ ‑ 6 4
( 1 ) 1 0 1 0 l l l l ‑ ‑ l l 8 8 ‑
( 2 )
彦
根 ( 3 ) 4 3 0 0 2 1 0 5 8 9 0 0 9 8 0 0 ‑ ‑ ‑ ‑ 3 3 5 2 3 3 0 0 3 3 0 0 5 4 0 8
I 1 9
‑呉
第
5
表 米積卸 其他費用 (港湾)(出典) 『米 二関 ス
ル経 済 調査 』
1)単 位銭 ( 但 し 1 t
当 り)仕 向地 年 代 本船賃 貯賃 沖仲仕 賃 陸下賃 其他 貯賃。 水揚料(⊃ 其他0
木更津 魚 津
四 日市
内 海青 森 横浜jCL小樽東京&
1 1 1 1 91 91 922( 924( 両 巨) ( ( 両 ( ( ( ( 3 4 2 3 4 1 4( 9( ) ) ) ) ) ) 1 2 3 4 ) ) ) ) 2. 3. 3. 4. 4. 4. 2. 1. 1. 1. 1. 6 6 6 6 5 9 00 0 0 0 7 3 8 0 0 0 9 2. 2. 5. 5 08 40 0 0. 0. 0. 0. 2 2 2 27 1 4 7 36. 7. 2 8 0 6 7 0. 0. 0. 0. 65 75 75 8. 75 39
((其他は保 険料)酵賃水揚料 には諸掛 り全‑
20‑
(出典)第
4
表に同 じ。1) 単位円 (
lt
当 り)2 )
Oは到着,他は発送 され てい る事例 のみ を摘記 してお きたい (第4, 5蓑)。鉄道駅 に関す る蓑 には ,鉄道駅 を中心 とす る陸運 と水運の費用が載せ られてい る。 これ らか らは ,第一次大戦 に よる諸費用高騰 の影響 の 一端 も うかが えるが,金額及 び記載 のバ ラツキ も 目立つ。 また同上調査 は ,各鉄道管理局 ご との 積込費及 び取 卸費 の高 い駅 の摘 記 を行 ってい るが,それ らは第6
蓑 の よ うにな ってい る。蓑 か ら第 6
表 諸費用高額駅 (大正13
年)東 京 名古屋
神 戸
門 司 仙 台札
幌積込費 蓋妄 )45安中
4 5 浜松 4 5 綾部 5 0 広 島 5 0 新 潟 4 0 下 富 良野 6 5
(出典)第4
表に同じ。1)単位銭 (
1t
当 り)は読 み とることがで き ない点 ではあ るが,秩 道 の駅 に関す る諸費用 は ,行先 とは無関係 で あ ることが留意 され る べ きであ る。港湾 の諸 費用は ,行先 と無関係 な港 が多 い ものの,行先 に よ り費用 が異な る港 もあ る (沼津 ,尾 ノ道)0 以上は ,米 に関す る諸費用 であ ったので,米及 び米以外の港湾費 用 を,昭和期 の資料 で見 てお き
1 3 )
たい (第7,8表)。 また,港 湾 に関 しては ,本船賃 と諸費用 の対照 を行 ったので (第5蓑) ,
第
7表 土崎港荷役料金諸掛単 位 料 金 1t当料金
栄 1
俵0. 0 7 4 1. 1 8 4
絶.
蓮1 個 0. 1 21 0. 9 6 8
石
炭 lt 1. 21 0 1. 21 0
塩1 0 0 斤 0. 0 6 3 1. 0 71 豆
粕1
枚0. 0 3 8 1. 3 6 8
石 油1
箱0. 0 51 1. 0 2 0
第
8表 酒田港荷役料金単位 船内仲仕賃 好賃
( 沖)
酵賃(河内)水揚賃石
炭 1
〟〟〟〟t 0. 5 1. 2 5 0. 6 2 5 0. 3 5 豆
粕0. 3 6 5 1. 2 5 0. 6 2 5 0. 3
セ メ ソ ト
0. 2 5 1. 1 7 5 0. 6 0. 4 木 材 0. 4 4 1. 3 5 0. 8 0. 4
塩0. 3 3 0. 9 0. 5 4 0. 3 5
(出典)第7表に同じ
。
1)単位 円 (出典)
F 東 北 の港 湾
』(昭和4
年1
月刊行 )1)単位 円
大正
3
年及 び大 正8
年 の鉄道貨物 について,商品 ごとに,平均運賃 その他 の諸指標 を掲 出 し,価1 4)
格 と対比 してお きたい (第
9,l
o衷)。第一次大戦 をは さんで両年 度 には ,商品 に よって差異 は あ るものの,米 を中心 として,価格 に占め る運賃 の比重は低 くな ってい る。 もっとも, これは , すべ ての同一商品に関す る平均値 であ るので,遠隔地 の商品が運賃部分 の存在 に よ り,販売面 で‑ 21‑
第9表 大正 3
年度 鉄道貨物
品 目
数 量
運 賃J 輸 、 lt ‑哩 平均 a) 1 t
当運賃 東京卸売物価l b)
円/ t % x1 0 0
石 炭1 4, 47 2, 7 4 2 t 1 2, 2 95, 1 9 4
円4 4. 8 0. 84
円9 9. 03
円/ t 9. 03 9. 40
木 材2, 46 8, 71 8 4, 0 86, 5 3 8 11 4. 0 1. 65 5
穿Zo,9 0
円/車‑ ‑
栄 1, 3 92, 7 85 2, 46 8, 5 76 1 1 63. 2 6 2. 4. 0 7 9 1. 7 7 2 1 6. 1 3
円/石1 0 7. 53 1. 6 5 肥 料 1, 2 5 2, 25 9 1, 8 86, 4 63 1. 5 0 6
琵2.68円/10貫71. 4 7 2. 01
木 炭5 72, 51 6 1, 1 0 8, 6 2 4 1. 9 3 6 *. 1. 95 6
円/1 0
貫5 2. 1 6 3. 71
鉱 石
5 55, 1 86 94 7, 71 9 1. 7 0 7
‑‑ 2. 8 4
石 材49 0, 9 45 . 531, 5 70 1. 0 8 2
‑‑
麦
3 98, 7 85 5 3 0, 89 2 95. 84. 1 6 1. 3 31 套 5. 0 9
円/石46. 8 0
食 塩 3 51, 4 47 51 9, 5 5 0 1. 47 8 米 2. 2 8
円/1 0 0 3 8 3. 89
(出典) F米 二関 スル経済 調査 』 但 し,東京卸売物価は F農商務 統 計表』 , *ほ F日本経済 統計
総 観 』
第 1 0
表 大正8 年度鉄道 貨物
品 目
数
量 運 賃1
輸送哩t
平均a) lt
運賃 東京卸売物価b)
円/ t % x 1 00
石 炭1 9, 91 8, 83 t 8 2 4, 5 4 2, 0 09
円5 0. 6 1. 2 3
円2 3 2. 7 8 3 2. 7 8 3. 76
木 材4, 65 7, 6 49 1 0, 5 3 4, 323 1 26. 3 2. 26 4杉四分板1. 76
円/秤‑ ‑
栄
2, 6 47, 5 29 4, 8 80, 251 1 6 8. 6 1. 84 3 45. 99
円/石3 06. 6 0. 60
砂 利
1, 4 85, 5 3 2 1, 0 4 7, 9 35 23. 7 0. 7 0 5 ‑ ‑ 1. 66
鉱 石1, 3 7 2, 9 9 9 2, 0 2 5, 94 4 7 4. 5 1. 4 7 6
‑‑
木 炭
1, 0 9 4, 7 0 0 2, 4 31, 82 4 1 73. 8 2. 2 26 常 州楢 謂 5. 5. 70 03
円円/l /1
o草0貫1 3 4. 1 3 豆粕肥料 945, 9 44 1, 9 0 7, 6 95 1 4 4. 0 2. 01 7 ‑
鉱 石9 2 8, 411 2, 1 7 4, 2 85 1 41. 0 2. 3 4 2 ‑
石 材
87 6, 4 5 0 1, 3 25, 0 9 4 6 5. 5 1, 51 2 1 5. 2 人造肥 料 7 03, 79 2 1, 3 4 9, 2 5 0 1 2 6. 1 1. 91 7 ‑ 其 他肥 料 661, 4 97 1, 2 5 8, 0 6 4 1 3 4. 1 1. 9 02 1 2. 51
麦
61 3, 0 81 1, 0 6 9, 4 4 4 1 2 7. 1 1. 7 4 4
大麦1 6. 4 2
円/石1 5 0. 9 9 1. 1 6
薪6 06, 2 41 6 9 5, 95 0 61. 7 1. 1 5 0 常 州 耶0. 89
円/1 0
貫2 3. 7 3 4. 85
鉄 及 鋼5 91, 82 4 1, 8 94, 9 9 7 1 9 7. 6 3, 2 0 2
*銑鉄1 84. 31 1 8 4. 31 1. 7 4
塩5 3 0, 225 86 3, 6 46 1 0 9. 7 1. 6 2 9
*3. 3 3
円/1 0 0
斤5 5. 5 2. 9 4
石 油 類4 93, 7 9 7 1, 80 4, 89 8 2 3 4. 0 3. 6 5 5 l l. 6 2
円/1
箱‑ 2 2‑
(出典)第
9
表に同じ 。
但 し,叫 は r我国商品相場統計表』
不利益 を こ うむ る事実 を否定す るものではない。 また,平均値 であ ることを勘 案 して も, 石 炭 (ことに大正 3年) の よ うに運賃の比重が高い事例 もあ り,また肥料 の よ うに,年次に よる運賃 の比重の差異が大 きい商品 もあ る。
以上 の考察 に より,運賃及 び諸掛 りの中で,輸送区間に関わ る費 目は何 よりもまず運賃であ り, 他 の諸掛 りは,輸送 区間には関わ らない ものや,輸送区間 との関わ りが間接的で微弱 であ るもの
(例 えば明治
1 2
年 の各港 での問屋手数料) であ ることがわか った。 そ してまた,運賃 ,諸掛 りが 商品価格 に占め る比重は,時 とともに低下す ること, しか し最大 の費 目として運賃が存在す ることもわか った。 もっとも,港 か らの輸送 の事例 では,運賃以上に保険料 が高い事例 も散見 され る。
主 として距離に関わ る輸送 区間 ごとの運賃 の性格が上記の ものであ り,諸掛 りは距離に無関係 な部分が多いのであれは,運賃 と商品価格は,市場統一が進 めは,比例 的に対応す るであろ う。
そ してまた,明治1
2
年 のデ ータでは,事例 が片寄 ってい るとはいえ,既 に見た ように, この こと が認め られた。明治19‑21
年 データについて,更 に分析を加 え,その結果 を見て,市場統一 の進 展 を考 えるための条件が,か くして整 った とい え よ う。米について,大阪 ,横浜 までの輸送運賃 と,各地米価 を対比 したのが第1
,2図であ る。米価 も19‑21
年 の平均値 を用 いてい る。根室 の 運賃は,米 の流れ (根室は移入地) を考 之て,マイナ スを付 してい る。 これ らを回帰分析に よっ て検定 を行 えば,統計的に有意な結果が得 られ る。従 って,米 について, この時点で,市場統一 の程度の高 さを指摘 しうることとな る。回帰分析 の結果は次 の ものであ る。対横浜 :Y‑
‑1
.4 8 8X + 52. 76
‑ 2 3‑
R ‑0. 97
HF.R.
‑ 1 43
D.W.R.‑1. 23
対大阪:Y‑‑ 1 . 21 6 X + 50. 01
月‑0. 9 0
* *F.R. ‑37 D.W.R.‑2. 1 2
Ⅳ
交 通 の 発 達 と輸 送 運 賃明治
20
年 当時の各地米価 と,中央市場 までの運賃が比例的であ る とい う,先の回帰分析 の結論 は,運賃以外の輸送 関連の諸掛 りが,距離乃至は航路に よらず各港 ごとにほぼ決 まった大 きさで あ り,また,特 に地域に よる差異は見 られない とい う事実 を確認 した上 では, もはや十分に予想 で きた ことであ る。何故な らこれ までの研究が,米穀市場 のはや くか らの統一性 の高 さを示 して いたか らであ る。 そ こで,次に,先にその一端 を見た,輸送運賃 の時代 とともに進む低下の事実 を更 に確認 し,市場統一 の上で展開す る交通 の発達 の経済的影響 の一端 を展望す ることに したい。まず ,交通 の発達 に関す る諸指標 を概観 しておけば,第
1
1表 の よ うにな る。夫 々の交通手段 の 第11表 貨物輸送に関する諸指棲a )
国鉄 (千t ) ‑b )
私鉄 (千t)
C)
軌道(千t )
d)入港船噸数 (千 t)e )
内国船載貨量 (千円)1886
年42 6
‑‑ 1 2605
輸 出 輸 入7 5 78
‑‑ 1 35 61
‑‑
8 71 0 903 ‑ ‑ 472 0 425 6
9 6 27 ‑ 53 22 51 45
90 6 82 ‑ 5 980 8597
1 81 9 1 290 ‑ 71 27 7661
2 998 1 71 9 ‑ 6 825 8852
3 1 094 2453 ‑ 6855 7572
4 1 035 331 8 ‑ 6055 1 077 6
5 111 8 4 299 ‑ ‑ 393 0 385 6
6 1 286 5 66 8 ‑
‑1 30 80 20642
7 1 5 83 71 83 ‑
‑240 63 4 473 7
8 1 823 825 2 ‑
‑403 63 6626 9
9 2430 9579 ‑
‑66 44 8 729 90
1900 2851 11 780
‑ ‑6369 9 8 4686
1 2 693 11 93 8 ‑
‑93770 8931 4
2 3235 1 31 46 ‑
‑1 06621 99391
ー
24 ‑4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 1 6 1 9 7 2 0 1 1 3 5 2 3 7 0 2 0 3 nX3 6 9 5 3 7 0 2 8 5 8 8 4 3 2 9 1 3 0 6 3 0 8 6 3 5 7 7 5 1 2 2 3 3 4 5 5 7 9 日H = 日日 5 7 7 3 5 2 5 5 0 (‖凸 3 8 2 7 2 2 3 3 7 3 4 1 1 1 1 1 2 2
1 2 6 2 4 4
2 3 0 8 6 5 2 0 0 5 2 5 1 9 87 6 7 1 5 0 7 6 4 1 7 0 2 2 7 1 8 5 6 4 9 1 7 6 4 5 0
1 1 8 6 01 ( 1 9 61 8 )
*1 0 51 0 7 ( 2 21 3 4)
*1 3 3 9 7 3 ( 21 1 6 6 )
*1 9 4 5 9 4 51 8 4 1 8 6 4 4 3 1 8 2 6 4 7 1 6 0 4 6 7 1 8 6 5 0 9 21 4 9 7 3 21 8 8 0 2 2 7 7 0 8 9 3 2 7 5 9 6 3 5 4 6 5 5 4 8 9 2 4 0 7 8 9 71 0 1 2 0 8 6 0 7
2 7 2 5 2 2 0 80 2 8 81 8 9 1 81 81 8 1 6 7 61 5 1 7 7 3 3 8 2 01 6 31 2 2 2 4 9 3 2 4 4 9 91 3 3 7 6 4 8 31 8 7 2 7 3 8 85 3 7 5 61 1 4 7 8 2 2 2 0 8
(出典)a. b.
『本邦 主要経済統計jc.e.
F日本経 済統計総観 』d.
同上及び 『農商務統計表 』『大 日本帝国港 湾統計』
1) *は外国貿易 を別立てに した もの。
2 )
和 船 は1
0石‑ 1
tとして換算 輸送量 に関す る適切 な換算値 を兄い出す こ とは難事 であ り,本稿 で もひ とまず ,夫 々の交通手段1 5 )
の盛衰 の様相 を見 てお くことで満足 しなければな らない。 もちろん,交通手段 には ,表 に記 した 鉄道 や海運以外に も,道路輸送や河川舟運 があ るが,明治以後 の近代交通 の発展 の主た る担 い手 が,蒸汽 力を駆使す る鉄道 や ,汽船 に よる海 運 であ ることは,認 め られ る事実 であ ろ う。本稿 で は , これ らに視点 をあわせてい るので
あ る。 そ こで まず ,鉄道運賃 の推移 を 見てお こ う。鉄道 に関 しては ,先学 に よる諸推計 があ り,利 用可能 であ る。
ここでは ,推計 の前提 とな る運賃 の大 きさを見 てお きたいが ,現実 の運賃規 定 は複雑 で,推 移 を追 い難 いので, 日 本 国有鉄道作成 の, 『鉄道
80
年 のあゆ みr I
]に掲載 され てい る,運賃 のモデル1 6)
計算例 を見てお きたい。 それは第1
2
表 の とお りであ る。 ここに掲 出 され てい第
1 2
表 国鉄貨物運賃に関する指標賃 率
( a) ( b)
小 口 .中級 車扱 中級 車扱 低級
トンキ ロ当 り 1 0 0k g
lkzD 1 t 11
皿1 t
ll皿 運賃収入1 8 7 8 4 3 5 6 7 8 9 0 I l O. 1 0. 0.
〟〟〟:7 4 41 2 6 7. 3. 1.
〟〟〟〟
′′2 4 9 3 8 9
I,12. 3. 1.
〟〟〟二6 3 9 2 5 7
I‑ 2 5一
+■■
(出典)(a) 日本国有鉄道 F鉄
道
80年のあゆみ』(b) 日本銀行統計局 F本 邦主要経済統計』
1)単位銭
る年代 に関 しては,国鉄貨物運賃は , それほ ど変化せず ,時折低下 してい る ことがわ か る。
次に水運の運賃 の推移 を見 てお きた い。水運運賃については,連続的な運 賃の系列 を見出す ことは難 か しく,石 炭等 の特定 の商品の特定 の航路 につい てのみ,年次的変化 を見出す ことがで きる。 本稿では,米の海上輸送 の航路 ごとの運賃 を,明治21年 と大 正3年 に ついて対比 してみ よう。対比 しえた航 路 の数 は1
4
であ り, これを図示す ると 第4
図の ようにな る。 この図に より, 2時点間の各航路 の運賃の推移 を見 よ うとす るのであ る。図に明 らかな よ う に,各航路 の運賃 とも, この間に低下 してい る。なお,図中の実線は この間 の米価 の上昇率 を示 してお り,破線は, 二時点間の運賃 が等 しい場合の点 の位 置 を示す。更 に, この図は, トン海里 当 り運賃 が航路に よってまちまちであ ることを も示 してお り, しか も,航路 ごとの トン海里運賃の大 きさは,二時 点間で,無相関 とな ってい ることを も 示 してい る。ところで, この ような海上輸送 の趨 勢は,鉄道輸送 と海上輸送 の競合関係 に よる経営努 力の結果 であ ると考 えられ る。
さて,既 に見た よ うに,R
.W.
フォーゲルは,鉄道 と鉄道 に対す る競合的交通手段の運賃差 を基礎 として,現実 の輸送運賃 と,鉄道 が使 えなか った場合の他 の輸送手段に よる運賃 との格差 に,輸送量 を乗 じた値 を,鉄道 の経済的貢献 と考 えた。 しか しこの計算結果は,競合的交通手段 が健在 で,両者が激 しく競争す る場合には小 さ くな り,鉄道 の貢献 が過小評価 され ることは明 ら かであ ろ う。 競合す る交通手段相互の競争 関係に より,相互の運賃 の引 き下げ努力がな され ると‑ 2 6‑
大正
3
年ころに,鉄道 の貢献 は見 出 され る と言 え よ う。
上に ,鉄道運賃 と海上運賃 を個 々に見たが ,それ では ,両者 の関係は どの よ うにな っていたの かを次に見たい。 この検討は ,先 の市場構造 のあ り方 の検討 に次 ぐ,交通手段 の発達が経済的貢 献 を十分 に行 い うるか否 かの条件 の考察 であ る
。
なお, ここでは ,大正3年 を とり上げ るこ とに したい。鉄道 も十分 に発達 した年 であ り,且つ デ ータ収集上 の都合 が良い年 であ るか らであ る。さて,大正3年度 の鉄道輸送 を見 る と,輸送量 の多い商品は ,石炭 ,木材 ,米 の順 にな ってい る。 この うち,石炭は ,
1t
当 りの輸送距 離 が短 い (第9
表参照)。 石炭輸送 の実態 につい ては1 7)
鉄道省 『本邦鉄道 の社会経済 に及ばせ る影響』 に詳 しい。 それに よれは,石炭の鉄道輸送は ,山 元か ら港 までの輸送 と陸上げ港 か ら消費地 までの輸送 が主な ものであ り,大正 3年 のl t当 りの 輸送距離 の短 か さもその事実 を示 してい る。産地 よ り消費地‑ の石炭 の鉄道輸送 の例 としては ,
1 8)
常盤炭 の例 があ るが, これは, 「九州 ,北海道 に比すれば輸送哩遥 に長大」 であ る。 そ して また , 常盤炭 の輸送 には,運賃割戻 が行われ てお り,消費地は東京が中心 で,その集散地は隅田川 駅 で
1 9)
あ った。常盤炭 の東京‑ の鉄道 輸送料 金は ,大 正2年 時点 で14‑20円 (t当 り) であ り,若松 ,室蘭か 20)
ら横浜 までの船賃10‑ll.7円 (t当 り) に比べ て も高い。九州 ,北海道炭 の長距離輸送 で,海上 輸送 が利用 された ことも首肯 で きる。従 って,最大 の鉄道輸送 商品であ る石炭 については ,鉄道 は ,主 として山元 一移 出港 ,移 入港 一消費地 の輸送 を担 い,海上輸送 を駆逐 したわけではなか っ
‑ 27‑
た ことが知 られ る。
次 に木材 につい て見れば,鉄道輸送 の
1
t当 り平均 マイルは,1 1 4( 9 9. 06
海里) であ るが, こ の距離 を輸送 され る木材 の鉄道運賃は1 . 6 6 5
円(1
t平均) とな ってい る (第9
表)。 ところで, 鉄道 に よる木材輸送 の平均t
当 り輸送距離 の9 9
海 里は,はば ,長崎一博多聞の距離 ではあ るが, 北海道や東北各地 か らの消費地‑の輸送距離 (函館一横浜 が5 2 9
海里) に比べ て短 かい ことに留 意 しなければな らない。 い ま,大正3
年 の木材海上輸送運賃 を見 る と,小樽 よ り,横浜 ,四 日市 , 大阪 ,神戸 ,門司の各港 までいずれ も,角材t
当 り,最高4. 5
円,最低2
円,製材 はt
当 り,義2
1)高
4
円,最低2. 5
円 とな ってい る (近海郵船会社運賃)。 鉄道輸送 のt
当 り平均輸送距離 に相 当2 2 )
す る長崎一博 多問の海上輸送運賃は ,大正1 3
年 のデータが得 られ ,t当 り2. 1 5
円 とな ってい る。航路 に よって差異はあ るものの,大正
3‑1 3
年 間に,木材輸送 の海上運賃は,騰貴 してい るのが 一般的 であ る (例 えは,北海道 ・樺太一横浜 の1 0 0
石 当 り運賃は,6 0 ‑5 2
円か ら,2 6 0 ‑1 0 0
円に2 3 )
騰貴 してい る)。従 って,大正3年 の長崎一博 多聞の運賃は,2円以下であ った と考 え られ る。
この よ うに見 て くれ は,大正
3
年次 の木材 の海上輸送運賃は鉄道運賃 と比べ て割高 とはい えない。北海道 か ら各地‑ の海上運賃は,距離 を勘案す れば,鉄道運賃 よ りも割安なのではないか と思わ れ る。
鉄道貨物輸送量 が,石炭 ,木材 に次 いで多 い商品は米 であ る。米 の
t
当 り平均輸送距離 は1 2 2
マイル とな ってい る (第9
蓑)。 この距離 (1 0 6
海 里)に対応す る航路 の米 の海上輸送運賃 を第‑ 28‑
4
図 よ り求めれば,t海里当 り1 . 6 5
銭 (tマイル当 り1 . 4 3
銭) とな る。1 2 2
マイルでは,t当 り,1 . 7 4
円であ る。 これは,t当 り鉄道運賃 ,1 . 77
円 とほぼ等 しい。 なお,第5
図は,海上輸送 に よる 米の運賃 を,航路 の距離 と,t海里運賃 とを対比すべ く,航路 ごとに プ ロッ トした ものであ る。この図を見れば,大正3年 の米 の輸送運賃は,距離 に反比 例 して,t海里当 りで安 くな ってい る ことがわか る。即 ち,長距離 にな るほ ど,輸送運賃が単位距離 当 りで割安 にな る逓減制が成立 し てい ることがわか る。 この よ うに して,米 の輸送 については,輸送 と海運は競合 しつつ併存 して い ることがわか る。
以上 の,石炭 ,木材及 び米 の鉄道 と海運 の輸送運賃の対比は,夫 々の商品 ごとの特徴 の違 いは あ りなが らも,鉄道 と海運は競合 しつつ併存 してお り,特 に米の輸送 については,両者の運賃は はは等 しい ことがわか った。 この よ うな競合関係 の中で,輸送運賃 が,一般物価 に比較 して低落 していた ところに, 日本の貨物輸送 の特徴 があ ると言 える。 そ してその結果 として,商品価格 中 に占め る輸送運賃は低下 し,大正
8
年 の米 を とれば,東京卸売価格 の0. 6
%が,鉄道輸送米の平 均運賃 に相当す る (第1 0
蓑 ,いずれ も1
t当 りで対比) にす ぎな くな る。 もちろん, この年 の鉄2 4 )
道輸送米の平均輸送距離は
,1 6 8. 6
哩( 2 71 . 3
血) であ るので,長距離輸送米の運賃割合が多 くな ることは言 うまで もない。 この よ うな,運賃 の相対的低下が,各地商品価格 の地域間の変動 を一 層狭 め ることも,十分に首肯 しうるところであろ う。 これが,市場統一 の達成の上で実現 され る, 各地間の交流 の深化 の基礎条件 の整備 であ ることも了解 され よ う。さて,先 に見た鉄道 の貢献 の経済効果 の計測について考 えてみ よ う。鉄道開設初期 には運賃低 下の年率は大 きいであろ うが,鉄道利用高は小 さい。後 の時代 は この関係が逆 であ る。 い ま,明
2 5 )
治
3 0
年代 を とると,国鉄運賃は低下 してお り,その減少率は43. 7%
であ る。一方 この間卸売物価2 6 )
は
1 7 0
が21 6
に上昇 してい る。即 ち,卸売物価 が2 7%
上昇す る間,鉄道運賃は43. 7%
下落 した。即 ち,実質7 0. 7%
下落 した ことにな る。 この間の国民総生産に対す る鉄道収入 の比率は1 . 39%
か ら2 7 )
2. 6
%‑ と変化 してい る。即 ち,鉄道 の運賃減少分 だけで,国民総生産 の0. 9 8
%乃至1. 83%
に相 当す る。 明治3 0
年代 は鉄道建設 が進 んだ時代 であ り,運賃を対比すべ きは競合輸送手段なので, 鉄道 の貢献は これ以上 であろ う。 また,鉄道 の登場は,水運 の運賃低下 を促 した ことも無視 しえ ない。従 って,上記 の数値 は最小限の ものであ る。28)
なお, フォーゲル以来 の研究史に従 って,鉄道 の貢献 を上 に と り上げたが,水運に しても鉄道
2 9 )
と競争 しつつ,その運賃 を引 き下げ,経済発展 に貢献 した ことは言 うまで もない。他 の交通手段 も無意味 であ ったわけではない。
Ⅴ
結 び以上の考察 に よって, 日本においては,明治前期 において,交通手段 の発達 の経済効果 を十分
‑ 2 9‑
に発 揮 させ る市 場 構 造 が 成 立 して い た こ と, また そ れ 以 後 ,鉄 道 と水 運 が 競 争 しつ つ ,交 通 手 段 の発 達 を担 っ て い った こ とが 明 らか に な った。
もち ろ ん , 明 治 前 期 の 市 場 構 造 が ,交 通 手 段 の 発 達 の 効 果 を発 揮 させ る もの で は あ っ て も, そ れ が 以 後 も変 化 す る こ とな く持 続 して ゆ くわ け で は な い。 卸 売 , 小 売 等 の各 段 階 の 市 場 構 造 の変 化 とそ の 意 義 は ,別 に 考 察 を加 えな け れ ば な らな い。
注