• 検索結果がありません。

鏡を活用したテーマ性のある図形学習に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "鏡を活用したテーマ性のある図形学習に関する研究"

Copied!
20
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

鏡を活用したテーマ性のある図形学習に関する研究

著者 両角 達男, 鈴木 裕之, 内藤 栄二

雑誌名 静岡大学教育実践総合センター紀要

10

ページ 23‑40

発行年 2004‑03‑31

出版者 静岡大学教育学部附属教育実践総合センター

URL http://doi.org/10.14945/00008248

(2)

鏡 を活用 したテーマ性のある図形学習に関する研究

A Study on Learrling Geometty with Mirror from the Viewpoint of Figure,Synllnetry,Pattern

両角達男

*・

鈴木裕之**・ 内藤栄二***

Tatsuo MOROZUMI,Hiroyuki SUZUKI,Eli NAITO

1.は

じめに

図形をとらえる見方を豊かに持つ ことにより、図形のもつ様々な性質が明 らかになって くる。

例 えば、正三角形、正方形、正五角形、正六角形 に共通する性質 として 「辺がみな等 しく、

角 もみな等 しい凸多角形であること」 (正 多角形 の定義

)が

挙 げ られ る。この性質 は、定規で 辺の長さを測 る、分度器で角度 を測 るといった計量的な見方、辺や角がぴった り重なるように 折 り曲げるといつた操作や対称性 に着 目した見方な どにより、実感 をもって明 らかになる。 さ らに、ぴった り重なるように折 るとい う操作を繰 り返せば 「正多角形の対称軸は

1点

で交わ り そ うだ」「対称軸が交わった点は正多角形の中心 とな りそうだ」な どの性質を導き出せ る。

実際、正多角形 には次のような性質がある。

ア .正 多角形の対称軸、特 に頂点同士を結ぶ対称軸はすべて

1点

で交わる。

イ .正 多角形のすべての頂点は同一円周上に並ぶ。

ウ .頂 点同士を結ぶ対称軸の交点は、イの円の中心 とな り正多角形の中心 と呼ばれ る。

さらに、頂点同士を結ぶ対称軸の うち、正多角形の対角線 にあたる線分がその円の直径 となる。

工 .正 多角形の中心 と正多角形の隣 り合 う

2つ

の頂点を結ぶ と、二等辺三角形ができる。

一方、二等辺三角形 を

3つ

繰 り返 し連結すれば正三角形、

4つ

繰 り返 し連結すれば正方 形、

5つ

繰 り返 し連結すれば正五角形 をつ くることができる。

折 る操作活動か ら、真実感を持って上記のア〜工の性質を見いだすためには 「全体 をい くつ かの合同な図形 に分解する見方」「全体を構成す る部分に着目す る見方」「全体の中にみ られる 規則性に着 目する見方」「部分 (単 位 )を 繰 り返す ことにより全体 を構成する見方」「

MIJ性

に 基づいて部分か ら全体 を構成す る見方」などが必要 となる。全体か ら部分への分解、部分か ら 全体への構成、全体 と部分 を関連づ ける規則性の着 日、 こうした視点で図形をとらえることに よ り、図形の性質に対する感性 も高 まる。例 えば、工の見方を踏 まえると、「 360° (二 回転

)

3等

分 した 120° を頂角 にもつ二等辺三角形 を基 にして」正三角形が、「 90° を頂角にもつ直 角二等辺三角形を基 にして」正方形が形作 られ ることがわかる。 このことを拡げれば、「 360°

/nを

頂角にもつ二等辺三角形 を基 に して」正

n角

形がつ くれ ること、できあがった正

n角

・ 附属静岡中学校教諭

23

*数

学教育教授

  **附

属浜松小学校教諭

(3)

両角達男・鈴木裕之・ 内藤栄二

の辺は 「基 にした二等辺三角形の底辺」 として、正

n角

形の内角は 「基 にした二等辺三角形の 底角の

2倍

」 としてみれることにつなが る。後者の図形の とらえは、改めて正多角形の定義の

もつ意味を深 く意識することにもつなが る。

「図形を分解 と構成、全体 と部分 とを関連づける規則性に着目して とらえること」は、図形 の性質や性質問の関係を深 くとらえることにつながってい く。

2.研

究の目的と方法

本研究では、二面鏡を用いた図形 を構成 し想像す る活動が 「図形 を分解 と構成、全体 と部分 とを関連づける規則性に着 目して とらえること

Jを

強 く促す と考 え、二面鏡 を用 いた一連の授 業 を小学校 と中学校双方で実施 し、 その学習効果を特徴的な生徒の動 きか ら考察す ることを目 的 とす る。その方法 として、次の

3つ

のステップを踏んで考察を進める。

① 鏡を用いた図形学習に関 して、その可能性 と効果を強調するセネシャル、

NCTM

Standardの記述を分析し、小学校中学年から中学校初学年までの鏡を用いた図形学習の

ね らい を示 す。

 

小学校 と中学校での発達段階の違いを踏まえて、二面鏡を用いた図形の授業を計画し、

授業実践する。

 

②を通 して得 られた生徒の筆記物に着目し、二面鏡を用いた特徴的な生徒の思考活動に ついて考察する。さらに、小学生 と中学生の特徴的な動きに基づき、二面鏡を用いた図形 学習の可能性 と課題を提示する。

3.二面鏡に直線を映し出すこと

二面鏡 とは、2つの長方形の形をした鏡 どうしの縁を下図のように張 り合わせた ものである。

同一の鏡をビニールテープなどで貼 り合わせることにより、容易に作ることができる。その二 面鏡を用いて、自分自身の顔を写す と、自分の顔がただ 1つ に見える場合から、複数に連なっ てみえる状態まで様々である。ただ 1つ にみえる場合は、二面鏡を開 く角度が平角になる場合

であ り、顔が

3つ

見える場合 は二面鏡 を開 く角度が直角の場合な どである。

また、平角を超 える場合、顔 をうま く映すことができな くなる。

この二面鏡 に直線を映 し出す とどの ような図形が構成 されるだろうか。

二面鏡の開き具合により直線が どの ようにみえるか、直線 に対す る二面鏡 の位置により構成 される図形 は どの ように変わってい くか、それぞれ筆者 が行つた実験や思考実験を踏 まえると、次のような結果を得 ることができ る。なお、二面鏡の開き具合 を∠

aで

、二面鏡の交線を 1、 二面鏡の下辺 をそれぞれ

m, n、

その交点を A、 直線 と

mお

よび

nと

の交点をそれぞれ

B,Cと

す る。 (右 図

)

 12『

を超えると、お互いの鏡に映る像が背中合わせのようになる

(死

角の存在 )

右上の図のように、二面鏡 を

2つ

の下辺内にある直線

BCは

、正面か らみて鏡 に反対側の鏡

像が、交線

l上

か ら映 る。 この鏡像 は 180° 未満であればいつ も映 りそ うな感 じがす るが、実

際は 120° を境 にして状況が一変す る。 120° の ときには、お互いの鏡 に映つている鏡像が背中

合わせのような状態で映 り出す。 120° を超 えると、視線 を正面か ら左右 に移 さなければうま

(4)

くみることができない。その理由は次のようにして、説明できる。

右図は、 120° 以上 の場合の、鏡 αには

mを

対称 の軸 として、鏡 βの 直線

nが

線対称に映 った ときの平面図である。二面鏡の開 き く `

あい∠ a を 120° 以上にすると、正面からみたときこの鏡像 は、みる方向か ら

xが

60° 以上、∠ yが 120° 以上 とな る。つ ま り、で きた鏡像が鏡 β の裏にな り死角に入 る。映っているが、見 る角度 を変えない と見 ること ができな くなるのである。

 120°

以下のときの鏡同士の写像のみえ方

鏡 α、 βの角度を 120° とする、すなわち∠

a=120°

の ときには見て いる方向の反対側 に、図 1の ように鏡同士のお互いの鏡像が背中合わせ で現れて くる。

続いて、∠

aの

大 きさを小 さくしてい くと、鏡同士のお互いの鏡像が 徐々に開いた状態でみえて くる。

(図2)

さらに、∠

aの

大 きさを小さ くしてい くと、新たな鏡の鏡像が背中合 わせの状態 となって現れて くる。図

3は

、∠

a=72?の

場合であ り背中 合わせの鏡像が

2回

繰 り返 されて 「鏡の新たな背中合わせの鏡像」が生

じた場合である。

mに映 って い る

nの

画像 →

F

m     

     n

見 る方向

1      1背

中合わせの

∠ a=120°

   1写

図 2

a<12げ ぐコ、

 

③   直線 と二面鏡か ら特殊な図形をつくることができる (多 角形を内側からつくる

)

鏡 α、鏡 β、直線

BCに

よりつ くられ る三角形の形状 によ り、正多角形ができた り、ひし形や星形、対称な図形 をつ く ることができる。

最初 に、鏡 α、鏡 β、直線

BCに

よりつ くられ る△ ABC

が∠

B=∠Cの

二等辺三角形で、頂角∠

aの

大 きさが 360°

の約数であるときに正多角形がつ くられ る。

正八角形の場合 には∠ a× 8=360° であ り、正五角形 の 場合には∠ a×

5=360°

である。

また、∠

B=∠Cと

い う条件は、鏡を通 してもとの直線 と 鏡像 とが同じ間隔を保 つていることを表す。別の見方をすれ

ば、鏡 α、鏡 βが正多角形の内角の二等分線になっているこ とであ り、∠

Bや

Cの

補角

(正

多角形全体か らみれば外 角 )を 一定にしたまま次々に図形をつ くり出す ことと同じで ある。

また、正多角形 になる場合は、②における図

1や

3の

場 合 となる。図

2で

は、背中合わせにできた鏡像の開 き具合が ち ょうど a° となるとき

(例

え 1湘

の場合の正方形

)の

み に限定 される。

この場合以外は、右図のように辺の長 さが等 しくならない

∠a=45° のとき

l172・

  1馨

1′

∠a=72・ のとき

∠ a=45° で

AB=BC 

∠ B=90°

(5)

両角達男 0鈴木裕之・ 内藤栄二

ものが出て くる。

△ ABCが ∠

B=∠Cの

二等辺三角形でな く、∠

Aの

大 きさが 360° の約数の場合であつて も、正多角形がつ くれ る場合がある。前ページ右下の図は、∠

aの

大 きさが 45° で AB=BC,

B=90°

の場合である。鏡や双対す る鏡によりつ くられた鏡像が、正方形のすべての線対称 軸を構成す るようにつ くられた場合 といえる。

この他、∠

aが

360° の約数であ り、△ ABCが 二等辺三角形 にな らない場合であっても、

次のようなひし形、星形、線対称であ り点対称な図形をつ くることができる。

任意の三角形ABC 任意 の三角形ABC 任意 の三角形ABC

以上まとめると、二面鏡に直線を映 し出すことにより、次の4つのこと力ヽヽえる。

 

二面鏡により凸型や凹型の多角形がつ くり出される。その形状は、二面鏡の開きく あい、

二面鏡 と直線 との位置関係の2つにより、表すことができる。

 

二面鏡により凸型、凹型の多角形がつ くり出されることは、二面鏡により映し出された鏡 像の位置、すなわちみえる位置にあるか、背中合わせになるか、死角に入 り込むかにより説 明で き る。

 

二面鏡 と直線によりつ くられる図形が二等辺三角形で、頂角が

360°

の約数である場合に は正多角形ができる。頂角が

360° /n(nは

自然数

)の

二等辺三角形を基に、等 しい長さ の辺を次々 と張 り合わせて正n角形をつ くるという「部分から全体を構成する見方」 と、正 n角形の対称軸かつ対角線である直線によって合同な図形に分けるという「全体から部分を 分解する見方」 とが、互いに関連 しあう。

 

二面鏡に対 して、ず らした形 (③ではない場合

)で

直線をおいても対称な図形を構成する ことができる。その際、鏡はできあがつた図形の線対称軸の一部 となっている。

③の見方は、正多角形の作図の仕方 とその理由づけとの関連を図る。例えば、正六角形の作 図方法は 「ある一定の長さをコンパスで とり、その長さを半径にもつ円をつ くり、さらに円周 上に半径の長さを弦にもつような点を次々ととつていく」である。この方法に対 して 「二面鏡 と直線 とがちょうど正三角形をなすような状態で、正面から二面鏡をみる」活動は、正六角形 の作図は結局 「正三角形を次々 と6つつ くっていることに他ならない」 という意味を構成する 上で有効に働 く。

4.鏡を活用 した図形学習の可能性

小学校中学年から中学校 1年 にかけての図形学習では、おおまかにみて次の①から②へのよ うな変遷がみられる。

 

正方形や三角形などの形が、 どのような性質を持つのかを明らかにしてい く。

 

図形の性質 どうしにどのような関係があるのかを明らかにしていく。図形の関係 どうし

(6)

の考察 を踏 まえて、改 めて形 を とらえ直す。

二面鏡を用いるという場面では、①と②に相対峙して、次の変遷が考えられるのではなかろ うか。

'二面鏡を用いてできた形が、どのような性質をもつのかを明らかにしていく。

'二面鏡を用いてできた形の性質や既知の図形の性質との間に、どのような関係があるの

か を明 らか に してい く。 その考察 を通 し、改 めて、二面鏡 を用 いてで きた形 を とらえ直す。

この①

'や

に関 し、鏡を活用 した図形学習の可能性について、児童・生徒の図形認識の 深化、数学 をつ くる上での重要性などを踏 まえた先行研究を参考に考察を行 う。本稿では、二 つの先行研究 に焦点をあてる。一つは、形 をテーマにした図形学習の重要性を、体系的な学校 数学および数学 をつ くってい く過程の中で強調す るマージ ョリー・ セネシャルの言明である。

い ま一 つ は、幼稚園か ら高校段 階 までの体系的 な数学教授・学 習の指標 を述べ る NCTM

Standard 2000に みられ る図形学習に関わる言明である。

前者のセネシャル (2000)は 、形の学習について次のように述べ る。

「形 はパ ターンである。」

(pp.205)

「形が基本的に重要なのにもかかわらず、生徒が学校で学習するのは、形のほんのわずかな 部分にすぎない。形の学習は、歴史的には幾何の中に含められてきた。そして、幾何 は長 い問ユー クリッドの公準、公理、定理に支配 されてきた。 (中 略

)

形は、数学の肝心で不可欠であ り、発展 しつつある魅惑的なテーマであって、古典幾何 学 と深 く結びついているが、内容や意味、方法 においてそれをはるかに超えている。適切 に発展 させれば、形の学習は数学教育の中心的な構成要素 となろう。それは、数学だけで な く、科学や芸術 にも依存 し、 また貢献す る要素である。」

(pp.206)

「形の研究 は学際的である。

形の研究 は実験科 目である。

形 の研究 はすべての人のための ものである。

形 の研究 はおもしろ くて楽 しい。

形 の研究 は無制限である。」

 (pp.258‑263の

主 たる項 目

)

セネシャルは、幾何の教授・学習が今 まで幾何 そのもの重要性 というより、むしろ外的な目 標 に役立つ こと   一演繹的推論の教授 ,ユ ークリッ ドの諸定理の証明 ,問 題解決の入門

,視

覚 化の教授 と微積分への準備 ―   によって行われていないか とい う問題提起をする。そ して、

「ユークリッ ドがはっきり認識 していたのは、形についての注意深い推論が、定義 と仮定の注 意深い叙述 と、非常 に注意深 く議論 を進 めることを必要 とす ることだった。」 (pp。 256)と 述べ るように、形 の学習が幾何 において中核 にあるべ きではという強い指摘 をする。

同様の主張は、直観幾何 と論証幾何 との兼ね合いや融合、緑表紙の教科書にみ られる全体的 直覚的な把握能力を重視 した図形指導に関わること、ユークリッド流の接近・変換群に基づ く 接近・ 線形代数的接近 の混在 による幾何教育の混迷の指摘、に代表 され る阿倍 (1987)の 主張 に

も見いだす ことができる。図形学習における論証の扱いな ど様々な立場があ り、 どのような状

態が望 ましいかに関 しては別稿において述べたい。 しか し、図形学習において 「形」が中核的

なものであるというセネシャルの指摘は、筆者の考 え と同一である。

(7)

両角達男・ 鈴木裕之・ 内藤栄二

セネシャルは、形 の学習 として 「対象の間の同じ点 と相違点を見つけること」 (分 類 )、 「形 の構成要素を分析すること」

(分

析 )、 「違った表現をしている形を認識すること」 (表 現 )の 3

つを挙げる。 この中で、鏡 を活用 した図形学習は 「形の構成要素を分析すること」の中に、鏡 の幾何 として位置づけられている。 その鏡の幾何の中には、二面鏡が登場 して くる。セネシャ ルの主張を要約すれば、次のことが述べ られている。

(pp.218‑232)

○   万華鏡の原理は、二面鏡な どを使 つて子 どもが遊ぶ ことを通 し、発見することができる。

○   鏡の反射 は有限個の部分単位 をもつパ ターンをつ くる。例えば、万華鏡を回転 させてみ ると、回転 と反射は一定のパ ターンをもって行われ る。 そのパターンは対称群であ り、 自 然界 にみ られ る多 くの形の もつ性質 と一致する。 さらに、万華鏡を用 いた活動 によ り、対 称群の原理 を体感 し、理解す ることがで きる。

○   立方体型の万華鏡をつ くってみるな ど、対称性 をみつ けること、対称性 を使 うことを

2

次元か ら

3次

元 に発展 させ る と興味深い学習ができる。 その学習で得 られた事柄 には、 自 然界の結晶の特徴 をつかむ上で役立つ情報が込められていることが多い。

「形」を知 り、「形」の特徴 をつかむために、セネシャルは 「鏡を活用 した学習活動」を重 要視 している。二面鏡や万華鏡を使 つた活動が、形 に対す る感覚を高め、思考活動 を豊かなも のにしてい くとい う。そして、形 に対する統合的な見方を養 うため、次のようなアプローチを 提案する。形 をテーマに した図形学習を豊かに進めてい くための指標、 とい うこともで きる。

(「 同定 と分類」

,「

分析」

,「

表現 と視覚化」の うち、「分析」のみ引用

,pp.251)

「分析

初級 :鏡 による対称性、回転対称、合同 折 り紙、パ ターン、相似

多角形の構成 と分解、長 さ

/体

積の測定 ,キ ル トやモザイクの作成 中級 :二 つの鏡 による万華鏡

有限な図形の対称性

切 り分 け、パズル、 レブタイル、 フラクタル、 自然のパターン、

正多角形 と準正多面体、角度の測定、平面の多角形での敷き詰め 上級 :多面角 による万華鏡

組織原理 としての対称性、変換 の幾何

フラクタルの探求、生物学におけるスケール、多面体のオイラーの公式、

平面・ 二次元の幾何の基本格子、敷 き詰めの初等的理論 J

「形の研究は学際的である」 とセネシャルが述べるように、初級・中級・上級に挙げられた ことをすべてこなすためには、数学のみな らず形に関わる学習 (理 科や美術な ど

)と

の連携が 必要不可欠になる。実現可能にす るためには、い くつかのステップを踏む必要がある。そのた めに鏡を用いた学習に段階を設 け、形の分析 において重要 な役割を与えている様子 を見いだす

ことができる。

NCTM Standard 2000に おいて も「形」を知 ること、「形」の特徴 をつかむ こと、その ための 「鏡 を活用 した学習活動」の重要性 に関わ る記述 を見 いだす ことがで きる。 NCTM

Standard 2000で

は、幼稚園か ら第

12学

年 までの

4つ

の段階で漸次的かつ着実 に、次の

4つ

(8)

のことが らを生徒が学習できることが求められる。

「①2次元 と3次元の幾何的な形の特徴を分析 し、幾何的関係について数学的議論を展開する

②座標幾何や他の表現システムを使って、位置を特定し、空間的関係を記述する

③数学的状況を分析するために、変換を応用 し、対称性を使 う

④問題を解決するために、視覚化、空間的推論、 と幾何的モデル化を使 う」

(pp.41‑43)

ここで、形をテーマにする学習、鏡を活用 した学習に強 く関わるのは、① と③ といえる。

例えば、第3学年から5学年、第6学年から8学年では、それぞれ次のような記述がみられる。

3学年から5学年】

「第3学年から5学年では、彼 らは、形の性質を同定 し記述することに焦点化 し、これらの 形や性質に結びついた特殊な語彙を学習することで、形を記述するいっそう正確な仕方を 開発すべきである。 (pp.165)

「形を論ずるとき、第3学年から5学年の生徒は、文脈の中で繰 り返 して使われる用語を聞 くことによって、彼 らの数学的語彙を拡げるべきである。」 (pp.166)

「ある形を回転あるいは反射させるとき、何が起こるかを視覚化 し、結果を予測できるべき である。 (pp.168)

「第3学年から5学年の生徒は、2つ 以上の線対称を探求できる。例えば、次のようである。

正方形の上に鏡を置 くのに、その鏡に元の正方形 ときっちり同じ形がみえるように したい。そのような置き方は何通 りあるか

それは、すべての正方形に対 して真か? 2つ以上の対称な直線を持つ四角形を作ることができるか? 1つの対称の線を持つの はどうか

まった く対称の線をもたないものはどうか

もし、そうなら、それぞれの 場合、それはどんな種類の四角形か?J(pp。

168)

6学年から8学年】

「中学年の生徒は、さまざまな幾何的な形を探求し、それらの特徴を吟味するべきである。」

「生徒がいろいろの変換による形の像を形成するのを助けるために、彼らは物理的な対象、

薄紙上に トレースした図形、鏡あるいは反射面、グラフ用紙にかかれた図形、動的な幾何 ソフトウエアを使 うことができる。彼 らは、裏返 し

(線

対称

)、

回転、ずらし

(平

行移動)

の特徴を探求するべきであり、変換の合成の間の関係を調べるべきである。(中)例

ば、彼 らは変換の結果の像が、元の図形のそれ とは違う位置、時には違う方向付けを持つ 一像は元の図形 と同じ辺の長さと角の大きさを持つけれども一 ことに気づ くことができ よう。」 (pp.233‑237)

3学年から5学年、第6学年から8学年の双方で、鏡を用いた学習活動に関わることを簡 約すれば次のようにいえよう。

3‑5:形

を物語る用語を日常的なものから数学的なものに変換する。

形を回転、反射 させるときに、何が起 こるかを視覚化 し予想できる。

具体的な活動によって対称であることを知ったり、表現できる。

6‑8:形

を物語る特徴を数学的な表現を用いて表す。

形を回転、反射 させたときに、位置や向きが変われど、辺の長さ、角の大きさ、面 積が変わらないことを経験的に知る。

(9)

両角達男・鈴木裕之 0内藤栄二

対称であることを、裏返す、回す、ず らす とい う

3つ

の変換 により表現できる。

幼稚園入園前か ら第

2学

年では 「形 を感 じる、形を知 る、対称性 を感 じる」 、第

3学

年か ら

8学

年 までは 「形 を語 る用語や特徴 を表す、形をより知 る、対称性を具体的な活動 を通 して表 す」、第

9学

年か ら

12学

年では 「形の もつ特徴 を論理を用 いて表 す、形 を語 る数学の世界 を拡 げる、対称性や変換 を多様 な表現で示す」 といえる。

これらの言明を参考にすると、小学校中学年

(3‑5)段

階、中学校初学年

(6‑8)段

での「二面鏡を用いた図形学習」のねらいは次のようにいえる。

二面鏡を用いた図形学習のねらい】

3‑5:二

面鏡を用いて具体的なものや形を映したときに、何が起こるのかを視覚化 し予想

で きる。

二面鏡 を用 いてできた形やその特徴 を、既知の図形やた とえを使つて表現 した り、

長 さや角度な どを使 って表現で きる。

二面鏡 を用 いてできた形 を、対称性に注目して説明 しようと試みる。

6‑8:二 面鏡 を用 いてで きる形やその特徴 を、数学的な表現 を用いて表そうとす る。

(例 :二 面鏡によってはさまれた図形は、鏡 によって次々 と反射 してで きた形 基本 となる図形の繰 り返 しによって、さらに鏡 を線対称の軸 としてできた形

)

二面鏡 を用いてできた図形 ともとになる図形 とを比べた とき、変わるもの と変わ ら ないものがあることを知 る。

二面鏡 を用 いてできた形の原理 を、 もとになる図形 とできあがった図形 との関わ り や鏡 による対称性 (変 換 )に 着 日して説明 しようとす る。

小学校中学年 (3‑5)段 階か ら中学校初学年 (6‑8)段 階への主たる違いは、形 を 「何 で」物語 るかであ り、二面鏡 を用いてできる形の特徴やそのわけを経験的に具体的に語 るか、

より数学的に語 るかである。二面鏡 に何 を映すか、映った ものをどのように表現す るのか、そ してその表現を どこまで洗練 させた ものにす るのか (他 者 と共有できるものにす るのか )、 二 面鏡に写った状態の理 由を どこまで扱 うのか、表現するのか等々、小学校中学年 (3‑5)段

階 と中学校初学年 (6‑8)段 階では違いが生 じて くる。

そこで、授業構想 にあた り、次の点を重視することとした。

小学校中学年段階】

・二面鏡に「身のまわりのもの」を映すことから導入する。

・二面鏡に 「身のまわ りのもの

Jが

映った状態を、 日常生活 にみられることな どでた とえる 表現を大切 にす る。

・二面鏡に 「身のまわ りのもの」を実際 に映 し、その様子 を見 る実験を十分行 う。

・二面鏡 に映 った状態 を表現す る用語や表現の仕方 を、教師の問いかけや一連 の授業 内で

「核 となる児童の表現や表現の仕方」を価値づけなが ら、徐々に洗練 したもの、様々な他 者 に伝達可能 なものに変容 させてい く。

中学校初学年段階】

0二

面鏡に 「図形」を映 し、数学的な表現を用いて二面鏡に映った状況を示す。

・具体的な実験 と思考実験を交互に取 り入れるようにする。

(10)

・二面鏡にはさまれた図形を部分 として、二面鏡に映 し出された図形を全体 として、部分 と 全体 とを常に意識 した見方を行 う。

・「なぜ」そのように二面鏡を通 して映 し出され るのかの理由について、既知の図形の性質 を用 いて解明 しようとする姿勢を高める。

このような立場 に立ち、附属浜松小学校では

3‑5の

段階で、附属静岡中学校では

6‑8の

段階で授業実践を計画 し、授業実践 を行つた。

5.二

面鏡を用いた算数・ 数学授業の構想

5.1.附 属浜松小学校

4年

における二面鏡を用 いた算数授業

4の

10月 か ら

H月

にかけて

10時

間扱いの 「角・ 不思議発見

!」

とい う授業 を構想する。

この 「角・不思議発見

!」

の単元 目標、単元で扱 う教材 と内容、各授業で行 った ことは次の 通 りである。

(1〕 『角・ 不思議発見 !Jの 単元目標

角の概念 について理解することで、角を今 まで とは異なった見方で とらえ、身の回 りにあ る角を意識 して探 し、測つた り見当をつけることができる。

(情 意面

)○

二面鏡の もたらす事象の不思議 さに関心を持つ。さらに、身の回 りにある事象 に潜む様々な角度に関心をもち、角度 に対する感覚を高める。

(認 知面

)○

二面鏡 に映 る物の像の数は、二面鏡が開けば開 くほど多 くなることを知 る。 こ れ より、角の大 きさを二面鏡の開 き具合、転 じて回転の大 きさとして とらえる 感覚 を高める。

○二面鏡の開き具合は、

2枚

の鏡の間の距離では正確 に他者 に伝 えることができ ない。二面鏡の開 き具合を正確 に伝 える手だて として、「角の大 きさ」がある。

その角の大 きさを表す単位 として 「度」があり、単位量のい くつ分かで、すべ ての角の大 きさを表すことがで きる。

○分度器 を使 えば、早 く簡単に正確 に身の回 りの角の大 きさを測 った り、角 をか いた りできること

(2〕 『角・ 不思議発見 !Jで 扱 う教材と内容

○二面鏡の間に物をおいて鏡に映 した とき、像の数が鏡の開き具合を変えること で どのように変化 してみえるのかを扱 う。その際、児童個々にハ ンディーな二 面鏡 を持たせ予測をさせた り、十分な実験を行わせ る。

○身の まわ りの ものや事象には どの ような角が存在す るのかを調べ るために、

「数学的探求学習」を設定する。例 えば、テレビのリモコンが反応する角度を 調べ ること、学校内外にみられ る角の様子 を多様な表現で表す ことな どを行 う。

(3)『

角・ 不思議発見 !Jの 各授業で行ったこと

1時間 目

2時間 目

3時間 目

4時間 目

二面鏡 により物はどのようにみえるだろうか。

三角定規の角 と同じ大きさだけ二面鏡が開いた ときには、物はどのようにみえ るだろうか。

二面鏡 に映 る物の数は、 どのように増えてい くだろうか。

二面鏡の開き具合は、

2枚

の鏡の間の長 さによって正確 に他者 に伝 えられ るだ

ろうか。

(11)

両角達男・鈴木裕之 0内 藤栄 二

5時

間目

:分

度器 を使って角をはか る方法 を学ぼ う。

6時

間目

:分

度器 を使つて角度 を測つた り、角 をかいてみ よう。

7時

間目 :「 私の分度器」を作つて、いろいろな角度を測 つてみよう。

8時

間目〜

10時

間 目 :身 のまわ りには どの ような角が存在す るのだろうか。

私たちが便利だな と感 じることと角 との間には関係があるのだろうか。

なお、「角・不思議発見 !」 の授業 に入 る前に行 った実態調査では、

4割

ほ どの子 ど もが、角の大 きさは角をつ くる辺の長 さに依存すると捉 えていた。

5.2.附 属静岡中学校

1年

における二面鏡を用いた数学授業

中 1の

9月

か ら

10月

にかけて

14時

間扱いの 「鏡 に映つた形か ら平面図形 を探 ろう」 という授 業を構想する。 この 「鏡に映った形か ら平面図形 を探ろう」の単元 目標、単元で扱 う教材 と内 容、各授業で行 つた ことは次の通 りである。

(1)『 鏡に映った形から平面図形を探 ろう

Jの

単元目標

二面鏡 に直線

1本

を映 した ときにできあが る様々な形 に知的好奇心を抱 き、その現象が なぜ生 じるのかを追求 しようとす る。特 に、二面鏡に直線

1本

を映 した ときにできる正多 角形や線対称 な図形 に着 目して、算数で学んだ正多角形や線対称な図形の もつ特徴 と比較 対照 しなが ら、形 を全体か ら部分へ、部分か ら全体への双方か らとらえることの大切 さを 学ぶ。形 を全体か ら部分へ とらえることにより、辺や角 に関わる正多角形の特徴 を見いだ し、部分か ら全体への とらえによ り、なぜ そのような図形ができるのかの理由づけや作図 への強い関心を抱かせ る。

(2)『

鏡に映 った形から平面図形を探ろう

Jで

扱 う教材 と内容

○   二面鏡の間 に物をおいて鏡 に映 した とき、像の数が鏡の開きく ゛

あいを変えることで ど のように変化 してみえるのかを扱 う。その際、生徒個々 にハ ンデイーな二面鏡を持たせ 予測をさせた り、十分な実験 を行わせ る。

さらに、「〜だったらどう映 るだろうか」「〜のように映 る場合は、 どのように二面鏡 をおいた場合だろうか」のように、命題の仮定や結論を意識 した問いかけを重視する。

○   正方形の

4つ

の線対称軸に沿 つて二面鏡 をおけば、 自己同型の様子がみれる。

しか し、今回の授業では線分 を繰 り返 し鏡映させ ることにより、正多角形が構成 され ることに焦点 をあてる。その理 由は、正多角形の中心 と隣 り合 う

2つ

の頂点を結ぶ状態 と二面鏡の開いた状態 とを同一視 させたいためである。

○   二面鏡でのみえかた と連動 させ る形で、基本的な図形 の作図の方法を確認する。

(3)『

鏡に映 った形から平面図形を探ろう

Jの

各授業で行 つた こと

1時

間 目〜

3時

間 目 :二面鏡に正多角形 を映 し出すおもしろさを探 ろう

二面鏡の世界 に関連 した作図のおもしろさを見いだそう

・二面鏡の世界 を覗いてみよう

2時

1時

3時

3時

3時

・二面鏡の世界 を覗いて気づいた ことや考 えたことを紹介 しあおう

4時

間 目〜

H時

間 目 :鏡 の図形 を追求 しよう

・ 自分の追求を論文にしよう

0論 文を読んで、グループの仲間の考えを確かめてみよう  

000・

・・

・ グループでの話 し合いの内容 を紹介 しあい、聞いを解決 しよう   ・・・・

(12)

12時

間 目〜

14時

間 目 :平面図形 を振 り返 ろう

・平面図形について、確認 された ことをまとめよう

7・

°・・・  000 2時

なお、

4時

間目に入 つた段階で生徒が抱いた 「問い」を分類すると、二面鏡によって映 る図 形の同定 とその原理に迫 るものが最 も多かった。二面鏡の開き具合により映 る図形 はどのよう に変わ るのか、開き具合 と鏡像 には規則性があるのか、星型はどうやったら映せ るのか、二面 鏡 を用 いてつ くれない図形があるのかな どである。 また、二面鏡 に映った正八角形や正六角形 の様子 と関連 させなが ら、正八角形や正六角形の作図に強い関心を抱いたものもあった。

6.特

徴 的な生徒の筆記物からみた二面鏡を用いた算数・ 数学授業の実際

6.1.附 属浜松小学校

4年

における二面鏡を用いた算数授業の実際

二面鏡を用いた一連の授業

(10月

14日H月14日

)に

おいて、児童Aが筆記 したものは次 の通 りである。

■ ■

,ヽ       

ロ コはうこそ口の

=r'I      :。

, B̀,

月 `

か わの 、 開 さぐぁ、、 99         

̲̲̲二 聖 里

l・

3(̲・ ・ ″ 口 ) '日 は うこそ ●の 露 ら冒 (.。 .3( 1。

l・B̀な r■

lヅ

Mヽ,設

i,ttユ (す

│        li……¨=…………計

i魃

pぅ

̲ ̲̲     1  / 1       1  1  1:″l炉iVX.│メ │十奪糠 轟

Cノ

がむき :丁

'`

` 助颯資遇 )

曲こ"濶鋼転

1賀

°

11]ぎ RA「 15j争

ξ

={驚

tRし

t尋

れ緊

T茅

。 ご御 tl・ntrlく

0負 tあ 無む

1■

12=

1疇

70餞 65

酸 麟

2壇

? l創

̀ト 融 b

(13)

両角達男・ 鈴木裕之・ 内藤栄二

4e 28 (rq) I E€ (

児童

Aの

筆記物 を解釈すると、次の ような思考の移 り変わ りがみ られる。

1時

間目 :二面鏡 により物はどうみえるだろうか

「かがみの間に人形を入れてぎ りぎ りまで間をせ ま くすると、た くさんうつる。広 げて い くと、少な くなってい く。

Jと

い う言明 よ り、二面鏡 に映った像の数は二面鏡の開 き具 合 によることを指摘 している。続いて 「かがみのはじのほ うにして、人形をお くと、 もっ と大 くな り、内側の方にお くと、少ない」 とい う言明 よ り、二面鏡 と物の位置によっても みえ方が異なることも指摘 している。 この指摘 は、直角 に開いた状態での物のみえ方、自 己対称 にするための鏡の置き方の指摘な どに発展する。

さらに、三角形 を二面鏡で映 した ときの様子を 「鳥の くちばしになる」の喩えで述べて い る。 また、「直角二等辺三角形で、正方形ができる」や 「かがみの間をせ ま くす る と、

むげんに広が る」のように、 より数学的な表現で示 そ うともしている。

2時 間目 :三 角定規の角と同 じ大きさだけ二面鏡が開いた ときには、物はどのようにみえる だろうか

三角定規の角度 によって、二面鏡 に映 った像の数が 「

3ひ

,90度

」「

60度, 5ひ

き」

「40度

, 7ひ

き」「

30度,Hひ

き」の ように、角の大 きさに応 じて整理 されてい る。 ここ に、二面鏡の開 き具合を変えれば映 る像の数 も変わるとい う関数的な見方、二面鏡の開き 具合 を角度によって表現 しようとする思考がみ られ る。

しか し、二面鏡 の開き具合の表現の仕方 は、「三角 じょうぎの直角以外の角をあわせた ら、何 こできる」 という授業の流れに沿 つた ものである。

3時 間目 :二 面鏡 に映る物の数は、 どのように増えていくだろうか。

二面鏡の開 き具合によって映 る像の数が変わることを、映 る数の変化 に伴 つて調べ る活 動が行われている。二面鏡が開けば開 くほ ど映 る数が増 える、 とい う前時までの とらえか

ら逆の見方をしていることになる。

児童

Aの

「はばが何

cmか

調べ る」 とい うコメン ト

(吹

き出 しへの記入 )に み られ るよう

に、二面鏡の開 き具合を

2枚

の鏡の先端同士の距離で表 していることがわかる。なお、

2

枚の鏡の先端 を紙 に映 して、その長 さを実測 している。

(14)

4時 間目 :二面鏡の開き具合は

2枚

の鏡の間の長さによって正確に他者に伝えられるだろうか 二面鏡に物の像が

4個

映 るときに焦点をあて、 クラス全体で討議 された様子が記録 され ている。児童

Aは 3時

間目に記 した考えを踏 まえ、

2枚

の鏡の先端同士の距離 Hcln 8 mll

を 「鏡に

4個

映 るとき」 として示 した と考 えられる。

討議 を通 して、

2枚

の鏡の長 さの取 り方は様々なものが とれること、

2枚

の鏡のなす角 度であれば一意であること、角度 を測 るための分度器のあて方な どを学習 している。

「鏡の開き具合はかがみの大 きさがいっしょじゃなきゃ、伝えることはできない。

だか ら、角度で表す

Jと

い う児童

Aの

まとめに、

3時

間 目か らの変容がみられる。

5時

間 目 :分度器を使 って角をはかる方法を学ぼう

4時

間目の後半部に続いて、分度器の使い方 を確認す る学習が行われている。

「 90°

  4こ

」「 72・

  5こ

」「 10こ

 36・

」「 30°

  12こ

」 とい う表記 と「かがみが ち が う大 きさで も、角度 と鏡 に うつった数 をかけると、

360に

なる」 とい うまとめにみ られ るように、角度 と二面鏡の開 き具合、二面鏡の開き具合 と映った像の個数 (こ の場合には もとの物 も含めた個数

)と

を関連 させている。

6時

間 目 :分度器を使 って角度を測 った り、角をかいてみよう

5時

間目に行った ことを踏 まえ、

2枚

の鏡のつ くる角度 と像の個数

(自

分自身を含めた もの

)と

の関係について、実験 しそのデータをまとめている様子がみ られる。角度 と個数 の表があるが、 この表は 「調べた順序 によるもの」 (時 間的経緯

)で

あ り、数値の増減 を 意識 したものではない。

ただ し、赤ペンを用いて数表か ら 「 15° の倍数」 と「個数

2の

倍数」 に共通する特徴 を みつけようとしている。関数的な見方か らデータのもつ特徴、特に共通点を見いだそうと

している。

7時

間目 :『 私の分度器 Jを 使 って、いるいるな角度を測 ってみよう

三角広場か ら教室内へ、 とい う順路を経て、身の回 りにある関心のある角度を測ってい る様子がみられる。

児童 Aの 他 に、二面鏡 を用いた算数学習で特徴的な記録をしているものは次の通 りである。

なお、紙面の関係上、部分的な抜粋に とどめる。

l望

聾菫担買塑 嘱碁真域

:

二負じよ嘘 餌 二の角を夕め

(

能ヽ ホ

.1(■

重ゝ 2ム 鬱 ゝ

̲̲二

2

°欝聾理製誓雪

(15)

両角達男・ 鈴木裕之・ 内藤栄二

6.2.附 属静岡中学校

1年

における二面鏡を用いた数学授業の実際

二面鏡を用 いた一連の数学授業の うち、「鏡の図形を追求 しよう」の段階で作成 された数学 論文

(レ

ポー ト )に 焦点をあてる。静岡中の授業では、各 自の抱いた 「問い」 に対する数学論 文が作成 され、 その数学論文を踏まえたグループでの協議、 クラス全体での情報共有 と協議、

そ してさらなる 「問い」の生成 (さ らに追求 したいこと

)が

行われてい る。

1本

の直線の上に二面鏡 をおいた ときに多角形をつ くることがで きる、 とい う現象を確認 し た後、次のようなテーマに基づ く数学論文がつ くられる。生徒 によって挙 げられたテーマをグ ループ分 けし、取 り組んだ生徒の多い順 に挙 げると次の①〜④のようになる。

① 2枚 の鏡のなす角度を変えたら、どのような多角形が生じるのか。また、それはなぜか。

② 二面鏡によってつくることができない図形はあるのか。

③ 二面鏡によってできる正多角形と作図にはどのような関係があるのか。

④ 二面鏡と直線によって星形がつくることができるのか。

① に関する数学論文

右の生徒

Bの

数学論文では、

鏡の角度を狭 くす ると鏡に映 る 枚数が増 えてい くのか について 論が進められている。合わせ鏡 との比較を通 して、二面鏡 によ る反射の原理 を示 している。

また、真上か らみた図を考え ることにより、部分 と二面鏡に よりできる図形 としての全体 と の関係 を示 している。

多角形の中心 を通 る対角線 と二面鏡 を対応 させていること がわか る。

右の生徒

Cの

数学論文では、

2枚

の鏡のなす角 とで きる図形 との関係を帰納的に調べ ると共 に、

2枚

の鏡 に対する直線の位 置 について も言及 している。

「対角線で分 けて同じ図形が できれば鏡であらわせ ることが わか りましたね」 とい うまとめ に代表 されるように、内側か ら 構成 する見方 と外側 か ら分牌す る見方 との関連 について述べて いる。

=は

ね 亀… げ

∩ →∧

上絆ゞ息z!

:雛

t \^ 0s {u{\^ ts1erv *-f llleaca gp

1月

2 ,D●

.

■ ■●■

7//′

91p′

失角形ヽ、 約

tttnべ

、 い 1'` 卜 ・

1[:鰊

:Fr喫

鸞懃ξ

,sく

"喪

=L●

っ てでき lo, Э角形ヒ電

12

=    :llt桐

=彬

中 ▼

し かし、 鷲燿 蝸県で合 ・ It.合 口総図形ぜ゛は

,t、

.1

h△

°

31踏

att気

・舗で 0●t銅

"も

て、

bあ

1)tSっ

t.盛 もぃ専ド

できは

,1て

ヽ、

:■

1■

(16)

右の生徒

Dの

数学論文では、

2枚

の鏡のなす角度の変化に 対す る図形のみえ方の変化の みならず、鏡 による反射の原 理 を用いてそのわけを示 して い る。「

2の

鏡が

1の

鏡 を通 して、

1:が

映 し出 され、 1=

2:に

映 った線が向 こう側 の線 を映 し出す。」 とい う言 明にみ られ るように、記号を 用 いて理 由をできる限 り説明

しようとしている。

②に関する数学論文

右の生徒

E,生

Fの

数学 論文では、長方形を映 し出せ ない ことが共通に語 られてい る。例 えば、生徒

Eは

二面鏡 によって映 し出すことができ る図形 の特徴 を、「辺 の長 さ がすべて等 しい」「線対称 に なっている」 として とらえ、

その否定形 として長方形、台 形 をあげる。

同様の論法を生徒

Fも

用い、

「鏡は 90° だ と同じものが

4

つでる。すなわち

4つ

の等 し い辺 が ない とつ くれ ないの だ。」 と述 べ、否定の論理 を 用 いて長方形 を示す。

できない場合を示すために、

で きる場合の特徴を明確にす る点は、イヽ 学生にはみられな い活動である。

この他、右の生徒

Gや

生徒

Hの ように「円がつ くれない」

ことを指摘するものもある。

h-t?zvt&r* is

1諒 贄

独お∫:眈l‐1甲墓現

ぅ、■ンた

1

三角テタ

=″ 2,・

四 月1///→

90'

ユ 員升多→,2・ 六 月千多→62・

プ、

1■ ,,4夕

°

=う htく 0や

くみうLA州

L鰤

りぃし

,角

"ウ

t

:絆

彙 tl瞥 難脱疏脱

4

)Z a t-;,-^

ft&A-tt z_tt-.-

i蹴

111」

面 馨

虐晦

it,

熱¨ L梁t

い ■・ 可

 

D●

t

a̲」

鍔聾 で作れない図形、 ‐

!

° .

茅謬黎噌

lrBに

力 を ばえ た つ

こ の利家胸纏■と

'財

り0作

3図 形は 'こ 作

%求

も味 積 。 直線 ●

t鍬

P3で

t鋼 砕ζ 尋は

(17)

両角達男・鈴木裕之・内藤栄二

③ に関する数学論文

右の生徒 Iは 「鏡 を固定 して 直線の位置を変 えていつた とき 映 る図形が変わるのはどうして か」 とい うテーマに基づいて、

数学 論 文 を書 き始 めて い る。

「鏡

2枚

と直線でできる三角形 の面積が変わつて くるか ら」 と い う理 由 と共 に、鏡 と直線 に よつてで きる三角形が二等辺三 角形であるとき と、そうでない ときを指摘する。 さらに、二等 辺三角形の場合 と正八角形の作 図二等辺三角形でない場合 とひ し形の作図を対応 させてい く。

「正八角形 を作 るには、内角

(360÷ 8=45°

)45°

をつ くらなければな らない」 と述べ るが、 この内角 は正八角形の内 角の意味ではな く、対角線の交 わ りによりできる角であ り二面 鏡のなす角 を表す。

二面鏡でみた現象を、作図の 方法 に関連づ けようとする動 き がみ られ る。

④ に関する論文

生徒

Jは

「星をつ くるときの 法則」 と称 して、二面鏡のなす 角が 36° の場合 に星がつ くれ る と述 べ る。「あいだの角 を 36°

にす るだけでは約十角形ができ て しまう。星にす るには線の角 度 を変 えな けれ ばい けないの だ」 と述べ る。 さらに、 まとめ で指摘するように線の角度の変 化 によりできあが る星の形状の 変化 を述べ る。 この背景には、

度重なる二面鏡 を用いた実験が あった と思われ る。

│夕

4・

,・ 4・̲ ¬

6・

にι

.免

Y線 ″力で 1ン ■ιて央 ぅ″タ

iぶ

紺み毎鶴?

懸フ る

tt」

Fう:ち 1'ii;あ

ili}凛

な 諄 9

工ぶ脅工

.段

ェ縄の セ繊

=

̀、

ユレタ′rZtろ. エン

'ふ

・ヽ

''4̀●

ルレリッ

zふ

ι磯ュ

=盪

12彼

夕わせるγ.l̀グの名

a′

8′

3 zl'′ Yな

盤子統説議i4MttЪ

嘉務鼈

]=″

wひ

猥斃摯欝

(18)

6.3.特 徴的な生徒の筆記物か らみた浜松小 と静岡中における算数・ 数学授業での特徴 浜松小の算数授業においては児童

Aの

継続的な筆記物を通 して、静岡中の数学授業において は生徒

B〜

生徒

Jの

数学論文 を通 して、二面鏡を用 いた算数

0数

学授業における児童・生徒の 思考を追 っていった。二面鏡を用 いた授業における小

4と

中 1の 児童・ 生徒の思考の特徴は、

次の ように表す ことができる。

○二面鏡の開 き具合により、物の映 り方が変わることや、直線か らつ くれる図形の形が変わ ることについて、小 4、 中

1と

も二面鏡を用いた実験を通 して感覚的に理解できる。また、

二面鏡の開 き具合に対 して、 どのように物の映 り方や図形が変化するのかについて、小 4、

1と

も関数的な見方によ り (帰 納的な方法

)調

べ ようとしている。ただ し、数値の増減 な ど組織的に調べる点や、授業における教師の助言や方向付けの影響など、小 4と 中

1で

は違いがみ られる。

○小

4に

おいては二面鏡を用 いた現象により、驚 きや強い関心を抱いて、

2枚

の鏡の開き具 合、そして角度の学習へ移行 していった。角度の概念 を知 るきっかけとして、二面鏡を用 いた現象が機能 していた。

一方、中 1に おいては二面鏡 を用いた現象を通 して、算数で学んだ図形の知識を想起 し 二面鏡 により生 じる現象の原理を解明しようとしていた。小

4で

の動機付 け としての二面 鏡の扱いよりも、より深いレベルで二面鏡によ り構成 され る 「形」に着目を している。

○二面鏡 を用 いた学習において、図形を全体 と部分 との関わ り、その関わ りを導 く規則性に

着目してとらえていくことについて、小

4段

階でに感覚的に、中

1段

階ではやや論理的に

扱 っている。中 1段 階では、二面鏡による生 じる現象の原理を解明する場面 において、多 角形 を全体か ら部分へ、部分か ら全体への双方の視点か らとらえること、それぞれの視点 で捉 えた ことの関連づけを図 ることがみられる。ただ し、その とらえや関連づけには個人 差がみ られ る。

○二面鏡 を用 いた学習において、みえる現象をどのように物語 るかについて、小

4で

は身の 回 りの ものへの喩え、中

1で

は数学用語を用いての表現な どの顕著な違いがみられた。

7.お

わ りに

本研究では、二面鏡を用いた図形学習について、小学校中学年か ら中学校初学年に焦点をあ てて考察 をしてきた。現在、 この段階では、中

2以

降の論証幾何の学習に向けて、

2次

元や

3

次元の様々な図形学習が行われている。算数の中核的な部分であ り、算数か ら数学への移行が 徐々に行われ るところで もある。岡崎 0岩崎 (2003)は 「算数での図形の学習 と、中学校数学に おける論証の学習の間に、図形の関係を捉える段階を設定する必要がある。」「移行段階に必要 な認識や活動 として、次のことが挙 げられる。 Tl:か たちや性質 を道具 として用 いる ,7:

性質を組み合わせ、図形 を決定す る

 T3:性

質を序列化 し、仮定の本性 を知 る」な ど、算数 と 数学を橋渡 しする図形学習 として 「作図」を高 く位置づけている。岡崎・岩崎に代表されるよ

うに、算数 と数学の橋渡 しに関 しても、様々な課題が生 じる段階である。

本研究では、二面鏡を用いた学習活動が 「図形を分解 と構成、全体 と部分 とを関連づける規

則性 に着 目して とらえること」を強 く促 し、図形学習において効果的であるとい う立場をとっ

ていた。 また、セネシャルや

NCTM Standardの

主張を理論的な論拠 に、二面鏡 を用いた図

形授業のね らいを提示 し、小中学校での一連の授業 を構想 し、その学習の実態を考察 した。小

参照

関連したドキュメント

「心理学基礎研究の地域貢献を考える」が開かれた。フォー

向老期に分けられる。成人看護学では第二次性徴の出現がみられる思春期を含めず 18 歳前後から

年度まで,第 2 期は, 「日本語教育の振興」の枠組みから外れ, 「相互理解を進 める国際交流」に位置付けられた 2001 年度から 2003

支援級在籍、または学習への支援が必要な中学 1 年〜 3

開催数 開 催 日 相談者数(対応した専門職種・人数) 対応法人・場 所 第1回 4月24日 相談者 1 人(法律職1人、福祉職 1 人)

モノーは一八六七年一 0 月から翌年の六月までの二学期を︑ ドイツで過ごした︒ ドイツに留学することは︑

 文学部では今年度から中国語学習会が 週2回、韓国朝鮮語学習会が週1回、文学

 活動回数は毎年増加傾向にあるが,今年度も同じ大学 の他の学科からの依頼が増え,同じ大学に 2 回, 3 回と 通うことが多くなっている (表 1 ・図 1