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1.はじめに 磁気軸受は,磁力を制御することによってロータを非接

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Academic year: 2021

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(1)

磁気軸受のディジタル制御

野 村 健 作* 荒 井 淳 二*

(平成2年8月31日受付)

Digital Control on the Magnetic Bearing

Kensaku NoMuRA* and Junji ARAI*

(Received Augaust 31, 1990)

 For the purpose of high performance, a digital controlled magnetic bearing has been developed. The rotor levitates stably with the designed controller in substitution for the usual analog controller. As a result of analytical investigation of the digital controlled magnetic ievjtatioll system, the sampling period is found to be the controlling factor for the sta−

bility. As increasing the sampling period, it is difficult to get sufficient stability margin. The dependence of the gain con−

stant on the stiffness and the damping ratio of the magnetic levitation is investigated experimentally from the impulse response so that regulating the gain constant, the rotor can be evaded large amplitude vibration caused the induced vibration.

1.はじめに

 磁気軸受は,磁力を制御することによってロータを非接 触で支持しているため,エネルギー損失がほとんどなく,

工作機械のスピンドルやターボ分子ポンプなどの高速回転 用の軸受として利用されたり,潤滑を必要としないため真 空中とかクリーン性を必要とする場所といった特殊環境下 での利用が可能である。たとえば,人工衛星の姿勢制御用 磁気軸受フライホイール1)など航空宇宙機器の分野ですで に実用化されていることなど,近年徐々にその用途を拡大 している。

 また最近では,高速A/D変換器,高速CPUといった 制御用機器の発展はめざましく,高速制御が要求される磁 気軸受の制御にも,従来のアナログ制御に代わり,ディジ タル方式が使われてきている。2) 3)ディジタル制御では,

ソフトウェア如何によって適応制御や学習制御などの制御 が容易に実現できると言われているが,現状では,磁気軸 受の分野においてこれら高度な制御を適用している例はみ あたらない。磁気軸受にディジタル制御を適用するれば,

軸受系の状態を監視しながら,常に安定かつ適切な制御が できる可能性があるが,アナログ制御方式では考えなくて

もよい,A/D変換器の変換時間, CPUの演算時間など で決められるサンプリング周期が安定性に大きく影響する ことに注意しなければならない。とくに,高速回転を本領 とする磁気軸受の制御では,重要な問題である。

 本報では,従来のアナログ制御に代替したディジタル制 御を磁気軸受に導入し,サンプリング周期と安定領域の関 係について検討する。また,CPUの持つ制御定数を変化 させることによってロータの動特性がどのように変化する かを検討した。

* 機械工学科

2.制御装置の構成

 2.1 装置の概略

 試作した装置の概略をFig.1に示す。また,主な装置の 諸元をTable.1に示す。本装置は,ロータの軸方向の磁 気吸引力のみを制御する最も基本的な構成からなり,ロー

タの変位信号をA/D変換器を介してCPUへ入力し,処 理した後,D/A変換器を介して電磁石へ出力し,ロータ を非接触で支持する装置である。A/D変換器, D/A変換 器,CPUを取り除き位相進み回路の制御定数を調整すれ ば,これらがなくてもロータを磁気浮揚させることが可能 であるが,実験では,これらアナログ部を調整することな く,CPUでの処理方法のみによるロータの動特性に対す る依存性を調べた。

(2)

Light Source

Amptifier

  D/A

Converter

Etectro一 rnagnet

Phcto Transistor i[lil.:・r

Phase Lead  Circuit

 「A/D CorTverter

Recorder

Personal Computer    (CPU)

Fig.1 Experimental apparatus

Table.1 Values of the physical quantities

Rotor:

Magnet coil:

Air gap

Force characteristics:

A/D converter:

DIA converter:

Gain of amplifier Phase lead circuit:

CPU:

Mass Resistance Inductance

   dF Kx二

  dFKi=

M =O.077

R =91 .5

L =O.526 xo =6

  ==269.7 i=io

x=xo=7.479 8 82.5 8 6

職+K、薯)一475・(1+・.8・6×1・一・薯)

IC clock

8086,8087 8

㎏ΩH

mm N/m

N/A

bit pts/byte bit

MHz

 2.2 解析

 試作した装置のブロック線図をFig.2に示す。 A/D変 換器はサンプラーに,D/A変換器は0次ホールド回路と

して示し.ス4)。Gcは, CPUの持つ伝達関数であり,

Fig.3(a),(b>,(c)の3通りの伝達関数を考案した。(a)は零点

a,b,cと極03つを加えるように設計したが,実際の処 理では,過去の入力値4つから比例値,微分値を求める PD制御である。(b)は(a)に積分要素を加えたPID制御で あり,ロータは指定したギャップのところで浮揚する。(c)

は(a)に積分要素を含む正帰還を加えたものであり,ロータ は指定した吸引力と自重が釣り合う位置を自動的に捜しだ し,浮揚する。この方法は,永久磁石と制御コイルを組み 合わせた磁気軸受において,浮上電力低減のための方法と

してよく知られているVZP(Virtually Zero Power)方 式の伝達関数に代替している。計算では,これら3つのど の方法においても演算時間を考えて分母の次数を1つ上げ ておいた。

 Fig. 4に制御系全体の根軌跡を示す。図示したものは,

GcにPDコントローラを用いた場合の根軌跡であり,軌 跡は全部で7本ある。この場合,安定性に対して支配的な のは,Z=1近傍にある3本の軌跡であり,安定な範囲は,

単位円の外側にある極からスタートする軌跡が内側に入っ てから,隣の2本の軌跡が単位円の外側に出るまでである。

PIDおよびVZPの場合にはZ ==1近傍にもう一本の軌 跡が加わるが安定範囲については同様の言い方ができる。

 安定領域は,Gcを適切に設計すれば広がる可能性はあ

(3)

r十i ! AIO

Gc cPU

巻(1−esT)

DIA

Kl し5十R

Coit

 tMs2−KX Rotor

Ks(Kp+Kds)

Senser

Fig. 2 Block diagram of the magnetic levitation system

κc《z−qXz−bXz−c)

z

(a) PDcompensation

Kcくz−aXz−b)Cz鴨。)

  z5

Zロ1

(b) PID compensatton

K−c.(z−r−aXz−bXz−c

  z

一1.5 一〇.5

tm

l.5

i.o

O.5

Gc一一・Kcgut−O・99)(z+t)2

Unstable Stable

Re

一1,0 o

Fig.4 Root locus

O.5 i.o t.5

(C) VZP compen$atlon

Fig. 3 Biock diagram of the CPU

るが,本質的に広げるための要因の1つにサンプリング周 期がある。このサンプリング周期と安定領域の関係を Juryの安定判別法5)を用いて計算した結果をFig. 5に示 す。サンプリング周期を長くするとゲイン定数の可変範囲 が急激に狭くなっていることがわかる。したがって,演算 時間のかかる複雑な処理をするほど融通がきかず,繊細な 調整ができなくなることが予想できる。本装置におけるサ ンプリング周期は0.76msである。ただし,1サンプルご とに制御に必要な演算時間でけでなく,ロータを浮揚させ たまま調整ができるようにキーボードからの入力状態を確

認するための時問と可視化のため入力値と出力値を VRAMに書き込むための時間を含んでいる。

50

O    Q    O4    3    2

  ︵1︾ O>層 一にO↑切OO⊆一〇〇

0

Stabje

  z一{駒99 曹1}2 GG雷KC  Z4

UnstabJe

O,O O.2 O.4 O.6 O.8 t.O t.2 S.4 t.6       Sampling period T tms)

Fig. 5 Stable and unstable regions in the Kc T plane

(4)

3.実 験 結 果

 実験では,考案した3つのCPUの伝達関数の内どれで 制御を行っても安定にロータを浮揚させることができるこ とを確認した。そこで,ロータの動特性を実測するため,

ロータ下端をガラス玉で打撃し記録した波形から,剛性お よび減衰比を推定した。波形の一例をFig. 6に示す。縦軸 は,A/D変換器から入力した数値である。 Fig,7は,波 形処理して推定した剛性および減衰比であり,Gcは図示 する通りPDコントローラを用いたときの結果である。ゲ イン定数は,6 一11の範囲で変化させたが,ロータを浮揚 させることができる範囲はこれより若干広くFig.5に示さ れる結果に一致する。ゲイン定数の増加にともない剛性は 高まり,減衰比は減少する傾向を示しているが,この傾向 は3通りのGcたよらず同様の傾向を示す。この結果は,

CPUのゲイン定数のみによる依存性を示しているので,

図示される範囲においてロータの動特性をソフトウェアに よって自由に調整できることを示している。

 つぎに,ロータに連続な励振力を加えるため,ロータ下 部にもう1つの電磁石を設置し周期的電磁力を加える実験

を行った。Fig,8にその結果を示す。横軸は励振力の周波 数,縦軸はロータの振動振幅を示している。ゲイン定数 Kcは,5,10の2通りとし,周波数特性を実測した結果,

Kc=5の場合, Kc=10と比較して剛性が低いため低周 波の励振力に対し応答しやすく大振幅で振動している。一 方,Kc=10の場合は,剛性が高い.ため低周波では振動し にくいが,20Hz近傍で共振し大振幅の振動をしているこ とがわかる。いずれの場合にも30Hz以上の高周波の励振 力に対しては,ほとんど応答せず滑らかに浮揚しているが,

それよりも低周波側では周波数によって大振幅で振動して しまう範囲がある。

 通常,磁気軸受には磁極同士が接触しないように非常用

60

      0

﹂oヒoOξ〇三︒く

一60

5(̲    =:縮評

    、、      , 一一噺、

N J.t

  一

、噛  噛一 一r 一

  50rns

Time

Fig.6 lmpulse response

xto2

25

20

15

10

(い

A∈︺OのO=﹂と↑の

5

o e

o o

e  e o

.一〇

o

     2

Gc=Kcmp

●  ●一ゆ

e

t.o

O導O﹂O仁一αβ一〇〇

8      6Q    q

O.4

02

0678910目1215.14

      Gqfn constant

o.o

Fig. 7 Effect of the gain constant on the stifffiess and the

    damping ratio

の軸受が設置されているが,磁気軸受本来の性能を十分に 発揮させるためにもロータと非常用軸受との接触も避ける べきである。しかしながら,設計時において大振幅で振動 するロtタの変位を見積もることは難しく,予想以上の振 幅で振動してしまうこともある6)。

 本研究では,実験によってFig.8に示されるような結果

一50

       O       O

       d︵書︾↑毎ε80す切δ

一150

 t

.....腕/號

・ ・・・…oc・

         曳●.

         90e

  10

Frequency (Hz)

Fig.8 Frequency response

100

(5)

芒Φ∈Φ8吾δ

Kc=IO Kc35 Kc=io

ll⊥一d

Time

Fig. 9 Profile of the displacement signal

が得られたので,励振力に対し軸受剛性を適切に変化させ ることによって大振幅の振動を回避させることを考えた。

実際のCPU内の処理では, u一タの振動周波数を計算さ せることは複雑な演算を要し,計算時間もかかることが予 想されるので,CPUへ入力される数値に対して敷居値を 設け,入力値がそれを越えた時ゲイン定数を変化させるこ とにした。Fig. 9にその処理をcpuに加え, m一タの振 動波形を記録した例を示す。左側から励振力の周波数を 徐々に高め,振幅が大きくなり始めたところで自動的にゲ

イン定数がKc=10からKc=5に変わり,剛性が低くなっ たために振幅が小さくなっていることがわかる。さらに右 側は,今度は徐々に励振力の周波数を低くしていき振幅が 大きくなりはじめたところで自動的に剛性が変わり振幅が 小さくなったところを記録した例である。励振力の周波数 は,DC〜25Hzの範囲で変動させたが,この範囲におい ては,ゲイン定数を自動的に変えることによって,図示さ れるようにロータが大振幅で振動することを回避できるこ

とを確認した。

4.実験に関するメモ

 試作した実験装置について気付いたことおよび今後の課 題について以下に列記する。

1)電磁石について

  電流応答の時定数が大きく制御しにくい。また,長時  間連続して運転しているとかなりの熱をもち特性が変  わってくるが解析においてこれを考慮していない。

 Table,1に示した値は,運転前の値である。永久磁石と  の組合せでVZP方式の制御を行えばこの問題は解消で  きる。

2)位相進み回路について

  ロータの変位信号はこの回路を通ってCPUへ入力さ  れるのでCPU内でロ一目の状況を理解しにくい。

3)制御方法について

  大振幅の振動を回避するためにゲイン定数を変化させ  たが,瞬時に変えているため衝撃的に操作量が変わる。

 コイルの電流応答の速いものを使うと影響がでてくる可

能性がある。滑らかにゲイン定数を変化させる必要があ

 る。

4)その他

  ロータの磁極と電磁石の磁極とのギャップが,実用化 されている磁気軸受のそれと比較して1オーダー大き

 い。

  CPUの演算時間に制限があるため,高速プロセッサ を用いないとソフトウェアによって制御方式を拡張しに

 くい。

5.結

 ロータの軸方向の磁気吸引力をディジタル制御しロ心当 を浮揚させた。さらにロータの動特性を衝撃試験により実 測し,連続な励振力によるロータの振動について検討した 結果,次のような結論を得た。

1)磁気軸受のアナログ制御において使われるPD,

  PID,VZP方式の信号処理に代替した演算を

  CPUに行わせるディジタル制御を磁気軸受に導入し   た結果,どの方式を用いてもロータを安定に浮揚させ   ることができた。

2)安定領域は,CPUの演算時間を含むサンプリング周   期によっても大きく影響され,複雑な演算をさせて時   間がかかる場合は注意しなければならない。

3)CPUのゲイン定数を自動的に変化させることによっ   てロータの動特性を変化させれば,連続な励振力に対   してロー一一タが大振幅で振動することを回避できた。

 なお,本研究は,平成元年度特定研究経費の予算措置に よって実施した研究の一部である。

参 考 文 献

1)村上 力;計測と制御,23−1,(1984),1090 2)永井文秀 外2名;日本機械学会論文集,54−501,

  (H召63−5), 1090

3)久谷益士郎 外2名;日本機械学会論文集,51−465,

  (日召60−5), 1095

4)高木章二;ディジタル制御入門,(昭63−3),16

(6)

5)B.C. Kuo著・古田勝久,中野道雄監訳;ディジタル  制御システム,上巻,(1984−4),242

6)稲見昭一外2名

  (田召63−12), 3015

日本機械学会論文集,54−508、

参照

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