1 章 地域福祉 の推進 とボ ランテ ィア ・NPO
猪 山 勝利
、1 節 ボランテ ィア ・、 NPO
の現代的性格1
.ボランテ ィアの現代的性格本稿 は、地域福祉 にかかわ るボランテ ィアの在 り方 について論究す ることに あるが、併せて現代 ボランティアの新たな性格規定 について も言及す ることを 目的 にしている。
1 5 0
万人 を超 えるボランテ ィアの参加 があった19 95
年 の阪神淡路大震災 を基 点 として、 日本 において も本格的な 「ボランテ ィア時代」が到来 した と喧伝 さ れている。しか し、震災ボランテ ィア とい う危機、一過性、奉仕型 のボランティ アでな く、人々の 日常性 と対応す るボランテ ィアの基本動向の中に真の 「ボラ ンテ ィア時代」
は成立 しているだ ろうか。ボランテ ィア とは、今 日、①人々の参加の 自由意志 を基本 とし、②地域や社 会の公共 の利益 を追求 し、③営利や権力 ・社会的権威 を目的 としない非営利活 動 と基底 されている(1)。興櫓寛 によれば、日本 においては
、1 9 60
年代 か ら本格的 な近代 ボランテ ィア活動が成立 し、1 99 0
年代 に入 ってボランテ ィアは現代的な 社会 「補完」
活動ではな く、本格 的な社会 「構成主体」
として生成 しはじめ、その活動 を通 して 「新たな 『市民社会』」を創出 しつつあると提起 している。
ボランテ ィア活動 を推進す る立場 によ り、ボランティアを規定す る視点 は多様 であるが、以下の ような視点が析 出で きよう。
( 1)
宗教倫理論( 2)
道徳論(3)伝統的扶助論
( 4)
行政補完論( 5)
市民社会論弱者への宗教的救済性 社会奉仕性
近隣社会 の助 け合い性 行政サー ビスの補完性
自立 した市民の社会活動性
いるが、筆者 は
( 5 )
の市民社会論の視点 こそ、 これか らのボランティア活動 を主 体的に展望 してい く視点であると考 える。 この視点か ら現代 ボランティアをとらえると、興櫓寛が提言する社会的主体 として位置づけることにな りうるし、
その内在の現代性 も明 らかにしうる。すなわち、現代 ボランティアは当事者へ の一方的援助や支援ではな く、 ともに新たな市民社会 を形成 してい く協同の社 会主体であ り、ボランティア活動者 自身 も学習性や社会活動性 を形成 してい く 活動 ととらえられる。
2
.ボランテ ィアの現代的組織性周知のように
、1 9 9 8
年 に 「特定非営利活動促進法」 (いわゆる一 NPO
法)が制 定 されて、ボランティアの社会的組織性 は新たな段階を迎 えている。法定 され た、NPO
の9
活動領域 は市民生活の多様 な領域 をカバー してお り、財源保障 が確立 されれば、今後市民社会の主体 セクタ† として発展 してい くことが予測され る。
ボランティアの発展組織化 として、
NPO
が法定 されたのは以下のような社 会的要因があ り、現代 ボランテ ィアの組織課題で もある。′'L第
1
に、.ボランティア活動が臨時的、一過性の ものか ら、継続的な活動 を求 め られつつあ り、その力量 ・エ ンパ ワヤメン トを形成 しうる段階にな りつつあるか らである。
第
2
にJボランティア ・ニーズが専門性 を要請 しはじめてお り、ボランティL ア集団の人材、活動の専門性 を高める必要があるか らである。
⊇第 3に、恒常的、専門的活動 を維持 してい くには、活動費や専門的人材 費の確保が必要になっているか らである
。
第
4
に、市民のボランティア活動が企業や行政 と対等の社会的主体セクター として対応 してい くには、法人的社会組織性が要請 されるか らである0現代 ボランティアが上記 した ような組織課題 に当面 していることは、現代 ボ ランティアはそのような社会課題を遂行 しうる力量 を形成 しつつある′ことの査 証で もある。 その意味では、 日本のボランティアの社会参画性 もアメ リ・カ合衆 国 と同様 な、「新たな市民社会創造の動因である(2)」ととらえてい く社会段階を
‑ 1 0
‑1
章 地域福祉の推進 とボランティア・NPO
迎 えてい る と思われ る。
2
蔀 地域福祉 とボ ランテ ィア
1
.地域福祉 ボランテ ィアの基本性格序章で言及 した ように、現代地域福祉 は福祉の質 を
WEL̀ ̀ FARE"
か らWEL̀ ̀ BEING'
'へ と転換 し、福祉 当事者 を福祉推進の主体 とす る転換が なされつつある。
その ような時代 の地域福祉 にかかわ るボランテ ィアは、つ ぎの ような基本性 格 を もつ ボランテ ィア ととらえることがで きよう
。
第
1
に、従来 の弱者救済的活動者か ら、当事者 とともに自発的 に福祉活動 を 推進 してい く協 同活動であ る。第 2に、福祉協 同活動 を通 して、 自己の生 き方、学習性、社会活動性 な どを 形成す る主体性 をもつ 。
第 3に、地域社会 を協 同の生活や福祉が充実 した社会 へ と形成 してい く協 同 社会創造主体 である。
第
4
に、保健 、医療 だ けでな く、環境、文化、教育 な ど他 の社会領域 の活動 とネ ッ トワー クし、総合的社会活動 の動因 となる。第
5
に、社会活動領域 だ けで な く、企業や行政 な ど他 の社会 セクター と連関 して、「参加型福祉社会(3)」
を創 出 してい く動因である。2
.地域福祉 ボランテ ィアの活動領域現代 の地域福祉 ボランテ ィアは多様 な活動 を展開 しているが、 その基本活動 領域 を類別 すれば、以下 の諸活動があげ られ る。
第 1に、地域福祉学習の推進 で ある
。
本書
Ⅰ
Ⅴ部 の福祉学習 の章 で も述べ るように、今 日の地域福祉学習 は福祉 当事 者 や福祉 ボランテ ィアの学習だ けでな く、青少年や地域 づ くり集団 に参加 す る 住民へ と拡充 してお り、社会主体性 を形成 す る創造学習 の基礎的学習 として位 置づ けられつつある。第
2に、地域福祉環境づ くり活動である。行政や企業の主担当である。しか し、その管理や ソフ ト運営な どにはボランティ アの参画が拡充 してお り、その計画創造への提言はボランティ.ア集団が先駆的 に提起 した ものが多い。その意味では、福祉情報 の発信装置が整備 されれば、
福祉情報 について も福祉当事者 と近接 している福祉 ボランティアの情報役割 は 今後増大 してい くと思われ る
占
,第
: 3
に、地域生活福祉支援活動である。地域福祉活動の領域 も、ノーマライゼーシ ョンの現代的理念 を原点にして、J
We l f 去 r e
か らWe l be i n g
へ福祉の質が発展す る・につれ 、1直接の身体介護や生活 支援だけでな く、種々の活動へ拡充 している。その活動 を分類すれば、以下のよう.にとちえら・れるであろう
o
(彰 福祉交通活動
医療施設や福祉施設な どの外出援助や買い物支援な ど交通不便地域や 移動障害者への交通支援活動である。 i
I'② 生活介護,・:支援活動 .
日常生活の介護 ・支援であ り、身体的な入浴、整髪介護活動、.食生活
‑な どの基本生活支援活動こ一声掛 けや会話な どコミュニケーション活動が ある。
] ③
医療 ,保健 ネ ッ トワーク活動 上直接的な医療、保健活動 は専門職の仕事であるが、福祉当事者への情報 提供や当事者 と専門職 とのコミュニケーション媒介活動な どがある。
第
4
に、地域社会参加支援活動である。̲〜.今月、 ノーマライゼ‑ショシ理念の拡充、▲定着 によって、‑福祉当事者の社会 参加、社会参画 は飛躍的に高 まうている.それに ともない、 この分野でのボラ
ンティア活動 もしだいに拡充 している
。
ー① 福祉文化支援活動、福祉当事者の趣味活動支援、文化鑑賞や文化表現活動の支援活動であ り、それ らの活動 は福祉当事者の喜びのある生活づ くりとともに社会参 加 を促進する役割 もはた している。
(参 福祉スポーツ支援活動
‑ 1 2‑
1
章 地域福祉の推進 とボランティア・NPO
福祉文化活動 と並んで、福祉 当事者 の生活 の自己実現性 を形成す る活 動 として、今後増大 してい く活動である。
③
社会交流 ・参画支援活動福祉当事者 の社会参加が進展 してい くにつれ、 当事者同士の交流 とと もに社会参画が増加 してい るが、その動向 を促進す る情報の提供や機会 の設定活動 も進展 しつつある。
それ らの活動 は個別的 に取 り組 まれ るので はな く、連関、協 同 して推進 され ることも多 く、 ボランテ ィア自身 も自己実現 な ど種々得 ていることも多い。
3 蔀 地域福祉 ボランテ ィアの展開
本節で は、筆者 も何 らかの関わ りのある地域福祉 ボランテ ィア活動の事例 を 中心 として、現代地域 ボランテ ィア活動の展開について言及 したい。
1
.地域福祉学習の展開地域福祉学習 は、学校や社会教育機関で展開 され ることが多いが、今 日では ボランテ ィア集団 自身で組織化す る動向 も高 まっている。
事例 の
1
として、長崎県ボランテ ィア協会 は継続生活介護 ・支援が増加 し、その一部分では有償活動 も生起 したために、本格的なボランテ ィア学習 を組織 化 している。毎年
4 0
名程度 の受講者 に、4 0
時間の福祉講座 を組織化 し、継続福 祉活動 ボランテ ィアの育成 を図ってい る(4)0事例
2として、長崎県ボランテ ィア協会 は、長崎県内の学校のボランテ ィア
講座や市町村の社会教育機関における福祉 ボランテ ィア講座 の企画や運営 につ いて も協力参画 してお り、単 なる下請 けではない先駆的福祉学習 を取 り組 んで いる。事例
3
として、長崎市の斜面地 にお ける福祉活動創造 の学習 として、長崎県 ボランテ ィア協会 と長崎大学 は、市保健 セ ンター と協同 して、住民 リーダーを 対象 とした地域福祉 セ ミナーを開催 し、その学習の成果 としてグループホームを組織化 している。
事例
4としては、企業の社会貢献 ボランティアの育成学習である。長崎県ボ
アセ ミナーを開催 し、その結果参加企業に福祉ボランティア活動 を生成 させた のみならず、企業連合 ともいうべき青年会議所や青年協会のボランティア活動 を拡充する動因 となっている・。
‑以上の事例 にみられるように、ボランティア集団の福祉学習はボランティア 集団自体の基礎学習 とともに、先駆的地域福祉創造 を創出する福祉学習をも取 り組んでお り1 この点においてボランティアは新たな市民社会創造機能 を形成 しつつあるといえる。 ‑
2
.地域福祉環境活動福祉当事者が 日常生活や社会参加生活 を支障な くお くるには、バ リアフリー 環境が整備 さ,れることが不可欠である。今 日、公共道路や公共施設のバ リアフ リーはかな り整備 されてきたが、居住環境の整備 は多 くの課題が残 されている。
その
1
は、居宅内のバ リアフリーの整備であ り、住宅本来のバ リアフリー改 造 は業者 によらなければならないが、簡易な家具取 り付 けや家具移動などはボ ラ■ンティア活動 として可能であ り、居住バ リアフリー 十ボテンティア活動 も活 発化 している。 この分野では、建築業者 とは違 うが、有償ボランティア活動 として、高齢者の専門ボランティア活動が各地で拡充 している。
‑その
2
は、福祉当事者 ととも̲に当事者体験 を通して、公共機関のバ リアフ リー 整備の提言活動がある。体験、調査活動などをふ まえた提言活動 は、行政機関 にとって も貴重な福祉情報であ り、福祉ボランティアの先駆的福祉活動 として 重要な活動である。ーこの活動 と併行 して、居住地近辺の交通道路の障害物除去 や休憩設備整備などもボランティア活動 として取 り組 まれている。その
3
は、地域福祉文化環境の整備 ともいえるものであ り、'いわゆる居住地 集会所の改造による 「たまり場」の整備や近隣公園の整備など、福祉当事者の 快適生活環境整備活動である。長崎県西有家町の こども七高齢者ボランティアの県立公園整備 ボランティアは、道路の草刈 りや障害物除去、‑公園内花壇整備、
ベ ンチ設置などの活動 を通 して、帝祉当事者の公園適所率 を飛躍的に高めてい
る 。
‑ 1 ■ 4‑
1
章 地域福祉の推進 とボランティア・NP0 3
.地域生活福祉支援活動(∋ 福祉交通活動
近年、交通 に障害 をもつ当事者への交通支援 ボランテ ィア活動が活発化 し ている。買い物 な どの代行や配達活動、医療施設や福祉施設への適所補助活 動があるが、長崎市のように斜面地 の多い地域 ではこの領域 の活動 はます ま すニーズが高 まることが予想 されている。 この分野の活動 については、交通 手段 の確保 な どボランテ ィア活動で は対応で きない ことも多 く、今後商店街 や行政 との連携が不可欠であ り、そのネ ッ トワークの機運 も生成 しつつある。
( 参
生活介護 ・支援活動この分野 のボランテ ィア活動 は飛躍的 に進展 してお り、障害の様態 に対応 して、種々の活動が展開 されている。
介護保険制度の発足で、重傷 の身体 ・生活介護活動 は福祉業者 に委託 され つつあるが、軽度 の基本生活支援 として、食生活支援、 コ ミュニケー シ ョン 活動、入浴援助活動な どがあ り、障害 に対応 して朗読活動、点字活動、歩行 補助活動な どの活動 も多様 に展開 されている
。
③ 医療 ・福祉ネ ッ トワーク活動
近年、福祉 ・保健 ・医療 のネ ッ トワー ク化が提唱 されて きたが、現状では 門家 同士 のネ ッ トワークに止 まる ことが多 く、福祉 当事者 サイ ドの ネ ッ ト
ワークの形成 は弱体である
。
この分野のボランテ ィア活動 としては、当事者理解の容易 な情報 の提供や
3
領域の専門家 と当事者 との情報 ・コ ミュニケーシ ョン会議の設定活動がある。日本の現状で は、イ ンホーム ドコンセプ トな どが取 り組 まれつつあるとはいえ、
専門家 と当事者の対等性 は弱 く、対等情報 の交換や交流の側面でボランティア 活動の果たす役割 は大 きい。長崎市では、 ボランテ ィア と保健婦が協同 して、
当事者サイ ドの交流活動 も取 り組 まれ始 めている
。
4
.地域社会参加支援活動近年、福祉 当事者 の自己実現ニーズの高 まりと社会 のノーマライゼー ション 思想の定着 により、福祉 当事者 の社会参加や社会参画が増加 している。 それに
ともない、 この分野のボランテ ィア活動の取 り組 み も拡充 しつつある0
近年、種々の文化分野 に福祉当事者の参加が拡充 している
.
この分野の初 期のボランティア活動は文化鑑賞への機会の設定や文化会場への交通支援が 大半であぅたが、.最近は、当事者の表現参加などが促進 してお り、その参加 支援や協同開催が増加 している。特にI.音楽、演劇、絵画文化への参加 は増加 してお り、集団の組織化、練 習活動、発表 ・展示活動などの支援活動が高 まっている。さらに、文芸活動 や文化工芸品づ くりなども進展 してお り、 この分野の活動支援 は福祉当事者 の生 きがいづ くりだけでな く、生活 自立や社会参加 を促進する活動 として、
さらに拡充 してい く分野である.占 (卦 福祉スポーツ支援活動
前項の福祉文化 と並んで、 この分野のボランティア活動 も活発化 している。
長崎県諌早市のボランティア活動では、障害者バスケットに端 を発 して、
手作 りカヤッ.クを製作 し、・カヤ ック活動を生み出すな ど、新たな活動 を広げ ている
。
地域版パラリンピックも各地で開催 されはじめてお り、その開催支援活動 も拡充 している。
③ 社会交流 ・社会参画支援活動
福祉当事者の主体的社会参加の機運が高 まっている。今後 は福祉当事者 と 地域づ くり集団や種々の専門家集団 との交流、行政提言活動などが拡充 され
る必要が高 まって お り、その支援が必要になっている。その支援活動 として、
基本的には情報の提供や地域集団、専門家集団 との交流機会の設定、行政提 言策定のための協同学習、協同研究なども胎動している
。
( 近)
( 1 )
興炉寛 「ボランティア新時代 に向かって」
『ボランティア自書1 9 9 9 』
J YVA 1 9 9 9
年( 2 ト P.F.
ドラッカ÷ 『非営利組織の経営』ダイヤモンド社●1 9 9 1
年( 3)
生活クラブ生協他 .『参加型福祉社会を拓 く』風土社2000
年( 4)
山本いま子 『長崎県ボランティア協会年次報告』平成5‑ 9
年‑ 16‑