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自らの納得を求めて立ち向かっていく

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Academic year: 2021

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自らの納得を求めて立ち向かっていく

−6年2租『どこまでパワーアップできるか』の実践から−

植 松 研 膏 1.E子さんのとらえ

E子さんは、友達や教師の話をよく聞き、与えられた課題に対して努力を惜しまない子である。彼 女が4年生の時、私は彼女のクラスの理科の授業を担当した。その時も実験や観察に真剣に取り組ん で、実験車一夕をきちんとまとめることで自分なりの考えを生み出していった。そして、5年生の時 に私は彼女の担任になった。5年生の時の教材『1秒の壁に挑戦』では、振り子の周期を1秒にしよ うと考え、ひもの長さを60皿に固定して振れ幅だけを変えて実験をした。「周期は振れ幅に関係があ る」という仮説を立て、何度も実験を繰り返して「振れ幅が○皿の時に△秒」というデータを取り続 けた。そして、友達がひもの長さを短くすることにより1秒に近づいてきたことを知っても、自分の 実験方法を変えようとはしなかった。1秒にはなかなか近づかなかったが、自分の仮説を確かめるた めに納得のいくまで実験を続けていった。また、次教材『溶ける?溶かす?』でも、砂糖や食塩など の溶解度を調べる実験において「水100mgに口g溶けるだろう」という仮説を立て、できるだけ正確 に求めようと実験データをもとにして「喝」まで量って調べていった。

このように、彼女は実験結果を何度も検証して、納得のいくまで追究していこうとし、「なぜ、そ うなるのだろうか」という疑問に対して自分で調べて確かめてみたいという思いが強い子である。

2.教材への患い

E子さんは、自分の方法を大切にして追究することが多い。そんな彼女に、自分の方法で追究して いくと、立ち止まらざるを得ないような事実に出会わせたい。私は、彼女が自分の考察や得た結果か ら立ち止まってもなお、納得のいくまで追究して新たな道を切り開いてほしいと願った。それは、自 分の道を地道に進んでいく彼女が自分のやり方を貫いていくよさを感じることになるからである。本 教材『どこまでパワーアップできるか』では、電磁石の磁力を強くする方法を見出す中で「コイルの 巻き数や巻き方」「乾電池の個数」に着日して実験を進めていく。その中でコイルを多く巻き過ぎる と磁力が変わらなくなるという事実や、電流が大きくなると発熟してしまうという事実にふれ、電磁 石をより深く見つめていくことになるだろうと考えた。

彼女が電磁石に出会うと、コイルに電流を流すと磁力が発生するという不思議さに驚くだろう。そ して、自作の電磁石を作る中でその性質にふれていく。弱い磁力を強めようと「どうしたら、磁力が 強くなるのだろうか」と考え、電流の大きさに著目して乾電池の個数を増やしたり、コイルの巻き数 を増やしたりする。正確さを大切にする彼女なら、実験経過と結果の記録を詳しく調べ、そこから磁 力と電流や巻き数との関係を考察していくだろう。また、コイルの発熱により乾電池の個数を増やす ことが難しいので、彼女は巻き数に着日して追究していく。さらに磁力を強くしていきたいと思う彼 女は巻き数をさらに増やせばよいと地道に巻いていくだろう。また、丁寧に作業を進めていく彼女な ので、隙間なくきれいに巻いた方がよいと考えて巻き方にも着目していく。

実験を進めていくと、巻き数を増やしすぎると磁力があまり変わらなくなっていくことに気づき、

立ち止まるだろう。きっと、自分の方法を大切にして地道に進めていく彼女ならノートの記録を見直 したり、友達の意見を聞いたりして結果や方法を吟味していく。500回巻きを1000回巻きにしても クリップのつく個数が少ししか変わらないのはなぜかと考えて戸惑いを見せるが、巻き方に自信があ る彼女なら「これ以上きれいな巻き方はない」と考え、■もっと巻けば、きっと強くなるはずだと思う だろう。しかし、そうならない事実にぶつかって悩み、前へ進めない時には友達の結果と再度比較し たり、条件を変えながら実験したりするだろう。

このように、自分の方法や結果を大切にする彼女が隙間なくきれいに巻いていけば磁力が強くなる

ー69−

(2)

という見通しをもって地道に、かっ正確さを大切にしながら取り組んでいくと、「巻き数をただ増や していくだけでは、いずれ磁力が変わらなくなる」という新たな事実に出会う。そして、「もしかし たら、これ以上は強くはならないのかもしれない」という考えをもとに、自分の実験方法を吟味して いくことだろう。結果についての話し合いを通して方法や結果を吟味することで、自分の巻き数を増 やす方法へのこだわりを見っめていく。そして、巻き方や電流の大きさなどに着目して再実験に取り 組み、納得のいく結果を得ようとする中で彼女は電流と磁力についての見方や考え方をより科学的に

していくだろう。

3.E子さんの追究から

(1)自分が抱いた疑問から

彼女は電磁石が鉄釘とコイルでできることを知ると早速、鉄釘にエナメル線を30回はど巻いた。友 達の実験から乾電池1個でも巻き数が少ないとコイルが

発熱することを聞いた彼女は、こわごわ電流を流してみ た。そして、釘の頭には6個のクリップがついたが、釘 の先には全然っかないという自分の結果に疑問を抱いた のである。これは、釘の頭から半分ぐらいの所まで巻い た程度だったので、先の方の磁力が弱かったのだろう。

彼女は、そのことについて調べてみたくなり、コイルの <E子さんの巻き方①>

位置を動かして確かめ始めた。コイルの位置によって磁力に違いがあることを見出し、「なぜ、磁力 が発生するのだろうか」という疑問をもって、磁石への興味がますます高まっていった。

私はこれまで、彼女は与えられた課題に対して地道に解決していこうとする子だととらえていたの で、自らの課題をもって動き出したことに内心驚いた。しかし、自分で見出した課題に対して納得の いくまで実験を続けていくことも彼女らしさかもしれないと思った。この後、巻き数だけでなく巻き 方にも着冒して実験を進めていった彼女は「友達よりも磁力を強くしたい」という競争意識だけでは

なく、自分の力で疑問に思ったことを確かめたいという思いをもって追究していったのである。

(2)巻き方に着目して

できるだけ丁寧に巻こうとしていたので、巻き数はす ぐには多くならなかったが、それでも巻き数を増やすと 磁力が強くなることを彼女は実感していた。近くで実験 していた、釘の頑から先の方まで多く巻いたM男君の電 磁石の強さ(900回巻きで68個のクリップがついた)

に驚き、釘全体に多く巻いた方が磁力が強くなると考え、

彼女は多く巻こうとしていた。

<E子さんのノート①>

100回巻きで20個のクリップがついた。

ェナメル線を隙間なくきれいに巻いて、

巻き数を増やした方がいいようだ。釘の 先につかない理由がまだわからないけれ ど、M男君のは釘の先にもっいていた。

T「隙間なくきれいに巻いた方がいい」ってノートに書いてあったね。

(*きれいに→向きを揃えていく)

C その方が強くなるだろうと思って……。

彼女は、隙間なくきれいに巻くことが効果があるのでは ないかと思った。これは、丁寧さを大切にしてきた彼女 の素朴な思いだったことだろう。彼女はエナメル線の隙 間と磁力との関係を調べるために、右図のような2種類 の巻き方で実験をした。そして、同じ長さのエナメル線 で実験すると隙間がない方が明らかに磁力が強く、クリ

ップのつく個数が2〜3倍も違うという結果を得た。こ の実験結果に彼女は納得して、隙間なく向きを揃えてき

−70−

▲ ▲ ▲ ▲  ▲ l ▲ l ▲  ▲ ▲ ▲ l■l ■■■■′川 〃 ■■

J − − −▼− ▼l l (狭 い)

/ヽ   ′\  ′ヽ  ′ヽ   I

/  / / /

(広 い)

ノ  、′  V  Y  ヽ

<E子さんの巻き方②>

(3)

れいに巻けば強い磁力が得られるという見通しをもった。

さらに、前回の100回巻きからっなぎ合わせて隙間なく地道に巻いて300回巻きにしたところ、

28個のクリップがついた。しかし、他の子どもたちの巻くペースが速く、彼女はそれと比較すると とてもゆっくりだった。すでに、多くの友達は巻き数を増やしても磁力が強くならないという壁にぶ っかり始めていたのである。彼女がこのまま巻いていっても「巻き数をどんどん増やしていくと磁力 が強くならなくなる」という壁に到達する前に、友達の追究から「巻き琴が多すぎると磁力が弱くな る」という性質だけを教えられてしまうのではないかと考えた。彼女は「磁力を強くしたい」という 思いをもちながらも、巻き数さえ増やしていけばよいとは思っていなかった。友達のより多く巻いた

ものを見て、今からでは到底間に合わないという思いもあるようだった。隙間なくきれいに巻けばよ り多くつくという見通しをもって実験をしていこうとしていた彼女の姿勢に私は心惹かれ、十分に時 間を取って、巻き数を増やすと磁力が強くなることと、増やしすぎると磁力が強くならなくなること を実感させたいと思った。巻き数を増やしていく実験を通して、彼女は巻き数を増やすと磁力が強く なることに気づいた。また、彼女は400回巻けば磁力が強くなると期待して確かめたが、磁力は強

くならないことにも気づいた。この結果に納得のいかない彼女は再度400回巻きで確かめたが、25 個ついたものの、28個以上にはならなかった。ここで「巻き数を増やしても磁力が強くならないの かもしれない」という新たな疑問が生まれてきたが、彼女には「隙間なくきれいに巻けばより多くつ

く」という自信もあった。

(3)破力を強くするには

私は、彼女の疑問の一つになった「ただ巻いていっても磁力は強くならない」という結果に向き合 わせたいと考え、「巻けば巻くほど磁力は強くなっていくのか」について話し合う時間を取った。そ の中で、巻き数を増やしても磁力は強くなってI、かないという意見が出てきた。また、乾電池の個数 を増やせば、巻き数が多くても磁力は強くなるという意見もあった。しかし、彼女はこれまで乾電池

1個で実験を続けてきたのである。

Cl(A子)きっと、1個の乾電池につき何回巻い たら一番多くつくというのがあると思う。

C2(F男)巻き数を多くするだけでなく乾電池も 増やせば、磁力が強くなるようだ。

C3 みんなは「1個の乾電池でエナメル線の長さに 区切りがある」と言っていると思うけど、もう 一度調べてみたいな。

彼女は、多く巻いたらもっとっくという考えを捨て切 れなかった。それは隙間なくきれいに巻きながら巻き数 く話し合うE子さんたち>    を増やしていくという彼女の大切にしてきたことが、巻 き数を増やすことだけに着日しながら実験してきた友達の結果からはわからないからだろう。友達の 事実に出会っても、自分が確かめていないので納得できないのであった。また、彼女は話し合いの中 で「乾電池の個数とちょうどよい巻き数があるから、巻き数を多くしたら乾電池を増やせばよい」と

・B男…7000回巻き一→34個

・J男…4000回巻き一,27個

・D男…3500回巻き一十20個

・M男…1000回巻き一→53個

・N男…700回巻き→67個

<友達の実験結果>

考え始めていた。巻き数の違いによる磁力の変化を確かめてみると、

乾電池2個という同じ条件下では左記のような結果になった。N男君 も彼女と同じように隙間なくきれいに巻いており、実験した子どもの 中では巻き数は少ないのに一番多くのクリップがっくという結果を得 た。彼女は、この結果に思わず声を出して驚いた。私は、友達と同様 に乾電池を2個にすれば彼女の電磁石がより多く巻いた友達の電磁石 よりも強いことを知っていた。これは、巻き数を多くしていく中で隙 間なくきれいに巻いた成果でもある。

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(4)

次の時間に、彼女の電磁石を使って実験をした。彼女の電磁石の磁力が強いことを彼女自身が実感 することで、彼女が今までの自分の取り組みに自信をもち、自らの力で前向きに巻き数や巻き方によ る磁力の変化について再度向き合ってほしいと考えたからである。

T E子さん、電磁石を持ってきてごらん(500回巻き)。

C えー、ちょっと……。あまりつかないと思う。

T やってみよう(乾電池2個とつなぐ)。

C 初めてついた、こんなに。すごい。すごく多かった(60個)。

彼女はこの結果に対して「信じられない」と驚き、喜んでいた。予想以上にクリップがついたことを 目の当たりにして、隙間なくきれいに巻くことのよさを実感したに違いない。彼女にとって納得のい

く結果だったことだろう。

しかし、磁力は強くなるものの、彼女の電磁石は発熟 してしまった。彼女はすでに乾電池が1個だと磁力が弱 いことはわかっていたが、乾電池を2個にした時の発熱 がどうしても気になっていた。発熟させないで磁力を強

くしたかったのである。

「このまま巻いたら発熱はどうなるのだろうか」と思う 彼女は悩んでしまったが、より多く巻いた友達の電磁石 の中には発熱していないものがあることに出会った。そ して、巻き数を増やして電流を流せば乾電池を2個にし ても発熱しないことに気づき、さらに巻いてより強い電 磁石を作ろうとしたのである。500回巻きにさらに200 回巻いて実験をしたところ、「あまり熱くなくなった」

という結果を得て笑顔を見せた。

彼女は「巻き数を増やしてエナメル線の長さが長くな

<E子さんのノート②>

今日の実験では、乾電池2個が限界でし た。1個よりも2個の方がクリップのつ く個数がはるかに多いのに、発熱して危 険でした。でも、電流を大きくして、ク

リップをたくさんつけたいです。

<E子さんのノート③>

乾電池2個の時、500回巻きで発熱し たので、巻き数を増やしました。700 回でも発熱しましたが、発熱するまでの 時間が延びて、巻き数が多いほど発熱を 抑えることがわかりました。

ったので電流が流れるのに時間がかかるのだろう」と考えて実験を進め、巻き数を増やすことで発熱 するまでの時間を延ばすことができるという結果に納得したのである。

4.E子さんの学び

彼女は、エナメル線を隙間なく.きれいに巻くことにこだわった追究をした。その出発点は、彼女が 丁寧に仕事を進めることの表れにすぎないのかもしれない。しかし、彼女は向きを揃えて重ねて巻く ことのよさを見出し、友達がどんどん巻いていくのに対し、彼女は自分のペースを崩さず、「隙間な くきれいに巻いた方が磁力は強くなる」という仮説を立証するために、さらに巻いていった0

そ・して、実験結果などから考察して、隙間なくきれいに巻けば磁力が強くなり、巻き数を増やして も磁力が強くなるという見通しをもち、磁力を強くする方法を見出すことができた。このように、自 分が抱いた疑問を自分の実験方法を大切にしながら解決していこうとすることが自分のよさだと気づ

き、立ち向かい方に自信を深め、それによってコイルを隙間なくきれいに巻くことにこだわり続け、

納得のいくまで取り組んでいったことが彼女の学びであると考える。

彼女は、磁力を強くしたいというだけの追究はしなかった。強くしていく中で、いろいろな疑問を 抱き、その疑問の一つ二つを彼女なりに解決しようと追究を深め、電磁石の性質をも明らかにしてい こうとしていた。私は、巻き数とともに隙間なくきれいに巻くことも大切にしてきたことで磁力が強

くなったと、彼女のこれまでの取り組みを認め、自分の疑問を解決するために自分の力で地道に取り 組んできた彼女のよさを伝えた。そして、友達の実験結果などにすぐには響かず、自分の仮説を捨て ることなく全力を注いできた彼女の姿に改めて魅力を感じた。

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参照

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