編 集 後 記
2007年、長崎大学環境科学部は創設10周年を迎え、地域貢献をさらに推し進める長崎県環境部・
雲仙市との三者協定の締結、学部のもつシーズと地域からのニーズを結ぶ役割を担う環境教育研究
マネジメントセンターの創設と、環境科学部は新たな一歩を踏み出した。今回、2007・2008年度 の主な活動実績と、地域活動に関する実践報告・論文等を掲載したセンター年報『地域環境研究』
を刊行することとなり、ここにその記念すべき創刊号を刊行した。慣れない編集体制のなか、多く の方のご助言のお陰で何とか乗り切ることができた。まずは関係各位に深くお礼申し上げる。
本誌の内容は、大きく2つから構成されている。1つは、本センターが主体的にかかわった受託 事業や公開講座、学生への講義内容等を写真や当日のプログラムと合わせて紹介した第Ⅱ章である。
とりわけ、同じような地域活動をおこなっている機関、これから地域活動に取り組もうとしている 方々等にとって少しでも有益な情報が提供でき得るならば、この上ない喜びである。
もう1つは、地域活動に関する実践報告・論文からなる第Ⅲ章である。Eキヤンレッジ推進事業
(公開講座・共同研究)、「国連持続可能な開発のための教育の10年」促進事業、みんなで学び実践 する「まちエコ講座」モデル事業等、「実践」がベースとなった調査研究の成果をひろく募り、8 本の論考を掲載することができた。いずれも、本誌編集委員会の審査にもとづき、編集委員会で採
録を決定したものである。
安達可菜ほか「温泉地域らしさからみた街路景観の評価」は、温泉のある観光地において、来訪 者が抱く視覚的イメージの重要性を定量的に把握し考察している。観光や地域づくりの研究におい
て、温泉地域は注目すべき対象として近年その蓄積が進んでいるものの、街路景観をメインに掲げ たものは少なく、新しい分野からの切り口である。
江村有香ほか「長崎県小浜温泉地域における地域資源の活用に関わる取り組みの現状」は、地域 資源を明確に定義することで、漠然とした地域の魅力をとらえ直し、それらを有効に活かすことが できるとしている。各地でまちづくりへの関心が高まる今日、まずは足もとの魅力を的確に把握す ることの重要性を実証的に論じている。
庄子真岐「地域づくり型観光まちづくりの展開可能性に関する一考察」は、従来型の観光地と、
地域づくりの新しい手法として観光に着目する地域とを比較し、それぞれの相違点を「観光まちづ くり」の定義に立ち返って考察している。住民主体の事例が急速に全国に広がりつつあるなかで、
観光という事象を冷静に捉えなおそうとする労作である。
深見聡「大河ドラマ『篤姫』効果と観光形態に関する一考察」は、昨年巻き起こった「篤姫ブー ム」を観光学の視点からまとめた全国で初めてとなる論考である。「まち歩き」観光の可能性を、
マス・ツーリズムやスモール・ツーリズムといった形態の違いに注目して考察した。一方で、速報 性の高い内容であることから、今後は本テーマでの研究の深化を図っていきたい。
河上博輝ほか「大学における学生参加型の環!亮マネジメントシステムに関する研究」は、特色 GPとして採択された4大学における取り組みを紹介し、教育ツールとしての効果が高いことを述 べている。学生が主体的な参加を進めていく際には、とりわけ環!亮改善の側面を掲げていく必要性 を強調しており、センターとしてもどのような関わりを環境マネジメントシステムの分野で築いて
いくべきか考えるきっかけとしていきたい。
中村修ほか「福岡県大木町における循環授業の実践」は、2006年度から継続しておこなってい る児童対象を事例に、循環授業が環境教育の一環として地域や教育の現場にいかに根づく存在とな
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っていくのかを論じている。大学の地域貢献活動が、地域にも歓迎されるものとなるための多くの 示唆がつまった、実践に裏づけられた説得力がある。
中村修・長岡諭志「環境マネジメント論における学生研究室監査の取り組み」は、河上ほか論文 と同じく、学生が学習したことを実践に移していく意義を述べている。今後も、経年的な学生の視 点の変化など、教育的な効果について議論の蓄積がなされることを期待したい。
松田香穂里ほか「長崎県立国見高等学校における環境教育活動の事例」は、生徒の地道な取り組 みが、環境改善の顕著な効果として表れていることを述べ、筆者自らも活動支援に携わりながら高 校における先進的な事例であることを実証的に論じた。
環境教育研究マネジメントセンターの活動は、まだ緒についたばかりであるが、これらの貴重な 研究成果を寄せられた方々に深くお礼申し上げる。
2009年度は、センターの活動は3度年目に入る。さまざまなプロジェクトや教育研究活動など を、今年度以上に活発化していく計画であり、さらに充実した活動実績や地域活動に関する論考を
掲載できるはずである。センターがどのような足跡を記していくのか、注目していただきたい。
(深見 聡)
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