第 3 章 キ ャ リア教 育 の展 開 と 「大 学 開放
」第 1 軒 日本 における大学開放 と リカ レン ト教育 I.は じめに
生涯学習 についての理解 には、様 々な立場 か らのアプ ローチがあ り、また、主要 な領 域 として設定 され るもの も極 めて多岐にわたっている、 とい うことができる。
学習内容 の視点か ら捉 えた場合 、 これ までの生涯学習 をめ ぐる議論は、必ず しも職業
・労働 とい うことに十分関心 を寄せ て こなか った、 とい うことがで きよ う。勿論 、労働 者教育や職業教育を研 究 した り実践的 に教育プ ログラムの開発 を求めるもの も決 して少 な くはない。 しか し、社会教育か ら生涯学習へ とい う流れ の 中で研 究課題 を設定 し、方 法論 を追求 して きた領域 では、十分研 究が行われ て きた とは言い難 いのであるO そ して それ は高等教育の領域 にお いて も同様 であ る、 と考 える。大学が社会人 として働 く青年 の教育 を担 当 しているとい うことの意味は、改 めて言 うまで もない よ うに聞 こえるか も
しれ ないが、 「 ニー ト
」が社会問題化 した り、学生の基礎的な学力 ・学習力が低下傾 向を 強 める中で、 「 個人一大学一 社会」 とい う関わ りも含 め真剣 に問い直 され なけれ ばな らな いのではないか 、 と考 える。
また、大学が社会人 を対象 と して多様 な学習プ ログラムを用意す るこ とも本格的 に検 討 され る必要 がある、 と考 えるOす でに一部 の私 立大学では社会人 を対象 とした教育プ ログラム ・学習 コースを開設す るよ うになってきているが、そ うした 「 大学 開放」は 、21 世紀 の今 日では基本的 に大学 の果たすべ き役割 と して位 置づ け られ る必要 がある、 と考 える。
ここでは、 ( 1 )生涯学習 を主 と して職 業教育の領域 に関連付 けて捉 え、 ( 2 )近年急 速 に関心が高まってきてい る、大学開放 の一環 と しての リカ レン ト教育 ・キャ リアア ッ プ教育を職業教育の新 たな展 開を示す もの として位置づけ、 ( 3 )同時に、従来 の社会教 育 ・生涯学習 の中で中核 を構成 してきた行政 に求 め られている課題 を探求 し 、( 4) さら にそれ を 日本 と EU との比較 を念頭 にお きなが ら探求す る、とい うことを 目指 してい る。
平成 1 8年 3月のチュー リッヒでの調査の結果 をふ まえ、職 業教育 ・リカ レン ト教育 ・キ ャ リア教育 に焦点 をあて、今後 の生涯学習 を模索 してみたい、 と考 えるo
Lか し、業種や職種や職務 内容 にまでふ み こんで職業教育 につ いて論 じる余裕 はない が、 これ まで実施 して きて地域住民 に対す るア ンケー ト調査 な どをふ まえ、生涯 学習 の 視点か ら職業教育について論点整理 を試 みたい。
Ⅱ. 日本 にお ける生涯学習の これ までの展開 (1 ) 日本にお ける生涯学習の特質
日本 の生涯 学習 を概要 した場合 、特徴 の一つ と して行政 が大 きな比重 を 占めてい る、
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とい うことを指摘 できる ( ここでは、社会教育を担 う行政だけでなくいわゆる 「 首長行 政
」の領域での教育的活動 も含 めて位置づけているのであるが) 。言 うまでもなく、社会 教育施設 を拠点 とした教育事業の展開は、「 行政改革」が進行 し 「 財政危機
」が喧伝 され る中で も一定の予算が確保 され 、職員 の配置 も減少傾 向にあるとは言ってもそれな りに 確保 され、重要な役割 を果た し大きな成果を上げてきた と言 える。
また、 「 生涯学習」に関 して国 レベルで審議会で議論 され 、「 生涯学習振興整備法 」 が 制定 され、政策 として具体化 され る課程 を通 じて、一貫 して社会教育を基軸 として生涯 学習が展開 されてきた、 と言 うことができよ う。 「 社会教育」 と 「 生涯学習」 との関係 に ついて検討す ることは別の機会 にす るとして、国や 自治体において 「 社会教育課」が 「 生 涯学習課」に名称変更 され る中で一定の事務分掌や果たすべき役割 .権限な どの修正が あった として も、基本的 には社会教育施設 を軸 として行政が執 り行われてきた、 とい う ことができよ う。
この ことは、換言すれ ば行政が中心 に生涯学習 を推進 してきた、 とい うことになる。
即 ち、公民館や博物館等が住民に対 して学習機会 を提供 し、それ に住民が 自分の興味関 心にもとづいて選択的に参加 し学習す るとい う、社会教育施設 を拠点 とした学習活動に 焦点があて られて きた、 とい うことに他 な らない。具体的には、住民の健康に関す る興 味 ・関心 ・不安 に こたえる形で事業が実施 され、そ うした 「 学習機会
」に住民が選択的 に参加す る、 とい うことであるo例 えば、 自分 がガ ンではないか とい う不安か ら詳 しく 症状 を知 りたい、あるいはガ ン予防の手立てを知 りたい、 といった内容 に応 える 「 健康 講座 」 や 「 講演会」が公民館で開催 され るとそれ に参加す る、 といった具合である。
「 学習機会」 に参加す る前提条件 として、多 くの場合 は 日常生活の中で様々な機会に 関連す る情報 を入手 してい ることが多い。先 に挙 げたガ ンの例では、 日頃 「 胃が もたれ る 」 とい う自覚症状があった り、同世代の人 ・知人な どが胃ガ ンで死亡 した といった情 報 を入手 してい ることがあ り得 る。 また、各種の メデ ィアを含 め、多様 な情報に按す る
中で、一定の切実 さに達 ししか も 「 学習機会」の情報がマ ッチ して こそ 「 参加
」とい う 行動に移 るのである.いずれ に して も、そ うした 「 学習機会」を提供す る主体の中心 ま、
公的社会教育であった。
次に、民間の教育産業の果た してい る役割 について触れてお きたい0
主 として 1 97 0 年代以降、民間の教育産業が都心部 を中心に 「 学習機会」 を提供 してき た、 とい うことも周知の ことであろ う。いわゆる 「 カル チャーセ ンター
」が、新聞社や スーパーな どの関連会社 に よって運営 され、公 民館 をは じめ とす る公的社会教育 と対抗 した り棲み分 けなが ら事業 を展開 してきた。それは、体育 ・スポー ツの領域でも同様で、
スポー ツクラブや フィッ トネスクラブな どが体育施設 と対抗 ・棲み分けを してきたので ある。
( 2) 縦割 り行政 の問題点
日本の社会教育 ・生涯学習について語 られ るとき、しば しば指摘 され ることとして 「 縦 割 り行政の弊害」 とい うことがあるo教育行政以外の部 門で も実際には様 々なテーマ ・
内容 で学習機会が提供 され ているのであるが、教育行政 との連携 が希薄である、む しろ
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連携がな されているのは例外的である、 とい う実態が指摘 され るのである。例 えば農業 者 を対象 とした事業は農林水産省 で、労働者 を対象 とした事業は厚生労働省、そ して商 工業者 を対象 とした事業は経済産業省、 といった具合である。 そ して事業に関連 して学 習的要素が強い事業 もそれぞれ の 「 縦割 り行政
」の枠の中で実施 されてきた、 とい うこ とである。そ こには社会教育 ・生涯学習が関わ りを持つ条件が非常に乏 しかった、 とい うことである。
勿論、お よそ学習的な要素を内在 させ ている場合 にはすべて社会教育 ・生涯学習行政 が担 当すべ きだ、 とい うことではない。 問題 は、行政が縦割 り化す ることで地域課題や 生活課題 を総体的に捉 え、克服すべ き実践の方向を行政 をは じめ住民や企業 ・協同組合
・ボランテ ィア ・NPO な どが どのよ うに連携 しなが ら追求 してい くのか、 とい う展望 を見出 しに くい状況にあった、 とい うことであるO総体 を把握 出来なければ、個人の努 力だけでは問題解決が展望できない、また地域の中で他の住民や行政 ・機 関 ・団体な ど と連携 して対処 しよ うとい う展望 も持っ ことが困難 にな りがちである。 こ うした点 を考 えると、「 教育の論理」を軸 として地域課題 ・生活課題 を捉 え直 し、学習プ ログラムを作 成す ることの独 自性 ・重要性が明 らかになるのではないか、 と考える0
Ⅲ. 地域課題 と地域生涯学習 (1 )地域 間格差の拡大
今 日、様々な場面で 日本社会にお ける 「 格差」が問題点 として指摘 されている。また、
地域活性化 を図ることも重要な課題 となってきてい るO住民に とっては切実な生活課題 として立 ち現れているO
「 勝 ち組 と負け組 」 といった表現が最近頻繁 に使用 され るよ うになっているが、その 明確 な定義 はなされていないに して も、今 日の 「 世相
」を映 し出 してい ることに間違い はない。それ は企業間の競争 ・格差、労働者 間の競争 ・格差、児童生徒の競争 ・格差、
等々様 々な場 面で見受 け られている。現象的には 「 勝 ち組 と負 け組 」 として見 えること の根源的な分析 まで立ち入 る余裕 はないが、 「 地域間格差」 もある意味では政治 ・経済 ・ 文化等 々の様 々な場面での 「 勝 ち組 と負 け組」の集積 された結果 として捉 えることがで きよ う。
「 少子高齢化」とい うことも問題 とされて久 しいが、農漁村 を中心 とした地域での 「 過 疎地
」や 「 高齢化 」 が取 りざた され てきたのは決 して新 しいことではない。高齢者 をめ ぐって問題 とされ ることは、「 生 きがいづ くり 」 といったテーマでの学習に壊小化 され る きらいはあったものの 、1 97 0 年代 にはすでに重要な問題 として指摘 されていた。
一方、記憶 に新 しい ところで、また今後実際に経済 ・政治等 々に様 々な問題 を具体化 して くると思われ る 「 郵政民営化 」 によって、「 地方 の切 り捨て 」 が様 々な生活課題 ・地 域課題 を生 じさせてい く、と考え られ る。
市町村合併 に よる行政サー ビスの低下 も危供 され るところである。一見す ると 「 村」
や 「 町 」 が 「 市」に昇格 し、財政規模 な ども大規模 なものになったよ うに見えるが、内
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実 を冷静に捉 えるな らば、多 くの 自治体では 「 赤字財政」の基本構造が解消 され る可能 性 に乏 しい。そ して、 「 市
」の中で も 「 市街地」I「 市の中心部」には公共施設が集 中 し た り民間企業が経営 を発展 させ る条件 も拡大す る可能性 はあるものの、周辺部ではいっ そ う行政サー ビスの低下が予想 され るのである。
この よ うな地域 間格差は、端的に言 えば、社会資本の投下の不均衡 に起因す ることが 多いだけに、「 市場原理」にまかせ るだけでは 「 格差」は拡大す る一方であ り、その 「 是 正」は公的な ものに依存せ ざるを得ないのである。
教育行政の部面 において も事態 は深刻である。予算の削減 に ともな う事業の廃止 ・縮 小 、専 門職員の削減 といった ことが行われ てきた。 また、管理運営においても施設 の民 営化が財団運営‑ の委託 な どの形で行われ てきたが、近年 「 指定管理者制度」の導入が 積極的に推進 されてきている。
こ うした状況 をふまえるな らば、改めて地方 自治の在 り方 を問い直す必要がある、 と 考 えるO今回の 「 市町村合併
」で地域間格差は拡大 し、過疎化の進行 している地域では いっそ う問題が深刻化す ることが予想 され る。そ して、今後 さらに 「 道州制」が検討 さ れてきているところであ り、「 地方 自治」の形骸化が促進 され よ うとしているのである。
「 果た して これで よいのか」 と、立ち止 まって考 えてみ る必要があるのではないだろ う か。
これ まで否定的な要素 を強調 しす ぎたき らいがあるが、住民の活動 に注 目した とき、
様 々な課題 を克服 しよ うとす る運動が展開 されていることに も触れ てお きたい。地域に お ける住民の生活課題 ・地域課題‑の取 り組み とい うことを考 えた場合、注 目され るも のの一つがボランテ ィア ・NPO 活動であるO都市部 と比較 した場合 、「 地方」でのボラ ンテ ィア ・NPO活動 の展開は相対的に活発 とは言い難い。 とはいえ、様 々な領域で住 民の活動が展 開 されてい ることは間違いない。福祉 は勿論 、環境問題や教育、医療、文 化等々において、実に多彩な活動が展開 されてい るのである。
平成 7年の 「 ボランテ ィア元年 」 以降、あるいはNPO法が施行 されて以降、ボラン テ ィア ・NPO 活動 に急速 に関心が高ま り、実践 も拡大進化 している。そ うした活動の 中で学習が深 め られてい る。実践の中で学習 した成果が活か され さらに深 め られ てい く のであるD
(2) 地域生涯学習の展開 と 「 大学開放
」これ まで述べてきた よ うに、地域課題が様 々な形 で顕在化す る中で、住民の学習 と自治 体 の教育行政 の果 たすべ き役割 は一段 と重要性 を増 して きてい る。 カルチャーセ ンター に代表 され る民間教育産業の場合 、その主要な 「 市場」は 「 趣味 」 や 「 一般教養 」 を中 心 とした、 「自己完結的学習 」 に傾斜 しがちである。つま り、個人的な興味関心か ら発意 し、個人的 に学習成果 を 「自己満足
」の範 囲で収束 させ る傾 向がある、 とい うことであ るQ勿論それ を否 定 しているのではないが、生活 を営む 「 場
」に様 々な生活課題 ・地域 課題 が存在す る中で、そ うした課題 についての学習や実践 は、 こ うした民間教育産業の 展開だけでは十分には ぐくむ ことはできない、 とい うことを指摘 したいのである。
その意味では、改 めて行政が積極的な役割 を果 たすべ きで あ り、現 に公民館 な どの敏
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育行政 の部面な どでは大 きな成果を上げてきているのであるQ また、教育行政 とともに 教育関連行政の部面で展開 される学習活動 も、地域 にお ける生活課題 ・地域課席 を正面 か ら取 り上げていることも多いo
Lか L、先に も触れたが、「 縦割 り行政の弊害」 として、生活課題 ・地域課題への対応 が、行政の 「 縦割 り」の仕組みの中で、孤立 ・分散 した状況で学習機会が設定 され る傾 向にある。そのため、総合的に生活課題 ・地域課層 の現状 と克服す る展望を見出す こと ができない状況にある、 と言 うことが指播 され なければな らない。真 に地域住民の立場 に立った場合、 どこに問題があ りどの よ うに した ら課題 を克服で きるのか、そ うした視 点か ら総合的な 「 教育プ ログラム
」の開発や学 習方法が必要 とされ るのであるが、孤立
・分散 した学習機会に参加す るだけでは、換言すれ ば住民の個人的努力だけでは学習 を 深め課題解決の実践 を育む ことは至兼の業である。 だか らこそ、地域生涯学習 とい う対 極的な視野か らの学習活動の線紋化が求め られている、 とい うことである。
また、「 大学開
放 」について考えた場合、そ うした地域課題に対 して大学が積極的に関 わることが求め られてきているD 「 大学開放
」とい う場合、従来は r 公開講
座 Jが中心だ った、 と言 うことができよ うQ一般教養が中心で、他の機 関 ・団体が提供す る 「 学習機 会
」と蛙較 して 「 高度な学習機会
」を提供す る場合 もあるが、高い受講料 を払 える人が 主たる参加者だった、 とい う面があることも否雇 できない。
地域課題‑の取 り組みは、研究の場面で も求め られているところである 。 研究活動 に おいて、研究テーマ ・内容 を地域に根 ざ した もの として設定す ることが求め られているO それは外部か らの 「 研究費の獲
得 」とい う面に替小化 されてはな らない、 と考える。
大挙が地域に貢献 してい (上で、行政やボランテ ィア ・NPO な どと連携 してい く必 要があ る、 と考 えるO これ まで述べ てきたよ うな生活課題 ・地域課 藩 に取 り組む様 々な 韓閤 i団捧 iボランテ ィア ・NPO な どとの連携 であ る。生涯学習教育研究セ ンターの 例 では、「りん ご王国こ うぎょくカ レッジ
」とい う番組の活用を行っていることを紹介 し たい 。 地域の F M放送お よびその放送 局 に提供す る番組 を制作 している NPO と連携 し、
弘前大学の教員が出演 している番組 の内容 を、セ ンター のホームペー ジで も聴取できる よ うに している、 とい う事例である。 こ うす ることで、教員が研 究 してい る内容 をわか 撃やす く揮発 Lた 撃、最近の トビぎタスを専門的 な研究成果 をふ まえて符弁す ることが 可能 となっているのである。
「 東学閉
塵 j事業の中で、F 参加 韓襲型学習
」を取 撃入れていることにも触れてお きた いO 「 あお も りツ ー リズム人づ くり大学 『はや て』」では、
グルー プ ワー クを取 り入れ 、 英国学習舜積極的な意義 を確認 している iき Q
Ⅳ. 生涯学習における職業教育 (1 )生涯学習の理解
ここで蜜轟で生産学習舜捉 え寿について蕎単に整理 しておきたい。
生準学
習とい う籍語は、蕪 寿を内容 を含む も鞄 と して軽 え ら絶ている串ではあ るが、
垂生か ら死 を適 え毒まで招、墓蓬 にわたって行毎鈍 る学習活動 と して捉 え られ ている、
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とい うことは最大公約数的な理解であるといえよう。
したがって、家庭教育 ・学校教育 ・社会教育を包含す るものであ り、学習内容 は 日常 生活 に関す ることに始 まって多岐にわたる、 とい う理解 になる。その文脈 か らすれば、
職業教育は、現代社会 において社会人 として生活 を営む上で必要不可欠の もので生涯学 習の重要な柱である、 とい うことになる。 高校や大学 を卒業 した後、多 くの人は企業や 行政な どで雇用 され、職業人 として働 くことが求め られているか らであるo勿論、生涯 学習 とい うことで、現役 の職業人 として勤務 していない高齢者 な どにおいて も、生活の 営みの一環 として、あるいは就職準備 の一環 として学習す る場合 もある。 シルバー人材 セ ンターの よ うに、それ までの経験 ・技能 ・知識 をいか して 「 第二の人生
」を送 る場合 や、新 たに起業す る事例 な ども決 して少な くない。 「 2007 年問題
」をめ ぐって報 じられ てい る事例 には、新たな 自営業 ( 農業や NPOな ども含 めて)の立ち上げ も多いのであ
る。そ こには、必ず しも 「 平均利潤」 を実現 しな くて も、 自己の生 きがいづ くり ・社会 参加 とい うことで追求 され ているもの もあることに注 目したい。
ここでは、生涯学習 とは個人の労働 ・生産 ・生活過程 において展開 され る、社会 との かかわ りを持 った積極的 ・目的意識 的 ( 場合 によっては継続的)情報収集活動、 として 位置づけ してお きたい。
( 2 )職業教育の生涯学習論 としての再検討
日本 にお ける職業教育の現状 を考 えた場合 、そ こでは第一に企業内教育 との関わ りが 重視 されてきた、とい う特質がある。実際に職業人 として生活す る場面を想定 した場合、
企業 の一員 として与 え られ た職務 を十全 に遂行す ることが求め られ、また、雇用す る側 として も企業活動 をスムー ズに追求す るための 「 教育」が不可欠 の もの と して捉 えられ ていたか らである。勿論 、そ こでは基本的な立場 ・価値観 ・価値志向において利害の対 立が存在す ることは言 うまで もない ことであろ う。
第二 に、学校教育にお ける職業教育は、国民全体の教育水準の上昇が実現す る中で高 校進学率の上昇、受験競争 の激化 、学歴社会化 ( 学歴 に よる差別化 ・序列化) といった 状況が作 り出 され ることに よ り、「 普通科 と職業化 との差別化 ・序列化」 といった問題 を 包含 して実践 されてきた、とい う特徴 がある。いわば、「 普通科」に進学できない もの ( 級 済的な問題 もあるが、主 として 「 学力
」の間接 に規定 されての もの として)が受験す る のが 「 職業教育」である、 といった固定的な観念が作 り出 され定着す る傾 向を示 してい るので ある。 そ こには極 めてゆがめ られた職業観 ( 働 くことの意味 ・意義 についての理 解)が底流に形成 されてきた、 と言 うことができよ う。 また、 「 労働 」 とい うことに対 し
て も一面的な理解 をもた らす要因 となっている、 と言 うことがで きよ う。
第三 に、家庭教育において も、 「 職業教育」の根幹 をな してい る 「 労働 」 とい うもの、
「 働 く」 とい うことの基本的な捉 え方 ・価値観 において大 きな変化があった、 と言 うこ とが指摘 され なけれ ばなれ らない。 いわば 「 働 く」 とい うことが人間社会 において重要 な意義 があ り、人間 として生 きてい く うえでの基本 をな してい る、 とい う価値観 の揺 ら ぎが生 じている、.とい うことである。 かつて 「3K」 とい う言葉 が、忌み嫌 われ るもの を象徴す る用語 として使用 されたo それ は今 日では払拭 された とい うよ りは、一段 と強
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まっている、 と考える。 「 働 く
」とい うことの吟味をする以前に、 「 危険 」、「 汚い」、「 き つい」 とい うイメー ジがある職場 ・職種 ・職業は若者に回避 され るよ うになったのであ る。こ うした傾向は、後述するよ うに決 して家庭教育だけの問題ではないのだが、「 親子
」とい う人間関係 を基軸 とした、就学前お よび就学期の児童生徒が生活 を営み、成長発 達 を実現す る 「 場」である家庭において、すでに基本的な労働戟 ・職業観が揺 らいでいる、
とい うことが言えるのではないだろ うか。
第四に、大学において 「 職業教育」 は、基本的に 2 つのベ ク トルの中で不徹底のまま に行われてきた、 とい うことができよ う O 専門職 の養成 ( 職業に関す る専門的知識 ・技 能の習得) とい う側面 と学問に基礎付 け られた高度な教養の習得 とい うことが、複雑 に 錯綜 しなが ら追求 されてきた、 と考える。 問題 なのは、近年の傾 向 として、学生が大学 で学ぶ上で必要 とされ る基礎学力 ・学習力 を低下 させ てきていると同時に、社会 との関 わ りの中で 自分の生 き方 を探 る ・社会人 を 目指す とい う志 向が貧弱になってきているこ
とであるo
第五に、行政の果 たすべ き役割が一段 と大 きくなって きている、 とい うことであるO 先に触れた よ うに、高校 での差別化や大学教育の問題が生 じてきている中で、 さらに民 間企業での雇用政策 (リス トラの徹底、年功序列制度の廃止 、パー ト・派遣職員の構造 的採用等々)の下で、職業教育が多面的に展開 され る必要があるのだが、行政がそれ に 積極的に対応す る必要がある、 とい うことである。
(3 )職業教育を構成す る論理 一生涯学習論の視点か ら‑
ここで職業養育について、学習論の視点 か ら若干の整理 を試みたいQ
第‑に、学習内容 としては、基礎教育の充実が考 えられ るo国語、算数 ・数学な どの 各教科 目と して構成 され ているものを精査す る必要がある、 と考える。今 日、学校教育 では r 学習内容の削減」に ともな う 「 学力低下
」が問題 とされているが、む しろ授業の なかで確実に理解す ることが追求 しがたい状況が広範に存在 し、理解不足に起因 した 「 学 力低 下
」が指摘 され なければな らない と考 える , その意味で、基礎教育が重要である、
とい うことである。
第二に、基本的な労働 ・職業観 を形成す る教育 ( 現代社会の中で生 きる、生活 してい くとい うこと)が考 え られ る。現代社会についての基本的な理解 、現代社会において個 人 と して生 きてい (とい うことの意味 ・内実につ いて、理解が深 め られ る必要があるQ 先 に家庭教育に触れ たが、この点はこれ までの職 業教育において も十分追求 され て こな かった部分である、 と考える。革育内容 を構成す るものは、歴史的 ・社会的要素及び現 代社会における人間 とい うものの特性 、 といった要素で構成 され ることになる。
これ を今 日の職業高校 に即 して考えるな らば、商業や 工業 、農業 といった業種 を横断 した労働観 g ) 形成 とい うことになろ うO
第三 に、具体的な労働場面に即 した基本的 な能力 の形成 ・技能習得 と応用力の形成、
とい う閉居 であるO
「 職業遂行能力 」 を検討 してみ よ う。 「 職業の遂行
」とい うことは、一面で具体的な労 働場面 に即 して吟味 され る必要があるのだが、他 面で労働 とい うものの最 も基本的な特
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質を解 き明かす キー概念である、 と考える。職業の遂行のためには、与えられた労働条 件の下で、労働 内容の在 り方 を十分理解 ・把握 し、 自己の肉体的 ・精神的能力を活用 し て、実際に成果が上が るよ うに努力す ることが求め られ る。労働 主体 としての知的 ・技 能的水準 もその一部 を構成す ることになるD
近年、イ ンター ンシ ップな ども盛んに行われ るよ うになってきてい るが、それが就職 前の職業教育 としての実態は、現時点では持 っているとは言い難い。
Ⅴ. スイスにおける職業教育の展開 (1 )スイスにおける職業教育の特徴
平成 1 8 年 3 月に実施 した調査 をもとに、 ここで簡単にスイスにおける職業教育の特徴 について述べておきたい。
スイスでは高等教育機関‑の進学率は 3割に到達 していない。職業教育に焦点を当て た場合、大学で専門教育 を受 けてい く場合 もあるが、多 くは高校卒業後に国立の職業専 門校 に進学 してい くo この職業専門校 は、社会人向けの コース も開設 しているQ職業に 就 くために必要 とされ る基礎的な学力 と専門的な知識 ・技能の習得が図 られている。社 会人の場合 は、主 として転職希望者や失業者が対象 となってい るo授業料は無料で、少 人数教育を基本 としたカ リキュラムが用意 され、一人一人の学びを大切 に した教育的配 慮が随所 に見 られ る。
一方、民間教育産業 において も職業教育が展開 されてい ることに注 目したい。生活協 同組合 であ る 「 Mi g r os 」 では、多彩 な教育学習 コース ・プ ログラムが設 定 されている。
その中で、語学学習が大 きな比重 を占めているのであるが、その学習が 「 一般教養」的 な性格 を持つ もの と職業教育的な要素 を強 く持つ もの と 、2 つの場合 があることが注 目
され る。多民族国家で観光 ビジネス も基幹産業 としての位置づ けがあることか ら、語学 学習 は職業上の必須の知識 ・技能 となっているのである。
(2) スイスか ら学ぶべ き点
国 として置かれてい る事情や歴史的 ・社会的状況な どが異 なることか ら、単純 に外国 と比較 して 日本の教育の在 り方 を論 じることは慎むべ きことである。
とはいえ、 ヨー ロッパの 「 伝統 」 として形成 され てきた ものの中には、 日本 の未来像 を描 くに当たって参考 にすべ き点は数多 く存在 してい る、 と考 える。
そ うした視点か ら、以下では 3 点に絞 って触れてお きたい。
第一 に、職業教育の位置づ けである。 スイスの場合 、高校 の教育の 中で 日本 の よ うな
「 職業科 」 と 「 普通科 」 との 「 薫別」は基本的に存在 していない。 かつては 「 職業科 」 か ら 「 普通科」‑ の途 中での乗換 えが出来 なかったが、今 日ではそれ も緩和 され てきて いるOまた、授帯料 も無料で、 咽 くこと」や 「 学ぶ こと 」 が個人の基本的人権 として尊 重 され る条件が襲 え られてい るのである。
第二 に、労働時間の問題 である。 日本 の場合、かつて と比較すれ ば労働時間は確 かに
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大幅 に短縮 され ている。 しか し、実態 としては超過勤務 が恒常的にあ り、「 風 呂敷残業
」と言われ るよ うに 自宅 に仕事 を持 ち帰 らざるを得ない状況にあ る人 も多い。都市部では 通勤時間の長 さの問題 も大 きい。 こ うした状況では、 「自由時間 」 も少な く、 自立的に 自 己研鎌 ・自己啓発 を行 う条件 に乏 しい。この ことは、個人 に とって もマイナス要因だが、
企業や会社 に とって も大 きなマイナ ス要因になっている、 と考 える。 これ に対 してスイ スの場合は、多 くの労働者 が定時就業 ・退社 を保障 されているのであるO
第三に、r Mi gr os 」 とい う協同組合が学習機会 を提供 しているのだが、その基本的な条 件 として収益の 王パーセ ン トを教育文化事業に振 り向けることが社会的に課せ られ てい る、 とい うことがあるO この点、 日本では個別的には企業が rメセナ」の事業に払 出 し た り、スポ‑ ツ ・文化 ・教育振興な どに基金 を提供 している場合 もあるo Lか し、全体 と してはあ くな き利潤追求 に終始す る傾 向が強い、 と言 わ ざるを得 ないQ こ うした点 を 社会的にコン トロールす る必要があるもの と考 える。
Ⅵ. 結び
地方 自治体で 「 生涯学習
」と言 う場合、それ は従来 の社会教 育行政 を基軸 として展開 され るもの として捉 え られ るき らいがある。 しか し、 これ まで述べ てきた よ うに、 「 職業 教育」 を基本 として捉 えた場合 、従来の教 育行政 の枠組 みの中で も様 々な可能性 ・課題 がある と同時に、教育行政 の枠 を越 えた新 たな展 開が求 め られ てい る、 と言 うこ とも否 定できないO
都 市部 と比較 した場合 、 「 地方
」では社会資本 の投下が絶対的 ・相対的に少ない、 と言 う現状 があ るo Lか し、単純 に社会資本 の投 下を図 るだ けで良い. とい うのではないo 地域 の豊かな 自然が急速 に破壊 され て きてい る と言 うこ とが、環境 問題へ の対処 な どと あわせ て具体的に問題 とされ なけれ ばな らないO
また、高度成長期以降振興 した地域 にお ける 「 共 同律的な人 間関係 ・社会開
係 」は 、 都市部 とは全 く異 なった形 で 「 人間関係 の希薄化
」を もた らしてい る。 そ うした こと‑
の対処 として 「 地域づ く り
」‑の取 り組 みが あるが、その 「 地域 づ くり
」の基軸 に生活 課題 ・地域課題‑ の取 り組みが据 え られ る必要 があ り、その文脈 の中にはキャ リア教育 や リカ レン ト教育 と言 った ことが位置付 け られ る必要が ある、 と考 えるO
生涯 学習 を 「 職 業能力 の形成
」と言 う視点か ら捉 えなお した場合 、今 日なお企 業 が重 要な役割 を果 た してい る、 と言 うことが出来 よ うo Ont h eJ o bTr a i ni n g と言 う形で、企業 自身が職員 に対 して研修 を行 い、労働力 の質の向上 を図 ってい るのである。 しか し、 こ うした労働者 に対す る教 育研修 システムは、 「 年功序列
」の 「 終身雇用制
」の改変 と歩調 を合わせ 、次第に撤退す る兆 しを見せてい ることに注 目す る必要 が ある、 と考 えるo
今 日、 「 大学
」が社会的 に果たすべ き役割 と して、 「 研 究 暮教 育 ・社会 ( 嘩域)貢献
」とい うことが言われ てい るが,「 研 究
」や 「 教育
」そ して 「 社会 ( 地域)貢献
」のそれ ぞ れ の部分で大学開放が求 め られ る ところである。 そ Lて 同時 に、地域生涯学習の展開 と 密接 に関わ りを持つ、 と考 える。
これ 享で多 くの大学 にお いて 「 大学開放
」が積極 的 に推進 され て きたが、その 中核 と な るものは 「 公 開講
座 」に代表 され るよ うに、地域住 民 に対す る大学の 側 か らの 「 教 育
.き轟,
学習機会の提供」であった。 こ うした 「 大学開放」は今後 も重要な ものの一つ として位 置づ けられ るべ きなのではあるが、21世紀 の今 日では新たな展開が求め られていること
も否定できないO
とりわけ 「 教育 」 については、大学が高等教育機 関 として持つ高度な教育機能が積極 的に開放 され る必要がある、 と考 えるO現役の労働者、あるいは経営陣 ・技術者 ・専門 職貞等々に対 して リカ レン ト教育の場を提供す る必要がある、 と考える。
( 藤 田 昇治)
く 注 >
1 )弘前大学におけるキャ リア教育の実践 として、「 あお もりツー リズム人づ くり大学 『は や て 』 」 ( 当初は 「 観光 ビジネススクール 『はやて 』」 としてスター トし、平成 柑 年度に 名称変更)がある。これ については拙稿 「 キャ リア教育志向の 『大学開放』事業の展望 」
( 『弘前大学生涯学習教育研究セ ンター年報』、第 9 号 、2006 年)を参照 されたいO
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第 2 節 キャ リア教育志向の r 大学開放
」事業 f,キャ リア教育の志向
「 大学開放
」が これ まで充分追求 してきていない領域 として、「キャ リア形成」、 「キ ャ リア教育
」がある
日。公開講座 ・講演会な どの、地域住民を対象 とした 「 学習機会の 軽供
」は、概 して一般教養 に偏っていた、 とい うことができよ うO 「 中高年」や 「 主婦
」を主たる対象 として、高等教育機関 としての 「 一般教養 」 を重視 したカ リキュラムに重 点がおかれたのである。
また、レマー トタイム学生」の受 け入れや r 社会人入学 J 、 さらには 「 授業公開」 とい った 「 大学開放」において も、図書館 ・スポー ツ施設な どの 「 開放」において も、「 キャ リア形成
Jや 「 キャ リア教 育」 には軸がす え られてはいなかった、 とい うことができよ
う O