所
学 位 論 文 審 査 結 果 の 要 旨
二 重 大 学 大 学 院 医 学 系 研 究 科
属 | 甲 生 命 医 科 学 専 攻 臨 床 医 学 系 講 座 l 氏 名
|万 根 慎 恵
運 動 器 外 科 学 ・ 腫 療 集 学 治 療 学 分 野
主 査 島 岡 要
審 査 委
員副 査 稲 垣 昌 樹
副 査 村 田 真 理 子
( 学 位 論 文 審 査 結 果 の 要 旨 )
Effect of e‑beam sterilization on the in vivo performance of conventional UHMWPE tibial plates for total knee arthroplasty
著 者 ら は 論 文 に お い て 下 記 の 内 容 を 述 べ て い る 。
本 研 究 は 、 人 工 膝 関 節 置 換 術 後 の 生 体 内 よ り 摘 出 さ れ た 電 子 線 滅 菌 超 高 分 子 量 ポ リ エ チ レ ン (
Ultra‑highmolecular weight polyethylene: UHMWPE) に お け る 表 面 構 造 の 変 化 及 び 酸 化 劣 化 に つ い て 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。
対 象 は 生 体 内 よ り 摘 出 さ れ た 電 子 線 滅 菌
UHMWPE腔 骨 イ ン サ ー ト
12サンプルで、
男 性 2例 4サ ン プ ル 、 女 性 7例 8サ ン プ ル 、 平 均 年 齢 は 74 . 8歳 、 平 均 生 体 内 期 間 は 33.6ヶ 月 で あ っ た 。生 体 内 暴 露 に よ っ て 生 じ た 変 化 を 調 査 す る た め に 3つ の 未 使 用 サ ン プ ル も 解 析 し た 。 ま ず 、 各 サ ン プ ル の 摺 動 面 を 計
10領域に分割し、レー ザ ー 顕 微 鏡 を 用 い て そ れ ぞ れ の 領 域 に 対 し て
7つ の 表 面 劣 化 モ ー ド (埋入片,擦過痕,層状剥 離 ,表面変形, 切 削 摩 耗 , 研 磨 , く ぼ み ) を ス コ ア 化 し 評 価 を 行 っ た 。 次 に 、 各 サ ン プ ル の 荷 重 部 及 び 非 荷 重 部 を 測 定 領 域 と し て 、 ラ マ ン分 光 分 析 (
Ramanspectroscopy : RS) を 用 い て 表 面 構 造 の 結 晶 分 率 を 算 出 し た 。 さ ら に 、 同 様 の 測 定 部 位 に 厚 み
200μmの 薄 片 を 作 成 し 、 フ ー リ エ 変 換 赤 外 線 分 析 (
Fourier transform infrared spectroscopy : FT‑IR) 及 び
RSを 用 い て 各 サ ン プ ル に お け る 酸 化 度 、 結 晶 化 度 、 抽 出 物 指 数 を 算 出 し た 。
短 期 症 例 に お け る 表 面 劣 化 ス コ ア は 低 値 を 示 し た が 、 サ ン プ ル
5の み 高 値 で あ っ た 。 こ の 結 果 は サ ン プ ル
5の 患 者 の 体 重 が 83kgと 最も重く、
51歳 と 若 年 者 で あ る こ と が 原 因 と 考 え られ た 。 ま た 、 中 期 症 例 に 関 し て は 明 ら か な 上 昇 を 認 め た が 、 す べ て の サ ン プ ル に お け る 表 面 劣 化 ダ メ ー ジ の 平 均 は
26± 22点 で あ り 、 過 去 の 報 告 よ り や や 低 い 傾 向 を 認 め た 。 す べ て の サ ン フ ル に お け る 表 面 劣 化 ス コ ア は
BMI(Body mass index) と 生 体 内 期 間 に 相 関 関 係 を 認 め た 。 摺 動 面 の 結 晶 分 率 に お い て は 、 多 く の 摘
出 サ ン プ ル で 結 晶 相 の 上 昇 と 第 三 相 の 低 下 を 認 め た 一 方 で 、 サ ン プ ル
5、
7、
11は主
に 結 晶 相 の 減 少 を 認 め た 。 摺 動面に お け る 微 細 構 造 の変 化 は 高 い 塑 性 変 形 と 酸化 劣 化 の 両 方 が 組 み 合 わ さ っ た 効 果 で あ り 、 結 晶 相 の 全 体 的 な 増 加 は 酸 化 に 誘 導 さ れ た 再 結 晶 化 が 表 面 に 生 じ た も の と 考 え ら れ る 一方 で 、 い く つ か の サ ン プ ル で 非 結 晶 相 が 増 加 し た 事 実 は 、 塑 性 変 形 が 結 晶 相 及 び 第 三 相 の 減 少 に よ っ て も た ら さ れ た も の と 考 え る 。 未 使 用 サ ン プ ル と 比 較 し て 、す べ て の 摘 出 サ ン プ ル に お け る 最 大 酸 化 度 及 び 最 大 結 晶 化 度 の 上 昇 を 認 め 、 生 体 内期 間 と 相 関 を 示 し た 。 さ ら に 、 す べ て の 摘 出 サ ン プ ル で
UHMWPE内 の 抽 出 物 指 数 を 確 認 し 、 生 体 内 期 間 と の 相 関 を 認 め た 。 さらに、 非 荷 重 部 と 比 較 し て 荷 重 部 に 抽 出 物 指 数 の 上 昇 を 認 め た 。 最 大 酸 化 度 と 最 大 結 晶 化 度に関 しては非常に強い 相 関 を 認 め 、 最 大 酸 化 度 と 最 大 残 留 脂 質 に お い て も 相 関 を 認 め た 。 本 研 究 に お け る 最 大 酸化 度 は
2.1±2.3と過去の y線 滅 菌
UHMWPEの 報 告 よ り 高 い結 果 と な っ た 。 こ の こ と か ら 、 電 子 線 滅 菌 に お い て も 生 体 内 期 間 に 伴 っ て 酸 化 劣 化 を 生 じ る こ と が 確 認 さ れ た 。 ま た 、 脂 質 は 関 節 液 か ら 回 収 さ れ る 抽 出物 の主要な物質と さ れ て お り 、 本 研 究 に お い て も 抽 出物 指 数 と 生 体 内 期 間 に 相 関 を 認 め た こ と か ら 、 生 体 内 に お いて も 脂 質 が 酸 化 を助長させる可能性が示唆された。
本 研 究 は 生 体 内 に お け る 電 子 線 滅 菌
UHMWPE腔 骨 イ ン サ ー ト の 表 面 構 造 の変 化 及 び 酸 化 劣 化 を 明 ら か に し た 論 文 で あ り 、 学 術 上 極 め て 有 益 で あ り 、 学 位 論 文
として価値あ る も の と 認 め た 。
Acta Biomaterialia.
Published: 2017 Jun; 55: 455‑465.
doi: 10.1016/j.actbio.2017.03.040.
Shine Tone, Masahiro Hasegawa, Giuseppe Pezzotti, Leonardo Puppulin, Akihiro Sudo