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臓器乳剤使用による肝腎徴候群について

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(1)

臓器乳剤使用による肝腎徴候群について

第3編 海狸静脈内に黄色葡萄状球菌を注射せる    場合における各種臓器の変化について

金沢大学医学部第二外科教室(主任 熊埜御堂進教授)

     村    義   夫

      (昭和32年1月11日受f寸)

     Liver and Kidney Syndrome Resulting from

      Administration of Organ Emulsion

III. Changes Produced by Intravenous Injection of Staphylo−Coccus        Aureus in the Viscera of the Gllinea Pig

       Yoshio Mura

   ,Dθ卿伽ηご(ゾ8乞 T9θrン,8eゐ。・ど(ゾ丑fθd eηθ,Kαπα2α泌α疋7渤θr8晦         (.D乞r8eごoγ・P彫.Dγ.8. K%伽αηo煽do)

第1章 第2章 第3章

緒 言

実験材料並びに実験方法 実験成績

一一

第4章 総括並びに考案 第5章 結 論

第1章緒

 流血中に注射されたる細菌は肝臓,腎臓その他面排 泄器官により体外に排泄さるる際に最も重要な且つ主 たる役割を演ずるのは腎臓たるは勿論なり(Cohn・

heim)・而してこの際に細菌の腎臓通過に対しては古 来より二説あり.即ちKutcherは健康な腎臓は細菌 を通過せしめずといい,:Kochは更に丁丁ある細菌に ても腎臓に病変のある時に排泄されるなりという.

Sittmannは又細菌の毒力強きもの程尿中に早く排泄 され,その毒力弱きもの程尿に菌の現われる時間が遅 延するといい,Cavazaniも亦動物実験において腎臓 を阻害せるものの方が細菌の排泄時間早しという.以 上の如く尿中に細菌の排泄さるるのは腎臓に病的所見 のある場合であるとせる所謂病的排泄であるという説 に対して,健康なる腎臓にても細菌を尿中に排泄する 即ち腎臓の生理的排泄機能により排泄さるるなりとい う所謂生理的排泄なりという説あり.Orthは腎臓自 身が排泄力を有していて流血中の細菌は極めて速かに

これを排泄するといい,Biedle u. Krausは流血中に

侵入せる球菌が尿中に排泄さるる際には腎臓糸三体は

これにより影響を受けずといい,これを腎臓の生理

作用なりとせり.Wyssokowitchは毒力なき球菌,非

病原菌は殆んど腎臓を阻害せずして尿中に排泄さるる

のは腎臓の生理的作用によるものなりという説に賛成

し,更に毒力ある細菌或いは毒力弱き球菌が腎臓にお

いて血中より尿中へ排泄さるる場合には必ず腎臓に病

理学的に病変の認めらるるのは腎臓自身が排泄器宮な

るが故に当然のことにして病的排泄によるに非ずと

す.更に又流血中の細菌は腎臓により尿中へ排泄さる

るものの外揚管内へ糞便中に排泄さるるもの,乳腺に

より乳汁中へ排泄さるるもの,流血中にて或いは肝

臓,脾臓等にて死滅するもの,腎臓,肝臓脾臓,骨

髄等の各種臓器に固着するものに分けらるという.斯

く流血中の細菌の排泄に関しては諸説多く未だ定説な

きも,何れにしても流血中に注射されたる毒力ある細

(2)

菌の体外排泄に関しては腎臓が最も重要な役割を演 じ,且つその排泄器官たるが故に最も犯され易いとい わる,而してこの際細菌により惹起さるる障碍のため 腎臓に膿瘍を形成さるるのに2型ありといわる.即ち 主として髄質部に認めらるる所の排泄性膿瘍即ち線状 の膿瘍の形成を見る場合と,皮髄境界部より皮質部に 亘り主として見らるる転移性膿瘍,即ち終末毛細血管 に菌栓塞を起しこれを中心として膿瘍形成する場合と

2種類ありとさる.又この際他の臓器においてもその 終末毛細血管の菌栓塞による膿瘍の形成或いは炎症性 所見を認むといわる,即ちDykeは同時に心臓にも

心筋内に粟粒膿瘍の形成を認め,肝臓には門脈枝の周 囲に円形細胞の浸潤は認めしも膿瘍の形成は認めずと いう.Cavazaniは腎臓に膿瘍の形成さるる際には肝 臓は単に白血球の浸潤を認むること多く膿瘍の形成は 遍く稀に認むることあるにすぎずという.

 斯く流血中に細菌を注射して腎臓に膿瘍を形成せし める際に肝臓における膿瘍の形成は単に稀に認めらる るにすぎずとされ,その炎症性変化に関しての記載少 なし.本編においては黄色葡萄状球菌の静脈内注射に より惹起さるる肝臓と腎臓の両者の病変につき検討

す.

第2章 実験材料並びに実験方法

 使用動物は体重450〜650瓦の健康成熟海狽.使用 菌は一定菌力の黄色葡萄状球菌を用い,平板寒天培養 基24時間培養のものを採り,生理的食塩水浮遊液(1.0

cc中1白金耳とし)とし二丁脚静脈内に注射す.注 射二死直前若くは死直後解剖に附し, ホルマリン 固定染色す.

第3章 実 験成績

 剖検時腹腔内には腹膜炎症状を起せるものはなく,

肝臓,腎臓共に軽度の腫脹澗濁を認め,腎臓には肉眼 的にも認め得る小膿瘍の形成さるるものを割面に,稀 に被膜下に見る.注射せる球菌の量が3白金耳以上な る時には15時間以内に(注射後)死亡,鏡検上膿瘍形 成を認めること少なし.又注射菌量0.25白金耳以下 なる時には死に至らざること多くゲこの際も亦明瞭な る膿瘍の形成不確実なる場合多し.よって3白金耳よ り0.25白金耳の間のものを本実験においては確実な る膿瘍形成の量とし,この間の所見を以下注射菌量を

変えて各群に分けて記載す.

 1)第1群3白金耳注射せる場合

 肝臓:各例共に最も著明なる変化は肝細胞の高度 の退行変性,壊死像及び出血なり.即ち肝細胞の原形 質の染色一様ならず.又原形質の空胞形成著明に見ら れ,核質の変性,染色悪しきもの,更に最早や全く核 を失えるもの,又所々に肝細胞の無核となり細胞の境 界も不明瞭となりて壊死像を呈せるもの一群となり散 見さる.海狽第252号においては斯かる肝細胞の壊死 して一塊となれるものに小円形細胞の浸潤軽度に認め られ,膿瘍形成への過程を示す像認めらる.又本例に おいても他の例と同様所4小出高冷を見る.又他の例 においても血管周囲等に白血球の浸潤認めらるるも,

膿瘍の形成されしものは見られず.

 腎臓=各階共に一般に充血著明に現われ,且つ所 々小出血像散在す。糸毬体は一般に細胞数多し.且つ

強く腫脹して細胞間隙もなく, ボーマン ,氏嚢との

境の間隙も全くなき迄に腫脹せるもの多く,中には又 上皮細胞の壊死せるもの或いは著明に小円形細胞の浸 潤を来たせるもの数個宛散見さるること常なり.細尿 管上皮細胞も亦退行変性強く,澗濁腫脹し,膨大とな れるものあり,又壊死上皮細胞の脱落剥離せるものを 以て管腔が閉鎖されているもの多し.小円形細胞,白 血球の浸潤は皮髄境界部,皮質部,髄質部等至る所散 在性に見らるるも,海狽第250号においては特に浸潤 強く現われ,皮,髄両部に亘り ヘンレー 氏蹄係に 沿い白血球浸潤特に著明に見られ,且つそれが膿瘍の 如く限局せずして更に周囲組織へ拡大せんとする傾向 認あらる.しかし本俸においても亦腎臓の他の部にお いては特に皮質部,心髄境界部等には中心部に球菌栓 塞を有せる小引脹の形成を見ること他の例と同様な

り.

 その他の臓器・脾臓には膿瘍の形成は認められざ るも充血一般に強く認めらる.肺臓並びに心臓には軽 度の小出血温並びに小円島細胞の浸潤所々に見られ,

心臓においては各例とも心筋内に小膿瘍の形成せるも の数個宛散見され,その中心部には球菌の栓塞せるも の或いは更に血管壁を破り周囲へ拡がらんとする像を

【60】

(3)

認む.肺臓における限局性の著明なる白血球浸潤は第 252号において認めらるるも,その他の例においては

斯かる著明なる浸潤は認められず.

海狸第250号(第1群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

充 血 強 し

中等度 軽 度

出 血

小出血像あり

中等度

軽度

変 性 壊 死

強 ・し

軽度

強 し

軽度

な し

浸潤

中等度 強 し 中等度

軽度

膿瘍形成

な し

切片中2〜3

〃   3〜4

な し

菌 栓塞

切片中1〜2

〃   7〜8

〃   3〜4 な し

死に至

る時間

15時間

海猿第251号(第1群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

強 し

軽 度

小出物像あり

軽 度 な し

強 増 強 し 軽 度

強 し

な し

中等剛 強 引 当 度

な し

切片中4〜5

〃   2〜3

な し

切片中1

〃   5〜6

〃   3〜4

〃   1

15時間

海幽草252号(第1群)

肝臓 腎臓 心臓

翠煙

強 し

小出血像あり

中等度

強度

軽度

強 度

な し

軽度

中等度 強 し

中等度

形成過程にあ るもの2〜3

切片中5〜6

〃   3〜4

〃   1

切片中工

〃   5〜6

〃   3

な し

20時間

 2)第2群2白金耳注射せる場合

 肝臓:何れも一般に充血著明に現われ所々に小出 血像を各視野毎に認む.肝細胞の強き退行変性も到る 所に見られ,原形質の空胞形成,核の強き退行変性,

更に所々集団的に肝細胞の核を失いて一・塊となれるも のを散在性に認む.又小円形細細の浸潤は特に血管周 囲に常に著明に見らる.海蜷第258号においては所々 散在性に小出心像を認めると同時に肝細胞の退行変性 も亦強く見られ,肝細胞の最早や核を失いて一塊とな りて細胞境界も認められざるものに小円形細胞の浸潤 を軽度に認め,膿瘍を形成せんとする像を所々認む.

本例においては腎臓においては既に肉眼にて見得る明 瞭な膿瘍の形成されしものを認めるも,肝臓における ものは小円形細胞の浸潤も未だ軽度にして膿瘍形成へ の過程を示すものと思わる.

 腎臓;上例共に所々に小出血像認められ,且つ一 般に充血著明なり.上皮細胞の壊死像も亦よく見られ 特に曲細尿管部においては著明に認めらる.白血球浸 潤は何れも強く現われ皮質部特に糸毬体を中心とせる もの多く,海狽第256号,第258号においては特に斯 かる浸潤著明に認みられ同時に丸心毬体内における球 菌の栓塞iせるもの,或いは更に球菌の集乱せるものが

ボーマン 氏華甲に充満し,或いは更に嚢外に出で んとせる像が本群においては最も数多く見らる.又そ の小円形細胞の浸潤著明にして糸毬体は最早や全く破 壊されて原形を失い,僅かにその存在を想像さるるに すぎず,強き白血球浸潤に覆われしもの,或いは更に 周囲組織へ浸:潤拡大して明瞭なる膿瘍を形成せるもの 等,膿蕩形成への過程を示せる像を認む.又海狽第 256号においては髄質部及び ヘンレー 氏蹄係にお ける浸潤特に強く現われ,その浸潤も膿瘍におけるが 如く周囲組織との境界も明瞭でなく,更に周囲へ小円 形細胞浸潤拡大せんとし比較的広範に亘れる浸潤認め らる.而して本例においては腎臓他部においては膿瘍 の形成も認めらるるも,斯かる浸潤の方が特に著明に 見らる.

 その他の臓器:心臓には何れも充血,並びに小出 血像の散在せるを常に認む.且つ心筋内にも毎常白血 球の浸潤及び小膿瘍の形成されるものを数個宛認め,

且つこれらの中心には大抵球菌の栓塞せるを認む,肺

臓にも亦常に充血並びに小出血像を認め,且つ軽度の

浸潤を見る.海狽第256号,第257号においては著明

に現局性の白血球の浸潤せるを認むるも未だ膿瘍形成

せるもは認められず.

(4)

海三二256号(第2群)

肝臓 腎臓

心臓

肺臓

充血 強 し

中等度

出 血

強し小出血温あり

軽度

し中等度

変 性 壊 死 面 し

軽 度

強度

な し

浸 潤

中等度

強 し

中等度

強 し

膿瘍形成

な し

切片中2〜3

〃   3〜4

な し

菌 栓 塞 な し

切片中5〜6

〃   3〜4

〃   1〜2

死に至 る時間 15時間

海瞑第257号(第2群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

強 し

中等度

軽度

強し小出血像あり

軽 度

中等度

中等度

強度 軽度

中等度

強 し

な し

中等年

強 し

中等度

強 し

な し

切片中4〜5

〃   3〜4

な し

切片中1〜2

〃   5〜6

〃   3〜4

な し

20時間

海狽第258号(第2群)

肝臓

腎臓 心臓 肺臓

強 し

中等度

強し小出血像あり

軽 度

強 し

な し

軽度 強度

強 し

な し

中等四

強 し

中等度

な し

(謄羅甥程/

切片中1〜2

〃   2〜3

な し

切片中1〜2

〃   5〜6

〃   2〜3

〃   1

24時間

 3)第3群1白金耳注射せる場合

 肝臓:最も著明に認めらるるのは何れの例におい ても肝臓内至る所の小出三襟にして,海狽第262号に おいては特に著明にして右葉の一部には比較的広範囲 に亘れる出血像認めらる.肝細胞の退行変性,壊死像 も前回同様著明に認められ,血管周囲,周辺部におけ る白血球浸潤は海膨第263号においては軽度にして,

その他の例においては著明に認めらるるも,膿瘍の形 成或いは膿瘍形成過程と思わるるが如き像は認められ

ず,

 腎臓:何れも小出血像至る所に著明に認められ,

皮質工特に糸毬体並びに糸毬体周囲の細胞浸潤が毎常 著明に認めらる.その浸潤の高度なるものは既に糸毬 体全く破壊され,肉眼にても認め得る膿瘍を形成せる ものあり,且つこれらの中心部には殆んど常に球菌の 集籏せるを認む.海馬第263号においては斯かる膿瘍 形成への過程を示せるものがよく見られ,海狽第261 号,第262号においては更に最早や明瞭なる膿瘍とし て認められ,然も斯かる糸十体を中心として起れりと 思わるるものよく認めらる.その他の部においても糸 毬体の多くのものは小円形細胞の浸潤著明なるか細胞 数多し,又髄質部においても散在性に白血球の浸:潤限 局性に認められ,海田第262号においては ヘンレ

ー £綷Wに沿い特に強き浸潤の認めらる部あるも他 の例においては斯かる広範なるものは見られず.細尿

管上皮細胞の退行変性,像死像も亦何れの例において も著明に認められ,管腔内に剥離し或いは脱落して壊 死上皮細胞にて管腔の閉鎖されしもの常に数個散在性 に認めらる.

 その他の臓器:心臓においては各県とも心筋内に 軽度の小出血認めらる.層塔第262号においては強き 白血球浸潤を伴わざる球菌の栓塞せるもの心筋内に散 在性に多数認められ,又少数のものは浸潤強く現われ 小膿瘍を形成せるものあり.海狽第261号,第263号 においては更に浸潤強く現われ斯かる菌栓塞の周囲に は小円形細胞の浸潤を著明に伴いて膿瘍を形成せるも の数個宛心筋内に散在性に見られ,肺臓においては何 れも充血著明にして小出血像軽度に認められ,海狽第 262号においては限局性の強き白血球浸潤認められ,

膿瘍形成せるを見るも,他の例においては斯かる著明 なる限局性の白血球の浸潤は認められず.

 4)第4群0.5白金薬注射せる場合

 肝臓:各例とも小出血像処々に散見さるるも,何 れも前回に比し軽度なり.肝細胞の高度の退行変性強 く現われ核の染色悪しきもの,更に核を失い壊死せる もの,更にこれらの肝細胞の壊死せるもの一塊となり 細胞境界不明となれるものが散在性に各面とも見られ る. グリソン 氏鞘附近.小葉周辺部,血管周囲等 における白血球浸潤,旧例とも著明に認めらるるも膿 瘍の形成されしものは認められず.唯海台第268号に

【62】

(5)

海狽第261号(第3群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

充 血 中三度 強 し

出 血

軽 度

中等度 軽 度

変 性 強 度 強 し

軽度

な し

壊 死

中三度

強 度

な し

浸 潤

中等度 強 し

強度

中等度

膿瘍形成

な し

切片中2〜3

〃   2〜3

な し

菌 栓 塞 切片中1

〃   2〜3

〃   2〜3 な し

死に至

る時間

24時間

海狽第262号(第3群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

強 し

中等度

強 し

軽 度

強 度

な し

中等度 強 し 中等度

強 し

な し

切片中2〜3

〃   2〜3

〃   1

切片中1〜2

〃   5

〃   3〜4

〃   1

36時間

海狽:第263号(第3群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

し 軽 度

中等度

強 し

な し

軽度

中等度

な し

軽 度

強 し 中等度

な  し

切片中2〜3

〃   4〜5

な し

切片中i

〃   5〜6 ケ   4〜5 な し

40時間

おいて上記壊死肝細胞群の一塊となれるもの特に著明 に認めらるるも,小円形細胞,白血球の浸潤極く軽度 にして膿瘍形成への過程に到らず.

 腎臓=平場体上皮細胞,細尿管上皮細胞の高度の 退行変性,壊死像何れも著明に認めらる.又糸毬体を 申心とせる小円形細胞の強き浸潤,更に,これを中心と して起れる膿瘍の形成されしもの数多く認められ,こ れらの中心部には球菌の栓塞集即せるを認むること多

し.又皮質部の斯かる白血球浸潤に比し少数なるも,

髄質部においても同様に円形の膿瘍形成されしもの,

或いは線状の膿瘍にしてその中心部に細尿管腔を球菌 にて充満せるものを有する像認めらる.而して斯かる 膿瘍の形成は海郷軍268号においては最も数多く見ら れ,本例においては広範に亘る浸潤は認められずし て,各切片毎に皮質部,皮髄境界部,獅噛部に近く周 囲健康部との境界明瞭なる小膿瘍の形成されしもの5

海狽第267号(第4群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

充 血 強 し

中等度

中等度 軽 度

変 性 強 し

な し

軽度

壊 死 出 度

な し

浸 潤

中等度 強 し 中等度

膿瘍形成

な し

切片中1〜2

〃   2〜3 な し

菌 栓 塞

な し

切片中3〜4

ケ   2〜3 な し

死に至

る時間

24時間

海瞑第268号(第4群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

強 し

中等度

中等春 光 し 軽 度

中等列強

強 し

な し

中等度 強 し

軽 度:

な し

切片中5〜6

〃   2〜3

な し

切片中1

〃   7〜8    2〜3 な し

40時間

海狽第269号(第4群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

強 し

中等四 強 し

軽度

強 し 軽 度

強 度

な し

軽 度

強 し 中等度

な し

切片中2〜3

〃   2〜3

な  し

切片中1

〃   4〜5

〃   2〜3 な し

48時間

(6)

〜6個塩池切片毎に見らる,小出血像も各例話に所々 散見さる.

 その他の臓器:各例共に心臓並びに肺臓における 細胞浸潤認めらる.心臓における膿瘍の形成は腎臓の それに比し浸潤軽度なるもの多く,且つ何れもその中 心部に球菌の栓塞せるを認む.肺臓における膿蕩の形 成は海猿第267号において強き浸潤認められ,膿瘍形 成への過程を思わしむるものあるも,その他の例にお いては膿瘍の形成せるものは認あられず.出血は各例

共に軽度に認あらる・

 5)第5群0.25白金耳注射せる場合

 肝臓:何れも一般に充血著明に認められ,且つ所 々小出血像の散在せるを見る.肝細胞の退行変性も高 度に現われ, グリソン 氏鞘附近,血管周囲におけ る白血球の浸潤も毎常何れも著明に見られる.海晶晶 273号,第274号においては壊死細胞群の一塊となれ るものが所々に散見され,第274号においては更に斯 かる壊死,肝細胞の周囲に小円形細胞軽度に浸潤し膿 蕩形成せんとする傾向認めらる。第272号においては 斯かる著明なる変化は認められず.

 腎臓: 何れも一般に充血著明にして小出血像散見

さる.白血球浸潤は糸連体を中心として皮質部におけ るもの一般に多く見られるも,皮髄境界部,髄質部に も所4散在性に限局性の浸潤認めらる.海狽第272号 第273号においては皮質部における糸毬体内の球菌の 栓塞及びこれを中心とせる小円形細胞の浸潤多く見ら れ,同時に皮髄境界部より乳三部に近く小膿瘍の形成

されしものを数個宛認めらる.馬肉瞑第274号におい ては膿瘍の形成更に進行し,数も多くなり,腎臓全般 に亘り肉眼にて明らかに認め得る膿瘍の形成散在性に 認めらる.上皮細胞の退行変性は何れの例においても

著明に認めらる.

 その他の臓器:心臓,肺臓共に何れの例において も充血強く血管怒張し,且つ諸所に小出油画を認む.

心筋内における白血球の浸潤も何れも毎常認められ,

その多くのものは限局性の浸潤の中心部に球菌の栓塞 集籏せるを認め,海狽第274号においては斯かる膿瘍 の形成:最も著明に見られ,心筋内に散在性に3乃至4 個宛各切片毎に認めらる.肺臓における白血球の浸潤 は十日第273号においては比較的軽度にして,その他 の例においては著明に認めらるるも,膿瘍の形成され

しものは認あられず.

海瞑第272号(第5群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

充 血

忌 し

中等度

強 し

出 血

中等度 軽 度

強度

変 性 強 し

な し

軽 度

壊 死 申等一 二 度

な し

浸 潤 中等度 強 し 中等度

膿瘍形成

な し

切片中2〜3

〃   2〜3

な し

菌 栓 塞i

な し

切片中5〜6

〃   2〜3

〃   1

死に至

る時間

24時間

海狽第273号(第5群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

強 し

中等度

中等度

軽度

な し

強 し

な し

強 度

な し

中等度

強 し

軽度

な し

切片中2〜3

〃   2

な し

切片中1〜2

〃   4〜5

〃   3〜4

な し

64時間

海狽第274号(第5群)

肝臓 腎臓 心臓 肺臓

強 し

中等度

強 し 中等軽 軽 度

強度

な し

強度

な し

中等度

強 し

中等度

軽度

なし(形成過程 にあるものあの

切片中3〜4

〃   2〜3

な し

な し

切片中7〜8

〃   2〜3

な し

48時間

第4章 総括並びに考案

以上海狽に実験的に菌血症を起せる場合を綜合する に,葡萄状球菌の注射量大量にして3白金耳以上なる

【64】

(7)

時は,白血球の浸潤,膿瘍の形成等炎症性変化著明な らず,むしろ細菌の毒素による中毒の結果ともいうべ く,肝臓並びに腎臓においては出血,退行変性等広範 囲高度に認めらる.而して注射球菌量比較的少なき場 合においてはこれら退行変性は広範に亘らず且つ軽度 となり,出血も軽度となりて細胞浸潤,膿瘍形成等の 炎症性変化は逆に反って強く認めらる.細菌の毒力に 関してはHertzlerは葡萄状球菌による腎臓炎並びに 腎孟炎の原因を細菌梗塞に求め,この際球菌の耐力が 余りに弱い時は腎臓には膿瘍を作らずして単に腎孟炎 の症状のみが見られ,又余りに球菌の応力が強いか又 は注射球菌の量が余りに多量なる時は,注射後数時間 は敗血症の中毒症状の状態となり限局病巣は認められ ず.腎臓は急性中毒症の状態となる.そして葡萄状球 菌より分泌された毒素は血管壁の上皮細胞を障碍する

という.

 又流血中に注射されたる細菌の尿中への排出に関し て,Koch, Orthは速きものは注射後数分にして尿中 に菌が証明されるといい,腎臓における病変も5時間 後には鏡検上認められ,注射後9〜12時閥においては 毎常に,注射後亙8時間においては炎症性所見が見られ

ると同時に球菌による限局病竃を認むといえり.又細 菌の血中より尿への排出に関してOrthは細菌は細尿 管の中へ血中より直接に排泄され従って皮質部はこれ に関与せずといい,これに反してGerhard, Domagk u.C. Neuhausは流血中に注射されたる細菌は先ず毛 細血管内被細胞を犯し糸毬体の内被細胞に喰菌現象の 像を認めるという.即ちこれにより惹起さるる腎臓に おける病変は糸毬体腎炎の像を呈するのが普通である といい,更に異種蛋白体による腎臓障碍は細尿管性腎 炎が主として起り,これに軽度の糸面体腎炎を併発す る程度なるも,菌血症により障碍を起す時には糸温温 の方の変化が強く,細尿管の方の変化はこれよりも軽 度であるのが普通であるという.

 又M・C.Emeryは動物実験において腎臓の血管を 圧迫することにより腎臓に貧血を起さしめその時間が 30分乃至90分に及ぶ時は,糸面体,細尿管の周囲に白 血球の浸潤現われ,更に糸三体炎より膿瘍形成されし 像を認める点より流血中の細菌により起る腎臓障碍 は,細菌の毒素により腎臓血管の痙攣を起しそれによ り限局性貧:血を惹起し次いで糸毬体腎炎或いは腎臓膿 瘍を造るならんという.又」.Kochは糸屍体の血管 網に達せる細菌は融雪体の innere Blatt (Syncy一

tium)を通過し,頸部へ通り曲論尿管腔に達するも.

この際は局所の炎症性変化,化膿は起さないが,もし も壊死上皮細胞,円柱等が細尿管腔にあればそれに細 菌が附着してこれを培養基として膿蕩を造る.即ち排 泄性腎炎を惹起するなりという.又A.Mむ11erは動 物実験において実験的に膀胱炎を起し更にこれより腎 孟,腎臓,髄質部,更に腎臓,皮質部に迄も上行性に 膿瘍の形成されしを認めりという.しかし何れも動物 実験においてもこれらのものが細部に亘り区別さるる のは困難なる場合多く,転移性膿瘍と排泄性膿瘍とは

混在している方が多しという.J. K:ochは又葡萄状球

菌による実験的菌血症により腎臓膿瘍を惹起せしむる 時,球菌の毒力強き時は皮質部における転移性膿瘍の 形成が認められ,迫力弱き時は髄質部における排泄性 膿瘍の形成の方多く見られるという.本実験において も両者の典型的なるものも認めらるるも,葡萄状球菌 の注射量比較的少量なる第5群においては髄質部にお ける所謂排泄性膿瘍の形成されしものも認めらるる も,その他の場合においては皮質部,皮髄境界部にお ける菌梗塞による転移性膿瘍形成の方が多く認められ る.画廊臓器における変化としてはOrth, Hertzler は肺臓における毛細血管内被細胞の喰菌現象の像,或 いは心臓における心嚢炎.心筋内の膿蕩形成が毎常見 られるといい,Cavazaniは肝臓においては血管周囲 の浸潤肝細胞の退行変性等を認むという.Wysso・

kowitchは家兎の実験で死後腎臓,脾臓,肝臓,骨

髄,血液の順に流血中に注射せる細菌を認めりとい

う.次いで今回の実験における各臓器の球菌の栓塞或

いは球菌による限局病母について見るに,菌集籏の像

は腎臓において最も著明に見られ,次いで心筋内にも

毎日認めらるるも腎臓のそれに比し数は少なし.肝

臓,肺臓に至りては腎臓,心臓のそれに比し遙かに少

なし.色弱臓器における膿瘍の形成を見るに今回の実

験においては黄色葡萄状球菌の注射量が宛も膿瘍形成

を最も多く見る量,即ち3白金耳より0.25白金耳の

間の量を注射せるに,腎臓膿瘍は各群とも毎常これが

形成認められしに対し,肝臓膿瘍の形成は第1群にお

い}(海温第252号,第2群において第258号,:第5群

において第274号に夫々肝臓膿瘍形成への過程を示す

所の像認めらる,即ち12例中3例において肝臓におい

て肝細胞の壊死して一塊となれるものに,小円形細胞

浸潤を伴いて膿瘍形成への過程を示す像を認め,同時

に腎臓並びに心臓にも明瞭なる膿瘍の形成認められ,

(8)

他の9例においては腎臓膿瘍の形成は何れも認められ しも肝臓においては斯かる著明なる変化は認められ ず.即ち今回の実験においてはDyke, Cavazaniのい える如く腎臓膿瘍の形成に対し肝臓における膿瘍の形

成は比較的稀なり.

 Ham誠laenin, Artusiは実験的菌血症において球菌 の静脈内注射後6一》13時にて臓器中に浸潤並びに球菌 の排泄が認められ,菌梗塞より周囲の細尿管へ破れ或 いは周囲組織へ白血球浸潤を惹起し,次第に球菌によ る限局二二が膿瘍を形成して行くといい,その動物実 験における結果より比較的粗大なる球菌を含有せる物 質が糸二二血管網に栓塞を起すか,又は感染過程が余 りに長く続く時,始めは髄質部に病変を起すも次第に 糸三体細尿管部の毛細血管網にも球菌が固着して来る ために,皮髄境界部,髄質部,腎臓乳頭等に原発性 の限局二二を認むること多しという.今回の実験にお いて腎臓における球菌による限局病竈,膿瘍形成の状 況を見るに注射菌量比較的多量にして注射後比較的短 時間(15〜24時間)のものにおいては中毒症状の方強 く現われ球菌による限局病竈も小さく,:Kochのいえ る如く皮質部の方の変化著明に現われ,糸毬体内にお いては球菌の栓塞或いは ボウマン 氏嚢内に球菌充

満し一部は更に球菌嚢外に出でんとする一方周囲組織 に白血球の著明なる浸潤の起れる像が見られる.球菌 の注射量比較的少なくなり注射後の時間が比較的長く

(40〜48時間)なり,即ち第4群,第5群においては,

Haemaelaenin, Artusiのいえる如く皮髄境界部,髄 質部,腎乳頭における病変が著明に現わる,即ち皮髄 境界部においては血管内に球菌が充満栓塞し,更に血 管壁を破りて近くの細尿管腔周囲組織中に侵入せる像 見られ,或いは細尿管内に球菌充満し周囲に著明なる 白血球の浸潤を伴える像,或いは中心部に球菌の高温 を有し,その周囲に白血球の浸潤を伴える大なる膿瘍 の形成せるを乳頭部に見る等,皮髄境界部より髄質部 に亘りよく認めらる.心臓における膿瘍形成に関して はOrth, Hertzlerのいえる如く今回の実験において も腎臓に膿蕩形成の認められる時は毎回同時に心筋内 にも膿瘍形成が認められ,その中心部には常に球菌の 集籏せるを認む.その周囲白血球浸潤軽度なるものに おいては毛細血管内に球菌栓塞充満し周囲組織に白血 球の浸潤を伴えるもの,更に血管壁を破り球菌が周囲 組織へ拡大せんとせるもの,更に進行して中心部に球 菌の集籏を有せる大なる膿瘍の形成等種々の像認めら

る.

第5章 結

 以上三三に黄色;葡萄状球菌による実験的菌血症を起 し次の結論を得.

 1.注射せる黄色葡萄状球菌の量が余りに大量(3 白金耳以上)なる時は死亡に至る迄の時間が早くなる と共に腎臓その他の臓器においては膿瘍の形成は少な くなり細菌の毒素による中毒症状主として認めらる.

 2.膿瘍の形成は腎臓に最もよく見られ,今回の実 験においては3白金耳より0・25白金淫乱の間の量の 黄色葡萄状球菌の量を静脈内に注射せるに,毎回腎臓 における膿瘍の形成が認められると同時に心筋内にも 亦膿瘍の形成が認めらるること常なり.肝臓における 膿瘍の形成は稀にして12例の腎臓膿瘍形成を認めし内

3例において肝臓膿瘍形成過程を示す像を認めり。肺 臓における炎症性病変は上記12話中4例において,膿 蕩形成或いは強き限局性の白血球浸潤を認めり.

 3.各臓器において膿蕩形成を見る時,同時に又球 菌による栓塞,集籏の像を見る.

 4,肝臓における膿瘍形成の認めらるることは上記 の如く比較的稀なるもこれが形成を認めらるる時は同 時に肝臓他部における出血並びに肝細胞の広範且つ高 度なる退行変性認められ,同時に腎臓においては更に 強き出血像,上皮細胞の退行変性,壊死像並びに白血 球の浸潤,膿瘍形成等の病変を認む.

【66】

参照

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