A 近畿大学農学部紀要 第 40号 85‑ 91 (2007)
近畿大学奈良キャンパス F 池における魚類の生息状況
小 山直 人 * ・ 揮 井悦 郎 *・上村 英 幸 *・久 米幸 毅 * *・森 宗 智 彦 * * 細谷和海* * *・北川忠生
****近畿大学農学 部水 産学科
目 近畿大学大学 院農学研 究科環境管理学専攻
***近畿大学農学部環境管理学科
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は じめに
近畿大学奈良キ ャンパス敷地内の裏 山は、棚 田 や農業用水路 の跡が今 も残 ってお り、かつては、
農業生産活動 による調整池、草地、二次林等が在 来の 自然 と一体化 した、いわゆる 「里 山」であっ た とされている 1)。その後、農業生産活動の衰退 に伴 い、特 に手入れ されることな く放置 され、現 在では、 さまざまな環境か ら成 り立つ里 山の環境 は、単 一 な ものへ と変化 して しまってい る。現 在、近畿大学農学部では、 この荒廃 した里山を修 復 し、人 と自然の調和 の とれた農業 を、研究、教 育 に生かす ことを 目標 とした里 山修復 プロジェク
トが動 き始めている。
近年、全国各地で里 山保全修復活動が活発化 し ているが、修復経過 における生物相の変遷 を詳細 に記録 した資料 は皆無である。 これか ら本学奈良 キャンパス内 を里 山環境 として修復 してい くに当 たって、事前 に どの ような生物が生息 していたの か、修復過程で生物相が どの ように変化 してい く のか について、継続 的に調査 ・観察 して行 くこと は今後 に向けて重要 な意味 を持つ もの と考 えられ る。
筆者 らは今 回、里山修復の第1段 階 として修復 予定地の状態 を把握す ることを目的 とし、クラブ ハ ウス裏 に位 置す るため池 (通称F池) を対 象
とした魚類生息調査 を行 なった。
86 小 山 直 人 ・樺井 悦 郎 ・上村 英幸 ・久 米 幸毅 ・森宗 智彦 ・細谷 和 海 ・北川 忠生
調 査地 お よび 調 査 方 法
調査地 の概要
調査 は近畿大学奈良キ ャンパ スの クラブハ ウス 裏 に位 置 す る F池 で行 な った。 図 1に本 学 奈 良 キ ャンパ スの全体 図 と F池の位 置 を示す。F池の 外周 は約 50mで、周 囲 は植 物 が生 い茂 り、 ため 池の半分 は終 日日陰 となってい る。 第2次世界大 戦後 まで農業用水 用 のため池 と して使 われていた が、その後 、特 に手入 れ され ない まま最 近 まで放 置 されて きた とされ る。 さらに長年放置 されて き た こ とか ら、水 底 に はヘ ドロが1m ほ ど堆積 し、
異臭 を放 っていた。 しか し、湧水 が湧 き出てい る ため、1ヶ所 だけあ る流 出水路 か らは一定量 の水 が流 れ出ていた。
調査方法
調査 は2006年5月8日に実施 され、環 境 管 理 学 実験 ・実 習 Ⅱ (2回生 配 当) の 受 講生 約 70名 と教 員 を含 む総勢80名 が これ に参加 した。調査 当 日まで にため池内の流 出口 を掘 り下 げ
、1
週 間 かけて F池 の水抜 きを行 ない、約 50cmほ ど水位 を下 げた。 その際、流 出口には網 をか けて生物 の 流 出 を防いだ。調査 は、モ ン ドリ、 タモ網 を用い て約 40名 が 2班 に分 れ て交代 で 4時 間か けて行 なった。 また、F池内の水 温お よび湧水 の水 温 を 測 定 した。採 集 された魚類 は、3基 の直径 1m の パ ンライ ト水槽 に移 した。採 集 した生物 は、種 の 同定 ・個体 数の計測 を行 なった後、外 来生物 の タ イ リクバ ラタナ ゴとアメ リカザ リガニ を除 き、再 びF
池 に戻 した。 た だ し、標 本 と して各 魚 種5
個体 ず つ は70%エ タノー ルで 固定 した。 固定 し た標 本 は、水 圏生態学研 究室 において保存 されて
図 1.近畿大学奈良キャンパス全体図 (太枠内)とド池 (赤円内)
近畿大 学奈 良 キ ャ ンバ ス F池における魚類の生息状況
いる。調査 中の様子 は図
2
に示 した。 二枚貝の中に卵 を確認することがで きた。7 8
コイ科
Cy pr ii n da e
1 . a(
図版1
モ ツ ゴ属 はいず れ も小 型 で、本種 は全長
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pe uo r a so r apa w
モツゴ
‑ 1 )
8cm
図2.環境管理学科 2回生による調査の様子
(2006年 5月 8日)
になる。本来は、関東地方以西の本州、四国、九 州が 自然分布域 とされていたが、現在ではコイや フナ な どの種 苗 に混入 して放流 され るため、 日 本全 国で よ く見 られ る。奈 良盆 地 で は、主 にた め池、水 路、河川 の下流域 の淀 み に生 息 してい る 3)。 汚水 や環境 の変 化 に比 較 的強 く、 コ ンク リー ト護岸のほ どこされている場所で も生息が確 認 されている 4)0
F池 において本種 は、5個体 と他魚種 に くらべ て個体数が少 なか った。
結 果
調査 の結果、F池では 3科 7種 (モ ツゴ、ギ ン ブナ、オオキ ンブナ、 メダカ、 ドンコ、 タイリク バ ラタナ ゴ、ゲ ンゴロウブナ)の魚類が確認 され た (表 1)。 フナ類 に関 して は、同定が非常 に困
Ca r a s s
日本全国に広 く分布 し、主 に池沼や河川の下流 な ど、比較的流れの緩やかな場所 に生息する。本 種 は、雄親の遺伝形質 を受け継 ぐことな く、雌の 遺伝子情報のみに もとづいて次世代 をつ くる雌性 発生 を行 な うO オオキ ンブナ よ りやや小 さく最大
s I ' u
s p2.ギンブナ .(図版 112)
難であ り、採集 された全ての個体 を同定す ること 全長は約 30cm
はで きなかったため、確認 された 3種 をまとめて F池では、 フナ類の数が圧倒 的に多 く、優 占種 フナ類 とし個体数 を計数 した。各魚種 に関す る情 であった。 しか し、 フナ類 の同定が非常 に困難で 報 は以下 に示 した。調査 当 日のため池 内の水 温 あ り、確 認 された 3種の どのフナが優 占種である
になる 5)。
7
ここで報告 したゲ ンゴロウブナ以外の魚種 につい
1
は
2
℃、湧水付近の水温 は2
℃ であった。今 回、 かは不明であるCての写真 (図版 1)は、すべて筆者 らが F池で採 集 された個体 を撮影 した ものである。学名は 「山 渓 カラー名鑑 日本 の淡水 魚 改訂版」 2)を参照 し た。
また、調査が行 なわれたのが 5月であることか ら魚類の産卵期であった と考 えられるが、仔稚魚
Ca r a s s
(図版 1‑3)
西 日本 を中心 に,中部、近畿、中国、四国の各 地方 と、九州北 部 で よ く見 られ る。奈 良盆 地で は、ため池や河川の中流、下流域 に生息 し、ギ ン ブナ と同時に探れることが多い。体長 は、頭長の
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3.オオキンブナ
0cm
27 .
35 .
倍、体 高 の約 倍 で、ギ ンブナに くらべ ゴにおいては、調査 中に湧水付近か ら発見 された る と体高がやや低 い。全長 は約 3表 1.F池から採集された魚種および個体数
種 名 学 名 個体 数 備考
は確認 されなか った。 しか し、 タイ リクバ ラタナ 約
で、 これ を
モ ツ ゴ ギ ンブナ オ オキ ン7サ ゲ ンゴロウブナ
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※ 3 透 明鱗 個体確 認 国内外来種 lltaus
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タイ リクバ ラ タナ ゴ 匡】外外来種
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1 環境 省 RDB絶 滅危憤Ⅱ類 メダ カ ahL)es
ドンコ 35 二枚 貝幼 生 の宿 主
X・フナ類 3種 の合 計
小山 直人・滞井 悦郎 ・上村 英幸 ・久米 幸毅 ・森宗 智彦 ・細谷 和海 ・北川 忠生
超 える もの も見 られる。雌雄比 はほぼ 1対 1であ シンボルフィッシュで もある。 しか し、農薬の使
る 6)
。
用、カダヤシなどの外来魚、水路の護岸や水 田 とF池では、本種の透明鱗個体が3個体採集 され 水 路 との落差 な どの影響 よって生 息場所 が奪 わ た。 れ、1999年環境庁 レッ ドリス トで絶 滅危倶Ⅱ類 に指定 されるなど、絶滅が危倶 されている。 また
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図版 1琵琶湖原産であるが、近年、釣 り対象魚 として づ け られている 12)0
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4.ゲ ンゴロウブナ ‑4) 奈良県版 レッ ドリス トにおいて も、希少種 に位置
全国各地の湖沼‑移殖放流 され 7、各地で 自然繁 殖 してお り、 どこにで も見 られ る ようになった。
) 奈良県内においては、本種の生息地は比較的多
く残 されている。 しか し、奈良県大和郡 山」市では 湖や湖沼 な どに生息 し、浮遊動物の多い中層 に群 ヒメダカの養殖が盛 んで、養殖場か ら漏洩 した個 れ をつ くり餌 をとる。プランク トン食性で、餌 と 体が大和川水系 に大量 に流れ出ている可能性があ なる微小 な生物 を鯉の内側 にある鯉把で こ し集め る。 また、近年本種が絶滅危倶種 に指定 された こ る。 このため、本種の鯉把 は、 フナ類の中で最 も とな どか ら、各地で無差別 な放流が行 なわれてい 長 く、数 も多い。全長 は 4 、特 に大 きい もの
では 5 に達す るもの もある 8)。 0cm 0cm
る。
ドンコ
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り、琵琶湖原産 とい うことか らも国内外来魚 に位 7. ドンコ
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da e i b t t onou
奈良 県 内 にお いて も、過去 に移殖 の歴 史が あ
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置づ け られる。 愛知県 ・新潟県以西の本州、四国、九州分布す
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図版117) 5cmる。全長 は 2 。奈良盆地で は、流 れが緩 やか で、川岸 に植物が繁茂 し、底 は砂底の ような とこ タイ リクバ ラタナゴ
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図版 1‑5) ろに生息 している場合が多いが、ため池で も本種t au s / / hd oe u so c e
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本 来 アジア大 陸東部 と台 湾 島が原産地 で あ る の生息が確認 されている。ため池で本種 の生息が 4
れたハ クレンな どに混入 して、利根川水系 にもち であることが多い 13)。 が、 日本 には1 09 年代 は じめ に長江 か ら移 入 さ
込 まれた。アユの放流や釣 り用のフナの移殖、か
んがい用水 の拡大、熱帯魚店 を通 してほぼ 日本全 考 察
確認 されている場合 は、地下水が豊富 に湧 く環境
土 に分散 した国外外来魚である 9)。本亜種 は亜種
関係 にある在来のニ ッポ ンバ ラタナゴとの交雑す 今 回の F池の調査で確認 された 3科 7種の魚類 ることによ り、純系のニ ッポ ンバ ラタナ ゴの個体 の内、在 来魚 はモ ツゴ、 ギ ンブ ナ、 オ オキ ンブ 群 に危機 を もた らしてい る。本亜種 はニ ッポ ンバ ナ、メダカ、 ドンコの
5
種 、国内外 来魚 はゲ ンゴ ラ タナ ゴよ りやや大 き く、最大 で全長が8cmに ロウブナ 1種 で、国外外来魚 は タイ リクバ ラタナなる。 ゴ 1種 、 このほ とん どの魚種では比較的多 くの個
2003年 に近畿 大学が行 なった奈 良公 園内の池 体数 を確認す ることがで きた。 しか し、今 回の採 の調査で純粋 なニ ッポ ンバ ラタナ ゴ個体群が発見 集調査 で仔稚魚 は確認で きなかった。ただ し、二 されている10)。 枚貝の中か らは タイ リクバ ラタナ ゴの卵が確認 さ れた。 この ことか ら二枚貝が発見 された付近の水
6.
メダカ科
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メダカ
0
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温が低 く、醇化す る時期が本来 よ り遅れていたのi pe
‑t a / a s / ‑ y z
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図版 1 )6 ではないか と考 え られる。同様 に他魚種 も湧水 の 本種 は 日本で一番小 さな淡水 魚 で、最大全 長 影響 によ り、醇化時期が遅れ仔稚魚が確認 されな 4cmになる。北海道 を除 く日本各地 に分布 してい かった可能性がある。たが、近年北海道で も移殖 による分布が確認 され てい る 11)。 主 に平 地の ため池や湖、水 臼や用水 路、河川の流 れが緩 やか な ところな どに生息 し、
集団で行動す ることが多い。本種 は 日本淡水魚の うち、 もっ ともな じみの深 い魚の 1つで、里 山の
確 認 された在来魚は、奈良県内のため池で よ く 確認 される種 であ るが、メダカは環境省の レッ ド リス トでは絶滅危倶 Ⅱ類 、奈良県版 レッ ドリス ト においては希少種 に指定 されている絶滅危倶種で ある。 この ような種が キャンパス内において確認 88
近畿大学奈 良 キ ャ ンバ ス F池における魚類の生息状況 89
された保全学的意義 は大 きい。
F池は、長年放置 されて きたことによ り、底 に 堆積 した落 ち葉等がヘ ドロ化 して1mほ どの層 を 形成 している状態 にあった。本来であればヘ ドロ が堆積 したため池は、水 質の悪化 によ り魚類 な ど の水生生物の生息が困難になる。 また人為 的に管 理 されていないため池は干上が って しまうことも 多 く、特 に魚類の生息 を維持す ることは困難であ る。それに もかかわ らず、F池ではメダカをは じ め とした これ らの魚類が維持 されて きた。その要 因 として、次の2つが考 えられるo
lつ は湧水源の存在であ る。本調査 に よ り、池 内の一部の区域 に湧水が確認 された。 この湧水 に よ り、新鮮 な水 の循環が もた らされ、F池 は安定 的な水量 と水質が維持 されて きたのであろう。そ れを裏づ けるかの ように、採集 された生物 を一時 避難 させ るために設置 したパ ンライ ト水槽 にF池 の水 を汲み置いてお くと、短時間のあいだに水槽 内の水 は茶褐色 に変色 し異臭 を放 つ よ うになっ た。
もう 1つの理 由 として、近年問題 になっている オオクチバスやブルーギル等の肉食性 の外来魚が 確 認 されなかったことが挙 げ られる。京都府の深 泥池では、オオクチバ ス等 の侵入後 に在来魚の種 数や個体数が激減 している とい う報告があ る 141. また、 ラムサール条約登録湿地の宮城県伊豆沼 ・ 内沼では、オオクチバスの侵入 ・定着後 に、希少 種 であるゼニタナ ゴやメダカが激減 しているとい う報告 もある14)。 しか し、F池 にはオオクチバス やブルーギル等の外来魚が移殖 されていなかった ことか ら、メダカなどの小型在来魚類が食害 にあ うことはな く、生息 し続 けることが出来た もの と 考 えられる。
しか しなが ら、F池が在来魚 に とって良好 な生 息環境 であ った とは言 い切 れ ない。通常、奈 良 盆地 と同様 な形態 を したため池 に生息 している ド
ジ ョウや ヨシノポ リ類が まった く確認 されなかっ たことや、生態的適応範囲の広 い種 であるモ ツゴ が5個体 のみ しか確認 されなか ったことは、F池 の魚類 の生息場 と しての特 異性 を示 す もので あ る。 この現象 をヘ ドロの堆積 な どの F池 の環境 悪化 に直接帰す るには時期 尚早であるが、 このま ま放置 された場合、 F池 において魚類 の生息が困 難 になってい く可能性 は否定で きない。今後 、里 山修復活動 において、ヘ ドロ除去 などによる水 質
改善 を進めてい く必要がある。 また、オオクチバ スやブルーギル等の肉食性外来魚の生息はなかっ た ものの、 タイ リクバ ラタナゴやゲ ンゴロウブナ の外来魚が確認 されている。 これは、人為 的移殖 の背景 が多 少 な りにで もあ った こ とを示 してい る。 そのため、 このF池 で確 認 され た在来魚 も 他の地域か ら移殖 された可能性 も否定で きないた め、遺伝 的に精査す る必要がある。特 にメダカに おいては、関東地方 に西 日本のメダカが人為的に 移殖 されているな ど、全 国で遺伝 的固有性 を無視 した無差 別 な放流 が行 なわれ てい る 15)。 その た め、メダカにおいては移殖の可能性が もっ とも高 い種 とい え、厳密 な遺伝学 的精査が必要であ る。
これ らの メ ダカ を含 め た遺伝解析 は、著者 らに よって進行 中であ り、例 え在来魚 であって も、遺 伝 的 に他地域 の ものであることが判明 した場合、
国内外来魚 として排除す ることも検討 しなければ な らないO
現在 、本学奈良キ ャンパス里 山修復予定地は長 期 にわたる放置のため荒廃 してお り、かつての里 山に生息 してい た生物 た ちは壊 滅 的 な状 況 にあ る。 しか し、現在進 め られ てい る里 山修復 プ ロ ジェク トによ り里 山 としての多様 な自然環境が整 えば、元 々生 息 していた生 物 た ちが再 び棲 みつ き、健全 な豊 山生態系が取 り戻 されるもの と期待 され る。 しか し、魚類 につ いて はF池 を含 む里 山修復予定地の水脈 と下流の水系 との連結が人工 構造物 によって絶たれて しまっているため、 自ら この地 に移動す ることは不可能である。そ こで著 者 らは、本来 この地域 に生息 していたであろう魚 類相 を取 り戻すため、移殖放流 による魚類相復元 を試みている。単 に、ふ さわ しい魚種 を選定 し放 流す るのではな く、分布域や生態、遺伝学的観点 も考慮 した魚種 (集 団) の選定 ・放流 を行 ない、
この地域 に存在 した里 山のため池環境 に限 りな く 近い魚類相 の復元 を目指 してい くつ もりである。
また、本学奈良キ ャンパ スには未だ調査 されて いないため池が多数残 されている。F池 とい う最 も人間活動の場 に近いため池 において、本報告 に 示 した成果が得 られたことを考 えると、これ ら未 調査 のため池 において も希少種 を含 む多 くの在来 魚類が生息 している可能性 も考 えられる。今後の 調査 の成果が期待 されるところである。
小 山 直人・揮井悦郎 ・上村 英幸 ・久米 幸毅 ・森宗 智彦 ・細谷 和海 ・北)II忠生 0
9
要 約 (2001) ゲ ンゴロウブナ.「山渓 カ ラー名鑑 日本の淡水魚 改訂版」川那部浩哉 ・ )谷 口順 彦
近畿大学農学部において進行 している 「里山修 水野信彦 ・細谷和海編,p 3p.
7
1 5 3
‑
46 .山と渓谷 復 プロジェク ト」の一環 として、奈良キャンパス 社,東京.
)
村厚生 ・大家正太郎 ・石田力三 ・梶純夫 ・鈴8
内のクラブハ ウス裏 に位 置す るF池 の魚類 の生
息状況 を調査 した。その結果、環境省選定の レッ 木規 夫 (1969)「養魚 講座 第5巻 」緑 書 房, ドリス ト種であるメダカと2種 (亜種)の外来魚 東京.
を含 む 3科 7種の魚類が確認 された。 しか し、F )長 田芳和 (200
池はヘ ドロの堆積がひどく決 して良好な環境 とは 渓 カラー名鑑 日本の淡水魚 改訂版」川那部浩 9 1)タイ リクバ ラ タナ ゴ.「山
3
いえない。定期的な管理が必要である。 哉 ・水野信彦 ・細谷和海編,pp.60‑363.山と 渓谷社,東京.
p )三宅琢哉
0 1
良県版 レッ ドデー タブ ック」p 本調査 は近畿大学農学部環境管理学科 2回生 農林部森林保全課.奈良.
謝 辞 (2006)ニ ッポ ンバ ラタナ ゴ.「奈 .122.奈良県
配当の基礎実験 ・実習 Ⅱの一環 として行 なわれた ll)佐 原雄 二 (2001) メダれ 「山渓 カラー名鑑 ものである。本調査 にあたっては本学水 圏生態学 日本の淡水魚 改訂版」川那部浩哉 ・水野信
彦 ・細 谷和 海編.p
研究室学生、大学院生の協力 を頂いた。本書作成 p.426‑429.山 と渓谷社, 2
3 1
1
にあた り農学研究科環境管理学専攻の藤 田朝彦博 東京.
)久米幸毅
)岩 田明久 士、横 田彰子 さんに貴重 な意見 を頂いた。 ここに
3 1 p.
6 (200)メ ダれ デー タブ ック」p 全課,奈良
「奈良県版 レッ ド 感謝の意 を表す る。 なお本調査 は、平成 18年度
)の一部 に
1.奈良県農林部森林保 近畿大学学 内助成金 (課題番号G 6SO
基づいて実施 された。 (2001) ドンコ.「山渓 カラー名鑑 日本の淡水魚 改訂版」川那部浩哉 ・水野信 彦 ・細 谷和 海編,p
引用文献 p.558‑560.山 と渓谷社, 東京.
3
(
1)前 田武 志 ・桜 谷 保 之 (200
2
3 4
5
6
)川那部活哉 ・水 野信彦 ・細 谷和 海編
)波戸 同情 峰
)谷 口順 彦
)谷 口順彦
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k he ana 4
5 1 3 1
)近 畿 大 学 奈 良 )細谷和海
キ ャンパスにおける レッ ドリス ト動物種 の生 魚.水環境学会誌,24:
6二 )Ta ,Y N.Na
i
(2001) 日本産淡水魚の保護 と外来 8.
7 2
‑ 3 7 2 息状況.近畿大学農学部紀要 1‑12.
f d tsu a
t 2 iversi k i
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Ge n a y o
K
M.Ma ,
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(2001) 003)
「山渓 カラー名鑑 日本の淡水魚 改訂版」 山 と
渓谷社,東京. ld
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‑ 7 1 p.
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0
206)「大和 川の 自然」p
大阪自然史博物館,大阪. i2.,0:1279‑1291. )山内 りゅ う (2001) モ ソ ゴ.「山渓 カラー名
鑑 日本の淡水魚 改訂版」川那部活哉 ・水野信 .山と渓谷社,莱 彦 .細谷和海表札 pp.3021305
京.
(2001) ギ ンブナ.「山渓 カ ラー名 鑑 日本の淡水魚 改訂版」川那部浩哉 ・水野信
3 p.
彦 ・細谷和海編.p 52‑353.山と渓谷社,莱
京.
(2001)オオキンブナ.「山渓カラー 名鑑 日本の淡水魚 改訂版」川那部浩哉 ・水野 . 山 と渓谷社.
信彦 ・細谷和 海編,p 東京.
3 4 3
‑ 2 4 3 p.
近畿大学奈良キャンパ ス F池 における魚類の生息状況 91
3.オオキンブナ (透明鱗個体) 4.ゲ ンゴロウブナ
5. タイ リクバラタナゴ (左:♂ 右 :早) 6.メダカ
図版 1.F池で確認 された魚種