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「市場移行と平和」プロジェクトを閉じるにあたって

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Academic year: 2021

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(1)

「市場移行と平和」プロジェクトを閉じるにあたって

著者 中山 弘正

雑誌名 PRIME = プライム

号 23

ページ 23‑24

発行年 2006‑03

URL http://hdl.handle.net/10723/606

(2)

1.

「市場移行と平和」 というタイトルでプロジェ クトを開始したときの問題意識はざっと以下のよ うであった。 米ソ核対峙という冷戦構造が一応終 焉したが、 それまで基本的に資本主義を否定して きたソ連及びその陣営の諸国は 「市場移行」 とい う状態に入っていく。 しかし、 すでにユーゴスラ ヴィア連邦の崩壊が激しい内戦や、 外部勢力との 戦争を経験したように、 「市場移行」 は現実には

「移行」 という言葉が示唆するほど平穏なもので はなくて、 「戦争と平和」 という厳しい状況を経 験しつつしかあり得ないのではないのか。 だとす ると、 広く、 旧社会主義諸国や、 また現代社会主 義諸国でも 「戦争と平和」 の問題と絡ませ合いな がら、 ポスト冷戦期の動向を研究していかなけれ ばならないのではないか、 というものであった。

むろん、 研究自体は毎回、 直接に 「戦争と平和」

を扱ったわけではなく、 関係諸国の財政や金融、

また工業・農業・商業等々といった関連部分を、

それもいろいろな角度からテーマにしつつ行われ ていた。 むろん、 軍事のことも兵制のことも取り 扱われたけれども、 実際のテーマがその都度相当 拡散したものになることは避けられなかった。

しかし、 旧ソ連邦期からのロシア研究がひとつ の核となりつつ、 東欧諸国からアジア (中国、 北 朝鮮、 ヴェトナム)、 中南米 (キューバ等) と地 域的にも相当の広がりを持った研究で、 プロジェ クトの核心に迫るべく努力がなされたことは、 そ

れぞれが上記の事柄の一端の研究に何ほどかのも のを残したことであったと一応いい得るであろう。

2.

しかし、 ここに来て2、 3のことから 「市場移 行と平和」 プロジェクトは一応の締め括りをした 方が良いのではないのか、 と考えられるようになっ てきた。

第一には、 いわゆる 「市場移行」 については、

これを 「新しい階級形成闘争」 (岩田昌征氏) と 捉えるにせよ、 そうでないにせよ、 ともかく旧東 欧社会主義諸国をはじめ、 旧ソ連の諸国にせよ、

ほぼ一段落して、 要するに 「移行」 の時代は終わっ た、 という見方が有力になってきたからである。

実際、 ポーランド、 チェコ、 スロヴァキア、 ハン ガリー、 スロヴェニア、 バルト諸国など、 2004年 5月には EU そのものに迎え入れられることにな るまでに到達した。 むろん、 中国、 ヴェトナムな どを見る限り、 まだ 「移行」 の途中ともいえなく ないが、 ともかく、 1990年代の初め頃の状況とは 全体的に変貌してきたことも事実であり、 「市場 移行」 という点にこだわり続けることの意味が著 しく小さくなってしまった、 のである。

第二には、 2001年 「9.11」 以後の 「戦争と平和」

の問題が、 むしろ、 アメリカとの 「一極覇権」 の 強化の下で展開されてきており、 いわゆる 「移行」

諸国の場合も、 むしろそれらの関係で 「戦争と平 和」 の問題を捉え直さなければならないという状

― 23 ―

プロジェクト活動報告

「市場移行と平和」 プロジェクトを閉じるにあたって

中 山 弘 正

(国際平和研究所所員)

(3)

況が出てきている、 という点である。 関係諸国も むしろアメリカとの関係で軍事問題に対応せざる を得ない、 という事態がグローバルに出現してい る、 ということでもあろう。

3.

だが、 こうしたアメリカの一極覇権という状況 はいわゆる冷戦崩壊で突然に出現したとも考えに くいことから、 むしろ、 アメリカを一つの中心的 視座に置いた世界政治・世界経済という視点から、

全体を見直してみる必要性がある、 ということで もあろう。

岡田裕之論文は、 そうした 「市場移行と平和」

という設問自体が、 より大きな視座の一角に位置 付けられる、 ということでもあろう。

それゆえに、 我々は、 「市場移行と平和」 とい

うプロジェクトそのものを包摂するもうひとまわ り巨視的な視座からの問題提起的な論稿をもって、

現在の段階での締め括りとさせて頂こうと思う次 第である。

そうした意味での巨視的な岡田裕之論文をもっ て、 プロジェクトの現段階の総括とさせていただ くのであるが、 これまで、 実に多数の方々がこの プロジェクトの主旨を汲んでご協力くださったこ とに 今、 いちいちのお名前やテーマを挙げな いが 深い感謝を表明したい。 そのなかには、

外国から遠路足を運んで下さった方々も含まれて いることは言うまでもない。 また、 そのことをは じめ、 研究会の遂行の実際上のあらゆる努力を誠 実に確実になして下さった松さんをはじめ、 平 和研の事務局の方々に厚い感謝をささげるもので ある。

「市場移行と平和」 プロジェクトを閉じるにあたって

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