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ウサギとウシにおける精子頭部顕微注入による体外受精

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Academic year: 2021

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ウサギとウシにおける精子頭部顕微注入による体外受精

細 井 美 彦 , 入 谷 明

要 約

精子が、正常受精を引き起こすよう顕微注入される時応、構造的に完全であることの必要 性を確認するため、ウサギとウシを用いて精子頭部を注入し、受精能力を検討した。ウサギ で得られた結果では、精子頭部を注入した卵子の65%で正常な前核形成が起こり、それらの うち半数が分割した。分割卵は、移植後受腔雌の子宮内で発育した。移植後14日で、子宮内 での胎児発育は確認されたが、産児は得られなかった。ウシでは注入した卵子のうち半数が 正常受精し、 14個の卵が分割した。これらの結果から、少なくともウシとウサギにおいては、

精子が正常な受精を起こして受精卵が分割に至るには、精子の構造が完全である必要はなく、

精子尾部も重要ではない事が示された。

~

正常受精においては、精子は膜融合をへて卵母細胞と結合し、前核へと発達する。最初に UeharaとYanagimachi14)が、ハムスター精子頭部はハムスター卵母細胞中へ注入された時、

前核に発育すると報告して以来、ウサギ5)、ウシ3)、ヒト川、ハノイチ4)そしてマウス1)で顕 微操作によりできた受精卵を移植する事により産子が得られている。これを細胞質内精子注 入法 CICSI)と呼び、重症の男性不妊症患者の治療方法ωとして活用されるのみならず、

絶滅危倶野生動物種の保護生物学的応用への有力な手段となっている6)O

近年多くの研究者が、動物園で死亡した動物の配偶子を利用して、絶滅危倶種の腔生産を 行おうとしているO この際、死体から回収された精子が運動性を持たない場合ICSIは受精 卵を得る有力な手段となる。しかしながら、顕微注入の成功率は種間で一定しない。何故な らば、精子の形状が顕微受精の成功率に影響を与えるためである。 KimuraとYanagima chi9)は、マウス卵子にハムスターやウサギの完全な精子を注入すると数時間のうちに全体 が破壊されるが、これらの精子から先体を除去して注入すれば、そのような事は起こらない 事を示した。精子顕微注入に際しては、大きすぎる精子先体は、その内容物のみならず形状 自体が、 ICSI後の卵母細胞に有害である。そこで、一般的に、精子先体が大きく卵母細胞 が小さい種では顕微受精における卵母細胞の損傷を避けるために ICSI直前の精子から先体

近畿大学生物理工学部生物工学科

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を取り除く必要があると思われる。また、長大な精子尾部は、 ICSIにとって望ましくなぐ、

同様の処理が必要である。現在、様々な種で腔発生期における精子尾部の役割が検討されて いるが、その必要性は確認されていない。

本実験では、精子先体の大きく、尾部の長大な野生動物種のICSIを想定したモデルとし て、家畜ではあるが、ウサギとウシの分離精子頭部を卵母細胞へ注入し正常受精と腔発育を 検討した。

材料と方法 試薬ならびに培養液

使用された薬品は、特別に記載しない場合シグマ (S

t .

Louis、米国)製と和光純薬(大 阪市)製のものを用いた。 ICSI後に卵母細胞を培養する場合、ウサギ卵では、ウサギ血清 を10%含んだHTF(合成ヒト卵管液)、ウシ卵では10%子ウシ血清を含んだTCM199を用 いた。卵母細胞を回収し、その後ICSIを行う時の培養液は、 5%炭酸ガス気層でなくても pHが調整できる25mMHEPESと3mgBSAを含む修正HTFを用いた。精子頭部の分離 には修正リン酸緩衝生理液 (PBS)にトリトン X‑100を1%と3mg/mlのBSAを加えて、

用いた。

精子と卵母細胞の準備

ウサギ:PMSG 100iuを筋肉内注射後72時間でhCG100iuを静脈内注射し過剰排卵処置 を行った。 hCG投与後18時間で卵管より卵子‑卵丘細胞複合体 (OCC)を回収した。卵母 細胞は、 0.2%のヒアルロニダーゼを含むD‑MEMで3回洗浄する事により裸化した。精巣 上体精子は回収後、 0.1%のTriton‑Xを含むPBS(一)で希釈した。精子尾部は、その培 養液中で超音波により分離した。精子は、付着しないよう10%PVPと5mMEDTAを加 えたPBS(‑)液中に懸濁した。

ウシ:食肉検査場から得られた小卵胞を吸引し、 OCCを回収した。これら OCCをFSH (O.lU/ml)、エストラディオールC10ug/ml)そして仔牛血清 (10%v/v)を添加した TCM‑199中で成熟させ、成熟後に膨潤した卵丘細胞を除去した。裸化した卵母細胞の半数 には、卵子を活性化させるために 1‑1.5kV/cmの電気刺激を与えた。精子は凍結融解を 繰り返して殺し、洗浄死滅精子として全く前処理をせずに用いた。ウシの精子頭部はへパリ

ンを含むTCM199中で受精能獲得処理をした後に超音波処理して分離した。

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精子頭部の細胞質内注入方法

裸化卵子は、ホールディング・ピペット(内径20μm、外径100μm)で極体を6時ある いは12時の方向に置いて保持した。注入ピペット(内径8‑10um、外径12‑15um)は卵母 細胞の3時方向から注入した。精子頭部は 1個だけ注入ピペットに吸号│し、卵細胞質中へ注 入した後、 PIEZO移動システムで卵母細胞の細胞膜を破壊した。精子頭部と10%血清を含 むmHTFが少量、細胞室内へ注入された。配隅子の操作に関しては基本的にウサギもウシ

と同様である。

卵母細胞の検査

注入したウサギ、卵母細胞の幾っかは5時間後に固定した。そして他の卵子は培養に供試し た。体外で発育した腔は、精子の顕微注入後24時間毎に倒立顕微鏡下で96時間まで調べた。

分割した卵の幾っかは、受腔雌に移植した。ウシ卵子は精子顕微受精後16‑26時間培養して、

固定した。

結 果

ウサギ:表1に示すように、 105個の卵母細胞に精子頭部を注入し、注入24時間後では、

雌雄両前核を持つもの37個 (35%)、そして2‑4細胞期に至る腔32個 (30%)であった。

さらに、 30個の分割怪は96時間まで培養し、 105個の精子注入腔のうち 8 %が桑実期医にま で発育した。偽妊娠させたウサギ卵管に、これらの2‑4細胞期限を移植した結果、 5匹中

2匹が妊娠14日まで維持できた。しかしながら、産仔は得られなかった(図1。)

ウシ:表2に示すように、 161個の卵母細胞のうち76%に精子頭部を顕微受精する事がで きた。精子顕微注入24‑26時間後で、精子頭部が膨化あるいは雌雄両全核形成されたものが 69個 (56%)であり、 2細胞になったものは14個(11%)であった(図 2、3)。

考 察

正常受精において、頭帽部分の精子細胞質膜は、通常先体反応によって失われる。残りの 精子細胞質膜は、卵母細胞質膜との融合により、発生中に再利用される。正常な状態では、

この様に精子細胞質膜は卵細胞質内に侵入する事はない。しかし、通常の ICSI法 で は 、 精 子全体が細胞質内へ取り込まれてしまう。それゆえ、精子細胞膜は核を含む全ての精子細胞 内小器官が卵細胞質に混ざる前に分解されなくてはならない。本実験では、超音波処理が精

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① 

表 1. ウサギ卵母細胞の精子頭部の細胞質内への注入による体外受精

精子注入後 培養時間

24  96 

注入卵母細胞数

105  105 

発育卵数(%)

2

前核

2‑4

細 胞

37(35)  32(30)  8

桑実期座

図1 ③ 精 子 注 入 後14時間で固定したウサギ前核期卵母細胞 両前核 (PN) と極体 (PB) が観察される

⑮精子頭部注入後24時間で得られたウサギ4細胞期佐

表2. ウシ卵母細胞の精子頭部の細胞質内への注入による体外受精

精子注入卵数

*

注入卵母細胞数 発育卵数(%)

(%) 

膨化精子料

2

前 核

2‑4

細 胞

161  122(76)  21(17)  48(39)  14(11) 

*卵子は16‑26時間で固定し、検卵した。

* *精子頭部が細胞質内で膨潤したものをさす。

67 

(5)

図2 精子頭部の注入後14時間で固定、染色したウシ前核期匪 両前核と両極体が観察される

図3 精子頭部注入後25‑26時間後のウシ2‑3細胞期匪

子頭部の細胞膜を除去しているので、顕微注入された精子頭部が前核へと変化する事が予測 された。

絶滅危慎種の人工授精や通常の体外受精に十分な運動精子が回収されるのが困難な場合が 多い。これらの場合、 ICSIは死滅精子を利用して腔を生産する効率的な手段となるO しか しながら、これらの死滅精子あるいは意図的に耐凍保護物質を添加せず凍結融解して殺した 精子で受精をさせても、その受精率は非常に低いか、あるいは受精させる事ができない事が、

ヒトの ICSIでは産子が得られることが、知られている7O この事から、種によっては精子 膜の損傷が非常にひどい場合、受精障害を起こす事が想定される。我々は、以前に死滅した 精子頭部が顕微注入される事によって、前核になり、ウサギや動物園動物種で精子が卵母細 胞の活性化を引き起こす事を報告した6。) 本実験では、精子頭部を注入して受精した卵母細

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胞は、産子にならなかったが、精子尾部の除去後の精子頭部も発生能力を部分的に保持して いるようだ。マウスでは、精子頭部を顕微授精することにより産子まで至る事が報告されて いる。この差は、配偶子の種特異性に負うところが大きいように思われる。ウサギ精子頭部 と卵子は、ヒトと同様ICSIにおける強い耐性を持っているようだ。

ここで示すように、正常前核形成はウシとウサギで精子頭部を注入する事により誘起でき る事が示唆された。これは、ハムスター14)で最初に報告され、後にウサギ2)やヒト8)で確認 された。ほとんどの晴乳動物では、精子頭部の基部に位置する精子中心体が、雌雄前核の形 成と発育さらに腔の分割にとって、重要な役割を果たしてる事が知られている11 o本研究 でも、精子の顕微注入後、形態的に正常な受精と腔の発育さらに胎児が確認された。しかし、

この発育率が非常に低く、精子尾部と精子の中片部が、発育に重要である事が示唆された。

K uretake et  a

1 . .

10)は、 60分以上通常のNaClが多い培養液に精子頭部を懸濁しておくと、

マウスでは発生能力に大きな影響を与えると報告した。ウサギでは、正常精子に比べ精子頭 部の受精率や発生率が劣る事は、同様な影響がある可能性が考えられるO

本実験結果から、精子の細胞内小器官や核質は受精現象には影響を与えないが、精子の顕 微注入後の腔発育には重要であることが示唆された。動物園では死体から人工授精や体外受 精に利用できる完全な精子を取り出す事が困難である場合が多い。不完全な精子を利用する という条件からでも、ウサギは8個の桑実期腔を回収する事が出来た事は、死体精巣から得 られる精子でも ICSIによって産仔を得られる可能性を示唆している。

本実験の結果から、今後精子頭部を利用した陸生産を行うためには、受精とその後の腔発 育にとって精子の細胞内小器官の役割、特に精子尾部と細胞膜について研究を進める必要が

あることが示唆された。。

参 考 文 献

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図 2 精子頭部の注入後 1 4 時間で固定、染色したウシ前核期匪 両前核と両極体が観察される 図 3 精子頭部注入後 2 5 ‑ 2 6 時間後のウシ 2‑3 細胞期匪 子頭部の細胞膜を除去しているので、顕微注入された精子頭部が前核へと変化する事が予測 された。 絶滅危慎種の人工授精や通常の体外受精に十分な運動精子が回収されるのが困難な場合が 多い。これらの場合、 I C S I は死滅精子を利用して腔を生産する効率的な手段となる O しか しながら、これらの死滅精子あるいは意図的に耐凍保護物質を添加せず

参照

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