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京町家がもたらす外部経済と外部不経済の検証

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京町家がもたらす外部経済と外部不経済の検証

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU18705 岡田 朋和

1 はじめに

1―1 研究の背景・目的

京都市内は、第二次世界大戦時の空襲による被害が 比較的少なく、戦前からの街並みがそのまま残るとこ ろが多く、土地区画整理事業が進んで来ていないとい う事情がある。そして、細街路の周辺に密集する建物に ついては、火災が発生した際に、広範囲で延焼する可能 性があること、そして、避難が困難を極めることや大型 緊急自動車が火災現場に近づくことができず、消火活 動に支障が出るということが懸念されている。

京町家に着目すると、古都京都らしい景観を創出し ているが、建物に着目すると、改修がされ状態が良く保 たれているものがある一方で、老朽化が進行し、外観に 歪み等が生じているものがあり、災害時には甚大な被 害が予想されるものもある。

以上の背景を踏まえ、本稿では、京町家や細街路が、

景観資源としての性格を持つ一方で、防災・防火面から、

種々の解決するべき問題を抱えていることにも着目し、

京町家の集積率、細街路集積率、商業集積率、そして、

京町家の空家や状態も含めて、それぞれの要因が地価 にどのような影響を与えるかを分析し、京町家や細街 路に関する施策についての課題を明らかにし、今後の 施策について有用な政策提言をすることを目的とする。

2 先行研究

京町家や細街路の外部効果については、大庭ほか

(2006)が、町丁目あたりの面積に占める京町家の割合 と近隣の中高層建築の立込みの割合に着目し、ヘド ニック法(重回帰分析)により、京町家集積による近隣 外部効果の存在が土地の資産価値を高める傾向にあり、

近隣外部効果の特に高い箇所は、東西や南北にはしる 通りに沿って相互に融合し、あるいは面を形成してい るという空間的特徴があることを示している。

森重・髙田(2016)は、京都市都心4区を対象として 町家と細街路の分布状況に着目して分析している。と りわけ、袋路沿いの敷地と町家の密度の相関が強いこ とを示し、細街路沿いの敷地における建築行為への規 制が沿道建築物の老朽化や空家化の要因となっている 可能性を指摘している。

3 京町家について 3-1 京町家の概要

京町家は、「建築基準法が施行された昭和25年以前 に伝統木造軸組構法で建築された木造家屋」と定義さ れている。

京町家の歴史は、平安京の時代に遡り、公家たちによ り、地方から徴用された職人や商人たちが小屋を造っ たのが始まりとされている。

3-2 京町家による影響の経済学的分析

京町家は、長年にわたり、京都の歴史的景観の創出に 寄与してきたが、近年は、数が減少している。そして、

図1のとおり、京都市内の建物全般の空家は、住民の高 齢化と比例して集積している状況であるが、京町家に おいても、居住者の高齢化の進行や空家数の増加の傾 向にあり、近年は、全京町家数の約1割を占めている。

高齢者世帯も、建物の相続がないまま、将来は空家と なる可能性もある。空家の約6割は、即時に修理が必要 又は不十分な状態であり、老朽化傾向が顕著である。特 に放置された空家は、家屋部材の崩落等による景観の 悪化や、放火等の犯罪の危険性がある。危険な空家は、

周辺住民に迷惑建造物という認識を持たせるため、負 の外部性が大きくなるおそれがある。

所有者に、京町家をまちなみ再生のための資産とし て維持していこうというインセンティブ(誘因)が働か ない場合は、結局、京町家としての価値は低下し、一般 住宅の空家と同様の状態になってしまう可能性は高い。

また、所有者不明の空家問題への懸念もある。

4 細街路について 4-1 細街路概要

京町家とともに、京都市の歴史的景観効果を創出す るものとして細街路があり、図2のとおり、都心部を中 心に広範囲に分布している。

細街路を中心とした市街地は、防災・防火面での課題 があるが、街路沿いに立地する家屋は、建替えや後退等 にあたり法令上の制約を受けている。

図1 京都市内空家率、高齢化率(空家率:平成25年住宅・土地統計調 査、高齢化率:平成26年京都市統計)

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建築基準法では、道路の定義として、原則幅員4m以 上であることが定められており、沿道の建物の建替え 等の際は、片側幅員2mの距離で後退することが求め られる。しかし、狭小敷地の場合は後退が難しい場合が 多く、さらに、後退により壁面の連なりが維持できず景 観を損ねるという問題もある。

京都市は、平成24年に、「京都市細街路対策指針」を 策定し、老朽化による災害時の建物倒壊や延焼拡大を 防ぎ、細街路ひいては市街地の安全性を確保するとい う観点から、建ぺい率の緩和や道路後退の緩和、幅員 1.8m未満の道の道路指定、開発許可制度の見直し等を 行うこととしているが、実際のところ、住民間協議の難 航等の問題があり、特例の利用率は1ケタ台に留まる。

4-2 細街路による影響の経済学的分析

細街路は、歴史的な景観創出という正の外部性と、沿 道の建物が過密状態となり、防災・防火面で、危険性の 高い状況を作り出す負の外部性と、両側面を持ち合わ せており、地価に何らかの影響を与えていることが考 えられる。

細街路関係の対策は、場合により、多数の住民が関与 して幅広く行う性質のものであり、権利関係を明確化 した上で、住民間の交渉による解決が図られることが 望ましいが、難航も想定されるため、最終的には行政に よる何らかのかたちでの関与が必要であると言える。

5 防災対策に関わる京都市の諸制度

5-1 優先的に防災まちづくりを進める地区 京都市は、平成24年に国交省が公表した「地震時等 に著しく危険な密集市街地」において密集市街地全面 積のうち、該当部分が約360haを占める。これは、全国 の市町村の第4位という状況であった。

京都市は表1のとおり、「優先的に防災まちづくりを 進める地区」を選定している。

これは、全国共通の指標による京都市の木造密集市 街地の中から、木造建物の建て詰まり状況や細街路の 分布状況等の京都市の特性を踏まえた指標等を加味し て決められた。選定地区は、京町家や細街路が特に多く

集積する地域であり、火災時の延焼危険度や避難活動 困難性が極めて高い地区とされている。さらに、選定地 区以外にも、防災対策が必要と考えられる密集市街地 が59地区存在している。また、図3によると、黒枠部 分(密集市街地エリア)での京町家の集積度が高いこと がわかる。

細街路沿いは、接道義務の関係で家屋の改築・後退が 即座には難しい。特に、幅員 1.8m未満の細街路では、

沿道の家屋の再建築が不可能であり、こうした細街路 にのみ面した建築物は、個別単位での更新は基本的に はできないこととなる。京都市では、細街路の中でも危 険性が高いと指摘されている袋路沿いの家屋の建替 え・改修や細街路での後退距離緩和等に関する事業を 実施しているが、権利関係の調整や住民間協議の難航 の問題等があり、実際の運用は少数に留まっている。

6 京町家・細街路が周辺市街地地価に与える要因の 実証分析(ヘドニック法)

京町家は、京都らしい景観・街並みの形成による正の 効果をもたらす一方で、老朽化や居住者の高齢化、空家 の発生等により、地域活力やコミュニティの低下、景観 悪化による負の影響ももたらすことが考えられる。

細街路についても、歴史的景観を有する一方で、幅員 が狭いことや接道する敷地の状況等により、沿道の老 朽建築物の建替えが遅れ、災害時の危険性が増大して いるという問題も抱えており、負の影響が表れること も予想される。

市内には、商業や観光系施設が集積し、観光客の往来 が多い地域や、住居、工業系施設が主に集積する生活圏 となる地域も存在する。

そのため、京都市の行政区ごとの地域性の違いも考 慮した形で、以下の仮説に基づき、ヘドニック法で分析 を行うこととした。

仮説1

京町家には、景観面や商業集積効果による正の外部 性がある一方、細街路沿いに密集して立地しているこ とや、老朽木造家屋であるという観点から負の外部性 があるのではないか。

仮説2

京町家が空家である場合は、負の外部性が大きくな るのではないか。

【選定地区】11 地区 約 360ha 北 区:紫野(西地区),柏野

上京区:翔鸞,仁和,正親,聚楽,出水(北地区)

中京区:朱雀第一(北地区),朱雀第二 東山区:六原

右京区:御室(北東地区)

図2 京都市内細街路状況(一部)(京都市提供データを基にArcGIS で作成)

図3 優先的に防災まちづくりを進める地区(黒枠)及び京町家分布 状況(京都市提供資料及び国土数値情報を基にArcGISで作成)

表1 優先的に防災まちづくりを進める地区

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6-1 使用データ

使用するデータのうち、京町家のデータは、京都市都 市計画局より提供を受けた。

基礎データは、「京町家まちづくり調査」(平成 20、

21 年)に基づく位置情報であり、1件ごとの京町家に ついて、所在行政区、状態、空家該当の有無、長屋該当 の有無等の属性情報を含むものである。細街路位置 データについても、京町家と同様に京都市都市計画局 より提供を受けた。地価への影響は、細街路の総延長か ら分析することとした。商業集積統計は、地価への正の 外部性の影響を計るためのコントロール変数として用 いるものであり、東京大学空間情報科学研究センター から提供を受けた。地価、容積率、建ぺい率、最寄駅か らの距離は、国土数値情報の公表データを使用した。容 積率、建ぺい率、最寄駅からの距離は、京町家、細街路 や商業集積以外の、地価への外部性のコントロール変 数として用いるものである。

6-2 変数定義

本推計で使用する説明変数は以下の通りである。被 説明変数は地価とする。

【推計モデル1】

Y₁(ln地価)=B₀+ B₁~₃(ln周辺京町家0~50、50~100、

100~150m集積)+B₄~₅( ln周辺細街路0~100、200m集 積)+B₆(行政区ダミー)+ B₇(建ぺい率)+μ(かく乱項)

【推計モデル2】

Y₂(ln地価)=B₀+B₁~₂(ln周辺0~50、50~100m京町家 集積)+B₃~₄(ln周辺0~100、100~200m居住者有状態不 良京町家集積)+B₅(ln周辺50~100m京町家集積*ln周辺 50~100m細街路集積)+B₆(行政区ダミー)+ μ

【推計モデル3】

Y₃(ln地価)=B₀+B₁~₂(ln周辺0~50、50~100m京町家 集積)+ B₃~₄(ln周辺0~300、300~500m商業集積)

+B₅(容積率)+B₆(行政区ダミー)+ μ

【推計モデル4】

Y₄(ln地価)=B₀+B₁~₂(ln周辺京町家0~100、100~150 m集積)+B₃~₄(ln周辺0~300、300~500m商業集積)

+B₅~₇(ln周辺京町家空家0~50、50~100、100~200m集 積)+B₈(行政区ダミー)+ B₉(建ぺい率)+B10(最寄り駅 からの距離)+μ

【推計モデル5】

Y₅(ln地価)=B₀+B₁~₂(ln周辺細街路0~100、100~150 m集積)+B₃~₄(ln周辺京町家空家0~100、100~200m集 積)+B₅(建ぺい率)+ B₆(最寄駅からの距離)+B₇(行政 区ダミー)+ μ

【推計モデル6】

Y₆(ln地価)=B₀+B₁~₃(ln周辺京町家0~50、50~100、

100~150m集積)+B₄~₅(ln 周辺状態不良京町家空家0~

100、100~200m集積)+B₆(行政区ダミー)+ μ

【推計モデル7】

Y₇(ln地価)=B₀+B₁~₂(ln周辺0~50、50~100m京町家 長屋集積)+B₃~₄(ln周辺0~50、50~100m京町家集積)

+B₅(建ぺい率)+B₆(行政区ダミー)+ μ

6-3 ヘドニック法推計結果まとめ

京町家、細街路の集積による外部性は、全ての属性を 含めた検証を行うと、図4の通り、地価ポイントから近 距離の範囲では地価は下がるが、範囲を広げていくと 地価は上昇する傾向が明らかになった。

行政区別にみると、北区、上京区、中京区、東山区、

下京区のような商業や観光面で至便性のある地域の地 価には正の効果が、南区や伏見区など住宅地を中心と する地域では負の効果が見られた。ここから、京町家や 細街路が集積することによる影響は、地域性による要 因も関わると考えられる。

7 京町家への居住誘因となる要因の実証分析(プロ ビット推計)

京町家の居住者を想定し、周辺の京町家、細街路、商 業施設の集積や、当該京町家が状態不良の場合等の要 因が、居住の是非にどのような影響をもたらすかにつ いての推計を行った。

7-1 変数定義

本推計で使用する説明変数は次の通りである。

図4 京町家、細街路の外部性の表れ方

説明変数

ln周辺〇m京町家集積

※ここで云う京町家は、全ての属性を 含む。

地価ポイント周辺〇m範囲内の京町家の集積(軒 数)の対数

ln周辺〇m細街路集積 地価ポイント周辺〇m範囲内の細街路の集積(各

街路の延長の合計)(m)の対数 ln周辺〇m居住者有状態不良京町家

集積

地価ポイント周辺〇m範囲内の居住者がいる状 態不良の京町家の集積(軒数)の対数

ln周辺〇m京町家長屋集積 地価ポイント周辺〇m範囲内の長屋である京町

家の集積(軒数)の対数

ln周辺〇m京町家空家集積 地価ポイント周辺〇m範囲内の京町家空家の集

積(軒数)の対数 ln周辺〇mの状態不良の京町家空家

集積

※状態不良:壁の表面が崩れ落ち、軒 先が少し波打っている、もしくは、建 物に大きな傾きが見られる。壁が大き く崩れおちている。軒先が大きく波 打っている。

地価ポイント周辺〇m範囲内の状態不良の京町 家空家の集積(軒数)の対数

ln周辺〇m京町家集積*ln周辺〇m

細街路集積

地価ポイント周辺〇m範囲内の京町家の集積(軒 数)の対数と、地価ポイント周辺〇m範囲内の細 街路の集積(細街路合計長さ)の対数との交差

(交互作用)項

ln周辺〇m商業集積 地価ポイント周辺〇m範囲内の商業施設の集積

(件数)の対数

最寄駅からの距離 地価ポイントの最寄駅からの距離(m)

容積率 地価ポイントの容積率(%)

建ぺい率 地価ポイントの建ぺい率(%)

行政区ダミー 地価ポイントが当該区に存在すれば「1」、そう ではない場合は「0」となるダミー変数

説明変数

状態不良京町家ダミー 被説明変数である京町家(以下、「当該京町家」とす る)の状態が不良の場合は「1」、そうではない場合 は「0」とする変数

周辺〇m京町家集積

※ここで云う京町家は、全ての属 性を含む。

当該京町家周辺〇m範囲内の京町家の集積(軒数)

周辺〇m状態不良京町家集積 当該京町家周辺〇m範囲内の状態不良の京町家の集 積(軒数)

袋路にのみ面している京町家ダ ミー

当該京町家が袋路にのみ面している場合は「1」、そ うではない場合は「0」とするダミー変数 周辺〇m商業集積 当該京町家周辺〇m範囲内の商業施設の集積(件数)

周辺〇m細街路集積 当該京町家周辺〇m範囲内の細街路の集積(各街路の 延長の合計)(m)

行政区ダミー 当該京町家が当該区に存在すれば「1」、そうでない 場合は「0」となるダミー変数

(4)

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【推計モデル1】

N₁(居住する:1、居住しない:0)=B₀+

B₁(<当該京町家から>周辺0~100m京町家集積)

+B₂(周辺0~100m状態不良の京町家集積)+B₃(袋路にの み面している京町家ダミー)+B₄(行政区ダミー)+ μ

【推計モデル2】

N₂(居住する:1、居住しない:0)=B₀+

B₁(状態不良京町家ダミー)+B₂(周辺0~100m京町家集積)

+B₃(周辺0~300m商業集積)+

B₄(袋路にのみ面している京町家ダミー)+

B₅(行政区ダミー)+ μ

7-1 プロビット推計の結果と考察

周辺の細街路の集積については、袋路にのみ面した 京町家の場合、居住しないインセンティブがより強く なると考えられる推計結果が表れた。

細街路については、以下のような危険性があり、居住 を避ける可能性がある。それは、災害時や大規模火災時 の大型消防自動車の通行困難、建物倒壊による通行障 害、延焼拡大のしやすさ、乗用車の通行や自転車の路上 駐輪を巡るトラブル等であり、袋路に面していること から生じる。

そして、居住中で状態が不良の京町家の集積効果の 影響は、状態に関わらず、地価ポイントからの範囲によ り、正と負の両方の効果が観察された。このことから、

他の要因によるコントロール効果が作用した可能性も うかがえる。

なお、行政区ダミーについては、推計モデル1、2と もすべての係数が正となり、地域性による影響は特に 見られなかった。

8 全体まとめ

本研究により、京町家と細街路が、それぞれ、外部経 済効果と外部不経済効果の二面性を持つ可能性がある ことが推計された。

先行研究においては、京町家は、周囲の建物と相互依 存的な関係により、近隣への高い外部効果を有してい ることが示され、細街路については、特に、袋路沿いの 町家の密度との相関関係が強いことから、細街路の存 在が町家を残す方向に影響を与える可能性が指摘され ている。

こうしたことから、京町家と細街路に対する施策は、

面的に、相互に連関するものとして展開させていく必 要性があると考えられる。

9 政策提言 9-1 政策提言1

京町家の景観効果による正の外部性に着目し、指定 京町家に限定しない形での維持費用等の補助金制度を 設けることが考えられる。

推計では、京町家の集積が拡大するにつれて、地価上 昇の傾向が見られた。そのため、京町家は、良好な状態 で維持・保全することにより、住宅だけではなく、その 独特の形状を活かして、飲食や事業所等多用途に活用 できる可能性をも秘めていると思われる。

とりわけ、推計において、行政区ダミーの外部経済効 果が高く表れた、中京区や下京区は、商業を中心とした 地域でもあり、往来も多く、京町家を店舗や宿として利 活用するための需要も見込まれる。

これらの業種が近接エリアに集まることにより、集 積の経済による効果も期待できる。そのため、事業資金 の定額補助や家屋改修に係る費用の助成制度を設ける ことも検討するべきである。

また、南区や伏見区等、行政区ダミーで負の結果が表 れた地域については、主に住居地域を中心とした地区 であることから、むしろ、高齢者施設や地域住民向けの 交流施設として活用することを想定し、運営事業者に 対する建物改修費用助成制度の創設や固定資産税の減 免額の拡大が考えられる。

9-2 政策提言2

京町家を良好な状態に維持することが、景観を維持 すると同時に、老朽木造家屋の安全性の向上にも寄与 するという効果に鑑みて、管理不全で建物の状態が良 好ではなく、負の外部性を生じている京町家について は、空家も含めて、当該所有者に補助金を活用した改修 を呼びかけつつ、改善が見られない場合は、固定資産税 の減免割合の段階的引下げ等、負の外部性に応じた課 税措置の導入が考えられる。

状態不良を放置することにより、家屋の腐朽等の進 行による周辺への被害に対する社会的限界費用は益々 拡大することが予想される。社会的限界費用の逓減に 対する所有者のインセンティブを高めるための方策と して、段階的なピグー税の仕組みの導入が考えられる。

9-3 政策提言3

袋路のような災害時には特に危険である細街路につ いては、現行の緊急避難経路整備事業の補助額上限引 上げ(現行30万円)や始端部(袋路入口部)の家屋に 限定しない耐震・防火改修費用の補助制度の創設等を 通して、沿道住民の安全対策への意識の啓発をより促 すことが必要と考えられる。

袋路の入口付近だけではなく、沿道一体の家屋の安 全対策を一体のものとして捉えたかたちでの施策が求 められる。

10 今後の研究課題

本研究の推計結果で見られた、地価ポイントからの 距離範囲による係数の正、負の値について、町家自体の 価値の問題であるのか、あるいは、他の要因も絡む問題 であるのか、そうした点をより明白にするために、地域 ごとの特色を詳細に反映した検証が必要であることは 言うまでもない。

京町家の有する価値を活かし、京都らしい景観を損 なわない範囲で、危険性の増大による負の外部性に対 処していくためには、京町家と京町家ではない木造家 屋とを切り分けた形での集積効果のさらなる検証が必 要であると考えられる。

京都ならではの特色にも着目しながら、木造密集市 街地や空家問題等も含めた都市問題のひとつとして、

歴史的な景観要素の在り方を、正、負の両側面から、さ らに検証していくことが必要であると考えられる。

参照

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