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教育のための英文法

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静岡大学教育学部研究報告 (教 科教育学篇 )第 40号 (2009,3)85〜 96 85

教育 のための英文法

English Grammar for Teaching

内   田    恵

NIegumi UCHIDA

(平 成 20年 10月 6日 受理 )

0.は じめに

コ ミュニケー シ ョン活動 を重視す る英語教育 を考え る場合 に、議論 しなければな らない話題 を (1)の よ うに箇条書 きに してみよ う。

(1)a。 いつ :小 学校か らの英語導入 は本 当 に意義 があるのか。

b。 どこ :学 校 での英語教育 と学校外 での英語教育 は並立す るのか。

c.誰 :ネ イテ ィブス ピーカー による教育 にどこまで頼 るのか。

小学校英語導入 を実施す ると して、的確 な指導者養成 はで きるのか。

d。 どのよ うに :学 校 で「 話す ことので きる英語」 を教 え ることは、本当 に必要 なのか。

e.な ぜ :何 のために英語 を教科 と して、学校で教 え るのか。

本稿 の 目的 は (1)の よ うな話題 のすべてに解答 を得 よ うとす るもので はない。 そ うで はな くて 英文法教育 の真価 につ いて議論 す ることにあ る。 しか し、英文法 の導入 につ いて は、 コ ミュニ ケー シ ョン重視 の英語教育 との関係 を検討 す る議論 につなが り、 したが って どうして も (1)に あ げたよ うな項 目は英文法教育 と切 り離す ことがで きない重要 なテーマである。 そ こで まず、英 語教育 の現状か ら眺 めてい くことに しよ う。

1.コ ミュニケー シ ョン重視 の英語教育

結論 か ら先 に言 うと、「話 す ための英語」重視 の教育方針 が定 め られて、 それ に沿 った授業 展 開が中学校 で実施 されて きたが、 曲が り角 に来 た感 があ る。「世界 に通 ず る語学力 を持 った 人材 を無理 な く育成す る」 とい う目標 の もとに最 も直結す る方針で はあるが、 マイナス点がか

な り明 らか にな って きた。

た しか に生徒 たちは英語 に慣 れ親 しみなが ら、話す ことへのア レルギーは以前 よ りも少 な く

な った。 しか し、英語力を基礎 と した英語以外 の分野や能力の育成 とい うことへの貢献 はな く

な って きた。す なわ ち「読 み、考 え、論理 を立 て る」作業 に対 して、間接的によい影響 は与 え

なか ったのであ る。「現場処理型 の英語」 には「英語 で読 み、考 え る」 とい う面 が欠落 してい

る点を見落 として しまい、一般的な思考力や論理的推理力育成 の足場作 りに問題を残 して しまっ

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ている。 この ことは人間が物事 に対 して持つ根本的判断力 に も影響 を及 ぼ しかねない。知的好 奇心 につなが る英語学習が軽減化 された代償 は、英語 を話せ るよ うにな る成果 よ りも限 りな く 大 きい。

1.1従 来の方向に対する問題点

上述 の問題 をや さ しい ことばで言 いかえ ると「英会話 ので きる人 間作 りか、英語 を読んで考 え ることを学ぶか」 とい う対比 とな る。欲張 って両方 を達成 で きるよ うにす ることがベス トで ある。 そのためには「何 をいつ優先 させ るべ きか とい う」課題 が生 じて くる。

少 し古 くなるが、昭和時代 中後期 の英語教育 は「 読 む→書 く →話す」 とい う優先順位で行 わ れて きた。大半 の 日本人 は日本で生活 をす る時代 であ る。 したが って、外国か らは知識 の吸収 をす ることで充分 で あ った。事実、学問分野で も新 しい理論 や技術 が読 む ことを通 して入 って きた。 これが、国際化 の波 に乗 り「話す→読 む→書 く」 とい う順序 に変化 してい った。平成 の 現代 にはこの流 れが定着 を して きたよ うに見 え る。 ところが、 ここには順序 を入 れ替 え るだ け で はす まない問題点 が潜んでいる。すなわち話せな くて も読 む ことと書 くことはで きる人間が 減少 したが、反対 に「 読 めな くて、本 当 に話 す ことがで きるのか」 とい う基本的な疑間が増大

して きた。

ここで注視 す ることは、「 母語 の習得 と外 国語 の習得 はそ もそ も別 の ものであ る」 とい う事 実 であ る。母語習得 の代表的な研究 であ る生成文法 で は、「人 は人種 に関係 な く、育 った生活 環境で幼児期 に触れた言語 を自然 に習得す る」 とい う事実 を科学的に分析す ることを長年のテー 々 と していて、「人間には生得的 に生活環境で使用 され る言語 を 自然 に習得す る機能が備わ っ ていて、 その機能 は 5歳 ぐらいまで に最 も活性化す る」 とい う報告 があ る。 さ らに、子供 は大 人 の雛形 で あ るので、 「 大人 の使 うことばの構文 を調 べ ることか ら、逆 に子供が どのよ うに し てその構文 を習得す るかの過程 を分析 しよ う」 とい う研究 も進 め られて きた。

このよ うな研究成果か ら見 えて くることは「話 す→読 む→書 く」 とい う流れで無意識的 に言 語 を習得す ることので きる時期 は小学校入学以前 までであ り、少 な くとも中学校以上 の レベル で新 しい言語 の習得 にあた って、 それをそ っ くり応用す ること自体 は無理があ るとい うことに なる。

1.2相 手 にあ った優先性

そ こで、相手 の年齢 や環境 に応 じて、「話 す こと」優先教育 は見直 さなければな らない。 ま ず一般的 な見地 か ら、 中学校 にお ける英語教育 の現状 につ いて筆者 の感想 をま とめてみ る。

(幼  a。 生徒 の話す技能 は向上 して きた、 しか し読 む ことおよび特 に書 くことの レベルア ップ は、必 ず しもうま くい っていないよ うに思 え る。

b.週 3時 間 とい う短時間 カ リキ ュラムで は、余裕 が ない。→改善 す るよ うに方針転換

c.英 語 の規則 を知 らず して、慣れ るだ けで は本 当の英語習得 にはな らない。

d.中 学校 か ら高等学校への円滑 な流れを構築す ることの難 しさを感 じる。

今 まで行われて きた英語改革 の最大 の利点 は「 コ ミュニケー シ ョン能力」 の改善であ った こ

とは間違 いな く、 また一定 の成果 もあげた。 そ して次 の段階へ進 む時期が到来 したので ある。

(3)

教育 のための英文法

その場合 には、言語理論 などの知見 を参考 にす ると、 その 1つ として、学校種 に応 じて三技能 指導 の優先指導順位 を整え ることや、重要性 の度合 いを探 るべ きであ る。 そ こで暢 )に 示す よ う な学校種別 の導入方法 の差異 を提案 してお こう。

暢 )/1ヽ 学 校 :話 す (慣 れ る )→ 書 く (文 字 に親 じむ )

中 学 校 :読 む /話 す → 書 く 高等学校 :読 む /書 く → 話す

特 に小・ 中学校 は義務教育年 限であ り、大半 はあ らゆる学力児童 の集合 である公立学校 での 教育 を念頭 におかねばな らない。 もっと言 えば、 中堅学力か ら低 めの生徒 までの指導 を視野 に 入 れ ることが当然 の ことであ り、一部 の生徒だ けを伸 ばす方針 はとれない。

それでは「書 く、読 む」 とい う能力 を育 て るのにはどのよ うにすればよいのであろ うか。答 えは「急がば廻れ」である。音声的英語 シャワーを浴 びているだ けでは、到底身 には着かない。

「論理的 に教 え、論理 的 に学 ぶ」 とい うことが急務 で あ る。一見古典的なよ うに聞 こえ るが、

この ことは英語教育 だ けはな く、一般的 な論理思考能力養成 に大 き く寄与す るものであ る。 し たが って、単 なる慣 れの英語 か ら考 え る英語への転換 は、人間の知性 の レベルア ップ とい う最

も重要 な役割 を担 ってい るのであ る。

考え ることと、読 み、書 くことはどこが密接 に関連す るのだ ろ うか。 それ は「考 えなければ 自分 の主張 を ことばに表す ことがで きない」 とい う事実、すなわち母語である日本語 の例 を見 れば明 らかであ る。 また「読 んで何 かを理解す る」 とい う行為 は、時 に瞬間反応 にな る「 話 し て、聞 いて理解す る」 とい うことよ りも、作業 エネルギーが必要 とされ る。人間 は安易 な作業 に流れ るの は常 であ り、「 わか ったよ うな英会話」 が少 しで きるよ うにな ることが、す ば らし い ことであると評価 され る場合 もあろ う。 だが長期的 に見 るとそのよ うな ことは、人間の一番 大事 な行為であ る「 論理 的 に考 え る」作業 の訓練 に大打撃 を与 えてい る。「習 うよ り慣 れ ろ」

だ けで は、真 の人間形成 はで きない。 また、本当 に英語 を理解す るとい うことは、少 な くとも

「読 み、書 く」 とい うことを習得 しな ければ成立 しない。真 の教育 は「何 とな く…」 で はや っ て いけないのである。

そ こで、「 読 めて、書 けるので話 せ る」 とい う相 関関係 を外 国語習得 につ いて は念頭 におか ねばな らない。使用用途 においてその比重 を現代 は柔軟 に変化 させてい くことが求 め られ る。

す なわち、小学校 で は「 読 めて、書 ける」 の ウェイ トが極 めて軽 く、「話 す もどき」 の指導 を まず導入せざるをえない、幼児が母語 を習得す る ときの様子 を参考 に、理解力の芽生 えて きた 小学校 5、 6年 生 に「英語 に慣 れ る指導」 を導入す るのであ る。 しか しなが ら中学校や高等学 校で「読 めな くて、書 けないけど話 せ る」 とい う姿 ばか り追 い求 めれば、大学生 にな って「 考 え ることのすべを もたない学士」 を養成す ることにつ なが りかねない。

2.英 文法再発見

論理的思考 を英語教育 に導入 す るのに、 コ ミュニケー ション活動 と関連す る最 も有効 な手段 は英文法指導 の見直 し導入である。本節 で は、英文法再導入を唱え る理論 的根拠 を、英文法 の 種類 を通 して考察 してみよ う。 まず、英文法教育 の最大 の利点 をおおまかな形で提示 してみ る。

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に )a。 論理的思考能力の活性化 につなが る。

b。 中学校か ら高等学校への英語学習の円滑な流れの背骨 となる。

c。 日本語の説明を上手 に活用 して、英語の重要点をはっきりと教える。

d。 二次元的な発想を誘発 して柔軟な想像力を養 う。

次 に改訂 を され る文部科学省指導要領 (中 学校英語 )の 中で英文法教育 を どのよ うに捕 らえ なお されているのかを断片 的 に見 てみよ う 《 5)の 下線 は筆者 )。

(5)新 指導要領 (中 学校英語 )に おいて、具体的 に新規 および改定 された点

1)物 語 のあ らす じや説明文 の大切 な部分 な どを正確 に読 み取 ること。

2)話 の内容 や書 き手 の意見 などに対 して感想 を述べ た り、賛否 やその理 由を示 した りす る ことがで きるよ う、書かれた内容 や考 え方 などを提 え ること。

3)自 己の意見 や考 えを、 ス ピーチ とい うまとま りのあ る形 で相手 に伝 え ることによ り、 コ ミュニケー ション活動 をよ リー層充実 させ る。

4)・ ・・ 文 と文 とのつなが りなどに注意 して文章 を書 くこと。

5)文 法 についてはコ ミュニケー シ ョンを支え ることを踏 まえ、

けて指導す ること。

6)英 語 の特質 を理解 させ るために、関連 あ る文法事項 はまとま

言語活動 に効果的 に関連付

りを もって整理 す るな ど、

効果的な指導がで きるよ うに工夫す ること。

(学 校図書編『 中学校英語 新学習指導要領改訂 のポイ ン ト』 よ り抜粋 )

今般 の学習指導要領改訂 において は、中学校 の英語授業時間数 を週 3時 間か ら 4時 間 に増 や す ことに して いる。 また、「 話す、読 む、書 く」 の三技能 につ いてバ ランスよ く学習す ること を推奨す ることは変化 のない方針であ るが、 その中で書 くことの学習 を、従来以上 に重視 して いるよ うに思 われ る。 この ことは言 い換 えれば、今後 の方向 と して は、英文法 を以前 よ りも重 視す るよ うに変更 にな って きた と見通 され る。

′しか し、詰 め込 み型教育 の反省か ら、昔 と同 じような英文法 のみを優先 して学習す るとい う や り方 は、 時代 に必ず しも合 っていない。英文法 はあ くまで も「縁 の下 の力持 ち」、 あ るいは

「一種 の隠 し味」 的 な役割 を担 うものであ る。 ただ し、 中学校、高等学校 との連携 を考 えた と きには、 もっと前面 に英文法学習が出て来 ざるを得 ない と筆者 は今 で も考 えている。従来型 の

「理屈 を重視 した英文法」 を完全否定す る必要 はない。「 わか りやす い視点」 か らの指導が大事 とな る。母語習得 と外国語習得 は異 な るとい うことを意識す る必 要 がある。

そ こで従来使 われ る「英文法 (English Grammar)」 と言 うことばの中身 を、英語学 の分 野か ら見て三種類 に分類 し、 それ らの英語教育への活用 を視野 に入 れなが ら、論 じてみよ う。

2.1伝 統文法 (学 校文法 )

学校で学習す るための文法 を「学習文法 (school grammar)」 と呼ぶ。 これは もともとイ ェ

スペルセ ンに代表 され る文法家 たちが編纂 した「伝統文法 (traditional grarnmar)」 と呼 ば

れ る文法規則集 を元 に、外国語 と して英語 を学習す るときにあ うよ うな形 に リメイクされた も

のである。 また、英語 はゲルマ ン語 の グループに属すので、現代 ドイ ツ語文法 と類似す る箇所

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教育 の ための英 文法

も随所 に見 られ る。 したが って本則 はかな り細かい要素 を含み、文型、品詞、構文 を詳細 に網 羅す ることで、 そ こか ら個別 の言語 に見 え る表面 的な特徴 を明 らか に してい く分類型文法であ る。大人が未知 の外国語 を体系的に習得 してい く際や、文法家などが言語現象 の分類 を試 み る ときには、伝統文法 を利用す る価値が増大す る。 しか し本稿 では学校での現状 を考慮 して長所 と短所 をまとめてお こう。

(6)[長 所 ]

a。 細 か く知れば知 るほど、英語 の醍醐味がわか る文法である。

b。 日本語 と共通 の文法用語 に補助 されて、型 を理解す る。 そ してそれを利用 した反復練 習 によ り、英語 を機械的 に理解す ることがで きる。

c.例 えば前置詞 などの分類 は じめ、百科事典 的 な法則集 を理解 で きれば、英文 の使用 に 対す る、 ほぼ万能 な対応が可能 とな る。

[短 所 ]

d.無 味乾燥 な法則集 は、学習意欲 をそそ られ るよ うな内容 ではない。

e.網 羅 的な反面、品詞 や構文相互 の関連性 につ いて、言及が少 ない。

f。 構文が羅列方式で、 まとま りはつ きに くい。五文型 と構文 との相互関連分類が求 め ら れ る。

このよ うにあま りに万能 な対応力を持つ ことか ら、 どこを切 り取 って教え るか と言 う議論が 生 じて くる。 また、生徒 に飽 きさせないで英語 を学習 させ る手段 と して利用す るのには教師側 の技術力が求 め られ る。

2.2生 成文法

「生成文法 (generative grammar)」 は経験科学 の研究方法 を顕著 に取 り入 れてい る、理 論言語学 の一分野 であ る。「文法」 とい う名称 であ るが、 チ ョムスキーが提唱 した この理論 は

「人 間が教 えを受 けることな く自然 に言語 を習得 す るの はなぜか」 とい う問 いを解 明す ること を第 1目 標 にかか げている。経験科学 的研究手法 とは、「 あ る仮説 Aを 立 てて、検証 をす る。

反例が出れば仮説 を修正 してい くし、他方何 も反例が出て こなければ、仮説 Aは よ り正 しい説 と して確立 され る」 とい う方法論 であ る。

2.1節 で見 た伝統文法 と生成文法 の大 きな相違点 は、前者 が現象面 か らフィー ドバ ック し なが ら構築 した規則 の体系であるのに対 して、後者 は表面 的な型 の分類 を基 に、構文 の内部 の 特徴 にまで踏 み込 み、 さ らに類似構文 との共通性 に研究 の焦点 を当てている点 にある。 この こ とは、大人 に比べて未熟 な子供が言語 を習得す る事実 の説 明 に有効であ る。 しか し、生成文法 も英語教育 に対 して は長短両方 の特徴 を持つ。以下 にまとめてお こう。

に )[長 所 ]

a.各 言語 (例 えば英語 )の 特質 を一歩踏 み込 んで調査研究す ることがで き、 その産物 と して構文 や品詞 の特徴や構文間の共通性 に新 たな光 を当てた。

b.言 語間比較 (例 えば 日英語 )に 興味深 い成果 を上 げている。

c.誘 導 を上手 にや ると、生産的 な学習がで きる。

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[短 所 ]

d.抽 象的す ぎるので、授業 にそのままの形で使 いに くく、加工技術 が必要 とな る。

e.母 語習得 の研究成果を、 そ っ くり外国語習得 に応用す るの は無理 がある。

f。 構文 その ものの習得 だ けを念頭 に置 いてい るので、 コ ミュニケー ション重視 の英語指 導 には応用 しに くい。

仔 )に あげた特徴 の中で、特 に (7a)と (7d)の 両方 を反映 してい る例 を見 てみ よ う。

(8) Frying planes may be dangerous.

flying planesの 中身 は「飛 んでいる飛行機 (現 在分詞 )」 、「飛行機 を飛 ばす こと (動 名詞 )」

の二種類 の意味 を持つ。 この曖昧性 は生成文法 の手法 を使 えば (9)の よ うに内部構造 の相違 と し て明 らか にす る ことがで きる。 (9a)は 現在分詞用法 を示 して い るの に対 して、 (9b)は 動名詞 用法 を明 らかに した図であ る。

(9) ao      S

NP

VP V       AP

VP V      A

AP I I

・ l ylng

N

I

I

planes may be dangerous

b.

V

flying ▲ planes may be dangerous

た しか に生成文法 の研究段階で、構文論 や言語 間の共通性解明 とい う新 たな分野が誕生 して 一定 の成果 を上 げて きた。 しか し結果 として言語研究の中に部分的に遅れた分野が生 じて しまっ た。 それ はわれわれが英語 を実際 に話 し、書 くときに用 いているマナーや規則、すなわち「機 能 と語用」 の研究であ る。

2.3機 能文法

実際 に使用 され ることばに焦点 を定 めて研究す る分野 を「 語用論 (pragmatics)」 と言 う。

構文単位 で はな く、常 に複数 の構文 の集合体である談話 や文脈 あるいは使用環境 な どを考慮 し なが ら、「生 きた ことば」 を科学す る。 この分野 に「機能文法 (functional grammar)」 は属

している。 まず、次 の 日本語 の例 を見てみよ う。

(7)

教育 のための英文法

uO A:お 久 しぶ りですね。元気 に していま したか。

Bl:  はい、 とて も元気 で した。

B2:  はい、全然元気 で した。

B3:  いいえ、全然元気 で はあ りませんで した。

日本語 の「全然」 は (10‑B3)の よ うに否定語 に呼応す る副詞 であ るとみなされ るが、 (10‑

B2)の 答 えを (10‑Bl)と 同等 に許容す る場合が見 られ る。言語習得時の子供 にはこのよ うな容 認可能性 の揺 れ は生 じない。生成文法 で言 うところの、「 大人 の文法 は子供 の文法 を反映 した もの」 とい う見解 を支持す ることは、特 に言語運用面で問題点 を残すよ うに思 われ る。す なわ ち、 ある構文が正 しいか どうかを判断す るときにその基準 は微妙 になればなるほど、対人関係、

言語 を使 う環境、現在居住す る地域 の方言 な どの フィル ターがかか って しま う。実際の コ ミュ ニケー ションは、 この ことな しで は成立 しないのである。 したが って、 コ ミュニケー ション重 視 の英語教育 には、運用面 に力点 を置 いた文法が必要 になる。

このよ うに機能文法 は「 ことばを話 し、書 く」 ことを重視 した文法であ る。語 と語が連結 し て句 にな り、句が結合 して文 にな る。「 その構文 を どうい う状況で何 を 目的 と して相手 に発す るのか」 とい う視点 に立 って分析 をす る cし たが つて、単 なる構文理解か ら状況 に応 じたニュ ア ンスの理解 に通 じてい く。学校文法 や生成文法 の場合 と同様 に長所 と短所 をまとめ るとは Dの よ うになる。

CD[長 所 ]

a。 「 コ ミュニケー ションの英語」 には最 も有効 に応用 で きる。

b。 敬語や比喩 などの言及 に もつなが るので、読解力養成 に も効果的であ る。

c.複 雑 な理論や法則 はあま りない。

[短 所 ]

d,文 法規則 を超 えた原則 を立 て ることがで きない。

e。 構文が使用可能 か どうか は、文脈 や状況 に委 ね られ る。 したが つて正 しい文か ど うか の明確 な判断を出 しに くい ことがある。

f。 こなれた英語 には役立つが、基本構文学習用 には向かない。

α Oの 日本語 の例 に加 えて、機能文法が コ ミュニケー ション活動 に最 も関連す るとい う事実 を、

英語 の二重 目的語構文 の例 で考 えて見 よ う。

00 a.Tom gave me a pencil.

b. Tom gave a pencil to me.

(12a)と (12b)は meと a pencilの 位置が対照的であ る。両方 とも適格文 で頻繁 に使用 され る。

どち らが使 われ るか は相手 が どこを中心 に して答 えて ほ しいと思 っているかで決定す る。 その 背景 には「英語 では文法規則 の許す範 囲で、大事 な情報 はで きるだ け文末 に持 っていきま しょ

う」 とい う原則が存在 している。 このよ うな原則群 を提示す ることが機能文法 の役割 の 1つ で ある。

91

(8)

内  

2.4さ まざまな文法 の相互作用

2.1節 か ら 2.3節 まで、「 文法」 とい う用語 にまつ わ る考 え方 を三種類紹介 した。特 に

2.2節 の生成文法 と 2,3節 の機能文法 の対比 は「形式重視 か機能重視 か」 とい う考 え方 の相 違 と言 い換 え ることもで きる。 そ して 2.1節 の伝統文法 は両者 に分析方法 の基礎 を与 えて い ると言 えよ う。 そ こで 2.4節 で は「 何が正 しい構文 であるのか」 とい う問 いに対す る答 えを、

三種類 の文法 による分析 をす ると、 どのよ うに反映 され るか とい うことで調べてみよ う。

u31  a.  」 ohn adlnires hirnself.

b. *」 ohn adrnire himself.

c. *」ohn believes that Betty adrrlires hirnself.

c. *#」 ohn adrnires herself.

e. *The dog adrnires hirnself.

Q3の 例 において、 (13a)は 適格文 で あるが、 (13b)か ら (13e)ま で は何 か しら問題 のあ る構文 であ る。 まず (13b)は 動詞 の二人称単数現在形 を表す ― sが 欠落 して いる ことが非文 の理 由で あ る。 (13c)は 複文 の埋 め込 み節 の himselfと 主節 の」 Ohnが 同一 人物 を指す とい う しくみ は成 立 しない。 (13d)は 」 ohnが 常識 的 に男性 を指 す名詞 で あ り、再帰代名詞女性形 であ る herself との同一指示関係 は常識的 にはあ り得 ない。 (13e)は 動物 と しての大 を指す再帰代名詞 は itself であるが、 admireと い う動詞 を主語 dogに 対 して使用 してい ることか ら比喩的な用法であ ると 推測で きる。以上 の ことを表 にまとめてみ ると QOの よ うにな る。

l141 形 式 彬美    育ヒ 備   考

(13a) OK OK

(13b) * *

(13c) * * 束縛原理 で説明

(13d) OK//* # 常識 の揺 れ

(13e) * OK 比喩的解釈

aめ の表 か ら言 え ることは、形式 による判 断 に も言語 直感 に頼 る もの (13c)と 、例 えば外 国語 学習者 が理屈 か ら判断可能 な もの (13b)の 二種類が あ ることが明 らかで あ る。 また、少 な くと も形式重視 による判断で非文 (容 認不可能 な文 )で はない とい う判断がなされた場合 にのみ、

機能面 での判断 について議論 の対象 にな って くることがわか る。形式 による分析 で は適格か不 適格か とい う三分法 に基づ く判断を重視す るのに対 して、機能 による分析 は中間的判断の存在 を大 いに認 めて い る (13d)。 言 い換 えれば、文法規則 にか な って いない文 であ って も伝達効果 があれば、使用す ることもあ り得 る。 まれであるが、 わざ と非文 を使用す ることで新 たな内在 的意味 を伝達 す る場合 もあ ると言 え る。代表 的な ものの 1つ にメ タフ ァーや アイ ロニー と して の使用が上 げ られ る (13e)。

3.コ ミュニケー シ ョンと英文法

本節 で は 2.3節 での見解 を踏 まえて、 コ ミュニケー シ ョンの中の英文法 とは何 か とい う問

(9)

教育 のための英文法

題 を掘 り下 げてみ よ ぅ。 コ ミュニケー シ ョンの文法 とは「文構造 の理解」 を踏 まえ た上 での

「指示、省略、移動」 の文法であ ると考 え られ る。 す なわ ち「 主語 と動詞 の識別」 に始 まる構 文 の構造 を理解 した うえで 国語表現 が使用 され ることが 目標であ り、場当た り的な会話 ばか り の訓練 は、今回の「話 し、読 みミ書 く」 とい う三技能 の習得 に到達す る近道 とは言えない。 コ ミュニケー ション活動 は、文法 の土台があ って こそ指導 に輝 きが出る。本節では文構造の理解 の助 けとなる構文分析 の方法 を数種類提示す る。 そ して コ ミュニケー ションにおける「指示、

省略、移動」現象か ら、「指示」 に しば って事例 を研究 してみ る。

3.1構 文 の分析方法一覧

「主語 はどれで、動詞 はどれで、残 りは何 で しょう」 といきな り生徒 に問いか けを して も、

英文法 を積極的 に前面 に出 して教 えない現状で は、理屈 をつ けて解答 を引 き出すのには労力を 要す ることが少 な くない。 また生徒 も無味乾燥 な構文学習 には興味を示 さないであろ う。 しか し教 師がい く通 りかの構文分析方法を理解 してお くことは、質問や疑問点の解決 に有益である。

1つ の構文 の要素 を解析す るのには以下 のよ うな方法があることに留意 してお こう。

CD a。 名詞、副詞、動詞 な どの品詞 による分析

b。 主語、 目的語、補語 などの文法関係 による分析

c.樹 形図 (tree)や ブラケ ッ トな どを用 いた内部構造分析

d.動 作主、被動作主 な どの意味役割

e。 新情報、 旧情報、焦点 な どの情報構造

CDの よ うな道具立 てを用 いては 0の 例文 を分析す ると、 (16a― e)の よ うにな る。

α 61   Yesterday   Torn   gave   LIary   a   book.

a.副 詞     名詞    動詞    名詞    冠詞   名詞

b.修 飾語    主語    動詞    目的語     目的語 c. Yesterday [Tom   [gave  [Ⅳ [ary][a  book]]]

d.      動作主       着点      主題

e.旧 情報    旧情報      1日 情報     新情報

(15a)に よ り単語 の属性がわか り、 (15b)か らは文 中に しめるその単語の機能が表示 され る。

また (15c)か ら語 と語 の結 びつ きの強弱がわか る。 さ らに(15d)か ら文中の単語が担 う意味関係 の一部 が表示 され る。 さ らに (15e)か らどこの部分 を重要 と考 えて、一番伝達 したいのか を読 み とることがで きる。言語 は多層 的な情報 をすべて含んでいる媒体である。 (15a― c)ま で は形 式 を前面 に押 し出 した分析 であ り、 (15d一 e)は 機能的な分類 である。

3.2指 示 と代用表現

に Dで も概観 したが、「名詞一代名詞」 の関係 は構文論 だ けで処理 をす ることはで きない。 さ

らに代名詞 だけでな く、oneな どの代用表現 まで広 げて分析 を しておかなければ、 コ ミュニケー

ション活動 と連動 した英文法指導 には支障を きたすであろう。αηに留意 しなければな らない項

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目をあげてみよ う。

tη  l.代 名詞 が何 を指 してい るのか。

2.代 名詞 が普通名詞 や固有名詞 の置 き換えをす る場合 に、 どの程度 まで離 れた距離 の も のを指 し示す ことがで きるのか。

3.ど のよ うな種類 の代名詞 を使用す るのか。す なわち主語、 目的語 などの理解度 チ ェ ッ クに利用 で きる。

代名詞の基本的特性を性、数などに基づいて指導することは必須項 目である。代名詞 につい ての基本事項を習得 した ものとしてさらに進んで、中学校の教科書 に頻繁 に出て くる会話のス キ ットの中にある具体的な例を検討 してみよう。

CD A:  Who's that girl?"

Bl :  That's rny friend Jill."

B2 :  She's my friend Jill."

Who's that girl?"と い う Aの 質問 に対 して Blの よ うに That's my friend Jill."と 答 え る ことが通例 で あ る。 しか し B2の She's my friend」 ill."と い う答 え方 で は誤 りで

あるか どうか とい う疑 問への解答 は、 どのよ うに説 明 した らよいのであろ うか。 thatで 答 え る かsheを 用 い るか は会話状況 と使用す る人 の判 断 による。例 えば that girlが 、話 し手 と聞 き手 の両方 に とって間近 な距離 にい ると考 え られ る と、 両者 で指示物 (that girl)を 素早 く了解 す るのに一番安全 な方法 と して thatを 用 いた と思 われ る。 また、発話 の経済性 とい う側面 か ら

も、直前 の発話 に出ている thatを 反復 して使用す る可能性 が高 い。

指示代名詞 であ る thatは 、指示対象が何 (誰 )で あ るかを、話 し手 と聞 き手が明確 に了解 し てい るときに頻繁 に用 い られ る代名詞 であ るの に対 して、人称代名詞 であ るsheは 、話 し手 と 聞 き手 の間 に了解事項があれば同 じ状況 に居合 わせな くて も (あ るいは直接的な接触 がな くて

も )指 示物 を指す ことがで きる。

また人称代名詞 を用 いると、人間や事物 の候補が複数現 れた場合 に、曖昧性 の生 じる原因 と な ることがある。

091  」ohn believes that hlary is proud of hlrn.

α 9で 、 himは 」 Ohnを 指す こと もあ るが、 この文 だ けか らは想像 で きない第二者 の男性 を指 してい る可能性 も残 され る。仮 に himを that manに 置 き換 えてみ ると、」 ohn以 外 の第三者 の みを指す ことにな る。以上見て きたよ うに thatと 人称代名詞 の使 い分 けは状況 によ って異 な る 場合があ り、 コ ミュニケー ションを重視す る指導 で は、 その説明を平易 に行 う必要があ る。

さ らに、代用表現 oneと 代名詞 itの 使 い分 けにつ いて、生徒 へ の説明方法 を念頭 に置 きなが ら考 えてみよ う。 00の 例で どうい うときにoneの 代 わ りに itが 可能 にな るのであろ うか。

001 k[y brOther taught me how to ride ong。

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教育 のための英文法

数詞 のOneに 対 して、 (質 問 にあるよ うな )代 用表現 のOneに は固定 した 日本語訳 が存在 しな い とい う難 しさがあ る。 もともと oneは 「 a+単 数名詞」 とい う内容 を持つ と言 われ、 この こ とか ら不加算 の意 味 は持 たない。 したが って、数 え られない ものには someや anyを 使 うこと が ほとん どである (20を 参 照 )。

Ql) A : "Do you want coffee?"

B : "Thank you, I want some/*one."

よ く itが 「 当該 の対象 その もの」 を指 すのに対 して、oneに は「 同種 の もの」 を指 す機能 が あ ると言 われ る。同種 の もの とは、 その物体 のイメー ジがく先行す る文や文脈か ら想定で きる ものの、完全 な同一物 を意味す る もので はない ことを意味す ることと しよ う。つ ま り、範 疇が 同 じであればoneを 使 うことが可能 にな る。語句 が担 う「情報」 とい う観点 か ら眺 め ると、 it は もっぱ ら旧情報 を担 うのに対 し、代用表現 のOneは 同一範疇 とい う器が旧情報 を担 いつつ、

その中身 は新情報 を担 うことがあ る。 したが って例 えば I broke my glass.So l will buy one."と 言 った ら、買 お うとす る もの はグラスであれば必ず しも同 じ形、同 じ色 であ る必要 は

ないと言 え る。

むすび

コ ミュニケー ション活動 を重視す る学校教育 は、今後小学校 に拡張 され ることが決定 してい る。理論的側面 を持つ英文法 を、状況処理能力 を養成す るコ ミュニケー ション活動 の基礎 と し て指導 してい くことは、教 師 に対 す る一定 の技量 と知識 を要求す ることになる。 この点 に着 目 すれば、体系的な英文法 をまず再確認 した うえで、生徒 たちにコ ミュニケー ション活動 の随所 で英語 の持つ法則 を指導 してい くほか に手 はない と思 われ る。

本稿では英文法を学校教育 にどう役立てるかということについて、基本的な検討をおこなっ た。 1節 では、現在あるいはこれか らの英語指導で、必ずあが って くる質問や疑間を確認 した。

2節 では「英文法」 という名の下に集結できる三つの理論や方法論を紹介 して検討 した。 さら に 3節 ではコ ミュニケーション活動や教科書 に現れ る、「生 きた英語」 に潜む英文法的知見 に ついて論 じた。文部科学省の方針で指導要領 も見直されつつある近年、使える英語の体得 とと もに、英語を学習することにより、理論的思考力を育むように生徒たちを教育することを忘れ てはな らない。

参考 文 献

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参照

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